二次創作小説(紙ほか)
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- デュエル・マスターズ D・ステラ 【侵略世界編】
- 日時: 2017/01/16 20:03
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
【読者の皆様へ】
はい、どうも。二次版でお馴染み(?)となっているタクと申します。今回の小説は前作の”デュエル・マスターズ0・メモリー”の続編となっております。恐らく、こちらから読んだ方がより分かりやすいと思いますが、過去の文というだけあって拙いです。今も十分拙いですが。
今作は、前作とは違ってオリカを更にメインに見据えたストーリーとなっています。ストーリーも相も変わらず行き当たりばったりになるかもしれませんが、応援よろしくお願いします。
また、最近デュエマvaultというサイトに出没します。Likaonというハンドルネームで活動しているので、作者と対戦をしたい方はお気軽にどうぞ。
”新たなるデュエル、駆け抜けろ新時代! そして、超古代の系譜が目覚めるとき、デュエマは新たな次元へ!”
『星の英雄編』
第一章:月下転生
Act0:プロローグとモノローグ
>>01
Act1:月と太陽
>>04 >>05 >>06
Act2:対価と取引
>>07
Act3:焦燥と制限時間
>>08 >>10
Act4:月英雄と尾英雄
>>13
Act5:決闘と駆け引き
>>14 >>15 >>18
Act6:九尾と憎悪
>>19 >>21
Act7:暁の光と幻の炎
>>22 >>23
Act8:九尾と玉兎
>>25
第二章:一角獣
Act1:デュエルは芸術か?
>>27 >>28 >>29
Act2:狩猟者は皮肉か?
>>30 >>31 >>32 >>33
Act3:龍は何度連鎖するか?
>>36 >>37
Act4:一角獣は女好きか?
>>38 >>39 >>41 >>42 >>43 >>44 >>45
Act5:龍は死して尚生き続けるか?
>>48
第三章:骸骨龍
Act1:接触・アヴィオール
>>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55
Act2:追憶・白陽/療養・クレセント
>>56 >>57
Act3:疾走・トラックチェイス
>>66
Act4:怨炎・アヴィオール
>>67 >>68
Act5:武装・星の力
>>69 >>70
Act6:接近・次なる影
>>73
第四章:長靴を履いた猫
Act1:記憶×触発
>>74 >>75 >>76 >>77
Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解
>>78 >>79 >>80
Act3:捨て猫×少女=飼い猫?
>>81 >>82
Act4:リターン・オブ・サバイバー
>>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90
Act5:格の差
>>91 >>92 >>93 >>104
Act6:二つの解
>>107 >>108 >>109 >>110
Act7:大地を潤す者=大地を荒らす者
>>111 >>112 >>113
Act8:結末=QED
>>114
第五章:英雄集結
Act1:星の下で
>>117 >>118 >>119
Act2:レンの傷跡
>>127 >>128 >>129
Act3:警戒
>>130 >>131 >>132
Act4:策略
>>134 >>135
Act5:強襲
>>136
Act6:破滅の戦略
>>137 >>138 >>143
Act7:不死鳥の秘技
>>144 >>145 >>146
Act8:痛み分け、そして反撃へ
>>147
Act9:fire fly
>>177 >>178 >>179 >>180 >>181
Act10:決戦へ
>>182 >>184 >>185 >>187
Act11:暁の太陽に勝利を望む
>>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>193 >>194 >>195
Act12:真相
>>196 >>198
Act13:武装・地獄の黒龍
>>200 >>201 >>202 >>203
Act14:近づく星
>>204
『列島予選編』
第六章:革命への道筋
Act0:侵攻する略奪者
>>207
Act1:鎧龍サマートーナメント
>>208 >>209
Act2:開幕
>>215 >>217 >>218
Act3:特訓
>>219 >>220 >>221
Act4:休息
>>222 >>223
Act5:対決・一角獣対玉兎
>>224 >>226
Act6:最後の夜
>>228 >>229
Act7:鎧龍頂上決戦
Part1:無法の盾刃
>>230 >>231 >>232 >>233 >>234 >>235 >>236 >>239
Part2:ダイチの支配者、再び
>>240 >>241 >>242 >>243 >>244 >>245 >>246 >>247 >>248 >>250
Part3:燃える革命
>>252 >>253 >>254 >>255 >>256
Part4:轟く侵略
>>257 >>258 >>259 >>260 >>261
Act8:次なる舞台へ
>>262
第七章:世界への切符
Act1:紡ぐ言の葉
>>263 >>264 >>265 >>266 >>267 >>268 >>270
Act2:暁ヒナタという少年
>>272 >>273
Act3:ヒナとナナ
>>275 >>276 >>277 >>278 >>279 >>280 >>281
Act4:誓いのサングラス
>>282 >>283 >>284 >>285
Act5:天王/魔王VS超戦/地獄
>>286 >>287 >>295 >>296 >>297 >>298 >>301 >>302 >>303 >>304 >>305
Act6:伝説/閃龍VS獅子/必勝
>>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>323
Act7:青天霹靂
>>325 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>331
Act8:揺らぐ言の葉
>>332 >>333 >>334 >>335 >>336
Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神
>>337 >>338 >>339 >>340 >>341 >>342 >>343
Act10:伝える言の葉
>>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351
Act11:連鎖反応
>>352
『侵略世界編』
第八章:束の間の日常
Act1:揺らめく影
>>353 >>354 >>359 >>360 >>361 >>362
Act2:疑惑
>>363 >>364
Act3:ニューヨークからの来訪者
>>367 >>368 >>369 >>370 >>371
Act4:躙られた思い
>>374 >>375 >>376 >>377
Act5:貴方の為に
>>378 >>379 >>380 >>381 >>384 >>386
Act6:ディストーション 〜歪な戦慄〜
>>387 >>388 >>389
Act7:武装・天命の騎士
>>390 >>391
Act8:冥獣の思惑
>>392
Act9:終演、そして——
>>393
第九章:侵略の一手
Act0:開幕、D・ステラ
>>396
Act1:ウィザード
>>397 >>398
Act2:ギャンブル・パーティー
>>399 >>400 >>401
Act3:再燃
>>402 >>403 >>404
Act4:奇天烈の侵略者
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>411
Act5:確率の支配者
>>412 >>413
Act6:不滅の銀河
>>414 >>415
Act7:開始地点
>>416
第十章:剣と刃
Act1:漆黒近衛隊(エボニーロイヤル)
>>423 >>424
Act2:シャノン
>>425 >>426
Act3:賢王の邪悪龍
>>427 >>428 >>429
Act4:増殖
