二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——完結——
日時: 2013/04/14 15:29
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=21394

 今作品は前作である『ポケットモンスターBW 真実と理想の英雄』の続きです。時間としては前作の一年後となっておりまして、舞台はイッシュの東側がメインとなります。なお、前作は原作通りの進行でしたが、今作は原作でいうクリア後なので、オリジナリティを重視しようと思います。
 今作品ではイッシュ以外のポケモンも登場し、また非公式のポケモンも登場します。

 参照をクリックすれば前作に飛びます。

 では、英雄達の新しい冒険が始まります……

 皆様にお知らせです。
 以前企画した本小説の人気投票の集計が終わったので、早速発表したいと思います。
 投票結果は、
総合部門>>819
味方サイド部門>>820
プラズマ団部門>>821
ポケモン部門>>822
 となっています。
 皆様、投票ありがとうございました。残り僅かですが、これからも本小説をよろしくお願いします。

登場人物紹介等  
味方side>>28  
敵対side>>29
PDOside>>51
他軍勢side>>52
オリ技>>30
用語集>>624

目次

プロローグ
>>1
第一幕 旅路
>>8 >>11 >>15 >>17
第二幕 帰還
>>18 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27
第三幕 組織
>>32 >>36 >>39 >>40 >>42 >>43 >>46 >>49 >>50 >>55 >>56 >>59 >>60
第四幕 勝負
>>61 >>62 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>72 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80
第五幕 迷宮
>>81 >>82 >>83 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90 >>92 >>93 >>95 >>97 >>100 >>101
第六幕 師弟
>>102 >>103 >>106 >>107 >>110 >>111 >>114 >>116 >>121 >>123 >>124 >>125 >>126 >>129
第七幕 攻防
>>131 >>135 >>136 >>139 >>143 >>144 >>149 >>151 >>152 >>153 >>154 >>155 >>157 >>158 >>159 >>161 >>164 >>165 >>168 >>169 >>170 >>171
第八幕 本気
>>174 >>177 >>178 >>180 >>184 >>185 >>188 >>189 >>190 >>191 >>194 >>195 >>196 >>197 >>204 >>205 >>206 >>207 >>211 >>213 >>219 >>223 >>225 >>228
第九幕 感情
>>229 >>233 >>234 >>239 >>244 >>247 >>252 >>256 >>259 >>262 >>263 >>264 >>265 >>266 >>269 >>270 >>281 >>284 >>289 >>290 >>291 >>292 >>293 >>296 >>298
第十幕 強襲
>>302 >>304 >>306 >>307 >>311 >>316 >>319 >>320 >>321 >>324 >>325 >>326 >>328 >>329 >>332 >>334 >>336 >>338 >>340 >>341 >>342 >>343 >>344 >>345 >>346
弟十一幕 奪還
>>348 >>353 >>354 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>376 >>377 >>378 >>379 >>380 >>381 >>382 >>383 >>391 >>393 >>394 >>397 >>398 >>399 >>400
第十二幕 救世
>>401 >>402 >>403 >>404 >>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>412 >>413 >>414 >>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>433 >>436 >>439 >>440 >>441 >>442 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447 >>450 >>451 >>452 >>453 >>454
第十三幕 救出
>>458 >>461 >>462 >>465 >>466 >>467 >>468 >>469 >>472 >>473 >>474 >>480 >>481 >>484 >>490 >>491 >>494 >>498 >>499 >>500 >>501 >>502
第十四幕 挑戦
>>506 >>511 >>513 >>514 >>517 >>520 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>534 >>535 >>536 >>540 >>541 >>542 >>545 >>548 >>549 >>550 >>551 >>552 >>553 >>556 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>568
第十五幕 依存
>>569 >>572 >>575 >>576 >>577 >>578 >>585 >>587 >>590 >>593 >>597 >>598 >>599 >>600 >>603 >>604 >>609 >>610 >>611 >>614 >>618 >>619 >>623 >>626 >>628 >>629 >>632 >>638 >>642 >>645 >>648 >>649 >>654
>>657 >>658 >>659 >>662 >>663 >>664 >>665 >>666 >>667 >>668 >>671 >>672 >>673 >>676 >>679 >>680 >>683 >>684 >>685 >>690 >>691 >>695

第十六幕 錯綜

一節 英雄
>>696 >>697 >>698 >>699 >>700 >>703 >>704 >>705 >>706 >>707 >>710 >>711
二節 苦難
>>716 >>719 >>720 >>723
三節 忠義
>>728 >>731 >>732 >>733
四節 思慕
>>734 >>735 >>736 >>739
五節 探究
>>742 >>743 >>744 >>747 >>748
六節 継承
>>749 >>750 >>753 >>754 >>755
七節 浮上
>>756

第十七幕 決戦

零節 都市
>>759 >>760 >>761 >>762
一節 毒邪
>>765 >>775 >>781 >>787
二節 焦炎
>>766 >>776 >>782 >>784 >>791 >>794 >>799 >>806
三節 森樹
>>767 >>777 >>783 >>785 >>793 >>807
四節 氷霧
>>768 >>778 >>786 >>790 >>792 >>800 >>808
五節 聖電
>>769 >>779 >>795 >>801 >>804 >>809
六節 神龍
>>772 >>798 >>811
七節 地縛
>>773 >>780 >>805 >>810 >>813 >>814 >>817
八節 黒幕 
>>774 >>812 >>818

