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ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——完結——
日時: 2013/04/14 15:29
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=21394

 今作品は前作である『ポケットモンスターBW 真実と理想の英雄』の続きです。時間としては前作の一年後となっておりまして、舞台はイッシュの東側がメインとなります。なお、前作は原作通りの進行でしたが、今作は原作でいうクリア後なので、オリジナリティを重視しようと思います。
 今作品ではイッシュ以外のポケモンも登場し、また非公式のポケモンも登場します。

 参照をクリックすれば前作に飛びます。

 では、英雄達の新しい冒険が始まります……

 皆様にお知らせです。
 以前企画した本小説の人気投票の集計が終わったので、早速発表したいと思います。
 投票結果は、
総合部門>>819
味方サイド部門>>820
プラズマ団部門>>821
ポケモン部門>>822
 となっています。
 皆様、投票ありがとうございました。残り僅かですが、これからも本小説をよろしくお願いします。

登場人物紹介等  
味方side>>28  
敵対side>>29
PDOside>>51
他軍勢side>>52
オリ技>>30
用語集>>624

目次

プロローグ
>>1
第一幕 旅路
>>8 >>11 >>15 >>17
第二幕 帰還
>>18 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27
第三幕 組織
>>32 >>36 >>39 >>40 >>42 >>43 >>46 >>49 >>50 >>55 >>56 >>59 >>60
第四幕 勝負
>>61 >>62 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>72 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80
第五幕 迷宮
>>81 >>82 >>83 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90 >>92 >>93 >>95 >>97 >>100 >>101
第六幕 師弟
>>102 >>103 >>106 >>107 >>110 >>111 >>114 >>116 >>121 >>123 >>124 >>125 >>126 >>129
第七幕 攻防
>>131 >>135 >>136 >>139 >>143 >>144 >>149 >>151 >>152 >>153 >>154 >>155 >>157 >>158 >>159 >>161 >>164 >>165 >>168 >>169 >>170 >>171
第八幕 本気
>>174 >>177 >>178 >>180 >>184 >>185 >>188 >>189 >>190 >>191 >>194 >>195 >>196 >>197 >>204 >>205 >>206 >>207 >>211 >>213 >>219 >>223 >>225 >>228
第九幕 感情
>>229 >>233 >>234 >>239 >>244 >>247 >>252 >>256 >>259 >>262 >>263 >>264 >>265 >>266 >>269 >>270 >>281 >>284 >>289 >>290 >>291 >>292 >>293 >>296 >>298
第十幕 強襲
>>302 >>304 >>306 >>307 >>311 >>316 >>319 >>320 >>321 >>324 >>325 >>326 >>328 >>329 >>332 >>334 >>336 >>338 >>340 >>341 >>342 >>343 >>344 >>345 >>346
弟十一幕 奪還
>>348 >>353 >>354 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>376 >>377 >>378 >>379 >>380 >>381 >>382 >>383 >>391 >>393 >>394 >>397 >>398 >>399 >>400
第十二幕 救世
>>401 >>402 >>403 >>404 >>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>412 >>413 >>414 >>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>433 >>436 >>439 >>440 >>441 >>442 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447 >>450 >>451 >>452 >>453 >>454
第十三幕 救出
>>458 >>461 >>462 >>465 >>466 >>467 >>468 >>469 >>472 >>473 >>474 >>480 >>481 >>484 >>490 >>491 >>494 >>498 >>499 >>500 >>501 >>502
第十四幕 挑戦
>>506 >>511 >>513 >>514 >>517 >>520 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>534 >>535 >>536 >>540 >>541 >>542 >>545 >>548 >>549 >>550 >>551 >>552 >>553 >>556 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>568
第十五幕 依存
>>569 >>572 >>575 >>576 >>577 >>578 >>585 >>587 >>590 >>593 >>597 >>598 >>599 >>600 >>603 >>604 >>609 >>610 >>611 >>614 >>618 >>619 >>623 >>626 >>628 >>629 >>632 >>638 >>642 >>645 >>648 >>649 >>654
>>657 >>658 >>659 >>662 >>663 >>664 >>665 >>666 >>667 >>668 >>671 >>672 >>673 >>676 >>679 >>680 >>683 >>684 >>685 >>690 >>691 >>695

第十六幕 錯綜

一節 英雄
>>696 >>697 >>698 >>699 >>700 >>703 >>704 >>705 >>706 >>707 >>710 >>711
二節 苦難
>>716 >>719 >>720 >>723
三節 忠義
>>728 >>731 >>732 >>733
四節 思慕
>>734 >>735 >>736 >>739
五節 探究
>>742 >>743 >>744 >>747 >>748
六節 継承
>>749 >>750 >>753 >>754 >>755
七節 浮上
>>756

