二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ D・ステラ 【侵略世界編】
日時: 2017/01/16 20:03
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

【読者の皆様へ】
はい、どうも。二次版でお馴染み(?)となっているタクと申します。今回の小説は前作の”デュエル・マスターズ0・メモリー”の続編となっております。恐らく、こちらから読んだ方がより分かりやすいと思いますが、過去の文というだけあって拙いです。今も十分拙いですが。
今作は、前作とは違ってオリカを更にメインに見据えたストーリーとなっています。ストーリーも相も変わらず行き当たりばったりになるかもしれませんが、応援よろしくお願いします。

また、最近デュエマvaultというサイトに出没します。Likaonというハンドルネームで活動しているので、作者と対戦をしたい方はお気軽にどうぞ。


”新たなるデュエル、駆け抜けろ新時代! そして、超古代の系譜が目覚めるとき、デュエマは新たな次元へ!”



『星の英雄編』


 第一章:月下転生

Act0:プロローグとモノローグ
>>01
Act1:月と太陽
>>04 >>05 >>06
Act2:対価と取引
>>07
Act3:焦燥と制限時間
>>08 >>10
Act4:月英雄と尾英雄
>>13
Act5:決闘と駆け引き
>>14 >>15 >>18
Act6:九尾と憎悪
>>19 >>21
Act7:暁の光と幻の炎
>>22 >>23
Act8:九尾と玉兎
>>25

 第二章:一角獣

Act1:デュエルは芸術か?
>>27 >>28 >>29
Act2:狩猟者は皮肉か?
>>30 >>31 >>32 >>33
Act3:龍は何度連鎖するか?
>>36 >>37
Act4:一角獣は女好きか?
>>38 >>39 >>41 >>42 >>43 >>44 >>45
Act5:龍は死して尚生き続けるか?
>>48

 第三章:骸骨龍

Act1:接触・アヴィオール
>>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55
Act2:追憶・白陽/療養・クレセント
>>56 >>57
Act3:疾走・トラックチェイス
>>66
Act4:怨炎・アヴィオール
>>67 >>68
Act5:武装・星の力
>>69 >>70
Act6:接近・次なる影
>>73

 第四章:長靴を履いた猫

Act1:記憶×触発
>>74 >>75 >>76 >>77
Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解
>>78 >>79 >>80
Act3:捨て猫×少女=飼い猫?
>>81 >>82
Act4:リターン・オブ・サバイバー
>>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90
Act5:格の差
>>91 >>92 >>93 >>104
Act6:二つの解
>>107 >>108 >>109 >>110
Act7:大地を潤す者=大地を荒らす者
>>111 >>112 >>113
Act8:結末=QED
>>114

 第五章:英雄集結

Act1:星の下で
>>117 >>118 >>119
Act2:レンの傷跡
>>127 >>128 >>129
Act3:警戒
>>130 >>131 >>132
Act4:策略
>>134 >>135
Act5:強襲
>>136
Act6:破滅の戦略
>>137 >>138 >>143
Act7:不死鳥の秘技
>>144 >>145 >>146
Act8:痛み分け、そして反撃へ
>>147
Act9:fire fly
>>177 >>178 >>179 >>180 >>181
Act10:決戦へ
>>182 >>184 >>185 >>187
Act11:暁の太陽に勝利を望む
>>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>193 >>194 >>195
Act12:真相
>>196 >>198
Act13:武装・地獄の黒龍
>>200 >>201 >>202 >>203
Act14:近づく星
>>204


『列島予選編』


 第六章:革命への道筋

Act0:侵攻する略奪者
>>207
Act1:鎧龍サマートーナメント
>>208 >>209
Act2:開幕
>>215 >>217 >>218
Act3:特訓
>>219 >>220 >>221
Act4:休息
>>222 >>223
Act5:対決・一角獣対玉兎
>>224 >>226
Act6:最後の夜
>>228 >>229
Act7:鎧龍頂上決戦