最終幕 混濁
>>826 >>827 >>828 >>832 >>833 >>834 >>835 >>836 >>837 >>838 >>839 >>840 >>841 >>842 >>845 >>846 >>847 >>849 >>850 >>851
エピローグ
>>851

2012年冬の小説大会金賞受賞人気投票記念番外
『夢のドリームマッチ ver混濁 イリスvsリオvsフレイ 三者同時バトル』>>825



あとがき
>>852

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171



Re: 353章 錐揉み ( No.439 )
日時: 2011/11/02 19:03
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「ふん、戻れボンバット」
ヤーコンはボンバットをボールに戻し、最後のボールを構える。
「まさかこの俺様に、こいつを使わせるとはな。気は進まんが、だがしかし、全力でやると決めた以上、出さないわけには行かんな。さあ行け俺様最後のポケモン、ドリュウズ!」
ヤーコンの最後のポケモンは、地底ポケモンのドリュウズ。巨大なモグラのようなポケモンで、両手と頭に鋼の刃物が付いている。
「速攻で決めるぞ。ドリュウズ、メタルクロー!」
ドリュウズは両手の鋼の爪を構え、リーテイルに突っ込む。
「リーテイル、リーフブレードで迎え撃て!」
リーテイルも鋭い尻尾の刃を振るって迎え撃つが、ドリュウズの爪は巧みな動きでリーテイルの刃を止め、もう片方の爪でリーテイルを引き裂く。
「リーテイル!」
するとボンバット戦で体力がピークに達していたリーテイルは、戦闘不能となる。
「戻れリーテイル、よくやった」
イリスはリーテイルをボールに戻し、もう決まっている最後のボールを構える。
「相手はドリュウズ。だったらこいつで行くっきゃない。出て来い、ズルズキン!」
イリスの最後のポケモンは、悪・格闘タイプのズルズキンだ。
「一気に行くぞズルズキン、諸刃の頭突き!」
ズルズキンは頭を突き出し、自身をも傷つけるほどのエネルギーを纏って突進する。
「ドリュウズ、岩雪崩で止めろ!」
ドリュウズは虚空より無数の岩石を降り注ぐが、ズルズキンは落ちてくる岩石を砕き、進行方向を塞ぐ岩石も砕きで、全く止まる気配はない。
「だったら瓦割りだ!」
ドリュウズは爪を揃え、手刀を突っ込んでくるズルズキンの頭に叩き込む。
だがそれでもズルズキンは止まらず、しかし勢いは減衰されたようで、ドリュウズは大きく吹っ飛ばされることはなかった。
「ズルズキン、マグナムパンチ!」
ズルズキンの大砲のような拳が飛ぶ。
「ドリュウズ、かわしてメタルクロー!」
ドリュウズは素早い動きでその拳をかわし、鋼鉄の爪でズルズキンを引き裂く。
「これくらいで怯むなズルズキン、マグナムパンチ!」
ズルズキンはメタルクローを喰らいながらも大砲のような拳を放ち、ドリュウズに叩き込む。
「ブレイズキック!」
そこに炎を灯した足での回し蹴りを決め、ドリュウズは吹っ飛ばされる。
「むぅ、ドリュウズ、小生意気なガキどもを蹴散らせ!ドリルライナー!」
ドリュウズは頭と両手の鉄片を合わせ、ドリルの形状となる。ドリル形態となったドリュウズは超高速で錐揉み回転をしながら、ズルズキンへと突っ込む。
「ズルズキン、マグナムパンチで迎え撃て!」
ズルズキンも拳を大きく振りかぶり、ドリュウズが突っ込んでくるのに合わせて大砲のような拳を突き出す。
しかし拳の力は回転により流されてしまい、ドリュウズには全く届かない。どころか完全に無防備な状態でズルズキンはドリルライナーを喰らった。
「ズルズキン!」
ズルズキンは大きく吹っ飛ばされたものの、なんとか立ち上がる。
「ふん、休む暇など与えぬぞ。ドリュウズ、瓦割り!」
ドリュウズは手刀を構え、ズルズキンへと向かって来る。
「くっ、ズルズキン、噛み砕く!」
ズルズキンは振り下ろされる手刀を鋭い歯で噛んで止め、グイッとドリュウズを引き寄せる。
「ブレイズキックだ!」
引き寄せて体勢の崩れたドリュウズに、ズルズキンは炎を灯した強烈な膝蹴りを喰らわせ、ドリュウズを吹っ飛ばす。
「諸刃の頭突きで追撃だ!」
さらにズルズキンはドリュウズに落下点を狙い、諸刃のエネルギーを纏って突進するが
「ふん、ドリュウズ、岩雪崩だ!」
ドリュウズは虚空より無数の岩を降り注ぐ。しかしその岩はズルズキンを攻撃するためではなく、その岩を足場に、ドリュウズはズルズキンの真上へと移動した。
「喰らえ、ドリルライナー!」
丁度ズルズキンの動きが停止した所に、ドリュウズは超高速錐揉み回転しながらズルズキンへと突撃する。
ズルズキンは何もできず、回避行動も防御反応もできずに、その攻撃の直撃を喰らう。
「ズルズキン!」
砂煙が舞う。するとその砂煙の中からズルズキンが飛び出した。全身ズタボロではあるが、なんとか戦闘不能は免れているらしい。
「ふん、まだ耐えていたのか。だったらすぐに止めを刺してやる。ドリュウズ、岩雪崩!」
「ズルズキン、諸刃の頭突き!」
ドリュウズは虚空より無数の岩石をズルズキンに降り注ぐが、ズルズキンは真上に向かって諸刃の頭突きをし、その膨大なエネルギーで岩石を全て砕いた。
しかし、ドリュウズの攻撃は終わらない。

