二次創作小説(紙ほか)
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入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- デュエル・マスターズ D・ステラ 【侵略世界編】
- 日時: 2017/01/16 20:03
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
【読者の皆様へ】
はい、どうも。二次版でお馴染み(?)となっているタクと申します。今回の小説は前作の”デュエル・マスターズ0・メモリー”の続編となっております。恐らく、こちらから読んだ方がより分かりやすいと思いますが、過去の文というだけあって拙いです。今も十分拙いですが。
今作は、前作とは違ってオリカを更にメインに見据えたストーリーとなっています。ストーリーも相も変わらず行き当たりばったりになるかもしれませんが、応援よろしくお願いします。
また、最近デュエマvaultというサイトに出没します。Likaonというハンドルネームで活動しているので、作者と対戦をしたい方はお気軽にどうぞ。
”新たなるデュエル、駆け抜けろ新時代! そして、超古代の系譜が目覚めるとき、デュエマは新たな次元へ!”
『星の英雄編』
第一章:月下転生
Act0:プロローグとモノローグ
>>01
Act1:月と太陽
>>04 >>05 >>06
Act2:対価と取引
>>07
Act3:焦燥と制限時間
>>08 >>10
Act4:月英雄と尾英雄
>>13
Act5:決闘と駆け引き
>>14 >>15 >>18
Act6:九尾と憎悪
>>19 >>21
Act7:暁の光と幻の炎
>>22 >>23
Act8:九尾と玉兎
>>25
第二章:一角獣
Act1:デュエルは芸術か?
>>27 >>28 >>29
Act2:狩猟者は皮肉か?
>>30 >>31 >>32 >>33
Act3:龍は何度連鎖するか?
>>36 >>37
Act4:一角獣は女好きか?
>>38 >>39 >>41 >>42 >>43 >>44 >>45
Act5:龍は死して尚生き続けるか?
>>48
第三章:骸骨龍
Act1:接触・アヴィオール
>>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55
Act2:追憶・白陽/療養・クレセント
>>56 >>57
Act3:疾走・トラックチェイス
>>66
Act4:怨炎・アヴィオール
>>67 >>68
Act5:武装・星の力
>>69 >>70
Act6:接近・次なる影
>>73
第四章:長靴を履いた猫
Act1:記憶×触発
>>74 >>75 >>76 >>77
Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解
>>78 >>79 >>80
Act3:捨て猫×少女=飼い猫?
>>81 >>82
Act4:リターン・オブ・サバイバー
>>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90
Act5:格の差
>>91 >>92 >>93 >>104
Act6:二つの解
>>107 >>108 >>109 >>110
Act7:大地を潤す者=大地を荒らす者
>>111 >>112 >>113
Act8:結末=QED
>>114
第五章:英雄集結
Act1:星の下で
>>117 >>118 >>119
Act2:レンの傷跡
>>127 >>128 >>129
Act3:警戒
>>130 >>131 >>132
Act4:策略
>>134 >>135
Act5:強襲
>>136
Act6:破滅の戦略
>>137 >>138 >>143
Act7:不死鳥の秘技
>>144 >>145 >>146
Act8:痛み分け、そして反撃へ
>>147
Act9:fire fly
>>177 >>178 >>179 >>180 >>181
Act10:決戦へ
>>182 >>184 >>185 >>187
Act11:暁の太陽に勝利を望む
>>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>193 >>194 >>195
Act12:真相
>>196 >>198
Act13:武装・地獄の黒龍
>>200 >>201 >>202 >>203
Act14:近づく星
>>204
『列島予選編』
第六章:革命への道筋
Act0:侵攻する略奪者
>>207
Act1:鎧龍サマートーナメント
>>208 >>209
Act2:開幕
>>215 >>217 >>218
Act3:特訓
>>219 >>220 >>221
Act4:休息
>>222 >>223
Act5:対決・一角獣対玉兎
>>224 >>226
Act6:最後の夜
>>228 >>229
Act7:鎧龍頂上決戦
Part1:無法の盾刃
>>230 >>231 >>232 >>233 >>234 >>235 >>236 >>239
Part2:ダイチの支配者、再び
>>240 >>241 >>242 >>243 >>244 >>245 >>246 >>247 >>248 >>250
Part3:燃える革命
>>252 >>253 >>254 >>255 >>256
Part4:轟く侵略
>>257 >>258 >>259 >>260 >>261
Act8:次なる舞台へ
>>262
第七章:世界への切符
Act1:紡ぐ言の葉
>>263 >>264 >>265 >>266 >>267 >>268 >>270
Act2:暁ヒナタという少年
>>272 >>273
Act3:ヒナとナナ
>>275 >>276 >>277 >>278 >>279 >>280 >>281
Act4:誓いのサングラス
>>282 >>283 >>284 >>285
Act5:天王/魔王VS超戦/地獄
>>286 >>287 >>295 >>296 >>297 >>298 >>301 >>302 >>303 >>304 >>305
Act6:伝説/閃龍VS獅子/必勝
>>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>323
Act7:青天霹靂
>>325 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>331
Act8:揺らぐ言の葉
>>332 >>333 >>334 >>335 >>336
Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神
>>337 >>338 >>339 >>340 >>341 >>342 >>343
Act10:伝える言の葉
>>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351
Act11:連鎖反応
>>352
『侵略世界編』
第八章:束の間の日常
Act1:揺らめく影
>>353 >>354 >>359 >>360 >>361 >>362
Act2:疑惑
>>363 >>364
Act3:ニューヨークからの来訪者
>>367 >>368 >>369 >>370 >>371
Act4:躙られた思い
