二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 短編小説 *BSR Fate*
- 日時: 2014/04/21 17:22
- 名前: ☆Milk☆ (ID: EM3IpZmD)
こんにちは!
題名とか親レスとかが色々変っちゃってごめんなさい(汗)
前は主にバサラとバサラクロスオーバー専用でしたが最近fateが増えてきたためfateも題名に加えちゃいました←
そんな感じに意味が行方を失った短編小説始まります
ごゆっくりどうぞ
※リクエスト受け付けてます。長くなりそうなリクエストや、あまりに抽象的なリクエストはバッサリ無視いたしますので悪しからず。
※荒らし、チェンメ、悪コメはご遠慮ください
※バサラは主に伊達軍、fateは槍兵と弓兵を偏愛してます
※私のオリジナル小説、『僕と家族と愛情と』とリンクしてる時も多々。
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- Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.387 )
- 日時: 2014/11/04 23:34
- 名前: ナル姫 (ID: CCQdUj5A)
感動系?が書きたくて思い付いたネタ
粗筋
『世界一おいしいレモネードを作ろう!』
面積は6.8平方キロメートル、人口三万人弱。イギリスの海外領地ジブラルタルの首都、ジブラルタルの郊外に、日本人が営む小さな診療所がある。規模こそ小さく設備も良いとは言えないが腕は確かで、その地域の人から信頼を得ている。
そんな診療所に通う数人の少年少女。彼らはそれぞれ抱える病気や障害で、肩身の狭い生活を送っていた。自分達に出来ることは何もない、と思っていたある日、診療所の待合室に置いてあったテレビで見た特集に心を引かれる。
それは、『アレックスレモネードスタンド』の話。アレックスレモネードスタンドは、癌のために八歳でこの世を去ったアメリカ人の少女、アレックス・スコットが始めたレモネードスタンドで、売上金を小児癌で苦しむ子供を助けるための資金にしていたレモネードスタンドだった。一杯たったの50セントで始めたレモネードスタンドの初日の売上は、何と2000ドルにもなり、今では全米に1000箇所以上も店があるらしい。
これなら自分達にでも出来るのではないか。そう思った彼らは、周りの人たちの協力を得て『世界一おいしいレモネード』の開発とアレックスのレモネードスタンド以上の功績を目指し
様々な努力を始める。
登場人物
エミヤ 27歳
診療所を営む日本人の青年。色黒で白髪のため外見からは日本人と判断が出来ない。皮肉屋だが根はお人よしで、彼の診療所に通う患者達が目指すレモネード作りにも何だかんだと協力している。昔自分を助けてくれた『じいさん』に憧れて診療所を立ち上げたらしい。
クー・フーリン 27歳
ジブラルタルに駐屯しているイギリスの兵士。おおらかで兄貴肌な男前。レモネードスタンドの立ち上げにも協力しており、今日も地域の平和を守る。エミヤとは喧嘩するほど仲が良い。ディルムッドの遠戚だが似てない。
ギルガメッシュ 24歳
同じくジブラルタルに駐屯しているイギリス兵。傲慢で偉そうな金色。だが何だかんだ人間臭く、何となく憎めない。アルトリアに一目惚れするが、ばっさりと断られた。高見の見物扱いでレモネードスタンドを見ているが協力してやりたいみたいな顔してる。
アルトリア・ペンドラゴン 15歳
喘息を患う少女。今はだいぶ症状が収まっているが、エミヤに言われて定期的に診療所に通う。愛らしく清楚な風貌だが、その見た目に反し男勝りな性格。ディルムッドやメドゥサとは仲が良く、三人でレモネードスタンドを立ち上げる。ギルガメッシュがうざい。普通の学校に通っている。
メドゥサ 17歳
目に障害を持つ少女。眼鏡をつけないと見えにくいが全く見えない訳でもなく、目薬と眼鏡で何とかなっている。この辺では使っている目薬を出してくれる病院がないが、街の病院は遠いためエミヤを通じて薬を受け取っている。アルトリア、ディルムッドとともにレモネードスタンドを立ち上げる。支援学校に通う。
ディルムッド・オディナ 16歳
幼い頃事故に遭い、足に後遺症を持つ少年。自力で歩けるのは数歩で、普段は車椅子。運が悪く車椅子が倒れたりして怪我が多いためエミヤにご厄介になる。アルトリア、メドゥサと共にレモネードスタンドを立ち上げる。最初は普通の学校に通っていたが、段差が障害になるため現在はメドゥサと同じ学校に通う。