第十七幕 決戦

零節 都市
>>759 >>760 >>761 >>762
一節 毒邪
>>765 >>775 >>781 >>787
二節 焦炎
>>766 >>776 >>782 >>784 >>791 >>794 >>799 >>806
三節 森樹
>>767 >>777 >>783 >>785 >>793 >>807
四節 氷霧
>>768 >>778 >>786 >>790 >>792 >>800 >>808
五節 聖電
>>769 >>779 >>795 >>801 >>804 >>809
六節 神龍
>>772 >>798 >>811
七節 地縛
>>773 >>780 >>805 >>810 >>813 >>814 >>817
八節 黒幕 
>>774 >>812 >>818

最終幕 混濁
>>826 >>827 >>828 >>832 >>833 >>834 >>835 >>836 >>837 >>838 >>839 >>840 >>841 >>842 >>845 >>846 >>847 >>849 >>850 >>851
エピローグ
>>851

2012年冬の小説大会金賞受賞人気投票記念番外
『夢のドリームマッチ ver混濁 イリスvsリオvsフレイ 三者同時バトル』>>825



あとがき
>>852

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171



Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——再開します—— ( No.595 )
日時: 2012/12/31 21:20
名前: プツ男 (ID: DN0pvQeX)

遂にの遂にでエレクトロが9〜10割の本気での解放ですか!
やはり解放序列3位ともなると、すごいことになるんでしょうね....
考えてみれば、キュレムの刻印を刻む前は7Pは常時解放状態だったのですよね......ああ、想像できない......
リオさんはこのエレクトロに勝てるのでしょうか、頑張って欲しいですね。

ああ、後、ツユサとウズメの過去、そしてどうしてあんな性格になったのかの追加記述をしました。確認よろしくお願いします......かなり無理矢理ですけど。

Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——再開します—— ( No.596 )
日時: 2012/12/31 23:46
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

パーセンターさん

 戦う資格は手にしたのに邪魔が入って戦えない……なかなかむずがゆい状況にありますね、イリスは。
 とはいえ、イリゼもイリゼで、まだ戦う気はないような素振りは見せていますが……

 シズイは僕も好きです。ポケモンっていろんな地方をモデルにしてるわりには、意外と方言とかなかったりするので。たぶん他に方言使ってるキャラと言えば、皆のトラウマのアカネと、まいこはんくらいではないでしょうか。
 シズイの訛りに関しては、正直上手く書けている気がしません。彼は鹿児島弁らしいのですが、博多弁とか佐賀弁とかが混じってしまう……

 リオと完全にフルパワーのエレクトロのバトル、そしてアキラとマオのバトル……どう転ぶか、乞うご期待です。

 了解です、後程確認しておきます。
 まあ他のキャラとのかかわりがなくとも、なんとかなるケースはあるんで、大丈夫だと思います。


プツ男さん

 遂にあのエレクトロが完全に本気を出しました。
 確かに彼が本気になれば凄いことになるでしょうね。まあ、書くのは僕ですが。
 というより、キュレムの刻印を刻んだからこそ完全にフルパワーが出せるようになった、って感じですかね。
 リオ対エレクトロ、地味に二人にも因縁が出来つつありますから、どっちが勝つかは早々予想できるものではないでしょう……やはり乞うご期待です。

 設定追加は了解しました。後程確認しておきます。




 またまた返信ついでで悪いのですが、前のコメに少しばかり捕捉を。
 設定の追加は敵キャラだけでなく、味方キャラも受け付けています。とはいえ、味方キャラだと敵よりも生かしにくくなりそうということを先に断っておきます。敵の方がドラマチックになりやすいですからね、こういうのは。
 そんなわけで、設定追加は敵味方人数問わず受け付けています。ただし、生かせるかどうかは保証しかねますので、ご了承ください。
 それではみなさん、よいお年を。

Re: 432章 算木 ( No.597 )
日時: 2013/01/01 22:40
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 イリスやリオがヒオウギで行動している頃、ミキとザキのペアはサンギタウンにて、プラズマ団と交戦していた。
 サンギタウンもヒオウギほどではないがプラズマ団がひしめいており、二人は片っ端から団員たちを蹴散らしている。
「フィニクス、ドラゴンビート!」
「テペトラー、マグナムパンチ!」
 フィニクスは龍の音波を、テペトラーは破壊の拳をそれぞれ繰り出し、プラズマ団をポケモンを吹き飛ばす。しかし、
「うぅ、倒しても倒してもキリがないよ……」
「まったくだ。それに、逐一ぶっ飛ばすのも一苦労だぜ、こりゃ」
 最初の頃は比較的簡単に敵を蹴散らしていた二人だが、途中から強い者を送り込んできたのか、相手が手強くなっている。二人のポケモンでも、一発二発ではなかなか倒れない。
「ったくよ、急に強くなりやがって。しかも周りは女ばっかりだしよ」
「え?」
 ザキの吐き捨てるような何気ない一言に、ミキは反応した。
 マスクをしているので分かりにくかったが、確かに二人を取り囲んでいるのは全て女性団員だ。しかもよく見れば町の住民——恐らくプラズマ団が私服で偽装している——もポケモンを繰り出して、二人を襲っている。
「しっかしこんだけ多けりゃ姦しいどころか喧しいな。なんだって女ばっかりなんだよ」
 苛立ったようなザキの発言。とその時、前方から人の気配を感じ取る。冷たい氷柱のような気配だ。