「ドリュウズ、ドリルライナー!」

ドリュウズはズルズキンが着地した直後、さながらドリルのように超高速回転しながらズルズキンへと突撃する。
この攻撃を喰らえばズルズキンは間違いなく戦闘不能。しかし迎え撃つことは不可能、どんな力も回転が流してしまう。回避も難しい、ドリュウズの攻撃はかなり速い。
ならズルズキンは
「ズルズキン、受け止めろ!」
ズルズキンは両手を前に突き出し、突っ込んでくるドリュウズを受け止めた。
しかし勿論ドリュウズのパワーの方が圧倒的に高いので、ズルズキンはどんどん後退していく。
しかしその動きは不自然だった。ズルズキンが擦った地面の跡は、何故だか斜めになっている。
それは

「今だズルズキン、側面からマグナムパンチ!」

ズルズキンはギリギリまでドリュウズを引き寄せると、片足を軸に一回転するようにドリュウズの側面へと出る。
するとドリュウズは一瞬だけ隙だらけ。ズルズキンはその隙を狙い、大砲のような拳を突き出し、ドリュウズをぶん殴る。
「ドリュウズ!」
ドリュウズは大きくぶっ飛び、壁に激突し、壁に大きな凹みを作って、戦闘不能となった。
「……俺様はまた、同じ手でやられたか」
ヤーコンはドリュウズをボールに戻しながら、一人呟く。
「ふん、やっぱりいけ好かないガキだ。たった一年で、こんなに強くなりおってからに」
そしてその言葉とは裏腹に、その顔は笑っていた。



はい、今回はイリス対ヤーコン、決着でした。ヤーコンの切り札は例のドリュウズです。ちなみにドリュウズとモグルトンは同じタイプです。まあ、なんか似てますしね、二体とも。今更気付きましたが、カミツレとヤーコンの決着の最後の方の描写が似ています。まあ、二人は微妙に接点がありますから、別にいいでしょう。それとヤーコンの同じ手でやられたというのは、前作のホドモエシティジム戦をお読みください。大体分かります。では次回は再戦シリーズを一旦止め、かの救世主様たちの話に入ります。救世主と聞いて、分かる人は分かるでしょう。まあ、詳しくはまた次回。ということで、お楽しみに。

Re: 354章 救世主 ( No.440 )
日時: 2011/11/03 00:46
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

イリスはヤーコンとの再戦を終え、次のジムがある街、フキヨセシティへと向かうべく、6番道路とフキヨセを繋ぐ電気石の洞穴——の少し手前にいた。
というか、歩いていた。
「これで七人だから、ジムリーダーはあと三人か……あれ? でもソウリュウジムのアイリスちゃんは含まれてない? ……父さん知らなかったのかな……?」
とか気楽なことを考えていると

パシャパシャ

どこからか水の音、否、水面を歩く音が聞こえてくる。
たまたま偶然気まぐれを起こしてイリスはその音の方向を向くと、これまた偶然、そこには知り合いの姿。
PDOヒウン支部統括、リオだ。
いつもならヒウン支部にいるはずなのだが、生憎そこは先日のプラズマ団の強襲により倒壊し、今は更地となっている。
そのリオは裸足で、6番道路を流れる川、通称『四季の川』を歩いていた。
「……リオさん」
「わっ!?」
イリスはなんとなく近寄って背後から声を掛けると、リオは驚いて転びそうになる。
「おっと……うおっ!?」
イリスはそんなリオの腕を取ったが、思いの外重力が強く、イリスは強く引っ張られてそのままリオと一緒に
ドッパーン!
と川に落ちた。



「成程、そんなことがあったのか」
場所は変わって電気石の洞穴付近にあるリオ宅。そこには何故はPDOヒウン支部統括補佐、キリハがいた。
曰く
「いや、僕ってPDOに入る時、結構家族に反対されてね。半ば家を飛び出す……家出するようにPDOに入隊したからさ、家に帰りづらいんだよ。だから基本的にヒウン支部で寝泊りして、長期休暇の時なんかは適当にホテルを取ったりするんだけど……ホテルって高いんだよね……」
まあ、そういうことらしい。
イリスはやっと乾いた服を着つつ聞く。
「ところでリオさんは、何故あんなとこを歩いていたんですか?」
イリスは何となくそう聞いてみた。
「ん? ああ、それは……あそこの川って、奥に洞窟があるの、知ってる?」
「いえ、知りません」
イリスが即答すると、だよね、とリオは返す。
「まあ、なんというか、昔何度かちょっとだけその洞窟に行ったことがあるんだけど、うーん……まあ、気まぐれ?」
どうやらそうことらしかった。
「なんか気になるね、それ」
キリハが言う。
「……それじゃあ、行ってみますか?」
イリスは軽い調子でそう返す。
するとその後、思いの外皆ハイになってしまい
イリスの一言が引き金となり、三人は四季の川の先にある洞窟へと向かうこととなった。



