二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 短編小説 *BSR Fate*
- 日時: 2014/04/21 17:22
- 名前: ☆Milk☆ (ID: EM3IpZmD)
こんにちは!
題名とか親レスとかが色々変っちゃってごめんなさい(汗)
前は主にバサラとバサラクロスオーバー専用でしたが最近fateが増えてきたためfateも題名に加えちゃいました←
そんな感じに意味が行方を失った短編小説始まります
ごゆっくりどうぞ
※リクエスト受け付けてます。長くなりそうなリクエストや、あまりに抽象的なリクエストはバッサリ無視いたしますので悪しからず。
※荒らし、チェンメ、悪コメはご遠慮ください
※バサラは主に伊達軍、fateは槍兵と弓兵を偏愛してます
※私のオリジナル小説、『僕と家族と愛情と』とリンクしてる時も多々。
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- Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.407 )
- 日時: 2014/11/28 13:53
- 名前: ナル姫 (ID: ib99WOwr)
死神とトリックマスターが去った後、目を覚ましたセイバー達は一度拠点へ移動した。ランサーは暫く目を覚まさず少し焦ったが、そのうち目を覚ました。今一度策を練り直さなければ……となるのだが……。
「まずあの死神に加えてトリックマスターが参加を始めた。これはまずいぜ。あいつら、どっちも規格外だ」
「うぅ……このマーキングさえなければ……ん?」
ふと、ディルムッドが何かに気付いた。何かあったのかとアイリスフィールとセイバー、晴久が彼に視線を集める。ディルムッドは、セイバーの右手を取った。
「セイバー、右手に何か−−!」
いつの間にだろうか、セイバーの右手の甲に、ランサーと同じ模様が出来ていた。
「え、な、な、そんなっ……!!」
「お、落ち着けセイバー。なんか、気持ち悪かったりしないか? 鼓動はちゃんとあるか?」
「……あ、ある、気持ち悪くもない……」
「なら、まだ何も取られてない、筈……それに一定距離離れていればあの技は使えない」
だがこれは非常にまずい。サーヴァント二人がこの状況では確実に負けてしまう。
「なぁオディナ、何か解決法ねぇのか?」
「……恐らく、セイバーの模様は即興で作られましたものです……もしかしたら、外せる可能性も……ないとは限りません。俺のは俺の力では外せませんが」
「え!?」
自信はないのか、目を伏せてランサーは続けた。
「一応、あれの子供なので……外し方は教わっています。ですが、俺は今ランサーですし、前世でも騎士でしたのでやったこともないし、できるかどうか……」
「や、やってみるだけやってみてくれないかしら……」
アイリスフィールがランサーの手を掴んで懇願する。ディルムッドは溜息を吐き出しながら頷いた。セイバー、右手を、と言い、彼女の右手の甲を上に、自らの左手で手を取った。右手をセイバーの手の上に翳す。敷いたままの布団の上に座る。
「……主、出来るだけ沢山の魔力をお願いします」
「お、おう」
一度深呼吸し、手に魔力を集中させる。
「−−死の神の子の名を以って命じる、かの者に蔓延る死の呪い、かの者を縛る死の傷よ……其の呪縛から、かの者を解放せよ……呪いの印は、元の掌る、神の下へ……」
記憶が曖昧で思い出せないのか、それとも呪文が途切れるほど印を消すのは疲労と苦痛を伴うのか、あるいはその両方なのか−−いや、恐らく後者だろう。段々と額には脂汗が滲み、掌に纏われる魔力が強くなっていく。
「かの、者はっ……未だ、死すべ、き……者で、ないこと、を表す……すみや、かにっ……在るべき、所へ……入り、己が、主の……命を……待てっ!」