>>430 >>431 >>435 >>436 >>438 >>439 >>440 >>441 >>442
Act5:封じられし栄冠
>>444
短編:本編のシリアスさに疲れたらこちらで口直し。ギャグ中心なので存分に笑ってくださいませ。
また、時系列を明記したので、これらの章を読んでから閲覧することをお勧めします。
短編1:そして伝説へ……行けるの、これ
時系列:第一章の後
>>62 >>63 >>64 >>65
短編2:てめーが不幸なのは義務であって
時系列:第三章の後
>>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103
短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル)
時系列:第四章の後
>>120 >>121 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126
短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日
時系列:第四章の後
>>149 >>150 >>153 >>154 >>155 >>156
短編5:恋情パラレル
時系列:第四章の後
>>157 >>158 >>159 >>160 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>173 >>174 >>175 >>176
短編6:Re・探偵パラレル
時系列:平行世界
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422
エイプリルフール2016
>>299 >>300
謹賀新年2017
>>443
登場人物
>>9
※ネタバレ注意。更新されている回を全部読んでからみることをお勧めします
オリジナルカード紹介
(1)>>96 (2)>>271
※ネタバレ注意につき、各章を読み終わってから閲覧することをお勧めします。
お知らせ
16/8/28:オリカ紹介2更新
- Act10:決戦へ ( No.187 )
- 日時: 2015/10/10 17:31
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)
***
クリーチャーの攻撃をニャンクスが1人で何とか振り払い、武闘財閥のワゴン車は目的地へ着々と向かっていた。
コトハが、1人で戦っている彼女に声をかける。そろそろ疲労が溜まってきた頃ではないか、と。
「大丈夫? 一旦下がっても良いのよ? 白陽が行ければだけど、それでも少し心配だわ」
「問題ないのですにゃ! 僕はまだまだ行けますにゃ!」
「今回の今回で完全に決着付けるために、皆張り切ってやがるな……」
「気概があるのは良い事なんだけどね……」
次の瞬間、ぐいっ、とコトハの指がヒナタの頬を抓った。
「あんたも含めて無茶しすぎなのよ! 単騎特攻!? ふざけんじゃないわ、ノゾムもノゾムだけど、あんたもあんたで死ぬ気なの!」
「いだだだだだだだ!! は、ははへ、ほほは!!」
「はいはーい、いちゃいちゃしなーい」
淡々とした声で助手席のフジは冷やかすが、
『いちゃいちゃなんかしてなぁぁぁい!!』
やっぱり仲良いんじゃねえかコイツら、と彼は内心突っ込んだのだった。
「そういえば」とコトハは言った。
「あんたのデッキに合いそうなカード、渡しておくわ」
「は?」
「今のあたしのデッキには合わないしね」
そういって、彼女はヒナタに1枚のカードを渡す。
そのカードを見て、彼の目は丸くなった。
「お、おい、これって……」
「勘違いしないこと!! あんたに負けられたら、迷惑だから!!」
「い、いや、そうは言うがな……」
「レンの」
はっ、と戸惑う彼は我に返った。
「レンの命がかかってるんだから……!」
「……そうだったな。サンキュ、コトハ」
「お礼は勝って返しなさい。カードも使い手次第で紙切れになるんだから」
その光景を、「はいはい爆ぜろ爆ぜろ」と悪態をつきながらフジはタブレットで、マップの解析結果を調べていた。やっぱり仲良いんじゃねえか、と。
さて、ここら1帯は結界で覆われており、他に生命反応は見当たらない。
——む?
と思われた矢先、彼は1つの反応を見つけた。火文明のクリーチャーだ。それも、とても強力な。とっさに、1つの単語が浮かぶ。
——不死鳥座か——!?
しかし。それはすぐに消えてしまう。反応も純粋な火だったことから、バグでも起こしたのだろうとフジは判断した。ソウルフェザーは火と自然のクリーチャーだったからだ。
——まあ、仕方あるまい。これに、これ以上の品質を求めるのは逆に酷だ。ただでさえ、異世界の力の探知などという無茶をさせているのに。
「到着致しました」
そんなことを考えているうちに、運転手の声が響いたのだった。
場所は、開けた広場だった——
「お前は此処で待っていろ」
「かしこまりました。皆様の勝利をお祈りします」
「あ、ああ……此処までありがとうございました」
「いえ。それが私の仕事ですので……」
***
水の出ない噴水の前に。
骨で全身を固めた龍のクリーチャー、竜骨座を司るアヴィオールの姿がそこにあった。
全員は身構えた。いつ、何をしてくるか分からない。
そんな不気味さを彼は持っていた。
「これはこれは……今度は4人でやってくるとは……忌々しい兎座の少年は居ないようですが」
余裕ぶった態度で彼は言った。しかし。問題は数ではなく、面子だ。
いない。自分を散々苦しめてくれたノゾムが居ない。
それを察したかのようにヒナタは挑発した。
「てめぇなんざ、俺の白陽だけで十分だ」
「へーえ。大した余裕ですねぇ。折角、貴方が闘わないようにしてあげようと思っていたのに」
「黙りなさい。レンも、連れ去られた人々も、皆返して貰うわよ!」
「ま、てめーの悪行は海戸から見れば邪魔以外の何モンでもねーんでな。とっとと浄化してやる、覚悟しやがれ」
ヒナタ、コトハ、フジの3人が前に進み出る。ニャンクスもコトハの肩につかまり、完全に臨戦態勢となっていた。
しかし。それでも尚、目の前の骨龍からは緊張感というものが全く感じられない。
かなりの精神的余裕を持っていたようだ。
何かを隠し持っているようにしか見えない。此処まであからさまだと。
「何でも良いが、アンカの奴は今回はいねーのか?」
「今回は私の独断です。我らは利害の一致で動いているだけですので」
「となると、よっぽどの自信のようね。あんたが持っている隠し玉の力ってのはどれくらいの力を持っているのか知らないけど」
「まさか、人質だなんてコスい手を使うんじゃあるめーな、この髑髏野郎」
ふふ、と不気味な笑みをやめない彼は答えた。
「当たらずとも、遠からず……でしょうかねぇ……ククク……クカカカカ」
言った彼は、マントをばっ、と翻した。
全員は目を見張った。
「この少年……なかなかの闇の持ち主ですよ……心の中が憎悪と邪念で穢れきっていて最高ですねぇ……!!」
アヴィオールが愉悦の極みに立った表情で喋りたてる中、ヒナタ達の表情は愕然以外の何者でもなかった。
「お、おい、嘘だろ!?」
「あ、ありえないわ! 何であいつが此処に……!」
「こいつぁ、面倒な事になりやがったぜ……!」
驚くのも無理は無い。
マントから現れたのは——間違いなく、黒鳥レンそのものであった——
「ふ、ふざけんじゃねえ!! ホタルに留まらず、レンまで——!!」
「おやあ? お知り合いだったんですかあ? 道理でこの方、”貴方への憎悪”がお強いはずだ」
「なっ……!?」
レンが自分のことを憎んでいる、と言いたいのか。
そんなわけはない、と脳内で否定しようとするヒナタ。しかし、心当たりが無いわけではないというか、ありすぎるというか……。
とはいえ、それでも此処まで邪悪に囚われる程かというと微妙なところであるが。
「レンに何したのよ! 言いなさい!」
「何。これは彼の意思……彼の劣等感が、力への執着が、そして暁ヒナタ。何よりも貴方への憎悪が生んだ結果なのですよ!」
「俺の動揺を誘ってんのか? んな安っぽい手ェ、通用するかってんだ!」
「僕は今頃幸せだったろう——貴様にさえ会っていなければな」
言葉を、発した。レンが。
しかし、それは余りにもヒナタにとってはショックだった。嘘だ。嘘のはずなのに。
何故か、これが嘘のようには聞こえなかった。
「お、おい、何を言っているんだよレン……! お、俺達仲間だよな!? そうだろ!?」
「ああ、貴様がそう思っているなら、そうなんだろう。”貴様の中”ではな」
——!!
