二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——完結——
日時: 2013/04/14 15:29
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=21394

 今作品は前作である『ポケットモンスターBW 真実と理想の英雄』の続きです。時間としては前作の一年後となっておりまして、舞台はイッシュの東側がメインとなります。なお、前作は原作通りの進行でしたが、今作は原作でいうクリア後なので、オリジナリティを重視しようと思います。
 今作品ではイッシュ以外のポケモンも登場し、また非公式のポケモンも登場します。

 参照をクリックすれば前作に飛びます。

 では、英雄達の新しい冒険が始まります……

 皆様にお知らせです。
 以前企画した本小説の人気投票の集計が終わったので、早速発表したいと思います。
 投票結果は、
総合部門>>819
味方サイド部門>>820
プラズマ団部門>>821
ポケモン部門>>822
 となっています。
 皆様、投票ありがとうございました。残り僅かですが、これからも本小説をよろしくお願いします。

登場人物紹介等  
味方side>>28  
敵対side>>29
PDOside>>51
他軍勢side>>52
オリ技>>30
用語集>>624

目次

プロローグ
>>1
第一幕 旅路
>>8 >>11 >>15 >>17
第二幕 帰還
>>18 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27
第三幕 組織
>>32 >>36 >>39 >>40 >>42 >>43 >>46 >>49 >>50 >>55 >>56 >>59 >>60
第四幕 勝負
>>61 >>62 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>72 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80
第五幕 迷宮
>>81 >>82 >>83 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90 >>92 >>93 >>95 >>97 >>100 >>101
第六幕 師弟
>>102 >>103 >>106 >>107 >>110 >>111 >>114 >>116 >>121 >>123 >>124 >>125 >>126 >>129
第七幕 攻防
>>131 >>135 >>136 >>139 >>143 >>144 >>149 >>151 >>152 >>153 >>154 >>155 >>157 >>158 >>159 >>161 >>164 >>165 >>168 >>169 >>170 >>171
第八幕 本気
>>174 >>177 >>178 >>180 >>184 >>185 >>188 >>189 >>190 >>191 >>194 >>195 >>196 >>197 >>204 >>205 >>206 >>207 >>211 >>213 >>219 >>223 >>225 >>228
第九幕 感情
>>229 >>233 >>234 >>239 >>244 >>247 >>252 >>256 >>259 >>262 >>263 >>264 >>265 >>266 >>269 >>270 >>281 >>284 >>289 >>290 >>291 >>292 >>293 >>296 >>298
第十幕 強襲
>>302 >>304 >>306 >>307 >>311 >>316 >>319 >>320 >>321 >>324 >>325 >>326 >>328 >>329 >>332 >>334 >>336 >>338 >>340 >>341 >>342 >>343 >>344 >>345 >>346
弟十一幕 奪還
>>348 >>353 >>354 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>376 >>377 >>378 >>379 >>380 >>381 >>382 >>383 >>391 >>393 >>394 >>397 >>398 >>399 >>400
第十二幕 救世
>>401 >>402 >>403 >>404 >>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>412 >>413 >>414 >>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>433 >>436 >>439 >>440 >>441 >>442 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447 >>450 >>451 >>452 >>453 >>454
第十三幕 救出
>>458 >>461 >>462 >>465 >>466 >>467 >>468 >>469 >>472 >>473 >>474 >>480 >>481 >>484 >>490 >>491 >>494 >>498 >>499 >>500 >>501 >>502
第十四幕 挑戦
>>506 >>511 >>513 >>514 >>517 >>520 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>534 >>535 >>536 >>540 >>541 >>542 >>545 >>548 >>549 >>550 >>551 >>552 >>553 >>556 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>568
第十五幕 依存
>>569 >>572 >>575 >>576 >>577 >>578 >>585 >>587 >>590 >>593 >>597 >>598 >>599 >>600 >>603 >>604 >>609 >>610 >>611 >>614 >>618 >>619 >>623 >>626 >>628 >>629 >>632 >>638 >>642 >>645 >>648 >>649 >>654
>>657 >>658 >>659 >>662 >>663 >>664 >>665 >>666 >>667 >>668 >>671 >>672 >>673 >>676 >>679 >>680 >>683 >>684 >>685 >>690 >>691 >>695