「久しぶりに見たけど、やっぱり暗いね」
三人はフキヨセの洞穴と呼ばれるらしい洞穴へと足を踏み入れた。リオは周りをキョロキョロしていたが、やがて普通に歩き出す。
「……暗い。見えない」
突然、キリハがそんなことを言い出す。
「確かに、これ以上奥に行くと何にも見えないですね……」
イリスも便乗する。
「それじゃあ……こうしよっか」
リオはボールを一つ取り出し、宙へと放る。するとボールは開き、中から一体のポケモンが現れる。
出て来たポケモンは、シャンデリアのような姿のポケモン、シャンデラ。
シャンデラは自らの炎で辺りを照らし、真っ暗な洞穴は不気味だが先が見えるくらいには明るくなった。
「炎タイプのポケモンを使うのは良いアイデアだけど、この場合ポケモンのチョイスが悪いよね。これじゃあ肝試しみたいだ……」
「文句言わない」
キリハがぼやくのを、リオはバッサリと切って捨てる。
その後三人は、特に会話もせず黙々と歩き続けた。



洞窟のかなり深い所まで来たイリス達は、こんな場所に一人の老人を発見した。
「む? こんな所に人とは、それも三人……」
老人はリオ、イリス、キリハの順で一瞥すると、こちらに近寄ってきた。
「懐かしや懐かしや、久しき人も。どうじゃ、折角だから、じじいの話に耳を傾けてみては」
老人は意味深な事を言うと、次に唐突に語り始めた。
ちなみに、イリス達は、はい、どころか首を縦に振ってすらいない。
「その昔、この世には戦争があった。人間同士の、くだらない諍いじゃ。その戦乱は長く続いた。それだけならよかったのじゃが、しかし人間が招いた戦乱は、ポケモン達にも害をなすようになってきた。ある時、人間が起こした戦で、ポケモン達が多く棲む森に火がつき、大火災が起きた。ポケモン達は混乱し、慌てて逃げ惑ったが、人間達の争いのせいで森の地形は変わっており、各所は岩で塞がれたりしていて、ポケモン達は逃げられなかった」
イリスはその話を、今初めて聞いた。
「だがそんな折、救世主は現れた。その名もコバルオン、テラキオン、ビリジオンという三体の伝説のポケモンじゃ。ビリジオンはポケモン達を降り掛かる火の粉から守り、テラキオンは怪力で道を塞ぐ岩石を砕いき退路を創り、コバルオン慌てふためくポケモン達を導き救った。三体の救世主はポケモン達を非難させると、戦乱を起こした人間に酷く憤慨し、その戦乱の元凶となった人間に制裁を加えた」
老人は昔を思い出すように語る。
「その頃人間は、ポケモン達を暴力で支配していての、救世主達はそんな時代を生きてきた経緯から人間を信用しなくなり、それぞれ散り散りになってしまった」
老人の語り口から、その悲惨な思いがイリスに伝わってくる。

「だが、その救世主のうちの一体。ポケモン達を導き救ったコバルオンは、このフキヨセの洞穴に潜んでおる」

『!?』
その老人の言葉に、三人は目を見開く。
「しかし先ほど言ったように、かのポケモンは長く人間不信になっておる。その心を開くのは、生半可なことではできまい」
老人は一歩踏み出し、弱々しい指でイリスを指差す。
「しかしお主。お主は何か、力ではない良いトレーナーと見た。お主ならもしや、コバルオンの心を開けるやも知れぬ」
「ぼ、僕が……?」
イリスはいきなりで、上手く頭が回らない。
「そうじゃ。頼む、コバルオンに分からせてくれ。人間は悪い者ばかりではないと。良い人間も、多く存在するのだと」
老人はイリスに懇願する。それは弱々しい体とは逆に、力強い懇願だった。
「そう言われても……」
イリスはチラリとキリハの方を向くと、キリハはフッと微笑んだ。
リオの方を向くと、グッと親指を突き立てられた。
「……分かりました。やりましょう」
かくして、英雄イリスは、救世主と対面する事となった。



今回は本編が長いので、あとがきは短めに。今回は救世主と呼ばれしポケモン、コバルオン達の話が出ました。正直バトルがないとぐっだぐだになる白黒ですので、今回は色々不安です。まあとにかく、次回はイリスとコバルオンが対面し……まあその後は簡単に予想できるでしょう。では次回もお楽しみに。

Re: 355章 鉄心 ( No.441 )
日時: 2011/11/03 02:10
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