衝撃が、ヒナタの中で走った。
心臓を釘で刺されたような痛みだった。
「レン! 目を覚まして!」
「正気に戻るのですにゃ!」
「うっとおしい……何故……いつも、いつも僕ばかり……!」
次の瞬間、レンが右腕を掲げる。
そこから、じゃらじゃらと音を鳴らし、漆黒の鎖が服の袖口から現れた。
それは、罪の鎖であった。
見境が無い他人への純粋で邪悪な”嫉妬”。
被害者になろうとすることで、自らを正しいと信じて疑わない”傲慢”さ。
自らのためなら他人の幸福さえも貪り食い尽くしても構わないという”暴食”の精神。
ただただ強く、それを欲しいと請い続ける”強欲”さ。
余りにも欲しいと望むが故、王道に進まず、邪道に落ちた”怠惰”の意思。
理不尽で不条理かつ自分勝手な仲間への”憤怒”。
そして、それらを括るならば、常軌を逸した”渇望”であった。
今、黒鳥レンという少年を支配していたのは、最早アヴィオールではない。
七つの大罪を全て合わせても足りない程に強い、邪悪な憎悪であった。
それを前にし、ヒナタ達は足が竦んでしまう。
次の瞬間——罪の鎖が、飛んだ。長い。本当に彼の袖口にあったものなのか、と疑うほどに。
そして、勢いよくそれらは真っ直ぐ飛んでいく。
一瞬で、コトハ、ニャンクス、フジは鎖でぐるぐると体を何重にも巻き付けられ、自由を奪われ、地面に押えつけられた。
「っ……!! いたたた……!!」
「すっごい硬いのですにゃ!! まさか、強化した肉体で砕けないなんて!!」
「畜生!! まさかこんなことになるとは!! 黒鳥の奴、本気でヒナタをサシで潰すつもりか!!」
ヒナタは息を呑んだ。
レンの顔は、今までのそれとは比べ物にならないほど凄まじかった。
「貴様はこの手で直接葬ってやる。それが僕の渇くほど抑え切れない望み……貴様の命をこの手で奪い、食らうことで僕の欲求は満たされる。来い。世界で一番、一番、憎たらしい、僕の”敵”」
この言葉は幻のはずだ。アヴィオールに洗脳されているからだ。そう思っていても、駄目だった。
——何でだよ——!! 何で、こいつの言ってることが、全部本当に聞こえるんだよ!! アヴィオールに操られてるはずなのに!!
「これが、彼の言葉ですよ。完全に嫌われましたね——」
『ヒナタ!!』
アヴィオールの言葉を断ち切るように。
低く、吼えるような声が彼の意識を引き戻した。
その声の主の名を呼ぶ。
「白陽!? 今起きたのか!?」
『状況は察した。どうやら、黒鳥レンがアヴィオールの奴に……!』
「ああ……! すっげーやばそうだ……!」
『呑まれるな、ヒナタ。その上で自分が何をするべきか考えろ!』
「分かっている!! 俺に出来ることは、これしかねえ!!」
40枚のカードで出来た紙の束。
それで魂と魂をぶつけ合うこと。これしかヒナタには出来なかった。
「無粋な……人が話しているときに……! 黒鳥レン、君の力を見せてやりなさい!! この僕と共に!!」
「承知した。貴様の力、この僕が預かった」
アヴィオールのカードが、レンの持つデッキに入っていく。
これで互いに準備は整った。
「ヒナタ!! 絶対に勝ちなさい!! 負けたら許さないんだから!!」
「ファイトですにゃ!! 絶対、ヒナタ様と白陽様なら勝てますにゃ!!」
「叩きのめしてやれ!! そして、黒鳥の奴を意地でもこっちに引き戻すんだ!!」
仲間の声が聞こえる。それを無下には出来なかった。
決意と共に、ヒナタは決闘空間を開いた——
「勝負だレン!! お前の目を覚まさせてやる!!」
- Act11:暁の太陽に勝利を望む ( No.188 )
- 日時: 2015/10/08 02:58
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)
***
ノゾムとホタルのデュエル。現在、ノゾムの場には《アクア操縦士 ニュートン》
一方のホタルの場には《墓守の鐘 ベルリン》、《強欲ジェラシー・シャン》の2体が並んでいた。
——幾らブロックされない《ニュートン》でも、殴り返されるのはキツい……! 手札を増やしていくしかねぇか。
「オレのターン! 《ニュートン》をもう1体召喚して、マナ武装3で1枚カードを引き、ターンエンドだ!」
——うっ!?
次の瞬間、猛烈な吐き気が襲い掛かってきた。がくり、と膝が折れて胃の中のモノを全てぶちまけてしまいそうになる。
何とかそれを押えつけ、ぎりぎりのところで起き上がる。
——くそっ、これで判断ミスるとか、冗談じゃねーぞ!!
『ノゾム、大丈夫……じゃないよね』
「ああ……だからとっとと終わらせる!」
「終わらせられれば良いですね」
ふふっ、とホタルは軽薄な笑みを浮かべた。
眼鏡をくいっ、と押し上げると言った。
置かれるは、自然のマナ。それを含んだ合計5枚がタップされた。
「でも、そんなに早く終わったら……つまらないじゃ無いですか、ノゾムさん……私はもっと愉しみたいのに……!!」
ぞくり、と悪寒が襲い掛かった。
凄まじい闇の気配が、彼女の手札に眠っている、と直感が知らせたのだ。
「まずは、呪文《超次元 フェアリー・ホール》!! マナゾーンにカードを1枚置き……そして、《タイタンの大地 ジオ・ザ・マン》をバトルゾーンに!!」
タイタンの大地ジオ・ザ・マン UC 自然文明 (6)
サイキック・クリーチャー:ガイア・コマンド/エイリアン 5000
自分のターンの終わりに、カードを1枚、自分のマナゾーンから手札に戻してもよい。
「ターン終了……と、そのときにカードを1枚私のマナゾーンから回収します。《超次元 マザー・ホール》を手札に。ターンエンドです」
自然の入るコントロールデッキに《ジオ・ザ・マン》はデッキの動きを円滑にする安定剤としてしばしば重宝される。
更に、《フェアリー・ホール》と組み合わせることで、マナを減らさずにカードを回収することができたのだった。
次のターン、何もしなければ間違いなく《マザー・ホール》は飛んでくる。それだけは阻止したかった。
しかし、それが出来るカードは今、彼の手札には無い。
「くっ……!」
引いたカードも、求めていたそれではない。悔しさと苦しさに顔を歪ませながら、彼はマナをタップする。
「呪文、《ブレイン・チャージャー》! カードを1枚引いて、チャージャーでこれをマナゾーンに! ターンエンドだ!」
「さっきから手札補充しかしていないじゃないですか。まあ、そういう堅実なところも好きですけどね。ノゾムさん?」
『好い加減にしなさい! ノゾムを惑わせるなんて、許さないんだから!』
「お、オレは大丈夫だから、クレセント……! 今のホタルに呑まれるわけにはいかねぇからな!」
とか言いつつ、彼の心臓は未だバクバク鳴っていた。今、こうして酷い目に遭っているとはいえ、さっきのキスの味が記憶に焼き付いて離れない。
——畜生!! こんなときに何考えてんだよ、オレは!!