「女性ばかりなのは当然です……氷霧隊は女性団員のみで構成されていますからね……」
「やっほー。ミキちゃんザッキー、フレイちゃんだよー」

 現れたのは、身長とほぼ同じ長さの青い髪に、水色のワンピース。冷たく突き刺さるような瞳でザキたちを見据える女。7Pレイ。
 そしてレイに抱きかかえられている、赤く長いポニーテールに簡素な薄桃色の浴衣を着た少女。7Pフレイ。
 二人が現れた時にはもう、他の団員たちは皆、敬礼なり頭を下げるなりしていた。この光景から二人が上司としてよく慕われているのが分かるが、その視線はほとんどレイに注がれている。
 ただその光景を目にしたザキは、どこの軍隊だよ胸中でツッコむ。
「氷霧隊……ってことは、師匠が手も足も出なかったって言ってた
あの青い髪のお姉さんが、この人たちを率いてるんだ」
「つーかザッキーって俺のことかよ」
 嫌そうに眉を寄せるザキだが、二人はそんなこと意にも介さず話を進める。
「今の状況から分かると思いますが、あなたがたの相手はわたくしたちが務めます……本来ならこのまま人海戦術で数にものを言わせて押し切れるのですが、そうなれば時間もかかりますし、彼女たちの負担も大きい……それにあなたには私怨もありますしね」
 そう言ってレイはザキを睨み付ける。
「フォレスが最近あたしに冷たくてさー、全然構ってくれないからレイに慰めてもらおうと思ったんだけど、レイも忙しいみたいだしー、だったらミキちゃんと遊びたいなーってねー」
 ミキに視線を向けながら、にへらーと笑うフレイ。
「……まあ、あのまま雑兵相手にしててもつまんねぇし、こっちの方が手っ取り早そうだ。……ミキ」
「うん。私も、大丈夫」
 そういうわけで、対戦相手は決定した。あとはフィールドだ。
「……フレイちゃん、わたくしも解放します……離れていた方がいいでしょう。わたくしも、あなたは巻き込みたくない……」
「はーい、んじゃ場所を移そうかー」
 言ってフレイは軽く袖を振り、ボールを一つ取り出す。そしてそのボールから、メタグロスを繰り出した。
 レイはフレイをそっとメタグロスの上に乗せる。
「そんじゃー、サンギ牧場で待ってるよー。こっから北西、二十番道路を北に抜けたとこだから、道間違えないでねー?」
 そう言い残すと、フレイはメタグロスに乗って去って行ってしまった。
「……じゃあ、兄さん」
「ああ、行ってこい。なんでもあのフレイとかいう奴のエースは、あの野郎ですら叶わなかったって言うじゃねぇか。お前が仇でもなんでも取ってきやがれ」
「うん……行ってきます」
 そしてミキも、フィニクスに乗って北西の方へと飛び立っていく。
 気付けば下っ端団員たちもいなくなっており、この場にいるのはザキとレイだけとなった。
「……あん時は、悪かったな」
「あの時……?」
「P2ラボつったか。あそこで殴ったことだよ」
「ああ……」
 レイは無表情ながらも今ようやく思い出したように声を上げる。
「別に、気にしてません……わたくしの私怨は、もっと別のものです……」
「そんでもけじめはつけとかねぇとな……出て来い、ヘルガー」
 ザキはテペトラーを手早くボールに戻すと、ダークポケモンのヘルガーを繰り出した。
「……おいでなさい、ヤミクラゲ」
 対するレイのポケモンは、水・悪タイプのポケモン、ヤミクラゲ。タイプ的には、攻防共に相性が良い。
 そしてヤミクラゲが場に出た瞬間、レイの両脚の光が漏れる。これでレイも解放状態。