>>374 >>375 >>376 >>377
Act5:貴方の為に
>>378 >>379 >>380 >>381 >>384 >>386
Act6:ディストーション 〜歪な戦慄〜
>>387 >>388 >>389
Act7:武装・天命の騎士
>>390 >>391
Act8:冥獣の思惑
>>392
Act9:終演、そして——
>>393
第九章:侵略の一手
Act0:開幕、D・ステラ
>>396
Act1:ウィザード
>>397 >>398
Act2:ギャンブル・パーティー
>>399 >>400 >>401
Act3:再燃
>>402 >>403 >>404
Act4:奇天烈の侵略者
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>411
Act5:確率の支配者
>>412 >>413
Act6:不滅の銀河
>>414 >>415
Act7:開始地点
>>416
第十章:剣と刃
Act1:漆黒近衛隊(エボニーロイヤル)
>>423 >>424
Act2:シャノン
>>425 >>426
Act3:賢王の邪悪龍
>>427 >>428 >>429
Act4:増殖
>>430 >>431 >>435 >>436 >>438 >>439 >>440 >>441 >>442
Act5:封じられし栄冠
>>444
短編:本編のシリアスさに疲れたらこちらで口直し。ギャグ中心なので存分に笑ってくださいませ。
また、時系列を明記したので、これらの章を読んでから閲覧することをお勧めします。
短編1:そして伝説へ……行けるの、これ
時系列:第一章の後
>>62 >>63 >>64 >>65
短編2:てめーが不幸なのは義務であって
時系列:第三章の後
>>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103
短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル)
時系列:第四章の後
>>120 >>121 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126
短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日
時系列:第四章の後
>>149 >>150 >>153 >>154 >>155 >>156
短編5:恋情パラレル
時系列:第四章の後
>>157 >>158 >>159 >>160 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>173 >>174 >>175 >>176
短編6:Re・探偵パラレル
時系列:平行世界
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422
エイプリルフール2016
>>299 >>300
謹賀新年2017
>>443
登場人物
>>9
※ネタバレ注意。更新されている回を全部読んでからみることをお勧めします
オリジナルカード紹介
(1)>>96 (2)>>271
※ネタバレ注意につき、各章を読み終わってから閲覧することをお勧めします。
お知らせ
16/8/28:オリカ紹介2更新
- Act3:ニューヨークの来訪者 ( No.367 )
- 日時: 2016/09/05 14:48
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
「……」
フジは押し黙った。
そして、パソコンに映し出した資料を前にしてため息をつく。
昨日、結局ノゾム達は偽ホタル(仮称)を見つけることは出来なかったのだ。
今日も引き続き、ニュータウンの中にそれがいないか探しており、対するフジ、ヒナタ、コトハはクリーチャーが関与しているかもしれない事案を片っ端から調べていた——が、此処最近はそんな奇怪な事件もない。アヴィオールとニャンクスの件を解決して以来、表立ったものはほぼ無くなっていたのだ。
そんな中で、フジが注目したのは新聞とニュースのこの一文だった。
「……熱中症患者、増加ねぇ……」
「それがどうかしたんですか?」
いつも通り、怪訝な視線をコトハは彼に向ける。
今はクリーチャーが起こしたかもしれない事件を洗っているのに、この男は何を言っているんだ、と。
「いや、此処最近暑い日が続くかんな。熱中症の患者が増えるのは何らおかしいことではないんだが……いや、おかしいだろ。残暑っつっても、まだ8月よかマシなんだぞ、見ろやこのグラフ」
成程、環境省の集計したそれを細かく区分すると、それが分かった。
8月で一番熱中症の患者が多かった週よりも、ここ一週間の熱中症患者の人数は多くなっているのだ。
しかも、平均気温はそれと比べても低くなっている。
また、学校や通勤が始まってレジャーや部活動などで外に出る頻度も少なくなっているはずだ。
にも拘らず、通勤中、通学中に急にばったり倒れて、そのまま熱中症と診断される人が増えているというのだ。彼らも何も無対策というわけではあるまい。水分補給を心掛ける、薄着で行動する、日向を避ける、といったものが主な対策ではある。それを怠った人間が倒れていると言えばそこまでであるが——あまりにも多すぎるのだ。
「……これって、どういうことなんですか?」
「余りにもよく似すぎた症状は、別の病気でも誤認されることがあるってことだ。例えば、炎天下の中でぶっ倒れて痙攣していたりぐったりしていたら、誰だって熱中症を疑うだろ。痙攣は熱痙攣、ぐったりしてるのは熱疲労だ。そして、検査してほかの原因が見当たらなければそれは熱中症ってことになる」
「……熱中症と間違えられるような病気って何かありましたっけ」
「さあな。糖尿病と水銀中毒の誤認トリックだったか何だったか。そういうのは知ってるが、熱中症は知らん。知らんが——」
流石に考えすぎではないか、とコトハは思った。
たまたまこの週が一番熱中症患者が多かっただけではないか、と。
しかし。
「——如月ィ。お前も経験あるだろ。人間ってのはみんな、多かれ少なかれ魔力(マナ)ってのを持ってんだよ。だが、元が多かろうが少なかろうが、クリーチャーも人間もそうだが、魔力を全て失えば——そいつは倒れる。体の防衛機構が働いて発熱、そして痙攣が起こることもある」
「!」
経験も何も、この間それは自分の身に起こったばかりのことであった。急な成長を遂げたニャンクスに、使う側のコトハの身体が耐え切れなくなったのだ。
「言わば、一時的に動けなくなるってこった。そのあとは自然回復するんだが、普通の人間はそんなものとは縁遠い生活をしてるわけだしよ。魔力不足でぶっ倒れるなんざまず、ねえ——が、仮にそれが炎天下を動いていた一般人に起こればどうなるか? まず熱中症と診断されるだろうな。魔力なんざ現代医学で解明できるわけねーんだからよ」
魔力と縁遠い生活を送っている一般人にはまず起こらない魔力不足による失神。
しかし、それが一般人に起こったのだとすれば——
「おい如月。ヒナタを呼べ。本当にこれは放置出来ねえぞ」
「は、はい! ねえ、ヒナタ——」
がらがらがら
そういって振り返った矢先、何かが崩れるような音。
そこには、山積みになっていたと思われる書類の入った段ボールの下敷きになったヒナタの姿があった——
「……あなた、何やってんのよ……」
「すまん、書類を直そうとしたら……うごご、助けてくれ」