Part1:無法の盾刃
>>230 >>231 >>232 >>233 >>234 >>235 >>236 >>239
Part2:ダイチの支配者、再び
>>240 >>241 >>242 >>243 >>244 >>245 >>246 >>247 >>248 >>250
Part3:燃える革命
>>252 >>253 >>254 >>255 >>256
Part4:轟く侵略
>>257 >>258 >>259 >>260 >>261

Act8:次なる舞台へ
>>262


 第七章:世界への切符

Act1:紡ぐ言の葉
>>263 >>264 >>265 >>266 >>267 >>268 >>270
Act2:暁ヒナタという少年
>>272 >>273
Act3:ヒナとナナ
>>275 >>276 >>277 >>278 >>279 >>280 >>281
Act4:誓いのサングラス
>>282 >>283 >>284 >>285
Act5:天王/魔王VS超戦/地獄
>>286 >>287 >>295 >>296 >>297 >>298 >>301 >>302 >>303 >>304 >>305
Act6:伝説/閃龍VS獅子/必勝
>>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>323
Act7:青天霹靂
>>325 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>331
Act8:揺らぐ言の葉
>>332 >>333 >>334 >>335 >>336
Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神
>>337 >>338 >>339 >>340 >>341 >>342 >>343
Act10:伝える言の葉
>>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351
Act11:連鎖反応
>>352


『侵略世界編』


 第八章:束の間の日常

Act1:揺らめく影
>>353 >>354 >>359 >>360 >>361 >>362
Act2:疑惑
>>363 >>364
Act3:ニューヨークからの来訪者
>>367 >>368 >>369 >>370 >>371
Act4:躙られた思い
>>374 >>375 >>376 >>377
Act5:貴方の為に
>>378 >>379 >>380 >>381 >>384 >>386
Act6:ディストーション 〜歪な戦慄〜
>>387 >>388 >>389
Act7:武装・天命の騎士
>>390 >>391
Act8:冥獣の思惑
>>392
Act9:終演、そして——
>>393


 第九章:侵略の一手

Act0:開幕、D・ステラ
>>396
Act1:ウィザード
>>397 >>398
Act2:ギャンブル・パーティー
>>399 >>400 >>401
Act3:再燃 
>>402 >>403 >>404
Act4:奇天烈の侵略者
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>411
Act5:確率の支配者
>>412 >>413
Act6:不滅の銀河
>>414 >>415
Act7:開始地点
>>416


 第十章:剣と刃

Act1:漆黒近衛隊(エボニーロイヤル)
>>423 >>424
Act2:シャノン
>>425 >>426
Act3:賢王の邪悪龍
>>427 >>428 >>429
Act4:増殖
>>430 >>431 >>435 >>436 >>438 >>439 >>440 >>441 >>442
Act5:封じられし栄冠
>>444


短編:本編のシリアスさに疲れたらこちらで口直し。ギャグ中心なので存分に笑ってくださいませ。
また、時系列を明記したので、これらの章を読んでから閲覧することをお勧めします。

短編1:そして伝説へ……行けるの、これ
時系列:第一章の後
>>62 >>63 >>64 >>65

短編2:てめーが不幸なのは義務であって
時系列:第三章の後
>>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103

短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル)
時系列:第四章の後
>>120 >>121 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126

短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日
時系列:第四章の後
>>149 >>150 >>153 >>154 >>155 >>156

短編5:恋情パラレル
時系列:第四章の後
>>157 >>158 >>159 >>160 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>173 >>174 >>175 >>176

短編6:Re・探偵パラレル
時系列:平行世界
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422

エイプリルフール2016
>>299 >>300

謹賀新年2017
>>443


登場人物
>>9
※ネタバレ注意。更新されている回を全部読んでからみることをお勧めします

オリジナルカード紹介
(1)>>96 (2)>>271
※ネタバレ注意につき、各章を読み終わってから閲覧することをお勧めします。

お知らせ
16/8/28:オリカ紹介2更新

Act11:連鎖反応 ( No.352 )
日時: 2016/08/25 08:25
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

