二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——完結——
日時: 2013/04/14 15:29
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=21394

 今作品は前作である『ポケットモンスターBW 真実と理想の英雄』の続きです。時間としては前作の一年後となっておりまして、舞台はイッシュの東側がメインとなります。なお、前作は原作通りの進行でしたが、今作は原作でいうクリア後なので、オリジナリティを重視しようと思います。
 今作品ではイッシュ以外のポケモンも登場し、また非公式のポケモンも登場します。

 参照をクリックすれば前作に飛びます。

 では、英雄達の新しい冒険が始まります……

 皆様にお知らせです。
 以前企画した本小説の人気投票の集計が終わったので、早速発表したいと思います。
 投票結果は、
総合部門>>819
味方サイド部門>>820
プラズマ団部門>>821
ポケモン部門>>822
 となっています。
 皆様、投票ありがとうございました。残り僅かですが、これからも本小説をよろしくお願いします。

登場人物紹介等  
味方side>>28  
敵対side>>29
PDOside>>51
他軍勢side>>52
オリ技>>30
用語集>>624

目次

プロローグ
>>1
第一幕 旅路
>>8 >>11 >>15 >>17
第二幕 帰還
>>18 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27
第三幕 組織
>>32 >>36 >>39 >>40 >>42 >>43 >>46 >>49 >>50 >>55 >>56 >>59 >>60
第四幕 勝負
>>61 >>62 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>72 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80
第五幕 迷宮
>>81 >>82 >>83 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90 >>92 >>93 >>95 >>97 >>100 >>101
第六幕 師弟
>>102 >>103 >>106 >>107 >>110 >>111 >>114 >>116 >>121 >>123 >>124 >>125 >>126 >>129
第七幕 攻防
>>131 >>135 >>136 >>139 >>143 >>144 >>149 >>151 >>152 >>153 >>154 >>155 >>157 >>158 >>159 >>161 >>164 >>165 >>168 >>169 >>170 >>171
第八幕 本気
>>174 >>177 >>178 >>180 >>184 >>185 >>188 >>189 >>190 >>191 >>194 >>195 >>196 >>197 >>204 >>205 >>206 >>207 >>211 >>213 >>219 >>223 >>225 >>228
第九幕 感情
>>229 >>233 >>234 >>239 >>244 >>247 >>252 >>256 >>259 >>262 >>263 >>264 >>265 >>266 >>269 >>270 >>281 >>284 >>289 >>290 >>291 >>292 >>293 >>296 >>298
第十幕 強襲
>>302 >>304 >>306 >>307 >>311 >>316 >>319 >>320 >>321 >>324 >>325 >>326 >>328 >>329 >>332 >>334 >>336 >>338 >>340 >>341 >>342 >>343 >>344 >>345 >>346
弟十一幕 奪還
>>348 >>353 >>354 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>376 >>377 >>378 >>379 >>380 >>381 >>382 >>383 >>391 >>393 >>394 >>397 >>398 >>399 >>400
第十二幕 救世
>>401 >>402 >>403 >>404 >>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>412 >>413 >>414 >>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>433 >>436 >>439 >>440 >>441 >>442 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447 >>450 >>451 >>452 >>453 >>454
第十三幕 救出
>>458 >>461 >>462 >>465 >>466 >>467 >>468 >>469 >>472 >>473 >>474 >>480 >>481 >>484 >>490 >>491 >>494 >>498 >>499 >>500 >>501 >>502
第十四幕 挑戦
>>506 >>511 >>513 >>514 >>517 >>520 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>534 >>535 >>536 >>540 >>541 >>542 >>545 >>548 >>549 >>550 >>551 >>552 >>553 >>556 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>568
第十五幕 依存
>>569 >>572 >>575 >>576 >>577 >>578 >>585 >>587 >>590 >>593 >>597 >>598 >>599 >>600 >>603 >>604 >>609 >>610 >>611 >>614 >>618 >>619 >>623 >>626 >>628 >>629 >>632 >>638 >>642 >>645 >>648 >>649 >>654
>>657 >>658 >>659 >>662 >>663 >>664 >>665 >>666 >>667 >>668 >>671 >>672 >>673 >>676 >>679 >>680 >>683 >>684 >>685 >>690 >>691 >>695

第十六幕 錯綜

一節 英雄
>>696 >>697 >>698 >>699 >>700 >>703 >>704 >>705 >>706 >>707 >>710 >>711
二節 苦難
>>716 >>719 >>720 >>723
三節 忠義
>>728 >>731 >>732 >>733
四節 思慕
>>734 >>735 >>736 >>739
五節 探究
>>742 >>743 >>744 >>747 >>748
六節 継承
>>749 >>750 >>753 >>754 >>755
七節 浮上
>>756

