二次創作小説(紙ほか)
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入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- デュエル・マスターズ D・ステラ 【侵略世界編】
- 日時: 2017/01/16 20:03
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
【読者の皆様へ】
はい、どうも。二次版でお馴染み(?)となっているタクと申します。今回の小説は前作の”デュエル・マスターズ0・メモリー”の続編となっております。恐らく、こちらから読んだ方がより分かりやすいと思いますが、過去の文というだけあって拙いです。今も十分拙いですが。
今作は、前作とは違ってオリカを更にメインに見据えたストーリーとなっています。ストーリーも相も変わらず行き当たりばったりになるかもしれませんが、応援よろしくお願いします。
また、最近デュエマvaultというサイトに出没します。Likaonというハンドルネームで活動しているので、作者と対戦をしたい方はお気軽にどうぞ。
”新たなるデュエル、駆け抜けろ新時代! そして、超古代の系譜が目覚めるとき、デュエマは新たな次元へ!”
『星の英雄編』
第一章:月下転生
Act0:プロローグとモノローグ
>>01
Act1:月と太陽
>>04 >>05 >>06
Act2:対価と取引
>>07
Act3:焦燥と制限時間
>>08 >>10
Act4:月英雄と尾英雄
>>13
Act5:決闘と駆け引き
>>14 >>15 >>18
Act6:九尾と憎悪
>>19 >>21
Act7:暁の光と幻の炎
>>22 >>23
Act8:九尾と玉兎
>>25
第二章:一角獣
Act1:デュエルは芸術か?
>>27 >>28 >>29
Act2:狩猟者は皮肉か?
>>30 >>31 >>32 >>33
Act3:龍は何度連鎖するか?
>>36 >>37
Act4:一角獣は女好きか?
>>38 >>39 >>41 >>42 >>43 >>44 >>45
Act5:龍は死して尚生き続けるか?
>>48
第三章:骸骨龍
Act1:接触・アヴィオール
>>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55
Act2:追憶・白陽/療養・クレセント
>>56 >>57
Act3:疾走・トラックチェイス
>>66
Act4:怨炎・アヴィオール
>>67 >>68
Act5:武装・星の力
>>69 >>70
Act6:接近・次なる影
>>73
第四章:長靴を履いた猫
Act1:記憶×触発
>>74 >>75 >>76 >>77
Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解
>>78 >>79 >>80
Act3:捨て猫×少女=飼い猫?
>>81 >>82
Act4:リターン・オブ・サバイバー
>>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90
Act5:格の差
>>91 >>92 >>93 >>104
Act6:二つの解
>>107 >>108 >>109 >>110
Act7:大地を潤す者=大地を荒らす者
>>111 >>112 >>113
Act8:結末=QED
>>114
第五章:英雄集結
Act1:星の下で
>>117 >>118 >>119
Act2:レンの傷跡
>>127 >>128 >>129
Act3:警戒
>>130 >>131 >>132
Act4:策略
>>134 >>135
Act5:強襲
>>136
Act6:破滅の戦略
>>137 >>138 >>143
Act7:不死鳥の秘技
>>144 >>145 >>146
Act8:痛み分け、そして反撃へ
>>147
Act9:fire fly
>>177 >>178 >>179 >>180 >>181
Act10:決戦へ
>>182 >>184 >>185 >>187
Act11:暁の太陽に勝利を望む
>>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>193 >>194 >>195
Act12:真相
>>196 >>198
Act13:武装・地獄の黒龍
>>200 >>201 >>202 >>203
Act14:近づく星
>>204
『列島予選編』
第六章:革命への道筋
Act0:侵攻する略奪者
>>207
Act1:鎧龍サマートーナメント
>>208 >>209
Act2:開幕
>>215 >>217 >>218
Act3:特訓
>>219 >>220 >>221
Act4:休息
>>222 >>223
Act5:対決・一角獣対玉兎
>>224 >>226
Act6:最後の夜
>>228 >>229
Act7:鎧龍頂上決戦
Part1:無法の盾刃
>>230 >>231 >>232 >>233 >>234 >>235 >>236 >>239
Part2:ダイチの支配者、再び
>>240 >>241 >>242 >>243 >>244 >>245 >>246 >>247 >>248 >>250
Part3:燃える革命
>>252 >>253 >>254 >>255 >>256
Part4:轟く侵略
>>257 >>258 >>259 >>260 >>261
Act8:次なる舞台へ
>>262
第七章:世界への切符
Act1:紡ぐ言の葉
>>263 >>264 >>265 >>266 >>267 >>268 >>270
Act2:暁ヒナタという少年