「テメェら、よくやったなコノヤロー。遂に鎧龍は世界への進出を決めた」
「未だに実感沸きませんけどね……」

 後日。
 武闘ビルで再びミーティングがあった。
 D・ステラ本選は、新学期が始まった後に始まるらしい。壮行式などもやった後で、遂に海外での戦いが始まると言う。

「そして、有栖川ツグミの件。それについても、また追々話していくことになるからな。今は奴がぶっ倒れて入院してるから何とも言えんが」
「本当、一体何だったんでしょうね……」
「それとだ。もう1つ言っておかなければならないことがある」
「何ですか?」

 改まった顔でフジは言った。




「——D・ステラ本選より、英雄達——つまり白陽達の使用を解禁する」




 その場に、衝撃が走った。
 今まで、鎧龍の試製カードではない星の英雄達は、言うまでもなく門外不出の秘密。
 故に、大会で使うことをフジから禁じられてられていたし、ヒナタ達もそれで同意していたのだ。

「え、何でですか先輩!?」
『やったよ、ノゾム! あたし達、一緒に戦えるんだ!』
「そ、それはいいけど……何でいきなりまた?」
「此処最近、世界各国で新たなる星の力が観測されつつある——まるで、何かが目覚めたのを皮切りにしてな。無論、実体化するカードなどということは表向きには伏せて貰うが、将来的にD・ステラで何らかの形で星のカードとぶつかることは避けられんだろう。故に、今回このような決断に踏み切った」
「何かが目覚めた……?」
「さあ、何が目覚めたまでかは詳しくは分からん。だが、今まで無かった事態に俺達も頭を抱えている状態だ——」

 世界への進出。
 だが、それと同時にフジは言う。
 何らかの形で何かが動いたことで、何かが連鎖するようにして始まりつつあると言う——

「邪悪龍。コロナ。そして星のカード——どうなるかもう、分からんねコレは」

 全員は黙る。
 何が起こっているのか。これから何が起ころうとしているのか。
 それがさっぱり分からない。
 だが、そんな中——口を開いたのはヒナタだった。

「何が起こってるのか——俺達の目で確かめにいけばいい! 俺達は世界に行くんだ。そこで何があるのか——それは分からねけど」
「ヒナタの言う通りよ。今までだって、色んなピンチを乗り越えて来たんだから!」
「……ヒナタ先輩……如月先輩……そうっすね!! オレ達でやりましょう!」
「どんなスクープが待ち受けているのか……私、もう今からドキドキしてます!」
「全く……大会で勝ち上がり、デュエマに革命を起こすことも忘れてないだろうな貴様等。僕達はデュエマの表と裏、両方の敵と戦うことになるのだから」

 既に、全員の意思は固まっていた。
 世界で一番になる事。星のカードについて調べる事。そしてコロナの事。
 まだ、やるべきことは山ほどあるのだから——




 ***




「……獅子怒さん」
「ああ。我々も、すぐさま海外へ行こう。邪悪龍の動向、この目で確かめねばならぬ」
「ええ分かってますよ」
「我が妹の為だ——何としてでも邪悪龍を撃滅せねば……」

 獅子怒の目は昏い。
 信念に囚われた囚人か、それとも——

「……俺は勿論協力しますよ、獅子怒さん」
「……ああ。ありがとう」

 


 ***



「アマツカゼ。アレの場所は分かるか?」
「……ああ、もうそろそろで割り出せそうだ。だけど、まだ解放されてないかもしれないね」
「そうか……まあ良い。私自身、まだ早いと思っている」
「そうだね。下手をすれば、あれは君が食われてしまう代物。覚悟は出来ているかい?」
「お前は誰に言っている? 当の昔に——世界を壊す覚悟など、出来ている」

 あるビルの屋上から——彼女は視界に広がる景色を眺めた。
 美しい。
 実に空の色が美しい——憎々しい程に。

「私を捨てた世界をこの手で壊す——そのためには、何だってしてやるさ」




 ***




「——警戒した方が良いのは、ヤーパンのデュエリストだ」
「……」

 1人の少年が言った。
 特に、と彼は続ける。

「我々が勝ち進むのは言うまでもないが、そうなった場合ヤーパンとは必ず当たることになるだろう」
「……鎧龍ですか」
「あー、そうだね。戦艦を空母とか抜かしているような連中——あのアホ共に少々、思い知らせてやらないといけないようだ」