第十七幕 決戦

零節 都市
>>759 >>760 >>761 >>762
一節 毒邪
>>765 >>775 >>781 >>787
二節 焦炎
>>766 >>776 >>782 >>784 >>791 >>794 >>799 >>806
三節 森樹
>>767 >>777 >>783 >>785 >>793 >>807
四節 氷霧
>>768 >>778 >>786 >>790 >>792 >>800 >>808
五節 聖電
>>769 >>779 >>795 >>801 >>804 >>809
六節 神龍
>>772 >>798 >>811
七節 地縛
>>773 >>780 >>805 >>810 >>813 >>814 >>817
八節 黒幕 
>>774 >>812 >>818

最終幕 混濁
>>826 >>827 >>828 >>832 >>833 >>834 >>835 >>836 >>837 >>838 >>839 >>840 >>841 >>842 >>845 >>846 >>847 >>849 >>850 >>851
エピローグ
>>851

2012年冬の小説大会金賞受賞人気投票記念番外
『夢のドリームマッチ ver混濁 イリスvsリオvsフレイ 三者同時バトル』>>825



あとがき
>>852

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171



Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 ( No.770 )
日時: 2013/03/19 14:40
名前: プツ男 (ID: DN0pvQeX)

どうも、受験ポケモンA日程とB日程から受けた(人生の)
滅びの歌のカウントがあと2日になってしまったプツ男でございます。黒い制服か、紺の制服か、軍服か(え

とうとう決戦の火蓋が切って落とされましたね。これで決戦というのも、なんだか寂しいです・・・・
プラズマシティを某天空の城?と思ってしまったのはここだけの話しです。

ジルウェとシスタ!久しぶりに見たような気がします。
確か、ジルウェはメイルを焦がしていましたよね。ああ、だからビクティニが勝利の星かと今更気づきました。

でもって、映画タイトルが「神速の」なのに、素早さ種族地が99のゲノセクトさんの出番がとうとう来ましたね。
アシドによってグレードアップされている様ですが、正直、ゲノセクトさんが勝つイメージが湧きません(え

そして、7P達も決着をつけようとバトルに入っていますね・・・・
この流れで行くと、っていうか、ほぼ確定ですが、ドランvsムントとガイアvsイリスの対戦カードが予測出来ますね・・・・・
でも、ガイアがこの戦いで解放して負けたら・・・・・完全にかまs・・・・いえ、何でもないです。

イリゼが晴れパでヒードランですし、ロキは・・・・雨パで・・・・・うーむ・・・・・・アレが出てきそうな予感がします。

白黒さんの投稿時間がすごいですね・・・・キーが乗っていらっしゃったのですか?
僕、夜に長時間パソコン使うと、絶対寝落ちしちゃうんですよね・・・・・

Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 ( No.771 )
日時: 2013/03/21 13:09
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

プツ男さん


 大丈夫です、滅びの歌で同時に戦闘不能になった場合は発動者が負けになります! ちなみに白黒の制服は紺です。白でも黒でもないです。

 第十七幕は決戦です。7Pたちとの因縁も、ここが終着点となるでしょう。
 僕も最初は空飛ぶ城にしようかと思いましたが、某天空の城とモロ被りする上、色々なステージを出すことができなさそうだったので、結局は空中都市にしました。

 彼らは本当に久しぶりです。実に前作ぶりです。
 前作を書き始めた時から、イッシュのポケモンは全部出そうと思っていたので、彼らにはビクティニとメロエッタを持ってもらいました。だからジルウェは勝利の星とい台詞があります。決して生贄や犠牲者の星ではありません。道場も閉鎖されています。

 まあ……二対一でビクティニ相手ですもんね。素早さの種族値は、ビクティニにも1負けてますし……全タイプのテクノバスターがあっても、ゲノセクトが勝のは難しいでしょうね。

 ドランとムントは因縁がありますからねー。そしてイリスの相手はガイアになるのか……ここでガイアが本当にバトルなしになったら、完全ネタになっちゃいますね。

 ロキのエースは、まあイリゼとの関連と、彼の手持ちポケモンの傾向から判断すれば、分かりやすいかもしれません。

 いえ、実は前日に部活の遠征で他県というか他都に夜行バスで行っていまして、そこから帰った後に半日も爆睡してしまい、体内時計が狂ってるだけです。
 とはいえキーが乗ってるのも本当ですけどね。やっぱり最終決戦ということで、白黒も更新したくてうずうずしております。

