二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——完結——
日時: 2013/04/14 15:29
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=21394

 今作品は前作である『ポケットモンスターBW 真実と理想の英雄』の続きです。時間としては前作の一年後となっておりまして、舞台はイッシュの東側がメインとなります。なお、前作は原作通りの進行でしたが、今作は原作でいうクリア後なので、オリジナリティを重視しようと思います。
 今作品ではイッシュ以外のポケモンも登場し、また非公式のポケモンも登場します。

 参照をクリックすれば前作に飛びます。

 では、英雄達の新しい冒険が始まります……

 皆様にお知らせです。
 以前企画した本小説の人気投票の集計が終わったので、早速発表したいと思います。
 投票結果は、
総合部門>>819
味方サイド部門>>820
プラズマ団部門>>821
ポケモン部門>>822
 となっています。
 皆様、投票ありがとうございました。残り僅かですが、これからも本小説をよろしくお願いします。

登場人物紹介等  
味方side>>28  
敵対side>>29
PDOside>>51
他軍勢side>>52
オリ技>>30
用語集>>624

目次

プロローグ
>>1
第一幕 旅路
>>8 >>11 >>15 >>17
第二幕 帰還
>>18 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27
第三幕 組織
>>32 >>36 >>39 >>40 >>42 >>43 >>46 >>49 >>50 >>55 >>56 >>59 >>60
第四幕 勝負
>>61 >>62 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>72 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80
第五幕 迷宮
>>81 >>82 >>83 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90 >>92 >>93 >>95 >>97 >>100 >>101
第六幕 師弟
>>102 >>103 >>106 >>107 >>110 >>111 >>114 >>116 >>121 >>123 >>124 >>125 >>126 >>129
第七幕 攻防
>>131 >>135 >>136 >>139 >>143 >>144 >>149 >>151 >>152 >>153 >>154 >>155 >>157 >>158 >>159 >>161 >>164 >>165 >>168 >>169 >>170 >>171
第八幕 本気
>>174 >>177 >>178 >>180 >>184 >>185 >>188 >>189 >>190 >>191 >>194 >>195 >>196 >>197 >>204 >>205 >>206 >>207 >>211 >>213 >>219 >>223 >>225 >>228
第九幕 感情
>>229 >>233 >>234 >>239 >>244 >>247 >>252 >>256 >>259 >>262 >>263 >>264 >>265 >>266 >>269 >>270 >>281 >>284 >>289 >>290 >>291 >>292 >>293 >>296 >>298
第十幕 強襲
>>302 >>304 >>306 >>307 >>311 >>316 >>319 >>320 >>321 >>324 >>325 >>326 >>328 >>329 >>332 >>334 >>336 >>338 >>340 >>341 >>342 >>343 >>344 >>345 >>346
弟十一幕 奪還
>>348 >>353 >>354 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>376 >>377 >>378 >>379 >>380 >>381 >>382 >>383 >>391 >>393 >>394 >>397 >>398 >>399 >>400
第十二幕 救世
>>401 >>402 >>403 >>404 >>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>412 >>413 >>414 >>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>433 >>436 >>439 >>440 >>441 >>442 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447 >>450 >>451 >>452 >>453 >>454
第十三幕 救出
>>458 >>461 >>462 >>465 >>466 >>467 >>468 >>469 >>472 >>473 >>474 >>480 >>481 >>484 >>490 >>491 >>494 >>498 >>499 >>500 >>501 >>502
第十四幕 挑戦
>>506 >>511 >>513 >>514 >>517 >>520 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>534 >>535 >>536 >>540 >>541 >>542 >>545 >>548 >>549 >>550 >>551 >>552 >>553 >>556 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>568
第十五幕 依存
>>569 >>572 >>575 >>576 >>577 >>578 >>585 >>587 >>590 >>593 >>597 >>598 >>599 >>600 >>603 >>604 >>609 >>610 >>611 >>614 >>618 >>619 >>623 >>626 >>628 >>629 >>632 >>638 >>642 >>645 >>648 >>649 >>654
>>657 >>658 >>659 >>662 >>663 >>664 >>665 >>666 >>667 >>668 >>671 >>672 >>673 >>676 >>679 >>680 >>683 >>684 >>685 >>690 >>691 >>695

第十六幕 錯綜

一節 英雄
>>696 >>697 >>698 >>699 >>700 >>703 >>704 >>705 >>706 >>707 >>710 >>711
二節 苦難
>>716 >>719 >>720 >>723
三節 忠義
>>728 >>731 >>732 >>733
四節 思慕
>>734 >>735 >>736 >>739
五節 探究
>>742 >>743 >>744 >>747 >>748
六節 継承
>>749 >>750 >>753 >>754 >>755
七節 浮上
>>756

第十七幕 決戦

零節 都市
>>759 >>760 >>761 >>762
一節 毒邪
>>765 >>775 >>781 >>787
二節 焦炎
>>766 >>776 >>782 >>784 >>791 >>794 >>799 >>806
三節 森樹
>>767 >>777 >>783 >>785 >>793 >>807
四節 氷霧
>>768 >>778 >>786 >>790 >>792 >>800 >>808
五節 聖電
>>769 >>779 >>795 >>801 >>804 >>809
六節 神龍
>>772 >>798 >>811
七節 地縛
>>773 >>780 >>805 >>810 >>813 >>814 >>817
八節 黒幕 
>>774 >>812 >>818

最終幕 混濁
>>826 >>827 >>828 >>832 >>833 >>834 >>835 >>836 >>837 >>838 >>839 >>840 >>841 >>842 >>845 >>846 >>847 >>849 >>850 >>851
エピローグ
>>851

