二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——完結——
日時: 2013/04/14 15:29
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=21394

 今作品は前作である『ポケットモンスターBW 真実と理想の英雄』の続きです。時間としては前作の一年後となっておりまして、舞台はイッシュの東側がメインとなります。なお、前作は原作通りの進行でしたが、今作は原作でいうクリア後なので、オリジナリティを重視しようと思います。
 今作品ではイッシュ以外のポケモンも登場し、また非公式のポケモンも登場します。

 参照をクリックすれば前作に飛びます。

 では、英雄達の新しい冒険が始まります……

 皆様にお知らせです。
 以前企画した本小説の人気投票の集計が終わったので、早速発表したいと思います。
 投票結果は、
総合部門>>819
味方サイド部門>>820
プラズマ団部門>>821
ポケモン部門>>822
 となっています。
 皆様、投票ありがとうございました。残り僅かですが、これからも本小説をよろしくお願いします。

登場人物紹介等  
味方side>>28  
敵対side>>29
PDOside>>51
他軍勢side>>52
オリ技>>30
用語集>>624

目次

プロローグ
>>1
第一幕 旅路
>>8 >>11 >>15 >>17
第二幕 帰還
>>18 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27
第三幕 組織
>>32 >>36 >>39 >>40 >>42 >>43 >>46 >>49 >>50 >>55 >>56 >>59 >>60
第四幕 勝負
>>61 >>62 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>72 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80
第五幕 迷宮
>>81 >>82 >>83 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90 >>92 >>93 >>95 >>97 >>100 >>101
第六幕 師弟
>>102 >>103 >>106 >>107 >>110 >>111 >>114 >>116 >>121 >>123 >>124 >>125 >>126 >>129
第七幕 攻防
>>131 >>135 >>136 >>139 >>143 >>144 >>149 >>151 >>152 >>153 >>154 >>155 >>157 >>158 >>159 >>161 >>164 >>165 >>168 >>169 >>170 >>171
第八幕 本気
>>174 >>177 >>178 >>180 >>184 >>185 >>188 >>189 >>190 >>191 >>194 >>195 >>196 >>197 >>204 >>205 >>206 >>207 >>211 >>213 >>219 >>223 >>225 >>228
第九幕 感情
>>229 >>233 >>234 >>239 >>244 >>247 >>252 >>256 >>259 >>262 >>263 >>264 >>265 >>266 >>269 >>270 >>281 >>284 >>289 >>290 >>291 >>292 >>293 >>296 >>298
第十幕 強襲
>>302 >>304 >>306 >>307 >>311 >>316 >>319 >>320 >>321 >>324 >>325 >>326 >>328 >>329 >>332 >>334 >>336 >>338 >>340 >>341 >>342 >>343 >>344 >>345 >>346
弟十一幕 奪還
>>348 >>353 >>354 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>376 >>377 >>378 >>379 >>380 >>381 >>382 >>383 >>391 >>393 >>394 >>397 >>398 >>399 >>400
第十二幕 救世
>>401 >>402 >>403 >>404 >>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>412 >>413 >>414 >>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>433 >>436 >>439 >>440 >>441 >>442 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447 >>450 >>451 >>452 >>453 >>454
第十三幕 救出
>>458 >>461 >>462 >>465 >>466 >>467 >>468 >>469 >>472 >>473 >>474 >>480 >>481 >>484 >>490 >>491 >>494 >>498 >>499 >>500 >>501 >>502
第十四幕 挑戦
>>506 >>511 >>513 >>514 >>517 >>520 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>534 >>535 >>536 >>540 >>541 >>542 >>545 >>548 >>549 >>550 >>551 >>552 >>553 >>556 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>568
第十五幕 依存
>>569 >>572 >>575 >>576 >>577 >>578 >>585 >>587 >>590 >>593 >>597 >>598 >>599 >>600 >>603 >>604 >>609 >>610 >>611 >>614 >>618 >>619 >>623 >>626 >>628 >>629 >>632 >>638 >>642 >>645 >>648 >>649 >>654
>>657 >>658 >>659 >>662 >>663 >>664 >>665 >>666 >>667 >>668 >>671 >>672 >>673 >>676 >>679 >>680 >>683 >>684 >>685 >>690 >>691 >>695