施設
診療所
エミヤの経営する診療所。規模は小さく、設備も正直微妙。だがエミヤの腕は確かな為、子供から老人まで彼に信頼を寄せている。休日はなく、毎日程ほどに忙しい。
学校
アルトリアが通う普通学校は普通に普通の学校を想像していただければ。
支援学校はバリアフリーの学校。小中高が一緒の学校で、人数も少ないので違う学年の人が一緒に勉強したりしている。
レモネードスタンド
名前は決まっていない。エミヤとクーを巻き込んで『世界一おいしいレモネード』を目指して日々色々研究している。
- Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.388 )
- 日時: 2014/11/07 19:37
- 名前: ナル姫 (ID: X9vp/.hV)
「っ……先生すみません、うがいしてきます……」
「ん、あぁ、分かった」
急に立ち上がった少女の申し出に、教師は特に何かを気にした様子はなく頷いて許可した。
スライド式のドアはガラガラと音を立てて開き、同じ音を立てて閉まる。生徒はどんな目をしているだろう。恐らく、気にしてない生徒が多いとは思うが、それと同じくらい、『またか』、と思う生徒が多いだろう。
少女−−アルトリアは、生徒の目を想像だけしながら、水道のある場所へ向かった。
桃色の長い髪の少女は、授業が終わった後も熱心に黒板の字を写していた。勉強熱心な方ではない、寝ていて黒板を写していない訳でもない。中々見えないのだ。
目が疲れたのか、目薬を指す。見れば、目薬はもうあと少ししかなかった。また薬をもらいに行かなければ、と眼鏡をかけ直しながら思うのだった。
黒い癖っ毛の少年は退屈そうに体育の様子を見ていた。体育とは言え、人数も少ない、それも支援学校となると全校でも体育をまともにできるのは十数人だ。そして運動が好きな彼は、その十数人のうちに入っていない。
足が動けば、そう思うのは一度や二度ではない。幼い頃のように走り回りたいし、鉄棒や体操などもやってみたい。やりたいことは山積みだが、その殆どは出来ないことだ。
パラリンピックの様に、車椅子や義足によって走りたいわけではない。彼は自分の足を動かしたかった。
「ほら、目薬だメドゥサ。値段はいつも通りな」
「ありがとう。助かるわ」
「エミヤ、大丈夫だと言っているでしょう」
「そんなことを言って悪化しても知らんからなアルトリア……だがまぁ、問題なさそうだ。ディルムッドはこう……諦めろ」
「……俺だけ短くないか」
日曜日、春のうららの昼下がり。小さな診療所に集まった少年少女は、特に待っている患者もいないと言うことで待合室を占領−−もとい、そこでだらけながらエミヤと話をしていた。
エミヤとしても暇ではあるし何ら問題もないのだが、昼飯くらい食べさせて欲しい。因みに自宅で作ってきた弁当は、大食いの金髪少女によって着々と中身を減らしていた。全く、収まっているとは言え喘息を患っていると言うのに、この異常な食欲は何処から湧き、この細い身体の何処に食べたものは収納されるのだろう……と、そこまで考えて思い出す。
「そうだ忘れるところだった。ディルムッド、今日の昼食を聞こうか?」
ギクリ、と言った感じでディルムッド目を反らす。まぁ、予想できていた反応なのだが。
「……君は……炭水化物を必ず摂るように何度注意すれば聞いてくれるのかね? で、今日の昼食は?」
「……や、野菜ジュース……ちょ、ま、いたたたたい! 痛い!」
ぎゅいーっと耳を引っ張る。離すと、痛そうに引っ張られた耳を押さえた。
「君は馬鹿なのか! ただでさえ脂肪が足りていないというのにこれ以上脂肪分以外を摂取してどうする!」
「わ、分かったよ気をつけるって……でも昼って腹減らないだろ?」
「アルトリアの燃費の悪さも考え物だが君の燃費の良さも同じくだぞ……」
呆れ気味にエミヤは言う。この三人でまともな食生活をしているのは結局メドゥサだけなのか。と、そこに近所に住む年寄りの女性が診療所の戸を叩いた。
「失礼します、あらあら、四人でお話していたの?」
柔らかく笑う彼女に、ディルムッドとアルトリアだけはい!と元気に返事。対してエミヤは、何がお話だ、と溜息。そんなエミヤを見てメドゥサが肩を竦める。
「明らかに医者の昼休みを邪魔しておいて何がお話だね……さて、午後の仕事の始まりだ。君達も帰りたまえ」
「了解だ。ご馳走様でした」
「アルトリア、君は私の弁当を食べた責任を持ってハンバーガーを買ってこい」
