二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——完結——
日時: 2013/04/14 15:29
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=21394

 今作品は前作である『ポケットモンスターBW 真実と理想の英雄』の続きです。時間としては前作の一年後となっておりまして、舞台はイッシュの東側がメインとなります。なお、前作は原作通りの進行でしたが、今作は原作でいうクリア後なので、オリジナリティを重視しようと思います。
 今作品ではイッシュ以外のポケモンも登場し、また非公式のポケモンも登場します。

 参照をクリックすれば前作に飛びます。

 では、英雄達の新しい冒険が始まります……

 皆様にお知らせです。
 以前企画した本小説の人気投票の集計が終わったので、早速発表したいと思います。
 投票結果は、
総合部門>>819
味方サイド部門>>820
プラズマ団部門>>821
ポケモン部門>>822
 となっています。
 皆様、投票ありがとうございました。残り僅かですが、これからも本小説をよろしくお願いします。

登場人物紹介等  
味方side>>28  
敵対side>>29
PDOside>>51
他軍勢side>>52
オリ技>>30
用語集>>624

目次

プロローグ
>>1
第一幕 旅路
>>8 >>11 >>15 >>17
第二幕 帰還
>>18 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27
第三幕 組織
>>32 >>36 >>39 >>40 >>42 >>43 >>46 >>49 >>50 >>55 >>56 >>59 >>60
第四幕 勝負
>>61 >>62 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>72 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80
第五幕 迷宮
>>81 >>82 >>83 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90 >>92 >>93 >>95 >>97 >>100 >>101
第六幕 師弟
>>102 >>103 >>106 >>107 >>110 >>111 >>114 >>116 >>121 >>123 >>124 >>125 >>126 >>129
第七幕 攻防
>>131 >>135 >>136 >>139 >>143 >>144 >>149 >>151 >>152 >>153 >>154 >>155 >>157 >>158 >>159 >>161 >>164 >>165 >>168 >>169 >>170 >>171
第八幕 本気
>>174 >>177 >>178 >>180 >>184 >>185 >>188 >>189 >>190 >>191 >>194 >>195 >>196 >>197 >>204 >>205 >>206 >>207 >>211 >>213 >>219 >>223 >>225 >>228
第九幕 感情
>>229 >>233 >>234 >>239 >>244 >>247 >>252 >>256 >>259 >>262 >>263 >>264 >>265 >>266 >>269 >>270 >>281 >>284 >>289 >>290 >>291 >>292 >>293 >>296 >>298
第十幕 強襲
>>302 >>304 >>306 >>307 >>311 >>316 >>319 >>320 >>321 >>324 >>325 >>326 >>328 >>329 >>332 >>334 >>336 >>338 >>340 >>341 >>342 >>343 >>344 >>345 >>346
弟十一幕 奪還
>>348 >>353 >>354 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>376 >>377 >>378 >>379 >>380 >>381 >>382 >>383 >>391 >>393 >>394 >>397 >>398 >>399 >>400
第十二幕 救世
>>401 >>402 >>403 >>404 >>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>412 >>413 >>414 >>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>433 >>436 >>439 >>440 >>441 >>442 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447 >>450 >>451 >>452 >>453 >>454
第十三幕 救出
>>458 >>461 >>462 >>465 >>466 >>467 >>468 >>469 >>472 >>473 >>474 >>480 >>481 >>484 >>490 >>491 >>494 >>498 >>499 >>500 >>501 >>502
第十四幕 挑戦
>>506 >>511 >>513 >>514 >>517 >>520 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>534 >>535 >>536 >>540 >>541 >>542 >>545 >>548 >>549 >>550 >>551 >>552 >>553 >>556 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>568
第十五幕 依存
>>569 >>572 >>575 >>576 >>577 >>578 >>585 >>587 >>590 >>593 >>597 >>598 >>599 >>600 >>603 >>604 >>609 >>610 >>611 >>614 >>618 >>619 >>623 >>626 >>628 >>629 >>632 >>638 >>642 >>645 >>648 >>649 >>654
>>657 >>658 >>659 >>662 >>663 >>664 >>665 >>666 >>667 >>668 >>671 >>672 >>673 >>676 >>679 >>680 >>683 >>684 >>685 >>690 >>691 >>695

第十六幕 錯綜

一節 英雄
>>696 >>697 >>698 >>699 >>700 >>703 >>704 >>705 >>706 >>707 >>710 >>711
二節 苦難
>>716 >>719 >>720 >>723
三節 忠義
>>728 >>731 >>732 >>733
四節 思慕
>>734 >>735 >>736 >>739
五節 探究
>>742 >>743 >>744 >>747 >>748
六節 継承
>>749 >>750 >>753 >>754 >>755
七節 浮上
>>756

第十七幕 決戦

零節 都市
>>759 >>760 >>761 >>762
一節 毒邪
>>765 >>775 >>781 >>787
二節 焦炎
>>766 >>776 >>782 >>784 >>791 >>794 >>799 >>806
三節 森樹
>>767 >>777 >>783 >>785 >>793 >>807
四節 氷霧
>>768 >>778 >>786 >>790 >>792 >>800 >>808
五節 聖電
>>769 >>779 >>795 >>801 >>804 >>809
六節 神龍
>>772 >>798 >>811
七節 地縛
>>773 >>780 >>805 >>810 >>813 >>814 >>817
八節 黒幕 
>>774 >>812 >>818

最終幕 混濁
>>826 >>827 >>828 >>832 >>833 >>834 >>835 >>836 >>837 >>838 >>839 >>840 >>841 >>842 >>845 >>846 >>847 >>849 >>850 >>851
エピローグ
>>851