第十六幕 錯綜

一節 英雄
>>696 >>697 >>698 >>699 >>700 >>703 >>704 >>705 >>706 >>707 >>710 >>711
二節 苦難
>>716 >>719 >>720 >>723
三節 忠義
>>728 >>731 >>732 >>733
四節 思慕
>>734 >>735 >>736 >>739
五節 探究
>>742 >>743 >>744 >>747 >>748
六節 継承
>>749 >>750 >>753 >>754 >>755
七節 浮上
>>756

第十七幕 決戦

零節 都市
>>759 >>760 >>761 >>762
一節 毒邪
>>765 >>775 >>781 >>787
二節 焦炎
>>766 >>776 >>782 >>784 >>791 >>794 >>799 >>806
三節 森樹
>>767 >>777 >>783 >>785 >>793 >>807
四節 氷霧
>>768 >>778 >>786 >>790 >>792 >>800 >>808
五節 聖電
>>769 >>779 >>795 >>801 >>804 >>809
六節 神龍
>>772 >>798 >>811
七節 地縛
>>773 >>780 >>805 >>810 >>813 >>814 >>817
八節 黒幕 
>>774 >>812 >>818

最終幕 混濁
>>826 >>827 >>828 >>832 >>833 >>834 >>835 >>836 >>837 >>838 >>839 >>840 >>841 >>842 >>845 >>846 >>847 >>849 >>850 >>851
エピローグ
>>851

2012年冬の小説大会金賞受賞人気投票記念番外
『夢のドリームマッチ ver混濁 イリスvsリオvsフレイ 三者同時バトル』>>825



あとがき
>>852

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171



Re: 510章 大火 ( No.755 )
日時: 2013/03/14 16:56
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「フィニクス、ドラゴンビート!」
「シャンデラ、大文字!」
 龍の音波と大の字の炎がぶつかり合い、相殺される。
「シャンデラ、スタープリズム!」
「フィニクス、かわしてダイヤブラストだ!」
 霰と共に、シャンデラが冷気の込められたガラス球を降り注ぐが、フィニクスはそれらを掻い潜ってシャンデラに接近。翼を羽ばたかせて白色の爆風を放つ。しかし、
「サイコキネシス!」
 爆風がシャンデラを襲う直前に、シャンデラは念動力で爆風を止め、そのままフィニクスにぶつける。
「さらにシャドーボム!」
 続けて影の爆弾を発射し、フィニクスに直撃。爆発を起こしてフィニクスの態勢を崩した。
「もう一度!」
「させないよ! ドラゴンビート!」
 爆弾は再びフィニクスに迫るが、フィニクスも龍の鼓動の如き音波を発射し、爆弾を破壊。そのままシャンデラにも攻撃する。
「ダイヤブラストだ!」
 続けて翼を羽ばたかせ、煌めく爆風を放つが、
「それはもう読めた! サイコキネシス!」
 念動力によって爆風は止められ、そのままフィニクスに送り返される。擬似的な攻撃とはいえ効果抜群なので、ダメージは決して少なくない。
「シャドーボムよ!」
「かわしてドラゴンビート!」
 シャンデラは続けて影の爆弾を発射するが、フィニクスもそれを回避。上空からシャンデラに龍の音波をぶつける。
「接近だ! シャンデラを捕まえてダイヤブラスト!」
 そしてシャンデラに急接近。翼でシャンデラを覆って動きを封じてから煌めく爆風を放ち、シャンデラを吹き飛ばす。
「シャンデラ!」
 シャンデラは地面に叩きつけられる。効果抜群の攻撃を至近距離から喰らったのだ、ダメージは大きいだろう。
「追撃だよ、フィニクス。ドラゴンビート!」
 そしてフィニクスは、そのまま龍の咆哮を放ってシャンデラを追撃する。
「シャンデラ……」
 ゆらゆらと浮かび上がるシャンデラだが、かなりダメージが蓄積しているようだ。ラプラスの大洪水から始まり、その後はフィニクスの猛攻。普通のシャンデラならとっくに戦闘不能になっている。
「そろそろ決めるよ。フィニクス、テラブレイズ!」
 フィニクスは轟々と燃え盛る爆炎を、今度は上空にではなく、直接シャンデラに向けて放つ。その火力は、今のシャンデラの大文字を超えるほどだ。
「……!」
 すべてを燃やし尽くす爆炎に包み込まれるシャンデラ。この技の威力は既に見ている。雨のように降り注ぐだけでもかなりの威力があった技だ。効果いまひとつと言えど、直接ぶつけられればひとたまりもないだろう。
 そして、爆炎が晴れる頃——
「っ!」
「…………」