Re: 521章 ムントvsドラン ( No.772 )
日時: 2013/03/19 15:15
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 下っ端の大軍を突き抜け、ムントはただ一人、空中都市の中で最も高い建造物——即ち塔を上っていた。
 高い塔で、中は螺旋状の階段がひたすら渦巻いているだけだ。それをずっと上っていき、どれくらい経ったか分からなくなってきた頃、頂上に辿り着いた。
 頂上はそれほど広くない。普通のバトルフィールドを円形に切り取った程度の面積しかない。縁には柵などもなく、しかもここは空中都市で塔のてっぺん。風も吹き荒れているため、非常に足場が悪い。
 しかしそんなものをものともせず、風に揺らめく人影が一つ、そこにはあった。
 真っ黒なローブに身を包み、フードで顔全体を隠している。そのフードからは藍色の髪が垂れ下がるようにして出ており、フードにはプラズマ団の紋章。
 神龍隊統率、序列二位——7P、ドラン。
「……やっぱり来たね、ムント君」
 ドランは、その異形の姿からは想像できないほど幼い声で、ムントの名を呼ぶ。
「ドランは君に来て欲しいと思ってたんだ。だからこうして、戦いの場を設けてあげたんだよ」
 両手を広げるドラン。戦いの場と言うが、この場所はとても戦うのに適しているとは思えない。しかしドランは、
「この塔はね、イッシュ創世記の頃、儀式として利用された塔なんだよ。龍を呼ぶ儀式場。かつての英雄たちも、ここで真実の龍や、理想の龍と更新してた……セッカシティだっけ? にある龍螺旋の塔は、この塔を現代に復元させたものらしいよ」
 と言い、
「つまり、この塔は龍にとって、ドラゴンポケモンにとって神聖な場所なの。ドランたちが決着をつけるのには、相応しい舞台だと思わない?」
「……どうだろうな」
 ムントとしては、場所などはどうでもいい。最大の目標はゲーチスを倒し、プラズマ団を解体すること。そしてその障害となるであろう7Pを先に倒す。そしてムントが倒すべき7Pは、目の前にいる異形の人影、ドラン。ムントの中にあるのは、それだけだ。
「ふーん、まあいいや。なんにせよ、ここはドランとムント君が決着をつけるために、ドランが用意した場所なんだ。だから、邪魔な奴らはいらない」
 そう言ってドランは、三つのモンスターボールを取り出し、ムントに見せつけるようにして突き出す。
「……?」
 その行動の意味が分からず、疑問符を浮かべるムント。それに構わずドランは、くるっと後ろを向いた。そして、

 手にした三つのモンスターボールを、塔から投げ捨てた。

「っ……!」
 さしものムントも驚きを隠せない。自分のポケモンを三体も捨てるなど、正気の沙汰ではない。
 しかしドランは、いつもの調子で語り続ける。
「ドランと君の戦いに、余計なポケモンは必要ない。ドランには、ドランの力が一つあればそれでいい。その力だけで、君と戦うよ」
 またムントに向き直ったドランの手には、一つのボールが握られていた。
「さあ、始めようよ、ムント君。この戦いが、ドランの命運を決めるんだ」
 急かすようなドランに、ムントは静かにボールを取り出した。
「……ポケモンを投げ捨てるなどという思考は、俺には分からない。だが、一対一、サシのバトルだと考えれば、分からないこともない、か」
 そう呟くと、無とはボールを構える。ドランも同じく、構えを取った。
「元より、お前の力とやらを打破するために、俺はこいつと鍛えてきた。一対一がちょうどいい」
「それは良かった。それじゃあ、始めるよ!」
 ドランの声を皮切りに、ポケモンが繰り出される。

「天空に臨め、ドラドーン!」

 現れたのは巨大な龍。神龍ポケモン、ドラドーン。
 分類通り、胴の長い龍の如き姿をしており、蓄えられた髭は威厳を感じさせる。
 10mを遥かに超えるだろう巨躯を晒したドラドーン。その圧倒的な威圧感には、大抵のポケモンやトレーナーなら屈してしまうだろう。
 しかしムントは屈しない。今まで、このドラドーンを倒す一心で修業を積んできた。そして、この神龍を倒すポケモンは、一体しかいない。
「……お前の力を見せつける時だ。今度こそ、奴を屠る」
 直後、ムントの手からボールが放られる。