「っ!」
バチンッと魔力が弾けた。セイバーの手を見てみると、死神のマーキングは綺麗に消えていた。安心したのか、ランサーは脱力して布団へ倒れ込む。
「……凄い」
「こんなこと出来たのか、オディナ……」
「……じっくり、作られて……いない印、なら……」
力無くへらりと笑う。その顔に苦笑、ゆっくり休め、と聞こえた声を最後に、ランサーは寝息を立てはじめた。
「俺も少し寝るわ……」
「えぇ、沢山魔力を送ったものね、ゆっくりお休みになって」
アイリスフィールの言葉に頷き、晴久も眠りはじめた。
「よォ、ただいま戻ったぜマスター?」
「遅かったわねキャスター」
「ん? まァ面白い奴見つけたんでなァ……ま、あれで死ぬとは思っちゃいねェけど……鎌が効かなかった訳だしな」
「……面倒臭い相手のようね。楽しむのは構わないけど、あの槍兵は必ず殺すのよね?」
「あ? あったりめェだろォ? でもよ、マスター、あの餓鬼は最後に残して−−」
そこまで言って、何かに気がついたように遠くを見た。視線の方向は、まさにセイバー達が拠点としている屋敷がある方向だった。
「……余計なことしやがったな……まさか、呪文覚えてやがるとは思わなかったが。教えなきゃ良かったわ」
「……な、何、何か」
「あぁいや、あの騎士殺すのには何の支障もねェよ」
「……そう」
「はっ、マスターは心配性だなァ? 食べてェくらいだ」
「冗談は御止しなさい」
「冗談だと思うか? 息子の嫁を襲った俺が?」
にやりと笑い、マスターである女性に赤い瞳を向けた。
「ふぅん、あの坊や、面白いこと出来るのね」
「引き込めば有利に働くはずですよ、彼は」
「最初あれの子供だと言われたときは正直信じられなかったけれど……なるほど、印を消せるのね。可愛いお顔の、小さな小さな死神さん。私に相応しいと思わない、芳?」
「えぇ、とても。しかし今はセイバーがいて危険ですので、機を待ちましょう。たとえばそう、御父上を相手に悪戦苦闘しているところとか」
「そうね、あぁ、楽しみになってきたわ。鎌なら私も、負けないし」
−−子供が……泣いて……喚いてる?
『ねぇ、まって! ねぇ、まってよ、ねぇ! ねぇまって、おかあさまっ! おかあさまぁっ!』
『−−ゴメンねディルムッド。お母様はもう、ここにはいられないの……愛しい人がいるの』
『やだ、やだやだやだっ! いかないでおかあさま!』
『……ゴメンね』
『いやだっ』
『大丈夫、お母様は行ってしまうけど、お父様は貴方と一緒。左手を見てご覧なさい。その黒い印がある限り、お父様は貴方と一緒なのよ……良いです事、大きくなったら、伯父様を頼りなさい。貴方は立派な騎士になれるわ。それまで、オェングス様の元で良い子にしているのですよ……泣かないの、男の子でしょう? さぁ、そろそろ行かなくては……いつか会えるわ、ディルムッド−−またね』
『−−っ、やだ……やだ、なんで、どうして、いかないで、おかあさま!』
『おかあさまぁっ!!』
「−−!」
ハッと目が覚めた。
「……夢……」
冬だと言うのに嫌な汗で服が濡れて気持ちが悪い。自分の事を考えてか、カーテンは閉めてあるが、時計を見るともう昼時だ。ランサーが寝ていた布団には、今は誰もいない。
「……」
今のは間違いなく、ランサーの前世の記憶だ。恐らくあれを最後に、一生会うことはなかった母親の夢。それが、晴久の母親のようにヒステリックな女性なら、ディルムッド自身何も気にすることはなかっただろう。だが彼の母親は、不倫をしたと言うこと以外は、ごく普通の母親なのだ。
「……何も分からねぇ子供置いてくんじゃねぇよ……」
言った瞬間、襖が開く。
「主、お目覚めになられましたか!」
「あぁ、おう……」
起き上がる。ふんわりと良い匂いがした。
