二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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短編小説 *BSR Fate*
日時: 2014/04/21 17:22
名前: ☆Milk☆ (ID: EM3IpZmD)

こんにちは!
題名とか親レスとかが色々変っちゃってごめんなさい(汗)

前は主にバサラとバサラクロスオーバー専用でしたが最近fateが増えてきたためfateも題名に加えちゃいました←
そんな感じに意味が行方を失った短編小説始まります

ごゆっくりどうぞ


※リクエスト受け付けてます。長くなりそうなリクエストや、あまりに抽象的なリクエストはバッサリ無視いたしますので悪しからず。
※荒らし、チェンメ、悪コメはご遠慮ください
※バサラは主に伊達軍、fateは槍兵と弓兵を偏愛してます
※私のオリジナル小説、『僕と家族と愛情と』とリンクしてる時も多々。

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Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.437 )
日時: 2015/01/05 16:49
名前: ナル姫 (ID: eD.ykjg8)

 ザン、と横に振られた槍に、熱い痛みを覚える。致命傷は避けたが、治癒をかけられても痛みは残った。チッ、と臨也が舌打ちするのにも気付かず、ランサーは立ち上がった。騎士クラスのランサーが肩呼吸であるのに対し、キャスターは少し口を開けている程度だ。
 −−勝てない。どうしても槍が届かない。
 −−あと少し、あと少しなのに!
 そもそも、方や、太陽神ルーの子供で、幼少のころに猛犬を殺し、その代わりに水からが猛犬となったケルトの大英雄、方や、妖精王の養子で、その美しさを失わないよう大切に育てられたフィオナの一員−−勝てる訳がないのだ。いくら相手がキャスターでも、それが槍を持っていれば。
 だが、臨也は撤退を要求しない。なぜなら……もう少しランサーが堪えれば、キャスターは必然的に退くのだから。
 槍を構え直したキャスターが走り出す。激しい攻防が始まったが、それはあっさりと終わりを迎えた。
「か、はッ……!?」
 ランサーの脇腹部分をキャスターの槍が貫く。槍を抜かれ、倒れかけた、のだが、何かがランサーを支えた。闇の中では何があるのかがわからないが。
「……?」
 支えられているランサー自身も、キャスターも、臨也でさえ呆気に取られていた、その時。
「! ……バゼット……!?」
 臨也が少し口角をあげる。キャスターとランサーに悟られないように。
「ランサーのマスター! 一先ず中断だ! 次はその薄気味悪いもん持ってくんなよ!」
 臨也は首を鞄にしまった。セルティの影が意識疎外するための魔術を施して。その時、馬の鳴く声が聞こえた。黒いラライダースーツの女性が漆黒のバイクに乗ってやってきた。
「やぁセルティ……何してんだい、こんな夜中に」
 臨也はディルムッドを回復しようとせずに、あくまで自然に言う。その時、足に力が入らなくなったのか、どしゃっと音を立ててランサーがその場に倒れた。脇腹から結構な量の血が流れている。セルティが慌てて駆け寄るが、臨也はあくまでゆっくり近付いた。
「ぐっ……」
【おい臨也! 何をそんなゆっくり】
 セルティが全て打ち込む前に、臨也はディルムッドを治癒した。ランサーの呼吸も落ち着き、むくりと上半身だけ起き上がり、方膝を着く形になった。どこか怯えているような瞳で、頭を下げる。
「……申し訳ございません」
「……ま、相手があれじゃぁねぇ」
 溜息を吐いて臨也が言った。
「悪いねセルティ。驚いたでしょ?」
【どういうことだ臨也? 今のは魔術か?】
「セルティもきっと、記憶にないかもしれないけど散々見たでしょ? オェングス様も使ってたんじゃない?」
 単語に、ぴくりとランサーが反応するが、セルティは覚えていないのか首を傾げた。
【そんなことより……これはどういう事なんだ?】
「悪いねぇ、部外者には言えないなぁ。さっきも聞いたけどさ、どうして君もここにいるのさ」
【私は粟楠会に頼まれた仕事をしていただけだ。何か金属音が聞こえるから寄ったんだが……】
「ふぅん? 君の口の硬さを信用して教えてあげるよ。俺は魔術師。言っとくけどシズちゃんもだよ?」
 影がランサーを支えたのはシューターの意思だろう、シューターはディルムッドを覚えているのかも知れないと臨也は推測した。実際、顔のない馬はランサーを舐めるような仕種をしていた。
 もはやPDAを打てないほど混乱しているのか、セルティはただディルムッドと臨也を交互に見ていた。だが臨也はそれ以上は答えない。
「ランサー」
「は、はい、主」
「今日は幸運だった。でもキャスターにまで遅れを取るわけには行かない。わかるよね?」
「……はい」
「まぁ、ここまで歯が立たないとは思わなかったけど……だまし討ちしろなんて、令呪使われたくないでしょ?」
「と、当然です」
「なら精進してよね」
【お、おい臨也! 私には何も事情が分からないが言葉がきついんじゃないか!?】
「あ、そのっ……」
 臨也に抗議を始めたセルティを宥めようとディルムッドか声をかける。セルティはまたもPDAに文字を打ち込んだ。
【お前もお前だ! 何で言われ放題で黙っているんだ!?】
「し、仕方ないんです、主は……臨也殿は悪くない」
【だが】
「本当なんですッ!」
 言い切ったディルムッドに、セルティも抗議をやめた。臨也が満足そうに笑う。
【名は?】

Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.438 )
日時: 2015/01/05 16:56
名前: ナル姫 (ID: eD.ykjg8)

 唐突に突きつけられた字に一瞬驚いた。そして、一度臨也を見る。
「何だって?」
「……名を、聞いています」
「……」
 暫く考えたあと、良いよ、と言われディルムッドはセルティに向き直る。
「……ディルムッド・オディナと申します……ランサーとお呼びください」
 その目や鼻の形が、誰かに似ているような気がして、必死に思い出そうとする。ふと、一瞬脳裏を黒いローブの人物が過ぎったが、それが誰だか分からない。
「……あの」
【あ、ああすまない!】
 ずっと見られていたため、やや心配になって声をかけると、セルティはあわてて謝罪した。ランサーがわずかに苦笑した顔はどこか自虐的であり、臨也とランサーの間に、自分とディルムッドの間に何があったのか知りたくなるが、それは叶わない。
 ディルムッドは、衝動に堪えていた。首がすぐそこにある。セルティがここにいる。今この場で臨也を殺してしまいたい。右手だけでも切断して忌まわしい令呪を身体から切り離して殺したい。いますぐいますぐいますぐいますぐいますぐいますぐいますぐいますぐいますぐいますぐいますぐ駄目だいますぐ殺す首をそんなの騎士じゃない殺したいいますぐ呆れられる殺して首を絶対駄目死ねば良いのに取り返せすぐそこにある信じてはいけない信じられない奪い返せ首を首殺せ今ならできるやってはいけないやれいますぐ殺せしね殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ−−……。
【……どうかしたのか? まさか、まだ傷が】
「いえっ、ちが、違います、ので……」
「……先帰って良いよランサー」
「え……しかし」
「セルティに送ってもらうからさ、俺は」
【誰が送るか】
「良いじゃん、五枚で頼まれてよ」
 溜息をはいたような仕種をしたということは、了承したのだろう。ディルムッドは立ち上がり、よろしくお願いしますとセルティに頭を下げると、その場から消えた。一気に気配が遠ざかり、その場は二人だけになる。
「さて、帰ろうか」
【料金は先払いだ】
「ケチだねぇ」



 バイクに二人乗りし、いつもの白バイもいない夜の池袋を遅めに走る。
「セルティ、本当に覚えてないのかい?」
【……ランサーの話か?】
 臨也に渡されたPDAに、影が文字を打ち込む。
「あぁ」
 彼はね、と臨也は話しはじめた。
「多分君も知ってると思うけど……ドゥンの息子だよ」
【覚えていないな】
「あーあ、ランサーの方は鮮明に覚えているのに。ま、結構早死にしたしね」
「……どういう」
「父親違いの弟の怨霊に殺されたのさ。それが運命でもあった。彼の実の父がそう定めてしまった、意図はなくね」
 PDAには何も打ち込まれない。
「彼、君が守ろうとしてくれたんだって、言ってたよ」
【……そうか】