2012年冬の小説大会金賞受賞人気投票記念番外
『夢のドリームマッチ ver混濁 イリスvsリオvsフレイ 三者同時バトル』>>825



あとがき
>>852

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171



Re: 529章 殻 ( No.780 )
日時: 2013/03/20 23:07
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「エルレイド、シザークロス!」
「カモドック、シャドークロー!」
 エルレイドの十字に構えた刃と、カモドックの影を纏った爪がぶつかり合い、カモドックがエルレイドを押し切った。
 やはり殻を破るで攻撃力が上昇したカモドックは強敵だった。スピードはエルレイドにも影討ちがあるのである程度は補えるが、パワーだけはどうしようもない。真正面からカモドックとぶつかっても、押し切られてしまう。
「カモドック、ダストシュート!」
 カモドックはゴミの塊を生成し、エルレイドへと投げつける。殻を破るで攻撃力が上がっているため、塊はかなり大きい。
「やるしかないか……エルレイド、サイコバレット!」
 エルレイドは念力を固めた銃弾を無数に生成し、マシンガンの如く連射する。
 銃弾を何度も受けたダストシュートはバラバラに散ってしまい、残った銃弾がカモドックに襲い掛かるが、
「アクアテールだ!」
 カモドックは尻尾に水を纏わせ、横薙ぎに振るって飛来する銃弾を払い落としてしまう。
「シャドークロー!」
 さらに今度は爪に影を纏わせて突貫。エルレイドへと飛びかかる。
「影討ちだ!」
 エルレイドとしても効果抜群のシャドークローは喰らいたくないので、影の中に潜り込んでカモドックの攻撃を回避。背後から這い出て、カモドックに刃の一閃を浴びせる。
「続けてシザークロス!」
「アクアテールで吹き飛ばせ!」
 十字に刃を構えて追撃をかけるエルレイドだが、カモドックは後ろを向いたまま水を纏った尻尾を振るい、エルレイドを払い飛ばしてしまう。
 このように、正面から攻めても押し返されるが、後ろから攻めてもアクアテールで迎撃されるのがカモドックだ。影討ちのスピードには流石に対応しきれないようだが、普通に攻撃してもカモドックには届かない。
「さて、どうするか……」
 サイコバレットも、ダストシュートで銃弾を削り、アクアテールで薙ぎ払われればそれで終わりだ。カモドックにどうやって攻撃を当てようかと考えを巡らせるイリスだが、ザートは思考の時間をくれはしない。
「カモドック、ダストシュート!」
 カモドックは巨大なゴミの塊を生成し、エルレイドへと投げつける。
「だったら、エルレイド、かわしてサイコバレットだ!」
 エルレイドは飛来するダストシュートを横に跳んでかわし、すぐさま念力を固めた銃弾を乱射するが、
「跳べ! カモドック!」
 カモドックは砂地にも関わらず大きく跳躍し、銃弾を回避する。そして空中で宙返りしつつ、
「アクアテール!」
 水を纏った尻尾をエルレイドの脳天に叩き付けた。渾身のアクアテールが直撃し、エルレイドは思わずよろめいてしまう。
「好機を逃すな! カモドック、シャドークロー!」
 カモドックは一直線にエルレイドへと駆け出す。爪には影が纏っており、喰らえば戦闘不能か致命傷。しかし回避は難しく、影討ちやシザークロスでは間に合わない。
「くっ、仕方ない……エルレイド、インファイト!」
 カモドックの爪がエルレイドを捉える直前、エルレイドは拳を振り上げ、カモドックを打ち上げた。
「っ!」
 そして跳躍し、空中でカモドックに怒涛の連続攻撃を浴びせる。拳による攻撃だけでなく、刃も使用した斬撃を絡めた、エルレイド独自のインファイト。最後は刃を振り下ろし、カモドックを地面に叩き落とした。
「カモドック!」
 砂煙が舞う。普通のポケモンなら、防御が二段階も下がった状態でタイプ一致のインファイトを喰らえばひとたまりもないだろう。しかし、砂煙が晴れるとそこには、四本足でしっかりと身を起こしたカモドックの姿があった。
「やっぱり駄目か……!」
 殻を破るで防御が下がっているとはいえ、カモドックは素の防御がとても高い。しかも格闘技であるインファイトは毒タイプのカモドックに対して効果いまひとつ。大打撃を与えるには至らなかった。
 しかも今のインファイトでエルレイドの防御は大きく下降してしまった。エルレイドはカモドックと違って素の防御が高いわけではないので、次にカモドックの攻撃をまともに喰らえば、戦闘不能は免れないだろう。
「今が攻め時と見た。カモドック、シャドークロー!」
 カモドックは爪に影を纏わせ、エルレイド目掛けて特攻する。
「エルレイド、影討ち!」
 対するエルレイドは影に潜り込んで影の爪を回避。カモドックの背に、刃の先端を突き込む。
「一旦退いてサイコバレット!」
 いつもならそこからシザークロスで追撃するのだが、カモドックが相手ではアクアテールが飛んで来かねない。エルレイドは一度後方へと下がって、念力の銃弾を乱射する。
「効かん! カモドック、ダストシュートだ!」
 カモドックは巨大なゴミの塊を投げつけて撃ち込まれる銃弾を防御。分散させて撃ったため、銃弾は突き抜けずにゴミの塊を相殺するだけで終わった。
「もう一度、ダストシュート!」
 一発目は防御目的。二発目は攻撃目的で、カモドックは二発目のダストシュートを発射する。
「かわしてサイコバレットだ!」
 その塊をかわし、念力の銃弾を生成。エルレイドはカモドックへと銃弾を撃ち込もうとするが、

「カモドック、シャドークロー!」

 いつの間にかカモドックはエルレイドに迫っており、影の爪を振りかざしていた。
「っ……!」
 一発目のダストシュートは防御。二発目のダストシュートは攻撃——と見せかけた目くらまし。本命はシャドークローだった。
 咄嗟に防御するエルレイド。固めている途中だった念力の銃弾も気休め程度の盾となるが、所詮は気休め。エルレイドは容易く引き裂かれた。
「とどめだ、ダストシュート!」
 続いてカモドックはゴミの塊を振り落すように投げつけ、エルレイドに直撃させる。
「エルレイド!」
 効果抜群の攻撃に、タイプ一致の大技。この連続攻撃を受け、エルレイドは戦闘不能となった。
「っぅ……戻って、エルレイド」
 イリスは悔しそうにエルレイドをボールに戻し、次のボールを取り出した。
「先手は取られたか……でも、ここから取り戻して、一気に巻き返す! 次は頼んだよ、ズルズキン!」
 続くイリスの二番手は、悪党ポケモン、ズルズキン。
 オレンジ色のトカゲ人間のような姿で、頭部には赤いトサカ。脱皮して弛んだ皮をそのまま着ており、目つきは不良のように悪い。
「ここでズルズキンか。そのような鈍いポケモンで、我のカモドックに追いつけると思ったか」
「カモドックだって素のスピードは言うほど速くないだろ。それに、スピードに関しては心配には及ばないよ」
 イリスはズルズキンを一瞥し、イリゼとの特訓を思い出す。そして、