>>272 >>273
Act3:ヒナとナナ
>>275 >>276 >>277 >>278 >>279 >>280 >>281
Act4:誓いのサングラス
>>282 >>283 >>284 >>285
Act5:天王/魔王VS超戦/地獄
>>286 >>287 >>295 >>296 >>297 >>298 >>301 >>302 >>303 >>304 >>305
Act6:伝説/閃龍VS獅子/必勝
>>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>323
Act7:青天霹靂
>>325 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>331
Act8:揺らぐ言の葉
>>332 >>333 >>334 >>335 >>336
Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神
>>337 >>338 >>339 >>340 >>341 >>342 >>343
Act10:伝える言の葉
>>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351
Act11:連鎖反応
>>352
『侵略世界編』
第八章:束の間の日常
Act1:揺らめく影
>>353 >>354 >>359 >>360 >>361 >>362
Act2:疑惑
>>363 >>364
Act3:ニューヨークからの来訪者
>>367 >>368 >>369 >>370 >>371
Act4:躙られた思い
>>374 >>375 >>376 >>377
Act5:貴方の為に
>>378 >>379 >>380 >>381 >>384 >>386
Act6:ディストーション 〜歪な戦慄〜
>>387 >>388 >>389
Act7:武装・天命の騎士
>>390 >>391
Act8:冥獣の思惑
>>392
Act9:終演、そして——
>>393
第九章:侵略の一手
Act0:開幕、D・ステラ
>>396
Act1:ウィザード
>>397 >>398
Act2:ギャンブル・パーティー
>>399 >>400 >>401
Act3:再燃
>>402 >>403 >>404
Act4:奇天烈の侵略者
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>411
Act5:確率の支配者
>>412 >>413
Act6:不滅の銀河
>>414 >>415
Act7:開始地点
>>416
第十章:剣と刃
Act1:漆黒近衛隊(エボニーロイヤル)
>>423 >>424
Act2:シャノン
>>425 >>426
Act3:賢王の邪悪龍
>>427 >>428 >>429
Act4:増殖
>>430 >>431 >>435 >>436 >>438 >>439 >>440 >>441 >>442
Act5:封じられし栄冠
>>444
短編:本編のシリアスさに疲れたらこちらで口直し。ギャグ中心なので存分に笑ってくださいませ。
また、時系列を明記したので、これらの章を読んでから閲覧することをお勧めします。
短編1:そして伝説へ……行けるの、これ
時系列:第一章の後
>>62 >>63 >>64 >>65
短編2:てめーが不幸なのは義務であって
時系列:第三章の後
>>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103
短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル)
時系列:第四章の後
>>120 >>121 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126
短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日
時系列:第四章の後
>>149 >>150 >>153 >>154 >>155 >>156
短編5:恋情パラレル
時系列:第四章の後
>>157 >>158 >>159 >>160 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>173 >>174 >>175 >>176
短編6:Re・探偵パラレル
時系列:平行世界
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422
エイプリルフール2016
>>299 >>300
謹賀新年2017
>>443
登場人物
>>9
※ネタバレ注意。更新されている回を全部読んでからみることをお勧めします
オリジナルカード紹介
(1)>>96 (2)>>271
※ネタバレ注意につき、各章を読み終わってから閲覧することをお勧めします。
お知らせ
16/8/28:オリカ紹介2更新
- Act10:伝える言の葉 ( No.347 )
- 日時: 2016/08/24 11:59
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
それは、純白に染まった悪魔であった。
天使のような装飾に身を包み、羽も先ほどの蟲のものではなく、羽毛の生えた羽だ。
だが、何処か禍々しい。
赤い瞳や、棘の生えた蝿の足の意匠を感じる脚の装具など、純白の天使を思わせる容姿でありながら、確実に悪魔と言える要素をそれは兼ね揃えていた。
先ほどのような蟲のクリーチャーは見当たらないが故に、より人に近くなった印象さえ与える。しかし。溢れ出る漆黒のオーラが、禍々しさに拍車を掛けていた——!
