二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——完結——
日時: 2013/04/14 15:29
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=21394

 今作品は前作である『ポケットモンスターBW 真実と理想の英雄』の続きです。時間としては前作の一年後となっておりまして、舞台はイッシュの東側がメインとなります。なお、前作は原作通りの進行でしたが、今作は原作でいうクリア後なので、オリジナリティを重視しようと思います。
 今作品ではイッシュ以外のポケモンも登場し、また非公式のポケモンも登場します。

 参照をクリックすれば前作に飛びます。

 では、英雄達の新しい冒険が始まります……

 皆様にお知らせです。
 以前企画した本小説の人気投票の集計が終わったので、早速発表したいと思います。
 投票結果は、
総合部門>>819
味方サイド部門>>820
プラズマ団部門>>821
ポケモン部門>>822
 となっています。
 皆様、投票ありがとうございました。残り僅かですが、これからも本小説をよろしくお願いします。

登場人物紹介等  
味方side>>28  
敵対side>>29
PDOside>>51
他軍勢side>>52
オリ技>>30
用語集>>624

目次

プロローグ
>>1
第一幕 旅路
>>8 >>11 >>15 >>17
第二幕 帰還
>>18 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27
第三幕 組織
>>32 >>36 >>39 >>40 >>42 >>43 >>46 >>49 >>50 >>55 >>56 >>59 >>60
第四幕 勝負
>>61 >>62 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>72 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80
第五幕 迷宮
>>81 >>82 >>83 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90 >>92 >>93 >>95 >>97 >>100 >>101
第六幕 師弟
>>102 >>103 >>106 >>107 >>110 >>111 >>114 >>116 >>121 >>123 >>124 >>125 >>126 >>129
第七幕 攻防
>>131 >>135 >>136 >>139 >>143 >>144 >>149 >>151 >>152 >>153 >>154 >>155 >>157 >>158 >>159 >>161 >>164 >>165 >>168 >>169 >>170 >>171
第八幕 本気
>>174 >>177 >>178 >>180 >>184 >>185 >>188 >>189 >>190 >>191 >>194 >>195 >>196 >>197 >>204 >>205 >>206 >>207 >>211 >>213 >>219 >>223 >>225 >>228
第九幕 感情
>>229 >>233 >>234 >>239 >>244 >>247 >>252 >>256 >>259 >>262 >>263 >>264 >>265 >>266 >>269 >>270 >>281 >>284 >>289 >>290 >>291 >>292 >>293 >>296 >>298
第十幕 強襲
>>302 >>304 >>306 >>307 >>311 >>316 >>319 >>320 >>321 >>324 >>325 >>326 >>328 >>329 >>332 >>334 >>336 >>338 >>340 >>341 >>342 >>343 >>344 >>345 >>346
弟十一幕 奪還
>>348 >>353 >>354 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>376 >>377 >>378 >>379 >>380 >>381 >>382 >>383 >>391 >>393 >>394 >>397 >>398 >>399 >>400
第十二幕 救世
>>401 >>402 >>403 >>404 >>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>412 >>413 >>414 >>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>433 >>436 >>439 >>440 >>441 >>442 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447 >>450 >>451 >>452 >>453 >>454
第十三幕 救出
>>458 >>461 >>462 >>465 >>466 >>467 >>468 >>469 >>472 >>473 >>474 >>480 >>481 >>484 >>490 >>491 >>494 >>498 >>499 >>500 >>501 >>502
第十四幕 挑戦
>>506 >>511 >>513 >>514 >>517 >>520 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>534 >>535 >>536 >>540 >>541 >>542 >>545 >>548 >>549 >>550 >>551 >>552 >>553 >>556 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>568
第十五幕 依存
>>569 >>572 >>575 >>576 >>577 >>578 >>585 >>587 >>590 >>593 >>597 >>598 >>599 >>600 >>603 >>604 >>609 >>610 >>611 >>614 >>618 >>619 >>623 >>626 >>628 >>629 >>632 >>638 >>642 >>645 >>648 >>649 >>654
>>657 >>658 >>659 >>662 >>663 >>664 >>665 >>666 >>667 >>668 >>671 >>672 >>673 >>676 >>679 >>680 >>683 >>684 >>685 >>690 >>691 >>695

第十六幕 錯綜

一節 英雄
>>696 >>697 >>698 >>699 >>700 >>703 >>704 >>705 >>706 >>707 >>710 >>711
二節 苦難
>>716 >>719 >>720 >>723
三節 忠義
>>728 >>731 >>732 >>733
四節 思慕
>>734 >>735 >>736 >>739
五節 探究
>>742 >>743 >>744 >>747 >>748
六節 継承
>>749 >>750 >>753 >>754 >>755
七節 浮上
>>756

第十七幕 決戦

零節 都市
>>759 >>760 >>761 >>762
一節 毒邪
>>765 >>775 >>781 >>787
二節 焦炎
>>766 >>776 >>782 >>784 >>791 >>794 >>799 >>806
三節 森樹
>>767 >>777 >>783 >>785 >>793 >>807
四節 氷霧
>>768 >>778 >>786 >>790 >>792 >>800 >>808
五節 聖電
>>769 >>779 >>795 >>801 >>804 >>809
六節 神龍
>>772 >>798 >>811
七節 地縛
>>773 >>780 >>805 >>810 >>813 >>814 >>817
八節 黒幕 
>>774 >>812 >>818

最終幕 混濁
>>826 >>827 >>828 >>832 >>833 >>834 >>835 >>836 >>837 >>838 >>839 >>840 >>841 >>842 >>845 >>846 >>847 >>849 >>850 >>851
エピローグ
>>851