「ズルズキン、龍の舞!」

 次の瞬間、ズルズキンは龍の如く力強く舞う。
「む……!」
 その様子を見て、ザートは少し顔をしかめた。
「父さんのカイリューとバトルを重ねて、ようやく覚えた技だ。攻めるよズルズキン。ぶち壊す!」
 ズルズキンは地面を蹴り、全てを破壊してしまうかのような凄まじい勢いで拳を振りかぶる。
「まずいな。カモドック、跳べ! アクアテール!」
 カモドックは跳躍してズルズキンの拳をかわし、水を纏った尻尾を振り下ろそうとするが、
「遅い! 跳び膝蹴り!」
 カモドックが尻尾を振り下ろすよりも速く、ズルズキンの膝がカモドックを捉え、吹き飛ばした。
「カモドック!」
 数秒後、カモドックは砂漠のど真ん中にドサッと落下する。効果いまひとつでも、能力に二段階分の差がついていたため、耐え切れずに戦闘不能となった。
「むぅ、撤退だ。戻れカモドック」
 ザートは戦闘不能となったカモドックをボールに戻す。
「ズルズキンを相手にするならば……こいつだ」
 そして次なるボールを構えた。
「出撃! トノッパー!」
 ザートの二番手は、バッタポケモン、トノッパー。
 こちらは分類通り、緑色のバッタのようなポケモンだ。頭部には卵の殻をかぶっている。
「トノッパー? ガルラーダじゃなくて……?」
 イリスはザートの選出に、疑問符を浮かべる。格闘タイプを持つズルズキンに対しては、飛行タイプガルラーダの方が有利なはず。なのにザートは、ここでトノッパーを繰り出した。
「我がガルラーダは、物理攻撃一本なのでな。ズルズキンとは、接近戦ではやり合いたくない。ゆえに特殊攻撃を得意とするトノッパーなのだ」
 ザートはイリスの疑問に答えた。それはミスではなく、余裕と自信の表れだろう。
「それに、トノッパーでもズルズキンの弱点を突くことくらいはできる。エアスラッシュ!」
 トノッパーは空気の刃を無数に飛ばす。その数はかなり多く、イリスのリーテイルにも匹敵するかもしれない。
「ズルズキン、龍の舞だ!」
 対するズルズキンは、龍の如く舞い、飛んでくる刃をひたすらかわす。そして、
「諸刃の頭突き!」
 姿勢を低くし、頭を突き出してトノッパーへと突っ込んでいく。龍の舞で攻撃も素早さも二倍になっているので、途轍もない勢いだ。しかし、
「トノッパー、殻を破る!」
 突如、トノッパーの頭部にある殻が砕け散った。
「っ! こいつも殻を破るを……!」
 先ほど殻を破ったカモドックに先勝されたので、イリスは歯噛みする。
「行くぞ、トノッパー! 攪乱飛行!」
 そして次の瞬間。トノッパーが動き——消えた。

Re: 530章 孤高 ( No.781 )
日時: 2013/03/20 23:08
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 アシドは7Pになる以前——というより、プラズマ団に入る以前から科学者だった。その頃はアシドという7Pとしての名ではなく、本名で呼ばれていたのだが、その名は知る者はよく知る、有名な名前だった。
 アシドは天才を自称しているが、彼の言うことは大袈裟でもなんでもなく、本当に天才なのだ。幼い時から既に様々な研究をしており、多大な結果を残している。
 そんな彼は、研究機関の界隈では引っ張りだこだ。どの機関もアシドを欲し、引き入れようとしたが、結局はどの機関もアシドを手放した。
 その理由は、単純すぎるほどに単純だ。プラズマ団でもそうであったように、アシドは協調性に欠ける。我儘で自分勝手で自己中心的だ。ゆえにどの研究機関にいても、他の研究員とそりが合わず、最後には人間関係をこじらせて出ていくことになる。それを何度も何度も繰り返した。
 彼の自己中心的な部分は、幼少期から天才だともてはやされたせいであり、自分が天才だという自覚もあったからだ。しかし性悪で歪んだ部分は、こじれた人間関係から生み出されたものだった。
 結果、彼は孤独な研究者となった。彼一人でも研究を進めることは出来るが、しかし設備がない。そのせいで、もう少しで手の届きそうな研究を、途中で挫折したり、諦めたりしたこともあった。
 そして、アシドはいつしか研究者の間でもその名を聞くことがなくなり、彼の名前は闇に埋もれてしまうこととなる。有名だったと、過去形なのはそのためだ。
 しかしそんな彼に目を付けた組織があった。それがプラズマ団だ。
 日陰者を、この世の闇を探っていたプラズマ団は、技術者を欲していたらしい。しかもただの技術者ではなく、覚悟のある者を求めていた。

「ワタクシが求めるのは、強い意志を持つものです。他の全てを捨ててもいいと思うほど覚悟を持つものです。世界に絶望しようと、世間から見放されようと、何かを一心に求める。そんな人物を、探しているのですよ」
「……あっそ」

 どうでもよかった。アシドにとっては、必要とされているとか、お前には価値があるとか、そんなことはどうでもいい。アシドは最も欲していたのは、自分の欲求を満たすだけの場所。あふれ出る好奇心、知識欲、探究心、そういったものを解消する場所を求めていた。だから、ポケモンを解放するとか、自分たちだけがポケモンを使うとか、世界を征服するとか、そんなことは、本当にどうでもよかった。
 だが、最後の言葉だけは、聞き逃せなかった。

「あなたがワタクシに手を貸すというのであれば、あなたの望むものを全て提供しましょう」
「……! 本当か!?」

 すぐに喰いついた。子供というか、もはや獣だ。
 既に家出をしていたアシドは、プラズマ団などという宗教団体染みた組織に加入することに対して抵抗はない。ただ、この組織も今までの研究機関のように、いずれ自分を排するのではないかという懸念もあった。
 しかしその懸念はすぐに払拭される。
 設備は想像以上に良いものだった。今までの研究機関なんて目じゃない。たまにゲーチスからの命令で、自由に研究できなくなる時もあるが、それもたまにだ。
 下っ端たちは自分を恐れたり疎んでいたりしたようだが、同じ幹部のような者たち——後の7Pと呼ばれる者たちは、アシドを普通に受け入れた。
 今までに感じた事のない感覚。その感覚が生まれるのは、この組織にか、設備にか、それとも、同じ仲間たちからなのか。
 世間から見放された彼の時間は、いつしか止まってしまった。しかし今、同じ組織の者たちと結託したり、共闘したり、敵である英雄たちと対立したり、争い合ったりして、その時間は再び動き出す。
 プラズマ団という組織は、彼に人間の触れ合いを経験させた。それは協力という形だったり、対立という形だったりと様々だ。
 その触れ合いを通じて、7Pアシドは、人間として成長していったのかもしれない——