「えっ」
コインを渡すエミヤ。まぁ仕方ない、とアルトリアはコインを受けとった。
「行こうメドゥサ、ディルムッド」
「道連れのつもりかしら?」
「マジで?」
口では面倒臭がりながらも付いていく当たり、二人も大概お人よしだ。
マクドナルドで適当にセット物を買いエミヤに届けると、お釣りを貰うことが出来た……とは言え、三人で山分けすると一人一つガムが買える程度の値段なのだが。
「メドゥサ、私はディルムッドを送って来る」
「えぇ、分かったわ」
「ではな、メドゥサ」
別れの挨拶を交わし、それぞれの帰路を行く。アルトリアとディルムッドは家の方向が同じだった。
夕焼けに染められて自然と会話がなくなる。今日もだ。毎週毎週、日曜日となるとあそこに集まって、馬鹿げた会話をして、帰り道になると虚しさだけが募って、何も言う気がなくなってしまう。車椅子だけがカラカラと音を立て、夕暮れの寂しさをより一層引き立てていた。
「……アルトリア、重くないか?」
「重いと言わせたければ、もう少し肉を食べることだな」
にやッという表情で皮肉っぽく返され、思わず苦笑い。
「……エミヤ、街の方の大病院からオファーが来ているらしい」
「あぁ……父さんから聞いた」
「ディルムッドもか……でも……何度も断ってるって」
勿論それは、この地域で彼を頼っている人を裏切らないためであって、その想いには何とか報いたいと思っても。
「……私達には何も出来ないんだよな」
「……」
喘息、目の障害、動かない足。世話になる側の彼らは、できることは何もないと思っていた。
「……何とか、役に立ちたいな」
「……あぁ」
何も出来ないと思っておきながら。
- Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.389 )
- 日時: 2014/11/09 10:36
- 名前: ナル姫 (ID: 4z3SNsbs)
キーッ、ガシャンッ!
十年前、派手な音を立てて大型のトラックと乗用車が交差点でぶつかった。原因は、トラックの運転手の居眠り運転だった。その交差点は緑が多く普段静かな場所だった。それが皮肉にも、事故の凄惨さをいっそう引き立てていた。乗用車に乗っていた三人のうち助かったのは一人。少年は両親と動く足を失い、代わりに養父と車椅子を手に入れた。
全く嬉しくなどなかった。許せなかった。涙が止まらなかった。毎晩のように悪夢を見た。歩けないことを馬鹿にされた。
少年の足は動かない。アクセルとブレーキが踏めないのに車の運転ができるはずがない。近年、勝手に運転してくれる車などが開発されているが、それでも彼は車を嫌悪した。必要最低限乗りたくなかった。もし運転できても、居眠り運転は絶対にしないと彼は誓っている−−のだが。
「寝ているではないか」
顔を真っ赤にして両手で覆い隠すディルムッド。
「仕方ないでしょうエミヤ。調度良い気温ですし、日の光は柔らかいですし、眠くもなります」
「車椅子を押しているのは私かアルトリアだしね」
「止めてくれ、慰めないでくれ……」
蚊の泣くような声でディルムッドが言う。まぁ、エミヤとしても分かってからかっているのだが。
「まぁ、それはとにかくだ。何をしに来たのだね?」
「遊びに」
「……君達はここを何だと思っているのだね……」
「良いではないですか。暇そうですし」
言いながらアルトリアはテレビをつけた。何か面白そうな番組はないだろうかと思うが、この時間帯はワイドショーくらいしかやっていない。
と、ある番組でリモコンを弄る手を止める。
「……アレックス……レモネードスタンド……」
「何? これ」
「知らないのかね?」
エミヤが尋ねる。三人は頷いた。どうやら番組はアレックスについて説明しているようで、エミヤは三人に、見ればわかると言った。
見ているうちに、三人は目をテレビに釘付けにし、声も出せなくなっていた。時に固唾を飲み、知らない少女を見ていた。自分達より幼く小さな身体で、自分達より重い病で−−自分達より逞しく明るく生きた、少女の短い一生を、その少女が、現在のアメリカに与えた影響を。
番組のそのコーナーが終わった後も、三人は暫く何も言えずにいたが、エミヤが口を開き沈黙を終わらせた。
「……君達は」
「……」
「自分達はどうせ、社会的弱者だと……世話を見られる側の存在だと……そう思っていないかね?」
エミヤは続ける。
「図星だと思うなら、考えたまえ。その中には、彼女のような存在もいるということを。彼女だって何も、彼女一人でレモネードを売っていた訳ではない。周りの協力があってこそだ。君達はどうだ? メドゥサ、アルトリア、君達には両親がいる。ディルムッド、君には養父がいる。何より」