「先制攻撃の権利はくれてやる。リオの昔馴染みだとかいう軽薄眼鏡野郎じゃねぇが、レディーファーストって奴だ。この前の侘びのつもりじゃねぇが、ありがたく受け取れ」
「押し付けがましい権利ですね……ですが頂いておきましょうか。ヤミクラゲ、危険な毒素」
 ヤミクラゲは毒々しい塊を生成し、放物線を描きながらヘルガーへと投げつけた。この一撃は、威力云々以前に当たれば危険だろう。
「ヘルガー、ダークロアー!」
 だがヘルガーは闇の咆哮を上げ、あっさりと毒の塊を粉砕してしまう。さらに、
「悪巧み!」
 ただでさえ狡賢い脳をさらに活性化させ、特攻を高める。
「火炎放射だ!」
 そして放たれる灼熱の火炎。悪巧みで特攻が上がっているので、文字通りの高火力だが
「吹雪です」
 ヤミクラゲが放った凍てつく猛吹雪により、放射された炎が消し飛ばされてしまった。
 風を利用する吹雪とはいえ、氷技で特攻が二段階上がった状態の火炎放射を吹き飛ばす辺り、7Pの強さが現れている。
「まだだ! ヘルガー、放電!」
「ヤミクラゲ、悪の波動です」
 ヘルガーは周囲にまき散らすようにして電撃を放ち、ヤミクラゲは悪意に満ちた波動を放つ。
 広範囲にまき散らされた電撃はヤミクラゲを捉えるが、悪の波動も放電を突き破ってヘルガーに直撃する。互いに一瞬怯むが、すぐに態勢を立て直し、
「悪巧み!」
「させません。悪の波動」
 ヘルガーがさらに特攻を上げようとするも、連続で悪の波動が飛び、またもヘルガーに直撃。悪巧みが中断される。
「危険な毒素です」
 そしてヤミクラゲの連続攻撃、毒々しい有害物質の塊を生成してヘルガーに投げつける。放物線を描く軌道だが、弾速は意外に速い。
「チッ、ダークロアー!」
 ヘルガーは闇の咆哮を放って毒素を粉砕し、
「もう一発ダークロアー!」
 続け様にもう一度ダークロアーを撃ち、ヤミクラゲを攻撃する。悪巧みで特攻が上がっているとはいえ、相手は悪タイプで特防の高いヤミクラゲだ。威力は半減され、ダメージはあまり通っていない。
 けれどその一撃は、確かにヤミクラゲの動きを一瞬だけ止めた。
「今だヘルガー、悪巧み!」
 その一瞬の隙を突いてヘルガーは、脳をさらに活性化させる。これでヘルガーの特攻は四段階上昇。効果いまひとつの技でも、相当な威力になるだろう
「火炎放射!」
 ヘルガーは口から燃え盛る火炎を放つ。まるで火事でも起こっているかのような大火力の炎だ。
「ヤミクラゲ、吹雪です」
 ヤミクラゲは最初と同じように吹雪で消し飛ばそうとするが、今度は流石に火炎放射の火力が上回り、吹雪を突っ切ってヤミクラゲの体を焼き焦がす。
「追撃だ、ダークロアー!」
「重ねてください、悪の波動です」
 ヘルガーは大地を揺るがすほどの破壊力を秘めた咆哮を放ち、ヤミクラゲは複数発の悪の波動を一点にまとめて撃つ。
 咆哮と波動がぶつかり合い、しばし競り合ったが、やがて互いに相殺された。
「もう一発ダークロアーだ!」
「広げて悪の波動」
 連続でダークロアーを放つヘルガー。ヤミクラゲも同じように悪意に満ちた波動を連続発射する。
 しかし今度は、咆哮が確実にヤミクラゲを捉えた。それと同時に、連続で放たれた悪の波動が、一斉にヘルガーを襲う。
「……やってくれるじゃねぇか。前よりも強くなったんじゃねぇの?」
「どうでしょうね。ただ、わたしも根本はあなたがたと同じです。いつまでも同じ場所に立っているはずがありません」
 二人はそれぞれ鋭い目つきで睨み合う。

