二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

ポケットモンスターBW 混濁の使者 ——完結——
日時: 2013/04/14 15:29
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=21394

 今作品は前作である『ポケットモンスターBW 真実と理想の英雄』の続きです。時間としては前作の一年後となっておりまして、舞台はイッシュの東側がメインとなります。なお、前作は原作通りの進行でしたが、今作は原作でいうクリア後なので、オリジナリティを重視しようと思います。
 今作品ではイッシュ以外のポケモンも登場し、また非公式のポケモンも登場します。

 参照をクリックすれば前作に飛びます。

 では、英雄達の新しい冒険が始まります……

 皆様にお知らせです。
 以前企画した本小説の人気投票の集計が終わったので、早速発表したいと思います。
 投票結果は、
総合部門>>819
味方サイド部門>>820
プラズマ団部門>>821
ポケモン部門>>822
 となっています。
 皆様、投票ありがとうございました。残り僅かですが、これからも本小説をよろしくお願いします。

登場人物紹介等  
味方side>>28  
敵対side>>29
PDOside>>51
他軍勢side>>52
オリ技>>30
用語集>>624

目次

プロローグ
>>1
第一幕 旅路
>>8 >>11 >>15 >>17
第二幕 帰還
>>18 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27
第三幕 組織
>>32 >>36 >>39 >>40 >>42 >>43 >>46 >>49 >>50 >>55 >>56 >>59 >>60
第四幕 勝負
>>61 >>62 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>72 >>76 >>77 >>78 >>79 >>80
第五幕 迷宮
>>81 >>82 >>83 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90 >>92 >>93 >>95 >>97 >>100 >>101
第六幕 師弟
>>102 >>103 >>106 >>107 >>110 >>111 >>114 >>116 >>121 >>123 >>124 >>125 >>126 >>129
第七幕 攻防
>>131 >>135 >>136 >>139 >>143 >>144 >>149 >>151 >>152 >>153 >>154 >>155 >>157 >>158 >>159 >>161 >>164 >>165 >>168 >>169 >>170 >>171
第八幕 本気
>>174 >>177 >>178 >>180 >>184 >>185 >>188 >>189 >>190 >>191 >>194 >>195 >>196 >>197 >>204 >>205 >>206 >>207 >>211 >>213 >>219 >>223 >>225 >>228
第九幕 感情
>>229 >>233 >>234 >>239 >>244 >>247 >>252 >>256 >>259 >>262 >>263 >>264 >>265 >>266 >>269 >>270 >>281 >>284 >>289 >>290 >>291 >>292 >>293 >>296 >>298
第十幕 強襲
>>302 >>304 >>306 >>307 >>311 >>316 >>319 >>320 >>321 >>324 >>325 >>326 >>328 >>329 >>332 >>334 >>336 >>338 >>340 >>341 >>342 >>343 >>344 >>345 >>346
弟十一幕 奪還
>>348 >>353 >>354 >>357 >>358 >>359 >>360 >>361 >>362 >>363 >>364 >>367 >>368 >>369 >>370 >>371 >>372 >>376 >>377 >>378 >>379 >>380 >>381 >>382 >>383 >>391 >>393 >>394 >>397 >>398 >>399 >>400
第十二幕 救世
>>401 >>402 >>403 >>404 >>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>412 >>413 >>414 >>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422 >>433 >>436 >>439 >>440 >>441 >>442 >>443 >>444 >>445 >>446 >>447 >>450 >>451 >>452 >>453 >>454
第十三幕 救出
>>458 >>461 >>462 >>465 >>466 >>467 >>468 >>469 >>472 >>473 >>474 >>480 >>481 >>484 >>490 >>491 >>494 >>498 >>499 >>500 >>501 >>502
第十四幕 挑戦
>>506 >>511 >>513 >>514 >>517 >>520 >>523 >>524 >>525 >>526 >>527 >>528 >>529 >>534 >>535 >>536 >>540 >>541 >>542 >>545 >>548 >>549 >>550 >>551 >>552 >>553 >>556 >>560 >>561 >>562 >>563 >>564 >>565 >>568
第十五幕 依存
>>569 >>572 >>575 >>576 >>577 >>578 >>585 >>587 >>590 >>593 >>597 >>598 >>599 >>600 >>603 >>604 >>609 >>610 >>611 >>614 >>618 >>619 >>623 >>626 >>628 >>629 >>632 >>638 >>642 >>645 >>648 >>649 >>654
>>657 >>658 >>659 >>662 >>663 >>664 >>665 >>666 >>667 >>668 >>671 >>672 >>673 >>676 >>679 >>680 >>683 >>684 >>685 >>690 >>691 >>695