2012年冬の小説大会金賞受賞人気投票記念番外
『夢のドリームマッチ ver混濁 イリスvsリオvsフレイ 三者同時バトル』>>825



あとがき
>>852

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171



Re: 461章 蛸 ( No.665 )
日時: 2013/02/10 16:51
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「デンチュラ、雷!」
 デンチュラは超高電圧の稲妻をオクタンへと落とすが、オクタンは素早く水中に潜って雷をやり過ごす。
「エナジーボールだ!」
「オクタン砲じゃ!」
 続けて放ったエナジーボールも、オクタンの吐き出した墨で打ち消され、さらに残った墨がデンチュラに降りかかる。
 このオクタン、やはり特攻が上がっている。さっきの時もそうだったが、エナジーボールを相殺するだけでなく、貫通してデンチュラにもダメージを与えるまでになった。
「チャージビーム、か」
 オクタンの特攻が上がっている原因。それがチャージビームだ。チャージビームは確実ではないものの、攻撃と同時に特攻を上げる追加効果がある。
 ともあれ、何発撃ったかは覚えていないが、今のオクタンの特攻はかなり上がっているだろう。早めに決着をつけた方がよさそうだ。
 そうイリスが思っていると、動き出したのはシズイとオクタンだった。
「そろそろ決めったい! ぶち撒けぃ、オクタン砲じゃ!」
 オクタンは大きく息を吸うと、口から今まで以上の隅を噴射した。しかしデンチュラには墨はかからず、全てフィールドの撒き散らされた。よって水面は真っ黒に染まっている。
「……? 何をする気だ……?」
 オクタンの謎の奇行に警戒していると、オクタンは次なる行動に入る。それは、イリスが予想だにしない事だった。
「オクタン、火炎放射!」
 オクタンは口から燃え盛る火を吹いた。
 墨はともかく、電撃や酸など色々出すものだと思っていたが、まさか火まで吹くとは思わなかった。
 炎技はデンチュラには効果抜群。とりあえず他の足場に移させようと指示を出そうとするが、炎はデンチュラに向けては放たれておらず、その必要はなかった。いや、できなかった。

 なぜなら、突如として水面が炎上したからだ。

「え……?」
 流石に唖然とするイリス。いくら火炎放射を放ったからといって、水が燃えるわけがない。すぐに消えるのが関の山だ。が、炎はめらめらと燃え盛っており、包囲するように壁を作ってデンチュラの移動を阻害している。
「……そうか! オクタン砲!」
「そうじゃ。よー気付いたの」
 イリスの発見に、シズイは軽く称える。
「おいのオクタンの墨は、よか燃える成分を含んでるったい。水面にぶち撒けて、火ば放っとったら炎の壁ば出来上がる。そいじゃあ次行こーか、オクタン。火炎放射!」
 オクタンは続けて炎を放ち、身動きのとれないデンチュラに直撃させる。
 アシッドボムで特防を下げられ、チャージビームで特攻が上がっていたこともあり、デンチュラはその一撃で戦闘不能となった。
「くっ……戻れ、デンチュラ」
 イリスは倒れたデンチュラをボールに戻す。
 デンチュラがやられたのはかなり痛手だ。早速二体の電気タイプのポケモンがいなくなり、水タイプの弱点が突きにくくなった。まだ草タイプのリーテイルはいるが、水タイプは草対策として氷技を覚えていることが多い。飛行と複合しているリーテイルでは、氷技は一撃で致命傷になるだろう。ゆえにリーテイルは出しづらい。
 加えてオクタンはアシッドボムに火炎放射を持ち、特攻も上がっている。リーテイルを出すのはあまり得策とは言えないが、
「次はお前だ! 出て来い、リーテイル!」
 イリスの三番手はリーテイルだ。
 その相性の悪いチョイスにシズイは少し驚いた顔をする。
「おお? ここで草タイプで来よったか。さっきの炎の壁を見てその選択。面白くなってきよった!」
 笑みを浮かべるシズイとは対照的に、イリスの目は真剣そのものだ。厳しいとも言える。
(特攻の上がったオクタンは脅威。炎の壁は厄介だけど、リーテイルなら突破できるはず。速攻で決める)
 ひとまず、特攻の高いオクタンがこのまま居座って暴れ続けることだけは避けたいので、是が非でもここは取っておきたい。
「リーテイル、エアスラッシュ!」
 リーテイルはまず、空気の刃を無数に飛ばしてオクタンを切り刻んだ。しかしオクタンは全く動じず、
「オクタン砲ったい!」
 さっきよりもさらに多量の墨を噴射して辺り一面を墨の黒で染め上げる。そして、
「火炎放射!」
 口から燃え盛る火炎を放射。辺り一面を火の海に変え、炎の壁を作り出す。しかも今度はオクタンを囲うように放たれたため、近づくことができない。
「どうじゃ! これでオクタンには攻撃できん! さあどうする!?」
 イリスを試すかのようなシズイの発言。イリスはこの時には既に、炎の壁を突破する方法を考えていた。
「リーテイル、リーフブレード!」
 リーテイルは尻尾の葉っぱを構え、炎の壁に守られたオクタンに向かって一直線に突き進む。このままいけば、炎に直撃することは間違いない。
「なにを考えておるのかは知らなかどん、おいとおいのオクタンは真正面から迎え撃つだけじゃい! オクタン、火炎放射!」
 オクタンは炎の壁に囲まれながら、さらに炎を発射してリーテイルの接近を許そうとしないが、その時、リーテイルにも動きが見られた。
「ドラゴンビート、最大出力!」
 オクタンとの距離がかなり近づくと、リーテイルは大きく息を吸い、龍の鼓動のような咆哮を放つ。咆哮は音波となり、オクタンの火炎放射だけでなく、オクタンを守っていた炎の壁すらも吹き飛ばし、オクタンの動きを止めた。
「今だ! リーフブレード!」
 そしてその隙を狙ってオクタンに接近し、尻尾の葉っぱでオクタンを切り裂いた。
 効果抜群に加え、急所を切り裂かれたらしいオクタンはぐったりとその場に倒れ込み、戦闘不能となった。
「オクタンもやられてちょっしもたか。戻っとき」
 ポリポリと頭を掻きながら、シズイはオクタンをボールに戻し、網の中へと放り込む。
「リーテイル、お前も一旦戻れ」
 イリスもリーテイルをボールに戻した。リーテイルは唯一イリスに残っている水タイプの弱点を突けるポケモン。ここぞという時のために温存しておきたい。もし次のポケモンが強敵でも、その時はまた交代させればいいだけだ。
「よし、じゃあ頼んだよ、ディザソル!」
 交代で繰り出すのはディザソルだ。オクタンとのバトルではあまりダメージを受けていないので、まだまだ戦える。
 さて、イリスはシズイの次のポケモンはなにかと身構えているが、シズイは依然として網から次のボールを手に取らない。
「……ポケモン、出さないんですか?」
「ちっと待っとき。もうすぐじゃ」
 シズイはゆっくりと目を閉じ、腕組みをしてじっと動かない。やがてカッと目を見開くと、水面が揺れた。
「来よった」
 刹那、水面が押し上げられ、水中から巨大な生物が浮上する。
 水色の巨体を持つ鯨のようなポケモン。浮き鯨ポケモンのホエルオー。ここセイガイハジムまでイリスとシズイを乗せていた、あのホエルオーだ。どうやら海中を通ってジムの内部まで入り込んだらしい。
「おいの次のポケモンは、このホエルオーったい!」
 シズイはこのホエルオーは普通のホエルオーよりも小柄だと言ったが、それでもこうして相対してみると、かなりの威圧感がある。
「ここで来るか……でも、大丈夫だ。ディザソルはモスギスさんのティラノスを撃ち破っている。あれに比べれば、ホエルオーなんて大人しいものだ」
 大きさはティラノスの方が劣っているが、あちらはかなり攻撃的な性格で、動きも素早かった。しかしこのホエルオーは見るからに鈍重。広い水中のフィールドでも、ホエルオーが自由自在に泳ぎ回れるほどのスペースはないはず。
 そんな風にイリスとディザソルが構えていると、不意に光が差し込んだ。思わず顔を上げると、天井が開き、ジムが吹き抜け構造になった。
「悪いな。こせんとおいのホエルオーはまともに戦えん。そいぎ、こうした方が太陽の光に照らされて気持ちええ。そうじゃろ?」
「え? えっと、そう、ですね……」
 インドアの気があるイリスとしては、若干頷きにくかった。
 ともあれ、ホエルオーとディザソルのバトルが始まった。
「行くよディザソル! 辻斬りだ!」
 ディザソルは漆黒の鎌を構えてホエルオーへと駆けだす。しかし、