2012年冬の小説大会金賞受賞人気投票記念番外
『夢のドリームマッチ ver混濁 イリスvsリオvsフレイ 三者同時バトル』>>825



あとがき
>>852

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171



Re: 424章 常闇 ( No.575 )
日時: 2012/12/26 02:33
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「……道連れ、か」
 ズルズキンをボールに戻しつつ、イリスは呟く。
 道連れ、モアドガスも使用した相手と共に瀕死になる技。マニューラはそれを、猫の手を使うことで発動させた。
 おそらくマニューラがギリギリまでマグナムパンチを避けなかった——否、わざと当たりに行ったのは、ズルズキンを道連れにするため。あのままちまちま攻撃を積み重ねるより、諸共瀕死にしてしまった方が良いと、モスギスは考えたのだろう。
「でも、とんだ大博打だ。ギャンブルもいいところだろうに」
 単純計算で、モスギスの手持ちはマニューラを除いて四体。その四体の技が一つも被らないとすると、猫の手で発動する技の種類は四と四を掛け算して十六通り。僅か十六分の一の確率だ。モスギスはその十六分の一の確率に賭けて、ズルズキンを道連れにした。
 しかもメタゲラス、ズルズキンとやられたことで、今のイリスは悪タイプに対して有利に戦えるポケモンがほとんどいなくなった。エルレイドは格闘タイプだが、エスパータイプでもあるので防御面で不安が残る。力押しされたらやられてしまうかもしれない。
「僕の手持ちから悪タイプに対して有効なポケモンを削ることが目的で道連れにしたとすると、相当な策士だな……」
 変人でも変態でも変質者でも、モスギスは四天王。読み合い、化かし合い、裏のかき合いとなれば、イリスより何枚も上手だ。
「テレレレッテレー! トコヤミ!」
 イリスが険しい顔でモスギスについて考察している間に、モスギスは次なるポケモンを繰り出した。空気の読めない人だ。
 モスギスが繰り出したのは、暗闇ポケモンのトコヤミ。悪・ゴーストタイプなので弱点がない。
「あのトコヤミか。しかも、タイプ上エルレイドが出せない……」
 格闘技もエスパー技も、トコヤミには無効化されてしまうため、このタイミングでエルレイドを出すことは出来ない。
 ここまで計算して三番手にトコヤミを持ってきたのだとすれば、モスギスの戦略には脱帽せざるを得ない。
「弱点がないなら、火力で攻める! 頼んだ、ダイケンキ!」
 イリスが繰り出すのはエース、ダイケンキ。小回りが利きにくいものの、中途半端な耐久力のトコヤミに対してなら、まともに攻撃が入ればすぐに決められるだろう。
「ダイケンキ、まずは吹雪だ!」
 ダイケンキは大きく息を吸い込み、吐き出すと同時に強烈な冷気を伴った猛吹雪を放つ。
「ぶるぶる、ぶるぶる、ぶるーぶる、これは寒い。もうすぐモスギスさんも冬眠でしょうか。トコヤミ、潜るです」
 トコヤミは襲い掛かる吹雪を地面に潜ってやり過ごし、そのままダイケンキを真下から攻撃する。
「続けてぇ、抉り込むように、撃つべし! シャドーパンチ、撃つべし!」
 さらに影を纏った拳を、モスギスが言うように抉り込むようにしてダイケンキの腹に叩き込んだ。
「くっ、シェルブレードで薙ぎ払え!」
 ダイケンキは体を少し後退させると、水のエネルギーを纏ったアシガタナを居合抜きのように一閃するが、
「潜るです!」
 瞬時にトコヤミは地面に潜ってしまい、その一振りは外れる。さらに背後からトコヤミが現れ、ダイケンキを攻撃。
「今度こそ、シェルブレードだ!」
 ダイケンキはトコヤミの攻撃にも怯まず、振り返り様にアシガタナを振るってトコヤミを切り裂く。今度はクリーンヒットした。
 そのせいかなんなのか、トコヤミはまた地面に潜ってしまい、一旦ダイケンキから距離を取る。
「あー、そろそろモスギスさんも爪を切る頃ですか。いや、いえいえこれを見てください。これはおしゃれです、モスギスさんも凝っているんですよ、右手だけ爪を伸ばすの。え? 誰も聞いてない? 不衛生だからさっさと切れ? そうですか、しょぼーん……爪とぎです」
 トコヤミはその場で擦り合せるように爪を研ぐ。これでトコヤミの攻撃力と命中率が上昇した。
「心機一転! チッチッチ、モスギスさんもいろいろ知っているのです。落書きに適した看板の色は白ですが、材質は……え? また誰も聞いてないって? 落書きすんな? そうですか、しょぼーん……でもモスギスさん、落書きやめません! これだけは譲れないのです! トコヤミ、指を振る!」
 さらに指を左右に振るトコヤミ。その身体は薄く発光している。
 そして次の瞬間、トコヤミはまた地面に潜ってしまった。また潜るか、それとも穴を掘るか、はたまた別の何かかとイリスが警戒する中、突如としてトコヤミは現れた。
 例によってダイケンキの真下の地面が揺れ、同時にダイケンキはアシガタナを構えて迎撃態勢を取ろうとするが、そんな不安定な状態での迎撃などに意味はなかった。何故なら