 PDOザキと、7Pレイ。この二人の因縁も、まだまだ続くのであった。



HAPPY NEW YEAR! もう夜ですが、あけましておめでとうございます。今回は実は作者のお気に入りペアであるミキ&ザキとレイ&フレイの計四人が登場です。いやーにしてもザキのシスコン設定がもう霞んでますね。なんだか口調が荒っぽい不良キャラの道を歩んでいるような気がしてなりません。次回は誰かのバトルを進めるか、もしくはもう一組バトルフラグを立てようか悩んでおります。というわけで次回は未定です。それではみなさん、今年も白黒と『混濁の使者』をよろしくお願いします。目標は今年中に完結することです。次回もお楽しみに。

Re: 433章 宝石 ( No.598 )
日時: 2013/01/02 16:42
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 タチワキコンビナート。
 それは、サンギタウンから東に進んでいった街、タチワキシティを南下すると見られる工業地帯で、巨大なクレーンや数多くのタンクが立ち並んでいる。
 生産性向上のために造られたコンビナートだが、しかしここのウリというか特徴の一つとして、野生ポケモンが住み着いている点が挙げられる。なのである意味では、自然と科学の共存形態を最も現している場所と言えるのかもしれない。
 そんなタチワキコンビナートに、一人の青年がいた。男性にしては少し長めの青髪に、藍色の瞳。傍らには、顎斧ポケモン、オノノクス。
 最近腕と共に名を上げ始めたポケモントレーナー、ムントだ。
 彼はイリスたちと迎合こそしないものの、彼なりのプラズマ団打倒を掲げており、今はそのための戦力を増強しようとしているところなのだが、
「……やはり、即戦力になるような野生のポケモンはそういないか」
 タチワキコンビナートは確かに様々な野生のポケモンが出現する場所ではあるのだが、出て来るのはドガースやコイルなどで、プラズマ団を倒すための即戦力となるようなポケモンは出て来ない。イリスが苦戦していたように、最近は下っ端でもそれなりの実力を身に付けている。かといって今から種のポケモンを育てようにも、手間も時間もかかり、その間にまたプラズマ団が動き出し、いずれその目的を達してしまうだろう。
「となると、やはり今の戦力をさらに強化する方が効果的か」
 ムントはふと隣のオノノクスを見遣る。深紅に煌めく斧のような牙。その身を守る頑強な鱗。しなやかさも備える強靭な肉体。どれを取っても相当なステータスで、そんじょそこらのオノノクスとは比べるべくもないだろう。
「……だが、オノノクスばかりを鍛えていてもしょうがない。出来ることなら、アギルダーの速力、アーボスクの耐久力、ネクロシアの攻撃力をさらに伸ばしたいところだな。ポケモンを鍛えるなら、どこだ。リバースマウンテンか、バトルサブウェイか……突如出現したという、黒の摩天楼や白の樹洞もいいな。いや、いっそのことジムリーダーや四天王に挑戦するべきか……」
 とりあえず、ムントはオノノクスをボールに戻した。そしてもうここには用はないと言わんばかりにタチワキコンビナートから立ち去ろうとするが、刹那、何かの気配を感じた。
 神秘的で神々しくも力強い、例えるならそう、龍のような気配——