 口角を上げて、彼は言った。




「——何の定義をもって戦艦を戦艦たらしめるのか——そして、最強の空母は誰なのか。身を以て教えてやろうじゃないか」



 ***




「す、すごい……! 鎧龍、予選突破したんだ……!」

 その報せを受けた彼女は歓喜した。
 チームに、自分が良く知っている少年が居たので、鎧龍には元より注目していたのだ。

「とにかく、どうしようかな……多分、もうすぐ会えると思うけど——」

 そわそわとした表情で彼女は言う。




「——暁先輩……!」



 ***




 ——画して。
 D・ステラは遂に世界を舞台にして始まろうとしていた。
 それぞれの物語が今——幕を開ける——

Act1:揺らめく影 ( No.353 )
日時: 2016/08/26 00:52
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

 ——D・ステラ予選は終わり、そして夏休みも終わった。
 画して。ヒナタ達は新学期を迎えたのである。
 その帰り道。壮行式だの何だのを終わらせて疲れ切った体と頭で、暁ヒナタはこんなことを考えていた。

「……付き合う、って何だ?」

 そんな質問を此処数日、彼は自問自答していた。
 画してコトハに告白され、そして彼女の事をもっとよく知るという名目で交際をOKしたヒナタであったが、結局あの後コトハから彼のところに来ることは余り無かった。
 彼女も流石に照れていたのだろうか。
 ——コトハが可愛い……可愛すぎて辛い……今までこんなことあったかよ畜生。
 そして彼も年頃の少年、悶々と此処最近そんなことばかり考えてしまっていた。D・ステラの事半分、残りは全部彼女の事ばかりだ。
 最後のあのキスといい、その後に言った言葉といい、完全に彼をノックアウトさせるのには十分だったのだ。

「ヒナター? 今良いかな……」
「うええ!?」

 ヒナタは振り向く。
 見れば、そこにはコトハの姿があった。既に顔を赤らめ、後ろで手を組んでもじもじとしている。
 そして、上目遣いでこちらを見上げるようにすると、押し出すように言った。

「何よ……そんなにびっくりしちゃって」
「あ、いや……そのだな……」
「まあ、いいや。やっとあなたと2人になれたよ」
「そ、そうだな……」
「何よ恥ずかしそうにしちゃって。あたしも、ちょっとあの後気まずかったっていうか……冷静に考えたらキスは大胆すぎたっていうか……で、でも、反省はしてるけど後悔はしてないから! うん!」
「前のお前が見たら不純異性交遊禁止だとか言ってキレそうなもんだけどなぁ」
「ふ、不純じゃないから! 純愛だから問題ないわよ!」

 ……こうもやたら前向きなのも困りものである。
 正直、まともに彼女の顔を見ることが出来ない。

「まあ……嬉しかったよ。こんなに俺の事好いて貰ってたんだなぁって……」
「あ、いや……その」

 それを聞いて、再び彼女の顔が耳まで赤く染まる。
 そして、うつむき加減になって言う。
 
「と、とにかくさ。一緒に帰ろうよ。そしたら、ちょっとは交際してる男女っぽくなるんじゃない?」
「そもそも今までが今までだしなあ……何を基準として交際してる男女とするか……全く分からん」
「今までが少し距離が近すぎたのかなぁ……えへへ」
「……ま、出来るだけ俺もお前の近くにいてやるよ。学校ではどうするか、まだ決めてねぇけど。クラスもちげーし」
「そうだね……でも、あたしも嬉しい。ヒナタが逃げないで、あたしと向き合ってくれたこと。本当に感謝してる」
「……コトハ」

 ——ほんとこいつ、可愛いんだよな……。
 物凄い加護欲に襲われる。愛らしい、の一言であった。
 今までの凛とした堅物女のようなイメージが、一気に覆されていく。

「でも、何か忘れてる気がするんだよな……何かすっげぇ大事なことを——」
「え? 何よ」
「あ、そうだ。ノゾムやホタルにはこの事何と言おうか」
「別に公認で良いのよ?」
「あのなぁ……俺もお前に乗った形にはなったけど……まあ、うーん。しかし、これじゃない。本当に何かを忘れてる気が——」






 ——それは僕の事かぁぁぁぁぁーっ!?