 トコヤミは激しく弾ける雷撃をその身に纏っていたのだから。

 イリスは過去にこの技を見たことがある。一年前のあの時、忘れようもない戦いの記憶。

「なっ……これは、雷撃だと……!?」
 理想を司る黒き龍、ゼクロム。そのゼクロムだけが使用することを許された電気タイプ最高峰の物理技、雷撃。
 それを、このトコヤミは再現して見せたのだ。
「ダイケンキ!」
 さしものダイケンキも派手に吹っ飛ばされたが、しかし思ったよりもダメージは少なかった。
 それもそのはず、雷撃がイリスが見たような破壊力を誇るのは、ゼクロムが使用していたからだ。指を振るでトコヤミが使ったとしても、それは高威力の電気物理技でしかない。勿論、思っていたよりなので大ダメージには変わりないが、まだバトルは続行できる。
「ダイケンキ、メガホーン!」
 今度は角を構え、ダイケンキは突貫する。
「潜るです!」
 しかしその攻撃は、トコヤミの潜るによって容易くかわされてしまう。そしてすぐに、真下からの反撃が来るが、
「シェルブレードだ!」
 あらかじめ予測していた攻撃なら、対処は簡単。ダイケンキはすぐにアシガタナを抜くと、自分の足の間を通すようにシェルブレードを突き出し、ちょうど地面から出て来たトコヤミに突き刺す。
「メガホーン!」
 さらに少し体を後ろへずらし、大きな角の一撃をトコヤミに見舞う。この連続攻撃で、トコヤミの体力も大分削られただろう。
「吹雪!」
「もうっ、ずっとあなたのターンですかっ? モスギスさん寝ちゃいますよ! 潜るです!」
 だがそう何度も攻撃が通ったりはせず、三撃目の吹雪は地面に潜ってかわされてしまう。
 すぐに足元を崩すような攻撃を入れると、トコヤミはまたダイケンキから距離を取る。
「逃がすな! 吹雪!」
 しかしダイケンキはすぐさま前方へと吹雪を放ち、トコヤミを攻撃。
「シャドーパンチです!」
 吹雪が止んだ瞬間を狙って、トコヤミの影のパンチが飛ぶ。
 シャドーパンチは威力は控えめだが必中技。避けることは出来ず、直撃を喰らう。爪とぎで攻撃力が上がっているので、控えめながらもその威力は強化されていた。
 だがしかし、これでダイケンキの特性が発動する条件は整った。攻撃が一段階上がった状態の雷撃でも、トコヤミ程度の攻撃力では少し物足りなかったが、今のシャドーパンチで遂にダイケンキのライフゲージは特性発動ラインを切った。
 特性激流が、今、発動する。
「行くぞダイケンキ、ハイドロカノン!」
 ダイケンキは巨大な水の弾丸を生成する。丹念に、入念に水流を圧縮する。その水圧は、分厚い鉄板でさえ原型を留めていられないほど高まっているだろう。
「おおぅ、これは危険! もすのアンテナがビンビン立ってます! アラーム警告音鳴り響きです! トコヤミ、潜る!」
 トコヤミはすぐさま地面に潜ってしまった。ダイケンキと言えど大技をいつまでも維持できるわけがなく、いつかは撃たなくてはならない。そうしなくても、放っておけば形を維持できなくなり、ハイドロカノンは綻びる。トコヤミは地面の中で、そうなるまでの時間を稼いでいるのだろう。
 しかし、

「地面ごと抉り取れ! ダイケンキ、ハイドロカノン!」

 ダイケンキは少し前屈みの姿勢となり、巨大な水の弾丸を発射する。
 弾丸はガリガリ地面を大きく抉りながら突き進んでいく。土砂、泥、小石から岩石まで、地中の様々なものが放り出され——トコヤミも、それに巻き込まれるようにして吹っ飛ばされた。
 何気にレアなトコヤミの下半身は、残念ながら散った水飛沫で見えなかったが。
「次で決めるぞ、ハイドロカノン!」
 トコヤミは地面に落ちてからしばし動かず、その間に反動から立ち直ったダイケンキは第二射を放つ。
「トコヤミ、指を振る!」
 悪あがきにとトコヤミを指を振るが、次の瞬間にはトコヤミは水の弾丸の直撃を受け、吹っ飛ばされる。
 トコヤミは先ほど抉った土砂の山に突っ込み、そのまま戦闘不能となった。



はい、モスギス戦その三です、今回はわりとサクサク進んでいきました。ズルズキンがマニューラの猫の手による道連れで実質相打ち。これでイリスの手持ちには悪タイプに対して有効なポケモンはエルレイドのみとなってしまいました。まあ、ダイケンキもメガホーン覚えてるから、それほど不利というわけでもありませんが。トコヤミがやられましたし、残る二体も大体割れてますしね。まあ、その二体がやたら強いのですが。では次回はモスギス戦その四です、お楽しみに。