第十六幕 錯綜

一節 英雄
>>696 >>697 >>698 >>699 >>700 >>703 >>704 >>705 >>706 >>707 >>710 >>711
二節 苦難
>>716 >>719 >>720 >>723
三節 忠義
>>728 >>731 >>732 >>733
四節 思慕
>>734 >>735 >>736 >>739
五節 探究
>>742 >>743 >>744 >>747 >>748
六節 継承
>>749 >>750 >>753 >>754 >>755
七節 浮上
>>756

第十七幕 決戦

零節 都市
>>759 >>760 >>761 >>762
一節 毒邪
>>765 >>775 >>781 >>787
二節 焦炎
>>766 >>776 >>782 >>784 >>791 >>794 >>799 >>806
三節 森樹
>>767 >>777 >>783 >>785 >>793 >>807
四節 氷霧
>>768 >>778 >>786 >>790 >>792 >>800 >>808
五節 聖電
>>769 >>779 >>795 >>801 >>804 >>809
六節 神龍
>>772 >>798 >>811
七節 地縛
>>773 >>780 >>805 >>810 >>813 >>814 >>817
八節 黒幕 
>>774 >>812 >>818

最終幕 混濁
>>826 >>827 >>828 >>832 >>833 >>834 >>835 >>836 >>837 >>838 >>839 >>840 >>841 >>842 >>845 >>846 >>847 >>849 >>850 >>851
エピローグ
>>851

