二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 短編小説 *BSR Fate*
- 日時: 2014/04/21 17:22
- 名前: ☆Milk☆ (ID: EM3IpZmD)
こんにちは!
題名とか親レスとかが色々変っちゃってごめんなさい(汗)
前は主にバサラとバサラクロスオーバー専用でしたが最近fateが増えてきたためfateも題名に加えちゃいました←
そんな感じに意味が行方を失った短編小説始まります
ごゆっくりどうぞ
※リクエスト受け付けてます。長くなりそうなリクエストや、あまりに抽象的なリクエストはバッサリ無視いたしますので悪しからず。
※荒らし、チェンメ、悪コメはご遠慮ください
※バサラは主に伊達軍、fateは槍兵と弓兵を偏愛してます
※私のオリジナル小説、『僕と家族と愛情と』とリンクしてる時も多々。
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- Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.447 )
- 日時: 2015/02/02 17:35
- 名前: ナル姫 (ID: 7MCr7M6.)
BASARAとFateで明日のナージャパロ
アルトリア・ペンドラゴン 十五歳
ナージャポジション。ペンドラゴン孤児院で育った、金髪と緑の瞳が特徴の十五歳の少女。特技の歌と天性のダンスの才能で、ダンデライオン一座の踊り子になる。
赤ん坊の頃に生き別れた母親を探すために、母縁の品々である形見のブローチ・ドレス・日記帳を持って旅を続ける。行動的な性格だが確り者で、旅の途中で出会った男性達を惹きつけるが、身の危険に気付くと数人の男をあっという間に蹴散らせるほどの護身術を身につけている。
旅の途中、妨害や親友の裏切りによってブローチを奪われるが、怪盗黒バラ(キース)や様々な人の協力によって取り返すことに成功する。物語最終盤、様々な困難を乗り越えプレミンジャー公爵の実の孫娘であることが証明され、正式にナージャ・プレミンジャーと呼ばれるようになり、祖父プレミンジャー公爵の妨害を退けて念願の母との再会を果たした。その後は今まで通り自立して生きるため、公爵家の元に残ることを拒否し、ダンデライオン一座へと戻り旅を続けることを決意した。
シロウ・エミヤ
ゲオルポジション。ダンデライオン一座の団長を務める男性。家事などは万能なオカンで、ダンデライオン一座の大黒柱。からくり(機械類)にも強く、ダンデライオン一座のからくり自動車は彼の作品。母親ではないといいつつも仲間に世話を焼いており、料理などが上手くできると良くドヤ顔する。
ナオトラ・イイ
シルヴィーポジション。ダンデライオン一座の歌姫。美しい歌声の持ち主で、アルトリアにとっては姉のような人。二度と誰も愛さないと決めたディルムッドに片思いしており、彼女から見ると彼の周りには常に薔薇が咲き誇っている。
イエヤス・トクガワ
アーベルポジション。ダンデライオン一座でピエロを担当する青年。貿易の仕事をしていたため言語に詳しく、ナージャの母親の日記を翻訳したりするなど、ナージャの母親探しを知識の面からサポートした。
親の薬が買えず、薬を盗んで刑務所に入れられる。出所後は家族の元には戻らず、ダンデライオン一座に入った。
ミツナリ・イシダ
トーマスポジション。ダンデライオン一座のバイオリニスト。ステージの上では堂々と演奏をこなせるが、恋愛には初心であり、ナオトラへの想いを打ち明けられずにいる。普段は凛々しい表情を崩すことはあまりないが、実はお酒が入ると泣き上戸なうえに暴れてしまう。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
リタポジション。クリームとショコラという二匹のライオンを使ったショーを繰り広げる、ダンデライオン一座の幼い少女。世界一小さなライオン使い。
ゾォルケン・マキリ