Re: 425章 土産 ( No.576 )
日時: 2012/12/27 00:53
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「テレレレッテレー! バンギラス!」
 トコヤミをボールに戻したモスギスが繰り出したのは、鎧ポケモン、バンギラス。分類通り、頑強な緑色の鎧を纏った怪獣のようなポケモン。
 バンギラスは登場と同時に大きく吠え、辺り一面に砂を含む風を発生させる。バンギラスの特性、砂起こしにより天候が砂嵐となったのだ。
「やっぱり来たか、バンギラス……!」
 バンギラスは種族としての能力も高い強力なポケモンだが、タイプの相性で言えばダイケンキの方が有利。特性、激流も発動しているので長くは戦えないが、少しでも体力を削いでおきたい。
「鋭いものにはご用心。バンギラス、ストーンエッジです! ……お前もか、ジョニー……」
 バンギラスは鋭く尖った岩を無数に浮かべ、それらを一斉に発射する。
「押し返せ! 吹雪!」
 ダイケンキは襲い来るストーンエッジに対し、猛吹雪を放って沿い返そうとするが、ストーンエッジは吹雪の中を難なく突き進み、ダイケンキの体に突き刺さった。
「……!」
 まさかこうもあっさり突き破られるとは思わなかったので、イリスバンギラスの攻撃力に素直に驚いた。
「もう一度、ストーンエッジ! ……ブルータス、お前までも……」
 ストーンエッジの第二射が放たれた。見た感じでは、勢いは普通のストーンエッジに見える。
「今度は弾き返すぞ、シェルブレード!」
 ダイケンキは二振りのアシガタナを構え、飛来する鋭き岩石を弾き返そうとする。
 しかしどういうわけか、逆に弾こうとしたこちらの得物がストーンエッジによって弾き飛ばされてしまった。
「……?」
 ここでイリスは、違和感を覚える。何かがおかしい。漠然としたものなので、何がおかしいとは言えないが……
「まあいい。ダイケンキ、一気に行くぞ! ハイドロカノン!」
 ダイケンキは巨大な水の弾丸を生成し、バンギラスに向けて発射する。先ほどのように地面は抉らなかったが、それでもかなりの威力だろう。
 だが、しかし、
「ぶち壊す!」
 バンギラスが強靭な腕を振るい、強引にハイドロカノンを消し飛ばしてしまった。
 流石にイリスも、この異常さには気付く。激流が発動しているダイケンキのハイドロカノンが、バンギラスと言えどもそんな簡単に消し飛ばされるはずがない。
 考えられる原因は二つ。一つはバンギラスの攻撃がいつの間にか上がっていたとうこと。しかし、バンギラスの特性は砂起こしで固定、今までの技にしても、攻撃力を上げるような追加効果はない。見たところこのバンギラスは持ち物もない。
 となると考えられる原因の二つ目。ダイケンキの攻撃が、下がっているということ。
 それにしてもバンギラスが関わっている要素はないのだが、しかしイリスには心当たりがあった。
「まさか、あのトコヤミが……?」
 トコヤミはダイケンキにやられる直前に、指を振るを使用していた。もしその時に、ある技が発動していたとすれば、ダイケンキの攻撃能力低下も頷ける。その技は——
「置き土産、ですか」
 置き土産。悪タイプの技で、自分の体力を全て失う代わりに、相手の攻撃、特攻を二段階下げる荒業。
 トコヤミはやられる直前に指を振るを使うことで、それを発動させていた。
「もうギャンブルとかいうより、無謀だろ……この世界に存在する全ての技の中から、ピンポイントで一つの技を使うなんて……」
 本当は道連れにするつもりだったのかもしれないが、しかし置き土産でもダイケンキに大きな損害があることは変わりがない。なので、モスギスの作戦は概ね成功していると言って差し支えないだろう。
「夜中に一人で歩いていると、後から、ぐっさり刺されて、血みどろの中から……どうももすです、モスギスです。ストーンエッジ、グサッ!」
 ストーンエッジの第三射が放たれ、容赦なくダイケンキの体に突き刺さる。
 その攻撃で遂にダイケンキの体力は尽き、戦闘不能となった。
「戻れ、ダイケンキ。よくやってくれた」
 イリスはダイケンキをボールに戻す。
 ここまで、モスギスは道連れや置き土産といった、自身を犠牲にする技でこちらの戦力を削いでいった。
 となるとこのバンギラスにもその手の技を覚えさせている可能性があるが、イリスはギーマとの戦いで一度失敗している。浅知恵は悪いが、深読みも危険だ。しかし、選ぶポケモンは慎重にならなければならない。
「こいつで行けるか……? 頼んだぞ、リーテイル!」
 イリスが繰り出すのはリーテイル。岩技で弱点を突かれるが、こちらにも草技がある。何より機動力が高いので、バンギラスの大技なら大体はかわせるだろう。
「リーテイル、リーフブレード!」
 リーテイルは高速でバンギラスに接近し、その巨体を切り裂く。反撃にと拳が飛んできたが、それも軽く回避する。
「もう一度リーフブレード!」
 さらに返す刀で切り裂く。効果抜群が二連続なので、バンギラスにもそれなりのダメージが通っているはずなのだが、バンギラスはそのような素振りを一切見せない。
「連続でリーフブレードだ!」
 リーテイルはバンギラスの反撃の手をかわしつつ、その鎧の如き体を幾度と切り裂く。バンギラスの周りを旋回するように高速で移動しているので、軽く残像が見えてしまう。
「おおぉ、なんということ。姿が見えません、流石ですね。速い! 美味い! 安い! 怒りの炎!」
 ちょこまかと動き回るリーテイルに対し、バンギラスは怒り狂ったように燃え盛る憤怒の炎を放つ。
 さしものリーテイルもその炎を掻い潜ることは難しいので、一旦離れて距離を取った。
「ジョニー! お前までも裏切るのか、ストーンエッジ!」
 リーテイルを引き剥がすことに成功したバンギラスはそのまま鋭い岩を無数に浮かべ、リーテイルに向けて一斉に射出する。
「ドラゴンビートで打ち砕け!」
 リーテイルは龍の鼓動のような強大な音波を放ち、襲い来る岩を全て粉砕してしまう。
「エアスラッシュ!」
 そこからさらに空気の刃を飛ばし、バンギラスを怯ませて一気に接近。
「リーフブレードだ!」
 そのまま尻尾の葉っぱを刃のように振るい、バンギラスを切り裂く。
 ここまででバンギラスもかなりダメージを負っているはずなのだが、正直ダメージを受けているようには見えない。しかし体は傷ついているので、確実にダメージは溜まっているはず、攻撃あるのみだ。
「リーフブレード」
「さあさバンギラス、もすもすっとぶち壊すでスパパパーンです!」
 リーテイルが葉っぱを振るうのに合わせてバンギラスも拳を突き出し、リーテイルの動きを牽制する。一撃でも致命傷となるリーテイルからすればバンギラスの攻撃は喰らいたくないので、必然的に体を流してその攻撃を回避するが、
「シュパパパーンとスプラッシュ!」
 バンギラスはそのまま腕を振り下ろし、地面に叩き付けて盛大な水飛沫を飛ばしながらリーテイルを吹っ飛ばす。さらに、
「回る—、回るーよ、モスギスさんが回る—、ジェットコースターのように—……はい? ライモンジム? カツレツさん? あはい、美味しそうですね。怒りの炎で焼きましょう」
 バンギラスは螺旋するように憤怒の炎を放ち、リーテイルに追撃をかける。
 リーテイルは辛うじて態勢を立て直し、その業火を回避する。危ないところだった、今の攻撃を受ければ、ほぼ確実にリーテイルは戦闘不能になっていただろう。
「ストーンエッジ!」
 しかしモスギスはリーテイルに休む暇を与えてはくれず、続けてストーンエッジの掃射が始まる。絶対に逃がさないと言わんばかりに広範囲に放たれた尖った岩がリーテイルに襲い掛かる。
「これは避けきれないか……リーテイル、リーフストーム!」
 リーテイルは大きく背中の葉っぱを羽ばたかせ、嵐のような竜巻を引き起こす。さらにそれに鋭い葉っぱを加え、ストーンエッジを粉砕しながらバンギラスの巨体を飲み込んでいく。
「どうだ……?」
 砂嵐の時だと岩タイプの特防は上昇するが、それを差し引いても今のリーフストームはかなりの高火力となっただろう。普通なら瀕死になっていてもおかしくはないが……
 そう思いながらイリスはリーフストームに包まれたバンギラスを見遣る。
 次の瞬間、リーフストームが弾け飛んだ。