「出て来い! オノノクス!」

 現れたのは屈強な龍。顎斧ポケモン、オノノクス。
 異常に発達した斧の如き牙は鋭く、黒く煌めいている。ドラドーンほど巨体ではないが、それでもがっしりとした体つきは、逞しさを感じる。
「……うん、やっぱそうこなくっちゃ。さあ、かかっておいでよ。ドランも、戦力で迎え撃つよ!」
「端からそのつもりだ! オノノクス、ドラゴンクロー!」
 オノノクスは地面を蹴って飛び上がり、龍の爪でドラドーンを切り裂く。
 先制の、効果抜群のドラゴンクローが決まった。しかしドラドーンは身じろき一つしない。
「前よりもずっと攻撃力が上がってるね。でもでも、そんなんじゃドランのドラドーンは倒せないよ! ハリケーン!」
 ドラドーンはどこからか、激しい突風を吹き放つ。ただでさえ足場が悪いというのに、この一撃をまともに喰らえば簡単に吹っ飛ばされ、塔の外に放り投げられてしまう。
 そのためオノノクスは、地面に爪を喰い込ませ、必死で突風を耐える。ただひたすらに、耐え続ける。
「……龍の舞!」
 そしてハリケーンが止んだ頃合いを見計らって、オノノクスは龍の舞を舞う。これで攻撃力と素早さは一段階上昇したことになる。
「ドラドーン、アイスバーン!」
「オノノクス、かわしてドラゴンクロー!」
 ドラドーンは氷の衝撃波を放つが、オノノクスは跳躍してそれを回避。ドラドーンの額を龍の爪で引き裂くが、ドラドーンはまだ効いたような素振りを見せない。
「アイスバーン!」
「っ、かわせ!」
 直後、ドラドーンは氷の衝撃波を放つ。まともに当たれば致命傷確定の技なので、オノノクスはドラドーンの額を蹴って、三角飛びのように衝撃波を回避。
「龍の舞だ!」
 そして地面に降りたつと、龍の舞で攻撃と素早さをさらに上昇。これで二倍。
「ドラドーン、ハイドロポンプ!」
 オノノクスを弾き飛ばすためか、ドラドーンは高度を少し落とし、真正面からオノノクスに向けて大量の水を噴射する。
「龍の舞で回避!」
 しかしオノノクスは、龍の舞を舞いながら水流をかわし、ドラドーンに接近。そして、
「ドラゴンクロー!」
 龍の爪で切り裂く。効果抜群で、龍の舞を三回も使用しているのだ。普通のドラゴンポケモンなら——いや、チャンピオン級のポケモンでも大ダメージを受けるだろうが、しかしドランのドラドーンは、顔をしかめる程度の変化も見せない。
「アイスバーンだよ!」
 どころかすぐに氷の衝撃波を放って反撃に出る。オノノクスはすぐにドラドーンから離れ、衝撃波を回避した。
「ハリケーン!」
 だが直後、災害の如き嵐がオノノクスを襲う。流石にこの攻撃は避けられないので、オノノクスは踏ん張ってひたすら耐える。
 最初から分かっていた事だが、このフィールドは明らかにドランに有利だ。オノノクスは飛べず、ドラドーンは飛べることからそれは分かるのだが、それ以外にもドラドーンが有利に働く要素が多々ある。
 まずは何と言っても足場の悪さ。ドラドーンは飛んでいるので関係ないが、オノノクスはこの狭い足場を活用しつつ戦わなければならない。攻撃するときには逐一跳躍してドラドーンに近づき、攻撃する必要がある。しかも足場が悪いということは、一度塔から落ちれば一巻の終わり。そしてドラドーンはハリケーンやハイドロポンプなど、こちらを塔の外に弾き飛ばすような技を覚えている。
 以上のような要素から、このフィールドはオノノクスにとっては不利、ドラドーンにとっては有利に働いている。しかし、
「オノノクス、ドラゴンクロー!」
 オノノクスの爪がドラドーンを切り裂く。
「ドラドーン、アイスバーン!」
 対するドラドーンも反撃にと氷の衝撃波を放つが、オノノクスの俊敏な動きで回避されてしまう。
「ハイドロポンプ!」
「かわせ!」
 ドラドーンは追撃にと大量の水を噴射。オノノクスはそれをかわそうとするが、ドラドーンもオノノクスを追いかける。だが、
「瓦割り!」
 手刀を構えたオノノクスが、水流を断ち切って強引に打ち消してしまう。そしてそのまま跳躍し、オノノクスはドラドーンに接近する。
「ドラゴンクロー!」
 龍の爪でドラドーンを切り裂くと、今度は反撃されるよりも早く跳び退き、足場に着く。
 オノノクスは現状、ドラドーンと互角以上の戦いを繰り広げている。これはフィールドの悪さを埋めるほどのムントの戦闘センス、そして今まで積んできた修行の成果の賜物だろう。
「地震だ!」
 突如オノノクスは思い切り地面を蹴りつけ、その衝撃で地面を揺らす——が、それはドラドーンには届かない。それはムントも分かっていることだ。なのでこの地震の狙いは攻撃ではない。
 オノノクスは地震の衝撃で、空高く跳び上がった。
「——!」
「オノノクス、ドラゴンクロー!」
 空高くから繰り出される龍の爪。切り裂く、引き裂くといより、突き砕くような一撃をドラドーンに叩き込んだ。
 その一撃で、ドラドーンの顔は初めて歪む。
(今の感触……)
 その攻撃に手応えを感じ、ムントは、あることを思い出していた。
 それは、このドラドーンを倒すための修行として戦い続けていた、一体の黒いオノノクスのことだった——