「簡素な物ですが食事が出来ております、食欲がありましたら是非」
「あ、おう。食う。つかお前作れるのか、スゲェな」
「別段凄くは……先程てれびで『三分クッキング』なるものがやっておりまして、材料があったのであとは見よう見まねで作っただけです」
そっちのがスゲェよ、と心の底から思ったが、苦笑するだけで何も言わない晴久だった。
- Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.408 )
- 日時: 2014/11/27 22:01
- 名前: ナル姫 (ID: yvG0.ccx)
「とっとっとー、今日は誰を殺すかなー。んー、あのトリックマスターは面倒臭ェし……糞騎士は最後に残しておきたいし、と」
今日は、等と言っているが、実際彼は一人も殺していない。存分に苦しむ様を愉しんでから殺そうとするため、死ぬ間際のとこらまで攻めて、あとは逃していた。勿論、一番傷つけて楽しいのは実子だ。しかし、傷つけすぎてそろそろ呆気なく死んでしまいそうなのも事実ではある。
その時、背後に気配を感じた。
「……よォ、今宵は誰だい、トリックマスター?」
「レイチェルと名乗るわ、死神」
「……はーん、なるほど、絶世の美女……膨れた女か、赤の女王と言ったところか?」
振り向いて尋ねた。
「答えてあげる、赤の女王よ」
「ほゥ、これはこれは御見知りおきを、女王サマ……と、ダブル騎士も来たのか?」
キャスターが体を捻り後ろを見る。セイバーとランサーは彼を睨みつけていた。
「……これはあれか? 俺、孤立無援状態? うわー、やべー」
「無駄に口だけ立つな」
「うるせェぞ? あ、おいこら糞餓鬼、テメェだろセイバーにつけたマーク消したの」
「……察知できるのか、知らなかった」
傍観するつもりか、赤の女王はすっと後ろへ下がった。死神は鎌を、ランサーは槍を、セイバーは透明な剣を構える。
「行くぞ、死神ドゥン!」
「は、来いよ! 今までの二の舞だがなァ!」
セイバーの透明の剣に対応しながら、ランサーの槍も確実にかわす。魔力のない鎌を大きく振り回すと、二人は飛びのけた。
「どうしたコラ? 俺に近付くことも出来ねェじゃねェか。昨日よりは威勢が良いけどな……何か良いことでもあったのか?」
「ランサーが作ってくれたご飯がおいしかったからな! 明日も作ってくれランサー」
「材料があったらな!」
「はっ、明日の飯の約束か? 仲が良くて何よりだ、結婚しっちまえ!」
言いながら走り、上から鎌を振り下ろす。横に避け、出来た隙を突く。
「破魔の紅薔薇ッ!!」
「ぐっ!」
−−異変を感じた。普段なら鎌で防ぐなりなんなりして傷を避けるはずなのに、今日は当たった。だが理由を考えている暇はない。次の攻撃へ移るが、それは避けられた。セイバーの攻撃も防がれる。
「チッ……やってくれたなァ」
鎌を構え直す死神。ランサーも構え直した。そして、急に何か思いついたように口角をあげる。
「……分かった、お前、マスターと上手くやってないだろ?」
「……あ?」
「昨日トリックマスターとやってちょっとダメージ受けたか? それも満足に治して貰えてないんだろ?」
確信した顔に、口だけ見える顔がつまらなそうになる。
「……うるせェな」
「ビンゴ!」
言うのと同時に跳ねる。ヒュンッと槍を突き出した。
「チッ」
「こちらも行くぞ、死神!」
金属が弾き合う。赤の女王は面白そうにそれを見ていた。
押されているように見える死神だが、勿論切り札がある。まだ楽しむつもりか、それを使おうとはしない。剣と槍の猛攻を防ぐ中、遂にランサーの黄色い槍が、その仮面に届き、パキンと音を立てて仮面が割れた−−。
カランカランと二つに割れた仮面が地面に落ちる。割れた仮面の下から覗いたのは、ランサーと同じ顔だった、ただ、白くて癖のない髪と、赤い瞳を除いては。
「……ぶっ殺す」