イリスは一人で、コバルオンの所へと向かう。
コバルオンはフキヨセの洞穴のさらに奥、導の間と呼ばれる場所で、静かに眠っていた。
「…………」
コバルオン水色の体に白い体毛、ギザギザとした金色の角を持つ、有蹄類、鹿か馬のようなポケモンだった。
「……コバルオン」
イリスは意を決し、コバルオンに話しかける。
するとコバルオンは目を開き、体を起こして、イリスを見据える。
”人間か……何の用だ”
コバルオンは、喋った。まるでテレパシーのように、イリスの脳に直接響くようだ。
そしてコバルオンの声は、冷たい鉄のように冷めていた。
しかしイリスは怯まない。
「僕の話を聞いて欲しいんだ」
”断る。人間と話すことなどない”
バッサリと切り捨てられた。取り付く島もない。
「そんな事言うなよ。話せば分かるとは言わないけど、話くらいはさせてくれ」
”断る。何度言っても無駄だ。一応言っておくが、あまりしつこいと、我も牙を向くぞ”
コバルオンは忠告する。
「いいだろ、別に。お前達が人間を忌み嫌っているのは知ってるけど——」
”知っていてのその行動か。今一度言う、あまりくどいようだと、牙を向くぞ”
コバルオンは、再度忠告する。
「だから——」
”三度目はない!”
イリスが声を出しかけたその時

コバルオンは角を構えて突進してきた。

「やっぱそう来るのかよ!メタゲラス!」
イリスは念のため握っておいたボールを素早く投げ、中からメタゲラスを出す。
メタゲラスはイリスの正面に現れ、コバルオンの攻撃を防御する。
”ふん、人間の分際でポケモンを操るか。貴様も我に制裁されたいようだな”
「違う。僕らはただ、お前と話に来ただけだ」
”そんな言葉、信用できるか!”
コバルオンは何もかもを破壊するような勢いでメタゲラスに突進する。
「ぶち壊すか……メタゲラス、メガホーン!」
メタゲラスも角を構えてコバルオンに突進する。
コバルオンの角とメタゲラスの角がぶつかり合い、互いに火花を散らす。
しばらく競り合った後、二体とも身を退いた。力はほぼ互角だ。
”立ち去れ、人間!”
コバルオンはすぐさま鋭く尖った岩を無数に浮かべ、それらを一斉にメタゲラスへと発射する。
「メタルブラストで打ち砕け!」
メタゲラスは口から大量の鋼を光線のように撃ち出し飛来する岩を粉砕し、コバルオンにもダメージを与える。しかし効果いまひとつなので、大きなダメージにはならない。
「ちょっと手荒になるけど、勘弁願うよ。メタゲラス、大地の怒り!」
メタゲラスは地面を踏み鳴らし、地中より大量の土砂を噴射してコバルオンを攻撃。
コバルオンは鋼・格闘タイプ。地面タイプの大地の怒りは効果抜群。
だが
”解き放て、鋼の波動!”

次の瞬間、コバルオンは銀色の光線を発射した。

「!? メタゲラス!」
メタゲラスはその光線の直撃を喰らい、大きく吹っ飛ばされる。
「今のは……メタルバーストか?」
メタルバーストとは、直前に受けた技のダメージを1,5倍にして反射する技だ。
コバルオンは堅いポケモンとはいえ、さっきの大地の怒りは結構効いただろう。だからそれが強化されて跳ね返ってくるダメージなど、想像に難くない。
「メタゲラス、やれるか?」
メタゲラスはなんとか起き上がり、コバルオンと相対する。まだやれるようだ。
「よし、いいぞ。メガホーンだ!」
メタゲラスは頭の角を構え、コバルオンへと突っ込む。
”愚かな。人間などに従うから、我らも鉄槌を下さねばならない。貴様らでは、我には勝てない。切り裂け、正義の刃!”
突如、コバルオンの角が光り輝く。
「! メタゲラス、あれはやばい、避けろ!」
コバルオンは俊敏な動きでメタゲラスに接近すると、その光り輝く刃でメタゲラスを切り裂いた。
「メタゲラス!」
聖なる剣に切り裂かれたメタゲラスは、その場に崩れ落ち、戦闘不能となった。
「くっ、戻ってくれ、メタゲラス……」
イリスはメタゲラスをボールに戻す。
「想像以上の強さだな、まさかメタゲラスがこんなに早くやられるとは……」
イリスは次のボールを選びつつ、コバルオンを見遣る。
コバルオンは相変わらず冷たい鉄のような眼で、イリスを見据えている。
「……よし、次はこいつだ。出て来い、エルレイド!」
イリスの次のポケモンは、格闘タイプを持つエルレイドだ。
「エルレイド、まずサイコカッターで牽制だ!」
エルレイドは肘から念動力の刃を飛ばす。
”効かん!”
しかしコバルオンは全く動じず、その刃を跳ね返した。
「アイスブレード!」
エルレイドは肘の刃を氷結させ、コバルオンに斬り掛かる。
”突き刺せ、岩石の杭!”
コバルオンはそんなエルレイドに対し、尖った岩を無数に発射して迎撃を試みる。
「エルレイド、切り落とせ!」
エルレイドは刃を振るい、襲い来る岩を切り落とす。
「ドレインパンチ!」
そしてそこから一気に距離を詰め、淡く光る拳を叩き込む。
「よし、そこからリーフブレードだ!」
さらにエルレイドは草木の力を宿した刃を振るい、コバルオンを切り裂く。
「ドレインパンチ!」
そして再度ドレインパンチを決める。この連撃にはさしものコバルオンも堪えただろう。
そう、堪えたのだが

”解き放て、鋼の波動!”