Re: 522章 イリスvsザート ( No.773 )
日時: 2013/03/20 22:06
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 下っ端の大軍を突き抜け、城へと侵入したイリスは、不運に見舞われた。率直に言って罠にかかったのだ。それも落とし穴。
 まさかのトラップに引っかかりイリスが落下したのは、砂漠だった。
「……なんだ、ここ?」
 空気は乾いており、砂も舞っている。上を見上げると、青空が広がっていた。室内から落ちてきたのに、完全なる外の空気と情景だが、
「ここは砂漠の気候を再現した訓練場だ。とはいえ、我の部隊くらいしか、使う者はいないがな」
 と、どこからともなく説明が入った。
 イリスは声のする方向に視線を向け、その者の姿を視認する。
 橙色の鮮やかな髪に、砂漠では保護色となるベージュの軍服、その上から灰色のコートを羽織った男。軍服の左胸には、勲章のようにプラズマ団の紋章が刻まれたバッジを付けている。
 地縛隊統率、その実力はいまだ未知数の男——7Pのリーダー、ガイア。
「よくぞ来たな、英雄。お前は、我が自らの手で引導を渡したいと思っていた」
「……そのわりには、お前は僕らにちょっかいをかけてこなかったよな」
 ガイアが能動的にイリスたちに手を出したのは、プラズマ団が準備期間を終えて始動した時。他はすべて、他の者の個人的な依頼だったり、イリスたちから首を突っ込んだ形でしか関わっていない。
「我が率いる地縛隊は、その名の通り基地に縛り付けられる部隊だ。拠点の防衛が主な役割である以上、貴様たちに直接をくだすことは滅多にない」
 どうやらそういうことらしいが、なら最初の一回はなんだと言いたくなる。
 だが今はそれよりも重要なことがある。こうして7Pに出くわしたとなれば、そのまま素通りできるはずもない。
「確か、あの科学者が七位。浴衣の子が六位。罠を仕掛けてきたのが五位。暴走しかけた人が四位。執事服のが三位。怪物っぽいのが二位……とすると」
 消去法で考えれば、7Pの解放状態序列一位、ガイアということになる。
「7P最強か……相手にとって不足なし、と言いたいけど、出来れば当たりたくない相手だったな」
 強い相手と戦わずに済むに越したことはない。最終目標がプラズマ団の解体、その手段がゲーチスを倒すことである以上、それ以外の者と戦う理由はないのだ。
 ガイアは、そんなイリスの言葉に反応した。しかし反応するポイントは、イリスが思っていたものとは違っていたが。
「我は7P最強ではない」
「……え?」
 思わず呆気に取られるイリス。本当に、まったく意味が分からないといった表情だ。
「我は7Pで最弱だ」
「いや、だからそれは未解放状態なら、ってことだろ? 消去法で考えれば、解放すればお前が7Pのトップなはずだ」
「そうだな。しかしそれは我であっても、ガイアという男ではない」
「……?」
 ますますわけが分からない。ガイアが何を言いたいのかが、まったく理解できない。イリスはただただ混乱するだけだ。
「7Pには、それぞれコードネームが存在する。我々が互いに呼び合っている名がそれだ。しかし我は、ガイアという名は、7Pとしての名ではない。ガイアとは、我の故郷で代々受け継がれる、巫女の異名。7Pとしての諱は他にある」
「み、巫女……? お前、何を言って——」
 どんどん困惑していくイリスを無視して、ガイアはさらに続ける。
「キュレムの刻印が抑え込むのは、その者を形成する核となるもの。解放時の変化は、解放率の大きさに比例する。我の解放率はアシドでも計測しきれぬほど強大だ。英雄、とくと見よ。我が解放するのはこれが二度目だ、その事実を光栄に思うがいい!」
 叫び、ガイアはコートを脱ぎ捨て、軍服の第一ボタンを外す。すると露わになった首には、歪な縦の線が走っていた。
「我に刻まれし刻印は、キュレムの首! その目に焼き付けよ、英雄! これが、キュレムの刻印が持つ真の力だ!」
 刹那、ガイアの首が橙色に輝く、鈍い光だが、その光の大きさは、今まで見てきたどの7Pの解放よりも大きい。あまりの光に、イリスは思わず目を瞑ってしまう。
「っ……!」
 ゆっくりと瞼を上げ、イリスは目の前にいるはずのガイアを見据える。
 そこにいるのは紛れもなくガイアのはずだが、解放前と比べて相違点が多々あった。
 まずは髪。解放前は普通長さだったのだが、今は肩ぐらいまでに伸びている。
「これが、我の解放だ。英雄」
 次に声。非常にハスキーで勇ましい声だが、明らかに女声だった。
 この時点でイリスは頭の中をかき回された気分になる。自分の常識を大きく覆されそうな感覚に陥る。
 最後に体。軍服を着こなすだけあって体格はいいのだが、それも昔の話。今も体格が悪いわけではない、むしろイリスよりも大柄なのだが、服の上からでも分かる程度に体は丸みを帯びている。顔も鋭い眼光でこちらを睨み付けており、顔つきだってガイアとほとんど変わらない。が、どことなく女性的な顔つきをしているのも事実だ。
 そして、

