彼女が消えた理由。
作者/朝倉疾風

第4章 『彼女が死んだ理由』3
こんなどうでもいい過去を蒸し返すのは、やめよう。
俺はミユキがいればいいんだから。 俺のいる世界で、彼女が無事に一生を終えてくれたら、それでいい。
周りから壊されることも、干渉されることもない、俺の空間。
他人に押し付けるつもりはないけど、ミユキには受け入れてほしい。
彼女が俺のことを嫌いでも、俺たちには切れない関係があるのだから。
△
7月もそろそろ半ばを迎えるころ、世間ではもういくつ寝ると夏休みという雰囲気になっているだろう。
この高校だって、それは同じだ。
「あと一週間もすれば夏休みかぁ。 課題多いんだろうな」
「吉川、おまえは本当に課題のことになると憂鬱になるよな」
席替えをして、俺の斜め後ろになった吉川は、また一人でごねている。
隣の女生徒が若干ひき気味。
「てゆうか、なんで園松今日来てねえの」
「サボりじゃねえ」
「まじでか……。 気分屋だから?」
と、いうよりは。
「2回目も俺の隣だから、不登校かも」
担任のクジで決まった席は、2回連続でミユキの隣になった。
決まったときのミユキの顔。 思い出しただけで苦笑してしまう。
「明日には連れてくるよ。 ミユキを」
「できるのかよ。 そんなこと」
「無理やり連れて来る」
彼女は、俺の世界にいないといけないから。
それがたとえ俺の自分勝手なエゴだったとしても。
俺には、彼女しか見えてないから。

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