堪えられなくて逃げるか、それとも、最後まで聞くかは、この三人が決めることだ。
「君達はいつも三人一緒ではないか」
−−そうだ。
自分達は一人ではない。抱えているものはそれぞれ違う。お互いの苦労を完全にわかりきっている訳ではない。それでも、彼らが一緒にいるのは。
「……メドゥサ、ディルムッド」
「……何?」
「……やりましょう、レモネードスタンド! それで、売上を寄付して、少しでも社会の役に立ちましょう! 二番煎じになってしまうけど、それでも何もしないよりは……!」
「……言うと思ったわ。えぇ、そうしましょう!」
「……でもまさか、普通に作って売るだけなんて言わないだろう?」
え?と彼に振り向くアルトリアとメドゥサ。ディルムッドは形の良い唇を綻ばせた。
「どうせ作るなら、世界一美味しいレモネードを作ろうじゃないか!」
「……! 賛成だディルムッド!」
「えぇ、半端なことはしたくないもの!」
エミヤは三人のやり取りを、やれやれと言った様子で見ていた。これでようやく、三人はここから離れるだろうと思った。勿論、ここから離すために先ほどの番組を見せた訳ではないが、ここにいつまでも依存していても三人のためにならない。と、思った矢先だった。
「全部寄付しないで、一部はエミヤに回しましょう!」
「えっ?」
思わず声を出す。
「これまでもこれからも世話になる礼です! それなりに資金が集まれば、もっと良い医療器具も買えますし!」
「い、いや私は……」
そんな気遣いはいらない、と言おうとしたのだが、三人はもう聞いていない。予定を計画しているようだった。
少し気恥ずかしい思いで、エミヤはくしゃりと頭を掻いた。そして咳ばらいをする。三人が振り向いた。
「エミヤ?」
「……君達の家は近いのか? 遠いのか?」
「? 私とディルムッドの家は隣ですが、メドゥサはここから帰ると途中で反対方向になります」
「まぁ、少し遠いわね」
「……そうか、では集まりづらいな、どこの家にも」
「?」
「君達が一番集まりやすい家の台所を使うと良い。勿論、この診療所にも台所はあるぞ」
三人の顔がパァッと輝いた。
「感謝しますエミヤ!」
「ありがたいわ!」
「協力してくれるのか!?」
ここにも寄付してくれるなら仕方ないから貸すだけだ、というような表情を作っても、感謝を述べられる照れ顔までは隠せない。
ここに始まったレモネードスタンドの計画に、ジブラルタルに駐屯する二人のイギリス兵が巻き込まれるのは、もう少し後の話。
- Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.390 )
- 日時: 2014/11/09 21:43
- 名前: ナル姫 (ID: ynZeEQwF)
「さぁ妖精達よ、仕事の時間だ」
「貴殿に愛と若さを。その想いは報われるであろう」
「お前は私の子だ、死神に奪わせたりはせんよ」
クラス:キャスター
身長:189cm、体重:80kg
血液型:不明
誕生日:不明
属性:中立・善
イメージカラー:純白
好きなもの:養子、愛、福祉
苦手なもの:養子の実父
パラメータ
筋力:C
耐久:B
敏捷:C-
魔力:A+
幸運:A
保有スキル
神性:A
知名度高めの神。また、ダーナ神族の最高神ダグザの息子。
宝具
妖精使役 A++
死神ディルやブルベンと同じものだが、格が全く違う。使える妖精の種類や量も、二人の比ではない。
愛の守護 A
ポケモンのメロメロみたいなもん。対抗可能だが、結構高等魔術でないと難しい。また、女子にしか効かない。
若き身体 B
相手の身体を子供の身体にする。抵抗不能。身体を子供にするだけで、精神にまでは作用しない。
真名は愛と若さの神でありディルムッド・オディナの養父、そして妖精王であるオェングス。ディルムッドに黒子をつけた張本人である。
前世、ディルムッドを溺愛。彼の死語も死体に生命を吹き込んで毎晩話をしていたというほど養子大好き。
綺麗な羽がある。茶色いボブ。
戦って血を流すつもりはないので、相手を子供にして他の人とぶつかって潰れてくれるのを待つという何気にえげつない方法を取る。さすが実父から王宮を奪った男。
ディルムッドは彼の親ばかぶりに困っているものの、何だかんだ親孝行している。彼が素を曝せる数少ない相手である。
- Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.391 )