「ホエルオー! 滝登り!」

 突如、ホエルオーが消えた。いや、正確には消えたのではなく、跳び上がったのだ。どういうわけなのか、ホエルオーは水を纏ってジャンプし、空高く跳び上がった。天井を開いたのはこのためだったようだ。
 ここで重要なのは、ホエルオーが跳び上がったということだ。あの巨体が、空高く、跳び上がった。それがなにを意味するのか、理解するのに時間はかからなかった。
「ほな行こーかい! どんと一発かますんじゃ、ホエルオー!」



シズイ戦その三です。なんだか最近、上手く書けなくなっているような気がしますが、それはさておき。オクタンは墨を撒いて火炎放射を撃って辺りを文字通りの火の海にする戦法を取り、デンチュラを下しますが、次のリーテイルに突破されて戦闘不能。シズイの三番手はあのホエルオーです。あの巨体が空高く跳び上がれば……どうなるかはもうお分かりでしょう。次回はその辺を書いていきます。では次回をお楽しみに。

Re: 462章 鯨 ( No.666 )
日時: 2013/02/10 22:38
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

 ホエルオーは空高く跳び上がると、そのまま凄まじい勢いで落下してくる。
「地震じゃぁ!」
「ディザソル、避け——」
 イリスは慌てて指示を出すが、そんなことに意味はなかった。
 ホエルオーの巨体が落下する——

ザッパアァァァァァンッ!