2012年冬の小説大会金賞受賞人気投票記念番外
『夢のドリームマッチ ver混濁 イリスvsリオvsフレイ 三者同時バトル』>>825



あとがき
>>852

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171



Re: 374章 嵐 ( No.469 )
日時: 2011/11/18 01:00
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「リーテイル、ドラゴンビート!ダイケンキ、ハイドロカノン!」
イリスは状況処理が追いつかない現状をどうにかしようと二匹に大技を指示するが、龍の鼓動のような音波は難なくかわされ、水を超圧縮した弾丸は発射する前に崩された。
「オノノクス、アイアンテール!」
オノノクスSは尻尾を鋼鉄の如く硬化させ、ダイケンキに叩きつける。
「オノノクス、燕返し!」
オノノクスAは顎の斧を器用に、そして素早く振るってリーテイルを切り裂く。
「くぅ、ダイケンキ、シェルブレード!」
ダイケンキは手に持つ仕込み刀、アシガタナに水のエネルギーを纏わせ、オノノクスSに斬り掛かる。
「シャドークロー!」
対するオノノクスSは両手の爪に影を纏わせ、ダイケンキが振るう刀と切り結ぶ。
「リーテイル、リーフブレード!」
ダイケンキとオノノクスSがいがみ合っている隙に、イリスはリーテイルへと指示を出す。
リーテイルは尻尾の鋭い葉っぱでオノノクスAの腹をざっくりと切り裂く。見た目は派手だが、効果いまひとつなのでダメージはそうでもないようだ。
「オノノクス、シザークロス!」
「もう一度リーフブレード!」
オノノクスAは両手の爪を交差させて振り下ろすが、リーテイルの背中の葉っぱがその爪を全て受け止める。
「さらに、リーフブレード!」
リーテイルは爪を受け止めた状態でバク宙をするように体を回転させ、その際にオノノクスAの体を下から上にかけて大きく切り裂く。
だがやはり、効果いまひとつなのでダメージは少ない。
「オノノクス、反撃行くよ!ドラゴンクロー!」
オノノクスAは爪に龍の力を込め、反撃の一撃を繰り出すが、リーテイルは後ろに跳び退ってかわした。
「ドラゴンビート!」
そして龍の鼓動のような激しい音波を咆哮として放つ。音波は視認できないが、まっすぐオノノクスAに向かって行く。
「悪いけど、当たらないよ。かわして辻斬り!」
オノノクスAは普通のオノノクスよりも遥かに速い。なのでその素早さを生かして音波を避け、リーテイルとの距離を詰めて爪で切り裂く。
「ドラゴンクロー!」
「くっ、ロイヤルバーン!」
オノノクスAが龍の爪を薙ぐように振るう瞬間、リーテイルは自然の力を爆発させて衝撃波を放ち、オノノクスAを引き剥がすが
「もう一度ドラゴンクロー!」
「なっ……!くっ、ならリーフブレード!」
オノノクスAは素早く切り返し、龍の爪を振るう。リーテイルは振るわれた爪を尻尾の葉っぱで受け止め、またも拮抗状態となる。
そしてそれと同時に、ダイケンキの方にも変化が現れた。
「オノノクス、瓦割り!」
今までアシガタナと切り結んでいたオノノクスは突然身を引き、すぐに前進して手刀を振り下ろす。
「くっ、メガホーンだ!」
手刀を叩き込まれたダイケンキは、反撃にと一歩後退し、すぐさま勢いよく角を突き出す。
「オノノクス、逆鱗!」
しかしオノノクスSは突き出される角など意にも介さず、反撃に出る。
オノノクスSが繰り出す憤怒の一撃がダイケンキにクリーンヒットし、ダイケンキはリーテイルの後方へと吹っ飛ばされた。
「オノノクス、ドラゴンクロー!」
オノノクスSがまだ収まらない怒りを剥き出してダイケンキらに突っ込むのと同時に、リーテイルとの拮抗状態が解けたオノノクスAも、両手の爪に龍の力を込めてリーテイルへと突貫する。
「やばっ……!」
オノノクスAの攻撃を避けるのはそんなに難しくはないが、その攻撃をかわせば後方で倒れているダイケンキにその爪が向かうだろう。さらにオノノクスSの逆鱗もあるため、リーテイルはオノノクスAを止めたとしてもそのままオノノクスSが進路を変えてリーテイルに矛先が向くかもしれない。勿論そのままダイケンキに突っ込む可能性もあるが、それはそれでまずい。
八方塞というか、絶体絶命。
「くぅ……あー、やるだけやってやる!リーテイル、二体とも吹き飛ばせ!ロイヤルバーン!」
無茶な注文をしながら、イリスはリーテイルに指示を出す。
リーテイルは今、特性深緑が発動しているが、しかしそれを利用しても、どちらのオノノクスも止まるとは、ましてや吹き飛ばすなんてことは不可能だろう。
だが二体のオノノクスは吹っ飛んだ。
しかしそれは爆発によるものでも、衝撃波によるものでもない。

無数の、嵐のような怒涛の勢いで放たれた葉っぱによるものだった。

「……っ!」
「オノノクス!」
吹っ飛ばされた二体のオノノクスに、シャガは驚愕、アイリスは叫喚。
「なんだ、今の技……?」
イリスは図鑑を開き、検索をかける。
出て来たのは、リーフストームという技名。
「リーフストームっていうのか……それにしても、物凄い威力だな……」
いくら深緑で威力が増大されているとはいえ、ドラゴンタイプであるオノノクス二体をまとめて吹き飛ばすふどの威力は、驚嘆に値するだろう。
「むぅ、驚いたが、しかしオノノクスはまだ力尽きん!逆鱗!」
「そうそう、まだあたしもオノノクスも負けてないよ!ドラゴンクロー!」
二体の龍はそれぞれ憤怒の気を飛ばしながら、龍の力を爪に込めながら、突貫してくる。
「よし、一気に決めるぞ。リーテイル、リーフストーム!」
リーテイルは背中の葉っぱを羽ばたかせ、大量の葉っぱを嵐の如き怒涛の勢いで放つ。
無数の葉っぱは突っ込んでくるオノノクス達を軽く飲み込む。これでしばらくは動けないだろう。
そして

