二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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神様のノート 一冊目
日時: 2015/05/12 18:40
名前: 奏月 昴 (ID: rBo/LDwv)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=28346

始めまして、奏月昴と申します。
pixivでも活動していますが、別の所でも活動したくなり、こちらにやってきました。

基本pixivと同じものを載せていく予定なので、お好きな方を閲覧下さい。


とりあえず今は現在進めているシリーズ物を載せますが、ちょこちょことお引越しさせていく予定です。
設定わかんないけど興味がある方、pixivまでお越しいただけるとありがたいです。
何かいい加減ですみません…。

それでは、よろしくお願いします。


※ざっくばらんなあらすじ
会社から帰宅途中に何故か宙に浮いている少年、MZDと出会った私こと、創造者。
彼から貰った創世ノートを使い、世界と創造者の分身、奏月昴を生み出し、この世界の神様として中からの管理を命じる。
その際、昴と約束し、私の事は他言無用とすることになった。

昴は生まれたその日に、この世界で烈達つぎドカ!メンバーと出会い、仲良くなる。
ある日、創造者から教えられた創世ノートの機能である『召喚』を用い、烈達の記憶と姿、力を基にして鏡達を生み出す。

そして二学期が始まる頃、八十稲羽から悠達ペルソナメンバーが、ペルソナが現実でも呼べるようになり、流石に稲羽にはいられないという事で、烈達が通う学校に転校して来て、仲良くなった。

色々あり、十二月。烈達つぎドカ!メンバーがバトルしてから一年後、パステルくんはワンダークロックと呼ばれる巨大時計をジョーカー一味に壊されている事を思い出し、一人立ち向かおうとするも、それをつけていた烈達つぎドカ!メンバー。
彼等の力を借り、ジョーカーを倒し、ワンダークロックを無事直すことが出来た。
ジョーカー達とは和解し、現在はつぎドカ!メンバーの家に、ジョーカーは昴のいる神殿に住むことに。
ワンダークロックが壊れた影響なのか、全ての人々の体の時間が戻ろうとしており、現在、年齢はそのままで一年をやり直している。

昴の管理と私の監視、それに限界を感じた私は、MZDの提案で、戦い慣れた人をノートの世界に永住させる事を決意。
その時、私が高校時代に考えた理乃達が適任という事になり、彼女等の世界をノートの中に作り出し、全てを話した上で永住してもらう事に。現在は悠達と同じ学年で生活している。



—とまぁ、見て分かるかわからないけど、主要となる人物は、つぎドカ!、ペルソナ4、ジョーカー達、それからオリジナルキャラとして理乃ちゃん達になるかな。


「あ、簡易的なキャラ紹介は、もう一個の“ノートに刻まれた一頁”に移したので、そちらを見てくれよな。URLからも飛べるぞ。」


5/12 最終更新


『目次』

☆料理対決シリーズ
〔第一回・可憐な乙女の料理対決〕
・栗拾いからの料理対決へ&華の乙女の料理対決! >>154-160
・実食 完二&烈&鏡&悠 >>164-168
・実食 凪&陽介&クマ&風雅 >>173-177
・結果発表からのO・SHI・O・KI・DEATH☆ >>180-186

〔第二回・続・可憐な乙女の料理対決〕
・料理対決・再び >>1-7
・実食 ローズ&鏡 >>8-11
・実食 完二&リリィ >>12-15
・実食 悠&風雅 >>16-19
・実食 凪&セシル >>20-23
・実食 陽介&クマ >>24-28
・実食 フランシス&烈 >>29-34
・結果発表と例のアレ >>35-43

〔第三回・豪傑な男の料理対決〕
・何でどうしてこうなった(By昴) >>44-49
・実食 氷海&雪花 >>50-53
・実食 七海&由梨 >>56-59
・実食 鈴花&直斗 >>60-63
・実食 葉月&雪子 >>64-67
・実食 千枝&牡丹 >>68-71
・実食 理乃&りせ >>72-76
・結果発表! >>77-86 ※募集は締め切りました
・O・SHI・O・KI☆前半戦 >>94-101
・O・SHI・O・KI☆後半戦 >>110-123