遂に死神は麻袋を取り出した。まずい、と思ったときにはもう遅い。全身に痛みが一瞬で走る。
「が、あああああああッ!!」
「ランサー!」
「油断すんなよ騎士王とやらッ」
ギィィンッと大きな音を立てて金属が交わる。弾き、また交わった。
「くっ……!」
「せいば……っ……がっ、は……!?」
一気に形勢が逆転する。つかつかと死神はランサーに歩みより、その頭を踏み付けた。
「あー、腹立つわ、オメェ……最後に取っておこうと思ったが撤回だ。ディルムッド、テメェを先に殺す」
「ぐっ、はっ……」
「風王鉄槌ッ!」
「っと」
後ろからの攻撃を軽く避け、ディルムッドから離れる。
「お前の髪は本当、あの女にそっくりだな……腹立つんだよなァその髪の色と言い癖と言いよォ!」
「ぐっ、あ、あああッ!」
握られた麻袋。だが、ギリギリ潰されはしない。
「しっかりしろ、ランサー!」
「は、しっかりしろたァ……アンタはアンタで無茶言うなァ、あん?」
ぎり、と歯ぎしりをする。私が何とかしなければ、という危機感で、セイバーは押し潰されそうだった。痛みが漸く引いて来たのか、ランサーが立ち上がる。
「……違う、だろ……」
「……あ?」
「ランサー……?」
「アンタが……怒ってんのは……ロクだろ……」
「……何だ、糞餓鬼」
「腹立つ腹立つって……そんなこと言ってるが、アンタが本当に腹立ってる相手はお母様じゃなくて、お母様をたぶらかしたロクだ! 違うかッ!?」
口から血を垂らしながら、ランサーは叫んだ。
「アンタはお母様を心の底から愛してた! だからロクを恨んだ! ロクに似ているあの子を殺した! ロクと不倫したお母様もアンタは恨んだ! けれどお母様にあまり乱暴は出来なくて、アンタは代わりに俺に暴力を振るった! そうだろ!?」
「ッ−−うるせェ糞餓鬼がァッ!!」
ランサーの左手の甲が光る。
「−−!? か、は、あ、ああっ、あ……!?」
「ランサー!?」
ランサーの体からどんどん肉が奪われていく。ガクガクと痙攣するランサーに、セイバーは何もすることが出来なかった。
「たかが子供の分際で知った風な口利いてんじゃねェぞ! 伯父の嫁と駆け落ちして! 優しい養父に間を取り持って貰って漸く認めて貰えただけの餓鬼が! そうか、そんなに奪って欲しけりゃ内臓全部奪ってやるよ! 筋肉も骨も! 空になっちまいなァ!」
ばっと、その手から袋が奪われた。
「……やっぱり生きてやがったな、芳……とか言ったか?」
「えぇ、ふふふ」
芳はその袋を女王へ渡す。女王は妖艶な笑みを浮かべ、芳を褒めた。
「では私達はその辺で。槍兵の坊や、内臓が欲しければこっちへおいでなさい」
ランサーは、ぼやける視界の焦点を一生懸命合わせようとしながら、時折口から、ヒュウ、と音を漏らすだけだった。
宵闇へ消え去った女王の笑い声が、いつまでも響いていた。
- Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.409 )
- 日時: 2014/11/30 17:45
- 名前: ナル姫 (ID: X9vp/.hV)
既に日が昇りかけていた。
「オディナっ……おいオディナ!」
虚に渡されたものを眺めるランサーは、急にハッとして主に顔を向けた。
「お前何考えてんだ! あんな女のためにっ……」
「お、落ち着いて晴久さん! ランサーはほら、あの死神を倒すには多くの人手が必要だと思ったのよ。内臓が戻れば自分も戦えるし、ね?」
同意を持ちかけるようにアイリスフィールが言うが、決して頷けることではなかった。意識の薄れる中で、ただ、従わなければならないという思いだけが思考を支配した。怒りを含めた瞳を自分に向ける晴久を見て思う。何故この人は怒っているのだろう。あの女性には従うのが道理ではないか。自分は正しい選択をしたのに、何をそんなに怒る?