「バンギラス、ぶち壊す!」

 なんと、バンギラスはぶち壊すで葉っぱの嵐を消し飛ばしてしまった。とんでもない攻撃力だとイリスは戦慄するが、そんな暇もなかった。
「ドドーンとぶち壊すデス!」
 バンギラスは凄まじい殺気を発しながらリーテイルへと突っ込んで来る。リーテイルはなんとか上昇して回避したが、
「ぐっさりとストーンエッジ!」
 地面から飛び出た鋭い岩石がリーテイルの腹に突き刺さる。
「リーテイル!」
 効果抜群の直撃を受けてしまい、リーテイルはあえなく戦闘不能になってしまった。



ううむ、なんだか今回はキーの乗りが悪いです。そんなわけでモスギス戦その四がやってきました。今回は遂に強敵、バンギラスの登場です。でも、まだ後にあいつがいますからね……それにしても、モスギスはギーマ以上のギャンブラーですよね。猫の手や指を振るで道連れや置き土産を使用。空恐ろしいです。では次回はモスギス戦その五。たぶん、その六ぐらいで決着になりますかね。次回もお楽しみに。

Re: 426章 恐竜 ( No.577 )
日時: 2012/12/29 00:08
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「戻れ、リーテイル」
 イリスはリーテイルをボールに戻す。これで残っているポケモンは一体だけとなった。
「相手はバンギラスだし、後に控えているのはたぶん——だったら相性的に、断然エルレイドなんだけど……」
 そこでイリスは逡巡する。エルレイドなら、確かに悪タイプ使いのモスギスには有利に戦える。しかし、相手がモスギスだからこそ、一緒に戦いたいポケモンがいる。
 どちらが最善か、どちらが自分にとって、強くなるための糧となるか、頭の中で思い巡らせる。そして、
「やっぱりお前しかいないよな。さあ、トリは頼んだぞ! ディザソル!」
 イリスの最後のポケモンは、ディザソル。
 いつかモスギスと戦った時は、エルレイドとリーテイルがバンギラスの体力を削り、ギリギリのところでアブソルがディザソルに進化したため、バンギラスには勝利することができた。
 だが後続のポケモンにはあっさりとやられ、しかも今回はリーテイルだけしかバンギラスの体力を削ってはいない。以前よりも苦しいバトルになることは必至だ。
「でも、ここでリベンジしなきゃ、いくら勝てたってディザソルの気は収まらない。だよね、ディザソル?」
 イリスの問いかけに、ディザソルは小さく頷く。
 でぃそるのリベンジを果たすためには、まずはバンギラスを倒す。本命はそれからだ。
「行くぞディザソル! 神速!」
 ディザソルは神がかったスピードでバンギラスに突撃する。しかし効果はいまひとつ、決定打には乏しいが
「続けてスプラッシュだ!」
 そのままディザソルは片足を軸にして、回転するように水流を纏った尻尾をバンギラスに叩き付ける。遠心力も加わった効果抜群の攻撃、これは効いただろう。
「中々の中々で中々な攻撃ですが、まだまだですね。今度バトルする時はどの程度磨かれているかテストさせていただきます。そういうわけで、ペケポン。ストーンエッジ!」
 バンギラスも黙って攻撃を喰らいはしない。鋭く尖った岩を無数に発生させ、降り注ぐようにディザソルへと発射する。
「神速で後ろに回り込め!」
 しかし正面にしか攻撃が届かないのであれば、恐れることはない。ディザソルは超高速でバンギラスの後ろを取り、体当たりするように激突する。勿論、これだけではダメージは小さいが、
「スプラッシュ!」
 続けて放たれる一撃が、水飛沫を散らしながらバンギラスを捉える。さらにディザソルの特性、強運により急所を突く一撃だったため、バンギラスにも相当なダメージが通っているはずだ。
「なんてこった、攻撃が通じません。バンギラス……新聞は……いりま……ツー……ふん……あはい。違いますか? では怒りの炎です」
 バンギラスは振り向かずに自分を取り囲むような業火を放ち、ディザソルを引き剥がす。ディザソルもバンギラスから離れ、一度正面に立ち相対する。
「パカーンとストライクです! バンギラス、ぶち壊す!」
「バンギラスの攻撃は大振りだ。ディザソル、かわして辻斬り!」
 拳を振りかぶり、凄まじい気迫と共に突き出すバンギラス。対するディザソルは大きく跳び、宙返りをするようにバンギラスの拳を回避する。
 そしてディザソルの漆黒の鎌が、バンギラスの頭部から腹部を切り裂いた。
 その一撃でバンギラスはバランスを崩し、砂煙をあげながら地に伏す。戦闘不能だ。
「よしっ、よくやったぞディザソル」
 とりあえず最初の関門はクリア。問題は、ここからだ。
「もすをここまで追い詰めるとは、流石はイリゼさんの息子さん。モスギスさん、久しぶりに興奮してきちゃいました、えっふん」
 よく分からない声を上げながら、モスギスはバンギラスをボールに戻す。そしてそのバンギラスと入れ替わる次のボールを、構えた。
「それでは、行きますよ?」
 おどけた調子ではあるが、モスギスと、モスギスがもつモンスターボールから、言いようもない威圧感を感じる。だが、ここで挫けるわけにもいかない。自分自身のためにも、ディザソルのためにも。
 モスギスが構えたボールが、今、開かれる。