それを振り払い、彼はターンを終えた。
「本当に強情ですね……まあ、良いですよ。ここらで分からせてあげます」
艶のある声で彼女は言った。
そして、6枚のマナをタップした。メインとなるのは光。しかし、今は金メッキの放つような偽りの光のようにくすんでいた。
「《超次元 マザー・ホール》! 超次元ゾーンから、《光器 セイント・アヴェ・マリア》をバトルゾーンに!」
超次元マザー・ホール UC 光文明 (6)
呪文
進化ではない光の、「ブロッカー」を持つクリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出す。
コスト6以下の光、水、自然いずれかのサイキック・クリーチャーを1体、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出す。
光器セイント・アヴェ・マリア ≡V≡ 光文明 (6)
サイキック・クリーチャー:メカ・デル・ソル/ハンター 5500+
ブロッカー
ブロック中、このクリーチャーのパワーは+2000される。
自分のターンの終わりに、バトルゾーンにある自分のハンター・クリーチャーをすべてアンタップする。
神々しい光と共に天空から舞い降りたのは、龍滅の女神を模した太陽の兵器、メカ・デル・ソル。そして、その1角である《セイント・アヴェ・マリア》だった。
美しい。余りの美しさに目が眩んでしまう程だった。
「そして!! これだけでは終わりませんよ!! 《マザー・ホール》の効果で、手札より私の新たなる力をバトルゾーンに!!」
《マザー・ホール》が呼び出せるのは、サイキック・クリーチャーのみでは無かった。光のブロッカーを1体、更に手札からバトルゾーンに出すことが出来るという効果も付いているのだ。
まさにそれは、聖なる超獣を呼び寄せる聖なる女神の門。
しかし。
今回ばかりは違った。
「!?」
ノゾムは天空に浮かぶ門を、思わず凝視した。
暗雲が立ち込めていく。
変貌には時間をそれほどかけなかった。一瞬で、女神の門が、禍々しい地獄の門へと化したのだ。
『うおおおああああああーっっっ!!』
咆哮。おぞましく、空気を裂き、肌さえも破いてしまいそうなほどに空間が振動した。
門から、雨のように鮮血が流れ、黒い雷が迸る。
そして、門は開いた。
天空さえも貫く一角馬が。
黒く、黒く、ただただ黒く。美しかった純白の身体は、もうそこには無い。
目に痛い程にギラついた黄金の装甲、邪悪そのものと言える漆黒の体。
雄雄しい角は、ドリルのように醜く、そして鋭く渦を巻いていた。
瞳は、純潔を穢すことのみに囚われた、純潔を司る本来の一角獣のそれとは掛け離れたものになっており、ノゾムもクレセントも、真っ当な精神で、それを見つめ続けることは出来なかった。
そして、遂に。今までおぼろげでしかなかった一角獣の姿が、完全にこの空間で質量を得て、実体化した——
「色欲に塗れし邪悪な一角獣よ、星の力を受けて今此処に!!
その怒りに触れし愚者を血に濡れた一角で皆殺しにしなさい!!
現れよ、《惨劇の一角星 ハーシェル・ブランデ》!!」
- Act11:暁の太陽に勝利を望む ( No.189 )
- 日時: 2015/10/12 01:42
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)
****
ヒナタとレンのデュエル。
現在、レンの場には《解体人形 ジェニー》のみ。しかし、《ボーン踊り・チャージャー》で墓地とマナを増やしていた。
一方のヒナタの場には何もいない。しかも、キーカードの《ジェット・ポルカ》が早速、《ジェニー》に落とされて、動きは落ちていた。
「俺のターン……! 《禍々しき取引 パルサー》召喚! 俺の手札はもう無いから、2枚ドローだ!」
「まだ足掻くのか。殊勝なことだな、ヒナタ」
「諦めねぇぞ……! これしきで諦める程、ヤワな戦いは経験してねぇ!!」
『我らの力、見せてやる!!』
「ふん。闇に墜ちた僕が脆弱だとでも言いたい口振りだな」
「ち、違っ」
「良いさ」と冷たく彼は言った。
「謝罪も、同情も、何も要らない。僕は貴様を今度こそ、この手で葬ってやる……そう決めたのだからな!! そのためならば、手段は選ばない、選ぶつもりはないっ!!」
ぎりっ、と拳を握り締めたレンの瞳は復讐に染まっていた。
「貴様の罪を数えろ……僕を幾度と無く不幸な目に遭わせたその罪を!! 運命のあの日、貴様がいなければ、今頃僕は平穏に過ごすことが出来たはずだ!! 忌々しい無法の力を持つ貴様がこの世界に居なければなぁぁぁーっ!!」
1枚のカードがマナゾーンに置かれた。
それは、《アヴィオール》のカードだった。
『おや? 僕はお役御免ですか?』
「こいつは僕に殺させろ。その代わり、貴様には”あのカード”に死神の儀式を行うという役目がある」
『ふふ、覚えてくださって何より』
——アヴィオールのカードは使わないのか?
しかし、それでも彼はアヴィオールを使って何かをしようとしているようだった。
冷や汗が伝った。まだ、何かを隠しているのか、と。
「5マナを払う。《墓標の悪魔龍 グレイブモット》を召喚!!」
「っ……!!」
「効果で貴様のサイキックのパワーは−5000。更に登場時に山札の上から2枚を墓地に送るブロッカーだ」
『気をつけろ、ヒナタ。何かの下準備だろう……!!』
「ああ、あいつが墓地を貯めてロクな目に遭った試しがねぇからな……!!」
墓地に落ちたのは、《黒神龍 グール・ジェネレイド》と《地獄門 デス・ゲート》だった。
墓標の悪魔龍 グレイブモット P 闇文明 (5)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 4000
ブロッカー
このクリーチャーは攻撃することができない。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から2枚を墓地に置いてもよい。
バトルゾーンにある相手のサイキック・クリーチャーすべてのパワーは-5000される。
「僕はあくまでも、貴様を殺すつもりで行く。もう、貴様の知っている黒鳥レンは、存在しない。脆弱だった頃の僕はもう、居ない」
「あー、そーかよ……分かったぜ」
しかし。そんなこと、最早彼には関係無かった。
「何なら、こっちも本気でてめぇを潰す!! 後悔するほど全力でなっ!!」
彼の言葉は、ある意味ヒナタの迷いを吹っ切らせてくれた。
仲間と戦うということに戸惑いを少なからず感じていたヒナタの迷いを。
サングラスを掛け、完全に本気モードに入った彼の瞳は燃えていた。
「4マナで、《爆轟マッカラン・ファイン》を召喚! ターン終了だ!」
「マナ武装で味方にスピードアタッカーを追加するクリーチャーか。まあ良い……そんなことは関係ない。全て消し飛ばしてやる」
ギラリ、と彼の瞳が光る。
また彼のマナゾーンに、カードが置かれる。
しかし。それは、火文明の《偽りの名 バザガジー・ラゴン》だった。
——火文明!? どうするつもりだ!? 闇単じゃねえのかよ!?