「そんな……!! 止める術無し、だったってことか……!!」
「《アピセリン・ゼブルビュート》の効果発動。このクリーチャーの武装に成功した時、山札の一番上を捲る——それが無色カードならばコストを支払わずにプレイする」
純白の悪魔は、自らの得物である弓矢を掲げた。
そして、それが地上に黒い雷を落とし——新たな神を生んだ。
「場に出すのは——《神青輝 P・サファイア》」
神青輝 P(プログレ)・サファイア ≡V≡ 無色 (9)
クリーチャー:オラクリオン 9000+
スピードアタッカー
パワーアタッカー+3000
T・ブレイカー
このクリーチャーが相手のシールドをブレイクする時、相手はそのシールドを手札に加えるかわりに見せる。相手はその中から、「S・トリガー」を持つカードをすべて自身の手札に加え、その後、残りを墓地に置く。(相手はその「S・トリガー」を使ってもよい)
「《P・サファイア》……!!」
「更に、クリーチャーだったので効果発動——」
次の瞬間、更にもう1本、《アピセリン》が地上に黒い雷を落とした。
そして——もう1体の《サファイア》が姿を現す。
「ふ、増えたぁ!?」
「嘘でしょ……!?」
「嘘じゃない。《アピセリン・ゼブルビュート》の効果——この時出したカードがクリーチャーならば山札から同じ名前のクリーチャーをもう1枚場に出せる」
場に出す、だからゼニスの効果は使えないけど、と彼女は付け足した。
だが、それにしても恐ろしい効果だ。
「マナをチャージ——そして呪文、《トンギヌスの槍》。効果で《白陽》を山札の下へ」
再び、黒い雷が撃ち込まれた。
今度は、白陽の胸を巨大な槍が刺し貫いていた——!!
『ガハッ……!! ヒナタ、すまない……!!』
「白陽!?」
「更に《ゼブルビュート》の効果発動。同じ名前の呪文を山札から唱えるかも」
次の瞬間、今度は《ジュダイオウ》が巨大な槍の前に打ち砕かれた。
——や、やべえ……!! 《トンギヌス》の槍で最大2枚を確定除去——おかしいだろ!? もしも《UKパンク》が居たら、6枚のカードがぶっ飛ぶんだぞ!?
これで、場のクリーチャーの殆どが一掃されたと言ってもいいだろう——そして、半壊した場に、2体の《サファイア》が攻撃を仕掛ける。
「《サファイア》2体でシールドを攻撃——」
ブロッカーの居なくなったシールドへ、2体の《サファイア》が攻撃を仕掛けた。
S・トリガーで無ければ、シールドを直接墓地へ叩き込むサファイアは敵に回せば非常に凶悪な難敵となる——
「1体は《デカルトQ》でブロック!」
「そのまま、もう1体でも攻撃。暁ヒナタのシールドをT・ブレイク」
ブロッカーの居なくなった場に、一気に攻撃が叩き込まれた——シールドが燃えていく。
1枚、2枚と燃えていく——!
更に、割れた破片が熱を持ってヒナタ達に襲い掛かった。
「きゃあっ!?」
「くそっ……痛ッ……!!」
思わず、裂かれた箇所を抑える。
腕だ。腕が熱を帯びて痛み出す。一方のコトハは、脚を裂かれたらしい。そのまま項垂れるように、崩れ落ちた。
しかし——そのうちの1枚は焼け落ちなかった。
S・トリガーだ。
「ッ……S・トリガー《天守閣 龍王武陣》! 効果で山札の上から5枚を捲り、その中から火のクリーチャーを選んで——よし、《爆剣豪 グレンモルト》を俺は選択だ! そのまま、そのパワー以下のクリーチャーを1体破壊する! 破壊するのは——《アピセリン・ゼブルビュート》だ!」
浮遊する城の砲門が開き、《アピセリン》を狙う。
そして——捉えたと同時に斉射し、撃ち落したのだった。
「ッ……やられた……!! だけど、《ゼブルビュート》が場を離れた時、山札の上から5枚をマナゾーンに置く……!!」
空虚の魔天姫(バアル・エンプレス) アピセリン・ゼブルビュート 無色 (12)
スターダスト・クリーチャー:デビル・コマンド・ドラゴン 12000
B・コア