「ダイケンキ、ハイドロカノン!」

葉っぱの嵐に呑まれて動けない二体の龍に、ダイケンキは水を超圧縮した、荒波のような巨大な弾丸を射出する。
「行っけえぇぇぇ!」
水の弾丸はまっすぐに荒れ狂う葉っぱの渦に向かう。
そして、数多の葉っぱを散らしながら、二体の龍を沈めた。



今回はソウリュウシティジム再戦、決着となりました。リーテイルは新技、リーフストームを習得して勝機を見出しましたが、最後の最後はダイケンキがいいとこ取りです。さて次回はそろそろ伏線張ってた最後の救世主様を出そうと思いますが、まあ、その過程で色々あったほうがいいかなぁ……とか思ったり思わなかったり。とかそんなわけで、次回もお楽しみに。

Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 ( No.470 )
日時: 2011/11/18 17:39
名前: 大光 ◆HynV8xBjBc (ID: VDwmPbKC)

ついにイッシュジムリーダー10人(+アイリス)を突破しましたか。次は四天王ですが、その前に救世主コバルオンたちの弟子の登場ですね。あのポケモンに関係があると思われる場所がありますが、僕はその場所のトレーナーが伝説のポケモンとかなんとか言っていたので、その場所のそこらじゅうを探し回ったことがあります。当然そのポケモンは見つかり間瀬でしたが(笑)。
えーと、ルースのことですが、前作の登場人物の記事を見ているとある人物に髪色とコートの色がかぶっているのを今更気づきました。本当にすみませんでした。あ、長文にもなってしまいました。

Re: ポケットモンスターBW 混濁の使者 ( No.471 )
日時: 2011/11/18 20:10
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

大光さん

はい、やっとイッシュのジムリーダー全員を再撃破しました。実はこれ、最初はフルバトルにしようとしたんですけど、そうしたら話数が大変な事になっていつ終わるか分かったもんじゃなくなりそうだったので、三対三(最後は二対二)のバトルにしたという至極どうでもいい過程があったりします。
そういえば僕もやりましたね。あの暗い場所を縦横無尽に駆け回った結果、あそこでリオルが出てくることが判明したのが唯一の収穫です。
ああ、そういえばいましたね。一応今作にも出てはいますが、まあ瑣末なことです。一年経ってるから服装は変えられますし、髪色はともかく髪型くらいはどうとでもなるので、お気になさらず。
というか、僕はずっと彼の髪色を黒だと、コートの色も黒だと思い込んでいました……作者なのに……

Re: 375章 自爆 ( No.472 )
日時: 2011/11/18 21:08
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

イッシュ最大のショッピングモール、『アールナイン』が鎮座する9番道路。
その大通りからやや外れた道に、これでもかというスピードで疾駆する影が一つ、二つ、三つ。そしてそれらを追うように四つ目。
「くっそ、中々しぶといぞあいつ……どうするよ!」
「どうもこうもねぇ!全力で振り切るしかないだろ!」
「それができたら、あたし達はこんなに苦労してないと思うけどねー」
最初の三つの影は、何を隠そうプラズマ団。それもその幹部である、7Pと呼ばれる者達だ。
先頭を走るのは紫色の髪に白衣を着た青年、アシド。彼はジバコイルに乗り、その磁力を利用して二つの鉄の棒を楕円の体に引っ付け、それを強く握って振り落とされないようにしている。
次に続くのは緑色の髪の男、フォレス。こちらは普通に飛行タイプのポケモン、コクジャクの足に掴まって飛んでいるのだが、物凄く辛そうだ。
最後尾は赤い髪を長いポニーテールにし、浴衣を着た少女、フレイ。彼女は足を折り畳んで浮遊状態となったメタグロスの体に、うつ伏せでしがみついている。
「ちっ、出遅れたのが不味かったか……」
「最近見なかった英雄に見つかっちまったのが、運の尽きか」
アシドとフォレスがぼやく。
そう、今この三人を追いかけているのは、英雄ことイリス。イリスはリーテイルの背中に乗り、超高速低空飛行で追跡している真っ最中なのだ。
ちなみに彼はあまりの風圧に声をあげられず、目もかなり細めている。
「でもこれ、掛け値なしでやっばいね……アシド、フォレス、もうすぐポイントに着く頃だよー?」
「そいつは好ましくない情報だな……どうするよ、アシド」
「僕に振るな……しゃーない。こうなったらあとは各自でなんとかするってことで、あの雑木林に入るぞ!そこで撒け!」
アシドの提案に二人は異論はないようで、三人は近くの雑木林へと突っ込んでいき、それぞれ別方向に逃げていった。
「なっ……各自で逃げるのか。リーテイル、とりあえず前進!」
イリスも雑木林に入り、風圧がやや小さくなってリーテイルに指示を出す。
リーテイルはその指示通りに全速前進——フレイが逃げた方向へと追跡する。
「わーお、自称天才(笑)のアシドとキャラが微妙に薄くなりつつあるフォレスを差し置いてこの可愛いフレイちゃんを追ってくるなんてー。残念ながらサインはあげられないよー」
「いらないうるさい黙れ止まれ!」
リーテイルは速度を落とさず全力でメタグロスを追うが、しかしメタグロスのスピードも思いの外速く、なかなか追いつけない。
とイリスが思っていたら、ふと目の前に光が——
ドガァン!
そんな轟音が鳴り響き、イリスの目の前には濛々と舞う砂煙。そして崩れた岩肌。
リーテイルは急ブレーキをかけて停止。イリスは地面に降り、状況を整理。要約すれば