「みぃーつけた。こんなところにいたんだ。探したよ、ムントくん」

 ムントは、老若男女の区別がつかない合成音声にも似た奇怪な声のする方を向く。その声の主は、コンビナートに並べられたタンクの一つ、その上に直立していた。
 黒いローブを身に纏い、顔は完全にフードに隠れている。そしてフードからは藍色の髪が垂れ下がるようにして伸びていた。
 姿こそ人の形を成しているものの、その正体は謎に包まれている7P、ドランだ。いつもの奇々怪々な喋りではなく、幼い子供のような口調から察するに、どうやら既に解放しているようだ。
「ドランは君が気に入っちゃったみたいなんだ。君とバトルがしたいから、ここまで探しに来たんだよ?」
 ドランはタンクから飛び降り、ムントの正面まで来る。もう一度言うと、タンクである。液体などを収容する工業用の巨大な容器である。そこから飛び降りて、普通の人間が無事でいられるはずがない。つまりそれは、ドランは普通の人間ではない、さらに行くと人間ですらないことを示していた。
 だがムントは、そんなことは気にも留めない。どころかむしろ、ドランの登場によってどこか晴れ晴れとしたような気配さえある。なぜなら、
「……そうか。敵を倒すために鍛えるという発想が、既に非効率的だったのか。プラズマ団を滅する、そのためには、敵を倒しながら鍛えればいい」
 言ってムントは、モンスターボールを握り込んだ。
 それを見てドランも、一つのボールを取り出す。
「やる気十分だね、ドランも嬉しいよ。……辛苦を伝えよ、ワラガシラ!」
 ドランの初手は、辛みポケモンのワラガシラ。束ねた灰色の藁のような体の中央に赤い顔があり、大きな腕の付け根辺りから、青白い電気を放出している。
「行くぞ。まずはお前だ、アギルダー!」
 対するムントの先鋒はアギルダー。ライダーのような出で立ちで、忍者の如きスピードを誇るポケモンだ。
「アギルダー、撒菱」
 最初に動いたのはアギルダーだ。アギルダーは地面に向かって、鋭く尖った物体を無数に撒き散らす。
 これでドランは、ポケモンを交代させるたびに、それが飛行タイプや特性浮遊でない限りダメージを受けるようになってしまう。
「ふーん。まあでも関係ないよ。ワラガシラ、ギガスパーク!」
 ワラガシラはいきなり大技を繰り出してきた。巨大な電撃の塊を生成し、アギルダーへと投げつけるが、
「かわして撒菱!」
 素早く横にそれてギガスパークをかわし、再び撒菱を撒く。これで交代時のダメージ量が増加した。
「シャドークローだよ!」
「かわせ!」
 ワラガシラが影の爪を作り出してアギルダーへと向かっていくが、アギルダーの身のこなしはその攻撃を容易く回避。
「撒菱」
 そして最後の撒菱を撒き、下準備は完了だ。ここから、アギルダーの攻撃が始まる。
「アギルダー、虫のさざめき!」
「ワラガシラ、もう一度シャドークロー!」
 アギルダーは体を小刻みに振動させ、さざめくような音波を放ってワラガシラを攻撃。ゴーストタイプのワラガシラに虫のさざめきは効果いまひとつのはずだが、意外にもそこそこ威力があり、ワラガシラは一瞬だけ怯んでしまう。
 しかしすぐに気を取り直して影の爪で襲い掛かるが、アギルダーに容易くかわされてしまう。
「まだまだ! サイコバレット!」
「全てかわせ!」
 ワラガシラは両腕を突き出し、念動力を固めた銃弾をマシンガンのように連射するが、アギルダーは飛来する銃弾を全て回避してしまう。
「続けてアームハンマー!」
 最後の銃弾を跳んでかわして着地した瞬間を狙い、ワラガシラはアギルダーに殴り掛かる。しかしアギルダーは地に足を着けた瞬間に、また跳躍して後方に退避。
 大量の銃弾をかわし切り、続け様に繰り出された鉄拳すらも回避するその素早さは恐ろしいが、
「はっやいねー、そのアギルダー。でも……虫のジュエルに、軽業かぁ」
 ドランはそう呟く。
 アギルダーのスピードは、虫のさざめきの使用してからいきなり向上した。それはアギルダーの特性、軽業から来るものだ。
 軽業は発動すればポケモンの素早さを一気に跳ね上げるが、そのためには道具を使い捨てなければならない。なのでムントは、アギルダーに虫のジュエルを持たせていた。
 ジュエルとは、主にイッシュ地方で発掘される宝石で、ポケモンが特定のタイプの技を繰り出すのに反応し、その技の威力を高めてくれるという代物だ。
 ジュエルは十七種類存在し、それぞれ対応するタイプがある。十七種類のジュエルには対応するタイプに沿った名前が付けられ、虫のジュエルなら虫タイプの技の威力が上昇するのだ。
 使用後は砕け散ってなくなってしまうが、軽業のように持ち物をなくすことで発動する特性にとっては、そのデメリットもプラスになる。
「アギルダーはもともと速いポケモンだし、そこから軽業でさらに速くなるのかぁ。これ以上速くなってどーするの?」
 表情は見えないが、ニヤニヤと笑うように言葉を投げかけるドラン。ワラガシラではアギルダーのスピードにはついていけないといのに、随分と余裕のある態度だ。
「……アシッドボム!」
 アギルダーは残像を残すようなスピードでワラガシラの背後に回り、酸性の爆弾をぶつける。威力は低くダメージもあまりないが、これでワラガシラの特防が下降した。
「もう一撃!」
「アームハンマー!」
 アギルダーのアシッドボムが炸裂し、ワラガシラも拳振るって反撃するが、アギルダーには掠りもしない。
「連続でアシッドボム!」
 ワラガシラがブンブンと腕を振るう中、軽くそれをいなしながら、アギルダーのアシッドボムがワラガシラにぶつけられる。これでワラガシラの特防は惨憺たるものだろう。
「いっくよー! ギガスパーク!」
 ワラガシラは巨大な電気の塊を生成して、アギルダーへと放つ。がしかし、それがアギルダーの体に届くことはなかった。
「虫のさざめき!」
 アギルダーは迂回するようにギガスパークをかわすと、さざめく音波を放ってワラガシラを吹っ飛ばす。
 散々特防を下げられたワラガシラは、その一撃で戦闘不能だ。
「あーあ。やられちゃった」
 軽い調子でワラガシラをボールに戻すドラン。そして、
「言っとくけど、まだまだドランの力はこんなものじゃないよ?」
 ドランは底知れぬ空気を発しながら、静かに次のボールを構えるのだった。



はい、バトルフラグ立てちゃいました。今回はムントとドラン、ドラゴンに関係あるもの同士です。ドランは解放すると口調が幼くなりますが、なんだかフレイに似てる気がしなくもないですね。まあ、あっちは間延びした口調が特徴のはずなので、区別は可能なはずなんですが。フラグを立てるのは今度こそ終わりのはず。次回からは本格的に他の人たちのバトルを描いていきます。誰になるかは次回をお楽しみに。