「……finトライアル。実験スタートだ、スモーガス!」
 アシドが最後に繰り出すポケモンは、毒煙ポケモン、スモーガス。
 楕円形の紫色の体で、体の上下にはそれぞれ突起物。赤い水晶体が埋め込まれたユニットが二つ、宙に浮いている。
「スモーガス、毒煙幕!」
 スモーガスはまず、大口を開けて毒素を含んだ煙幕を放つ。
「っ、また面倒な技を……!」
 毒煙幕は視界を遮るだけでなく、毒素によって体力を少しずつ削っていく。長期戦に持ち込まれると不利になってしまう。
 が、
「スモーガス、アシッドボム!」
 煙幕に紛れて、スモーガスは酸性の爆弾を発射。カイリューに直撃させるが、ダメージは少ない。
「もう一発! アシッドボム!」
 続けてアシッドボムを放つスモーガス。さっきよりは効いたようだが、それでもダメージは少ない。
「ちっ、カイリュー、十万ボルト!」
 カイリューはアシッドボムが飛んできた方向に向かって電撃を放つが、手応えはない。
「だったらこれだ! カイリュー、ドラゴンダイブ!」
 カイリューは一気に天井まで急上昇する。そこからでもスモーガスの姿は見えないが、カイリューはそのまま凄まじい勢いで急降下。地面に激突する。
 するとその衝撃で毒煙幕は吹き飛び、視界は明瞭。スモーガスの姿も確認できた。
「そこだカイリュー! エアスラッシュ!」
「スモーガス、毒煙幕だ!」
 カイリューはスモーガスを見つけると、すぐさま空気の刃を飛ばして切り裂く。しかしスモーガスはそれを気にせず、毒煙幕を放ってまた視界を遮った。
「十万ボルト!」
 カイリューは適当に十万ボルトを放つが、すべて手応えはない。
「しゃらくせぇ……カイリュー、ドラゴンダイブだ!」
「スモーガス、アシッドボム!」
 急上昇するカイリューに、酸性の爆弾がぶつけられるが、カイリューはそれを無視。天井まで上昇した。
 そして直後、龍の力を纏い、凄まじい勢いで急降下する。今度は地面にぶつかるようなことはせず、当たりをつけてスモーガスを狙う。
 カイリューが進む軌道の毒煙幕は、ドラゴンダイブの勢いで吹き飛ばされ、晴れていく。そして、やがてスモーガスを捉えるが、

「スモーガス、噴火!」

 カイリューがスモーガスに突撃する直前、スモーガスは大口を開き、燃え盛る爆炎を吐き出した。
 噴火の如き勢いで放たれた爆炎はカイリューに直撃。アシッドボムで最大まで特防を下げられたカイリューは、日照りで強化された噴火の直撃を受けて吹き飛ばされる。全身が真っ黒に焼け焦げ、完全に戦闘不能だ。
「……!」
 イリゼは今の攻撃に目を見開く。普通に見れば、ただスモーガスがカイリューを迎撃しただけのことだ。日照りによる強化や、アシッドボムの特防下降も、イリゼは理解している。だがそれでも、今の攻撃はイリゼにとっては普通の攻撃とは違って見えたらしい。
(今の攻撃……まっすぐだったな)
 軌道の話ではない。もっとも抽象的なことだ。
(性格が歪んでるとか、外道とか邪道とか性悪とか色々聞いてたし、野郎自身もそう言ってたが、なんだよ、そういうまっすぐなとこもあるじゃねぇか)
 ここで、イリゼは笑った。勝ち気で好戦的な笑みだが、それは勝負を純粋に楽しんでいるようにも見えた。
「楽しくなってきやがったぜ。こんな楽しくバトルできるなら、三対三じゃなくて、六対六のフルバトルでやりたかったもんだ」
 イリゼは迷わず次のボール手に取り、構えた。
「ただ、ここで本気を出すのが惜しいな。このままじゃ、俺の完封になっちまう」
 少しだけ表情を曇らせるイリゼ。ここでエースを出せば勝てるのだが、それはほとんど完封勝利となってしまう。折角楽しいバトルになってきたというのに、一方的なワンサイドゲームでは、つまらない。
 しかし、それでも、相手の全力に対しては、こちらも全力で相手をする。それが礼儀というものだ。全力でバトルを楽しみたいというのなら、尚更である。
「……なぁ、お前。名前なんつったっけ?」
「あぁ? 聞いてないのかよ……前代英雄ってのも呆れたもんだ。アシドだよ、7Pのアシド。つっても、7Pとしての名前だがな」
「じゃあ本名があるのか。それは何ていうんだ?」
「…………」
 バトルの最中にも関わらず、そんなことを尋ねてくるイリゼに困惑するアシドだが、非常に小さな声で、イリゼにだけ聞こえるような声で、アシドは真の名を言う。孤独になってからは、一度も呼ばれなかった名を。
「——だ」
「そうか。いい名前じゃねぇか、気に入った。またバトルしようぜ。お前とは、トレーナーとしてちゃんと戦いたい」
「ざけんな。僕は研究者だ。バトルは本業じゃねぇんだよ」
 とは言うものの、アシドはまんざらでもないというような表情をしていた。
「……ほら、御託ばっか並べてねえで、さっさと次のポケモンを出せよ。まさかここに来て、僕に負けるのが怖くなったとか言うなよ?」
「たりめーだ。むしろ、今ならお前に負けてもいいかもしれねえって思ったとこだ。それでも、勝つのは俺だがな」
 ボールを握り締め、イリゼは最後のポケモンを繰り出す。