 これでもかというくらいの飛沫を散らし、津波のような大波を引き起こしてホエルオーは着水した。
 ジムを破壊するのではないかと思うような大きな揺れが起こり、ディザソルは足場から動けない。そこに巨大な津波が襲い掛かり、ディザソルを飲み込んだ。
「ディザソル!」
 足場ごと波に飲まれたディザソルは、しばらくして浮上してきた。
「ディザソル、大丈夫か?」
 イリスが呼び掛けると、ディザソルは足場に上がって体を震わせ、水滴を飛ばす。そしてコクリと頷いた。
「よし。じゃあ今度こそ。辻斬——」
 そこで、イリスの指示は止まった。
「ホエルオー、地震!」
 気付けば、ホエルオーは既に上空におり、今まさに、落下するところだった。
 さきほど同じようにホエルオーは着水する。それと同時に大きな地震が起き、大波が足場ごとディザソルを飲み込む。
「またか……ディザソル!」
 ディザソルは再び足場にのし上がってくる。水面の足場に乗っているで地震のダメージは少ないが、津波が厄介だ。飲み込まれるとそれなりのダメージを受ける上、その間ディザソルは完全に無防備。なので——
「滝登り!」
 ホエルオーは水を纏って勢いよく跳び上がる。
 ——このように滝登りで攻撃を準備する隙を与えてしまう。
「地震!」
「戻れ! ディザソル!」
 ホエルオーが三度落下してくるが、イリスはディザソルをボールに戻す。
 ホエルオーが着水し、イリスのところにまで水飛沫が飛び、それを浴びながらイリスは次のボールを構えた。
「やっぱり君に頼ることになるか……行くよ、リーテイル!」
 交代で出したのは、やはりリーテイル。ホエルオーの弱点を突けるだけでなく、空を飛べるので厄介な地震や津波にも対応できる。
「もういっぺん! ホエルオー、滝登りじゃ!」
「追いかけろ、リーテイル!」
 水を纏って跳び上がるホエルオーを、リーテイルも急上昇で追いかける。
「リーフブレード!」
 そして尻尾の葉っぱを振るい、ホエルオーを切り裂いた。ホエルオーは体力が多いが、防御面はそう高くない。弱点を突ければ、一撃でも大ダメージが見込める。
「ほぅ、そう来やったか。ならホエルオー、思念の頭突きったい!」
 ホエルオーはなんと、空中にも関わらず頭に思念を集め、頭突きを繰り出してきた。
 鈍重そうなわりに器用な動きだが、リーテイルはかるくその攻撃をかわし、もう一撃リーフブレードを入れる。
「ドラゴンビートだ!」
 ホエルオーも反撃にと思念の頭突きをもう一発繰り出すが、リーテイルは素早く下がって龍の咆哮を放つ。その一撃でホエルオーは態勢を崩し、フィールドへと落ちていく。
 地震ほどではないが、大量の水飛沫が散り、大波が立つ。しかし飛んでいるリーテイルにはなんら影響をおよぼさない。
「リーテイル、エアスラッシュ!」
 リーテイルは上空から空気の刃を無数に飛ばし、ホエルオーを切り刻む。
「リーフブレードだ!」
 そして今度は急降下し、尻尾の葉っぱでホエルオーを切り裂いた。これで三回、効果抜群の攻撃を当てたが、まだホエルオーは戦闘不能ではない。攻撃を落下の勢いと体重に任せているのか、耐久力が高い。もっと攻撃を打ち込まなければ倒せなさそうだ。
「もう一度リーフブレード!」
「そう何度も同じ攻撃が通用すっと思うなよ。ホエルオー、ヘビーボンバー!」
 真正面から突っ込むリーテイルに対し、ホエルオーは全体重を乗せて突撃してくる。リーテイルとホエルオー、双方の攻撃がぶつかり合うが、この時は体も体重も勝るホエルオーに分があり、リーテイルは簡単に跳ね飛ばされてしまった。
「そこじゃ! 滝登り!」
 そしてすかさずホエルオーは水を纏い、滝を上るような勢いで跳び上がって追撃をかける。
「かわすのは無理か……だったらドラゴビート!」
 この攻撃はかわせないと判断し、リーテイルは龍の鼓動のような音波を発射し、水と勢いを削ぎ落してダメージを軽減する。が、
「思念の頭突き!」
 再びホエルオーの追撃が繰り出される。リーテイルは頭突きの直撃を受けてフィールド、即ち水面へと叩き落とされた。
「まだまだ行くったい。ホエルオー、ヘビーボンバーじゃ!」
 ホエルオーの猛攻は止まらず、今度は全体重を乗せて落下してきた。最初の地震と違って身動きが取れなくなるようなことはないだろうが、もし直撃を受ければ一発で戦闘不能になるほどのダメージを覚悟しなければならない。なので、ここは絶対にかわしたいが、
「リーテイル! 早く上がって来るんだ!」
 リーテイルにとって水、それも海中なんてものは未知の場所。身動きが上手く取れず、浮上するだけでも手間がかかってしまい、水面に顔を出す頃にはもう、ホエルオーがすぐそこまで迫っていた。
「かわせない……だったら!」
 迎え撃つしかない。