「……おい、ランサー」
オディナ、ではなくランサーとクラスで呼ばれた意味など、今の彼にはどうでもよかった。
「答えろランサーッ! お前は本当に……本当にアインツベルンが言ったように、人手が欲しいから了承したのか!?」
「……いえ」
「っ……ならっ……」
思わず胸倉を掴み上げ、まだ弱々しい遣い魔の瞳を見て−−息を飲み、手を離した。何故自分が怒られているのか理解が出来ていなかったのだ、その槍使いは。大切そうに、でも蓋は閉じないように、レイチェルと名乗った女王から貰ったものを持ちながら、どうして怒るのですか、わかりませんと、目で切に訴える彼を見て、怒気を失うのと同時に、恐怖を覚えた。違う。こいつは……こいつは俺の知ってるオディナじゃない。
「……お前……誰だ……?」
「え……?」
「お前は……お前はオディナじゃねぇ! 俺の知ってるオディナはこんな奴じゃねぇッ!!」
「あっ、主っ……?」
「答えろ! お前は誰だ!! オディナの身体を使って何がしてぇんだ!?」
「は、晴久さんっ!」
ランサーの肩を掴み揺さぶる。慌ててセイバーとアイリスフィールが止めに入り、晴久をランサーから引き剥がした。
「一度、帰りましょう? きっと疲れているのよ、仕方ないわ」
「……」
不服そうだったが、晴久は頷いた。ランサーは皆に従うつもりなのか何も反応せず、セイバーは少し落ち着いた状況に胸を撫で下ろした。
帰るとき、全員が無言だった。拠点に着いたときは既に朝だったが、全員が睡眠を取った−−ただ、晴久だけは中々寝れなかったのだが。
「……」
『腹立つ腹立つって……そんなこと言ってるが、アンタが本当に腹立ってる相手はお母様じゃなくて、お母様をたぶらかしたロクだ! 違うかッ!?』
『アンタはお母様を心の底から愛してた! だからロクを恨んだ! ロクに似ているあの子を殺した! ロクと不倫したお母様もアンタは恨んだ! けれどお母様にあまり乱暴は出来なくて、アンタは代わりに俺に暴力を振るった! そうだろ!?』
「……人間臭ぇな、あの死神も……」
呟いて、漸く眠気が回ってきた。晴久は目を閉じ、変な夢を見ないことを願いながら眠りに落ちた。
勿論、不安定なサーヴァントとのパスがある限り、そんなことは叶わないのだけど。
『……姫、やはり城へ戻るべきだ。これ以上……逃げてばかりでは……貴女を守りきれる保障などない。それに、王も王子も心配していらっしゃる筈だ』
『……知りませんわ。私の結婚を勝手に決めた父のことなど……お兄様には申し訳ないけれど、戻らないと決めましたもの』
『そんな……姫、ご家族は大切になさってください……』
『あら、貴方がそう言うとは思いませんでしたわ』
『……え?』
『聞きました……貴方、父親から酷く扱われていたのでしょう?』
『−−っ!? …………な、ぜ……それを……』
『噂ですが……その反応を見ると、事実なのですね。あと、父君は死神で、貴方はいつ殺されてもおかしくないとか……色々聞きますよ?』
『……そ、そう、そうですよ! それは噂ではなく事実です! ならなおさら、早く帰るべきだ! ある日突然俺が死んだら困るでしょう!?』
『まぁ……悲しみますが、困りませんわ』
『…………何を』
『だってその場合は、私も舌を噛みきって死にますから』
『……な……』
『えぇ、家族は大切なものですわ。分かっています。でも、それを一番わかっていないのは……フィオナのメンバーが、敢えて家族の話を避けてあげている、貴方の方ではなくて?』
『……だとしたら……そうだとしたら何だと言うのですか……』
『家族は大切。でも私が今それ以上に大切にしたいのは、貴方です……貴方は強い。けれど、蓋を開けてみれば、とってもとっても脆い。貴方に守って貰っているけれど、貴方の心を私は守りたい。家族の大切さを教えてあげたい』
『…………』
『ねぇ、ディルムッド。この旅が終わって、フィン様が貴方を許したら……』
『私と家族になりましょう?』
「……」
家に着いたのは五時、今は八時。やっぱり夢見たな、と思いながら頭を掻く。