『夢みたいだ……! 聖杯に招かれ、この世界でまたセル姉に会えるなんて!』

 子供のようにそう告げた彼の顔が思い出される。きっと、彼にとって自分は姉のような存在だったのだな、と誰にでもできる推測をぼんやりと彼女は考えていた。



 臨也のマンションで、ディルムッドは自分のベッドの上で横になっていた。疲労は貯まっているが、寝れない。
 光の御子は強い。全く、届かない。
 俺は弱い。それはわかっている。だが、フィオナ随一と言われたのだ……こんなに遠いとは、思わなかった。
 感傷に浸っていても、臨也が彼を慰めないのはわかっている。聖杯を、聖杯を取らなければ。だまし討ちなど好かないし、こうなったからには勝ちたいのが本心だが、ディルムッドの考えは、彼が騎士であるとはお前ないような狡猾なものになってしまっていた。
 −−キャスターが誰かに潰されてしまえば良いんだ。
 ひくり、と口角が上がった。
 臨也と主従関係となって、彼の心は彼が理解できているよりも荒んでいた。長い睫毛の下から覗いた瞳は、汚れた戦法の先にある勝利を見ていた。

Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.439 )
日時: 2015/01/07 17:39
名前: ナル姫 (ID: UgN/I8x0)

いつぞやの魔術師になりそこないディルとセルティの絡みの続き



 その日、セルティと新羅はセルティの故郷を旅行していた。目的は、セルティが首を盗まれる少し前、助けた少年の姿を見ることだった。あんなに細く弱々しかった子が美しく逞しい青年に育ったのだから。
 パスポートを持たないセルティが飛行機に乗れるはずもないため、臨也に頼み込んで根負けさせて粟楠会の力を借りたのだが、どう考えても違法である。異形であるセルティは罪悪感を感じていたが、人間であるはずの新羅の方が何も気にしていないというまぁある意味いつも通りの光景だった。
【あれから十五年か……一体どんな風になっているのだろう】
「あぁそっか、セルティあの子が死にかけてたことしか知らないんだっけ? どういう経過でああなったのとか知らないんだよね」
 携帯電話をいじりながら話す新羅に頷く。
 馬車の形にしたシューターで移動しながら森を見ているが、何も変わっていないような気がした。
「あ、見付けたよ。バスケットボールアイルランド代表ディルムッド・オディナ。ポジションSG。経歴、小学六年生の時、クラスメートに誘われバスケットボール部に入部。当初は体力がなく練習についていけなかったが、徐々に上達。中学でもバスケットボール部に入り、三年生の時には最後の大会でチームを三位に導き、MVPを獲得。高校でも小学校以来の仲間達と共にバスケットボール部に。部長などにはならなかったがチームの花形として活躍を続け、卒業時にアイルランドでもっとも有名なチームに勧誘を受け、高金額で契約……へぇー、凄いねぇ」
【幼い頃の話はないのか?】
「ないみたいだね。他の選手はあるけど……やっぱり色々大変なことがあったんだね」
 そうか、と打ち込み、少し凹んだようにした。



 暫くして首都のタブリンに着いた。シューターをバイクに戻し、押しながら町の方へ向かう。
「確か、チケット無しで観られる練習試合があるんだよね?」
【そのはずだ。大きな国営の体育館でやっていると聞いたが……あ、あれじゃないか?】
 セルティが指差した先には、確かに大きな体育館があった。
「多分あれだね。行ってみようか」