驚くヒナタを他所に、彼はマナの6枚をタップする。メインとなるのは火。それも、咎人を裁く地獄の炎だった。
「貴様の罪を数えよう……呪文、《龍秘陣 ジャックポット・エントリー》!!」
現れたのは、炎龍の秘伝の陣。そして、そこから漆黒の悪魔が現れる。そう。かの不死鳥座の少年、アンカも同様の呪文を使っていた。
レンの山札から4枚が展開され、彼に見せられる。
そして、彼はその中から1枚をバトルゾーンへ送り込んだ。
「罪を罰し死神よ、荒ぶる龍と成り、漆黒の蹄で命を踏みにじれ。生死の法則を乱す契りを今此処に!! 《邪蹄の悪魔龍 ベル・ヘル・デ・リンネ》召喚!!」
邪蹄の悪魔龍 ベル・ヘル・デ・リンネ VR 闇文明 (7)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 6000
相手のクリーチャーが破壊された時、自分の山札をシャッフルする。その後、上から1枚目をすべてのプレイヤーに見せる。そのカードが進化ではないドラゴンであれば、バトルゾーンに出す。それ以外であれば、相手は自身の手札から1枚選び、捨てる。
W・ブレイカー
現れたのは、牛のような角を生やし、更に胴にも同じような顔を持つ龍だった。
彼の者の蹄に踏まれた土地に清らかな生命は生まれない。
何故ならば、《ベル・ヘル・デ・リンネ》が全て滅ぼし、悪魔龍へと命を変えてしまうからだ。
「ターン終了……」
そして、火文明を使ったと言う事に対しても、元々彼は無色に火を組み込んで使っていたので然程驚くことではなかった。
しかし。不死鳥座の男に似た戦法を使っているということに、やはり彼がもう、自分の知っている黒鳥レンではないことを改めて噛み締める。
——馬鹿野郎がっ……!!
「俺のターン! 《爆竜 GENJI・XX》召喚し、そして攻撃!!」
そして、と彼は告げた。
「ブロッカーの《グレイブモット》を破壊だ! W・ブレイク!」
ブロッカーが消滅した今ならば攻撃を通すことは容易い。
そのまま2つの十字刃がレンのシールドを2枚、切り裂いた。
破片が飛び、彼の頬を切り裂く。
しかし。それでも彼は動揺しなかった。
「ターンエンドだ!」
「ほう。だが、迂闊だったとしか良いようが無いなヒナタ!!」
彼の顔は怒っていた。
どこまでも、どこまでも、怒っていた。
「貴様を殺す」
そう、冷酷に、残酷に宣言すると、彼は4枚のマナをタップする。
そして、地面から現れたのは屍の龍だった。
「《黒神龍 アバヨ・シャバヨ》召喚!! 効果で、《アバヨ・シャバヨ》を破壊し、貴様もクリーチャーを破壊しろ!」
「くっ、《パルサー》を破壊だ!」
次の瞬間、鎖が飛び、《パルサー》を地面に沈めた。
息をつかせぬまま、彼の地獄のコンボは連鎖していく。
「僕のドラゴンが破壊されたので、墓地の《グールジェネレイド》の効果発動!! 現れよ、《黒神龍 グールジェネレイド》!!」
黒神龍アバヨ・シャバヨ P 闇文明 (4)
クリーチャー:ドラゴン・ゾンビ/アンノイズ 4000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のクリーチャーを1体破壊してもよい。そうした場合、相手は自身のクリーチャーを1体選び、破壊する。
黒神龍グールジェネレイド SR 闇文明 (7)
クリーチャー:ドラゴン・ゾンビ 6000
自分の《黒神龍グールジェネレイド》以外のドラゴンが破壊された時、このクリーチャーが自分の墓地にあれば、このクリーチャーをバトルゾーンに戻してもよい。
W・ブレイカー
「そして」と彼は続けた。闇を纏って現れた屍の龍に続き、《ベル・ヘル・デ・リンネ》が大地を殺す。死んで荒れた大地に群がるのはドラゴン。
つまり、そこから更なる龍が現れるのだ。
「貴様のクリーチャーの破壊をトリガーにし、《ベル・ヘル・デ・リンネ》の効果発動。僕の山札をシャッフルし、そして一番上のカードを表向きにする! それがドラゴンならば——バトルゾーンに出しても良い」
「——!!」
現れろ、と彼は山札の一番上のカードを捲った。
そのカードは、彼が知るカードでもあった。
傷を負った黒き龍。
正義のために戦い続ける龍。
たとえ、闇に墜ちても誰よりも仲間を、絆を重んじる龍。
「——《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》——!!」
それは、レンが闇に転向する決意を固めた理由のカードだった。
そのことはヒナタも知っていた。
しかし。そのカードは既に、”何か”に変わりつつあった。
『このクリーチャーは生まれ変わりますよぉぉぉ!! 黒き龍を真の悪魔龍へと変貌させる、それが死神の儀式!!』
「……思い出など、仲間など、悲しみを生む原因以外の何者でもない。僕の憂いの原因以外の何者でもない!!」
彼の手に、《リュウセイ》のカードが渡った。
そして、彼は手に取ったそのカードを掌で包むと——
ぐしゃり
——躊躇いなく、容赦なく握り潰した。
「なっ……!?」
『一体……、何故こんなことを!?』
驚くなというのは、無理な話だった。
相手がデュエリストの命と言えるカードに、自ら手を掛けたのだ。
それも、彼にとって、最も大切な闇のカードに。
”彼女”との最後の思い出のカードに。
ヒナタは、その光景に怒りよりも先に衝撃が走る。
口を恐る恐る開けながら、言った。
「ふ、ふざけてんのかテメェ……!!」