「リーテイル、リーフストーム!」

 リーテイルは背中の葉っぱを羽ばたかせ、鋭利な葉っぱを大量に含んだ嵐を発生させる。
 嵐は落下してくるホエルオーを巻き込み、水色の巨体を葉っぱで切り刻んでいく。しかし、それでも重力に身を任せたホエルオーの落下は止まらない。
「もう一発! リーフストーム!」
 しかしそこで、リーテイルは素早く新たな嵐を喚起する。しかも今度の嵐は横向きに放たれ、ホエルオーの落下自体は止められないが、その進路を大きく逸らした。
 結果、ホエルオーはリーフストームで軌道を変えられ、勢いも削がれたために比較的静かに着水。さらに二連続の効果抜群の攻撃でボロボロになった。
「これで決めるよ! リーフブレード!」
「迎え撃つんじゃ! ヘビービンバー!」
 尻尾の葉っぱを構えたリーテイルが超高速で飛行し、ホエルオーも全体重を乗せて突撃する。
 普通に行けば、リーフブレードがヘビーボンバーに押し勝つことはない。さっきと同じように弾き飛ばされるのが関の山だ。純粋な攻撃力ならともかく、体重を考慮すればリーテイルはどうしたってホエルオーには敵わない。だが、リーテイルにはリーテイルの、ホエルオーにはない利点も存在する。
「右だ、リーテイル!」
 リーテイルは飛行中、進路を変更した。ホエルオーの側面ギリギリを通過するような軌道でヘビーボンバーをかわし、ホエルオーを切り裂く。
 リーテイルの利点とは、当然のことながらそのスピードだ。ホエルオー相手ではあまりにも違い過ぎて比較にすらならないため分かりにくく、ホエルオーは高い耐久力と意外な器用さでリーテイルを少なからず押していたのであまり生かせなかったが、それでもリーテイルが自身の素早さを十分に発揮すれば、鈍足な相手などは敵ではない。
「戻っとき、ホエルオー。よう頑張った」
 シズイはホエルオーをボールに戻す。水中から現れたので放し飼いかと思ったが、やはりちゃんとボールに入るようだ。
 ボールを網の中に放り込み、シズイは次のボールを構えた。
「そいじゃあ行こーかい、おいの次のポケモン! 気張ってけー、マンタイン!」
 シズイの四番手は、カイトポケモン、マンタイン。マンタのような姿のポケモンで、両ヒレの裏側にはそれぞれ一匹ずつ白い魚のようなポケモンがくっ付いている。
「なんだ、あれ?」
 訝しげに思って図鑑を開いてみると、テッポウオというポケモンで、マンタインにくっ付いてこぼれたエサをもらう習性があるらしい。
「でも、複数ポケモンが一緒にいていいのか?」
 基本、ポケモンバトルは一対一。ダブルやトリプルバトルの過程でそうなるのは仕方ないが、一対複数という状況はありえない。
 しかしシズイは、臆さずイリスに言葉を返す。
「マンタインもテッポウオも、共に生き、共に戦うポケモンたい。いっとくっ付いておっくらいで細かいこと言うな。そげな細かいこと気にせんで、どーんと海のように受け入れるんじゃ」
 論破されてしまった……とはとても言えないが、それでもイリスは押し黙る。確かに、別々に戦うのならともかく、一体化して戦うのならまだ許容範囲だ。
「ほな、行こーかい。マンタイン、追い風!」
 マンタインは水中へと入らず、この場に気流を発生させて飛ぶ。どうやらこのマンタインも、水中ではなく陸上——それも空中戦を得意としているようだ。
「相手は飛行タイプ。でも、空中戦ならこっちも負けない。行くよ、リーテイル!」
 リーテイルは上昇し、マンタインと相対し、睨み合う。



シズイ戦その四です。やっぱ文字数3700文字は少ないですね、どうも書ききれません。いや、それとも僕が書き込み過ぎるだけ? それはともかく、シズイのホエルオー、何気に恐ろしい攻撃しますね。滝登りで跳び上がって地震で落下。地震と津波のダブルダメージを延々と繰り返すというこのローテは、飛行タイプか特性浮遊がいないと対処できなさそうです。そしてシズイの四番手はマンタイン。エアームドと対の存在らしいですが、圧倒的にマイナーです。白黒は好きなんですけどね、マンタイン。ともかく、次回はシズイ戦その五。次回もお楽しみに。