 怨念だらだら、瘴気ダダ漏れ、血走った眼でレンはヒナタとコトハを睨んでいた。
 ——そういうことだったのか、おのれヒナタめ!! コトハめ!! あいつら、いつの間に僕を差し置いて!! 予選が終わったあの日の後、やたらと気まずそうにしてたのはそのためか!? クソッ、声を掛けるに掛けられないではないか! もういい、マンホールの下に引き籠ってやる!!

『黒鳥レン。これは所謂ストーカーというヤツではないですか?』
「違う、違うぞアヴィオール……これは断じてストーカーではない」
「ママー、あの人何やってるの?」
「シッ、見ちゃいけませんよ!」

 そんな親子の会話が聞こえてきたが、気にせずにレンは電信柱の後ろに隠れて2人の様子を窺うことにする。
 今までの仲良し3人組が、カップル+その他1名になってしまったという衝撃の事実を前にして、レンは嘆きを隠せなかった。
 ああ、これを理由にまた闇落ちしてしまいそうだ。
 闇使いが闇落ちとは、世も末である。

『ま、まあ……黒鳥レン。落ち着いてください』
「仲間はずれ……僕だけボッチ……ボッチ……おのれ……」
『正気に戻れ!』

 ガコン、という音と共に鞘を被ったアヴィオールのガンブレードが彼の脳天を捉える。
 そのまま一瞬地面に伏せたレンであったが、頭を抑えて再び起き上がったのだった。

「ああ……僕は一体どうすれば良いのだ」




「おーい、レーン。もう良いから出て来いよ!!」




 レンは、がくり、とずっこけた。




 ***




『やれやれ……手の掛かる奴らだ。何であれ大成功だなニャンクス』
『そうですにゃ。若干荒療治になりましたけど、”チキチキキューピッド作戦☆”無事完了ですにゃ!』
『その代わり、悪霊みたいな顔をした男が後ろから憑いて来ているが良いのかアレ』
『……白陽様。アレが所謂リア充には一生理解できない感情ですにゃ』
『成程、理解不能だ』

 若干遠くからその光景を眺めていた白陽は頷く。

『人の主人を悪く言わないで欲しいモノですね、白陽。ニャンクス』
『何だ。居たのかお前も』

 見れば、そこにはアヴィオールの姿があった。
 
『その主人はどうしたんだ?』
『お宅らのマスター2人と喫茶店に入っていきましたよ。この商店街、なかなか活気があって良いですねえ。私の世界の街も、もっと賑わっていれば良かったのですが。と、話がそれた。要は貴方たち、最初っから組んでて暁ヒナタと如月コトハの仲を取り持ったと言うことですかね?』
『ああ……いや、それは……流石に、コトハ様のことが心配になってですにゃ』
『仕方がないだろう。自分の相棒があんな調子では、こちらまで気分が狂う』
『マスター思いなんですねぇ。まあ、良いでしょう。ただ——そろそろ呼ばれそうな気がしますねぇ』

 意味深気にアヴィオールは呟いた。
 


『ボクの主人、あれで案外寂しがりやなので』

Act1:揺らめく影 ( No.354 )
日時: 2016/08/27 09:19
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

『寂しがりや、か。それは良いのだが——』

 白陽は言う。
 そして、その方向へ指を指した。

『……アヴィオール。勘違いしているようなら言うが、”誰もお前の主人の話はしていない”ぞ?』
『……え』
『確かにお前の主人もアレだったが——少し、話の内容と時間が食い違っているところから察して——まあ、何だって良い。後ろのアレを見ろ』
『……全く以て不快なのですにゃ』
『どれ……あ』