フレイが目の前の崖に突っ込んで激突した。

ということになる。
「大丈夫か……?」
いくら敵といえど少々心配である。
砂煙が晴れてくると、まず最初に見えたのはメタグロス。メタグロスは流石というべきか、その鋼鉄の体には傷どころか痣一つない。
だが続けて見えてきたもう片方が、凄い有様になっている。
「おぉ、いつつ……あー、凄い痛いなー」
間延びした口調で、緊張感の欠片もない声だが、しかしその姿は危機的だった。
まず体。全身——見える範囲内でも、腕やら脚やらに無数の擦り傷がある。そして最も重要な頭からは、ドクドクと血が流れていて、今すぐにでも病院に行く必要があるだろう。
「ふぅ、英雄は追ってこないか……ってフレイ!? お前大丈夫か!? かなりグロッキーなことになってるぞ!?」
雑木林から飛び出したのは、イリスが追ってこないと察して出たフォレス。フォレスはすぐにフレイに駆け寄る。
「あーフォレス、エレクトロかガイアか、誰かに言伝一つー」
「な、なんだ?」
「あたしもう帰るー。ちょっとこれはメインヒロインにあってはならない状態だと思うんだよねー」
「いやその状態は誰であってもあってはならないと思うぞ。そして恐らくお前はメインヒロインではない」
「つーわけで、じゃあねー」
フォレスのツッコミを無視して、フレイは去っていった。
初っ端から幹部が一人退場。しかも自爆。
【何事ダ……】
突如として、近くの岸壁に開いていた穴——恐らくは洞窟だろう——から、一つの人影が姿を現す。
いや、それは人の形をしているが、人かどうかを疑うように奇怪な声を発していた。
「おお、ドランか……フレイが帰ったぞ、頭から血を流して」
【ソウカ】
出て来た人影——7Pであるドランは何ということもなくそう返した。
「さっきから次から次へと、忙しい連中だな」
【英雄……】
ドランは顔面が完全に隠れたフードから、イリスを見据える
【『フォレス』、下ガレ】
「あ?」
【状況ヲ察スルニ、英雄ガ攻メ込ンデ来タノダロウ。貴様ハ岩場デ暴レテイル者ドモヲ相手ヲ要求スル】
「別に構いやしないが……大丈夫なのか?」
「全然大丈夫だよ」
突然、ドランの声が変わった。それは少年のような少女のような、どちらにせよまだ変声期を迎えていないような子供の声だった。
そしてもう一つ。ドランの顔を覆うフードの中から、濁った藍色の光が漏れている。
「……解放するってことは、それなりに本気なんだな」
「そういうこと。さあ、ここはドランに任せて、フォレスは行って」
フォレスはドランの言葉に多少踏み留まったが、最終的には洞窟の中へと走り出していった。
「……なーんか、偶然見つけたプラズマ団を追ってみたら、思わぬ大事件に発展しているような気がしなくもないな」
イリスはリーテイルに構えさせ、ドランを睨むように見据える。
これが、救世主達が育てた弟子を巡る戦の、幕開けだった。