Re: 463章 凧 ( No.667 )
日時: 2013/02/11 14:15
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「先手は貰うったい! マンタイン、波乗り!」
 マンタインは水面すれすれを滑空しながら大波を引き起こし、その波に乗ってリーテイルへと突っ込んで来る。
「上昇だ! かわせリーテイル!」
 リーテイルは空高く跳び上がって波乗りを回避。しかし、
「追いかけるんじゃ、マンタイン!」
 マンタインは気流に乗って素早く方向転換、リーテイル以上のスピードで追いかけてくる。
「エアスラッシュじゃ!」
 そしてヒレを振るい、空気の刃を飛ばす。一発だけだが、大きさはリーテイルのもの以上で、切れ味も鋭そうだ。
「リーテイル、かわしてリーフブレード!」
 リーテイルも方向転換して刃を避け、追いかけるマンタインに突っ込む。尻尾の葉っぱを構え、マンタインを切り裂かんとするが、
「マンタイン、エアスラッシュ!」
 リーテイルをギリギリまで引きつけ、マンタインは空気の刃を飛ばす。避けることもできず、リーテイルは刃の直撃を喰らった。
「リーテイル!」
 マンタインは空気の刃を一発しか飛ばせないようだが、その分大きく、威力が高い。リーテイルも今の一撃で大きなダメージを受けてしまった。
「どうじゃい! 海のポケモンでも、空を制すことはできる! おいのマンタインはそんじょそこらの飛行タイプよりもずっと空中戦に強いんじゃ!」
 確かに、それはシズイの言う通りだと思う。今のマンタインの動きを見ればなおさらだ。しかも今は追い風が吹いており、マンタインをサポートしている。相性の悪いリーテイルでは、少々不利のようだ。
「……何度も後退ばっかで悪いけど、戻ってくれ、リーテイル」
 イリスはリーテイルをボールに戻す。追い風がある以上、空中戦が得意なリーテイルでも今のマンタインには敵わない。だったら素直に相性のいいポケモンを使うべきだ。
「つっても、マンタインの弱点を突けるポケモンなんて、僕の手持ちにはあんまりいないんだよな……」
 ズルズキンとメタゲラスがいるが、二体ともマンタインとの相性は悪く、スピードでも大きく劣っている。まともに攻撃を当てるのは難しいだろう。
「となると、やっぱ君かな。今度こそ頼んだよ、ディザソル!」
 イリスは交代でディザソルを繰り出す。弱点を突く技こそないが、高い機動力と攻撃力があるので、マンタインにも対抗できるはずだ。
「今度もそうきやったか。マンタイン、波乗り!」
 マンタインは大波に乗り、並みと共にディザソルに向かって突っ込んでいく。が、
「ディザソル、神速!」
 ディザソルは足場を蹴り、超高速でマンタインに突撃。マンタインを押し戻した。
「おぉ!? おはんのディザソル、やりおるな」
 如何にマンタインが追い風で素早さを上げようとも、神速はトップクラスの威力と速さを誇る先制技だ、スピードで神速を超えることはできない。
「このまま攻めるぞ! 辻斬り!」
「させなか! エアスラッシュ!」
 ディザソルは漆黒の鎌を携えて足場を飛び跳ね、マンタインはそれを迎撃すべく空気の刃を飛ばす。
 だがマンタインの刃はディザソルには掠りもしない。一発ずつしか放てないマンタインのエアスラッシュは、このように素早い相手を捉えるのには向いていないのだ。
 結局マンタインはディザソルの接近を許してしまい、漆黒の鎌で切り裂かれた。
「もう一回辻斬りだ!」
「今度こそ止めるんじゃ! シグナルビーム!」
 身体を捻り、今度は尻尾の刃で斬撃を繰り出すディザソルだが、マンタインが素早く放ったカラフルな光線を受け、押し飛ばされてしまった。
「よかよか。こんままどんどん攻めて行くかいの。マンタイン、波乗りじゃ!」
 飛ばされたディザソルを追うようにマンタインは波に乗って突撃する。
「くっ、神速だ!」
 だが波乗りの攻略法は分かっている。神速で激突すれば、マンタインも止まらざるを得ない。なのでディザソルは飛び跳ねるようにマンタインへと突っ込むが、
「同じ手は食らわん! 飛び上がれ、マンタイン!」
 マンタインは急に波から体を浮かび上がらせ、ディザソルの突撃を透かす。そうなれば当然、ディザソルは勢い余って波を超え、ややつんのめって足場に着地する。
「今じゃ! シグナルビーム!」
 そこにすかさずマンタインは光線を発射する。しかも一発だけではなく、ヒレの裏側にくっ付いているテッポウオの口からもそれぞれ発射し、計三発の光線がディザソルを射貫いた。
「ディザソル!」
 効果抜群の攻撃を受け、ディザソルはかなり大きなダメージを受けてしまった。もう体力も残り僅かだろう。
「これで決める! マンタイン、波乗り!」
 マンタインは大波を起こし、それに乗って突っ込んで来る。
 確実に交わしておきたいが、さっきのように神速で突撃すれば、またか避けられて反撃されるだろう。なのでここは、苦し紛れに別の対策を取る。
「スプラッシュだ! 水中に潜れ!」
 ディザソルは全身に飛沫を散らす水を纏い、あろうことか水中に飛び込んだ。なので波乗りこそ回避に成功はしたが、水中ではディザソルの機動力はほとんど生かせない。
「水タイプのマンタインを差し置いて水ん中潜るたぁ驚きよったが、そんでもマンタインだって水中戦が苦手なわけじゃなか。追いかけるんじゃ、マンタイン!」
 マンタインも水中に潜り、ディザソルを追いかける。
 イリスは水面を覗き込んで水中の様子を見る。太陽光で水面が反射していて分かりにくいが、水は綺麗で透き通っているのでまったく分からないということはない。
 ディザソルはなんとか浮上しようとしているが、それでも襲い。マンタインの方がずっと速い——のだが、イリスにはどうしてもその動きが鈍く見えた。
(なんか遅くないか、あのマンタイン……?)
 リーテイル以上のスピードで滑空し、空中ではあれほど猛威を振るっていたマンタインだが、水中ではやっとディザソルに追いついたところだ。
「って、やばっ! ディザソル、マンタインを振り払うんだ!」
 マンタインが追いついたことに気付いたらしいディザソルは、頭の鎌や尻尾を振ってマンタインを振り払おうとするが、無駄だった。
「今度こそ決めるんじゃ、マンタイン! シグナルビーム!」
 ディザソルの下に潜り込み、マンタインはテッポウオと共に色彩を重ねた光線を三発発射。ディザソルを吹っ飛ばし、水面から弾き飛ばす。
 効果抜群の攻撃、それも直撃を三発も喰らい、遂にディザソルは戦闘不能となった。
「くっ……戻ってくれ、ディザソル」
 イリスはディザソルをボールに戻す。これで残りはリーテイルともう一体。追い込まれてきた。
 次に出すとしたらリーテイルが有力そうだが、追い風もあり、マンタインのスピードはリーテイルを上回る。相性も悪いので、あまり得策とは言えない。
(それに、さっきのマンタインのスピードは、少し妙だった。空中ではリーテイルよりも速かったのに、水中だと大したスピードはなかった。空中と水中とでは基準の速さが違うのかな。でも、追い風もあるのにあのスピードは……追い風?)
 そこで、イリスは閃いた。いや、気付いたというべきか。
「そうか、そうだったのか。だったら、お前を出さないわけにはいかないな。今までは陸上戦が多かったけど、お前の本領は水中のはず。存分に暴れて来い、ダイケンキ!」
 イリスが繰り出すのはダイケンキ。公式戦では初の水中フィールドだ。
「ほぅ、水タイプか。いい面しとる。わっせ強そうじゃ」
 シズイはダイケンキの姿を見て、そんな講評を下す。
「だが、水タイプ使いのおいに対して水タイプで挑むたあええ度胸じゃ。よっぽど自身があるように見える」
「当然ですよ。こいつは、僕のエースポケモンですから」
 自信満々にシズイにそう返すと、シズイは何か思い出したように手を叩いた。
「おお、そうか。そういえばイーちゃんが言っとったな」
「え? なに……なんですか?」
「いや、なんでもない。こっちの話じゃ。ほな早くバトルの続きしよーかい」
 なにやら誤魔化された感があるが、確かに今はバトルだ。
 シズイのマンタインは追い風のサポートを受け、今やそのスピードはリーテイル以上。テッポウオと結託することで火力のある攻撃も撃てる。かなりの強敵だ。
 しかしイリスは攻略法を見つけた。しかしその攻略法を実行するためには水タイプの力が必要不可欠。正直、水タイプのエキスパートであるシズイに水タイプのポケモンを出すことには躊躇いがあるが、ダイケンキならやってくれるはずである。
 イリスはただその一心で、この一戦の全てを、ダイケンキに託す。