 ——シャンデラは、まだ倒れてはいなかった。

 いや、それだけではない。ソンブラはこの時、確かに勝ったとは思った。しかしそれは一時の感情に、一瞬流されただけ。ちゃんと考えれば、相手は幾度も修羅場を潜り抜けた強敵だ。この一撃を耐えることもあるだろうと、多少は覚悟していた。
 しかし、これだけは予想外だった。予想の遥か斜め上を行っていた。

「橙の、炎……?」

 シャンデラの炎は、通常の紫色ではなく、鮮やかな橙色に燃えていた。しかしすべてではない。腕の先と頭部、計五つの炎のうち、前の腕の二つが、オレンジ色に燃えている。
「……二つか」
 ぼそりとリオは呟き、シャンデラの指示を出す。
「シャンデラ、大文字」
 次の瞬間、シャンデラは大の字の炎を放つ。しかしの大きさは今までの大文字の比ではない。フィニクスが放ったテラブレイズに匹敵——ないしはそれを凌ぐほどの巨大さだ。
「……っ!?」
 驚き戸惑うソンブラ。こんな攻撃、避けることも相殺することもできるはずがない。
 そして、フィニクスは巨大な炎に飲み込まれるのだった。その光景を見て、リオはふぅと息を吐く。そしてシャンデラをボールに戻そうとする。
 しかし、
「まだ終わらないよ……!」
 刹那、炎の中からフィニクスが飛び出した。効果いまひとつとはいえ、莫大な炎を受けて大ダメージを受けたようだが、まだ戦闘不能ではないようだ。
「僕のフィニクスのテラブレイズを超える炎……こんなの初めて見たよ。でも、まだフィニクスには奥の手がある。この場合、戦うのがシャンデラで良かったよ。まだ、フィニクスは高みに上れる……!」
 フィニクスは上昇する。羽ばたくたびに、翼の炎が少しずつ大きくなっていく。まるで、シャンデラの炎を吸収しているかのように。
 いや、ようにではない。実際吸収しているのだ。シャンデラが放った大文字の炎を。吸収し、自分の力として取り込み、フィニクスもまた、強大な炎を燃焼する。

「フィニクス、テラブレイズ!」

 フィニクスは最初の一撃より、先のシャンデラの大文字より、さらに大きな爆炎を解き放つ。龍の如く荒々しい炎は、喰らうようにしてシャンデラを襲う。
「うっ……!」
「くっ……!」
 あまりの熱気に、トレーナーまでもが顔を歪める。しかし当のシャンデラはそれ以上の痛みを受けていることだろう。これだけ膨大な炎の直撃を喰らえば、伝説級のポケモンだって耐え切るのは難しいはずだ。効果いまひとつでも、リオのシャンデラがずば抜けた実力を持っていたとしても、この爆炎を受けてなお立ち上がることは絶望的である。
 ……だが、ポケモンは、時としてトレーナーの予想を超えて来るものだ。
「っ、まだ耐えるのか……!」
「シャンデラ……!」
 シャンデラは、まだ地に落ちてはいなかった。今の一撃で相当なダメージは受けたのだろうが、辛うじてまだ戦闘不能ではない。
 フィニクスもシャンデラも、もう限界。あと一撃でも入れられれば、戦闘不能は必至だ。
「……一撃入れれば、勝負が決まる」
「……これが、最後の一発になりそうね」
 フィニクスは上昇し、シャンデラは残る二つの炎も橙色に燃やす。両者はしばらく睨み合い、そして、