 ようやくここでアヴィオールは気付いた。
 白陽達は自分の主人の事を悪霊呼ばわりしていたのではない。
 真の悪霊は、更にその背後に潜んでいた——




 ***




「すまん。つい、取り乱した。余りにも衝撃的だったので冷静さを欠いた。ストーカー紛いの行為を働いたことも謝る」
「いや、それは良いんだよ」
「う、うん。黙ってたあたし達も悪いしね」

 優しい世界。

「まあ、元々貴様らは全く進展しないからこちらとしてもやきもきしていたのだ。いずれは分かっていたことだ……いずれは」
「無駄に重いんだけど無駄に」

 喫茶店の一角で、レンはコーヒーを啜りながら言った。
 とはいえ、流石の彼も本当にくっついたという事実を前にしては、やはり驚きを隠せなかったらしい。
 あんな奇行に打って出ることは、あまりない。

「……さて、本来ならばな。貴様等2人にあることを伝えようと思っていたのだ」
「あること?」
「何よそれ」
「貴様等——今、誰かに付き纏われているぞ」

 思わず、2人は顔を見合わせる。
 
「お前じゃなくて?」
「僕ではない。実は、僕の後ろに更にコソコソとしている輩が居た」

 小声で言ったレンは店内を見回す。
 そして、窓を見た。だが、此処からではよく外の様子が見えないらしく、安堵の息をつく。

「あたし達を付け狙っている輩? 多すぎて誰なのかさっぱりだわ」

 確かに、今考えられる限りでもアンカ、コロナと2人居る。
 他の邪悪龍の事も考えれば、もっと居るのだ。誰が犯人なのか、さっぱりわからない。
 どうやら、2人を助けようと思った矢先にこれだったので、彼の心の深淵が更に深くなったと言う。

「ヒナタ。コトハ。最近、身の回りで変わった事は無かったか?」
「何にもねーよ」
「あたしもよ。絡みのウザいバカ兄貴が最近、合宿から帰ってから余り姿を見せなくなったくらいだわ。ま、個人的には面倒事が減って万々歳なんだけども」
「絡みのウザい兄貴……ああ、如月シュウヤ先輩か」
「じゃあ、何も問題ねえな」
「そうよね、考えすぎよね」

 あははははは、と笑い飛ばした後、ヒナタとコトハは目を伏せた。
 ——何だろう。すっげー嫌な予感がする……。
 ——何か、もう既に嫌な予感がするんだけど……。

「どうやら心当たりがあるようだな。では、一旦ここを出るか——クロを炙り出しに」




 ***





 ——クククク……この迷彩を舐めるなよ……!! ブロック塀に張り付いているだけで、人がいるのか分からん。顔も同じ色に化粧してあるし、絶対にバレん!!

「ママー、あの人何やってるの?」
「シッ、見ちゃいけませんよ!」

 ——絶対にバレん! こうして電信柱の後ろに隠れ、コソコソと後を追ってきた甲斐があった!! 
 成程、確かにバレてはいない。少なくとも、後ろからこそこそと近づく分には。
 しかし、動いた時点で通りかかった人にはバレているということに何故気付かないのか。
 ——しかぁぁぁし!! 妹に彼氏が出来ているとは!! しかも相手はあの暁ヒナタ!! やはり2人は結ばれる運命だったのだ!! つまり、私には2人の愛の云々を監視する義務が——む、店を出て来た? 何か黒鳥レンもいるし、こっちに来る? まあ良い、こちらが見つかるわけが




「白陽、幻炎」



「どわっちゃあああ、あづ、熱ゥ!?」




 急に焼けつくような痛みと熱に背中から襲われたそれは倒れ込む。
 見るもあっけないバレ方であった。
 目の前には、ヒナタとレン、コトハの3人が並んでいる。
 完全に、彼の行為は白昼の元に晒されることになったのである。

「如月シュウヤ先輩……これがどういう事か、説明を願おうか」
「まーた、あんただったのか……マジで何なんだ本当」
「おい、兄貴。そこに直りなさい。ええ、妹のこの怒りの拳一発で楽になれるわよ」
「ま、待とう、君達!! 落ち着き給え!! だからと言って火を付けるのは……あれ? あれ? 熱くないし、何処も焼けてない?」