- 日時: 2014/11/10 18:11
- 名前: ナル姫 (ID: h/hwr32G)
「邪魔するぜエミヤ」
「あぁ、クーか。久しいな」
客と入れ違いになったのはイギリス兵のクーだった。と、そこにいつもの三人が乱入する。メドゥサは、袋いっぱいのレモンと砂糖、ディルムッドはミネラルウォーターを抱えて。
「お邪魔しますよエミヤ」
「あぁ来たのかね。キッチンは奥だ、あまり汚さぬようにな」
「了解です」
クーは頭上に疑問符を浮かべ、キョトンとして三人を見る。そこでディルムッドがクーに気付き、こんにちは、と言った。ディルムッドとクーは遠戚だ。とは言え、ディルムッドの養父の遠戚であるため、ディルムッドと直接の繋がりはない。何度か会ったことはあるが、ディルムッドは彼に対して他人行儀な態度を取っていた。
「あぁ、おう……お前ら何してんだ?」
「レモネードを作るのです」
「レモネード?」
メドゥサは、自分達がレモネードスタンドを立ち上げる事になったいきさつを話した。なるほどな、とクーは頷く。
「そういうことなら応援はするぜ」
「それはつまり手伝ってくれるということですよね?」
言ったな、というようにニヤリと口角をあげる。途端沸き上がる嫌な予感に冷や汗が止まらない。
「……何を……しろと?」
「毒味役です」
「お前ら何作るつもり!?」
「何故味見と言わないんだアルトリア……」
脱力気味にディルムッドが突っ込む。
「まぁ冗談として、エミヤは診療所の仕事が忙しいですし、ディルムッドは力作業出来ませんし、私とメドゥサは大工仕事なんか慣れてませんので、暇なときで良いのでスタンド作りのお手伝いをお願いします」
「うぅ、面目ない……」
気にするな、と声をかけるアルトリア。クーは顎に手を当て考える。
「……構わねぇけどよ、俺も大工仕事なんか餓鬼のころ少しやった程度だぞ?」
「問題ありません。私達はその少しすらないので」
「……それは寧ろ問題ではないかね」
エミヤがぽつりと言うが、聞こえてないのか無視なのか。
とにもかくにもレモネードを作らねば始まらない、と三人は診療所のキッチンへ向かった。クーも誘ったが、ノンビリしている暇もそんなにないらしい。
「ではお借りしますエミヤ」
「あぁ」
エミヤが返事するのと同時に、客が入って来る。エミヤは聴診器を首にかけ、診察室へ客を招いた。
「基本的な材料はレモンに砂糖、それから氷と水。それだけ」
「ホットレモネードを作るならお湯もね」
レモネードスタンドは基本夏に開かれる。しかし、そんな常識に縛られる三人ではない。
「勿論春夏秋冬開きます!」
「うん、だよなー……」
春夏秋冬開くなら冷たいレモネードだけではいけない。冬にはホットレモネードも必要となる。氷水とお湯では入れるべき砂糖の量も変わって来るだろうし、飲み易さを考えればベストな形状はマクドナルドのドリンクのようなものだ。子供にはストローも用意するべきだし、大きさも三種類くらいは欲しい。
「冬はホットだけで良いかしら」
「んー、いや、アイスもいるだろう。ホットが好きじゃない人もいるし、公園でランニングする人とか結構いるしな」
「秋はだんだんホットを多めに、春は段々アイスを多めに、ですね。夏はアイスだけで大丈夫でしょうか」
「そうね、夏にホットは飲みたくないわ」
ディルムッドが出てきた意見を綺麗な字で纏める。その間に、二人はレモネードの作り方を検索していた。
レモネードは簡単に作れる。レモンをお湯で洗い、綺麗に皮を剥ぎ、絞って砂糖と混ぜる。さらに熱湯を加え、しっかり掻き混ぜたあとは冷蔵庫で一晩寝かす。翌日、こして冷やせば完成だ。
「砂糖ではなく蜂蜜でも良いんだよな」
「蜂蜜の方がとろみはあるかもね」
「……では、夏は砂糖で冬は蜂蜜というのは?」
「……まぁ、今日は蜂蜜がないし取り合えず作ってみよう。話はそれからだ」
彼らは三種類のレモネードを作った。砂糖の量を少しずつ変えて。翌日、試飲してみたのだが……。
「っっ! すっぱ! あと苦ッ!」
「……これも、ちょっと苦いわね」
「うーん、これも……」
二人もディルムッドが飲んだものを飲んでみた。これが一番砂糖が少ないため、すっぱいのはわかる。しかし何故苦いのが共通しているのだろうか。
「砂糖が足りないのでしょうか」
「んー……」
「でも結構入れたわよ?」
日が傾いて来た春。レモネードの完成はまだまだ遠そうだった。
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