「ふざけている? 僕は至って本気だ。何故ならば。死神の儀式を完成させるには、過去を否定し、今へ進む覚悟が無ければならないからな——!!」
ぼろぼろになった《リュウセイ》のカードだったが、次の瞬間に闇文明の紋章が現れる。
見れば、マナゾーンの《アヴィオール》が何かをしていた。
『完成しますよ!! 最凶の、悪魔が!!』
「前に進むと言う事は、過去を否定すること。それが、どんなに大切であっても、勝利という、貴様を殺す結果に繋がるならば!! 過程や方法など、関係は無い!!」
「や、やめろ……!! 何で、何でそんなことが出来るんだよ!!」
しかし。ヒナタの悲願叶わず。レンは容赦なく、新たなるそのカードの名を呼ぶ。
「数多の時を流れし、流星よ——」
そして、それは生まれ変わっていく。
正真正銘の、悪魔に。
「今こそ、自らを戦いに駆り立てる世界に復讐を——」
ぐっ、と彼は拳を握った。
力強く。新たな悪魔に闇の命を吹き込むように。
そして。
ただのカードでしかなかったモノは、決闘空間にクリーチャーとして質量を得た——
「そして貴様に最も惨めで哀れな、悪魔の罰を——《永遠の悪魔龍 デッド・リュウセイ》」
- Act11:暁の太陽に勝利を望む ( No.190 )
- 日時: 2015/10/16 05:42
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)
永遠(とわ)の悪魔龍 デッド・リュウセイ SR 闇文明 (8)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 8000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手のクリーチャーを1体破壊する。
W・ブレイカー
このクリーチャーまたは他のクリーチャーが破壊された時、カードを1枚引いてもよい。
その龍は、鋭く尖った赤黒の爪を持ち、煉獄の炎と化した鬣、禍々しい左の翼を携え、そして本来右の翼がある部分は悪魔の手と成っていた。
下半身も邪悪な悪魔龍の顔となっており、完全なる闇に墜ちたことを意味していた。
最も惨めで哀れな罰。
それは、このクリーチャーが望まない形で悪魔と成ってしまったこと。
そして、かつての持ち主の友に牙を向けることになってしまったことだろうか。
レンは憎んだ。自らの心を縛る過去を。
彼女との最後の思い出である《リュウセイ》もまた、理不尽な断罪の対象であったのだ。
「これで、《リュウセイ》は完全に悪魔へと墜ちた……そして、僕の従順な下僕となった!! 覚悟しろ、ヒナタ。こいつが現れたが最期、まずは《GENJI》を破壊する!!」
悪魔の手が、《GENJI》の身体を一瞬で貫いて破壊する。
そして、その魂が《リュウセイ》の元へと引き寄せられた。
「悪魔に殺された者は冥界に行くことすら出来ずに、永遠と暗黒空間で苦痛を受け続ける……この世に生を受けたことそのものが罪ならば、それが最大の罰となる。《リュウセイ》の効果で、魂の知識は僕の元へ。カードを1枚ドローだ」
「おいおい、大層な事を言った割には、あんまり大したことねぇじゃねえか」
「果たして本当にそうかな? 死は連鎖するのだよ!! 今ので、貴様のクリーチャーが再び死んだ——《ベル・ヘル・デ・リンネ》の効果が再び発動する」
「——なっ」
再び、フィールドは混沌の大地と化した。
レンは山札を再びシャッフルし、一番上のカードを見せた。
それは——ドラゴンだった。
「——《真実の名 ゼッキョウ・サイキョウ》を召喚」
真実の名 ゼッキョウ・サイキョウ VR 闇文明 (9)
クリーチャー:ドラゴン・ゾンビ/アンノウン 11000
ブロッカー
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から3枚をすべてのプレイヤーに見せる。その中から好きな枚数のドラゴン・ゾンビとトライストーンを、自分の手札に加えてもよい。こうして加えたカード1枚につき、相手は自身のクリーチャーを1体選んで破壊する。その後、それ以外のカードを好きな順序で自分の山札の一番下に置く。
スレイヤー
W・ブレイカー
現れたのは、スレイヤーのブロッカーにして、相手を崩壊させる力を持つ屍龍だった。
山札の上から3枚が捲られた。
「効果により、捲った3枚の中のドラゴン・ゾンビかトライストーンを手札に加える。《グールジェネレイド》を手札に。そして、貴様は、その数だけクリーチャーを選んで破壊する」
「くっ……! 《マッカラン》を破壊……!」
「しかも、こいつはスレイヤーのブロッカーだ。そして、《リンネ》の効果で山札をシャッフルして1枚を表向きに——ドラゴンではないか」
呟いたレン。どうやら、ドラゴンではなかったようだ。
しかし。次の瞬間、ヒナタの手札が飛んだ。
「まあ、手札は《リンネ》の効果で破壊させてもらうがな」
「くそがっ……!」
クリーチャー全滅。手札もぼろぼろ。
しかも、スレイヤーのブロッカーにより、ヒナタは更に攻撃をしにくくなってしまう。
完全に、押されていた。
「ターンエンドだ」
ヒナタは舌打ちした。1ターンの間に、何体ものドラゴンが現れてしまうとは、流石に予想外だった。
正直、かなり厳しい。ヒナタのデッキには、まともな防御手段が除去呪文を除いて殆ど無いのだ。火文明デッキの宿命である。
——だけど、元々あいつの戦法は《修羅丸》による連ゼロだったから驚くことでもねぇか……!
