彼女が消えた理由。

作者 / 朝倉疾風



第3部 第3章 『届くことのない恋文』5



園松ミユキが消えて、2週間経った。


「なんだ、ニーチャン。 俺らのことを待ち伏せか?」
「ここに来るって思ってました」

俺はどうかしている。
ミユキを助けるよりも、ヒロカの過去を調べることに躍起になっているのだから。
状況が、まったく変わった。
ヒロカが同性愛者だと知ってから。

「にしても、平日の昼間から堂々とスーパーにいるって……どうなのよ。 ニーチャン、高校生でしょうが」
「まあ、そうなんですけど」

五鈴が言うには、ミユキの父親と思われる人物のナリはヤンキーのようだと。
星野さんは見た感じちょっと不良そうな人だし。

「アンタ、陽忍千尋……だっけ」

乾いた声がして、星野さんと一緒に居る男が声をかけてきた。
……この男、前に吉川とミユキの家に行く前にも会ったな。 その時も星野さんといて、俺に名前を聞いてきた奴。

「ちぃ、よく覚えてるよな。 俺なんかニーチャンって呼んでるのに」
「月無、お前のほうがずっと年上だし、もうオッサンだ」
「ちぃだってオッサンじゃねえか」

ちぃ……ちー? この人のあだ名? この年になってあだ名なんて珍しい。

「お二人は仲がいいんですね」
「幼なじみだ。 もうかれこれ……20年以上」
「昔っからワルばっかしてたけど、もう落ち着いたよなぁ。 今じゃお互いガキがいて、スーパーでガキの菓子選びだ」

ちぃという男は、星野さんとは対照的だ。 髪も黒いし、雰囲気も落ち着いている。
可愛らしいあだ名とは大違いだ。

「んで? 俺らをスーパーで待ち伏せしてた理由は?」
「────聞きたいことがあって」

まあ、五鈴の印象とか年代とかであたってみると、この人たちが近いし。 案外、ミユキの父親と知り合いとかだったりして。

「園松尋花っていう人……知ってたりしますか?」
「ヒロカぁ? 全然知らねえ。 ちぃは知ってるか?」
「知らない」

外れか……。
まあ当てずっぽうだしな。

「そうですか。 すいません、忘れてください」
「ああ、了解。 あとさあ、ニーチャン。 ガキが喜ぶポテチの味って何かな」
「────うすしお、じゃないですかね」