第十六幕 錯綜

一節 英雄
>>696 >>697 >>698 >>699 >>700 >>703 >>704 >>705 >>706 >>707 >>710 >>711
二節 苦難
>>716 >>719 >>720 >>723
三節 忠義
>>728 >>731 >>732 >>733
四節 思慕
>>734 >>735 >>736 >>739
五節 探究
>>742 >>743 >>744 >>747 >>748
六節 継承
>>749 >>750 >>753 >>754 >>755
七節 浮上
>>756

第十七幕 決戦

零節 都市
>>759 >>760 >>761 >>762
一節 毒邪
>>765 >>775 >>781 >>787
二節 焦炎
>>766 >>776 >>782 >>784 >>791 >>794 >>799 >>806
三節 森樹
>>767 >>777 >>783 >>785 >>793 >>807
四節 氷霧
>>768 >>778 >>786 >>790 >>792 >>800 >>808
五節 聖電
>>769 >>779 >>795 >>801 >>804 >>809
六節 神龍
>>772 >>798 >>811
七節 地縛
>>773 >>780 >>805 >>810 >>813 >>814 >>817
八節 黒幕 
>>774 >>812 >>818

最終幕 混濁
>>826 >>827 >>828 >>832 >>833 >>834 >>835 >>836 >>837 >>838 >>839 >>840 >>841 >>842 >>845 >>846 >>847 >>849 >>850 >>851
エピローグ
>>851