***
「……見つかりませんね……」
がくり、と項垂れるホタル。
自分の姿と同じ敵が動いているらしいのだから、しょげても仕方はなかった。
威勢よく飛び出したのはいいが、結果が出せなければ意味がない。
「仕方ねえよな……そんなホイホイこっちに姿を現すわけがねえもんよ」
「逆に嗅ぎ回っているこちらへ、強襲してくる可能性もあるが」
レンもノゾムも、この事態には頭を抱えていた。
『……むっ!!』
次の瞬間。
ハーシェルが何かに気付いたかのように唸った。
耳をぴくぴく、と動かし、そして吠える。
何かが迫っていることを知らせるかのように。
『発見したぞ!! クリーチャーの反応じゃ!!』
『うん、あたしも発見したよ!! その方向から救急車のサイレンも……! なんでだろ』
『成程……これは見えてきましたね』
3人が、クリーチャーの魔力を感知した方向へ向かうと——広場に出た。そこには、人だかりが出来ており、間もなく救急車のサイレンも聞こえてくる。
「何があったんですか?」
「どうやら倒れたらしいんだ! 今救急車呼んでるよ!」
「日陰に寝かせて! 衣服を緩めるんだ!」
見れば、倒れているのは遊んでいた若者らしかった。
今は木陰の近くに寝かせられている。見れば汗が噴き出るように出ており、手がぴくぴく、と痙攣していた。
「熱中症か……?」
「……でも、なんで——」
『クリーチャーの反応じゃ!』
「えっ」
ハーシェルが言った途端に——周囲の空間は一変する。
そこには、もう今まで寄ってたかっていた人間たちはいない。
いるのは、クリーチャーを持っているホタル、ノゾム、そしてレンだけだ。
そして目の前には——2つの神々しい光器の姿があった。思わず目を見張る。
「あっ……! 《勝利の女神 ジャンヌ・ダルク》に《破滅の女神 ジャンヌ・ダルク》——!?」
「なぜ、奴らがここに——!!」
「……そういえば、あれって確か——ホタルが前にアルゴリズムに操られてた時に使ってたカードじゃねえか!?」
「そうですけど……!」
次の瞬間、2機の光器は口を開く。
『愚かなる人間どもめ……詮索しなければ良かったものを、のこのこと釣られてきおって……』
『我が主の悲願……貴方達に邪魔させるわけにはいきませんね』
そして、神々しい光が放たれた。
思わず目を瞑る。
しばらくして——体が何かに縛り上げられていることに気付いた。
輪だ。硬い光の輪に、体が縛られているのである。胴から、足まで。いくつもの輪がハメられていた。
「ちょっ、動けないんですけど!?」
「成程な……まんまと僕らはハメられたわけか……!」
「仕方ねえ、クレセント!」
『う、うん!』
「アヴィオール、貴様の出番だ!」
『御意にっ!』
こちらが動けない以上、決闘空間を開くことは出来ない。あの2機が今回の事件に関わっているのは明らか。
ここで倒すしかない。
が——
『目障りな奴らめ——』
飛び掛かっていったアヴィオールとクレセントの身体がそこで止まる。
光が一気に放たれたのだ。
見れば、再び体に螺旋状の高速具が取り付けられていた。
『《DNA・スパーク》——! 奴ら、呪文も使うんですか!』
『うぐぐ、この程度……うわああん、ダメだこれー!』
『アヴィオール、クレセント!? ぐぬ——』
「あ、ダメですよハーシェル!! 考えなしに突っ込んでは敵の思うツボです!」
『し、しかし……!』
『残るは貴様だけだ——』
『じわじわと嬲ってやるとしましょう——』
次の瞬間、電撃がハーシェルの身体に撃ち落された。
呻き声を上げるも、何とか立っていた彼だったが——拘束具が取り付けられてしまっていた。両足を縛られ、もう動くことが出来ない。
『バ、バカな——! あまりにも手数が多すぎる——並みのクリーチャーのそれではないぞ!』
「は、ハーシェル!?」
『では、人間共。今度の雷で黒焦げにしてやりましょう——』
そう、光器が紫電を両手に集めたその時であった。
「ちょっと待ったぁーっ!」
突如。
光器の喉笛に、何かが食らいつく。
そして、大きくバランスを崩した《勝利の女神 ジャンヌ・ダルク》は地面に倒された。
同時に、それが現れた方から少女が飛び出すように現れる。
『何だ貴様は——』
と、言いかけた破滅の女神だったが、すぐさま現れた何かが途方もなく巨大な咆哮を放ち、怯んでしまう。
「”ケルス”! グッジョブだよ!」
『はぁー。不意打ちしなきゃ、なかなかにヤバいマナのクリーチャーだったわね』
唖然とした様子で、縛られた3組はその姿を見る。
片方は、少女。それも、犬の耳のように房が1組、後ろの方へ垂れた帽子が印象的な小柄な少女だった。
もう片方は犬型のクリーチャーのようだった。喋ること、そして脚には青い炎が纏われるようにして燃えていたことから容易に普通の犬ではないと分かったが、とてもスマートで綺麗な灰色の犬だ。犬種で言えばグレイハウンドと言ったところか。
「それじゃあそこの人たちもすぐに助けてあげるねっ! まずは——こいつをぶっ倒してから、だけどっ! 行くわよ、ケルス! 決闘空間開放!」
少女が叫ぶと共に、黒い霧が現れる。
それらは2つの光器を包み、そしてホタル達も包んだのだった——
- Act3:ニューヨークの来訪者 ( No.368 )
- 日時: 2016/09/05 19:09
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
突如現れた少女とジャンヌ・ダルク2機のデュエル。
3ターン目、先攻を取ったのは少女の方だが、場には互いに、少女が《強襲のボンスラー》、対するジャンヌ・ダルクはハンデスされれば墓地からカードを回収する上に呪文では選ばれない《墓守の鐘ベルリン》が居た。
そして、一緒に空間に巻き込まれたホタル達も、このデュエルを見届けることになったのである。
「相手、闇使いみたいっすねレン先輩……!」
「そうだな。しかも闇単らしい。美学を感じるな」
「確かにそうですけど……それよりもあの犬のクリーチャー! あれも、生きたカードですよね!?」
『間違いないのう……』
『ところであたし達、いつまでここに寝っ転ばされてるんだろうね……』
『さあ……あの少女が負けたら全員黒焦げですかね。あ、私とハーシェルは大丈夫ですが、そこの子兎。貴方は大丈夫ですかねえ。まあ、直撃したら焼き兎の完成ですね。じゅるり』
『こんな時にまでブラックなジョークを言うのやめよう!? それジョークだよね!?』
何処か、不穏さを同時に感じる。アヴィオールの発言にも、そして少女のデッキにも。
ともかく一体、何を考えているのか——明るそうな性格の少女ではあったが、抱えているのは凶悪な闇。それは間違いない。
「じゃっ、私のターン! 《復讐 ギャロウズ》を召喚するよ! このときに私は、手札の《復讐 ブラックサイコ》を見せるから、この子のコストはマイナス2されて、5コストから3コストに! だからそのまま3マナ払ってバトルゾーンへ!」
復讐 ギャロウズ UC 闇文明 (5)
クリーチャー:デーモン・コマンド/侵略者 4000
このクリーチャーを召喚する時、自分の手札から進化クリーチャーを1体相手に見せてもよい。そうしたら、このクリーチャーのコストを2少なくする。ただし、コストは0以下にならない。
スレイヤー
「侵略者……しかも、コトハの兄も使っていたカードが見えたぞ」
「《ブラックサイコ》……あれが闇の侵略カードなんですね……」
——しかし、場には《ベルリン》がいるぞ……。ハンデスは意味を成さない……どうする?