「ぶちかませ! ヒードラン!」

Re: 531章 激突 ( No.782 )
日時: 2013/03/20 23:09
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「ノコウテイ、出番だよー」
 フレイの三番手は、土蛇ポケモン、ノコウテイ。
 黄色と水色の明るい体色の巨大なツチノコのような姿をしたポケモンで、腹には四対の足、背中には一対の羽が生えている。
 ノコウテイはノーマルタイプ。攻撃するにしても防御するにしてもハンタマとは相性が悪い。
 しかし、
「戻って、ハンタマ」
 ミキはハンタマをボールに戻した。
「へぇー……」
 それを見てフレイは、含みのある笑みを浮かべる。
「戻すんだー。ノコウテイには相性いいのにー」
「二連戦でハンタマも疲れてるからね。それに……」
 それ以上ミキは言わず、次のポケモンを繰り出した。
「出て来て、カブトプス!」
 ミキが交代させるのは、甲羅ポケモン、カブトプス。
 シャープな体躯のポケモンで、銀色に煌めく両手の鎌など、カマキリに似たシルエット。頭部には甲羅の面影があり、外骨格に覆われた体をしている。
「カブトプスかー、まーノコウテイには有利っちゃ有利だけどさー」
 それはノーマル技が通りにくいと言うだけの話だ。それならまったく通らないハンタマの方がいいはず。疲れているという理由を考慮しても、わざわざ交代するほどのことだろうかと、フレイは思う。
「カブトプス、ステルスロック!」
 先に動いたのはカブトプスだが、すぐに攻撃を仕掛けはせず、周囲に鋭く尖った岩を撒き散らすだけだった。
 だがその行動で、フレイは何かを察したらしい。
「ふーん、へぇー、そーゆーことねー。だったらこっちも攻めた方がいいかなー。ノコウテイ、アクアテール」
 ノコウテイは跳ねるように飛び上がり、尻尾に水を纏わせてカブトプスに振り下ろすが、
「かわしてメタルニッパー!」
 カブトプスはバックステップでアクアテールを避けると、鈍色に光る鎌を振るい、ノコウテイを三連続で切り裂く。
「スプラッシュ!」
 そして四発目に、水纏った鎌を叩きつけた。
「もう一度スプラッシュ!」
「潜る」
 続けて五発目の攻撃を繰り出すカブトプスだが、ノコウテイが地中に潜ってしまったために避けられてしまった。
 直後、ノコウテイは地面から飛び出し、カブトプスを吹っ飛ばす。
「うっ、カブトプス、ストーンエッジ!」
「怒りの炎だよー」
 カブトプスは吹っ飛ばされながらも鋭く尖った岩を無数に浮かべ、ノコウテイ目掛けて一斉に発射する。ノコウテイも怒りの炎で相殺を試みるが、岩は炎を突き抜け、ノコウテイに突き刺さった。
「メタルニッパー!」
 着地したカブトプスは、地面を蹴ってノコウテイに急接近。鎌を三回振るい、ノコウテイを切り刻む。
「スプラッシュ!」
「アクアテール」
 続けて水流を纏った鎌を振るうカブトプスだったが、ノコウテイも尻尾に水を纏わせて薙ぎ払い、カブトプスを吹っ飛ばした。
「追撃だよー、潜る」
 さらにノコウテイは地中に潜り、追撃を狙う。
「カブトプス、ノコウテイが出て来た瞬間に迎え撃つよ。集中して」
 カブトプスはなんとか着地し、すぐさま目を閉じて精神を集中させる。ノコウテイは巨体なので、地中での動きが読みやすい。今どこにいるのか、どのタイミングで攻撃を仕掛けるのかを先読みし、迎撃態勢を取って、
「今だよカブトプス! スプラッシュ!」
 ノコウテイが飛び出て来た瞬間、カブトプスは水を纏った鎌を振るってノコウテイを吹っ飛ばした。
「ストーンエッジ!」
 そしてすぐに鋭く尖った岩を連射。ノコウテイに連続で突き刺し、追い打ちをかける。
「うー、まさかノコウテイの動きを読まれるとはねー。だったら、これだー、怒りの炎」
 ノコウテイは怒り狂うように燃え盛る憤怒の炎を放つ。炎はうねるようにカブトプスへと襲い掛かり、その身を焼いていくが、威力は四分の一。ダメージはほとんどない。
「カブトプス、一気に攻め込むよ。メタルニッパー!」
 炎が消えるのを待たずして、カブトプスは駆け出す。そして両手の鎌で、ノコウテイを切り裂こうとするが、
「っ!? いない……?」
 炎を抜けた先に、ノコウテイはいなかった。軽く周囲と、上にも視線を向けるが、目立つはずの巨体はどこにもない。となると、
「……っ! 下——!」
 ミキが気付いた時には、もう遅かった。
 ノコウテイが地面から飛び出し、カブトプスを吹っ飛ばす。受け身も取れず、カブトプスは地面に叩き付けられた。
「もう一発、怒りの炎」
 ノコウテイは再び怒りの炎を放つ。炎は倒れているカブトプスに追い打ちをかけるが、やはりダメージはほとんどない。
「カブトプス、スプラッシュ!」
 カブトプスは、今度は全身に水流を纏い、飛沫を散らして炎を消しながら駆け出した。だが、その先にノコウテイはいない。
「また潜る……ってことは下から——」
 と、ミキが視線を地面に落とした直後、カブトプスに影が差す。
「アクアテール」
「え……?」
 直後、上空から振り下ろされたアクアテールの直撃を受け、カブトプスは吹っ飛ばされた。
「カブトプス!」
 一回目は潜るで地中から。二回目は最初の潜るで地中からと思わせておいて、上空からアクアテール。カブトプスも決して耐久力が高いわけではないので、そろそろ限界も近いだろう。
「……戻って、カブトプス」
 そんな状態のカブトプスを見て、ミキはポケモンを交代させる。
「また交代? 一匹で突き進んだりはしないのかなー?」
「いつもならそうするんだけど、今回だけは負けられないからね。こうでもしないと、たぶん勝てない」
 最後に控えるポケモンには、とミキは心の中で付け足す。
(あの子の最後のポケモンから考えて、カミギリーは不利。シルドールも、鬼火は効かないから……やっぱり、このポケモンかな)
 逡巡し、ミキは三番目のポケモンが入ったボールを手に取った。
「頼んだよ、ポリゴンZ!」
 ミキが交代で出すのは、バーチャルポケモン、ポリゴンZ。
 かなりエキセントリックな容姿をしたポケモンだ。アヒルのようなデザインだが、手のような部分は切り離され、足は一本。体は球状で、頭には嘴のようなものとアンテナのような突起がある。濃い色のピンクと青というカラーリングも特徴的だ。
「ポリゴンZかー……確か特性はダウンロードだったよねー。となると、ノコウテイは特防の方がちょっとだけ低いから、上がるのは特攻かー」
 ただでさえトップクラスの特攻を誇るポリゴンZの攻撃力がさらに上乗せされるというのは、かなり恐ろしいものがある。だがフレイは、にへらーとした緩い笑みを浮かべるだけで、全く動じていない。
「とりあえず攻撃かなー。ノコウテイ、まずはアクアテール」
 大きく飛び跳ね、ノコウテイは水を纏わせた尻尾をポリゴンZに振り下ろそうとするが、
「ポリゴンZ、ハイドロポンプ!」
 ポリゴンZも直前で大量の水を噴射し、落下の勢いもあるはずのノコウテイを押し返した。
「おー、やーるねー。だったらノコウテイ、潜るだよー」
 落下したノコウテイはすぐに地面に潜ってしまう。また地中から奇襲を仕掛けるつもりなのだろう。だが、
「地面にハイドロポンプ!」
 ポリゴンZは地面に向けて大量の水を噴射する。それも長時間、地面がぐちゃぐちゃにぬかるむほどの水流を発射し、ポリゴンZの周囲は水浸しになる。
 しばらくしてノコウテイが這い出てくるが、地面がドロドロに液状化しており、上手く出て来れない様子。じたばたともがいて少しずつ地上に出て来るが、その鈍い動きは、ポリゴンZの格好の的である。
「ポリゴンZ、破壊光線!」
 ポリゴンZはもたもたしているノコウテイに容赦なく極太の赤黒い光線を発射する。その一撃で地面は抉れ、ノコウテイは空高く吹っ飛ばされる。
「すっげー威力……」
 ダウンロードの特性を考えても、今の破壊光線の威力は凄まじかった。流石のフレイもいつもの調子を保っていない。
「でも……そっちのノコウテイも、人のこと言えないよ」
 驚嘆するに値するポリゴンZの破壊光線だが、それ以上に驚くべきはノコウテイだった。至近距離と言うほどではないが、比較的近距離で、防御もせずに特攻の上がったポリゴンZの破壊光線の直撃を受けてもなお、まだ戦闘不能には至らない。
「言ったっしょー。あたしのポケモンはみんな耐久よりだってさー。それにノコウテイは体力が多いからねー。硬さも随分長く保ってくれてたよー」
「……? 硬さを、保つ……?」
 フレイの言葉に首を傾げるミキ。だが、フレイは何も言わずに場を進める。
「さて、と。確かにノコウテイは破壊光線を耐えたけど、そんでもあと一発なんか喰らったらもうダメそうだしー、こっちも決めさせてもらうよ」
 フレイの言葉を皮切りに、ノコウテイは力を溜めるかのようにグッと身を縮める。
 そして、