「テレレレッテレー! ティラノス!」

 最後に繰り出されたモスギスのエースポケモン。暴君ポケモン、ティラノス。
 バンギラスの三倍を超える褐色の巨躯。如何にも頑強な各部。鋭くも荒々しい眼光。その姿は、見るもの全てを威圧し、ねじ伏せるかのような気迫に溢れている。
 しかし、イリスもディザソルも、その姿に恐怖を覚えることはない。その猛々しき恐竜を、倒すと決めたから——
「ティラノス、ぶち壊す!」
「ディザソル、辻斬りだ!」
 ティラノスはその巨体からは考えられないようなスピードでディザソルに突貫。ディザソルもその一撃を跳躍して華麗に回避し、ティラノスの急所を的確に切り裂く。
「続けてスプラッシュ!」
 地面に降りたディザソルはそのまま体に水流を纏い、飛沫を散らしながらティラノスに突撃する。効果は抜群だが、ティラノスは少し体を揺らすだけで、姿勢は全く揺るがない。
「グランボールダです!」
 突如としてディザソルの周囲の地面から、大小様々な岩石が飛び出す。その岩石たちはディザソル目掛け、一直線に襲い掛かるが、
「怒りの炎!」
 ディザソルが放った怒れる業火により、襲い掛かってきた岩石はことごとく消し炭にされる。
 岩タイプの中でもトップクラスの大技であるグランボールダを燃やし尽くすほどの炎。その存在が、ディザソルのこの戦闘にかける意思の強さを表していた。
「続けて行くぞ、神速!」
 ディザソルは燃え尽きた岩石などには目もくれず、神の如き速度でティラノスに突撃する。それも一度ではなく、多角的に何度も何度も、その巨体にぶつかっていく。
「このままでは兄さんに怒られてしまいますねぇ……ティラノス、フレアドライブ!」
 突如、ティラノスの巨躯に炎が灯される。そのため、ディザソルもティラノスから距離を取ったが、それがいけなかった。
 荒々しい火炎を纏ったティラノスはそのまま凄まじい気迫、覇気、殺気を発しながら、ディザソルへと突撃していく。
「! スプラッシュ!」
 中途半端に距離を取ってしまったために、トップスピードに乗ったティラノスから逃れることはできない。ならばと咄嗟に水流を纏ってティラノスの攻撃を受けたが、ディザソルの攻撃力ではティラノスには叶わない。競り合うことなくディザソルは吹っ飛ばされた。
「ディザソル、大丈夫か!?」
 むくりと起き上がり、ディザソルは頷く。寸でのところで出来る限り勢いを殺したようだ。流石はディザソルと、イリスは心の中で称賛する。
「直撃でも勢いを殺してダメージを軽減する。これなら行ける……!」
 イリスはモスギスとのバトルが決まってからこのティラノスとディザソルのバトルを最初から想定していたのだが、正直、ディザソルが勝てるビジョンがあまり見えてこなかった。
 というのも、ティラノスは半端ない攻撃力と、恐らく防御力も高いだろうと踏んでいたからだ。端的に言うと、バンギラスの強化版というような捉え方をしていた。
 なので手数で攻める戦法を使おうとしていた、というよりそのような戦い方しかできないのだが、そうなると大きな問題が一つ出て来る。それが、相手からの反撃だ。
 当たり前の話だが、相手からの攻撃を受けずに勝利することは、相当難しい。相手の実力が大きく劣っているというのならともかく、相手は四天王モスギス。そう簡単に勝てる相手ではない。
 なのでヒット&アウェイ戦法にしても、いつかは反撃を喰らってしまい、その一撃でやられてしまうのではないかと懸念していたのだが、ディザソルが相手の攻撃の勢いを殺して受けてくれるというのなら、勝率はグンと跳ね上がる。
「よし、このまま突っ切るぞ。ディザソル、辻斬り!」
 ディザソルは漆黒の鎌の如き刃を黒く煌めかせ、ティラノスへと駆けていく。
「そう簡単に行きますかね? ティラノス、ぶち壊す!」
 ティラノスは大きく咆哮し、全てを畏怖させるような凄まじい勢いでディザソルへと突撃する。