2012年冬の小説大会金賞受賞人気投票記念番外
『夢のドリームマッチ ver混濁 イリスvsリオvsフレイ 三者同時バトル』>>825



あとがき
>>852

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171



Re: 474章 優美 ( No.690 )
日時: 2013/02/17 02:17
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「戻って、グレイシア」
 シロナはグレイシアをボールに戻し、次のボールを取り出そうとするところで、
「……トゲキッスを残しておけばよかったわね。いつもと勝手が違うから、やることなすこと裏目になりがちだわ……」
 ぼそりとイリスには聞こえない声量で呟く。
「ま、嘆いていてもしょうがないわ。次はあなたよ」
 取り出したボールを放り、シロナの五番手のポケモンが姿を現す。
「大海にて踊れ、ミロカロス!」
 出て来たのは、慈しみポケモン、ミロカロス。流線型の細長いポケモンで、頭部にはカールした一対の触角と長いヒレ。尻尾の先端は扇状になっており、ステンドグラスのように七色に光り輝いている。
 ミロカロスは最も美しいポケモンと言われており、イリスはその容姿を見て納得した。確かに、そう呼ばれてもおかしくないほど美麗なポケモンだ。
「だけど、それとこれとは話が別。全力で行くよ、ズルズキン。噛み砕く!」
 ズルズキンはびっしりと並んだ歯を光らせ、大口を開けてミロカロスに突っ込んでいくが、
「ミロカロス、凍える風!」
 ミロカロスは文字通り凍えるような冷たい風を吹きつけ、ズルズキンを攻撃。ズルズキンのスピードは鈍ったが、しかしグレイシアが放ったような吹雪とは比べるべくもないほど威力が低い。そのため、ズルズキンは構わずミロカロスへと駆けて行く。
「ハイドロポンプ!」
 しかし凍える風が止むと、ミロカロスはすぐさま大量の水を噴射してズルズキンを押し流した。
「くっ、だったら諸刃の頭突きだ!」
「もう一度ハイドロポンプよ!」
 ズルズキンは頭を突き出して凄まじい殺気を発しながらミロカロスに突撃する。ミロカロスも大量の水を発射してズルズキンを押し流そうとするが、今度はズルズキンに押し切られてしまう。
「やるわね、そのズルズキン。ミロカロスのハイドロポンプで止められないなんて。ミロカロス、凍える風!」
 水流で威力が減衰していたため、ミロカロスはすぐに態勢を立て直し、凍える風を吹きつけて反撃に出る。
「ブレイズキックだ!」
 凍える風を受けながらも、ズルズキンは跳躍しながら足に炎を灯し、ミロカロスを蹴りつけた。
 ミロカロスは特防には優れているが、それに比べて防御は若干控えめだ。効果いまひとつでも、ズルズキンの攻撃力があればそこそこのダメージは与えられる。
「噛み砕く!」
「押し流しなさい、ハイドロポンプ!」
 続けてズルズキンはミロカロスを噛み砕く勢いで大口を開けたが、そこに大量の水流が発射され、またズルズキンは押し流される。
「凍える風よ!」
 そしてさらに凍える風で追撃。威力は低いが、ズルズキンの素早さがどんどん下がっていく。ズルズキンは元々それほど素早いポケモンではないものの、動きが鈍るのはあまり良いことではない。
「……マグナムパンチ!」
 ズルズキンは大砲のような勢いで飛び出し、勢いよく拳を突き出すが、そのスピードもいつもよりずっと遅い。
「ミロカロス、ハイドロポンプ!」
 そしてミロカロスのハイドロポンプが放たれ、ズルズキンはまたも押し流されてしまう。やはり、ただ突っ込むだけでは通じなさそうだ。
「でも、ズルズキンじゃあんまり器用なことはできないしな……一点突破で行くしかないか。諸刃の頭突き!」
 ズルズキンは姿勢を低くして頭を突き出し、我が身を省みずミロカロスへと特攻する。
「来たわよ、ミロカロス。凍える風!」
 ここでミロカロスは、ハイドロポンプではなく凍える風を放つ。冷たい風を吹きつけてズルズキンの足を遅くした後、
「ハイドロポンプ!」
 大量の水を噴射してズルズキンを押し流そうとする。が、それでもズルズキンは止まらず、ミロカロスに強烈な頭突きを叩き込んだ。
「追撃だ! マグナムパンチ!」
 続けてズルズキンは大砲のような勢いの拳を繰り出し、ミロカロスを殴り飛ばした。直撃なので、ダメージは大きいだろう。
「今のは痛いわね……しょうがないか。ミロカロス、やりましょう」
 シロナの声に答えるように、ミロカロスは透き通るような鳴き声をあげる。そして、

「ミロカロス、眠る!」

 ミロカロスは深い眠りに着いた。
「……は?」
 ぽかんと口を開けて呆気に取られるイリス。何をするかと思えば、ミロカロスは急に眠り出したのだ。それもバトル中に。普通なら呆気に取られるものだろう。
 だが、ミロカロスはこれだけでは終わらない。眠るだけでは、ミロカロスは止まらなかった。

「寝言!」

 突如、ミロカロスは大量の水を噴射し、ズルズキンを押し飛ばした。
「っ!? ズルズキン!」
 意表を突かれた一撃で、ズルズキンは受け身も取れず、大ダメージを受けてしまう。
 それよりイリスは、今のミロカロスの行動に疑問を感じていた。眠り状態ではポケモンは攻撃できない。基本以前に、少し考えれば分かることだ。確かに例外として、眠り状態でも使用できる技があるが——
「っ! 寝言……!」
「その通りよ」
 寝言とは、眠り状態でも使用できる技の一つで、自分の習得している技をランダムで使用する技だ。
「眠ってさっきまでのダメージはすべて回復した……さあ、仕切り直しと行きましょうか」