アンナポジション。通称おじじ。年齢不詳。帽子製作と占いの名手。多くの公爵などを得意先に持つ。水晶玉占いでアルトリアの不思議な運命を予言した。
ランマル・モリ
ケンノスケポジション。アルトリアの後からダンデライオン一座に加わった、弓矢が得意な少年。両親とは死に別れ、いつか立派になって生き別れた弟を迎えに行くという夢がある。アルトリアに憧れている。からくりに興味が深い。
ディルムッド
ラファエルポジション。ダンデライオン一座の一員だった槍使いであり吟遊詩人。かつてはマックアート公爵に雇われていた騎士の一員だったがその家の娘に惚れられ、かけおちを強制されるが後に両思いに。しかし捕らえられ、騎士団を追放されたことで彼女が自殺してしまい、二度と人を愛さないと決めた。廃墟となったペンドラゴン孤児院でアルトリアと再会、アルトリアには明日へと羽ばたく翼があることを教える。
とりあえずここまで考えて疲れた
- Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.448 )
- 日時: 2015/02/05 14:59
- 名前: ナル姫 (ID: h9T9UkU2)
「……ったく……」
晴久は不服そうな顔で道中を歩いていた。連れている家来である鹿之助は、女之助と喧嘩している。
面白いものを見せてあげよう−−そんな言葉を仮面の策士から聞いたのは結構前の話である。主である元就の元に異端を自称する少女が現れたのはその少し前。人と異なる存在、英霊というものを晴久は知っていた。だからこそ、別に良いというのに、そんな事情知りもしない仮面はしつこい。英霊というものを知っているのだ、豊臣で見せられても新鮮味がないのだから、見たって自分は驚かないだろう。しかしそんな反応をすれば相手がつまらなそうな顔をするのは明白。とは言え、嘘で驚いた顔をする、と言うのもしたくないことではあった。
「……はぁ」
どうするかなぁ、と考えつつ、緑の生い茂る道を三人は進んだ。
「そろそろ起きないかディルムッド! 昼四つ(午前十時)の鐘が鳴ったぞ!」
「うぅ……いやだ、まだねる……」
「掻い巻きを離せ起きろ!」
掻い巻きは寝起きの青年の力の抜けた手からあっさり奪われ、渋々ながら起き上がった。全く、と溜息を吐き出したエミヤは掻い巻きを丁寧に畳む。一連の流れを見ていたクーが苦笑した。
「まぁまぁエミヤよぉ、良いじゃねぇか、もう少し優しくしてやっても」
「知ったことか! 良いかねディルムッド、君のためを思って叱っているのだぞ!」
「眠い……」
「話を聞け!」
朝から豊臣家は騒がしい。寝なくても魔力があれば大丈夫、ただし一度寝ると中々起きられないディルムッドは、毎朝の如くエミヤに叩き起こされていた。
「今日は半兵衛の誘いで尼子家の当主が来るといっただろう。呆れられるぞ。早く着替えて髪を整えろ」
「お前はディルムッドの母親かよ」
「断じて! 母親ではない!!」
クーとエミヤのやり取りの間に、ディルムッドは一瞬でいつもの装束に戻った。髪は普段に比べれば比較的纏まっていた。ただ一筋、左後頭部の髪が一筋変な方向に跳ねているのを除けば。とは言え、元々酷いくせっ毛である。これくらいなら許容範囲か、と判断したエミヤは、ディルムッドにそれを直せとは言わなかった。というか、直そうとしても直らない類だと思われる。
その時、城内がにわかに騒がしくなった。きっと客が来たのだろう。
「……くれぐれも、粗相のないようにな」
「いらっしゃい。楽しみにしてたんだよ」
「そうかい。で? 見せたいっていうのは何なんだよ?」
「……過去の英雄、かな。この国の人間ではないけれど」
予想通りの返答に溜息。まぁ、どんな面をしているのかということだけは楽しみにしておこうと、少し目を伏せた、その時。
「ちょ、ま、もう三日経ったのか!? ひっ、緋色ッ! 緋色ォォォォォォォォォッ!」
さっと、半兵衛が歩みを止め、溜息。何事かと思っていると、目の前をまず緑の装束を身に纏った青年が横切り、その直後沢山の侍女がその青年を追うように横切った。更にその直後、殴られたような音。三人が呆気にとられていると、ごめんごめんと半兵衛が苦笑いで言った。