Re: 434章 暗示 ( No.599 )
日時: 2013/01/02 22:15
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 十九番道路はヒオウギシティのすぐ北にある道路で、山のふもとになっている。そのためさらに北上すると崖が見えてくるのだが、この時この場では、崖は存在しない。
「……さて、場所も移したことだし、さっさと始めましょうか」
「ああ……そう、だな……」
 向かい合っているのは、アキラとマオ。マオは不機嫌そうではあるが余裕のある表情でボールを構える。
 対するアキラは、息も絶え絶え、額に汗を浮かべ、もう既に疲労している。というのも、彼は飛行できるポケモンを持っていなかったために、ララミンゴでここに来たマオを走って追いかける羽目になったからだ。
 しかし彼は、そんな状態でもなんとかボールを握り込んだ。
「貴方と戦ってもしょうがないし、手っ取り早く一対一で済ませましょう。私も、そんなに暇ではないの」
「随分と言ってくれるな……まあ、勝負のルールは好きにしてくれて結構だ」
 とりあえず一対一という早期決着型の対戦形式となり、二人はそれぞれポケモンを繰り出す。
「出て来なさい、マニューラ!」
「頼んだぜ、ホムロソク!」
 マオが繰り出すのは、直立した猫のようなポケモン、マニューラ。
 アキラが繰り出したのは、蝋燭そのままな体に青い炎のような顔。そして分離した白い手を持つポケモン、ホムロソク。
 マニューラは氷・悪タイプ。ホムロソクは炎・ゴーストタイプ。どちらのポケモンも、お互いの弱点を突くことができるため、この勝負、同相手の技を受けないようにするかが鍵となりそうである。
「私から行かせてもらうわ。マニューラ、泥爆弾!」
 マニューラは球状に固めた泥を手の中に作り出し、ホムロソクへと投げつける。地面タイプの技なのでホムロソクには効果的な技だが、
「ホムロソク、マインブラストだ!」
 ホムロソクは周囲に爆発を起こして泥爆弾を吹き飛ばしてしまう。さらに、
「放電!」
 あえてマニューラを狙わず、ランダムに電撃を撒き散らす。狙いがない攻撃ほどかわし難いものはなく、マニューラも放電を受けてしまった。
「今だホムロソク! 接近してマインブラスト!」
 放電を受けて動きが止まった隙に、マニューラへと接近するホムロソクだが、マニューラも黙ってはいない。
「マニューラ、嫌な音!」
 ホムロソクが高速で接近する中、マニューラは爪を擦り合せて甲高い音を鳴らす。それによってホムロソクの動きは止まり、また防御力もダウンする。
「ぶち壊す!」
 そして今度はマニューラの方からホムロソクへと駆け込み、全てを破壊するかのような一撃を繰り出す。が、しかし、
「くっ、フラッシュだ!」
 直前でホムロソクは眩い閃光を放つ。それによりマニューラの攻撃の軌道が若干ずれてしまい、ホムロソクの体を捉えることはなかった。
「マインブラスト!」
「ぶち壊すよ!」
 ホムロソクは地雷のような爆発を引き起こして攻撃するが、マニューラも地面に拳を叩き付けて土砂を噴出させ、マインブラストのダメージを軽減する。
「一旦下がりなさい、マニューラ。スターフリーズよ」
 土砂で視界を遮りつつ、マニューラは後退する。その際に巨大な星型の氷塊を作り出し、ホムロソクにぶつけた。
「だったら……ホムロソク、乗り移る!」
 スターフリーズの直撃を受けて吹っ飛ばされたホムロソクは、そのまま動かず目を瞑る。するとホムロソクの体から白いもやのような煙が出て来て、マニューラへと向かっていく。
「! マニューラ、かわしなさい!」
 マニューラは慌てたように横に跳んで煙をかわそうとするが、煙はしつこくマニューラを追いかけ、遂にマニューラと接触。その体の中に吸い込まれるように入っていく。
 するとマニューラは苦しそうに呻き、片膝を着く。同時に煙もマニューラから出て来て、ホムロソクの中へと戻っていった。
「へっ、効果いまひとつでも意外と効くだろ、ホムロソクの乗り移るは。混乱しなくてよかったな」
「……まだマニューラは戦闘不能じゃない。ダメージを与えたくらいで、粋がるのはやめなさい。マニューラ、スターフリーズ!」
 マニューラは立ち上がると、巨大な星型の氷塊を生成し、ホムロソクへと投げ飛ばす。
「放電で相殺だ!」
 ホムロソクも狙いを氷塊に固定して電撃を放つが、氷塊は砕けない。少しひびが入っただけだ。
「くっそ、だったら……マインブラスト!」
 氷塊が近づいてきたところで、ホムロソクは爆発を引き起こし、今度こそ氷塊を粉砕する。が、砕けた氷の破片の一部が、ホムロソクに襲い掛かった。さらに、
「接近よ、マニューラ。泥爆弾!」
 マニューラが泥の塊を投げつけながら、ホムロソクへと駆け込ん来る。
「特殊技とはいえ、命中率が下がる泥爆弾は喰らいたくないな……ホムロソク、マインブラストだ!」
 ホムロソクは爆発を起こして飛来する泥爆弾を相殺していく。それによって爆発の煙と砂煙が発生し、ホムロソクの視界が塞がれ——