シズイ戦その五です。追い風を受けてスピードはリーテイルを上回り、テッポウオと一緒に撃ってシグナルビームの威力は三倍増。いやはや強いですね。白黒は強ポケに好きなポケモンが多いですが、こういう不遇なポケモンにも好きなのが結構いまして、どうしても優遇しがちです。いい例がエレクトロのトロピウスですかね? そういえばマンタインのカイトポケモンっていうのは凧上げの凧のことだと思ったのですが、実際どうなんでしょうね。そう思って章のタイトルに凧って付けましたが……ともあれ、次回はイリスが見つけたマンタインの攻略法でダイケンキが大暴れ! ……と、上手くいくといいですね。では、次回もお楽しみに。

Re: 464章 海中 ( No.668 )
日時: 2013/02/11 15:45
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「ダイケンキ、まずは吹雪だ!」
 ダイケンキは凍てつく猛吹雪を放ち、マンタインを攻撃。しかしマンタインは特防が高く、大きなダメージは与えられない。
「今度はこっちの番じゃ! マンタイン、波乗り!」
 マンタインは吹雪が止んだ頃合いを見計らい、大波に乗ってダイケンキへと突っ込むが、
「ダイケンキ、水中に潜るんだ!」
 ダイケンキは水面に飛び込み、水中へと身を潜めて波乗りをやり過ごす。
「む、そう来やったか……ってこたあマンタインの穴も見つかってちょっしもたか。まあええ、そんでも追いかけんわけにはいかん。マンタイン、おはんも潜るんじゃ!」
 なにやらぶつぶつと呟き、シズイもマンタインに潜るよう指示する。その指示通り、マンタインはダイケンキを追い、水中へと飛び込んだ。
「シグナルビーム!」
「かわしてメガホーン!」
 マンタインはテッポウオと共に三発の光線を発射するが、ダイケンキは軽く回避して角の一撃をマンタインに突き込んだ。
 ダイケンキは大型のポケモンなので、陸上では鈍い。しかし水中なら話は別だ。重力に支配されず、浮力の働く水中なら、ダイケンキは本来持っているはずの機動力を十二分発揮できる。
 しかし、それはマンタインも同じこと。マンタインも水タイプなので、水中での機動力は高い……と思われたが、しかしマンタインのスピードは明らかにダイケンキよりも遅い。どころか、空中を滑空していた時よりも遅く見える。
「やっぱり、そうなんですね」
 イリスは独り言のようにシズイに向けて言う。
「あなたのマンタインは強い。追い風を使って僕のリーテイルを上回るスピードと、テッポウオと結託して叩き出す高火力の技。どっちも驚異的だけど、僕としてはやっぱり前者のスピードが厄介です。素の素早さはそこまで高くないのでしょうが、追い風がそれをサポートしてる、でもそのマンタイン、というより追い風は、水中では作用しない。つまりマンタインは水中でのスピードは他の水棲型ポケモンに劣る。違いますか?」
「いんや。大正解じゃ。よう気付きおったな。おはんもなかなか鋭い」
 シズイは平静を保ったままイリスを称賛する。
 水中を覗き込むと、今まさにダイケンキがマンタインを突き飛ばした。今まで空中戦ばかり行ってきたのだろう。マンタインは水中での戦いに慣れてないようにも見える。
「しかし、そんでも自分からバトルは投げ出さん。そいがおいの流儀じゃ。マンタイン、エアスラッシュ!」
 マンタインはヒレを振るって空気の刃を飛ばす。どうやら水中でも使えるらしい。
「かわしてメガホーンだ!」
 だが三次元的水中フィールドでそんな一発限りの直線飛び攻撃など、ダイケンキには当たらない。軽くかわして勢いよく角を突きだし、マンタインを吹っ飛ばす。
「シグナルビームじゃ!」
「シェルブレードで弾き返せ!」
 マンタインは吹っ飛びながらもカラフルな光線を三発発射するが、それらすべて、ダイケンキのアシガタナによって弾き返されてしまい、マンタインに襲い掛かる。
「よし、そろそろとどめだ。ダイケンキ、ハイドロカノン!」
 ダイケンキは目の前に巨大な水の弾丸を生成する——とはいえ、水中なので正面の指定した球状部分だけを圧縮して水圧を高めているだけだが、それでも立派な弾丸だ。
「発射!」
 イリスの指示で、ハイドロカノンは発射される。巨大な水の弾丸はまっすぐ海中を突き進み、やがてマンタインへと直撃する——