 ストレンジャーハウス地下一階で、ミキとザキは目的の人物を見つけた。
 その人物はボロボロのソファで寝ており、上階よりも荒れている場所でよく眠れるものだと二人は呆れ半分で感心していたが、それはさておき。
「うーん……おや? ミキちゃんにザキくんじゃないか。もう来たのかい? 意外と早かったね?」
「親父……!」
「お父さん……」
 目的の人物とは、二人の父親である、ロキだ。
「まあ立ち話もあれだし、座りなよ。ここに来るまでに結構歩いたろう? ヤマジは道が全然整備されてないから、慣れてないと足腰を痛めるんだよねぇ。特にミキちゃんなんかは成長期なんだから、そういうことを気にしておかないと、背が伸びないよ。ザキくんも将来腰痛で悩む羽目にならないとも——」
「頼みがある」
 ロキの言葉を遮って、単刀直入に、ザキは切り出した。
「……なにかな?」
 二人が来ることを予測していたような物言いから、ロキはおそらくザキの——二人の頼みについてまで分かっているはずである。
 しかしそれでも、あえてそれを言わず、中途半端に知らない振りを続けるように返した。
「俺たちの特訓に——」
「付き合って欲——」
「——付き合え」
「——しいんだ。……あれ?」
 微妙に相違ある二人の台詞に、ロキは思わず吹き出してしまった。
「ははっ、きみたちは本当に仲がいいねぇ。ザキくんも相変わらずだし。ミキちゃんはちゃんとお願いしてるのに、きみは命令形か」
「今頃のこのこ出て来たんだ。どうせ、俺たちにちょっかいかけに来たんだろ。だったらとことん付き合ってもらうぜ。それに、あんたには聞きたいこともある」
「ふぅん……?」
 意味深なザキの言葉に、ロキは少し反応を示したが、深くは追及しなかった。
「まあ、特訓に付き合うという名目できみたちを鍛えるのは、喜んで引き受けよう。もう分かってると思うけど、ボクはそのためにここにいると言ってもいい。というより、今のボクにはそれくらいしかできることがないんだよ」
「その言葉の真意も含めて後で全部聞いてやるが、だからってこんなとこに住み込むなよ。一応、他人の家だろうが」
「今は誰もいないから問題ないさ。それに、長居をするなら室内、暴れるなら人の迷惑にならない場所がいいだろう? そういう意味でも抜群のチョイスだと思うんだけどね。それにここはボクらの秘密基地だったから、勝手もよく分かる」
「え? ボク、ら……?」
「おっと。今のは忘れてくれ。ともかく長期間にわたって特訓するなら、こういう場所が一番だと思ったわけだよ。分かってくれたかな?」
 やや強引に修正するロキだったが、言いたいことは分かった。ミキにしろザキにしろ、反対する理由はない。
「……まあ、俺は場所なんざどうでもいいけどな。それより親父、俺と賭けをしようぜ」
「賭け?」
 今度は純粋に予想外だったのか、驚いたような表情を見せるロキ。
「ああ、賭けだ。ギャンブル、とはちっと違うけどな」
「何かを考えているのか知らないけど、うん、いいよ。どういう内容の賭けなんだい?」
 案外あっさりロキは賭けに応じた。それに対してザキは、勝ち誇ったような顔でロキに賭けの内容を言い渡す。
「俺たちの特訓が終わるまで——具体的にはプラズマ団が本格的に動き出す冬までに、俺とミキがあんたに勝てれば」
「勝てれば?」
 一拍置いたザキの調子を崩すように、ロキは反芻した。が、ザキは言葉に詰まることなく、すぐさま次の言葉を紡いだ。
「あんたが今まで何をやっていたか、あんたが隠してる自分の正体、それと……母さんについて、教えてもらうぞ」



シロナ戦その五、次の相手はねむねご型ミロカロスです。こうしてみると、シロナはわりとゲームにある既存の型に沿ったスタイルが多いですね。まあ、比較的にですが。しかも書きやすいよう調整もしてますが。にちなみにシロナがポケモンを繰り出す際の台詞はすべて白黒が考えています、当然ですが。後半はザキとミキの特訓フラグ。描写するかどうかは未定ですが、どこかでは出すと思います。では次回はたぶんシロナのエース登場です。お楽しみに。

