彼女が消えた理由。
作者/朝倉疾風

第1部 終わり、そして次のはじまり 『あなたがそれを望むなら』
そこは、辺鄙な田舎町だった。
あるのは田んぼだけ。
街から離れたところにある、ゲーセンもカラオケもデパードですら無いような、そんな田舎町。
「ここが父さんの生まれ故郷……か」
街のバス停からこの田舎町に来るまで、片道2時間。
自分以外に人が乗っていないバスから降り、その少年は辺りを見渡した。
とても、不思議な容姿の少年だった。
男子の割には長めの髪は、透き通るほど白い。
髪も傷んでおらず、色もまばらでは無いことから、それが人工的なものでなく、生まれつきだということを知らしめている。
どこかヴィジュアル系をイメージした、田舎町ではひどく目立つ服装。
耳にも、十字架のピアスをしている。
「しっかし……なァんもねえな。 ヤスの奴、もう来てんのかァ? だとしてもあっちぃ。 ちゃんと住むアパートにはクーラーついてんだろうなァ」
悪態をつきながら、少年はトランクを引きずって坂道を降りる。
どこか世間離れした少年が、田舎の雰囲気に溶け込むことなど到底なく。
「ヤスをまず探すかな」
そう呟き、不敵に微笑む少年の舌が、蛇のように唸る。
派手な容姿と、纏う雰囲気の荒々しさが、田舎の平凡な日常にとけていった。

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