 中には凄い数の人がいた。その殆が女子、女子、女子。圧倒的に女性多数で、二人は辛うじて座れたものの座れない人も沢山いる。男性の大半は座れないと知るや否や帰ったが、女性は中々返らない。ここで帰ったら、あのとんでもなくイケメンなプレイヤーを見れないからだろう。セルティの隣にも、黒いくせっ毛の少女がいた。女性客の殆どが、タオルや横断幕などある一人のプレイヤーを応援するために持っていたが、その選手はどうやら途中出場らしい。一気にブーイングが巻き起こった。二人の席から見える控えの選手は、にやけながら一人の選手を見ていた。その選手は上から来ていたジャージを脱ぎ、監督らしき人の所へ行き何かを話していた。監督が溜息を吐き、頷く。選手は頭を軽く下げて一人の選手と交代した。今度は大歓声である。女性の黄色い声があちらこちらから沸き上がる。
【す、凄まじいな……】
「凄いね……」
 漸く試合が開始し、高い声での応援が聞こえる。チームを応援しているのではなく、その選手を応援しているのだけど。
 セルティの隣にいる少女は、どこか心配そうな瞳でその選手を追っており、高い声で応援したりはしなかった。
 その選手の所属するチームはかなり善戦していた。圧倒的なスピードで、敵チームを次々と抜いては得点を取っていた。
「凄い……」
【強すぎるんじゃないか……!?】
 試合は進み、第二クォーターへ進んだ。その後もそのチームは順調に点を取っていた、のだが。流石にそろそろ疲れが溜まるのか、その選手は苦しそうに呼吸をしていた。そこで、メンバーチェンジが行われる。二人ほど選手が入れ替えられた。もう一人入れ替えられた選手には対して何の感情もないのだろうが、先程から応援されている選手には、多分ご苦労様ー、とか、ゆっくり休んでー、とかそういう言葉が投げ掛けられているのだろう。英語なのはとにかく、凄い声であまり聞き取れないが。
 セルティの隣にいた少女は、交換されたのを見ると立ち上がり、どこかへ走り出した。それを見た新羅が言った。

「……あの子、ディルムッド・オディナに似てない?」



 体育館の裏口では、先程交代した選手−−ディルムッドが、友人のディアリンと共に涼風に当たっていた。もっとも、ディアリンの方は付き添いだが。
『大丈夫かディル?』
『ん……大丈夫』
『身体弱いんだから無理すんなよ……ま、あのブーイングじゃ出るしかねぇわな』
 どこか自虐的に笑い、そうだな、と彼は返した。
 溜息を吐き出すと、走って来る音が聞こえた。お、とディアリンが笑う。
『お兄ちゃんっ!』
『いらっしゃいリーゼちゃんっ!』
『もう何してんの!? 病み上がりの癖に最初から飛ばし過ぎだよ!』
『ごめんなリーゼ。もう大丈夫だから』
 リーゼと呼ばれた少女−−セルティの隣に座っていた少女は、両手を広げて大歓迎したディアリンを無視してディルムッドを叱った。彼女は、ディルムッドの歳の離れた実の妹だった。
『お兄ちゃんどうするの? 帰る?』
『いや、試合が終わるまではいるよ』
『えー、お義姉さん心配してるよ?』
『いやまぁ、そうだろうけどさ……外にいればたいしたことないさ』
 ディルムッドは、公式戦以外では途中退場が許されていた。身体が弱いため、あまり無理はさせないようにと監督も医者から言われていた。そのため、絶対的な強さで人気も誇っていたが、フル出場したことはない。

Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.440 )
日時: 2015/01/07 17:47
名前: ナル姫 (ID: UgN/I8x0)