さあ、今回はバトルのない回でした。そしてこれを書いていて気付きましたが、最近、どうも7P達の出番が少ないです。まあ最近までずっと再戦シリーズを書いていたからしょうがないのですけど。今回出て来たのは岩壁に激突して負傷し帰ったフレイと、フォレスにアシド。アシドはどこに行ったのやら。もしかしたら忘れ去られるかもしれませんね。そして最後に登場したが、解放までしたドラン。ドランは口調が鬱陶しいので登場頻度が低めですが、解放すればそうでもない。そしてこれがイリスとドランの初バトルですね。というわけで、次回をお楽しみに。

Re: 376章 顔面 ( No.473 )
日時: 2011/11/21 16:17
名前: 白黒 ◆KI8qrx8iDI (ID: GSdZuDdd)
参照: http://www40.atwiki.jp/altair0/pages/308.html

「天空に臨め、ドラドーン!」
ドランの一番手は、初っ端から切り札と思しき大型のドラゴンポケモン、ドラドーン。
その大きさはイリスが今まで見てきたどのポケモンよりも大きい。モスギスのティラノスよりも、ガイアのハサーガよりも、リオのドラドーンよりも、どのポケモンよりも巨大なポケモンだ。
そう、上空に広がる天空を覆い隠してしまうほどに。
「この大きさは反則級だな……リーテイル、やれるか?」
イリスは相性的に不利なリーテイルにそう呼びかけると、リーテイルはコクリと頷いた。不利でも、やる気はあるらしい。
「よし、だったら弱点を攻めていくぞ。ドラゴンビート!」
リーテイルは息を大きく吸い込み、龍の鼓動のような音波を、咆哮としてドラドーンに放つ。
ドラドーンは巨体なため、その音波をかわせず直撃を喰らったのだが
「効いていない……!? いや……」
ドラゴンビートは効いていはいるはずだ。しかしそれをものともしないほどに、ドラドーンが超然としているというだけである。
「ふうん、思ったほどじゃないね」
「っ……リーテイル、もう一度ドラゴンビート!」
リーテイルは再度音波を咆哮として放ち、ドラドーンに直撃させるが、やはりドラドーンは動じない。
「んじゃ、そろそろこっちの番。ドラドーン、ハイドロポンプ!」
ドラドーンは空中からまるで滝のような、しかし滝なんかとは比べものにならないほど激しい水流を噴射する。
「リーテイル、回避だ!」
リーテイルは急いで後ろに跳び、その激しい水流を回避。水流が直撃した所を見てみると、クレーターのような大きな窪みが出来ており、水も溜まっていてまるで滝つぼのようだ。
「そんな破壊力ありかよ……リーテイル、あの攻撃は喰らったらやばい。ここは大技じゃなく、地道に削っていこう。……エアスラッシュ!」
リーテイルは背中の葉っぱを羽ばたかせ、空気の刃を無数に飛ばす。
飛ばされた刃のほとんどはドラドーンを切り裂いたが、それでもやはり、ドラドーンは怯まない。
「ドラドーン、エアスラッシュ!」
ドラドーンも単発の空気の刃を飛ばす。そのスピードはリーテイルのものよりも格段に速い。
「かわせ!」
リーテイルは素早く横に移動し、その刃をかわす。刃はそのまま地面に向かっていき、どこまで行くのか、深々と地面を切り裂いていった。
「一撃一撃の攻撃力高すぎるだろ……リーテイル、もう一度エアスラッシュ!」
「アイスバーン!」
リーテイルは再び空気の刃を無数に飛ばすが、今度の刃は全て、ドラドーンが引き起こした氷の爆発による衝撃波で粉砕されてしまった。
「このまま行くよ、龍の波動!」
そしてドラドーンは口内に龍の力を溜め込み、それを波動としてリーテイルに放つ。
「回避だ、リーテイル!」
リーテイルは後ろに下がってその波動をかわそうとするが
「無駄無駄、そんな簡単にかわさせないよ」
龍の波動は地面に当たって消える——その直前に、軌道を変えた。
「な……っ!?」
軌道が変わったといっても大差はない。ただ後ろに下がったリーテイルを追ってきただけなのだが、回避行動を起こしたばかりのリーテイルでは、さらに回避を行う事もできない。
「くっ、しょうがないか……リーテイル、リーフストーム!」
リーテイルは避けられないなら迎え撃つという考えで、大量の葉っぱを嵐のような怒涛の勢いで向かい来る龍の波動へと放つ。
リーフストームと龍の波動が競り合い、互いに一進一退の押し合いを始める。両方の威力は互角で、この先は気力の勝負となった。
——ということはなく、結果はあっさりとしていた。