「フィニクス、流星群!」

 フィニクスは上空から、エネルギーで生成した無数の隕石を解き放つ。数多の流星は、群れとなってシャンデラへと襲い掛かる——

 ——が、直後フィニクスの体が爆発した。

「っ!? フィニクス!」
 黒い煙を上げながら、フィニクスは落下する。完全に戦闘不能だ。
「……シャドーボム」
 小さく、しかしソンブラに聞こえるように、リオは呟く。
「炸薬を最大まで凝縮した最小の爆弾を、超高速で発射したシャドーボムよ。弾速も威力も、通常の比じゃないわ……まあ、今のシャンデラじゃなきゃ、できないだろうけど」
 つまりシャンデラは、フィニクスが流星群を放つ直前に、超高速でシャドーボムを発射して攻撃していた。ゆえにフィニクスの攻撃はシャンデラには届かず、その前にシャンデラの攻撃がフィニクスに直撃した、ということだろう。
「……一歩及ばず、だったか。戻って、フィニクス。ありがとう」
 ソンブラはフィニクスをボールに戻し、違うボールを握り締めた。
「っ? なに、まだやるつもりなの? 勝負は四対四じゃ……」
「心配しなくてもいいよ。エレクトロ様の心情は、最後の最後まで分からなかった。もうここにいてもしょうがないから、帰るだけさ。ドンカラス」
 ソンブラがボールから出したのは、大ボスポケモンのドンカラスだ。ドンカラスはけたたましい大声で鳴いている。
「あの人は、もしかしたら変わってないのかもしれない。もしくは、変わったのは英雄とか君とかの影響じゃないのかもしない。あの人自身の問題なのかもしれない……それでも、やっぱり僕は、あの人の後継者になることは、できないよ」
 ソンブラが呟くように言うと、次の瞬間、どこからともなく大量のヤミカラスが洞窟の中に流れ込んできた。恐らく、先ほどドンカラスが鳴いていたのは、このヤミカラスたちを呼ぶためなのだろう。
 ヤミカラスたちはドンカラスとソンブラを覆うように旋回しながら飛び回る。
「じゃあね。エレクトロ様は、君と本当の決着をつけたがっていたよ。だからそれまで、腕を磨いておくといいよ——」
 やがてヤミカラスたちは消えていったが、同時にソンブラの姿も、そこにはなくなっていた。



第六節、その五。でれにて第六節は終了です。よって十六幕もこれで幕を降ろします——ということにはならないんですよね、これが。第十六幕は第七節で終わりを迎えます。なんだか六節が始まる前後にラストを飾るのは〜とか言っていた気がしますが、十六幕の終わりは第七節です。というわけで次回、第十六幕 第七節『浮上』です。お楽しみに。

Re: 511章 集会 ( No.756 )
日時: 2013/03/15 18:39
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

『——基地の中にいる全ての団員、直属部下、7Pにお伝えします。これよりゲーチス様による浮上の儀式が執り行われますので、プラズマ団構成員の皆様は、ただちに儀式の舞台へとお集まりください……繰り返します。基地の中にいる全ての団員、直属部下、7Pに——』