別に、ランサーのことが嫌いなわけではない。寧ろ、共通点もあるし、多少の女々しさはあるがまさに騎士だし、素直で明るい性格であるため弟を持った気分でもある。だが、彼の夢は見たくない。辛い思い出を見ればこちらも辛くなる。幸せな思い出は、あの凄惨な最期がこの後にあるのだと思うとそれも辛い。どちらの夢を見ても、結局辛いだけなのだ。
グラニア姫のことは嫌いだ。伝承で見る限りでは、我儘で、自分勝手で、愛した筈の男を破滅へ導いている。勿論、彼女を愛したランサーの前でそんなことは言えないが、彼は彼女を決していい女とは思えなかった。
ランサーやセイバー、アインツベルンは当然のことだが寝ている。晴久は、音を立てないようにゆっくり起き上がった。
−−今朝のこと、謝らなきゃな。
うっすらとそう思いながら。
- Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.410 )
- 日時: 2014/11/30 17:51
- 名前: ナル姫 (ID: X9vp/.hV)
「あらおはよう晴久さん。早かったのね」
「あぁ……二人は」
「寝ているわ。昨日は大変だったもの」
薄く微笑む彼女に苦笑を返す。すると、セイバーが起きてきた。
「おはようセイバー」
「おはようございます、アイリスフィール、晴久」
「あぁ……セイバー、オディナは……」
「あー……起きたのですが……」
言いにくそうに顔を歪めるセイバー。疑問符を浮かべる−−とは言え、大体予想はできるのだが。
「主を怒らせてしまったと、落ち込んでいて……」
あぁやっぱり、と二人は笑う。頭を掻きながら、晴久は寝室へ向かった。襖を開けると、ビクッとランサーの肩が跳ねる。恐る恐ると言った様子でこちらに振り向き、怯えた瞳を向ける。
「あ、主……その」
「悪い!」
ぱん、と顔の前で両手を合わせる。へ、とマスターを見るランサーに、軽く頭を下げた。
「や、そのな……昨日……つか明け方か、お前も体力が限界だったし、あの女変だったし、なのに怒って責めたりして……ごめんな?」
へらり、と笑い、ランサーの顔色を確認する。キョトンとランサーは呆気に取られ、数回瞬きをした。
「い、いえ主! 俺の方こそ、もう自分で自分が訳わからなくて……」
ペコペコと頭を下げるランサー。だが、謝るだけではいけない。しっかり、理由も聞かなければならない。セイバーとアイリスフィールも呼び、話を聞くことにした。
「なぁオディナ、どうして、あの女の申し出を受けたんだ?」
ランサーは一度目を伏せ、口を結び、顔をあげた。
「……あの時……自分でも何故あの判断をしたのかわかりません。ただ、脳内が、彼女には従わなければならないと……その意識だけに支配されました」
「……なるほど。アイリスフィール、彼女はランサーと同じ種類の……魅了と同じようなものを使うかと思われます。ランサーとは違いコントロール可能と思われますが」
「ええ、そうみたいね」
「……なるほどな、あの時はオディナ弱っていたし、俺もなんか変なの感じたけど……そういうことか」
ランサーは俯く。話を聞けば、あの時ランサーがあんな目をした意味を理解出来た。
女王から貰ったのは、工芸品のようだった。呼びたい時に魔力を送れ……といわれても、呼びたいとは思わないのも事実だ。
「……どうするよ、とりあえず……」
「二人は魔力をできるだけ溜めておくべきだ。印を外すのにはかなり魔力を使うだろう?」
「……まぁ、場合によるがな。印は、俺がつけられたときのように、指で手の甲を丹念になぞってつけるときと、セイバーがやられたときのように一瞬で魔力を送ってつけられるときがある。その中間……たとえば、あまり丁寧になぞらなかった時とか、そういうものもある。一瞬でつけられたものはとにかく、それ以上はできるかどうかすら……」
『できるできないの話じゃないわ、やらせるの』
「……出来ないんだよ……」
ポツリと漏れた弱音。ぽんぽんと、晴久はランサーの背を撫でた。
「ふぅん、それが印? 綺麗じゃない」
「えぇ、ふふっ、しかし結構やられました。怒っていたようで」
「そのようね。まぁ良いわ。私達にはあの子がいるもの。早速あの力を見せてもらいましょう」
「そうだな、あれが間近で見れるなら」
クスクスと愉しそうに笑い、三人は霊体化した。