コバルオンから、銀色の光線が発射され、エルレイドが吹っ飛ぶ。
「しまった!」
今の技はメタルバースト。エルレイドのドレインパンチのダメージを増量して返されたのだ。
”砕け散れ、終の衝動!”
さらにコバルオンは凄まじい殺気を発しながらエルレイドに突撃し、さらに吹っ飛ばす。
「エルレイド!」
エルレイドは強く壁に叩きつけられ、地面に落ち戦闘不能。
「……なんて強さだ……」
イリスはこの時、救世主と呼ばれしポケモンの強さを、身に染みて実感したのだった。



今回はイリスとコバルオンのバトルです。コバルオンは今までのポケモンなんかと違い、喋ります。ちなみにコバルオンは沈着冷静な性格だそうですが、今回は完全に気が立っていて荒々しいです。というかコバルオンってこんなに強かったっけ……?コバルオンは技を使うのが分かりやすいよう、それぞれの技に台詞がありますので、参考にしてください。さて次回もイリスとコバルオンのバトル。しかしこのバトルはそんなに長引かないと思います。では、次回もお楽しみに。

Re: 356章 導 ( No.442 )
日時: 2011/11/03 14:26
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「次はお前だ。頼むぞ、リーテイル!」
イリスが次に繰り出すのはリーテイル。今度は趣向を変え、力ではなく速さで勝負をする。
「まずはエアスラッシュだ!」
リーテイルは背中の葉っぱを羽ばたかせ、空気の刃を無数に飛ばし、コバルオンを切り刻む。
「ダイヤブラスト!」
さらに宝石のように輝く光線を発射し、追撃を掛けるが
”その程度か。はやり人間に使役されたポケモンだな、程度が知れる”
効果いまひとつもあってか、全然効いていない。
”突き刺せ、岩石の杭!”
コバルオンは鋭く尖った岩を無数に浮かべ、それらを一斉を放つ。
「ロイヤルバーンで撃ち払え!」
リーテイルは自然の爆発を引き起こし、その衝撃波で尖った岩を粉砕。
「リーフブレード!」
そして尻尾の刃を構えてコバルオンに突っ込む。
”無駄だ。切り裂け、正義の刃!”
コバルオンも金色の角を光り輝かせ、リーテイルと切り結ぶ。
しばやく二体は鍔迫り合いを繰り広げたが、やがてコバルオンが押し勝つ。
「くぅ、エアスラッシュで反撃だ!」
リーテイルは空中で体勢を立て直すと、背中を羽ばたかせて空気の刃を無数に飛ばす。
”解き放て、鋼の波動!”
コバルオンは空気の刃に切り裂かれると、すぐさま銀色の光線を放って反撃に出る。
「ロイヤルバーンで相殺!」
だが今度のメタルバーストはエアスラッシュ自体のダメージが低いため、威力も低い。なのでロイヤルバーンで簡単に相殺できた。
”切り裂け、正義の刃!”
しかしコバルオンはロイヤルバーンで生じた爆煙に紛れてリーテイルに接近し、光り輝く刃で切り裂く。
”まだ終わらんぞ!砕け散れ、終の衝動!”
そしてそのすぐ後、コバルオンは凄まじい殺気を発しながらリーテイルに突撃、リーテイルを吹っ飛ばした。
「くぅ、ダイヤブラスト!」
”突き刺せ、岩石の杭!”
リーテイルは反撃のダイヤブラストを、コバルオンは追撃のストーンエッジを放ち、それぞれを攻撃。
「リーフブレードだ!」
リーテイルは地面に着地すると、鋭い尻尾の葉っぱを構えてコバルオンに突っ込む。
”無駄だといっているだろう。切り裂け、正義の刃!”
コバルオンも迎撃のため、角を光り輝かせてリーテイルに駆け出す。
しかしリーテイルはサッと軌道を変え、コバルオンの聖なる剣を回避。側面からコバルオンを切り裂いた。
「よし、そこだ!ロイヤルバーン!」
そして自然の力を爆発させ、自然の衝撃波を放ってコバルオンを吹っ飛ばす。
”ぐぅ……!”
効いているのか、コバルオンは砂煙を舞い上げながら後方に後ずさっていく。
「追撃だリーテイル、リーフブレード!」
リーテイルは追撃のために尻尾の葉っぱを構えてコバルオンに突っ込む。
しかし

”人間風情が、粋がるな!解き放て、鋼の波動!”

コバルオンは先ほどのロイヤルバーンのダメージを増量し、銀色の光線としてリーテイルに解き放つ。
「しまった……! リーテイル!」
回避できず、光線の直撃を受けたリーテイルは吹っ飛ばされ、かなりの致命傷を負った。
”……我をここまで追い詰めるとはな。しかし我は人間などに屈したりはしない。草の獣よ、人間に従った罪は重い。我がここで断罪してやろう。切り裂け、正義の刃!”
コバルオンは金色の角を光り輝かせ、満身創痍のリーテイルに斬り掛かる。
「! リーテイル!」
リーテイル、絶体絶命。
と、その時