 そこは、広間のような場所だった。しかし椅子やテーブルなどはなく、一番奥から二段ほど高くなっている。それ以外はだだっ広い平地がずっと長く続いているだけの空間。
 しかし今現在、その空間はおびただしい数の人間によって埋め尽くされていた。全員が同じ真っ黒な衣装に身を包み、マスクを付けている。胸には盾のような形が白と黒に二分され、青いアルファベットのPとSが重ねて描かれた紋章がある。
 奥の一段高くなっている所には、七人の人間がいた。こちらは皆、バラバラの格好をしている。
 左端にいるのは紫色の髪に白衣を羽織った男。少年のようなあどけなさの残る顔立ちではあるが、瞳の奥には邪悪そうな光が渦巻いている。
 プラズマ団きっての科学者。7Pアシド。
 右端には淡いピンク色の浴衣を着た、赤いポニーテールの少女がうつ伏せで寝そべっている。如何にも眠たげで、怠惰な眼はジッと正面を見据えていた。
 プラズマ団きっての麒麟児。7Pフレイ。
 その隣には、無造作に跳ねた緑髪、迷彩色の服に黒いコートを羽織った男。どこか達観したような眼差しは、別のものを見ているかのようだ。
 プラズマ団きっての工作員。7Pフォレス。
 さらにその隣、毛先は焦げているが美しい青色のロングヘアーに、簡素な水色のワンピースを着た女。鋭く凍てつくような視線を、どこかへと向けている。
 プラズマ団きっての美麗人。7Pレイ。
 左から二番目には、執事服を着た黄色い髪の男。柔和そうな目は今は細く鋭い。
 プラズマ団きっての大黒柱。7Pエレクトロ。
 その隣には、真っ黒なローブにフードまでかぶった、藍色の髪の人物。目どころか顔を全く見せないそれは、人間であるかすらも疑わしい。
 プラズマ団きっての異端者。7Pドラン。
 そして中央には、ベージュ色の軍服に灰色のコートを着た男。険しい眼差しにはどこか強い意志を感じられる。
 プラズマ団きっての求道者。7Pガイア。
 彼らの後ろには、彼らの部下が立ち、彼らの前には、彼らの頂点が君臨する。
 目玉模様のある、影のような漆黒のコートに身を包む男。頬は痩せこけているが、その瞳は野心に満ちており、ギラギラと黒く輝いている。
 プラズマ団の頂点に君臨する者、ゲーチス。
 この場には、すべてのプラズマ団構成員が、集まっている。
 ゲーチスは奥の最も高い段から、同胞たちを見下ろす。
「……皆の者、よく聞くのです。遂に時は満ちました。境界の水晶のエネルギーは十分、キュレムを復活させる準備が整ったのです」
 ゲーチスの言葉を受け、7Pやその部下たちは無反応だが、下っ端と思しき者たちは多少ざわめく。だがゲーチスはきにせず続けた。
「そして、我らの前に立ちはだかる憎き英雄たちとの、決着の舞台も整いました。これより我々は、ジャイアントホールへと向かい、キュレムを復活させます。しかしその途中で、奴らが邪魔をするのは目に見えています。いや、むしろこちらから誘いだし、叩き潰すのです。一年……いや、二年前。我らが王として君臨していたもう一人の英雄は、我々を裏切った。そしてあろうことか、もう一人の英雄に味方をしている」
 しかし、とゲーチスは繋げ、
「これは危機ではなく、むしろ好機です。二人の英雄をまとめて葬り去ることができる絶好の機会です。なに、案ずることはありません。二人の英雄など恐れるに足らない存在です。我々に味方をするのは、真実でも理想でもない。この二つから生まれた、虚無。白き炎の龍ではない、黒き雷の龍ではない。レシラムでもゼクロムでもない。灰色の——混濁の、氷の龍。その名も——」
 一拍置いて、ゲーチスは力強く、叫ぶようにその名を告げる。

「——キュレムです!」

 刹那、静寂がこの場に広がる。凍りついたように、全ての者の動きが、一瞬だけ停止する。
「……真実の英雄、理想の英雄。この二つの存在を超越するのは、混濁の使者、キュレムしかいません。かの史上最強と謳われた、氷の龍がいれば、奴らなど——世界など敵ではないのですよ!」
 顔を伏せて呼吸を整え、ゲーチスは再び顔を上げる。
「前置きが長くなりましたね。それでは始めましょう。英雄たちを葬る舞台を作り出す、浮上の儀式を——」
 言ってゲーチスはカンッ! と手にした杖の先端を地面に叩き付け、音を鳴らす。すると次の瞬間、三人の影が現れた。
 ダークトリニティ。ゲーチスの腹心三人衆。プラズマ団の、影。
 ダークトリニティは一つの淡く発光する石をゲーチスから受け取ると、さらに奥の台座へと向かう。
 機械的だが、どこか古めかしくも感じる不思議な台座。中央には石がちょうど収まるくらいのくぼみがあり、ダークトリニティはそのくぼみへと、石をはめる。