場を守っている《ベルリン》は、この場合かなり厄介な敵となるだろう。ハンデスが通用しない上に、半端に高いパワーでウィニーは殺されてしまう。
しかし、そんなことは意にも介さず彼女はターンを終えたのだった。
少女:山札28 手札2 マナ3 墓地0
『私たちのターン』
『人間よ。我々に盾突くなど、何万年も早い——3マナで《コアクアンのおつかい》を唱え、山札の上から3枚を捲ります。そして、その中から光と闇のカード——この私、《勝利の女神 ジャンヌ・ダルク》』
『そしてこの私、《破滅の女神 ジャンヌ・ダルク》を手札に。残る《龍脈術 水霊の計》を墓地へ』
彼女たちが使ったのは手札補充だ。
マナも見るに、ヘブンズ・ゲート系列のデッキの挙動であることは間違いない。
『ターンエンド』
ジャンヌ・ダルク:山札26 手札4 マナ3 墓地2
では、と言った彼女はカードを引く。
そのまま少し思案すると、1枚のカードを突き付けた。
「呪文、4マナで《邪魂創世》! その効果で、《ボンスラー》を破壊して、カードを3枚引くよ!」
邪魂創世 P 闇文明 (4)
呪文
自分のクリーチャーを1体破壊してもよい。そうした場合、カードを3枚引く。
《ボンスラー》は犠牲にこそなったものの、その代わりに少女の手札は一気に3枚に増える。
そのまま攻撃せずに、彼女はターンを終えたのだった。
少女:山札24 手札3 マナ4 墓地2
『私たちのターン——おのれ、小賢しい真似を……《王機聖者 ミル・アーマ》召喚』
『この効果によって、我々の呪文のコストはマイナス1されます』
王機聖者ミル・アーマ P(C) 光/水文明 (3)
クリーチャー:グレートメカオー/イニシエート 3000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
ブロッカー
自分の呪文を唱えるコストを1少なくしてもよい。ただし、コストは0以下にならない。
現れたのは金色の身体に身を包んだ聖者。
呪文のコストを1軽減する能力は、かつて《ドラヴィタ・ホール》などに繋がるが故に規制された程。
これにより、次のターンにジャンヌ・ダルク達は次のターンに《ヘブンズ・ゲート》が使えるようになったのである。
『ターンエンド! さあ、次のターンでお終いにしてやろう!』
「……へーえ」
笑みを浮かべた少女は、カードを引く。
巨大なブロッカーが並べられるのは、ビートダウンにとってはかなり厳しい状況だ。
しかし。そんな生温い考えは、侵略の前では無力——
「それじゃあ貴方にも、私のとっておきを見せてあげるよっ!」
カード3枚を横に倒し、彼女は言う。
「まずは《爆弾団 ボンバク・タイガ》召喚! そのマナ武装3で《ベルリン》を破壊!」
爆弾団 ボンバク・タイガ C 闇文明 (3)
クリーチャー:ファンキー・ナイトメア 2000
マナ武装 3:このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のマナゾーンに闇のカードが3枚以上あれば、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選ぶ。そのターン、そのクリーチャーのパワーは-3000される。(パワー0以下のクリーチャーは破壊される)
現れたのは大量の爆弾を抱えた虎のぬいぐるみ。
それが《ベルリン》へ向かって爆弾を投げつけ、爆破してしまう。
マナ武装により、マナゾーンに闇のカードが3枚あれば圧倒的なコストパフォーマンスを発揮する。今までの低コストパワー低下カードよりも、使い勝手は良い。
これにより、ハンデスの邪魔になるカードはいなくなったと言えた。
「そして、そのまま《ギャロウズ》で攻撃——するときに」
復讐の鬼は、突貫する。
あらゆる恨み辛み妬みを抱え、それをあらぬ方向へぶつけるため。
同時に1枚のカードが《ギャロウズ》の頂きへ置かれた。
「侵略発動、《復讐 ブラックサイコ》——」
次の瞬間、ジャンヌ・ダルクの手札2枚が切り裂かれる。
落とされたのは《セブ・コアクマン》と《ヘブンズ・ゲート》だ。
復讐の刃はどんな知識もそぎ落とす。
しかし、これだけでは復讐は終わらなかったのである。
「——そして、”多重侵略”発動!!」
『なっ!?』
この場の全員が驚愕した。
少女は、《ブラックサイコ》の頂にさらに1枚、カードを重ねる。
それは禍々しき復讐の刃。
《ブラックサイコ》の身体が黒い炎に焼き尽くされ——そこから新たなる侵略の化身が姿を現した。
「復讐の炎、燃えて、滾って、そして焼き尽くしちゃって!!」
幾万もの刃は全てを突き貫き、灼熱の復讐の炎はあらゆる命を滅す。
その姿は突如、蹂躙するかのようにして現れた。
「——《超復讐 ギャロウィン》、Sally go!!」
- Act3:ニューヨークの来訪者 ( No.369 )
- 日時: 2016/09/05 21:12
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
現れたのは復讐の炎を纏った闇の侵略者。
骸骨の顔に、無数のダガーを携えた鎧、そして骨が剥き出しになったような四肢は不気味ささえ感じさせる。
「それじゃあいっくわよ! 《ギャロウィン》でシールドをW・ブレイク!」
ダガーが放たれ、シールド2枚を叩き割った——しかし。
砕かれたシールドが収束し、天国への門が開く。
『S・トリガー発動、《ヘブンズ・ゲート》!! 効果でこの私、《勝利の女神 ジャンヌ・ダルク》と』
『この私、《破滅の女神 ジャンヌ・ダルク》をバトルゾーンへ!』
現れた2体の光器。
その神々しい光と禍々しい紫電がバトルゾーンを侵食していく。
それを見た少女は——
「お、おおお! 燃えてきたわ! 相手の切札登場!? これは倒しがいがあるってものよね!」
——むしろ、滾っていた。
その様子を見たノゾムは訴えかけるように「大丈夫なんすかアレぇ!?」とレンに言った。その彼も呆れてはいたが。そんな中、ホタルだけがデュエルの展開に目を見張っていた。
——何だろう……あの余裕。あの《ギャロウィン》ってカード、まだ力を発揮していないような……!