このクリーチャーの武装に成功したとき、山札の一番上のカードを表向きにする。それが無色カードならばコストを支払わずにプレイしても良い。それがクリーチャーだったとき、山札から同じ名前のクリーチャーを1体、バトルゾーンに出す。
自分が無色のカードをコストを支払って使った時、マナゾーン、または山札を見てその中から同じ名前のカードをプレイする。こうして山札を見た時、山札をシャッフルする。
自分の無色カードのコストを1少なくなる。
T・ブレイカー
このクリーチャーがバトルゾーンを離れた時、山札の上から5枚をマナゾーンに置く。
次の瞬間、ツグミのマナが一気に増加した。
地を食らう悪魔は倒れても尚、大地を暴走させるのだ。
「何とか止められたか……! だけど」
鎧龍シールド7:ヒナタ(2) コトハ(5) ヒナタ手札1→2
ツグミ
手札2
マナ5
墓地5
next turn:ヒナタ
とはいえ、被害の割に手札の補充が出来なかったのは痛い。
更に、相手にはまだ後続のカードがあるのだ。止め切れるか、分からない。
「——コトハ、大丈夫か?」
「……まだ戦える、だけど……脚が……!」
見れば、裂かれた彼女の足は破片で酷い傷になっていた。
「だけど、まだ戦える……! 肩を、貸して?」
「おい、無理だろ!?」
「うるさい!! あんたの、隣で倒れなんかしないわ……! そうしたら、あたしは自分が許せなくなる……あんたの隣だから、あんたがいるから頑張れるんだから!!」
「……コトハ」
「だから、肩を貸して頂戴!! そうすれば、あんたの隣なら、まだあたしは戦えるから!!」
「……ああ、分かった。無理はするなよ」
ヒナタが手を差し伸べる。
それを掴み、コトハも立った。
そして、彼女にヒナタが肩を貸す形になった。
「俺のターン!!」
カードが手に渡る。
そして、正面に浮かぶ手札を見て——そこから、左手で1枚を払った。
「《次元龍覇 モルト「覇」》を召喚! こいつはスピードアタッカーだ! そのまま、《P・サファイア》に攻撃する!!」
「自爆特攻か!?」
《グレンモルト「覇」》のパワーは7000。対する《サファイア》のパワーは9000。このままでは、どう考えても前者の負けであるが——ヒナタは考え無しに無謀な勝負を挑みに行ったわけではなかった。
「いーや、違うぜ!! 攻撃時にこいつのマナ武装7が発動し、超次元ゾーンから《覇闘将龍剣 ガイオウバーン》を出す!!」
- Act10:伝える言の葉 ( No.348 )
- 日時: 2016/08/24 21:09
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
次元龍覇 グレンモルト「覇(ヘッド)」 P 火文明 (7)
クリーチャー:ガイアール・コマンド・ドラゴン/ヒューマノイド爆/ドラグナー 7000
スピードアタッカー
W・ブレイカー
マナ武装 7:このクリーチャーが攻撃する時、自分のマナゾーンに火のカードが7枚以上あれば、次のうちいずれかひとつを選ぶ。
・コスト6以下のウエポンではないカードを1枚、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出す。
・このクリーチャーにウエポンが1枚も装備されていなければ、コスト6以下のウエポンを1枚、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出す。(それをこのクリーチャーに装備して出す)
覇闘将龍剣 ガイオウバーン ≡V≡ 火文明 (5)
ドラグハート・ウエポン
このドラグハートをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選んでもよい。そのクリーチャーとこれを装備したクリーチャーとバトルさせる。
バトル中、これを装備したクリーチャーのパワーは+3000される。
龍解:自分のクリーチャーがバトルに勝った時、それがそのターン中、自分のクリーチャーが勝った2度目であれば、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップする。