 悪の力を持つ双方のポケモンが、今、交錯する——



遂に来ました、モスギス戦その五。相手はディザソル因縁の敵、ティラノスです。因縁って言っても、一回しかバトルしてませんが。そういえば書いていて気づきましたが、ディザソルとティラノスって字面似てますよね? 一応さっと見直してはいますが、もしかしたら打ち間違えてるところがあるかもしれません。指摘してくださればその都度修正しておきますので、お申し出ください。まあ、本当は自分で見つけなきゃいけないことなんですけれど。なにはともあれ、モスギス戦もそろそろ決着です。次回はモスギス戦その六、因縁の対決に決着の時です。お楽しみに。

Re: 427章 災禍 ( No.578 )
日時: 2012/12/29 16:29
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 ティラノスの突撃は、ディザソルがティラノスの体を流すようにして受け、そのまま斬撃を喰らった。
「ドラゴンテール!」
 しかしティラノスも負けてはいない。すぐにその巨体を駆動し、勢いよく尻尾をディザソルに叩き込んだ。ディザソルは勢いを殺してその攻撃を受けたものの、かなり大きく吹っ飛ばされてしまう。
「ドラゴンテール、入れ替え技か」
 だがイリスのポケモンはもうディザソルしか残っていないため、その技の効果も無意味である。ただ、その名残なのか、相手を大きく吹っ飛ばすことができるようだが。
「さあさ燃えてきましたよ! ティラノス、フレアドライブです!」
 ティラノスは全身に燃え盛る爆炎を纏い、途轍もない気迫と共にディザソルに突撃してくる。
(いくら衝撃を殺せても、ダメージが全くないわけじゃない。さっきはスプラッシュで何とかなったけど、フレアドライブじゃあ炎でのダメージもある。ここは確実にかわしておきたいな)
 イリスは一瞬のうちでその考えを出し、ディザソルに回避命令をだす。
「ディザソル、神速でかわせ!」
 ディザソルは神がかったスピードでティラノスのフレアドライブを回避しようとするが、
「くるっとターン! ティラノス、追うのです!」
 後ろに回ったディザソルに対し、ティラノスも勢いを殺さず強引にUターン。そのままディザソルへと突撃する。
「しまっ——ディザソル!」
 直撃を受ければ致命傷は免れない、下手すればこの一撃で瀕死になってしまうかもしれない。
 だが、かつてはイリスの指示も聞かず、勝手気ままにバトルをしていたディザソルだ。ティラノスの切り返しを見てすぐ、自らに水流を纏わせ、フレアドライブのダメージを軽減した。
「……よくやった、ディザソル」
 その無駄のない一連の動きに一瞬見とれてしまったイリスだが、すぐ我に返ってディザソルを称賛する。
「よし、もう一度行くぞ。スプラッシュ!」
 水流を纏い、飛沫を散らしながらディザソルはティラノスへと突貫。気迫も勢いもティラノスには劣るが、そのスピードと神々しさは負けていない。
「ドラゴンテールです!」
 反撃にとティラノスも尻尾の一撃を繰り出すが、ディザソルはサッと後ろに跳んで回避。そのままおまけと言わんばかりに尻尾を切り裂いた。
「世界の果てまで追いかけまわす、そう、ジョニーを見つけるまで! グランボールダ!」
 ちょこまかと逃げ回るディザソルに業を煮やしたのか、ティラノスは大小様々な無数の岩石を浮かび上がらせる。そしてそれらを降り注ぐように一斉にディザソルへと放った。
「迎え撃つぞ、怒りの炎!」
 ディザソルも怒り狂うように燃え盛る業火を上空へと放ち、襲い掛かる岩石を消し炭にしようとするが、
「! ディザソル!」
 ほぼ炭化して真っ黒になっているものの、岩石は燃え尽きずにディザソルに降り注ぐ。飛び攻撃では衝撃を殺すことはできないため、炭化したグランボールダの直撃を受けてしまう。威力は弱まっていたために致命傷は免れたが、ディザソルの純白の毛並みは黒くすすけてしまった。
 イリスは最初に放ったグランボールダと同様に焼き尽くすつもりだったのだが、落下の勢いが加味されたグランボールダは威力が高められ、かなり焦げたものの燃え尽きることなくディザソルを襲ったようだ。
「フレアドライブ!」
 続けてティラノスは荒々しい灼熱の爆炎を纏い、ディザソルに向かって突撃。
「上だ、神速でかわせ!」
 ディザソルは神速のスピードを利用して遥か上空まで一気に跳躍し、ティラノスの突撃を回避したが、
「跳びましたね? 跳んでしまいましたね? ここからはもうモスギスさんのターンです! ティラノス、グランボールダ!」
 ティラノスは三度グランボールダを発動。大小様々な岩石を浮かび上がらせ、今度は上空にいるディザソル目掛け、打ち上げるようにして一斉に放つ。
 しかし、
「そこだディザソル! スプラッシュで弾き返せ!」
 ディザソルはあえて空中に身を晒すことで、グランボールダの攻撃を一点に集めた。地上にいたら取り囲まれるため出来なかった芸当だが、上空の一点を目指すようにして向かってくる岩石なら弾くことができる。
 一斉に襲い掛かる岩石に、ディザソルは水流を纏う尻尾を思い切り叩き付けた。よって全ての岩石は叩き付けた力の方向——即ちティラノスに向かって逆戻りする。
「続けてスプラッシュ!」
 岩石の雨を喰らっているティラノスに追い打つように、ディザソルのスプラッシュが脳天にクリーンヒット。しかも、まだこれだけでは終わらない。
「辻斬りだ!」
 そのまま頭部から腹部にかけて切り下すようにディザソルの鎌がティラノスを切り裂く。
「どうだ……!」
 一度ティラノスと距離を取り、様子を窺う。
 ティラノスはいまだ気丈な素振りを見せているものの、やはり今までの連撃が効いているのだろう。少し苦しそうにしている。もう一押しというところだろう。
「もー……すー……」
 ふとイリスが視線をモスギスに合わせると、彼は妙に大人しく深呼吸していた。
「最初は些細なことでも、回数を重ねていくうちにそれが広がっていき、泥沼が泥沼を呼び、秘めたる思いが爆発を!」
 ——いや、やっぱりいつものモスギスだった。
 だが、彼の眼は、確かに変わっていた。相変わらずふざけた態度ではあるが、本気でディザソルを叩き潰そうとする獰猛さが、見え隠れしている。
「ではでは、モスギスさんの祝勝会をよっと早めてしまいましょうか。ティラノス、グランボールダ!」
 ティラノスは大きく咆哮し、大小様々な岩石を浮かび上がらせる。
 イリスは怒りの炎で焼き尽くすか、スプラッシュでまた弾き返すか、それらが無理そうなら神速でかわすか……などと思考を巡らせていたが、しかしそれらの策は全て無意味であった。