Re: 475章 初代 ( No.691 )
日時: 2013/02/17 03:07
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「ズルズキン、噛み砕く!」
「ミロカロス、寝言!」
 ズルズキンは大きく口を開いてミロカロスに突っ込むが、ミロカロスも同時に大量の水を噴射してズルズキンを吹っ飛ばす。
「だったら、諸刃の頭突き!」
 頭を突き出してズルズキンは再度突貫。ミロカロスへと迫る。
 シロナはミロカロスでは諸刃の頭突きを迎撃することは出来ないと理解しているので、下手に指示は出さずミロカロスに攻撃を受けさせる。
 そしてズルズキンの頭突きがミロカロスに直撃したが、思った以上のダメージは出ない。
「寝言!」
 直後、ミロカロスは再び大量の水を発射。ズルズキンを押し流す。
「……眠るに寝言、か。意外ときついな、これ」
 今までしばらく黙って撃ち合っていたが、思わずイリスはそんな言葉をこぼす。
 眠るは大きく体力を回復するが、その代償に眠り状態になってしまう。眠り状態になると基本的に何もできないため、無防備になってしまう。
 だがこのミロカロスは、その無防備な状態異状でさえ利用する。寝言という眠り状態で使用できる技を使い、ズルズキンと対峙している。
 しかもそれだけではない。ミロカロスの特性、不思議な鱗は状態異状の時に防御力が上がる。ズルズキンの諸刃の頭突きを喰らってもすぐに立て直し、反撃できたのもそのためだ。
「しかも、仮にまた起きたとしても眠られて体力を回復されるから、埒が明かない……無限ループってやつか」
 また眠られては敵わないので、決めるならミロカロスが眠っている間だ。
「ズルズキン、マグナムパンチ!」
 ズルズキンは拳を固め、大砲の如き勢いで飛び出してミロカロスに突撃。
「ミロカロス、寝言!」
 だが諸刃の頭突きでないのなら迎撃可能と考え、ミロカロスは再び寝言を使用する。
 しかしミロカロスは動かず、ズルズキンの拳を喰らって吹っ飛ばされた。
「うーん、失敗か」
 ミロカロスが寝言を指示され、何もしないということは今までにも何度かあった。寝言で眠るが発動したのだ。
 眠っている状態で眠るを使っても意味はない。なので何もしない時が必然的に出て来る。それがこのミロカロスの隙だ。
「ミロカロス、もう一度寝言よ!」
 今度は動いたミロカロスは冷たい風をズルズキンに吹き付ける。
「ズルズキン、諸刃の頭突き!」
 ズルズキンは凍える風が止むと、凄まじい勢いでミロカロスに特攻をかける。また寝言を使用しなかったミロカロスは、無抵抗のまま吹っ飛ばされた。
 寝言は違うようだが、眠り状態だと回避や防御などの指示が通らない。不思議な鱗があるとはいえ、技が当たればほぼすべて直撃するのだから、大ダメージも期待できる。
「噛み砕く!」
「寝言よ」
 ズルズキンは大口を開けてミロカロスに齧り付こうとするが、大量の水が噴射され、届かなかった。
「もう一度、寝言!」
 シロナは続けて寝言を指示するが、ミロカロスは動かなかった。また眠るが発動したのだろう。
「今だ! ズルズキン、マグナムパンチ!」
 ミロカロスが動かないうちに、ズルズキンはミロカロスに接近。勢いよく繰り出された拳が、ミロカロスを捉えた。
 ズルズキンもそうだが、防御を捨てて攻め続けた甲斐あり、ミロカロスの体力もかなり削れた。もう一押しだろう。
「諸刃の頭突き!」
 ズルズキンは強烈な頭突きをミロカロスに突き込む。ミロカロスに大打撃を与えたのは確かだろうが、ズルズキンも反動でかなり疲弊しているのが分かる。
「ズルズキン、マグナムパンチ!」
 続けて大砲のような勢いで拳を突き出すズルズキンだが、ミロカロスがそれを阻止しようとする。
「ミロカロス、寝言!」
 シロナの指示を受け、ミロカロスは息を吸い込む。ハイドロポンプだ。
 もしこの攻撃を受ければ、恐らくズルズキンも戦闘不能。ミロカロスより先に攻撃を当てたいが、凍える風を受け続け、素早さが大きく下がったズルズキンでは、それも難しい。そんな時だった。