「我の真の名はザート。7P序列一位、ザートだ!」

 ガイア——否、ザートは、高らかに名乗りを上げた。 
「嘘、だろ……!?」
 イリスは驚愕していた。今にも倒れそうなほど混乱している。当然だろう、さっきまでは男だった者が、次の瞬間には女になっていたのだ。漫画ではなく、現実でそんなことが起これば、困惑するのは当たり前である。
 そしてイリスは思い出した。レイが暴走しかけた時に、フォレスが言った言葉を。
 7Pには、解放する性格や人格が大きく変わるものが三人いる。一人はレイ、一人はドラン。そしてもう一人、イリスは誰かと頭を悩ませていたのだが、その最後の一人は——このガイア、いやさザートだったのだ。
「人格が変わるどころじゃないだろ、これは……!」
 ふらふらとよろめきながら、イリスは頭を押さえる。非常識すぎて、頭が破裂しそうだ。
「驚くのも無理はないが、覚えておけ、英雄。キュレムの力は、人格や、時に身体までをも変えてしまう力を持つのだ。我の場合は、伝説のポケモンに近い存在であるがゆえに感受性が強かったのと、巫女という概念が我の核を形成していたからこそ、ガイアとザート、二つの体が出来たということなのだろうがな」
 性格は、どうやらガイアの時とほぼ同じらしい。となると、一心同体というものなのだろう。
「……さて、英雄。我の準備は整った。7Pの頂点として、我は貴様に引導を渡してやろう。覚悟を決めるがいい」
 刹那、ザートの威圧感がさらに増した。さっきまでの困惑が吹き飛ばされ、今度は気迫に押し潰されそうになる。
 しかし、
「……性転換とかそんな非常識なことより、こっちの方が断然分かりやすい。覚悟なんて、二年前からとっくにできてる!」
 強気に叫び、イリスはボールを一つ取り出し、構えた。ザートも同じようにボールを手に取る。
「勝負は四対四だ。我の全てを持って、貴様を叩き潰してやろう!」
「上等! こっちもお前さえ倒せば、他の7Pなんて敵じゃなくなる!」
 そして、二人は初手のポケモンを、それぞれ繰り出す。
「出撃! カモドック!」
「頼んだ、エルレイド!」
 ザートが繰り出すのは、カモノハシポケモン、カモドック。
 分類とは裏腹に、犬のような姿をしたポケモン。赤紫色の体毛に覆われ、尻尾には大きな殻が付いている。
 イリスが繰り出すのは、刃ポケモン、エルレイド。男性的でシャープな人間型のポケモンで、両肘は緑色の刃となっている。
「エルレイドか、懸命だな。メタゲラスでは、我のカモドックには勝てん」
「メタゲラスでも勝つ自信はあるけどね。ただ、下っ端の殲滅で疲れてるだろうから、少し休ませてるだけだよ」
「そうか……だが、エルレイドが相手でも、負ける気はしないがな。カモドック、殻を破る!」
 先に動いたのはカモドックだ。だが攻撃はせず、自身の尻尾の殻を破り捨てるだけに終わる。
「殻を破る、厄介な技を……! 」
 イリスは顔をしかめる。
 殻を破るは、ポケモンの防御と特防を下げる代わりに、攻撃、特攻、素早さを急上昇させる技だ。
 簡単に言えば、守りを捨てて攻撃に特化した状態となる技。能力を変化させる技としては、かなり優秀だ。
「行くぞ! カモドック、シャドークロー!」
 カモドックは影の爪を生成し、勢いよくエルレイドへと突っ込んで来る。かなりのスピードだ。
「ぐっ、影討ち!」
 あまりのスピードに、イリスは真正面からは迎撃不能と判断。エイルレイドを影の中に潜らせてカモドックの背後を取り、刃で一閃する。
「追撃だ! シザークロス!」
 さらに刃を十字に構え、カモドックを切り裂いた。効果はいまひとつだが、殻を破るで防御が下がっているカモドックには、そこそこのダメージは通っている。
「ぬぅ、カモドック、アクアテール!」
「エルレイド、影討ち!」
 カモドックはすぐさま水を纏った尻尾を払うが、それよりも早くエルレイドが影を通じてカモドックの背後を取り、刃で一閃する。
「よしっ。そのままシザークロス!」
「させん! シャドークロー!」
 エルレイドは追撃に十字の刃を振るうが、すぐさまカモドックが影の爪を振るってエルレイドを弾き飛ばした。
「失敗……7P最強の名は、伊達じゃないってわけか」
 イリスは急遽変貌を遂げたガイア、現在のザートを見据える。砂塵吹き荒れる砂漠で佇むその姿は、戦巫女にも見えた——