 すると刹那、世界が振動した。

 団員たちはよろめき、倒れまいとバランスを取っていた。しかしゲーチスは直立したまま、両手を広げて天を仰ぎ、邪悪な笑みを見せている。

「さぁ、浮上せよ……古代空中都市、プラズマ・シティ——!」



第七節、浮上です。次回は第十七幕、決戦へと移行します。お楽しみに。

Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——再びお知らせです—— ( No.757 )
日時: 2013/03/15 19:25
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: qGvWMQ8k)

こんばんは、最近忙しくて日曜日くらいまでろくに更新が出来そうにないパーセンターです。

最後の浮上についてはゲームで出て来たプラズマフリゲートだと考えていたのですが、それとは比にならないくらいとんでもないものが出て来ましたね。空中都市ですか…
第十七幕は『決戦』…もうこの小説も終わりに近いのかと思うとなんだか寂しいですね。

それにしても、プラズマ団の戦力は計り知れませんね。
7Pを筆頭に、直属部下たち、ダークトリニティの有する伝説のポケモン、古生代ポケモン、ゲーチスの有する伝説のポケモン、果てはキュレムですか。
しかも7P上位三人は解放状態で負け無し、ガイアに至っては解放状態すら未知数ですしね。

僕も絵を書くのは好きです、しかしポケモンは上手くかけても人間が全くかけません。
この前はうちのサザンドラ使いのあいつを書いてみましたが、どうしても顔が大きくなり、顔と体のバランスがおかしくなってしまいます…

それはともかく、最近の僕が言えたことではないですが更新頑張ってください。
ここまで来たら、僕も最後まで読み抜きますよ。

Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——再びお知らせです—— ( No.758 )
日時: 2013/03/16 16:28
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

パーセンターさん


 白黒は逆に、日曜日が更新できそうにないです。なので今日中に更新できるだけ更新しようと思っております。

 プラズマフリゲートでもよかったのですが、今回のバトルの規模とかを色々考えると、あの船じゃあ収まりきらないと思い、ならいっそ大々的にしてしまえということで、空中都市になりました。
 そうですね……白黒的には、この小説が終わるのが先か、それともレス数の終わりが来るのが先か、って感じになってますけど。とはいえ、寂しいものは寂しいのですが。

 プラズマ団は……もう、本当に世界征服してしまえそうですからね。伝説のポケモンを扱いきれずに瓦解したマグマ団やアクア団と違って、完全に伝説のポケモンを操ってますし。
 解放したガイアの力は未知数……成程、そう表現すれば好意的になりますね……という冗談はさておき、遂にこの幕で彼の力が発揮される……かもしれません。

 白黒は人間すら満足に描けません。良くかけて顔だけで、体は頑張っても胸くらいまでです。

 ありがとうございます。
 白黒もここまで来たら最後まで書き通します。

Re: 512章 孤島 ( No.759 )
日時: 2013/03/16 16:32
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「んー……! やっとイッシュに帰って来たなぁ……」
 ヒウンシティの船着き場にて、背伸びをする少年の影が一つ。彼は知るものぞ知るイッシュ地方の真実の英雄、イリス。
 つい先日までは、先代の英雄であり父親のイリゼと共に、イッシュ本島から離れた辺境地を巡りながら特訓をしていて、今まさに、イッシュ本島へと戻って来たのだ。
「やっぱ本島じゃないとイッシュって感じがしないからね……とはいえ、故郷を懐かしむのも、ほどほどにしとかないとな」
 イリスが帰ってきた理由は二つ。一つはイリゼとの特訓を終えたから。イリゼがイリスに教えるべきことを全て教え、イリスも学ぶべきことを全て学んだがゆえに、特訓の過程を終えたがゆえに、イッシュへと戻って来た。
 そしてもう一つは、イリスが特訓する理由、プラズマ団との決戦の日が近づいてきているからだ。
 プラズマ団は境界の水晶の力が満ちる、冬の終わり頃に動き出すはずだ。となると、もうそろそろ何かあってもおかしくない。そのため、無闇に特訓を引き伸ばさず、こうして馳せ参じたというわけだ。
「父さんはカノコタウンに行ったし、僕はどうしようか……こういう時は、やっぱり休むべき?」
 とはいえ体の方は好調だ。今すぐ休む必要などない。ならばこの場合、休めるのはやはり心。
「うーん、だったら久しぶりに、スカイアローブリッジでも見に行こうかな。もうしばらくしたら大がかりな点検で、入れなくなるみたいだし」
 と呟きながら、イリスはイッシュ最長の橋、スカイアローブリッジへと向かう。ヒウンシティの端にあるゲートを潜り抜ければ目前だ。
 そうしてゲートに足を踏み入れた、刹那。
「っ……!?」

