彼女が消えた理由。

作者/朝倉疾風



第5章 『もしも、その嘘が虚偽だとしたら』1



どうして俺らを産んだのか、お母さんにきいてみた。

お父さんはノリトに夢中で、そんな人の子どもを産んだって、

お母さんは悲しくなかったのかって。

「わたしがノリトになろうとしたのよ」

お母さんは笑ってこう言ったけど、すぐにまた悲しい顔をした。

「でも、ダメだった。 あの人はけっきょく、そのノリトって人だけが

好きだったのね」

なら、お母さんは?

お母さんはお父さんのことが好きなの?

そう言うと、お母さんは恥ずかしそうに笑った。

けっきょく、お母さんがお父さんのことをどう思っているのかは、聞けなかった。