〔第四回・男女混合料理対決地獄編〕
・戦いをもう一度 >>203-209
・実食 一番&二番 >>222-227
・実食 三番&四番 >>233-237
・実食 五番&六番 >>247-253
・実食 七番&八番 >>260-264
・実食 九番&十番 >>286-290
・実食 十一番&十二番 >>301-306
・実食 裏回 >>326-342
・結果発表! >>384-398 ※募集は締め切りました
・賢者に慈愛を、愚者には罰を 賢者編 >>662-671

〔第五回・料理対決・頂上決戦!〕
・評価五のための頂上決戦! >>415-420

〔番外編・審査員一新!? 選抜メンバーの料理対決!〕
・死亡フラグ立たせた奴。前出ろ。前だ。 >>716-723
・実食 一番&二番 >>728-733
・実食 三番&四番 >>738-743
・実食 五番 >>751-756
・対決 五番の料理 >>784-794
・大団円と実食 六番 >>814-822
・実食 七番&八番 >>840-848

〔番外編・挑戦者=変動審査員!? ゲストもありな料理対決!〕
・概要と募集要項 >>856※募集は終了しました


☆言葉泥棒とワンダークロックシリーズ
・言葉が消えた理由 >>435-441
・異次元に突入! >>442-446
・激突! 鈴花VSローズ >>451-455
・激突! 風雅VSフランシス >>456-460
・激突! 烈VSリリィ >>464-469
・激突! 氷海VSセシル >>470-474
・激突! つぎドカ!VSジョーカー >>478-484
・揺蕩いから、覚醒めの時へ >>485-488
・激突! パステルくんVSジョーカー >>491-497
・おかえりの味とただいまの涙 >>498-506


☆マヨナカテレビ事件シリーズ
〔氷海編〕
・虚ろな映身は現身を打つ >>523-532
・穿たれた水器(みずうつわ) >>533-537
・囚われの氷硝 >>540-545
・冷酷なる御霊 >>546-553
・氷雪の女王 >>563-568
・悪夢の終わり >>569-578
・雲の向こうに捧ぐ向日葵の花 >>582-585


☆神様・悪夢相談室シリーズ
・悪夢:ケース「赤羽 烈」>>805-808
・悪夢:ケース「青柳 氷海」 >>831-835


☆もしももしものちいさなおはなしシリーズ
・カラオケネタ >>192-195 ※募集は締め切りました
・どっちの料理ショー >>274-276


☆ノートの世界のTwitter事情シリーズ
・アカウント一覧 >>589

〔本編〕
・その一 >>590-594
・その二 >>595-598
・その三 >>606-609
・その四 >>614-616
・その五 >>622-623
・その六 >>630-632
・その七 >>633-634
・その八 >>317-319

〔番外編〕
・Let's Twitter with JOMANDA >>602-605
・Let's Twitter with JOMANDA2 >>617
・Let's Twitter with JOMANDA3 >>776-778
・異世界の料理対決 その一 >>880-888


☆新・ワイルド能力者のコミュ事情シリーズ
・烈&氷海 ランク1 >>644-649


☆短編
・はんぶんこ >>128-129
・リミットブレイクと暴走娘 >>133-135
・フラワーギフト >>140-147
・年末恒例巫女さんバイト >>349-359
・玉より食物 >>365-371
・「リンちゃんなう!-Try to Sing Ver.-」 rejected by 相方の皆さん >>510-515
・没案「第四回料理対決六番の料理」 >>516
・思いつくままに書いてみた料理対決案 >>558
・没案「第四回料理対決・その後」 >>624 答え+α >>629
・バレンタインデー☆パニック! >>681-689
・猫の猫による猫のためのお花見 >>699-704
・お知らせと次々回予告(!?) >>708-709
・ほのぼの日和 >>770-772
・小ネタつめつめ >>863
・前奏曲・異世界の第六回目 >>866-868
・お知らせと紹介と >>891-893 new!