 世界が震撼した。

「じ、地震か……!?」
 壁に手をつき、なんとか体を支えるイリス。地震はしばらく続いた後、やがて収まった。
「長い地震だったな……しかも、イッシュでただの地震っていうのも珍しい。火山活動の影響とかならともかく」
 何か嫌な予感がする、とイリスはふと顔を上げる。ゲートの窓に広がる青い空。いつもならただそれだけの、平和な空間なはずの空が、今は違った。途方もない、我が目を疑いたくなるような異物が、そこには存在する。
「……!? な、なんだよ、あれ……?」
 目を擦ってもう一度見るが、それに変化はない。幻でも錯覚でもない。それは実際の存在しているもの。しかしそこにはあるはずのないものだった。それは、

「街が……浮いてる……!?」

 ここからだと遠いので、全貌はつかめない。実際の規模も分からない。しかし、遥か空の彼方には、複数の建物が立ち並ぶ、街のようなものが、どんどん空へと上っている。
 あまりに非常識な光景にイリスが驚愕していると、ゲートに備え付けられている電光掲示板にニュースが流れだした。

『緊急速報です。たった今発生した地震の震源は、サザナミ湾付近と思われ、同時に謎の巨大な都市が浮上しました。現在、各種方面の機関が調査を進める模様。なお、巨大都市は現在、上昇を続けて……い、……るよ……う……——』

 途中から電光掲示板の映像にノイズが混じり、やがて別の画面へと切り替わってしまう。そして、その画面を見たイリスは、再び驚愕の表彰を見せる。

『英雄諸君、聞こえていますか?』

「……! ゲーチス……!」
 そこに映し出されたのは、プラズマ団の頂点にして諸悪の根源とも言うべき、イリスたちの最大の敵、ゲーチス。ただ、顔は衰えたように痩せこけており、恰好も黒いコートを着るなど、以前であった時とは意匠が異なる。

『ご覧になられましたか? あの、空に浮かぶ巨大都市を。あれは我々プラズマ団が誇る科学の粋を結集させ、現代に蘇らせた古代都市——古代空中都市プラズマ・シティです』

「現代に蘇らせた……? 古代空中都市……?」
 よく分からない単語が多いが、あれほどのものを浮かべるほどの科学力をプラズマ団が有しているのは分かった。はっきり言って滅茶苦茶だ。

『英雄諸君、よく聞くのです。今から我々は、ジャイアントホールへと向かい、キュレムを復活させる。そうなれば最後、あなたがたとイッシュの未来、そして世界は、我々プラズマ団が握る事となります』

 しかし、とゲーチスは続けた。

『あなた方は今まで、散々我々の邪魔をしてきた。一年……二年前のNとの死闘が、その最もたるものでしょう。ゆえに、今回もワタクシの邪魔をすることは目に見えています。だから』