「《ガイオウバーン》が場に出た時、バトルゾーンの相手クリーチャーとこいつを装備したクリーチャーをバトルさせる! 《空腹の超人》を破壊だ!」
時空を超えたドラグナー、《モルト「覇」》は虚空から現れた巨大な剣を手に取る。
そして——肉薄し、一瞬で《空腹の超人》を切り裂いた。
「そして、こいつを装備させたクリーチャーのパワーは+3000される! そのまま《サファイア》を破壊だ!」
「ッ……!!」
強化されたパワーで、《モルト「覇」》のパワーは1万、対して《サファイア》は9000。今度も、一方的に破壊してしまう。
「そして、俺のクリーチャーがバトルに勝ったとき、それがターン中2回目ならば——《ガイオウバーン》は龍解する!!」
《モルト「覇」》が剣を投げる——それは、燃え滾る炎と共に、覇闘の熱血龍を生み出した。
剣を掲げ、炎の中で龍が咆哮する。
「溢れ出る熱血を掲げ、暁の戦場に勝利を刻め——龍解!!」
それは、百戦錬磨の熱血龍であった。
勝利を掲げ、前進する最強の戦士。
伝説の名、ガイアールを携えて、それは現れる——
「——《勝利の覇闘 ガイラオウ》!」
勝利の覇闘 ガイラオウ ≡V≡ 火文明 (9)
ドラグハート・クリーチャー:ガイアール・コマンド・ドラゴン 11000
スピードアタッカー
W・ブレイカー
各ターン、はじめて自分が攻撃された時、このクリーチャーとその攻撃クリーチャーをバトルさせてもよい。
現れたのは、炎に包まれた鎧で構え、双剣を掲げた熱血龍であった。
ガイアールの証であるVの立物は、今度こそ本物だ。
そして——即座に《サファイア》へ向かって駆けだす。
「こいつはスピードアタッカーだ!! そのまま《サファイア》を攻撃し、破壊!!」
刹那。
大剣が降られて、一瞬にして偽りの神は両断される。
そして、そのまま爆散した。
「——ターンエンドだ!」
ヒナタ
手札1
マナ7
墓地2
next turn:ニュークリア・デイ
一気に1ターンで3体のクリーチャーを破壊することに成功するヒナタ。
しかも、場には龍解した《ガイラオウ》がいる。
こちらを攻撃されても、それが各ターン初めてならば《ガイラオウ》とバトルさせることが出来るまさに肉壁だ。
しかし。
「——我がターン——!!」
カードを引いたニュークリア・デイは、遂に動き出す。
ヒナタの場のカード達を全て片付けるために。
「かくなる上は——ソウルシフトでコストを下げ、《デトロイト・テクノ》進化——!!」
次の瞬間、瘴気が一気に収束した。
そして——究極の偽りの神を作り出す。
「《神世戒 ニュークリア・デイ》!!」
次の瞬間——破滅の光が場を覆った。
そして、放たれたそれに《モルト「覇」》と《コートニー》が焼き尽くされ、山札の一番下へ送還される。
更に——
「《シューメイン》の効果でマナから《空腹の超人》を再び出し、更に《ニュークリア・デイ》で《ガイラオウ》を攻撃!!」
——《ガイラオウ》も破滅の光に飲み込まれ、消滅する。
1ターンのうちにまたも場は半壊したと言っても良い。
コトハの場に残されたのは《サソリスレイジ》のみ——
——このままじゃ、ジリ貧だわ……!! 相手には後続もいるのに……このまま、あいつにターンを渡したら——
今の手元のカードだけでは、《ニュークリア・デイ》を処理する事が出来ない。
それどころか、後続が出れば危なくなってしまう。
「コトハ」
「……分かってる……分かってるけど……!」
疲労で朦朧とした頭を揺すり起こす。
何とか、この場を切り抜けられる策がないものか、と——
「——お前なら、いける。お前自身が大丈夫だって言ったんだ。絶対に、勝利への一手を引き寄せられる——」
「ヒナタ……?」
「お前が俺を信じてくれた——俺も、お前を最後まで信じてるんだ。とっくの前からな!」
——そうだ。ヒナタは、あたしのことを信じて隣を任せてくれた——あたしが、弱気になったら何にもならないじゃない!!