リーテイルは凄まじい咆哮をあげた。

”ぬ!? ぐおぉ……!”
それだけではない。その咆哮とともにコバルオンも吹っ飛ばされる。
「い、今の技は……?」
イリスはリーテイルが使用した技を、図鑑で調べる、すると
「ドラゴンビート……?」
図鑑には、そう表示されていた。
”龍の咆哮か……だが、その程度では我には勝てぬぞ!解き放て、鋼の波動!”
コバルオンはドラゴンビートにより受けたダメージを増量し、銀色の光線として解き放つ。
「リーテイル、迎え撃て!ドラゴンビート!」
リーテイルは龍の鼓動のような音波を咆哮として放ち、銀色の光線を突き破ってコバルオンを攻撃。
「今だ、ロイヤルバーン!」
そしてドラゴンビートで体勢が崩れたコバルオンに接近し、自然の力を爆発させ、コバルオンを吹き飛ばす。
”ぐああぁぁぁ!”
吹き飛ばされたコバルオンは強かに壁に叩きつけられ、崩れ落ちる。
ポケモンバトルなら、コバルオンの敗北は決定だ。しかし
”ぐぅ、我は負けぬぞ。人間風情に、敗北などしてはならぬ……!”
コバルオンは動かない体を無理矢理動かし、今にも崩れそうになりながらも立ち上がる。
人間への憎悪。それが、コバルオンを動かす動力源だろう。
「……昔、お前と似たような奴がいた」
唐突に、イリスはそう言い出す。
「そいつは人間なんだけど、人間を信じず、ずっとポケモンの味方をしていた。ある時ぼくはそいつと出会って、それから僕の人生は変わったんだけど……まあ、僕のことはいいか。で、そいつは人間が嫌いで、ポケモンと人間を隔絶させようとしていたんだ。僕はそんなことをさせまいと、そいつと何度も戦った。時には勝利し、時には敗北し、互いに相手の気持ちを悟るようになっていったものの、最後の最後まで、己の信念を曲げようとはしなかった」
イリスはどこか大切な親友を思うように語る。
「その本当に最後の最後、僕はそいつに、真実を見せたんだ。そしたらそいつは、色々葛藤もあったとは思うけど、最終的に僕のことも、人間の事も分かってくれた。今ではそいつは、僕の大親友さ」
いっそ誇らしげに言って、イリスはコバルオンに歩み寄る。
”……それは人間同士だからだろう。ならば、我らとは相容れない”
「そうかもな。そうかもしれない。でも、考えてもみろよ。お前達は人間が嫌いだけど、中には人間が好きなポケモンだっているはずだろう。そう、例えば、このリーテイルみたいに」
イリスはリーテイルを抱き寄せながら言う。
「それに、ポケモンには人間世界の物を利用する奴だっているだろう。まあそんなとこまで引っ張り出したら元も子もないけどさ、でも、人間だってそんなに悪い奴ばかりじゃないんだよ。ポケモンと同じさ」
イリスは、コバルオンに手を差し伸べる。
「だから、一回だけ、僕を信じてみてくれ。なに、お前はそんなに強いんだ。もし僕が裏切ったら、その時は制裁でも処刑でも、なんでもやればいいさ。だから……僕に、力を貸してくれ」
”!”
コバルオンは驚くように目を見開くと、その後、スッと眼を閉じた。
”……良かろう。我が力、貴様に貸し与えんことを、ここに誓う”
こうして、イリスは鉄心の救世主、コバルオンの力を得たのだった。



今回は書きたいことが多いのですが、本編が長いのであとがきは短くします。今回はやはり、コバルオンとの決着、そして和解です。それからリーテイルが新しい技も覚えました。……まあ、伝える事はこのくらいですか。では次回も救世主達の登場、次はあのゴツイ方です。お楽しみに。

Re: 357章 岩窟 ( No.443 )
日時: 2011/11/03 15:37
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

”英雄よ、少しよいか?”
その後、イリスとコバルオンはリオ、キリハ、老人と合流した。老人含めその三人はイリスとコバルオンが一緒に来たことに大層驚いていたが、それもすぐに収まった。
そしてコバルオンは、唐突にイリスに尋ねる。
「ん? 別にいいけど……なに?」
”我は確かに人間を信じてみようと思ったが、それはあくまで我だけだ。他の救世主……テラキオンとビリジオンは、まだ人間を信用していない。一応、我は他の二体と思念が繋がっていて、今し方伝えた所だが、恐らく、納得していないだろう”
コバルオンは言う。
”だからか向こうからも思念が送られてきた。その二体曰く、他の人間と戦い、人間が勝利したならば力を貸すと、テラキオンもビリジオンも言っていた”
つまりテラキオンとビリジオンは、イリス以外の誰かと戦い、その誰かが勝利すればコバルオン同様に力を貸してくれるというわけだそうだ。
「そうか……となると、その誰かが誰になるのかが問題になるけれど——」
”む? 英雄”
イリスの言葉を、コバルオンは遮った。
”今同時に二人の人間が、テラキオンの潜む試練の室と、ビリジオンの潜む思索の原の領域に入った。その波動を読み取るからに、恐らく貴様と親しい者だ”
コバルオンは言った。というか、レーダーみたいだ。
「僕と親しい者……? ……誰だかは知らないけど、今は一分一秒が大事だ。その誰かにそこは任せよう」
とにかく、ここから出なくてはとイリス達はフキヨセの洞穴をさ迷い歩く。