 ふ、とエステリーゼが、自分の来た方向を向いた。視線が少し鋭い。
『ディアリン、先戻ってて。いつ呼ばれてもおかしくないだろ』
『おう、じゃぁねリーゼちゃん』
『はい、ディアリンさん』
 ディアリンは体育館へ戻った。ディルムッドもエステリーゼと同じ方向を見る。
『……何かいるな』
『……うん』
 ディルムッドを守るようにエステリーゼが立つ。魔力を集中させ、いつでも術を出せるようにし−−木陰から、人影が見えた所で、空気を銃弾のように凝縮し、飛ばした。
『ふっ!!』
「べぐぅ!?」
『……え? あれ?』
 あちゃー、とディルムッドは眉間を押さえる。エステリーゼが攻撃を発したのは、紛れも無い、白を基調とした服を着た人間だったのだから。
『う、うわわわわわっ! すすすみませんっ!』
 慌てて駆け寄るリーゼに、男性は大丈夫というようにジェスチャーをした。男性が来た所からセルティが来る。
【何をしているんだ、お前は……】
「いや、私今何も悪くなかったんだけど……」
 空気の直撃した額を摩りながら立ち上がる。エステリーゼも立ち上がった所で、来ていたポンチョのフードを、いつの間にか背後に来ていた兄に引っ張られた。今度はディルムッドがエステリーゼの前に立ち、彼女が二人に近づかないよう手で制する。その視線は、当然ながら新羅ではなくセルティに向いていた。
「……何ですか、貴方……人ではないですよね?」
「あ、何だ日本語話せるんだ! しかも上手じゃないか! これなら話は早そうだね!」
【そうだな】
 ぎろり、と橙の瞳で睨みつける。
「そんなに警戒しないでよ。妹が心配なのはわかるけど、僕等は別に危害を加えに来たわけじゃないんだ……それに、その子も君も、ちゃんとした人じゃないでしょ?」
「そうですよ、その通りだ……で、そこの黒いのは何ですか?」
【……まぁこんな姿ではなぁ】
 そう打ち込んだあと、セルティは騎士の姿に戻った。
【その姿なら、見覚えないか?】
『……あ』
 英語で呟いたディルムッドの警戒が解かれた。泣きそうな、嬉しそうな顔で、信じられないと言うように首を振る。そして、深く頭を下げたのだった。
『……誰?』
『……お前が生まれたばかりの頃、俺を助けてくれたデュラハンがいた話を、したことがあったな』
 妹の問いに、そう答えて。



 新羅とエステリーゼには一度席を外してもらい、二人だけで話すことにした。もっとも、簡単にディルムッドが了承するわけがない。新羅をかなり警戒していたが、セルティが『安心しろ、こいつは私にしか興味のない変態だ』とディルムッドを説得した。勿論それはそれでとても心配なのだが。
『驚きました……まさか……会えるなんて』
【去年、偶然日本のテレビで見かけてな……お前だと気付いた】
『……日本には、どうして……』
【お前を助けた後、首が盗まれてしまってな……気配を追って日本へ行った。だが、見つからないんだ】
『……そう、何ですか……』
【だが、日本も楽しいところだ……色々大変なこともあるがな……私も、お前に聞きたいことがある。お前は、何なんだ?】
 ディルムッドはそれを見ると、少し周りを見た。金属製の何かの破片を見つけると、それを取り手の平に乗せて力を集中させる。すると、水が沸き起こった。
『……やっぱりこれくらいか』
【……それは?】
『俺と妹は、魔術師の家系に生まれました……通常は家督がどうだとかそういうことで揉め事が起きますが、俺達はそれ以前の問題で……そもそも、父と母が異端でした。才能こそあれど、横暴なため追い出された父と、余りにも才能がなくて追い出された母と……二人はいつか実家に復讐するため繋がり、俺をその道具として使うつもりで、俺に魔術を教えたのですが……また俺も、才能がなくて』
 苦笑する。
『二人は段々俺を嫌うしお互いも嫌うし……学校にも行ってないのにここまで魔術がダメなのも、珍しいと思います……俺が十二のとき、妹が生まれました……当然、俺の代わりです。相変わらず俺は虐待されていましたが……そのあと、貴方に出会った。その後すぐ、事件が起きました……母が、不倫して子を作ったのです。父は激怒し、一家心中をはかりました。しかし、珍しくその日は家の前に人が通り掛かり、余りの母の叫び声に警察を呼んで、俺と妹と母は助かりました……父は捕まり、刑務所へ。母は精神を病み病院に。俺達は母の不倫相手の上司の元へいきました……その人も、魔術師です』
 セルティは、彼の話に絶句していた。
『学校に行っても何も分からないし、すぐ過呼吸になったりして全然人に馴染めなくて……そんなとき、今も友達でいてくれるオスカーやディアリン、リガンやファーガス、コナンが誘ってくれたのが、バスケだったんです。最初は全然うまくできなくて笑われてばっかりだったけど、幸いなことに運動神経が俺はよかったから、今こうしていられるんです』
【……辛くないのか?】
『もう過去を振り返るのはやめました。そりゃ、母の様子は定期的に見に行かなくちゃいけないし、それは父も代わりませんが……唯一俺が家族だと思える妹は、訳あって魔術師になってしまいましたが、元気に育ってくれているし、養父は心配性ですが優しいし、友達は沢山いて、お金にも余裕はあって、今では妻子もいます……これ以上の幸せはありません』
 ……それが、普通のことだった。
 普通に生きていれば得られる幸せを、最上級と彼は感じている。
【……そうか】
 返事を返したとき、声が聞こえてきた。
「セルティ! 話終わったかい?」
『お兄ちゃん聞いて! この人私に胸ないねって言ってきたんだけど!』
『お前日本語わかるのか?』
『違うジェスチャーで!』
『……まぁないものは仕方なイッ!?』
『お兄ちゃんの馬鹿ーッ!!』
【……いい拳だな】
 その時、試合終了のホイッスルが鳴った。
「……そろそろ行かなきゃ。では、失礼します」
「バイバイ、今度日本おいでよ」
【待たな】
「good bye!」
 セルティは少し暗いような、暖かいような気持ちで日本へ帰った。