 ミロカロスは目を開き、吸い込んだ息をすべて吐き出してしまった。

「! 目が覚めたのか、これはチャンスだ。ズルズキン、行け!」
 ズルズキンはそのまま、眠り状態が解けたミロカロスに拳を叩き込む。眠っていなければ不思議な鱗の効果もないので、大ダメージだ。
「ミロカロス、眠る!」
「させない! ズルズキン、ブレイズキック!」
 ミロカロスは目を閉じて眠りに入ろうとするが、そこにズルズキンの炎の蹴りが叩き込まれる。それにより地面に叩きつけられたミロカロスは、衝撃で一度開いた目を再び閉じる。眠るが間に合った……のではなく、戦闘不能だ
「やられちゃったか……戻って、ミロカロス」
 シロナはミロカロスをボールに戻す。これで、シロナの手持ちは残り一体。
「さぁ、最後はあなた。頼んだわよ」
 ゆっくりとボールを取り出し、空中に向け高くボールを放り投げ、シロナの最後のポケモンが繰り出される。

「天空に舞え、ガブリアス!」

 マッハポケモン、ガブリアス。
 青い体躯は恐竜のようで、細身ながらも頑強な鱗を持つ。背中や両腕には鮫のヒレのようなものがあり、こちらも強固そうな鱗で覆われている。
「やっぱり来たか、ガブリアス……!」
 少ししか見ていないものの、その僅かな時間でもこのガブリアスが相当な実力を持っていることだけは分かった。手負いのズルズキンが勝てるような相手ではないが、それでも後続のため、僅かでも削っておきたい。
「行くよズルズキン。諸刃の頭突き!」
 ズルズキンは頭を突き出し、凄まじい気迫を発しながらガブリアスへと突撃する。しかし、
「ガブリアス、怒りの炎!」
 ガブリアスは怒るように燃え盛る業火を放ち、ズルズキンを包み込んでしまう。炎はすぐに晴れたが、直後、ズルズキンは前のめりに倒れた。
「ズルズキン……くっ」
 一撃も当てることができず、ズルズキンは戦闘不能。一矢報いることすら叶わなかった。
「戻れ、ズルズキン」
 イリスはズルズキンをボールに戻す。これでイリスの手持ちも残り一体。
「ガブリアス相手なら、断然ダイケンキだ。だけど……」
 ダイケンキの入ったボールを手に取るが、すると頭の中に、イリゼの言葉がこだまする。
「…………」
 ダイケンキの入ったボールを戻し、違うボールを掴んだイリスは、次のポケモンを繰り出す。
「最後は頼んだよ、ディザ——」

「それでいいのかしら?」

「え……?」
 シロナの言葉を受け、イリスの動きが止まる。
「あなたはそれでいいのかと、言っているのよ。自分の選択を、そんな簡単に変えてもいいの? あなたは今まで自分の選んだ道を無理に変えてまで戦ってきたのかしら」
「それは……」
 口ごもるイリス。確かにイリスはいつも最良の判断を下していたとは言い難いし、自分の選択が間違っていたと思うこともある。
 けれど、本当に、心の底から後悔したことはなかった。
「他人に何かを言われたくらいで我が道を変えるほど、あなたの意志は弱かったのかしら。仮にも真実の英雄と呼ばれる人は、たった一度の敗北で道を逸れてしまうものなのかしら」
 イリスに構わず、シロナはさらに続けた。
「トレーナーにとって——いや、ポケモン持つ人にとって最も大事なのは、自分の思い。ポケモンと共に、最後まで自分の意志を貫く意志の強さ。勿論、他人の意見も大事。でも、それ以上に自分が決めた道を、投げ出さずに歩む方が重要なの。あなたも、誰かにそんなことを言われたことはないかしら?」
「あ……」
 言われて、イリスは思い出した。ホミカの言葉を。