チャンピオンロード。
ポケモンリーグへと続くこの険しい山は、野生のポケモンも強く、トレーナーにとっては格好の鍛錬場所だった。
そして未だチャンピオンを目指すチェレンは、そこで修行をしていたのだが、ある時、今まで見たことのない穴を見つけた。
「なんだろう、ここ……?」
チェレンはいぶかしむものの、興味本位でその穴の中へと入っていく。すると中には
「……なんだ、これ。ポケモン……?」
中には岩石の塊のようなポケモンがいた。
有蹄類のような姿をし、胴や足は太く屈強な体躯。体色は岩石を思わせる灰色は基調。そして最も特徴的なのが、側頭部から生える非常に太い角。その角は前方に曲がって伸びており、その体と相まって鹿や馬というより、巨大な野牛のようなポケモンだ。
”……御主は、コバルオンの言っていた人間か?”
そのポケモンはゆっくりと顔を上げ、そう言った。いや、言ったというより、テレパシーのように脳に直接響いてくるようではあるのだが。
”某の名はテラキオン。知っているとは思うが、その昔、救世主と呼ばれしポケモンの一角だ”
知らない。とチェレンは素直に思った。
”コバルオンは人間を信じたようだが、某らはまだ納得がいかん。しかしコバルオンが認めたのであれば、それを切り捨てる事もできん。なので、某は今から御主と戦う。それに御主が打ち勝てば、某も御主らに力を貸そう”
何の話だ、とチェレンは素直に思う。説明が欲しい、とも。
”では行くぞ、黒き少年よ!”
言うと、テラキオンはチェレンへと突進してきた。
「……なんか面倒な事に巻き込まれたっぽいけど——」
ギイィン!
と、鋭い音が響く。
「それで僕がまた高みへと上れるなら、本望かな」
チェレンは素早くカモナイツを繰り出しており、カモナイツは二本のネギでテラキオンの角を止めていた。
”ほう、救世主随一の怪力を持つ、某の突進を受け止めるとは。なかなかやるではないか”
テラキオンはその鈍重そうな体とは裏腹に、軽快な動きで後ろに跳び退った。
「カモナイツ、ビルドアップ」
カモナイツは筋肉を増強し、物理能力を高める。
「リーフブレード!」
そして二本のネギを構え、テラキオンに斬り掛かる。
”降り注げ、礫の雪崩!”
テラキオンは地面を踏み鳴らすと、虚空より大量の岩石を降り注いでカモナイツを攻撃。
だがカモナイツはリーフブレードで、その岩を全て切り裂いた。
”まだ行くぞ。断ち切れ、交差の剣!”
テラキオンは角を交差させながらカモナイツを切り裂いた。
「シザークロス……カモナイツ、ここは能力を上げるよ。ビルドアップ」
カモナイツはとにかく能力を上げ、攻撃に備える。
「ブレイブバードだ!」
カモナイツは全身に燃え盛る炎のようなエネルギーを纏い、テラキオンに突っ込む。
”降り注げ、礫の雪崩!”
テラキオンは虚空より大量の岩石を降り注ぎ、カモナイツを攻撃しようとするが、カモナイツが纏うエネルギーによって岩石は次々と砕かれ、テラキオンはブレイブバードの直撃を喰らう。
「そこだ、鋼の翼!」
さらにカモナイツは鋼のように硬化させた翼をテラキオンに叩きつける。
ビルドアップでその威力は二倍ほどに増強されているため、かなりのダメージだろう。
”断ち切れ、交差の剣!”
だがそこは流石テラキオン。そんなカモナイツの攻撃にものともせず、すぐさま角を交差させて斬り掛かり、切り返す。
「くっ、鋼の翼!」
”遅いぞ。降り注げ、礫の雪崩!”
カモナイツが鋼の翼を繰り出す前に、テラキオンは大量の岩石を降り注いでカモナイツを押し潰す。
「カモナイツ、飛び出ろ!」
岩雪崩はカモナイツに効果抜群だが、カモナイツはビルドアップで防御も二段階上昇している。なのでそれなりにダメージは受けたものの、致命傷にはならず岩石の山の中から飛び出す。
「行くよカモナイツ、ブレイブバード!」
カモナイツは燃え盛る炎のようなエネルギーを身に纏い、凄まじい勢いでテラキオンに突っ込む。
しかし

”切り裂け、正義の刃!”

テラキオンはその巨躯からは考えられないような俊敏な動きでカモナイツの攻撃を回避。そして光り輝く角でカモナイツを切り裂く。
しかしカモナイツは物理防御が高まっている。なのでそれでやられることはないはずなのだが
「カモナイツ!」
カモナイツは戦闘不能となった。
”聖なる剣は、相手の如何なる強化をも無効にする。戦の鳥よ、御主がいくら自身を強化したところで、某の剣はその強化を無視し、切り裂くぞ”
つまり今の斬撃は、相手の能力変化に影響されず攻撃できる技、ということだろう。
「……戻れ、カモナイツ」
チェレンはカモナイツをボールに戻し、次のボールを構えた。
「これはとんだ、大物が掛かったものだな」
面倒だ、とチェレンは呟くも、その表情は楽しそうだった。



今回はテラキオンの登場です。そして今作になって影が薄くなった人その二、チェレンがその相手を務めます。いやでもテラキオンってビックリですよね。あんなゴツイ体してるのに、素早さは他の二体と変わらないって。それに、攻撃力も高いですしね。ただ見た目がちょっと残念ですが、そこはまあ、目を瞑りましょう。では次回もチェレン対テラキオンですが、このバトルも早急に終わらせるつもりですので。では次回もお楽しみに。


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