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虚ろな映身は現身を打つ その二 ( No.525 )
日時: 2015/01/19 23:00
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0iVKUEqP)

学校に着くと、一番に、あの赤が…烈の姿が目に入った。
今日は早く来たのね。いつもは、私や直斗の方が早いのに。

「おはよう、烈。」
「おいっす、氷海。今日はちっと遅かったな。」
「烈が早いのよ。珍しく、ね。」
「珍しくは余計だろ!」

頬を膨らませ、反論する烈。
昔は、それが苛立たしかったが、今はそれが、その仕草が、とても可愛らしく思える。愛しく思える。

「そうね、最近の烈は頑張っているものね。」
「な、何だよいきなり…。まぁ、勉強の方は…うん、なんとか頑張れてるけど…。」

確かに、勉強は去年の夏休みをきっかけに、頑張っているわね。
だけど、それだけじゃ、ない。

「勉強だけじゃないわ。千枝先輩や牡丹との鍛練も頑張っているって聞いたわ。どんどん強くなっていくのね、烈。」
「まだまだ、だよ。…もう、あんな悲しい顔したアイツ等を見たくないしさ…。だから、もっと強くなりてぇよ。」

そう。…あの、亜空間事件をきっかけに、力を付ける事も頑張って…どんどん、強くなっていく。
それが何だか…寂しく、思う。
どんどん強くなる烈。それは、誰かを守る為…。
もしかしたら、誰かの中に私が入っているかも知れない。いいえ、烈の事だから、みんなを守る為に、強くなろうとしているのでしょう。
けど…だけど、それは、嫌…。嫌なの…!

「…私だけを、守ってほしいの…。」
「ん? 何か言ったか?」
「! な、何でもないわ。」

今の…聞かれなかったわよね…?

「っと、そうだ。氷海、今日も生徒会の仕事で遅くまで残るんだろ?」

た、助かったわ…。話を変えてくれた…。

「え、ええ…。もう少しであの書類が終わりそうだから…。」
「遅くに一人で帰るのも不安だろ? 待っててやるから一緒に帰ろうぜ。あ、簡単な事だったら手伝うし。」
「あ…ありがとう。助かるわ。」

烈ったら、本当に…優しいわね。
だけど…。

「おい、烈。」
「ん? おっ、ナカジ、おはよーさん。」
「挨拶は後だ。陽介先輩と悠先輩の喧嘩の仲裁を手伝え。また校庭で暴れてる。」
「またかよ!? あー、もぅ、悠先輩の野郎…。じゃあ、氷海、また後でな!」
「え、ええ…。ホームルームが始まる前には帰ってきなさいね…。」

その優しさは、私だけに向けられた物じゃ、ないのよね…。
烈は、誰かに頼まれれば断れない。困っている人がいれば全力で助ける、お節介な人…。
誰にでも優しい、人…。

「…その優しさを…私だけに向けてほしい…。」

そう願うのは、我儘、なのかしらね…。

虚ろな映身は現身を打つ その三 ( No.526 )
日時: 2015/01/19 23:06
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0iVKUEqP)

時間も過ぎて、放課後。
私と烈は生徒会室で二人きりで、仕事をしていた。
…二人、きりの…誰もいない、部屋…。

「…。」

い、いけないいけない。何を考えているの、私。
学校で不純異性交遊はいけません。…い、いけません。
なら、学校以外なら…いやいや、学校以外でもいけません。学生の身分なのですからね、私。