『私の効果により、《ボンバク・タイガ》をタップします!』
『そして私の効果により、場にある光のハンターの数だけ墓地を捨てろ!』
「あーあ、手札が」
少女の最後の手札は——《ゲロNICE・ハンゾウ》であった。
このとき——女神達は戦慄する。
このカードを墓地に落としたということは——
「マッドネス、発動! 《ゲロNICE・ハンゾウ》召喚だよっ! その効果で《ミル・アーマ》のパワーをマイナス6000して破壊するわ!」
ゲロ NICE(ナイス)・ハンゾウ UC 闇文明 (7)
クリーチャー:デーモン・コマンド/ハンター 5000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選ぶ。そのターン、そのクリーチャーのパワーは-6000される。(パワー0以下のクリーチャーは破壊される)
相手の呪文の効果または相手のクリーチャーの能力によって、このクリーチャーが自分の手札から捨てられる時、墓地に置くかわりにバトルゾーンに置いてもよい。
現れたのは、狩人と化した戦国の忍。
その毒を塗ったクナイは、一瞬で金色の鎧を砕き、内側から腐らせ——破壊する。
何であれ、見事な切り返しだ、とレン達は戦慄する。しかし、あの女神2体をまだ倒せたわけではないのであるが。
「いやぁー、まあ。さっきの《邪魂創世》で運よく2枚が手札に入ったからなんだけどねぇ。たはは……ま、なんであれ私はターンエンドだよ」
少女:山札23 手札0 マナ5 墓地3
『おのれ小娘め……!』
『私たちのターンです』
カードが目の前の手札へ加えられる2体の女神。
そして——1枚のカードを突き付けた。
『《光器パーフェクト・マドンナ》召喚——このクリーチャーは場を離れないブロッカーだ』
『この守り、そう簡単に突破させるわけにはいきません。それでは——この私、《勝利の女神 ジャンヌ・ダルク》自らあなたの場を清めて差し上げましょう! 《ボンバク・タイガ》を攻撃!』
先に躍りかかったのは《勝利の女神 ジャンヌ・ダルク》であった。
その効果により、《ハンゾウ》もまたタップされる。攻撃時にも相手をタップする《ジャンヌ・ダルク》は非常に突破力が高い。
そして——《ボンバク・タイガ》を勝利の光によって撃ち貫き、破壊した——その時であった。
「あーあ、よくも私の可愛いクリーチャーを——絶対に許さないよ? 私の《ギャロウィン》は。やられたらやり返す。執拗に、陰湿に、そして凄惨に、貴方の命も一緒に道連れにしてあげる」
次の瞬間、《ギャロウィン》のダガーが《破滅の女神 ジャンヌ・ダルク》を突き刺した。
そしてそのまま——女神は砕かれる。
『な、なにが起こった——!?』
「《ギャロウィン》の効果発動。このクリーチャーがタップされていれば、私のクリーチャーが破壊されたとき、貴方のクリーチャーも破壊して、《超復讐 ギャロウィン》以外の闇のクリーチャーを1体、墓地から回収する」
超復讐 ギャロウィン SR 闇文明 (6)
進化クリーチャー:デーモン・コマンド/侵略者 8000
進化−自分の闇のクリーチャー1体の上に置く。
侵略−闇のコマンド
W・ブレイカー
このクリーチャーまたは自分の他のクリーチャーが破壊された時、このクリーチャーがタップしていたら、相手のクリーチャーを1体破壊し、《超復讐 ギャロウィン》以外の闇のクリーチャーを1体自分の墓地から手札に戻す。
「そして私が回収するのは、《ボンバク・タイガ》。やったね。次のターンも破壊出来るよ!」
『そ、そんな——!』
やられたらやり返す。それが復讐の侵略者の真髄。
実質、アドバンテージを失わずに確定除去を行えるのは強力で、さらに自爆でも効果が発動する以上、実質スレイヤーの上位互換のように扱えるのだ。
「私のターン。それじゃあ、《ボンバク・タイガ》を召喚して、その効果で《パーフェクト・マドンナ》のパワーをマイナス3000して破壊——そして、《超復讐 ギャロウィン》でシールドをW・ブレイク!」
シールドが2枚、叩き割られる。
そして、追撃を仕掛けるようにして《ハンゾウ》も飛び掛かった。
「《ゲロNICE・ハンゾウ》で攻撃——するときに侵略発動! そのまま、《復讐 ブラックサイコ》に!」
現れた途端に、再び女神達の知識は切り裂かれる。
墓地へ落とされたのは《天国の女帝 テレジア》に《光器セイント・マリア》だ。
「私、昔っから攻撃しながらハンデスするの好きだし得意なんだよね! それじゃあ、最後のシールドをブレイク!」
そのまま、最後のシールドを切り裂かんとするが——
『させません! 《勝利の女神 ジャンヌ・ダルク》でブロック! 破壊です!』
「《ギャロウィン》の効果で《ジャンヌ・ダルク》も破壊。そして、手札に《ブラックサイコ》を加えるよ。ターンエンド」
『くっ……!!』
破壊しても破壊され、クリーチャーを墓地から回収される。
地獄のようで、悪夢のような光景だった。
もはや、このクリーチャー達を処理することは出来ない。バウンスしても進化されれば一環の終わりだ——
『私たちのターン——ターンエンド』
打つ手なし。
完全に詰まされた。
そのまま、復讐の侵略者の刃は容赦なく突き立てられる——
「それじゃあ私のターン——」
《ギャロウィン》の瞳が復讐に燃えた。
そして——無数のダガーが女神達を狙い撃つ。
「——《超復讐 ギャロウィン》でダイレクトアタック」
- Act3:ニューヨークの来訪者 ( No.370 )
- 日時: 2016/09/05 23:47