『大事なのは自分がどうしたいか、なにをしたいかってこと』

 思い出した。シズイの言葉を。

『自分の信念を、最後まで貫き通せよ』

「そう。あなたのポケモンは、あなたと一緒に戦ってきた、かけがえのない仲間。時には敗れ、すれ違ったりもする。それでも、トレーナーとポケモンの思い出は永遠に消えることはない。ポケモンたちも、あなたの思いを分かってくれるはず。そしてポケモンたちも、その思いに応えようとする。さあ、イリス君。次はあなたが、ポケモンたちの思いに応える番よ」
 イリスは手にしていたボールを降ろす。
 ディザソル。最初は指示も聞かないくらい手の付けられないポケモンだったけど、今では攻めの中核をなす、頼れる仲間だ。
「僕の、思い……」
 目を瞑って想起するのは、今までの旅路。ポケモンたちと共に戦った記憶。ジムリーダー、四天王、7P……一つずつ、思い出していく。そして、
「……そうだった。忘れてたよ。最初に君を見た時に決めたのに。最後まで一緒に戦い抜くって。なのに、ここ一番で君に任せないで、どうしろって言うんだろうね」
 降ろしたボールを仕舞い込み、イリスは違うボールを手に取った。
「うん、そうだよ。最後を任せられるのは、君しかいない。君が最後にいるからこそ、みんなが頑張れる。だから、今回も頼むよ。君の力で倒すんだ、シロナさんを、父さんを、そして、プラズマ団を。行こう、僕のエース——」
 そしてイリスは、最後のポケモンを繰り出す。イリスの最初のポケモン、そして、最強のポケモン。それは——

「——ダイケンキ!」



シロナ戦その六。今回は本編が長いのであとがきはほぼないです。それならいっそなくせよとか思うかもしれませんが、こも僕のこだわりです。では次回、シロナ戦決着です。お楽しみに。

Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——再びお知らせです—— ( No.692 )
日時: 2013/02/17 10:47
名前: 霧火 (ID: XnmMObo/)

ありがとうございます!
それではリーフィスは少しの間リオの家で療養してもらうとして、
新たにポケモン1体追加しておきますね。

※プリンの下に追加しました。

Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——再びお知らせです—— ( No.693 )
日時: 2013/02/17 14:36
名前: 大光 ◆HynV8xBjBc (ID: YQSziswG)

出た!シンオウチャンピオンのシロナのガブリアス!パールで初めて戦った時、こちらの手持ちを半壊させられました。10レベルの差と強力な技で、ボコボコにされました。
そして、エース、ダイケンキの登場ですね。イリゼの言葉も正しいですけれど、頼るべき時は頼っていいんじゃないかと、この戦いを見てるとき思いました。何はともあれ、次回が楽しみです。

Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——再びお知らせです—— ( No.694 )
日時: 2013/02/17 16:13
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

霧火さん

 了解です。ただ、使用するかどうかは未定ですので、その辺りご了承ください。
 ちょっとネタバレ気味ですが、次の幕はイリスたちはあまり出ない……と思うので。



大光さん

 出ました、シロナのガブリアス。僕もダイヤモンドでレントラー、ラムパルド、ディアルガがまとめてやられるという悲惨な目に遭いました。フローゼルの氷の牙でも残るって……最終的にはムクホークを交代させまくり、威嚇で攻撃力を下げまくって勝ちました。
 やっぱりエースは大事ですよね。イリゼの言葉には少し裏があったりしますが、それは次々回くらいのお楽しみということで。
 ともあれ次回はシロナ戦、決着します。お楽しみに。


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