カードを引いた。
このターンで決めなければ苦しくなる。
そして——手に握ったそれを、見た。
「!」
『コトハ様! 僕も、大好きなコトハ様の為に頑張りますにゃ!』
「ニャンクス……! あんた、カードが……!」
それは、ニャンクスのカードであった。
しかし、いつにもなく光輝いている。そして——ガラスが割れるような音と共に——その姿を露わにした。
「ニャンクス、どうなってんだよ……!?」
「そ、そうよ、その姿って——!?」
『え、えーっとさっぱり僕にも——だけど、今ならコトハ様と波長100%、最高のコンディションで武装が出来そうですにゃ!』
「……よし、分かったわ——一気に決めるわよ!!」
コトハはマナをチャージし、7枚のマナをタップする。
そして、
「《牙英雄 オトマ=クット》を召喚! そのマナ武装7でタップした自然のマナ7枚をアンタップするわ!」
「? 何をするつもり、如月コトハ——!!」
「有栖川ツグミ。いや、アピセリン!! もう終わりにしましょう!!」
再び、コトハは7枚のマナをタップした。
「——大地の精よ、彼の者に大いなる力を。そして——賢く、そして獰猛な我が最高の眷属に、祝福を!」
次の瞬間、辺りに自然のマナが氾濫する。
そして——彼女は、自身の最も信頼する従者を繰り出す。
「《霊樹の賢獣星 ニャンクス・プリエーゼ》、召喚!!」
虚空を裂き、現れたのは大きな杖を両手で抱えたニャンクスであった。
いつもの帽子に長靴をはき、今度は大きなマントも広げ、そして巨大な魔法陣を展開する。
『従者ニャンクス、推参!! コトハ様、僕に指示をお願いしますにゃ!』
「頼むわよ。あんたの効果で、超次元ゾーンから《護衛武装 ロシアンブルー・ディープス》をバトルゾーンに!」
ガオオオオン、という咆哮と共に、超次元の穴が開く。
そこから獰猛なる牙と爪を持ったサーベルタイガーが姿を現す。
「せ、成長してる!? ステラアームドも!?」
『コトハ様! 僕の効果も使ってください! まだ、いけますにゃ!』
「そうね。《ニャンクス・プリエーゼ》の大地(ガイア)マナ武装5、発動!!」
ニャンクスの杖が光る。
それと同時に、決闘空間に大きな草原が広がった。
「マナゾーンにドラゴン、または自然のクリーチャーが5枚以上あるとき、あたしはマナからドラゴンを召喚することができる! 更に、《ロシアンブルー・ディープス》の効果で、あたしのドラゴンの召喚コストは2少なくなる——よって、残る3マナをタップし、《寄生目 トノサマパラス》をバトルゾーンに!」
「並べたの……だけど、もう無意味よ!」
「いいえ。無意味ではないわ。ターンの終わりに、あたしの場のドラゴンのコストが合計20以上の時——《ロシアンブルー・ディープス》は武装する」
霊樹の賢獣星 ニャンクス・プリエーゼ 自然文明 (7)
クリーチャー:ビースト・コマンド・ドラゴン 9000
R・コア
バトルゾーンに自然以外のクリーチャーがあれば、自分のマナゾーンのカードは全ての文明を得る。
ガードマン
このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、超次元ゾーンからK・コアを持つステラアームド・クリーチャーをバトルゾーンに出す。
大地マナ武装5--自分のマナゾーンに、ドラゴン、または自然のクリーチャーが合計5枚以上あれば、マナゾーンからクリーチャーを召喚しても良い。
W・ブレイカー
護衛武装 ロシアンブルー・ディープス 自然文明 (5)
ステラアームド・クリーチャー:ビースト・コマンド 5000
R・コア
自分のドラゴンのコストは2少なくなる。
星芒武装—自分のターンの終わりに場のドラゴンのコストの合計が20以上ならば、このクリーチャーを裏返して、「ニャンクス」と名前にあるクリーチャーの上に重ねる。
再び、ツグミは動揺を見せた。見れば、コトハの場のドラゴンの合計コストは《サソリスレイジ》の8、《オトマ=クット》と《ニャンクス》の7×2=14で既に20を超えている——!
「これが、真の星芒武装——あんたに、全部ぶつけるわ! あたし達の、全力全開!!」
コトハは、《ロシアンブルー・ディープス》のカードを裏返し——《ニャンクス・プリエーゼ》の頂に重ねた。
「大地よ。更なる祈りをささげ、我が最高の僕に加護を。今、聖域の番人として、彼の者は降臨する——」
次の瞬間、大地が揺れる。そして、再び人間のそれに近い四肢が現れ、今度は衣を纏っていく。
——そうだ、この感覚——!