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
決闘空間は閉じられ、ホタル達の拘束も解除されていた。
犬耳帽子の少女は、一仕事を終えた後のように爽やかな笑みを浮かべた。
「3人がひきつけてくれてたおかげで、決闘空間に引きずり込めたわ。ありがと!」
『何であれ無事でよかったわ。気をつけなさい。あのレベルのクリーチャーになると、私達英雄でも歯が立たないことがあるわよ』
ケルス、と呼ばれた犬のクリーチャーも言った。
『私達も所詮は一クリーチャーに過ぎないわけだし』
「いや、お礼を言うのはこちらの方だ。助かった」
『ですが意外でしたねえ。見ない顔ですが、まさかクリーチャーを従えている方とは』
「私は貴方達の顔、知ってますけどね——D・ステラ日本代表、鎧龍チームの皆さんでしょ? 黒鳥レンに、十六夜ノゾム、そして淡島ホタル、でしょ?」
らんらん、と彼女の青い瞳が輝いた。
「むう。やはり知っていたか」
「何かオレ達、結構有名人になってんのかな?」
「まあ、日本代表ですしね」
「そりゃ、そーですよ」
笑顔でくるり、と回る。どうやら、何か浮かれている様子で、黒髪が揺れた。
そして、とんでもないことを口走ったのだった。
「私、アメリカ代表、インベンテンズデュエルスクールチームの1人だもん。対戦相手になるかもしれない相手の事は知っておかないと!」
全員の表情は凍り付いた。
そして——即座にレンがスマホを取り出す。
素早く、何かを検索し、そして絶句した。
「まさかとは思ったが……貴様が」
「え、ええ!? 誰なんですか!?」
「全米予選を勝ち抜いたインベンテンズデュエルスクールチーム……その中でも彼女は飛び級を2度行い、現在実質中等部のエース——取り敢えずなんの用で来たのか教えて貰おうか」
どうやら彼女は、この当たりに出現したジャンヌ・ダルク2機を追ってホタル達と鉢合わせする形になったらしかった。
そして、肝心の目的をいう。アメリカ代表が、わざわざこの日本にやってきた理由を——
「ずばり、貴方達のチームメイトの暁ヒナタ先輩に会うため!」
***
「いや、誰だよ君」
ヒナタの開口一口はそれであった。
取り敢えず、ホタルとレン、ノゾムを助けてくれた、という話は聞いたのであるが。
「そういえば、アメリカの代表が先日決まったばかりだったな、ヒナタ。如月」
「まだそこまでチェックしてなかったぜ。あんな事件が起こったからよ」
「てかヒナタ、最近あなた女の子にこんな感じで会うこと多くない?」
「多くねーよ!?」
むぅ、少し怪訝な視線を向けるコトハ。
そういえば、コロナと言い、ツグミと言い、最近現れたクリーチャー使いのライバルは皆女子であったが——
「えええ!? ヒナタ先輩、私のこと覚えてないんですか!?」
「いやあ、でも俺の後輩……? 誰だ、誰だ……?」
犬耳帽子に、黒髪。
はつらつとした声に、青い瞳。
色は白く、これらの特徴から彼女がラテン系のアメリカ人であることは容易に察せたが——こんな少女、自分の知り合いに居たっけか、と。
「いや、そもそも名前聞いてないし……」
「もうっ! 先輩の馬鹿! 本当に覚えてないんですね!」
「……やれやれ、すまんなうちのグラサン馬鹿が。物覚えが悪いのだ。許してやってくれ」
「グラサンだから仕方ねぇっすね」
「グラサンですからね」
「グラサンは関係ねぇだろ!! いい加減にしろ!!」
「ま、まあ落ち着いてヒナタ……」
「コトハが唯一の良心になりつつある今日この頃……後輩まで悪ノリするようになるなんて」
自分をガン無視してコントを続ける鎧龍チームに、頬を膨らませた少女は言った。
「私ですよ、先輩! 本当に本当に覚えてないんですか!? 景浦(かげうら)ノアです!」
……。
ヒナタは黙りこくった。
その少女の名は確かに記憶の中に焼き付いていた。忘れもしない。あの夏を過ごした仲間の一人でその後も交友が続いて——しかし、記憶の中の彼女と照合させる。
彼から話を聞いていたコトハも、怪訝な顔をした。
こんな明るい少女だったっけか。
当時はもっと根暗そうで、眼鏡も掛けてて——
「ノアァァァァァーッ!?」
「あ、やっと思い出した、先輩!」
「じゃねえよ!! 覚えてるよ!! 覚えてるけども!!」
「ちょ、聞いてたのと全然違うんだけどヒナタ!?」
「ああ、そうだよ!! 俺だって戸惑いすら覚えてるよ!!」
性格も、そして容姿も余りにも溌剌としていて、正直陰気臭かった当時のノアとは似ても似つかない。
いや、幾らか顔を見るとようやく当時の面影も見えてきたが……。
「何か、お前変わった!? いろいろと」
「えー、そこまでですか?」
「てか、お前瞳も青かったっけ!? どうだっけ!?」
「ああ……私ハーフなんですよ。親の仕事の関係で、日本には結局3年くらいしかいませんでした。本名は、景浦ノア・アンダーソン。外国人っぽいのが原因でいじめられてて……目を隠すために前髪も伸ばしてたし、伊達だけど眼鏡も掛けてたんです」
驚きだったのは、彼女がアメリカ人であったことである。
いや、正確に言えば日系とラテンアメリカのハーフか。親の仕事の関係で世界を転々としていたらしかった。
そういえば、最後の辺りに急にいなくなった、と思い出す。このころにはもう、アメリカに帰っていたのだろうか。
「な、成程な……」
「まあ、当時が地味だったのは否定しませんけどね。自分でそうしてましたし。まあ、どっちにしたって——」
ぎゅっ、と彼女はヒナタへ飛び付く。