「今のは……まぁ気にしないで」
「いや気になるぞ!?」
「気になるかい? 多分今顔腫れてるけど、それでも良ければ会わせるよ?」
「…………」
本人が腫れた顔で良いと言うか分からないためどうするか迷ったが、後ろの二人が興味津々だったため、結局彼は頷いた。
「ディルムッド、大丈夫かい?」
半兵衛が襖を開けると、混沌だった。
先ほどの青年が畳の上に俯せに倒れており、青い上下繋ぎの奇妙な服を来た青年が、侍女に持ち場へ戻るよう頼んでいた。
「だいじょばないです……」
綺麗な声だなぁ、というのがまず思ったこと。そのうちに侍女達は持ち場へ帰っていた。
「お、そいつらが客が?」
「あぁ、ディルムッドに興味があるってよ」
「え、俺ですか……」
そう言って体を起こし、自分たちの方を向いたその顔に、目を見張った。
−−すんごい、美青年。
何故か顔の右半分は腫れているが、それでも美しい。
三人は声も出せずに、その美しさに唖然としていた。
「……あの」
「あ、あぁ、悪い! ちょっと驚いただけなんだ」
「すっごーい! 凄い綺麗ですね!」
「うんうん! カッコイイ!」
「え、あの」
鹿之助と女之助が彼に近づく。容姿を褒められることには慣れているのか、彼は近づいてきた二人に少し戸惑うだけで照れたりはしない。
「何故興味を……」
「沢山の侍女に追いかけられたらそうなるよねぇ」
「は、はぁ」
感覚が分からないのか、首を傾げる。その時、一筋だけ変な方向に飛んだ髪を晴久は見付けた。寝起きか、と気付き、苦笑する。
「おいおい……寝癖が直ってねぇぞ?」
「え? あぁ、これですか。直らなくて……」
「櫛あるか? 直してやるよ」
「え、ありますが、しかし初対面の貴殿に」
「気にするなよ」
戸惑いつつディルムッドは彼に櫛を渡した。暫く彼がディルムッドの髪を弄る。そして。
「直ったぜ」
「え……えぇ!? 嘘!?」
「へぇー、すげぇな」
クーがディルムッドの髪をマジマジと見つめる。彼の寝癖は綺麗に直っていた。
「こいつ……鹿之助もくせっ毛だからな、直すのは慣れてる」
ぽんぽん、と少年の兜を叩く彼の、どこか勝ち誇ったような顔に苦笑。そういえば、と声を出す。
「貴殿、名は?」
「あぁ、言ってなかったな。俺は尼子晴久、尼子家の当主で、月山富田城の城主だ」
「ガッサントダジョウ?」
- Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.449 )
- 日時: 2015/02/05 15:12
- 名前: ナル姫 (ID: h9T9UkU2)
知らないのか、と少し意外に思う。顔だけで判断すれば、真面目で賢そうだと言う印象だったため、最初は豊臣家の教育の悪さを疑った。だがその後、クーが、中国地方にあるって言ってただろ、とディルムッドの頭を軽く叩く。
「忘れんじゃねぇぞ」
「うぅ、すみません……」
何だ、こっちの頭が弱いのか。
英霊についての詳しいことは知っていた。実際驚くことはなかったが、彼はこの翡翠に興味が湧いた。
「……大坂にいるのはこの二人だけなのか?」
「いや、もう二人いるよ。でも今一人は前田で教育中、一人は買い出し。前はもう一人剣士の女の子がいたんだけど、その子は島津へ行ってしまってね。ディルムッドはその子との手合わせを何より楽しみにしていたんだけど、中々会えないもんだから」
ふぅん、と頷くき、きちっと正座をして犬のようにこちらを見上げて来る美男子と、向かい合う形で方膝をつく。
「名は?」
「父称はオディナ、名はディルムッド。オディナ・ディルムッドと申します」
「……なぁオディナ。お前、俺の居城へ来ないか?」
「……へっ?」
「お前に興味が湧いたんだ。俺の城なら、ここよりは九州の島津に近いし……な? 良いだろ? クソジジイとか煩いのもいるけどよ、良い奴ばかりだぜ」
突然の誘いに戸惑い、半兵衛を見上げる。君が良いなら行っておいで、と言われ、取り合えず浅く頷いた。