リーフストームが、いとも容易く龍の波動に突き破られたのだ。

「……っ! リーテイル!」
そして勿論、リーフストームが突き破られればその波動はリーテイルに向かって行くわけで、リーテイルはその破壊力抜群の波動の直撃を喰らって吹っ飛ばされ——戦闘不能となった。
「リーテイルが……一撃で、戦闘不能……!?」
流石にこの異常なまでの攻撃力に、イリスは驚かざるを得なかった。リーテイルは確かに、高い防御力を持っているとは言えるほど打たれ強くはないが、しかしだからといって、技の一撃で戦闘不能になるほど耐久力が低いわけでもない。
「あっれー? おかしいなー。一撃でやっちゃったら面白くないと思って、本気で手加減したんだけどなー」
イリスを嘲笑うようにくすくすと笑うドラン。顔が見えないので笑っているかどうかは不明だが、笑い声は聞こえる。
「ま、君とドラン達じゃあモチベーションというか、気合の入れようというか……そう、覚悟が違うんだよ」
ドランは笑うのを止めると、真剣な口調で、しかしそれでもどこかおどけた雰囲気で、イリスに語りかける。
「君らがなんでドラン達の邪魔をするのかとか、そーゆーのはよく知らないし知る気もないけど、こっちは全力で、本気で、懸命に取り組んでるんだよ」
「……それは、僕らも同じだ」
負けた手前、強気には出れないのだが、イリスはそう反論する。
「僕らだって、お前らに世界を支配させまいと、本気だ」
「ふうん。君らがどのくらい本気かは知らないけど、そこまで言うんならそうなんだろうね。少なくとも、ドランと同じくらいの覚悟はあるんだよね?」
そう言いながらドランは自分の顔を覆うフードを掴み、ゆっくりと持ち上げた。
つまり、自らの顔を晒した。
「……!」
イリスはドランに刻まれている刻印が、顔にあるだろうことは予測していた。解放する時、フードから光が漏れていたのを見ても分かるだろう。なので頬や額なんかに刻印があるのだろうと思っていたが、違った。というかそもそも、根本から違っていた。
まず、ドランには顔がなかった。

そしてその代わりと言わんばかりに、ドランの顔面には怪物のような顔が、刻まれていた。

顔がないといってもそれは比喩のようなもの。ちゃんと顔に凹凸はあるし、目がある部分には目が、鼻がある部分には鼻が、口がある部分には口が、それぞれある。しかしそれらは全て堅く閉じられており、それを隠すようにそこには各部位の刻印が刻まれている。
言うなれば、刻印が顔、とでも言うのか。
「ま、こんなとこかな」
ドランはフードを下ろしてから、軽い口調で言った。
「さて英雄ちゃん、君にはこれほどの覚悟があるのかな? 忠誠を捧げるために、無理矢理人の形にさせられた龍像が、自らの顔を喪失するほどの覚悟が」
軽い口調のドランの言葉は、イリスに重くのしかかった。



今回はイリス対ドランのバトルですが、ドランのドラドーン、強すぎます。破壊力が半端ないです。そして遂にドランの刻印がある場所が明らかに。結構グロッキーな設定ですが……いや、これ以上言うのは止めよう。ドランの設定については、今後明かしていきます。では次回もイリス対ドランの続きをやるか、もしくは違う場所に移るか……まあ何にせよ、次回もお楽しみに。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171



この掲示板は過去ログ化されています。