 矢霧製薬にある彼女の首はきっと、切なそうに微笑んでいた。

Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.441 )
日時: 2015/01/11 10:30
名前: ナル姫 (ID: 3pCve.u0)

馬鹿達のカラオケ


オスカー「せーのっ、もうそーんなーんじゃだーめ、もうそーんなーんじゃほーらっ! オディナーはしんかーすーるよもーっと、もぉっと!」
ディルムッド「しねぇよww」


ディアリン「りっちゃんはポルノか?」
リガン「あー、それが一番歌いやすいしな」
ディルムッド「あれにしなよ、あれ、えーっと、あれ」
リガン「黙れ認知症」
ディルムッド「きーみがゆーめをねがうーから、いまもゆーめーはゆめのまーまー」
オスカー「ミュージック・アワー」
ディルムッド「それだ!」
ディアリン「ディルこれ歌えよ」
ディルムッド「どれ? あぁ……惚れんなよ?」にやっ
オスカー「トゥンク……」
ディアリン「早いよトゥンクが」
リガン「そしてオスカーがときめくお決まりの流れっていうな」

ディアリン「りょうきてきなきすをわたしにして、さいごまではなさないーで、りょうきてきなきすをわたしにして、さいごまではなさないーでっていったー」
ディアリン「声が綺麗過ぎて似合いすぎて怖い」
オスカー「おいディル歌うの終わりにしろ、部屋の周りに女子が集まってる」
ディルムッド「……嘘だろ……」

リガン「どーこからきこーえーるじょうねーつのうたがさーこうとしているきみへーとよりそう、かーこかみらいーがたしーかにあったならここにだーってみーつけーられるーのかも」
ディアリン「女子解散したな」
リガン「うるせぇディルムッドに敵うわけねぇだろ」
ディルムッド「やめてくれ……やめてくれ……」
オスカー「女子ーっ! 良いのかーっ! りっちゃんの美脚見なくて良いのかーっ!?」
リガン「っせぇ黙れ!」
ディアリン「りっちゃん二番始まってるぞ」

ディルムッド「ディアリン歌ってないな」
オスカー「つかディアリンってどんなの歌うの」
ディアリン「よさくはきーをきるー……」
ディルムッド「渋い渋いよディアリン」
リガン「全部歌えんのかそれ」
ディアリン「えーじゃぁ皆でアルプス一万尺歌おうよ29番まで」
ディルムッド「わぁい新たなチャレンジ。絶対に負けられない戦いがありそう」
リガン「この時期にその言葉を使うなスポンサーにディスられる」
オスカー「いふゆーうぃーん、おあゆーるーず、いっつぁくえーすちょんおぶおーなー、あんゆーうぃーん、おあゆーるーず、いっつぁくえーすちょんおぶおーなー!」
リガン「歌詞しってんのか」
オスカー「うん」
ディアリン「入れたぞー」

『あーるーぷーすーいちまんじゃーく、こーやーりーのーうーえーで、あーるーぺーんーおーどーりーをさあおーどーりーまーしょうらーららーらry』
ディルムッド「もう面倒臭い!」
オスカー「うんこの時点で飽きた」
ディアリン「そうだな」
リガン「おいこら発言者」


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