「烈、ごめんなさいね、もう少しで終わるわ。」
「…。」

私は、気を紛らわせる為に書類仕事をしながら、烈に声をかけたけど…。

「…烈?」

反応がない。心配になって顔をあげたら、そこにあったのは…。

「…あらあら。」

机に伏せて眠る烈の姿だった。余程疲れていたのか、よく眠っている。
無理もないだろう。朝の一件以降、ひっきりなしに烈への依頼(主に能力者同士の喧嘩の仲裁)が飛び込んできていた。それに全て対応したものだから、疲れるのも当たり前ね。
それに…普段から、鍛練や家の手伝いを頑張っているから、余計に疲れるのかしらね…。

「本当に、無理をするんだから。」

本音を言えば、無理はしてほしくない。
だけど、我武者羅に頑張る烈を、もっと、側で見ていたい。
…烈の側に、居たい。烈に、触れていたい。烈を感じていたい。





烈の…“恋人”に、なりたい。

「…!」

だ、駄目よ! この感情は打ち明けないって決めたじゃない!
烈も…烈も、変わる事を望んでいないわ!

「…。」

だけど…今だけ…。今だけ、なら…。
眠っている、今なら…。

「…烈…。」

私は眠る烈の…無防備な烈の側に寄り、顔を近付け、そして…。

−ガタッ。

「!? 誰かいるの!?」

あと少し、と言ったところで、物音が聞こえて、私は顔を上げ、烈を起こさぬよう声を潜めながらあげた。

「にゃー。」

程なくして、黒猫が生徒会室に入ってくる。
あら? 確かあの子は、紅の恋猫さんじゃなかったかしら?
きっと、昇降口は開いているから、そこから校内に入ってきちゃったのね。

「貴方…迷子になったの? 帰り道、わかる?」
「にゃー。」

頷いて…くれたのかしら。…自分から去っていったけど、きっと平気でしょう。この子は頭がいいと紅に聞いたから、大丈夫ね。
そんな事を考えながらふと、時計を見ると、時刻は午後七時を指していた。

「あら、もうこんな時間。烈、起きて。」
「んー…。んんっ!?」
「きゃっ!」

いきなりがぱりと起きないで頂戴! ビックリしたじゃないの!

「うわ、俺、寝てた!? あちゃー…。わりぃ、氷海! 手伝うっつったのに…!」
「いいのよ。もう終わったから。さぁ、帰りましょう、烈。」
「おう。」

私達は後片付けをして、さっさと帰る事にした。

虚ろな映身は現身を打つ その四【side葉月】 ( No.527 )
日時: 2015/01/19 23:12
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0iVKUEqP)

スバルさん、どうしよう…。私、今、凄く衝撃的なシーンを見た気がします。
今、隣の教室…あ、いや、生徒会室で、後輩が…よりにもよって生徒会長を勤める後輩が、眠っていた別の後輩に…あ、貴方が心底惚れている後輩に、そ、その、き、キキキキ、キスを…接吻を…!

『葉月さん。…葉月さん。』
「うにゃあっ!」

後ろから声をかけられ、私は思わずビックリして声をあげてしまった。

「き、聞かれてないよね…!?」
『大丈夫ですにゃ。お二人は既に帰りましたにゃ。』
「よかった…。ホント助かったよ、クーちゃん…。クーちゃんがいなかったら、今頃見つかってたよ…。」

私は目の前にいた黒猫のクーちゃんを撫でる。
…えっ? 何でクーちゃんがここにいるか?
ちょっと、ピアノの練習していたら遅くなって、帰ろうとしたら雨で、傘を取りに教室に向かおうとしたら、昇降口でずぶ濡れのクーちゃん見つけて、放っておけなかったから今までタオルで拭いてあげてたの。
それで、あ、そろそろ七時だわー。氷海ちゃん達も残っていたみたいだし、声かけて一緒に帰ろうかなーと考えて生徒会室覗いたら…アレに遭遇だよ。
私はクーちゃん連れて咄嗟に隣の空き教室に潜り込んだけど気付かれて…。そしたら、クーちゃんが『ここは任せて下さいにゃ。』って言ったから、任せて…現在に至る。