 左端の口を歪ませ、嘲笑うようにゲーチスは告げる。

『ワタクシを止めたくば、プラズマ・シティへと乗り込むのです、英雄! そこで、決着をつけようではありませんか——』

 プツッ、と電光掲示板が消える。
「……なにが乗り込むのです、だ。そんなこと、言われるまでもない」
 一つのボールを取り出し、握り締め、イリスはそんなことを呟く。
 同時に、腕のライブキャスターが鳴った。
「誰から……?」
 流石にゲーチスではないだろうと思いながら回線を開くと、案の定、流石のゲーチスではなかった。相手はキリハだ。
『イリス君! さっきのニュースだけど……』
「分かってます、僕も見ました。遂にプラズマ団と、決着をつける時が来たようですね」
 キリハは妙に落ち着いているイリスを見て、少し驚いたような表情を見せる。が、すぐに気を取り直し、
『……なら、話は後かな。今すぐにプラズマ団を倒すための作戦会議に入りたい。腕の立つトレーナーを集められるだけ集めて、プラズマ・シティとやらに乗り込む算段を立てる。だから君にも集まってほしいんだ』
「集まってほしいって……それはいいですけど、どこにですか? ヒウンして分は倒壊してしまいましたし……」
『ヒウンじゃない。PDOの本部に集まるんだ』
「PDOの本部? それって、どこにあるんですか?」
 よく考えてみれば、PDOの本部がどこにあるのかという話を、イリスは全く聞いていなかった。各町に各支部が存在するのは分かっていたが、それらをまとめる総本山がどこにあるのかは、まったく知らない。
 そしてキリハは、その場所を打ち明ける。

『リバティガーデン島だ』



 リバティガーデン島。そこは、ヒウンシティの南西に位置する小さな島で、昔はとある富豪の所有物だったようだ。
 そして今は、PDOが富豪からこの島を買い取ることで、PDO本部となっているらしい。
「……というか、これ、本部というより秘密基地って言った方がしっくりくるんですけど……」
「言わないでくれ。僕だって、今さっきこの島が本部だって知ったんだからさ」
 船を利用すると時間がかかる上に煩わしいので、イリスはウォーグルに乗ってリバティガーデン島までやってきた。しかし本当に小さな島だったので、キリハとペガーンが空からサインを送ってくれなければ、絶対に辿り着けなかっただろう。
 イリスとキリハの二人はそんな事を言いながら、この島にあるただ一つの建物、灯台の中へと入っていく。
「実はもうみんな集まっていて、君が最後なんだ。さあ、入って」
 促されるままにイリスは灯台の中の部屋へと入る。そこは広間のようになっていて、長机やスクリーンなど、作戦会議室という言葉がよく似合いそうだ。
「よーぅイリス、遅せぇぞ」
「……なんでカノコタウンに戻ったはずの父さんが、僕より先にここにいるのさ」
 甚だ疑問だが、イリゼにこの世の常識を説くことが間違っている。イリスはそれだけ言って、部屋を見渡した。
 集まっているのは、二十人あまり。それも、今までプラズマ団と戦ってきた者たちばかりだ。大軍隊を率いるプラズマ団を倒すには、些か人数が少ない気もするが、イリスは全員が腕の立つトレーナーであることを知っているので、少数精鋭ということにして納得する。
 その中でイリスは、とある人物に目を合わせた。
「N……」
 緑髪で長身の青年。以前はプラズマ団の王、今はイリスたちの仲間となった、理想の英雄。
「いよいよだね」
「うん」
 お互い短く言葉を交わし、それっきり黙り込む。
 イリスの登場で面子が出揃い、キリハが前に立った。
「さて、それじゃあこれで役者は揃ったね。それじゃあ今から、打倒プラズマ団のための作戦会議を始めるけど……その前に、二人ほど紹介しなきゃいけない人たちがいるんだ。たぶん、知らない人もいるだろうから」
 キリハはチラッとある人物に目配せをする。
 紹介したい人……というのは、イリスにも分かる。この部屋に入ってから真っ先に目に入った人物。一年……いやさ二年前から今までまったく姿を見せなかった、PDOの統領。
 その人物はキリハと場所を変わると、全体を見渡し、口を開いた。
「……言うべきことは色々あるんだけど、まずは自己紹介をするべきだね。初めましての人は初めまして」
 そう言って、彼はその素性を明かす。

「僕がPDOのリーダー、ジルウェだよ」



遂に始まりました、第十七幕。決戦の意味は、言わずもがなですね。さて、今回は前作ぶりとなるPDOのリーダー、ジルウェが出ましたが……覚えている人、いますかね? 前作でも特に何もしてなかった彼が今更のこのこ出て来て、なんだこいつ? みたいになってませんかね?それでは次回、古代空中都市プラズマ・シティを解明します。お楽しみに。


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