Re: 523章 Nvsゲーチス ( No.774 )
日時: 2013/03/19 20:53
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 下っ端の大軍を突き抜け、Nが向かったのはやはり城。真っ先に城へと向かったものは多数いるが、そのほとんどは途中の下っ端などに阻まれたり、罠にはまったり、中で7Pと戦ったりなどで、最上階までは辿り着けていない。
 しかしNは道中でほとんど敵とは遭遇せず、城の最上階にして最深部まで到達する。
 如何にも重厚そうな扉を開けると、そこには——
「……最初にここを訪れたのはあなたですか、N」
 目玉模様のある漆黒のコートに身を包み、右目には赤いモノクル。左手にはプラズマ団の紋章が描かれた、特徴的な杖を携えている。
 階下で戦う者たちの頂点にして、組織を統べる者——プラズマ団ボス、ゲーチス。
「まあ、英雄はガイア——いえ、ザートが相手をしているようですし、となればあなたが来るのが必然ですか」
 ゲーチスはNをジッと見据え、静かに呟く。頬は痩せこけているが、野望に満ちた眼差しは、今もなお、暗黒に輝いている。
「ゲーチス……僕は、あなたを倒しに来た」
「そうですか。あなた程度に、ワタクシが倒せるとでも?」
「そのためにみんなと一緒に強くなったんだ。もう、前の僕じゃない」
 真剣な眼でNはゲーチスを見つめる。対してゲーチスは、目こそ合わせているものの、Nのことなどまったく見ていなかった。
「……まあよいでしょう。キュレムを復活させるまで、まだ時間はたっぷりあります。その間に、ワタクシも体を慣らしておく必要がありそうです。あなた程度でも、準備運動くらいにはなるでしょう」
 口の左端を吊り上げ、歪に微笑むゲーチス。その手には、既にボールが握られていた。
「勝負は三対三です。それ以上でも構いませんが、あなたと戦う程度なら、このくらいが丁度いいでしょう」
「なんでもいい。とにかく僕は、あなたを止める、ゲーチス!」
 Nの叫びを合図に、両者はポケモンを繰り出す。
「恐れる民に闘士の戦慄を! バッフロン!」
「僕に力を貸して……! カクレオン!」
 ゲーチスが繰り出すのは、頭突き牛ポケモン、バッフロン。
 頭部がアフロ状になったバッファローのようなポケモンで、闘争心が全身から溢れ出している。
 Nが繰り出すのは、変色ポケモン、カクレオン。
 緑色の直立したカメレオンのようなポケモンで、腹には赤いギザギザ模様がある。
「カクレオンですか。その程度のポケモンでは、ワタクシのバッフロンは止められませんよ。アフロブレイク!」
 バッフロンは姿勢を低くし、頭を突き出して凄まじい気迫を発しながらカクレオンへと特攻する。
「カクレオン、かわすんだ!」
 カクレオンは横に跳んでアフロブレイクを回避。そして、