いきなりでバランスを崩しかけたヒナタであったが、子猫のようにノアは彼にじゃれつき始めた。
「会いたかったです、ヒナタ先輩! えへへ……!」
「おいっ、馬鹿! こんなところで抱き着くんじゃねえ!!」
「……」
「お、おい、コトハ。怒るなよ? 怒るなよ!?」
「いや、別に怒ってなんか無いわよ」
「あ、あれ? 彼女さんでしたか? 後ろの方」
こくこく、とコトハは頷く。
視線には熱が籠っていた。
「ご、ごめんなさい! 嬉しくてつい。確か、如月コトハさん——だったっけ? マナゾーンの魔術師って呼ばれてるすごいデュエリストだって」
「あ、あはは……いや、良いのよ。仕方ないわ。久々の再会なんですもの」
「でも、意外でした。ヒナタ先輩に彼女が出来てるなんて。しかもそんなすごい人と」
「お、おい彼女って——」
「暁先輩と如月先輩、そ、その、そういう関係でしたっけ!?」
「おい馬鹿!! 話が余計ややこしくなるから! 事実は否定しないけど、今はちょっと飲み込んでて!!」
ノゾムとホタルを抑えて、修羅場になろうとするこの場を収めようとするヒナタ。そういえば、この2人にはまだ言っていないままであった。今騒がれたら余計に収集がつかなくなりかねない。
無駄だとは思いつつも、助けを乞おうとヒナタはフジの方を向く。
が、当の彼はなんかすっげー、腹の立つ笑みを浮かべていた。
——この、愉悦部は!!
「あの、如月さん。ちょっと頼みがあるんですけど」
「な、何?」
戸惑いを隠せないまま、コトハは返す。
振り向いたヒナタは、またノアが爆弾を落とすのでは、と内心ヒヤヒヤしていたが——
「——ちょっと今日一日、ヒナタ先輩を貸してくれませんか」
——投下されたのは、やはり50t爆弾であった。
- Act3:ニューヨークの来訪者 ( No.371 )
- 日時: 2016/09/06 23:21
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
「……ヒナタを貸す?」
「だ、ダメだったでしょうか……? 久々だったから、折り入って話したいことがあって」
その場に緊張が走る。
特に、コトハの独占欲が強いことを知っていたニャンクスは冷や冷やしていた。
が——物事とは、案外思ってもない方向に進むものである。
「なーに、言ってんの。わざわざアメリカからやってきてくれたのに。久々に会ったんだから、こいつで良けりゃ思う存分話していって?」
「は、はい! ありがとうございます!」
「……そっか。あんたがヒナタの言ってた昔の仲間の1人か——」
——明るいけど、しっかりしてる目——本当、ヒナタは後輩に恵まれてるわね。
ぱちくり、と意外そうな表情をしたノアは言う。
「やっぱり知ってる……んですか? 。ヒナタ先輩の、そして私達の過去も」
「ああ。俺がコトハに話したんだ」
うーん、と彼女は少し思案した。
そして、何かを決心したかのようにヒナタの袖を引っ張った。
「それじゃあ、行きましょう、先輩!」
***
「……急に情報がいろいろ入ってきて、頭がパンクしてるんすけど……」
ノアがヒナタを連れて去っていった後、ノゾムは壁にもたれ掛って頭を抱えていた。
あはは、と苦笑いを浮かべながらもホタルも頷く。大方、ノゾムと同じ気持ちであった。が、それ以上に——
——あの、ノアって人——カードも強かったし、まして本人のプレイスキルも相当なものでした。あれが、闇の侵略者のカード——星のカードも持っていたみたいですし……。
ノアに興味を抱いていた。
後輩2人がうんうん言う中、レンは落ち着き払った様子で諭す。
「ま、まあ、それについては追々話さなきゃ、って思ってたんだけどね」
「でも良かったんですか? 仮にも付き合ってるのに……」
「何言ってんのよ。あたしもそこまで野暮じゃないわ」
けらけら、とコトハは笑う。
流石に突っ撥ねるのは気が引けたのだろう。わざわざ、あんな遠いところからやってきたのだから。
「——2人も、色々考えた末の結論なのだ。それよりも——まだ話しておかねばならないことがあるだろう?」
「あ、そうでした! クリーチャー、ジャンヌ・ダルクの件!」
「ああ。それについては、俺様もビルから決闘空間の反応を感知して気付いた。かなり強力なクリーチャーの干渉を受けていたみてーだな。マナの大きさがテメェらの英雄を上回っているってどういうことだコノヤロー」
「……ジャンヌ・ダルク? それが今回の事件の犯人なのかしら」
「奴らがマナを吸っていたのは、間違いない。現に、やられたと思われる人が倒れていた。だが、それが黒幕かどうかは」
「あれはおそらく尖兵だとオレは思います。何か、主だとか言ってましたし」
「じゃあ、違うのね」
「にしては、とても強かったがな」
確かに、思い返せばあのジャンヌ・ダルク2体の強さは異常と言えるほどであった。
クレセント、アヴィオールの接近を許さず、ハーシェルも拘束するほどの強力な光のマナ。
さらに呪文まで唱えてきたという手数の多さ。
彼女達単体では、此処までの力は発揮できないはずだ、とフジは言う。
「それと、あの景浦ノアについては警戒するこったな。仮にもアメリカチームの一員だ。普段なら協力を呷ることもやぶさかではないんだがな……」
「でも、ヒナタ先輩の知り合い、っていうかかつての仲間みたいですし、そんなことは」
「さあな。一応、だ。有栖川ツグミの一件を忘れたとは言わさん。奴の持っていたステラアームドのカード——」
フジには確かに”視認”できた。