「そうと決まれば、ディルムッドの魔力供給は任せたよ」
「え、それってどうすれば……?」
「彼の令呪を渡すからさ」
そして、秀吉から晴久にディルムッドの令呪が渡された。
「では、尼子晴久殿」
翡翠は彼にひざまづく。
「今より我が身は、貴殿の遣い魔としてお側に、主の御身をお守りいたします」
「……おう」
長居するわけにもいかず、三人は一人の英霊を連れてすぐに帰ることになった。道中で、彼は晴久に自分の説明をした。
「俺は、今より千二百年程前、この日ノ本より遠く離れた常春の国−−エリンという国に生まれました。育てて下さったのは妖精王のオェングスと言う愛と若さの神で、沢山の妖精にも世話になりました」
「俺は、騎士になる際、海の神であるマナナン様から二つの槍を授かりました。魔力を打ち消す『破魔の紅薔薇』と、治らない傷を作る『必滅の黄薔薇』です」
「他にも剣を二つ頂きましたが、槍兵として召還されたため、現世では使えませんでした」
陽気な話は、徐々に暗い雲を帯びていく。美しさのために姫に迫られ、償いとして裏切った主に命を差し出した最期へと、彼の話は続いた。
「……お前は……どうしてそんな女のために……」
「……彼女は、確かに我が儘だったけれど……心の底から俺を愛してくれたからです。大切な人です」
その明るい笑顔の裏に、何かが隠れている気がして。
数日後−−四人は宿に泊まった。とは言え旅費は厳しいためディルムッドには霊体化してもらい、実質三人分の賃金で泊まったのだが。
ディルムッドは、頑なに寝ようとしなかった。寝なくても魔力があれば平気なのもあるが、それ以上に、一度寝ると絶対起きられませんからと睡眠を拒否していた。
「ふぁぁ、もう寝ます……」
「お休みなさいませ鹿之助殿」
「おやすみなさーいディルさん」
「はい、女之助殿」
「寝たくなったら寝て良いんだぜ? 是が非でも起こすからよ」
「あ、主にそんなご迷惑は……」
三人が寝付いたのを確認し、やることのなくなったディルムッドは、意味はないが空を眺めた。綺麗な空。生前に見たのと同じ月。
「……」
『ほーらディルムッド! でけェ満月が出たなァ』
『ご覧ディルムッド。ほら、大きな月だねぇ』
『ご子息様! 今日、月がすごく明るいですよ!』
『おいディル! 来てみ! 月! すっげー綺麗だぞ!』
『ディルムッド、ご覧になって。綺麗な月が出ているわ。先程は夕日も綺麗だったし、きっと明日は晴れるでしょう』
ゆるゆると頭を振った。
今は、もう、誰もいないのだから。
- Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.450 )
- 日時: 2015/02/05 15:41
- 名前: ナル姫 (ID: h9T9UkU2)
−−嗚呼、哀れな弟。
−−父に母に振り回され、短すぎる命を絶たれ、復讐のために生み出された怨霊。
−−お前がそうなったのなら、俺はその運命を受け止めよう。
−−お前の苦しみを終わらせよう。
−−だから俺の命も絶ってくれ。
『しっかり目を開けてろ! 今爺さんが水を持ってくるから!』
−−違うんだ、オスカー……。
『早く、しろよ……ッ、次に水を零したら、ディルムッドを見殺したら、今度は俺がアンタを殺すッ!!』
−−これは運命なんだ、俺がそう望んだ事だ。
−−これで俺は、罪を償うのだ。
−−父が、俺に定めた運命なのだ。
−−あぁ、でも、お父様、お母様、フィン伯父様−−。
『おとうさまっ!』
『おかあさま、おかあさまをいじめないで! おとうさま!』
−−ジャァ、オマエガ、カワリニナルカ?
『家族になりましょう?』
−−俺は、本当の親を知らないのに。
−−親になんか、なっていいものか。
『駄目なわけが、ないじゃない』
−−もう、見えない。
−−死神の子供に、人の子の笑顔は眩しすぎる。
誰が知る?
親に愛されなかった頃の、俺の心を。
誰が語る?
ただ妖精と戯れた、それが幸せだった記憶を。
誰が聴く?
最強と恐れられ、その手を血に染めた男の話を。
誰が見る?