「マニューラ、ぶち壊す!」

 マニューラの拳が伸びてきた。
 しまった、とアキラは己の失態に気付く。
 マニューラの泥爆弾は攻撃のためではなく、マインブラストでホムロソクの視界を塞がせるための布石。マニューラは地面タイプの技である泥爆弾だとホムロソクの覚えている技の中ではマインブラストでしか相殺できないのをいいことに、ホムロソクの目を封じてきた。
 ここまで接近されてしまえば、もう放電する隙も、マインブラストを放つ暇もない。乗り移るなんて論外だ。
 とはいえ嫌な音で下がったホムロソクの耐久力で、マニューラのタイプ一致かつ効果抜群のぶち壊すを耐えられるはずもない。
 となると、ホムロソクが選ぶ道は一つ。藁にも縋るような苦肉の策だが、もうこれしか生き残る術はない。

「ホムロソク、フラッシュ!」

 ホムロソクはマニューラの拳を視認した瞬間、目をくらますような眩い閃光を放った——



 時は遡り、プラズマ団がヒオウギに攻め込む前の頃。
 エレクトロは次の作戦について、フォレスと話し合いをしていた。
「私はヒオウギに向かうので詳細はガイアから聞いてもらいますが、フォレス、貴方の行き先はセイガイハ方面です」
「おう、了解したぜ。……つっても、また大がかりだな。ヒオウギを占拠するなんてよ」
「毎度のことです。それに、一部を除く聖電隊を総動員しますから、大丈夫でしょう」
「一部ってあいつだろ。あの黒い格好した奴。大丈夫なのかよ本当に、聖電隊って、あの双子が混ざってるじゃねぇか」
 フォレスは心の底から心配するように言う。
「ツユサとウズメのことですか? それならば心配には及びませんよ。彼らの暗示は解くことにしました」
「あっそ。それなら大丈夫か……は? 暗示?」
 うっかり流してしまいそうになるが、なんとかその不可解なワードを拾い上げるフォレス。
「お前、あいつらに暗示とかかけてたのか?」
「ええ、そうですよ。そうでもしないと、理性を保ち続けるのは大変ですからね。特に、我々の場合は」
 エレクトロの言葉に、フォレスは押し黙る。
 プラズマ団はある程度上層部まで行くと、精神的な面に傷がある場合が多い。なので解放状態のレイを初めとし、情緒不安定な者もそれなりにいるのだが、大体は集団でいることで理性を保っていたり、不幸なもの同士で集まって心を安定させていたりする。傷の舐め合いだと言ってしまえばそれまでだが。
「でもよ、ぶっちゃけるとあいつら雑魚じゃねぇか。態度も悪ぃし、いつ下っ端に降格するか分かったもんじゃねぇ」
 それでも、フォレスの中でのツユサとウズメの評価は低かったが、エレクトロは、
「いえいえ。今までは使用ポケモンなどを制限していましたが、その枷も外します。彼らが本気になれば、その力は聖電隊でも五指に入るほど……二人がかりで来ようものなら、私でも手こずりますかね」
「マジかよ……」
 絶句するフォレス。まさか、エレクトロがあの二人をそこまで評価していると思わなかったと驚くと同時に、なんであの二人が今まで上層部の立ち位置に居座れたのか、その謎が解けた。
「成程な、合点行ったぜ……で、一ついいか?」
「なんでしょうか?」
「あの双子……わざわざ暗示をかけるほど壮絶な過去なんだろ? 一体、何があったんだ? まさかレイさんより酷いとは思わねぇけどよ」
「そうですね。確かに最も酷な来歴を持つのはレイ。彼女の過去は壮絶の一言に尽きます。しかし、パターン自体はそれほど珍しくもありません。あの二人も同じです。暗示こそかけていましたが、それほど酷い過去でもありませんし、よくあるパターンですよ」
 言われてフォレスは、さらに問い返す。
「……その、パターンってのは?」
 エレクトロは一拍おいて、フォレスの問いかけに答えた。

「俗に言う家庭内暴力……実の両親からの虐待ですよ」




今回はアキラとマオのバトルです。最後にはアキラが窮地に立たされてしまいますが、彼はそれを切り抜けられるのか。そして後半で、エレクトロとフォレスの回想です。前回もうフラグは立てないと言いましたが、もしかしたらまた立つかもしれません。今回の後半がそれを物語っています。それでは次回も誰かのバトルにする予定です。お楽しみに。


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