早速かよ、と泣き出したいくらいの気分だったが泣いてどうなる訳でもないため堪え、目の前の女王を見る。
「……とりあえず……えっと、どういう風につけられたのかをお聞きしたいのですが」
「聞いてどうするのかしら? 呪文が変わるの?」
「え……いえ、そういうことでは……」
「ならどうでも良いでしょう? 外さなければいけないのだから」
「……」
ランサーは渋々手を取り、右手を翳した。呪文を唱え、魔力を最大限集中させる。
「すみやか、に……在る、べき、ところっ、へ、入り…………己が主のっ……命を待て!」
だが魔力は弾けず、印が消えない。
「っ……再度っ、死の神の子の名を以って命じる、かの者に蔓延る死の呪い、かの者を縛る死の傷よっ……其の呪縛から、かの者を解放せよ、呪いの印は、元のっ……掌る、神の下へ……! かの、者はっ、未だ死すべき者でっ…………ないことを表すっ、すみやかに……在るべき、と、ころ、へっ……入り、己が主の……命を、待て!」
漸く魔力が弾ける。印を消したランサーも魔力を送っていた晴久も、一気に力が抜ける。
「大丈夫かランサー……」
「っ……はっ……」
返事をする余裕はないようだが、ランサーは頷いた。芳は何でもなさそうな顔で女王へ向く。
「ふふ、ありがとう坊や。またよろしくね」
「っ……」
「あら、その顔は何かしらセイバー? 寧ろその子には感謝してほしいわ。私が袋を盗んでなければ貴方達死んでいたでしょう?」
勝ち誇る訳でもない、馬鹿にする訳でもない、ただ優しい笑顔を残し、三人は差っていった。すまない、と小さい声だけが、三人のいなくなった空間に響いた。そこに、新たな音が乱入する。
「だから言っただろう、アイリ」
「切嗣……」
「キャスターもトリックマスターもとんでもない能力を持っている。キャスターは更にランサーの実父だ。子が不利なのは当然だろう。現に、ランサーは足を引っ張っている状況だ」
「っ! 切嗣ッ!!」
「い、良いんだセイバー! 彼の言う通っ……ゲホッゲホッ」
「! ランサー!」
疲れたままセイバーを止めようとし、急に咳込む。結果的にセイバーは止まったが、切嗣は軽蔑の視線を二体のサーヴァントに向けていた。
「……これでなお、気の毒だとかそういう理由でランサー陣営と共闘したいとアイリが言うなら僕は止めないよ。ただもう一度忠告しておこう。ランサー陣営と共闘するのは、良くない」
それだけ言い残し、切嗣は去った。ぎり、とセイバーがその背を睨む。
ランサーは咳が止まり、ふと女王から貰った工芸品を見た。咳をして涙目の自分の目が反射し、その奥に、かつてフィオナ最強と恐れられた自分戦う姿が映し出されていた。
- Re: 短編小説 *BSR Fate* ( No.411 )
- 日時: 2014/12/01 17:44
- 名前: ナル姫 (ID: ESJvCUA5)
「私のために戦いなさい。それが貴方の誓約です」
「そうよ……えぇ、貴女が悪いの。だってディルムッドは私のものなのだから」
「私が何かしたかしら? ただキスをしただけよ?」
クラス:プレジャー
身長:158cm、体重:47kg
血液型:不明
誕生日:不明
属性:中立・善
イメージカラー:桃色
好きなもの:ディルムッド
苦手なもの:ディルムッドからの拒絶
パラメータ
筋力:D
耐久:D
敏捷:C
魔力:A
幸運:C
保有スキル
女の勘B
これから先起こることを予感するスキル。百発百中とまではいかないが、十中八九当たる。特に嫌な予感の時。
醜い魔女A
自分が認めたくないことをされると出てくる人格。快楽主義で心此処にあらずという感じの魔女。BASARAの市さんみたくなる。
宝具
誓いのキス(ゲッシュ)A
相手の隙をつき、誓約を負わせる。それを破ると相手には必ず破滅が訪れる。男女共に有効。誓約を負わされた方は、それを破ると破滅が訪れることを知らないため、勝手に破ってしまうこともある。
誓約者として召喚されたグラニア。このグラニアは、ディルムッドの死語後を追って自殺している。
ヤンデレと化しています。
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