彼女が消えた理由。

作者/朝倉疾風



第4章 『傷に触れ、痛みに触れ、心に触れ』1



ノリトという少年を捜していた。

僕もヤスも知らない、「あの人」 が今も想っている相手。

小さいころから何度も 「彼」 の話を聞かされた。

「彼」 になるよう、命じられた。

「あの人」 は表情ひとつ変えなかった。

ヤスの顔面を油で溶かしても、僕の首をしめて殺そうとしても。

ノリトは? ノリトはどこ? ノリトはだれ? ノリト、ノリト、ノリト

のりとのりとのりとのりと。

「あの人」 が探し求める 「彼」 は、どんな人なんだろう。

会ってみたい。

会って、それから、どうしようか。

どうしてやろうか。