「ノコウテイ、ギガインパクト!」

 ノコウテイは莫大なエネルギーを纏い、地面を砕きながらポリゴンZへと突撃していく。その威力は、破壊光線にも匹敵するだろう。
 ノーマルタイプの大技を繰り出すノコウテイに対し、ポリゴンZの返しては決まっている。この技を止められる技は、一つしかない。

「ポリゴンZ、破壊光線!」

 再び、ポリゴンZは赤黒い極太の光線を発射する。
 凄まじい破壊力の技がぶつかり合い、空気は揺れ、地面は割れる。

Re: 533章 圧政 ( No.783 )
日時: 2013/03/21 18:11
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「……戻ってくれ、ランターン」
 ロキは戦闘不能となったランターンをボールに戻す。
「まさかマイフィアンセまで倒されるとは、正直予想だにしなかったよ」
 と言いつつ、ロキは次のボールを手に取った。
「でも、ここからは遠慮も容赦も手加減もなしだ。後に控えるクイーンとエンプレスは、ストッパーが利かないからね」
「……端っから加減してもらえるなんざ思ってねえけどな」
「ふふ、そうかい。まあいいさ。このまま押し切らせてもらうよ」
 そして、ロキは手にしたボールを放り投げる。
「さあ、君の圧政を見せておくれ。マイクイーン、キングドラ」
 ロキの三番手は、ドラゴンポケモン、キングドラ。
 2mほどの巨躯で、タツノオトシゴに似た姿をしたポケモンだ。体色は水色、目つきは鋭い。
「さあ、マイクイーン、統治の時間だ。君に逆らう輩は問答無用で処刑だよ。ハイドロポンプ」
 キングドラは細い口から大量の水を噴射する。先のランターンが放ったハイドロポンプよりも遥かに強大だ。
「ちっ、かわせサンドリル!」
 サンドリルは大きく横に跳んで、ひとまず水流を回避するが、
「逃がさないよ。キングドラ」
 すぐに軌道を修正し、水流はサンドリルを追いかけ、捉えた。
 様々な要因で強化されたハイドロポンプの直撃を喰らい、サンドリルは吹っ飛ばされて木の幹に激突。見るまでもなく戦闘不能になっていた。
「戻れ、サンドリル」
 フォレスはサンドリルをボールに戻す。そして次のボールを手に取る前に、キングドラを一瞥した。
「さて、キングドラか。今の動きを見るからに——って、そうでなくとも雨を軸にしたメンバーなら特性はすいすいか。だとすると……」
 しばし悩んで、フォレスはボールを一つ掴んだ。
「とりあえずこいつで行ってみるか。出番だ、コクジャク!」
 フォレスの三番手は、惑わしポケモン、コクジャク。
 壺のような丸っこい体から首と足が飛び出すように生えており、広げた翼には無数の目が潜んでいる。
「コクジャク、エアスラッシュ!」
 コクジャクは翼を羽ばたかせ、無数の空気の刃を飛ばすが、
「キングドラ、吹雪だよ」
 キングドラが放つ吹雪により、空気の刃はすべて打ち消され、コクジャクにも吹雪が迫る。
「やっぱ普通に撃ってもダメか……かわせコクジャク!」
 コクジャクは急上昇し、吹雪をかわす。そして、
「悪巧み!」
 脳を活性化させ、特攻を一気に上昇させる。これでコクジャクの特攻は通常の二倍だ。
「今度はどうだ? エアスラッシュ!」
 そして再び空気の刃を飛ばす。その数は初撃よりも多く、大きさも鋭さも段違いだが、
「全て撃ち落とすんだ。ハイドロポンプ」
 横薙ぎに払うようにして発射されたハイドロポンプによって、空気の刃は全て撃ち落とされてしまう。
「一回じゃ無理だったか。だったらもう一度だ。コクジャク、悪巧——」
「させると思うかい? キングドラ、吹雪」
 コクジャクが悪巧みを使用する直前、キングドラは凍てつく猛吹雪を放つ。コクジャクは急いで悪巧みを中断し、急上昇して吹雪を回避した。
「マイクイーンのことだ。悪巧みで特攻が最大まで上がっても押し負けるとは思わないけど、この女王様は野心家が許せないのさ。変な企みは早めに潰したがる」
「……要するに、特攻は上げさせねえって言いたいのか。だったら正面から突っ込んでやるよ。コクジャク、エアスラッシュ!」
 コクジャクは翼を羽ばたかせ、無数の空気の刃を飛ばすが、
「ハイドロポンプ」
 キングドラが発射する横薙ぎのハイドロポンプで、全て撃ち落とされてしまう。
「突っ込めコクジャク!」
 だがコクジャクは攻撃を止めない。キングドラに向かって一直線に突っ込んでいく。
「吹雪だ」
 対するキングドラは凍てつく猛吹雪で反撃に出るが、
「サイコバーン!」
 吹雪が放たれた瞬間、コクジャクも念力で爆発を起こし、衝撃波を放つ。衝撃波は吹雪と激しくぶつかって一部を相殺し、コクジャクが突っ切るための穴を空けた。
「今だコクジャク! 電磁波!」
 キングドラへの接近に成功したコクジャクは、キングドラに微弱な電磁波を浴びせる。それにより、キングドラは麻痺状態になってしまう。
「これはこれは……キングドラ、吹雪」
「サイコバーンだ!」
 キングドラは吹雪でコクジャクを引き剥がそうとしたが、コクジャクも念力の爆発起こしてそれを相殺。そのまま衝撃波でキングドラを攻撃する。
「もう一発!」
 連続で爆発を起こし、コクジャクはキングドラを攻撃。特攻が二倍になっているため、キングドラへのダメージも大きいだろう。
「まだだ! もう一発サイコバーン!」
「キングドラ、ハイドロポンプ」
 三発目のサイコバーンを放とうとしたところで、キングドラのストップがかかった。キングドラは大量の水流を噴射し、コクジャクを押し飛ばしてしまう。
 至近距離からのハイドロポンプ直撃だが、コクジャクはサイコバーンの追加効果で特防が上がっている。大ダメージは受けたものの、まだ戦闘不能ではない。
「キングドラ、ハイドロポンプだ」
 キングドラは追撃のハイドロポンプを発射しようとするが、そこで麻痺が発動。キングドラは体が痙攣し、攻撃を繰り出すことができなかった。
「コクジャク、エアスラッシュ!」
 その隙にコクジャクは空気の刃を無数に飛ばし、キングドラを切り刻む。
「やってくれるねぇ。キングドラ、吹雪」
 今度は凍てつく猛吹雪を放とうとするが、またしても麻痺が発動し、キングドラの攻撃は失敗に終わる。
「悪巧み!」
 コクジャクも今回は攻撃せず、悪巧みで特攻を上げる。これで三倍だ。
「エアスラッシュだ!」
 翼を羽ばたかせ、コクジャクは空気の刃を飛ばす。数も大きさも、さっきのものとは段違いだ。
「ハイドロポンプで撃ち落とすんだ」
 薙ぎ払うような軌道でハイドロポンプを放つキングドラだが、襲い掛かる空気の刃を全て撃ち落とすことは出来なかった。何発かは残ってしまったものの、運良くそれらはキングドラには当たらなかった。
「うーん、思ったよりも特攻が高いんだねぇ、君のコクジャク。だったら早めに決めた方がいいかも。キングドラ、吹雪だよ」
 ロキはそう指示を出すが、不運にもまた麻痺が発動。キングドラの動きが停止する。
「コクジャク、悪巧み!」
 その隙にコクジャクは悪巧みで特攻を急増。これで四倍。コクジャクの特攻は、最大まで高められた。
「キングドラ、今度こそ吹雪だ」
「突き破れコクジャク! サイコバーン!」
 キングドラは今度こそ凍てつく猛吹雪を放つ。しかしコクジャクは真正面から吹雪向かって突っ込んでいき、吹雪と接触する寸前で念力の爆発を起こす。それによって生じた衝撃波を盾に、キングドラへと接近する。
「喰らいな。サイコ——」
 コクジャクは翼を広げ、念力を爆発させる準備に入る。これだけ至近距離から放てば、流石のキングドラもひとたまりもないだろう。
 だがこの時、キングドラは既に攻撃態勢に入っていた。ハイドロポンプでも吹雪でもない、もっとモーションの短い技を放つ寸前。そして、