『クーの水気を拭いてくれたお礼ですにゃ。…それにしても、氷海さんがあんな大胆な方だとは思ってもいませんでしたにゃ…。』
「私も…。クールな人だとは思ったけど、眠っている烈君相手にキスしようとするとは…。」

…でも、あの一瞬で分かった。
本気で好きなんだな。烈君の事が。

「あ、やば。」
『どうかしましたかにゃ?』
「寮の門限、過ぎてる…。どうしよう、帰れない。」

寮の門限を一分でも過ぎると、すぐに閉め出されるんだよねぇ…。

『昴さんに事情を話して、泊めて貰うといいと思いますにゃ。』
「それしかないか…。」

私は溜息をつきながら、クーちゃん抱えて一緒に聖域まで向かう事にした。
…えっ? クーちゃんの言葉がわかる理由?
それはね、私の指にはまっている、水の宝珠って言う物がついた指輪のお陰なんだ。詳しい事は、また今度ね。

虚ろな映身は現身を打つ その五 ( No.528 )
日時: 2015/01/19 23:17
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0iVKUEqP)

暖かい日差しの教室。私は烈、直斗と共に、そこにいた。
お昼を食べながら、楽しく談笑している。
他愛ない、本当に他愛ない、小さな話。

「…!?」

ふと、気が付けば、私は一人、冷たい鏡貼りの部屋にいた。
そこにいるのは、鏡に映る無数の自分。

「なっ…何なの、これは…!?」
『クスクス…。コレとは失礼ね。』
『私達は貴方なのにね。』

クスクス笑う自分を名乗る何者か。
鏡に映っているせいか、無数にいて、気味が悪い。

『気味が悪いとは心外ね。』
『私達が君が悪いというのならば、貴方も気味が悪いわ。』
「どう言う意味よ!」

私が問うと、また、クスクス笑う私に似た虚像達。

『まだ気づかない?』
『私達の事。』

ふと、気が付く。
その鏡の中から、腕が伸びている。…私に向かって。

『私達は貴方。』
『貴方は私達。』

私に向かって伸ばされた腕は、私を掴み、引きずり込もうとしている。
まるで、ひとつになりたいと願うように。

『私達は、貴方が閉じ込めた感情。』
『貴方が圧し殺した、烈への恋心。』

私が圧し殺した、烈への感情?
それが、この無数の私?

『どうせ烈の事。私への思いなんか知らずに、仲間としか思われていないわ。』
『報われない烈への思いなんか捨てて、私達と一つになりましょう?』
『ここは楽しいわ。私が沢山いるもの。』
『寂しくなんかないわ。私達がいるもの。』

私は、私を引きずり込もうとする。寂しくない。一人じゃないと、囁きながら。
だけど、それは嫌!

「嫌よ! 烈と会えなくなるなんて、絶対に嫌!」

私は烈と一緒にいたいの!
報われなくていい! この思いが気づかれなくたっていい!
ただ、烈と過ごせるこの時間が幸せなの!

『本当に?』
『本当にそれだけで幸せなの?』
「…!」

そう、幸せ。幸せな、はず。

『本当は烈にこの思いを打ち明けたいんじゃないの?』
『烈と二人きりで愛し合いたいんじゃないの?』
『烈と添い遂げたいんじゃないの?』

違う! そんな事、思って…!