自分で作った家族との、幸福過ぎた時間を。
『私は、貴方のことをもっと知りたいわ』
『きっと、愛らしかったでしょうね、沢山の人に語りたいわ』
『毎日のように聞いていたわ、貴方の武勇を』
『私が、ずっと、見ているわ』
与えられた名は。
−−******、
−−ディナの子孫の、******、
−−死神ドゥンを父に持ち、
−−ヌアザの曾孫を母に持つ、
−−とても可愛い、妖精の護り子、
−−ディルムッド・オディナ。
「ッ−−!?」
「!? ど、どうしましたか主!?」
突然跳ね起きた晴久に、ディルムッドが小声で反応する。
息が荒い。おまけに嫌な汗も掻いている。
−−夢、か……。
「……何でもねぇさ、変な夢見ただけだ」
「……そう、ですか……」
心配そうに顔を覗き込んで来る彼に苦笑し、大丈夫だって、と言いかけて、声が口から出ない。
「−−っ、……なぁ、オディナ」
こんなこと、聞いて気持ちの良いことではないことはわかっている。話したいことでもないとはわかっている。
「はい?」
「……お前の家族の話を、まだ聞いていなかったな」
「……子供達の話ですか? ケルトには子供を養子に出す風習がありましたし、俺自身早く死んでしまったので、彼らがどうなったのかは知らな−−」
「あ、あぁ、違う、そうじゃなくて、だな」
一度唾を飲み込む。
「……お前の、実の両親の……話とか」
橙の目が、見開かれた。
「あ、あの、ほら、な! 俺も母親に虐待とかされたし嫌われてるし、戦国って結構そういうのあるけど、お前達の時代とかってどうなんだろうなーっていうか、その、な!」
ディルムッドが言葉を口から出さないためか、慌てて変な理由を繕ってしまうが、いくら相手が純粋な騎士でも、そんな言い訳は通用しない。そのうちディルムッドは目を伏せる。視線は、ディルムッド自身のカタカタと震える手に向けられていた。
「……夢って……何だ、そういう……事ですか」
……彼の中で、合点が言ったのだろう。自虐的に笑い、一度息を吐き出した。
「……聞いたって、気持ちの良い話ではありませんよ」
「……受け止める覚悟ぐらいできてんだよ」
「……」
そうですか、とゆっくり呟き、彼は口を開いた。
「……父は、ドゥンという名の、死神でした。本当に、本当に昔の……うっすらと残る記憶ですが、父は俺をとても可愛がってくれて……養子に出すのも、渋っていたと養父から聞きました。しかし……母が養父の執事と子を作ってしまうと、母を愛していた父は激怒し、生まれた子を圧死させてしまった、と聞いています。その子が、怨霊になり俺を殺すことになるのですが……」
「……」
「……父は変わってしまいました。毎日のように母や俺に暴力を振るいました……人を嬲っては嗤い、挙げ句に殺して……あんな輩が、父だとは思いたくなくなるほどに。……俺の主だったフィンは、母の兄でした。俺は幼い頃、フィン伯父様と呼んでいたのですが、大人になると、フィンと呼ぶようになっていて……まぁそれは、とにかく、フィンはそんな俺と母を哀れに思い、俺達を養父の元へ預け、父を二度と俺達に近づけないようにしました。母と不倫したロクさんは俺を殺そうとして養父の怒りを買い、追放されたのですが、母がそれを追って、出ていってしまって……以来、母とは会っていません。勿論、父とも」
ディルムッドは、左手の鎧を外した。
「……父が、俺が生まれた際につけた印です」
「……それは……」
「『生死誘導権』−−この印を付けた人の内臓や筋肉を、自在に取り出す事のできる術です。生涯、使われることはありませんでしたが……」
言いながらまた鎧を付けた。
「……生まれたとき、俺の目は赤かったのですが、あの死神の子供は嫌だと言うと、養父が色を変えてくれました。けれど、それだけです……結局俺は、死神の子供だ」
言い切り、静かな空間が訪れる。晴久は溜息をして、グシャリと乱暴にディルムッドの頭を撫でた。
「ばーか」
「あ、主……?」
「本当にそんな死神の子供だったら、そんな顔しねぇっての。確かに、血だけはどうにもならねぇけど、大切なのは心だろ。お前は、妖精王の子だよ」
「……」
「俺の城に来るんだろ? 来たら、慌ただしくてそんな事で落ち込んでる隙なんか与えられねぇぜ? 今のうちに、嫌なことは頭の中から追放しておけ。それと、そろそろ寝ろよ、安心しろ、蹴り飛ばしてでも起こす」