「キングドラ、クリアスモッグ」

 キングドラの口から透明な煙が放たれる。
「なっ……!」
 その攻撃に、フォレスは驚愕の表情を見せる。威力に驚いたのではない。むしろ、クリアスモッグでコクジャクが受けたダメージは微々たるものだ。だが、攻撃を喰らったことが、フォレスの驚愕の原因ではあった。
「知ってるよね、これがどんな技かくらいは」
 クリアスモッグ。それは、攻撃したポケモンのステータスを元に戻す技だ。つまり、悪巧みで最大まで上がった特攻も、サイコバーンで高められた特防も、コクジャクの上昇した能力は全てリセットされてしまった。
「ハイドロポンプ」
「っ! かわせ!」
 煙に紛れ、キングドラは大量の水を噴射するが、コクジャクは急いで羽ばたき、間一髪のところでその攻撃を回避する。
「悪巧み!」
「させないよ。吹雪」
 コクジャクが再び特攻を上げようとするところを、キングドラは吹雪を放って妨害する。特防も下がっているため、コクジャク上昇しては吹雪をかわした。
「さて、麻痺もあるし、また隙を突いて悪巧みされたんじゃたまらない。なによりマイクイーンはお怒りのようだから、もう決めさせてもらうね」
 ロキがキングドラを一瞥すると、キングドラは口の先を真っ黒な雨雲へと向ける。そして、

「キングドラ、流星群」

 直後、大空に向けて一発のエネルギーが打ち上げられた。空高く上げられた球状のエネルギーは、雨雲の中で弾け、散り散りとなって地上に降り注ぐ。
「コクジャク——!」
 数多の流星が降り注ぎ、避け切れなかったコクジャクは、流星の直撃を何発も喰らい、地面に叩き落とされる。
 流星の群れに押しつぶされ、見るまでもなくコクジャクは戦闘不能だ。
「……よくやったコクジャク。相手に大技を出させただけでも上出来だ。戻ってろ」
 フォレスはコクジャクをボールに戻す。これで、フォレスの手持ちは残り一体。
「これで、終わりか……」
 最後のボールを取り出し、目を瞑って握り締めるフォレス。思い出すのは自分の過去だった。
 たった一人の少女と出会った記憶と、最も7Pから遠い存在の自分が7Pになりえた理由となる一人の女性を、フォレスは想起する——

Re: 534章 傾慕 ( No.784 )
日時: 2013/03/21 20:06
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 7Pフレイ。彼女には両親がいない——というのも、彼女は捨て子なのだ。
 とある無法者の街で、彼女は捨てられた。理由ははっきりしている、足の病気だろう。彼女は生まれつき足が非常に弱いそして、。あんよも出来ない赤ん坊を守りながら生き続けられるほど、その街は甘くなかった。だから捨てられたのだ。
 普通ならそのまま野垂れ死んでいただろう。彼女に視線を向ける者はいても、彼女を拾おうなどと考える者は誰もいなかった——たった一人の男を除いては。
 その男は、彼女を救った。彼女にとっては救世主のような人だった。その上、彼女がこの世界で生きられるように、育ててくれた。
 彼女にとって、彼は唯一の家族であり、自分の拠り所だった。依存しているとえばそれまでだが、その依存は、彼女にとっては心地の良いものだった。
 この時間がずっと続けばいい。彼女は男と暮らすうちに、無意識のうちにそう思っていた。
 しかし、永遠などこの世には存在しない。別れや変化は、どこかで必ず訪れるものだ。
 突然、その街にとある組織がやって来た。どうやら街の者を組織に取り入れ、戦力の増強を図るつもりらしい。男は彼女を隠し、その組織に立ち向かっていった。

 そして、男は戻ってこなかった。

 それからというもの、彼女は無気力な日々を過ごしていた。同時に、彼に依存したいと思う自分に気付いた。彼がいない世界は、彼女にとって生きる価値のない世界だった。
 そんな時、一人の男が彼女の前に現れた。当然、彼とは違う男だ。如何にも胡散臭い言葉を並べ立て、遂には彼女を男の組織に勧誘したいという始末。
 だが彼女は、その申し出を受けた。
 自暴自棄になっていたのかもしれない。彼がいなくなって、彼女の世界はかき回され、もうどうしたらいいのか分からない時に、よく分からないままによく分からない組織に入っていた。そんな感じだ。
 彼女は、表立って動いている幹部の、真の幹部という立ち位置らしい。言ってしまえば隠し玉で、しばらくは何もしなくていいと言われた。
 そんなことを言われても、何もすることがないのだから何もしないのは当然で、だから彼女は何もしなかった——そう、彼と再会するまでは。
 奇跡だった。この時ばかりは、特に信じてもいなかった神に礼を言ったかもしれない。あの時、唐突に自分の前から姿を消した彼と、再会できるとは思わなかった。
 ただ、再会したと言っても、それは一方的なことだ。自分は幹部以上の上位に立っているのに対し、彼は名前もない平の下っ端。繋がりも何もないし、仮に彼女が権限を行使できて会えたとしても、立場上、彼とは昔のような関係ではいられない。
 しかも、彼は違う女を見ていた。幼い彼女には、それが恋慕なのか憧憬なのか哀憐なのかは分からない。だが、どのような形であれ自分を見ない彼を、彼女は悲しく思う。
 それから長い時間が経過し、次の奇跡が起こる。
 彼と彼女は、同じ立場の者となった。彼は彼女の存在にたいそう驚いていたが、彼女はそれ以上に驚き、同時に嬉しくもあった。組織に縛られているとはいえ、また彼と一緒にいられる。それだけで、彼女は幸せだった。
 けれども、その感情が間違っていることに気付く。彼女が組織の者として本格的に動く最中、彼女の思いは少しずつ変化していく。
 依存したままでいいのかと、甘えたままでいいのかと。彼女は自問自答を繰り返す。
 その過程で出会ったのが、彼女だ。自分よりも幼い少女。師に憧憬や思慕の念を抱く少女。自分と彼女は近い存在だと、何度も戦っているうちに理解した。
 そして、彼女は決心をする。自分と彼の関係にけじめをつけようと。
 そのためにまず、組織という束縛から抜け出さなくてはならない。分かりあえそうな少女を利用するようで心苦しいが、この際致し方ない。
 彼女は——フレイは覚悟を決める。自分の戦いの果てにあるもの、彼との未来を見るために——