「スキルスワップ!」

 次に瞬間、カクレオンとバッフロンが光に包まれ、光から一本の筋が飛び出す。筋はお互いの体内へと入り込み、同時に光も消えた。
「おや、スキルスワップ……小賢しい技を使いますね」
 スキルスワップとは、特性を入れ替える技だ。中には入れ替えられない特性もあるが、この場合、カクレオンの特性である変色と、バッフロンの特性である捨て身が入れ替わったことになる。
「バッフロン、地震です!」
 特性が入れ替わったことなど気にもせず、バッフロンは地揺れを起こしてカクレオンを攻撃する。
「くっ、カクレオン、ドレインパンチだ!」
 カクレオンは地面を蹴り、バッフロンに接近。淡く光る拳を、バッフロンに叩き込む。すると、カクレオンとバッフロン、双方に変化が起きた。
 まずカクレオンは、ドレインパンチの効果で先ほど受けたダメージが回復する。そしてバッフロンは、一瞬だけだが、体色が茶色に変化した。
「カクレオン、続けて燕返しだ!」
 カクレオンは間髪入れずに攻撃を繰り出す。鋭い爪で素早くバッフロンを切り裂いた。
 だがその威力が、かなり高い。いや、ダメージが大きいというべきだろう。まるで効果抜群の攻撃でも喰らったかのように、バッフロンは呻き声を上げる。
「変色、ですか」
 ぼそりと、ゲーチスは呟く。
 カクレオンの特性は、変色。攻撃を受けると、その攻撃と同じタイプに変化するという特性だ。つまりバッフロンはドレインパンチを受けて格闘タイプに変化、そのまま燕返しを受けたため、燕返しが効果抜群となったのだ。
 そして今のバッフロンは、飛行タイプ。
「カクレオン、岩雪崩だ!」
 カクレオンは虚空から無数の岩石を降り注ぎ、バッフロンを攻撃。これも効果抜群となり、バッフロンは三連続で効果抜群の攻撃を受けたこととなる。
「ふむ、厄介な特性です。さっさと決めてしまいましょう。バッフロン、馬鹿力!」
 バッフロンは凄まじい覇気を発しながら、またもカクレオンへと突っ込んでいくが、
「かわすんだ!」
 単調な攻撃のバッフロンでは、カクレオンのつかみどころのない動きには対応できない。またもカクレオンに攻撃をかわされてしまった。
「ストーンエッジです!」
「かわしてドレインパンチ!」
 続けて鋭く尖った岩を連射するバッフロンだが、カクレオンは飛来する岩を次々とかわしていき、バッフロンに接近。光る拳を叩き込む。
「地震!」
「燕返し!」
 カクレオンを吹き飛ばそうと足を大きく上げたバッフロンだが、直後、カクレオンの鋭い爪に切り裂かれ、攻撃は中断された。
「まだだ! 岩雪崩!」
 さらに今度は虚空から岩を落として追撃。毎回効果抜群の攻撃を受けては、流石のバッフロンもそう長くはもたないだろう。
「引き剥がしなさい、バッフロン! 馬鹿力!」
 バッフロンは体内のリミッターを外し、凄まじい覇気を発しながら角を振り回す。カクレオンも決して耐久力が高いとは言えないので、攻撃力の高いバッフロンから効果抜群の攻撃は受けたくない。ここは素直に退いて、バッフロンから距離を取る。
「バッフロン、アフロブレイク!」
 バッフロンは頭を突出し、凄まじい勢いで突貫する。しかし特性、捨て身が無くなったことにより、最初の攻撃よりも勢いは落ちている。
 だがそれでも破壊力は十分ある。まともに喰らえばひとたまりもないだろう。だが、
「かわしてドレインパンチ!」
 カクレオンは軽快な動きでバッフロンの突撃を回避。そして淡く光る拳をバッフロンに叩き込んだ。
 ここまで、バッフロンは効果抜群の攻撃しか受けていない。ローテーションで変化するタイプに合わせて、カクレオンは的確に弱点を突いてくるのだから当然だ。もうバッフロンの体力も僅かだろう。
「そろそろかな……」
 そしてNはそんなバッフロンの様子を見て、小さく呟く。
「バッフロン、ストーンエッジです!」
 バッフロンは周囲に鋭く尖った岩を無数に浮かべ、カクレオンに向けて一斉に発射する。とにかく当てることを重視したのか、岩は広範囲に放たれており、回避は難しい。
「カクレオン、岩雪崩で防御するんだ!」
 そこでカクレオンは、虚空から岩を落として壁にし、ストーンエッジを防御する。こうすれば全ての岩をシャットアウトできる——と考えたのだが、それは些か考えが甘かった。
 バッフロンが発射した岩は、雪崩れ落ちてきた岩を突き抜けてカクレオンに突き刺さる。数こそ少ない上、岩雪崩で威力も減衰したため、ダメージはそこまで大きくない。
「やっぱり早く決めた方がいいか……カクレオン」
 Nはカクレオンを呼び、技の指示を出す。
 それは、

「スキルスワップ!」

 カクレオンとバッフロンは再び光に包まれ、互いの特性を入れ替える。カクレオンは変色、バッフロンは捨て身の特性を手に入れ、元の特性へと戻った。
「これは……!」
 変色という厄介極まりない特性が消えたというのに、ゲーチスは厳しい顔をしている。だが、よく考えればそれは当然のことだ。
 スキルスワップで入れ替わるのは、そのポケモンの特性だけ。それ以外の状態はそのままである。
 つまり、バッフロンは変色で変化したタイプそのままの状態になっているのだ。
 バッフロンが最後に受けたのはドレインパンチ。今のバッフロンは格闘タイプだ。そして、カクレオンが格闘タイプのポケモンに繰り出す技は、
「燕返し!」
 だった。
 カクレオンは高速でバッフロンに接近し、鋭い爪で切り裂く。必中技なので、かわすことはできない。
「このまま必中技で削り落とすつもりですか……!」
 不愉快とでも言いたげに顔を歪ませるゲーチスだが、Nとカクレオンの攻撃は止まらない。
「もう一度、燕返し!」
 返す刀でカクレオンは爪を振るい、バッフロンを切り裂く。
「燕返しだ!」
 またしても燕返し。バッフロンには幾重もの切り裂かれた筋が浮かび上がり、バッフロンの限界を表していた。
「引き剥がすのです、バッフロン! 地震!」
 バッフロンは地面を踏み揺らして地震を起こし、カクレオンは吹っ飛ばす。それにより、カクレオンとバッフロンの間に距離ができた。
「どうせ倒れるのなら、共倒れにしてやりましょう。バッフロン、アフロブレイク!」
 捨て身の特性を取り戻したバッフロンは、最初と同じような凄まじい勢いでカクレオンへと突撃する。この攻撃を受ければ、防御の低いカクレオンでは耐え切れないだろう。
 しかし、
「カクレオン、燕返し!」
 カクレオンも爪を構えて同時に走り出し、バッフロンと交錯する。
 しばらく共に静止していたが、やがて、変化が訪れる。

 ——倒れたのは、バッフロンだった。


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