『思ってないと、言い切れる?』
「あ…!」
『烈と添い遂げたい。けれど、彼が望むのは、停滞。』

—来年も、何にも変わらねぇといいな、氷海。

そう、だったわ…。
二年参りの日に言っていた。何も変わらないといい。
それはすなわち、私と今のままで…仲間のままでいたいという事。

『ここでは、そんな感情を抱かなくていい。』
『全てを忘れて、ここで一緒に暮らしましょう?』
「…。」

私は抵抗する気を失い、無数の腕に捕まれた。

—氷海。

ふと、烈の声が聞こえた気がして、前を向いた。
ぼんやりと浮かぶ光の中に、烈の背中が見える。
私がいつも見ている、烈の姿。私だけが見れる、烈の背中。

「…助けて…!」

私は、必死に手を伸ばす。光の先に見える、烈の背中へと向けて。

「助けて! 烈!」

虚ろな映身は現身を打つ その六 ( No.529 )
日時: 2015/01/19 23:24
名前: 奏月 昴 ◆Dh/xEZWmVM (ID: 0iVKUEqP)

「っ、あっ…!」

私は勢いよく起き上がる。
…また、あの夢…。最近、この夢ばかり…。

「氷海…?」

ふよふよと、横から何かが飛んできた。
あのローブ姿は、セシルね。起こしてしまったかしら…。

「あぁ、セシル。ごめんなさい、起こしてしまって。」
「構いませんわ。…随分うなされていたようですが、大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。…悪い夢を見ただけだから。」
「…ここ数日、夢見が悪いようですわね。わたくしでよろしければ、相談に乗りますが…。」

…セシルは優しいわね。あの時…ワンダークロック事件の時に戦っていた時からは、こうなるとは想像できなかったけれど…。
でも、大丈夫。

「平気よ、セシル。…大丈夫。」
「…なら、よろしいのですが…。」

私がそう言うと、セシルはふわりとベッドから浮き上がり、また吹っ飛ばしていたパステルくんを私の横に寝かせてから、自分の寝床へと戻ろうとしていた。が、その体が急にピタリと止まる。

「氷海。夢は時として、残酷な姿を見せます。」
「…ええ。」
「ですが、夢は夢。現実ではありません。しかし、夢は何かを貴方に伝えようとしているのでしょう。…思い当たる事があるのならば、吐き出してしまった方が楽になりますわ。」

吐き出してしまった方が楽になる、か…。
そう、ね。打ち明けた方が、楽になるのかもしれないわ。

「…ありがとう、セシル。…考えてみるわ。」
「ええ。…それと、氷海。貴方は一人ではありません。貴方の周りには、助けてくれる誰かが常に側にいる。それだけは、覚えておいて下さい。」
「ええ。」
「では、お休みなさい、氷海。」
「…お休みなさい、セシル。」

セシルは再び、寝床へと戻る。
私は点けていたベッドランプを消し、再び布団に潜った。





…打ち明けた方が、確かに楽になるかも知れない。千枝先輩達のように、何かが変われるかも知れない。
だけど、打ち明ける訳には行かない。
だって、今のままで十分幸せだもの…。これ以上を烈に求めるなんて、私には…。











「えっ? 烈、今日はお休みなの?」

学校へと辿り着いて、直斗から告げられた報告に、私は驚きを隠せなかった。

「はい。どうやら昨日の雨に打たれて、風邪を引いたらしくて…。熱が高いから学校休むと、Twitterで呟いてましたよ。」
「っ、もぅ…。『俺は大丈夫だから。』って言ったのを信じなければよかったわ。」

昨日、大雨が降っていたのに、私は傘を忘れて、烈の持っていた折り畳み傘で帰ったのだけれど、私の方ばかりに差すものだから、体が冷えたのね…。
大丈夫だと言い張っていたけれど、全然大丈夫じゃないじゃない。

「それで、今日は放課後、何か作って烈君のお見舞いに行こうと巽君が提案してきたのですが、氷海さんも一緒に行きませんか?」
「お誘いは嬉しいけれど、今日はすぐに帰らなければならなくて…。」

私がそう言うと、直斗は「そうですか…。」と残念そうな呟きを漏らした。
…お父様のお客様を待つという用事がなければ、私だって行きたかった…。

「…早く良くなりなさい、と言っておいてくれないかしら?」
「フフッ、分かりました。伝えておきます。」

直斗は悪戯っぽく笑って、そう言ってくれた。


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