『どうする、ヒナタ』
「武装が無くたって、変な儀式に頼らなくたって、勝てるってことを証明してやるぜ!! 俺のターン、ドロー!!」
カードを引いたヒナタは、手元に来たそれを、逆転への一手と確信する。
迷わず、それを唱えた。
「呪文、《天守閣 龍王武陣》! 効果で山札の上から5枚を見るぜ!」
捲られる5枚のカード。《熱血龍 バクアドルガン》、《シンカゲリュウ・柳井・ドラゴン》、《ネクスト・チャージャー》、《怒英雄 ガイムソウ》、《めった切り・スクラッパー》——彼は迷いと躊躇いを振り切り、《ガイムソウ》を手にした。
「マナ武装5で、《ガイムソウ》を手札に! そして、《ベル・ヘル・デ・リンネ》を破壊だ!」
「《リュウセイ》の効果で1枚ドローだ」
味方を破壊されても、その魂を意地汚く貪る《リュウセイ》。
その姿は、完全に大罪を刻まれた悪魔に墜ちてしまったようだった。
虚しい気持ちが募る。これが、彼が本当に望んでいた展開なのだろうか。
「……ターン終了」
「まだ足掻くのか。潔く諦めれば楽に死なせてやろうと思ったのに……僕のターン」
彼は8枚のカードをタップする。そして。
今度は溶岩と共に、赤き鎧龍がその姿を現した。
「《竜星 バルガライザー》召喚!! 此処から更にドラゴンに繋げてやる!!」
「やべえ……!!」
《バルガライザー》は攻撃するたびに、ドラゴンを山札の一番上から呼び出せるドラゴン。
しかし、それだけではない。
バトルゾーンに出たターンに攻撃できるスピードアタッカーのW・ブレイカーでもあるのだ。
「貴様の罪を1つ1つ数えていくとしよう……このターンでお終いだ、暁ヒナタ!!」
ヒナタは場を見渡した。既に、ここには自分を倒せるだけのクリーチャーが揃ってしまっていた。
《ジェニー》、《ゼッキョウ・サイキョウ》、《グールジェネレイド》、《バルガライザー》、《デッド・リュウセイ》——打点は完全に足りている。
「スピードアタッカーの《バルガライザー》で攻撃!! 効果により、山札の一番上を墓地に置いて、それがドラゴンならばバトルゾーンに出す——《黒神龍 オドル・ニードル》を召喚!!」
「ま、また、ドラゴン……!!」
竜星バルガライザー P 火文明 (8)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン/サムライ 7000
スピードアタッカー
このクリーチャーが攻撃する時、自分の山札の上から1枚目をすべてのプレイヤーに見せる。そのカードが進化以外のドラゴンであれば、バトルゾーンに出してもよい。
W・ブレイカー
黒神龍オドル・ニードル P 闇文明 (6)
クリーチャー:ドラゴン・ゾンビ 5000
S・トリガー
バトルゾーンに出す時、このクリーチャーはタップして置く。
相手のクリーチャーは、もし攻撃するのであれば、可能ならこのクリーチャーを攻撃する。
このクリーチャーがバトルする時、バトルの後、このクリーチャーと相手クリーチャーを破壊する。
「入学したあの日——貴様は僕に出会った。それが僕の運命を狂わせた!! 平穏に過ごそうと思っていた僕の運命をなぁぁぁーっ!!」
《バルガライザー》の太刀が振るわれて、シールドが2枚、砕け散った。
更に次の瞬間、レンの袖口から2本の鎖が飛ぶ。
それが——肉を穿つような音と共に、ヒナタの右肩と右の太ももを貫通した。
正気を失わせるような激痛が、彼を襲った。
「うおおおおあああああああああああああ——っ!!!!!!」
目に涙が浮かぶ。そして、ひたすら続く激痛。
手札が零れ落ちた。ただただ言葉にならない絶叫をあげることしか、ヒナタには出来なかった。
「安心しろ。この空間から生きて出られたら、それらは全て無かったことにしてやる。無事に生きて出られれば、つまりこの僕に勝てればの話だが」
「あ、ぎぎぎ……!!」
『ヒ、ヒナタ!! お、おい!! あ、あああ……』
流石の白陽も掛ける言葉がなかった。
見れば、鎖の切っ先に鋭く尖った、槍先、つまり矛のようなものが付けられており、これが貫通させたのだと言う事は白陽にも容易に分かった。しかし、それには抉るようなささくれが出来ており、肉を傷つけるためだけに出来たことも明らかだった。
——こ、これが友にすることなのか、黒鳥レン——!!
彼の行為に激しく怒りの念を燃やす白陽。
しかし間もなく。
「《グールジェネレイド》でシールドをW・ブレイク」
ひっ、とヒナタは悲鳴に近い息を漏らした。
シールドが割られると同時に、再び鎖が彼を貫いた。
今度は、左ももと左肩。
彼の喉はもう、枯れきっていた。
だらだら、と血が流れる。
そして、眼から、口から、情けないほどに何かが流れていくのを彼は感じた。
これはまずいと感じた白陽は、彼に代わってゲームを続行させる。
『S・トリガー発動!! 《スーパー・バースト・ショット》で《ジェニー》を破壊!!』
「だが、もう遅い!! 《デッド・リュウセイ》の効果で2枚をドロー!! そして、《デッド・リュウセイ》で”最期”のシールドをブレイク!!」
次の瞬間。
今度は彼の腹に鎖が突き刺さった——
「がはっ」
血反吐を吐くヒナタ。
しかし、急所は外れたのか、彼の息は止まってはいなかった。
「次は、脳天を貫かせて貰うぞ。《ゼッキョウ・サイキョウ》でダイレクトアタック——」
『ニンジャ・ストライク3発動! 《光牙忍 ハヤブサマル》をブロッカー化してブロックだ!』
「チッ……!!」
仕留め損なったか、と悪態をつくレン。
しかし。状況は何も変わってはいない。
ヒナタの場は全滅。さらに、走る激痛が彼を苦しめる。
対するレンの場には大量のドラゴンが、ヒナタの命を狙っていた。
ようやく落ち着いたと見たか、彼は冷たく言い放った。
「手は動かせるだろう? 足もだ。マナの力で、貴様の決闘空間における最低限の行動は保障しているからな。慈悲深いと思え」
「が、この……やろ……!!」
「だが残念だったな。貴様の相棒がトリガーで僕のクリーチャーを焼いてくれたから、貴様の苦しみはもう少し続く。そう、次の僕のターンまでな——」
その声を聞き、ヒナタの体にはいっていた力は抜けた。
もう、痛みも感じない。脳内麻薬というやつの所為だろう、と彼は朦朧とする意識の中で思った。
人の体が、本能的に戦おうとするために分泌するドーパミンなんかのことだが、ヒナタにもう、戦う意思は無かった。
——もう、今回こそは無理かもな——
げほっ、と彼はもう1度血反吐を吐いた。手が、真っ赤に染まっている。
——……俺、お前の所に行っちまうかもしれねーよ……思ったよりも、早かったよ……我ながら、あっけない人生だったな——
そう想いながら。
彼は、”切れた”。
- Act11:暁の太陽に勝利を望む ( No.191 )
- 日時: 2015/10/11 21:25
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)
***
ノゾムとホタルのデュエルは、ホタルの切札が現れたことによって、大きく動き出していた。
惨劇の一角星 ハーシェル・ブランデ 光/闇文明 (7)
クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン/ダーク・ナイトメア 7500
U・コア
このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、超次元ゾーンからU・コアを持つステラアームド・クリーチャーをバトルゾーンに出しても良い。
相手がコストを支払わずにクリーチャーをバトルゾーンに出したとき、そのクリーチャーを破壊する。
W・ブレイカー
ブロッカー