 なぜなら、岩石はフィールド全体から浮かび上がっていたのだから。

「なっ……!?」
 前後左右、上空でさえも岩石が浮遊している。フィールドを埋め尽くすような大量の岩。いくらディザソルでも、これは避けられない。大規模なグランボールダだ。
「それではティラノス、モスギスさんを祝して、なにか一言」
 モスギスが言うと、ティラノスはさらに大きな咆哮を上げる。そしてそれが合図となって、無数の岩石は一斉にディザソルに向かって、襲い掛かる。
「ディザソル!」
 一度当たれば終わりのはずのグランボールダだが、この攻撃は何度も何度もディザソルを打ちつけている。吹き荒ぶ嵐のように激しく襲い、ディザソルの体を痛めつけていく。
 衝撃を殺せないグランボールダで、この連撃。ディザソルに耐えられるわけもなく、もうこれで終わりだと思った、その時。

 ディザソルは荒々しい咆哮を放ち、空間を震撼させた。

 その叫びによって襲い来る岩石は全て砕け散り、無残な礫と化す。
「ディザソル……」
 ディザソルは災害ポケモン。吹き荒ぶ嵐も、轟く雷も、凍てつく吹雪も、怒り狂う噴火も——全ての災害を超越し、統べるもの。
 岩が飛んでくる程度の災害など、ものともしない。
「……やりますね。まさかティラノスともすの必殺技を撃ち破るとは。しかし、次はこうは行きませんよ」
 モスギスは彼の言う必殺技が破られたにも関わらず、不敵な笑みを見せる。そして、

「ティラノス、ぶち壊す!」

 ティラノスは今まででもっとも大きく、そして聞くもの全てを畏怖させるような咆哮を上げ、凄まじい気迫と共にディザソルへと突撃する。その姿は正に暴君。手当たり次第に目につくものを、自身の進行を邪魔するものを全て破壊しようとする、暴虐な古代竜の姿であった。

「ディザソル、辻斬り!」

 対するは災害の化身。闇よりも深い漆黒の鎌を光らせ、太古の暴君に立ち向かう。時には災害を呼ぶものとして疎まれていたが、今は違う。災害の如き古代の暴君に裁きを下すため、得物を煌めかせ、静かに駆ける。
 ティラノスとディザソル。ティラノスは巨大な爪を、ディザソルは漆黒の鎌を、それぞれの得物を構え、交錯する。
 両者は背中合わせとなり、その場で硬直する。どちらもまっすぐ正面を見つめ、倒れる気配はない、が——

 ——ズゥン、という鈍い音を響かせ、ティラノスが地面に崩れ落ちた。



遂に終わりました、モスギス戦その六。ディザソルがティラノスを下し、イリスの勝利で決着です。いやー今回は随分と表現を変えて描写したような気がしますね。ディザソルがバトるとよくこうなります。では次回は、みなさんお忘れになっているかもしれませんが、モスギスの伝言と、その後です。イリゼがモスギスに託した伝言とは何なのか。それでは次回をお楽しみに。

Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——再開します—— ( No.579 )
日時: 2012/12/29 21:46
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

シキミ・女
容姿:紫色の髪のおかっぱ頭。黒い襟巻のような飾りと暗色の服、丸眼鏡が特徴。手には常にメモ帳と万年筆が握られている。
性格:ゴーストタイプ使いではあるが、シキミ自身はいあって常識的で明るい性格。小説家であり、取材と銘打ってポケモンリーグの挑戦者とのバトルや会話をネタにしている。

手持ちポケモン

ヌケニン・♀
技:???、???、???、???
特性:不思議な守り

ロップル・♀
技:サイコバーン、スターダスト、気合球、自己再生
特性:シンクロ

ゲンガー・♀
技:危険な毒素、気合球、放電、道連れ
特性:浮遊

ゴルーグ
技:地震、シャドーパンチ、アームハンマー、ジャイロボール
特性:鉄の拳

シャンデラ・♀
技:熱風、ソウルブレイク、エナジーボール、スタープリズム
特性:貰い火


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