 ——が、弾丸を形作っていた水はすべて、マンタインに吸収されてしまう。

「なっ……!?」
 思いがけない、予想だにしない状況に、イリスは目を見開く。そしてその隙に、マンタインは動き出す。
「エアスラッシュ!」
 マンタインはまるでダメージなど受けていないかのような軽快な動きでヒレを振るい、大きな空気の刃を飛ばしてダイケンキを切り裂く。
 よく見ればマンタインの傷が癒えている。全快ではなさそうだが、今まで与えたダメージが回復している。
「マンタインの特性、貯水たい」
 シズイが静かに言葉を発する。
「貯水は水タイプの技を受けると、体力が回復する特性。マンタインはどんな水でも受け入れ、自分の力に変えるんじゃ。おいのマンタインには、水タイプの技は効かん」
「なっ、くっ……!」
 思わぬ反撃を受けたことや、体力を回復されたことも痛いが、なによりイリスとダイケンキにとっては、水タイプの技が効かない、ということが一番厄介だ。
 ダイケンキの覚えている技の半分は水技。なので、それが封じられるとなると、ダイケンキの技の半分が封じられることと同義。加えて吹雪は水中だと使えないので、実質ダイケンキの攻撃技は効果がいまひとつのメガホーンのみということになる。ハイドロカノンを吸収して体力が回復しているマンタイン相手に、これはきつい。
「ほなどんどん攻めよーかいな。マンタイン、エアスラッシュ!」
「! かわせ、ダイケンキ!」
 間一髪、ダイケンキはマンタインの放った空気の刃を回避する。
「とにかくやるしかないか……メガホーン!」
 そして大きな角を構えてマンタインに突撃するが、
「かわしてエアスラッシュじゃ!」
 マンタインとて水中で機動力がまったくないわけではない。ダイケンキの突撃をかわすと、空気の刃を飛ばしてダイケンキを切り裂く。
「シグナルビーム!」
「シェルブレードだ!」
 続けてカラフルな光線を発射するマンタインだが、光線はまたしてもダイケンキに跳ね返されてしまう。
「メガホーン!」
 そしてまた突撃するダイケンキ。今度は角の中心でマンタインを捉えた。直撃し、急所を突いたのでダメージは大きいだろう。
「やっぱシグナルビームはダメじゃな……しゃーない。マンタイン、エアスラッシュ!」
「ダイケンキ、かわしてメガホーン!」
 シグナルビームを撃つのは止めたようだが、エアスラッシュは飛んでくる。しかし単発のエアスラッシュをかわすのは容易い。軽く避けて再び角の一撃を叩き込む。
「もう一発メガホーン!」
 さらにダイケンキはメガホーンを突き込む。ダメージを与えられる技がこれしかない以上、とにかくメガホーンで攻めるしかない。
「エアスラッシュじゃ!」
「何度来たって同じですよ! メガホーン!」
 マンタインはしつこくエアスラッシュを放つが、流石にもう見切った。最低限の動きで刃をかわすと、ダイケンキは何度もメガホーンをマンタインに突き込む。
「むぅ、流石にこれ以上はまずか。マンタイン、一旦空中に出るんじゃ!」
 水中戦はもう限界だと察したのか、シズイの指示でマンタインは水面へと浮上していく。
「! させない! 追いかけろ!」
 そしてダイケンキもそれを逃がすまいと追いかける。しかし、あと少しのところでマンタインには届かなかった。
 マンタインは水飛沫を散らし、海上へと出る。追い風のサポート受けられる空中では、マンタインの方が有利だ。
 しかし、

「ダイケンキ、吹雪!」

 追いかけてきたダイケンキは水面から顔を出し、文字通り目と鼻の先にいるマンタインに猛吹雪を吹きつける。
 特防の高いマンタインと言えど、これほどの至近距離から吹雪を受ければそれなりのダメージは受ける。さらにシズイにとっては運の悪いことに、マンタインの体はピキピキと凍り始め、やがて完全に氷に覆われてしまう。
「おおう!?」
 予想だにしない氷状態に、シズイは驚きの声を上げる。水タイプ使いの彼だからこそ、今まで氷状態になった経験はあまりないのだろう。
 氷状態は最も起こりにくい状態異状だが、最も無防備な状態でもある。まったくの無抵抗になったマンタインを、ダイケンキは好き自由に攻撃できるのだ。
「よし、いいぞダイケンキ! もう一発吹雪!」
 ダイケンキは海面に浮かぶマンタインにもう一度強烈な吹雪を吹きつけて攻撃。氷に覆われているものの、ダメージ自体は普通に通る。
「今度こそとどめだ! メガホーン!」
 そして最後に大きな角が繰り出され、その一突きでマンタインを覆っていた氷は砕け散る。そして同時にマンタインも吹っ飛ばされ、足場に墜落。完全に目を回しており、戦闘不能だ。
「戻っとき、マンタイン。おはんはよーやった。あとは、おいのエースに任せとき」
 シズイはマンタインをボールに戻し、網の中に放り込む。そして最後のボールを、網の中から取り出した。
「さあ、これがおいのエースたい。今までのポケモンたちとは、一味もふた味もちごうから、覚悟しとき」
 そしてシズイは、ボールを放り投げた。


シズイ戦その六です。まさかマンタイン戦がここまで伸びるとは思いませんでした。そろそろ彼のエースが出ると思ったのですが……ともあれ、ダイケンキは水中では追い風が効かないことを逆手にとって水中戦で攻めますが、貯水で回復されて振出しに戻ってしまいます。しかし最後には吹雪でマンタインを凍りつかせ逆転。マンタインを撃破しました……今更気づきましたが、これただのあらすじですね。もうちょっとあとがきっぽいこと書きたいな。でもネタがあんまりないんですよね……では次回はシズイ戦その七。遂に彼のエース登場です。では次回もお楽しみに。

Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——再びお知らせです—— ( No.669 )
日時: 2013/02/11 17:40
名前: プツ男 (ID: DN0pvQeX)

ホミカに勝って、お次はシズイ戦ですか。ということは、イリスもそろそろイリゼの伝言の意味に気付く頃でしょうか......
そして、思ったんですが、ママンボウさんTUEEEEE!!ストーリーでは何度も技を外してくれたラブカスよりも扱いに困ったママンボウさんTUEEEE!!
それにしても、イリスのデンリュウってよく出落ちしてしまいますよね。たしか、レイのヤミクラゲの時もそうでしたし、このままだと、トロピウス、ブースター、スピアーに並ぶ不遇ポケモンに......!!
マンタインは僕は対戦でよく使いますよ?雨パだと完全役立たずの極みですが、僕の偏ったパーティーでは相性補完に役立っています。僕のパーティー地面や炎、格闘の一貫性が酷いですもの


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