 砂煙が舞い上がり、視界は不明瞭となる。どれくらい経ったか、しばらくすると砂煙も晴れ、二体のポケモンの行く末が明らかになる。
「……うん、まーそうだよねー」
 倒れていたのはノコウテイ。ピクリとも動かず、完全に戦闘不能となっていた。
「ありがとう、ノコウテイ。戻っていいよー」
 フレイはノコウテイをボールに戻す。結局フレイは、ミキのポケモンを一体も倒せないまま、残り一体まで追い詰められてしまった。
「これがあたしの最後の一体。あたしのすべてを、この子に賭けるよ」
 いつもとは違う雰囲気を醸し出すフレイ。彼女は、最後のボールを握り締める。
 そして、

「ストータス、出番だよー」

 フレイの最後のポケモンは、石炭ポケモン、ストータス。
 2mにもなる陸亀のようなポケモンで、赤褐色の肌と煤けたように黒い甲羅を持つ。甲羅にはいくつもの穴が開いており、中では轟々と炎が燃やされている。
「来た……!」
 ミキはそのストータスを見て、緊張を走らせる。
「このストータスについては知ってるよね? あたしの最強のポケモンにして、プラズマ団で最も強固なポケモン」
「……っ!」
 いつもと違うフレイが発する気迫に飲まれそうになるも、ミキはなんとか自身を鼓舞し、奮い立たせる。
「大丈夫、兄さんやお父さんと特訓したんだ……」
 キリッと、ミキはストータスとフレイをまっすぐに見つめる。
「ふぅーん、いいねー、その目。あたしももっとまっすぐなら、こんなに悩む必要はなかったのかもしれないねー」
 そう言って、フレイはストータスへと指示を出す。
「ストータス、噴火!」
 ストータスの背中から、凄まじい勢いで莫大な量の石炭が噴射された。溶岩と思えるほど熱された石炭は爆炎を纏い、ポリゴンZへと襲い掛かる。
「ポリゴンZ、ハイドロポンプ!」
 ポリゴンZは大量の水流を噴射するが、正に焼け石に水だ。降り注ぐ石炭の勢いは止まらない。
「破壊光線!」
 続いてポリゴンZは、赤黒い極太の光線を発射する。光線は石炭と激しく競り合うが、ほんの僅かな差で破壊光線が押し切られ、石炭がポリゴンZに降り注いだ。
「ポリゴンZ!」
 ハイドロポンプと破壊光線で威力を減衰していたので、まだ戦闘不能ではないが、ポリゴンZはかなりの大ダメージを受けていた。
(やっぱり、この噴火だけ他の技とは違う。威力が桁違いに高い……!)
 前に戦った時にも思ったことだが、これで確信した。このストータスは、噴火の威力だけがずば抜けて高い。
「でも、今はとにかく攻める! ポリゴンZ、ハイドロポンプ!」
 ポリゴンZは大量の水を噴射し、ストータスに直撃させる。
 炎と岩、二つのタイプの弱点を突く水タイプの大技、ハイドロポンプ。普通ならこの一撃で戦闘不能、もしくは致命傷を与えられるはずなのだが、
「やっぱり、効いてない……?」
 フレイのストータスは、いつもと変わらぬ立ち姿で、ハイドロポンプを受け切っていた。
「残念だけど、四倍弱点を一発や二発撃ち込んだくらいじゃあ、あたしのストータスは倒せないなー。ストータス、大地の怒り!」
 ストータスは大地を揺るがし、地面から大量の土砂を噴出する。
「っ、バグノイズ!」
 襲い掛かる土砂を、ポリゴンZは狂ったような音波で打ち消す。やはり、噴火以外の技の威力は並程度だ。
「もう一度、ハイドロポンプ!」
「ジャイロボールだよ!」
 再び水流を噴射するポリゴンZだが、ストータスはその場で超高速回転。直撃する水流を散らしてしまう。
「そっか、ジャイロボールもあったんだね……だったらこれ! 十万ボルト!」
 ポリゴンZは強力な電撃を放ち、ストータスを攻撃。しかし効果抜群でもないこの技は、ストータスには有効打を与えられない。
「大地の怒り!」
「バグノイズ!」
 再び噴き出される土砂を、騒音の如き音波で吹き飛ばすポリゴンZ。
「ハイドロポンプ!」
 そして間髪入れずに水流を噴射。ストータスに直撃させるが、
「ジャイロボール!」
 途中でストータスは高速回転し、水を散らしてしまう。攻撃が遅かったのである程度はハイドロポンプも当てられたが、あまりダメージには期待できない。
「十万ボルト!」
 続いてポリゴンZは、強力な電撃をストータスに浴びせる。しかしハイドロポンプでも堪えなかったストータスが、効果抜群でもない電撃でやられるはずもない。
「でも麻痺しちゃうのは嫌だなー……よし、なら一気に決めちゃおうか」
 と言って、フレイはストータスに指示を出す。
「ストータス、噴火だよ!」
 ストータスは背中から大量の石炭を噴射する。溶けるほど高温にまで熱された石炭と炎は、山なりの軌道を描き、一直線にポリゴンZへと襲い掛かる。
「っ——ポリゴンZ、破壊光線!」
 少し逡巡するが、避けるのは無理と判断し、ポリゴンZは攻撃の態勢を取った。分離した腕と尻尾の先端を合わせ、超高密度のエネルギーを最大まで圧縮し、解き放つ。
 刹那、赤黒い極太の光線が発射された。
 噴火の爆炎と破壊の光線が激しくぶつかり合い、バチバチとスパークし、火山雷が発生する。
 派手にせめぎ合う双方の技だが、結果自体はあっさりしていた。
「ポリゴンZ!」
 爆炎が破壊光線を突き破り、そのままポリゴンZへと降り注ぐ。
 電脳世界の戦士は、なす術もなく爆炎に飲み込まれてしまった。


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