不敵な笑みで笑うと、ディルムッドもくしゃりと笑った。
「……はい!」
四人だと少し狭いが、その分だけ暖かい。
満月の夜、月山富田城までもうすぐだ。
- Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.451 )
- 日時: 2015/07/23 09:46
- 名前: ナル姫 (ID: OK6L9khJ)
さる方からオリキャラをお借りして
それが爆風に包まれながら姿を現した時、床には血が足れていた。
……何でだ。こんなに苦しい思いしたのに、どうして−−……自己嫌悪をし、泣きたくなる。ぐ、と奥歯を食い縛り、もう一度それを見る。呆れたように笑う俺を見て、何も知らない癖に、とそれに対する嫌悪も覚えているうちに、彼の意識は遠退いた。
*
うっすらと目を開けると、何か固いものの上にいた。冷たさに、地下倉庫の床だと悟る。少し視線を横にずらせば染み付いた血が見えて、昨日あれを召喚した場所にそのまま寝かせられていると気づいた。あの糞爺、と溜息を付きながら起き上がると、突然何か冷たいものが首筋に当てられた。
「うわぁっ!?」
「驚き過ぎだっての。おはようマスター、加減はどうだい?」
当てられたものは何かと思うと、水を吸ったタオルだった。近くに桶があり、中に水が入っているところを見ると、妹が用意してくれたのだろう。
「あ……ガーディアン……」
「お察しの通り、守りに特化した英霊だよ」
言いながら彼の身体を倒してタオルを置く。気を使ってくれているのか、とは思える程度の優しさでしかなかったけど。
にしても、と続け、彼女は彼を見下ろした。若干にやにやしながら、彼を観察するように。何なんだこいつは、と思うのだがなぜか声が出てこない。
「この桶持ってきた君によく似た女の子の方が、こういうのには向いてると思うんだけどなぁ」
あぁやっぱり、と半ば予想していたようなしていなかったような事を口にされ、胸の奥がちくりと痛むような感覚に襲われた。
「……仕方ないだろう、あの糞爺がリーゼには戦争をやらせないと言い出したのだから」
まぁ普通に考えれば、異質なことだとは思う。令呪が出たのにも関わらず、大事な家の継承者が死んでは困ると、妹に現れた戦争参加の権利は自分へ譲られた。裏を返せば、お前はいつでも死んでいいと、祖父に言われておるようなものなのだが。
「糞爺ってあれかい? 君をここに転がしておいたまま動かすなよって周りの従者さんに言ってた爺さん?
「……」
そんなこと知るか、と思うより前に、ふざけんなと額に青筋が浮かびそうになる。
「不満そうだねぇ、抗議でもしに行っちゃう?」
……まだ今は怠いから、と抗議を拒否。勿論、怠さもさることながらあの人会いたくないと言うのが1番の理由ではあるのだけど。
魔術回路は、嫌なものだった。妹の令呪が自分に移植されてから、この身体はかなりの無理を強いられた。刑務所に入れられた父を大量の金で引き取り、そのよく出来た魔術回路を俺へ移植する。あとは、用済みなので殺すだけ。肉親とは言え、クローンではあるまいのだから最初は全身が痛くて痛くて仕方なった。そんな中でも、とっくの昔に捨てたはずの魔術の練習もさせられ、ようやく英霊を召喚できる程度に魔術師として出来上がったのだった。才能は、相変わらずない。
きっと、戦争が終わる前に自分は死ぬのだろうと思う。たとえ生き残っても、ここまで無理をした身体を再びバスケに費やす事はできないだろう。とは言え元々弱い身体だ、去年から病を理由にバスケ活動を休止してはいるが、復帰は考えられない。最初は絶対に嫌だと泣き喚く勢いで拒否したものだが、ここまで事が運ばれてしまうともうどうでもよかった。
「まぁとにかくさ、マスター。どうせ僕には戦闘能力ないんだし、取り合えずステージだけは楽しんでおこうぜ?」
勝ち誇るような顔に、改めてとんでもないのを召喚してしまった、と思った。勿論、良い意味ではない。
互いに相手の事情なんか今は知ったこっちゃない、そんな主従はこれから、夜の町を駆ける事になる。
「あ、そうそう忘れてた、聞くまでもないことだけど、一応形式として言っておくかな。何か、格好つくしね?」
【 問おう、君が僕のマスターか 】
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