深い闇のマナに、冥府を司る星の力。
やはり、英雄は各文明に1体ずつ、というわけではなかったのだ。
「——まだ、どんな力を持ってるか、さっぱりだ」
「……やっぱり彼女のカードも武装出来るんでしょうか」
『……ホタル』
「ヒナタ先輩と白陽が武装できない理由は分かってます。でも——私は——」
1人、寂しげに彼女は笑みを浮かべると、「ごめんなさい! 弱気になってたら、らしくないですよね!」と誤魔化して立ち上がる。
「私も特訓しなきゃ。D・ステラはもうすぐなんですから!」
「そうだな、ホタル。ヒナタだって色々模索しているのだ。貴様には目立った理由はない。精進すればすぐに武装も身に着けられるはずだ」
「そうよ、元気出しなさい、ホタルちゃん」
「ですよね!」
「……なあ、ホタル」
顎に手を当てて、考え込むようにしてノゾムは言った。
「……お前、一回一応、武装は出来てるよな?」
周りが静まる。
それ自体は事実だ。かなり不正規な方法ではあったが——
「は、はい……前にアヴィオール、というかアルゴリズムに操られたとき、ですね。その時は、私とハーシェルの精神から無理矢理ステラアームドを引き出したって——」
『ステラアームドを無理矢理引き出した、ですか』
『なになにー? どうしたの、アヴィオール』
『何か分かったのか』
『あの戦いの後、アルゴリズムは消滅しました——ですが淡島ホタル。貴方の持っていたステラアームドが消滅した、とは限らないですよね、それ』
「そ、そういえば——私のステラアームド——《鋼神姫 ドラドルイン》は何処に」
「あの時のホタルの使ってたカード、メカ・デル・ソルが多かったよな」
「はい——まさか」
「……ああ。ジャンヌ・ダルク2機は主の墓穴を掘っちまった事になるな」
浮上した可能性に、ホタルは顔を真っ青にする。
まさか。まさかとは思った。
しかし——此処までの状況から、もはやそれしか考えられない。
悪夢は——血の雨は、まだ降ろうとしているのだ。
「——止めなきゃ——私が……!」
***
「えへへ、変わってないですね、此処!」
「……そーだな」
ノアがヒナタを連れてきた場所は、小学校だった。
海戸第一小。かつて、ヒナタが通っていた小学校だ。
白い校舎に、もうすでに色が変わり始めている木々。今日は休日なので誰も居なく、閑散としてはいるが数年前とこの景色は何ら変わりない。
「……先輩。コトハさんのこと、本当に信頼してるんですね」
「ん、なんでそんなこと言うんだ」
「いいえ。何か、昔のナナカさんとヒナタ先輩を思い出しちゃいました。特に、鎧龍の試合を見てたら——居ても立っても居られなくなって。本当に元気になったなあ、って今の先輩に会いたくなっちゃったんです」
「コトハだけじゃねえよ。俺は、鎧龍に来てからいろんな仲間に出会った。人間じゃねえのも居たぞ。お前と同じだ」
「……そうですか」
「そういや、お前も星のカードを持ってんのか」
「は、はい! 出てきて、ケルス!」
彼女がカードをかざすと、ケルスと呼ばれたクリーチャーが姿を現す。
その姿を見て、ヒナタは目を見開いた。
「犬型——これは」
『貴方が暁ヒナタね』
その声は、女の高いものであった。
ケルスはヒナタを見据えると、さばさばとした態度でいう。
『うちのノアが昔、世話になったみたいね。よろしく頼むわ』
「お、おう……」
「ケルスは元々、インベンテンズが管理していたカードなんです。でも、私が近付いた途端に目覚めちゃって。それから色々あって、今はすっかり私の相棒です」
「なーるほどな。聞いたところによると、闇単使いになったみたいじゃねえか。オール・イエスを使ってた頃とはデッキも変わったもんだな」
「殴りながら手札を破壊するのは、私の十八番なんです。今もそれは変わってませんよ」
「いーや、変わった。ノアはすっげー明るくなった」
ぽん、と彼女の頭に手を乗せると、彼女ははにかんだように笑みを浮かべる。
「……ヒナタ先輩。話は変わりますけど」
「何だ?」
それも束の間。急に真剣な面持ちでノアは言った。
「……侵略については、どう思いますか」
「……」
「今、賛否両論で色々言われてる侵略ですけど——先輩達はそれを止める為に戦ってるんですよね」
「——俺はそこまであれを敵視してるわけじゃねえんだけどな——どうしても、やべえカードがあって、それを食い止めねえといけねえ、ってのはわかるんだ」
「……音速の侵略者、ですか」
「ああ。知ってるみたいだな」
「あれが全ての始まりですからね。あれに比べれば、ほかの侵略者は速さという面で見れば可愛いものです」
でも、とノアは続けた。
「——私達の侵略も負けてはいません。油断していれば、先輩達を轢き潰してやりますよ」
その言葉は、最早自分の知っているノアではなかった。
確かな経験と自信、それが彼女の言葉の裏付けになっている。
生意気ともとれるその言葉に、ヒナタは胸が躍った。こんなに手強いライバルに成長しているとは。
「悲しいかな、カードパワーには、カードパワーでしか対抗できないんです。音速さえも超える私達の侵略——それが貴方達を轢き潰します。それを予告しておきますよ」
「……ああ。楽しみにしてるぜ。デュエマがカードパワーだけじゃない、てことを思い知らせてやる」
かつて、共に歩んだ学校を背に——2人は決闘の誓いを交わす。
その表情は、とても輝いていた。
再戦を誓うライバル同士そのものだったのだ——
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