母なる光姫の聖域を踏みにじり、現れたのは破滅と快楽を追い求める邪悪な一角獣だった。
しかも、そこから更にクリーチャーの気配が現れる。
クレセントが怯えた悲鳴を上げた。
『何あれ……とても怖い……!』
ノゾムでさえ、びりびりとした殺気を感じていたが、これほどまでとは考えていなかった。
ハーシェルを、”あれ”と表現したあたり、最早以前とは似ても似つかぬ程のオーラを纏っていたことは言うまでも無いだろう。
しかし。それだけでは終わらなかった。
「《ハーシェル》の効果発動! U(ユニオン)・コアを持つクリーチャーを1体、超次元ゾーンからバトルゾーンに!」
次の瞬間、今まで空中に浮いていた地獄の門の表面が剥がれ出す。
そして、艶やかな女体が伸び、鋭い棘が何本も見え隠れする門を携えた光姫がバトルゾーンに降り立った。
復讐と破滅を司る戦乙女は、不気味に微笑んだ。
「《鋼神姫(ビルゴ・ジャンヌ) ドラドルイン》をバトルゾーンに!」
鋼神姫 ドラドルイン 光/闇文明 (5)
ステラアームド・クリーチャー:メカ・デル・ソル/ヘドリアン 5000
U・コア
ブロッカー
相手のクリーチャー、または呪文の効果で自分のクリーチャーが選ばれるとき、バトルゾーンにU・コアを持たないクリーチャーがいれば、自分のU・コアを持つクリーチャーは選ばれない。
自分の光か闇のクリーチャーが攻撃、またはブロックしたとき、相手の手札を見ないで1枚選び、捨てさせる。
星芒武装--自分のターンの始めに、自分の光と闇のクリーチャーがバトルゾーンに合計5体以上いるとき、このクリーチャーを裏返し、「ハーシェル」とあるクリーチャーの上に重ねる。
「ターン終了です」
その宣言と共に、ノゾムは我に返った。
バトルゾーンを見渡せば、《ベルリン》、《ジェラシー・シャン》、《セイント・アヴェ・マリア》、《ハーシェル・ブランデ》、《ドラドルイン》、《ジオ・ザ・マン》の5体が構えていた。
それと、と付け足すように彼女はノゾムに言った。
「《ドラドルイン》はターンの始めに光と闇のクリーチャーが合計5体以上いるとき、武装条件を満たすので、そこらへんお願いしますね?」
「なっ——!?」
『やばいよ、ノゾム! もう、条件は満たされてる!』
「と、とにかく除去しねぇと!! サイキックだけでも——」
カードを引くノゾム。
そして、再び5枚のカードをタップする。
「呪文、《幾何学艦隊 ピタゴラス》!」
「念のために言っておきますけど? 私のU・コアを持つクリーチャーは、場にU・コアを持たないクリーチャーが1体でもいれば選ばれませんよ?」
ノゾムは舌打ちした。分かっていたとはいえ、やはり本体はそう簡単に除去は出来ないか、と。
仕方なく、その手さばきで艦隊を指揮し、攻撃対象を指示する。
目標は既に決まっていた。砲門が開く。
「効果により、タップされていない《セイント・アヴェ・マリア》とマナ武装5で《ジオ・ザ・マン》を超次元ゾーン送りに!」
「あらら。サイキックを狙うなんて、ノゾムさんはいけない人ですね」
「抜かせ!! これで、お前の武装は一先ず防いだぞ!!」
水文明の本領は、しつこいバウンスにある。
このまま除去を続けていれば、勝機はあるはずだ、と彼は思っていた。
しかし。
光文明の本領は、この程度では終わらなかった。
「私のターン。3マナをタップ。《巡礼者 メスタポ》を召喚」
巡霊者メスタポ R 光文明 (3)
クリーチャー:コスモ・ウォーカー 1000
誰も山札を見ることはできない。
このクリーチャーが破壊される時、墓地に置くかわりに自分の手札に戻す。
現れたのは、星の上で逆立ちをした、人型のクリーチャーだった。一見、かなりファンキーに見えるが、問題はそこではない。
「《メスタポ》の効果で、もう誰も山札を見ることは出来ませんよ?」
「げっ……」
山札を見ることが出来ない。つまり、《ディメンジョン・ゲート》のようなサーチカードから、《ドンドン吸い込むナウ》のような部分的に山札を”見る”カードまで、全てが意味を成さなくなるということ。
ノゾムのデッキにも、思い当たるカードは沢山あった。
《クリスタル・メモリー》、《スペルブック・チャージャー》、そして《Q.E.D+》の効果etc……。
何より、水文明の得意分野の1つであるサーチを封じられたのはかなり厳しい。
それだけではなく、《メスタポ》はコストが軽い上に、破壊されても手札に戻る。
かなりしぶとく、妨害を続けることが出来るカードであることをノゾムの頭は理解した。
「”真理”を鵜呑みにしてはいけないものですよ? ノゾムさん。疑わなければ、さっきのように痛い目に遭うんですから」
「くそっ、なんつーカードだ……!!」
「そして、《ハーシェル》で攻撃! 《ドラドルイン》の効果で、自分の光と闇のクリーチャーが攻撃したとき、相手の手札を見ないで選び、破壊しますよ!」
次の瞬間、ノゾムの手札のうち、1枚が串刺しにされ、墓地へ叩き落された。《龍脈術 水霊の計》。数少ない、《メスタポ》を除去できるカードだった。
そして、シールドが2枚、ブレイクされる。
此処からどう巻き返すか、彼は考えた。
しかし。なかなか思いつかない。
まず、1つ。
やはりというべきか、胸の奥から沸いてくる気持ちの悪さ。
こみ上げてくる吐き気。
これらが彼の思考を邪魔する。
そしてもう1つ。
今まで、色恋沙汰等と無縁の生活を送ってきた彼に、やはりいきなりのキスはきつかった。
しつこいようだが、表面上は取り繕っているとはいえ、未だに混乱していた。
結果。これが彼の判断を狂わせていくことになる。じわじわと、まるで内側から侵略するように。
「お、オレのターン……! とにかく、奴らを除去しねーと……!」
『ちょっと!? 本当に大丈夫なの!?』
「だから、やれるって言ってるんだろうが!! まずは、《龍覇 M・A・S》を召喚し、《エビデゴラス》を呼び出す!! そして効果で——《ジェラシー・シャン》をバウンスだ!」
現れたのは、《龍覇 メタルアベンジャー》。
そして。天空に現れる空母、《エビデゴラス》。
最後に、目の前の敵を排除せん、と《メタルアベンジャー》が両肩の砲から激流を照射——出来なかった。
「……あれ? オレ、《M・A・S》を召喚したはずじゃ……」
『ノゾム! ノゾム! これ、《龍覇 メタルアベンジャー》だよ!?』
「……え? ソリッドじゃなくて?」
『だから、バウンスなんか出来ないってば!』
完全に、視界がブレて気付かなかったが、まさかこれを間違えるとは自分でも思わなかった。《メタルアベンジャー》に、除去効果は無い。つまり、彼女の場のカードは減らせない。
既にノゾムの同年代の少年少女を超えた頭脳は、狂いに狂っていたのである。
そして、ホタルの場には5体の光と闇のクリーチャーが揃ってしまっていた。
「私のターン」
そして、今。最凶最悪の武装が始まろうとしていた。
「ノゾムさん。好きですよ? 勢い余って殺しちゃいそうなくらいに」
《ドラドルイン》の門が大きく開いた。そこに、《ハーシェル》が駆け込んでいく。
そして、それを閉じ込めるように、門が閉まる。同時に、そこから真っ赤な血が吹き出るように流れた。
次の瞬間、《ドラドルイン》の目が赤く光った。
女体像が崩れ落ち、門は鎧となり、腕が生え、巨大な甲冑が現れる。そして暗黒の騎士としての姿を象っていく——それは、破滅の騎士の光臨を意味していた。
「数多の屍を食らいし破滅の一角獣よ。
冥界の騎士として昇華し、咎人を裁け。
《串刺しの騎士(レイニーズデイ) ハーシェル・ディストーション》、武装完了」
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