 迷彩服を脱ぎ捨てるも、それは全く焼けた形跡が見当たらない。
 理由は簡単、白陽の幻炎によるものだったからである。
 さて、この如月シュウヤという男について説明せねばなるまい。
 彼は言うまでもなく、コトハの兄だが重度のシスコンを拗らせており、その所為で妹には嫌われている。しかも、全く心が折れないダイヤモンドのメンタルを持つ恐怖のシスコン。彼女に近づく悪い虫は全て焼き落とすモンスターブラザーである。
 そして以前も、鎧龍サマートーナメントでヒナタ達のチームと戦った際にヒナタに難癖を付けたもののコトハに惨敗するという醜態を見せているのだ。
 その後、勝手にヒナタを妹の花婿として認める勝手っぷり。彼女の鉄拳制裁を食らって轟沈したのは言うまでもあるまい。
 一応、デュエルの実力はそこそこあり、しかも生きたクリーチャーの存在も認知している数少ない人物ではあるのだが。

「何をしていたのか聞きましょうか」
「フフフ、我が愛しの妹に彼氏が出来たらしいからな。それが誰なのか……何処の誰ともわからない馬の骨ならこの世から細胞も残さず抹殺してやるところだったがまさか暁ヒナタだったとは。そこで2人の様子をストーキング、もといリサーチしていたのだ」
「よし、警察に通報しようぜこの人」
「待って!! やめよう!! 世界は憎しみの連鎖では救われないぞ!! クリーチャーまで持ち出しやがって、卑怯者め!!」
「憎しみの連鎖を生み出しているのが自分だと気付いていない典型的なバカだ!! 好い加減にしてこのクソ兄貴!!」

 とまあこのように、白陽やニャンクスも見えているのである。

「ふっ、ニャンクス。従者ならお前、俺にフォローの1つでも」
『僕が仕えるのはコトハ様だけですにゃ。どうか永遠なる眠りを』
「クッ、おのれ……いつも家でもそうだ、俺の邪魔ばかりをしてからに!!」
『日本は兄妹でも結婚出来るとか適当なこと抜かすお前をコトハ様に近づけるわけにはいかないのですにゃ』
『ヒナタ、こいつ今度は本当に燃やしていいか』
「もう、それくらいやらねえと駄目かもなあ」

 とまあ、相変わらずのダメ兄っぷりだった。
 兄の言う通りになったということは癪に障るが、取り敢えずこの男、一発締めねばならないらしい。

「では、こうしよう!! 愛しのコトハか暁ヒナタが俺とデュエマをし、勝ったらやめてやらんことも無い」
「勝手にルール決めだしたし、もうなんなのよ!!」
「はははは!! 確かに、今の俺にはアウトレイジはもう居ない!! しかし、我がデッキはこの1年間でパワーアップしている!!」

 そしてこの男、話を聞かない。勝手にデュエルで決着を着けようとしている。
 好い加減、ヒナタもコトハも彼に辟易してきたその時であった。




「良いだろう。その勝負——この黒鳥レンが代わりに受けて立つ」




 思わず、耳を疑った。
 この勝負に代理として名乗りを上げたのは——まさかのレンだったのである。

Re: デュエル・マスターズ D・ステラ 【学校対抗予選編】 ( No.355 )
日時: 2016/08/26 23:11
名前: 月宮ハルト ◆LkjxtOn3PA (ID: zGyV0OIp)  

レオザワルドの敗北置換能力で、レオ・ザ・スターで、無敵にしたエンジェル・コマンド破壊して、レオ・ザ・スターで、破壊されず・・・で、無限敗北回避できますか?

Re: デュエル・マスターズ D・ステラ 【学校対抗予選編】 ( No.356 )
日時: 2016/08/26 23:18
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

月宮ハルトさん

どうも、タクです。
取り敢えず質問の答えですが、レオザワルドの敗北回避置換もそうですが、レオ・ザ・スターの効果も置換効果なので、デュエル・マスターズのルールに於ける「置換効果は連鎖しない」に従ってレオ・ザ・スターの効果は発動せず、エンコマの破壊は防げません。


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