彼女は眼を開く。
優しく、そして獰猛なる賢者は聖域の番人として君臨した。
星の力を受けた彼女の真の姿が露わになる——
《樹海の女法王 ニャンクス・ガイアード》!!」
- Act10:伝える言の葉 ( No.349 )
- 日時: 2016/08/25 00:57
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
「すげぇ……これが、コトハとニャンクスの、星芒武装……!」
ヒナタは圧倒されていた。
”彼女”の桁違いな存在感を前にして。
《樹海の女法王 ニャンクス・ガイアード》——その第一印象は美しい、であった。
身の丈もあろうかという宝杖を構え、上半身には鎧状の胸当てを付けている。後ろには純白のマントを羽織っていた。
スパッツ状の下着を覆うのは、透明なスカート状の布だ。それらすべてが神秘的で、触れてはいけないように思える程に綺麗だった。
何より印象的だったのは、高位であることを示す宝冠、そしてその左右に生えた猫の耳であったが。
「ターンエンドよ」
余裕を持った表情の彼女に——ツグミは一気に仕掛ける。
そちらから出て来ないのならば——先に動き、叩き潰すだけだ。
「私のターン——《「命」の頂 グレイテスト・グレート》を召喚。その効果で、墓地から《アピセリン》を再びバトルゾーンに!!」
「命」の頂 グレイテスト・グレート SR 無色 (10)
クリーチャー:アンノウン/ゼニス 21000
このクリーチャーを召喚してバトルゾーンに出した時、自分のマナゾーンまたは墓地から好きな数のクリーチャーをコストの合計が7になるように選び、バトルゾーンに出す。
Q・ブレイカー
エターナル・Ω
現れたのは、天頂の者・ゼニス。
そして、彼は命を司る者。その権限により、墓地から、そしてマナからあらゆる命を生み出せるのだ。
それにより、《アピセリン》が再び姿を現す。
が、しかし——
「《ニャンクス・ガイアード》の効果発動」
『いっきますにゃ!』
——次の瞬間、《ニャンクス》も動いた。
その宝杖を地面に突き刺し、更に魔法陣が広がる。
「いずれかのプレイヤーがクリーチャーを召喚した時、それとコストが同じか少ないクリーチャーをバトルゾーンに出せる。この意味、分かるかしら」
「なっ……!!」
奇しくも、それはさっきと同じ状況を演出することになった。
つまり。自分の召喚だろうが、相手の召喚だろうが、それに反応してマナからクリーチャーを出すことが出来るのだ。
次の瞬間、《ニャンクス》の魔法陣から更なる命が生み出される。それでコトハが呼び出したクリーチャーは——
「数多の大地を食らい、暴走しなさい——《暴龍事変 ガイグレン》!!
それは、火の全てのマナを食らいつくし——暴走する龍。
大いなる熱と共に、顕現したのだ。
「《ガイグレン》……!?」
その強大な存在を前にして、ツグミは立ち尽してしまう。
得意気に言ったのは、ヒナタだった。
「コトハのデッキに合うと思って、渡した甲斐があったぜ。これで、《鬼丸「覇」》の借りは返したってことで良いよな、コトハ」
「まぁね。こいつは選んだら自パワー以下のクリーチャーを全て破壊するまさに歩く戦術兵器——どうする?」
「お、おのれ……!! 《アピセリン》の効果で《バアル・ゼビュー》を出して、ターンエンド!」
続くヒナタのターン。
彼もまた、コトハを支援するために動き出したのだった。
「俺は、《メガ・マナロック・ドラゴン》を召喚! その効果で、ニュークリア・デイ。お前のマナを3枚、フリーズする!! ターンエンドだ!!」
「ぐううッ……!! おのれ、人間め……!!」
唸ったニュークリア・デイはカードを引いた。
しかし、マナを縛られた所為で大型ばかり手札にため込んでいた彼は一気に行動が出来なくなってしまう。
そのまま——コトハのターンとなったのであった。
「それじゃあ——もう、終わりにしましょう!! 7マナで《凶英雄 ツミトバツ》を出し、更に《ニャンクス》の効果でマナから《ツミトバツ》をもう1体出すわ! これで、パワーマイナスは2×7000——《ニュークリア・デイ》、《アピセリン》、《バアル・ゼビュー》を破壊よ!」
「ま、まずい……!!」
「何が原因で暴走したのか——あんたがどうしてこうなったのか——あたしは知る必要がある。だから教えてほしい——あんた達のことを!!」
手を伸ばし、コトハは叫ぶように宣言する。
「《暴龍事変 ガイグレン》で攻撃!!」
ガアアアア、と叫んだ《ガイグレン》はそのまま掲げた巨大な剣を振り下ろし、ツグミのシールドを叩き割る。
しかし、暴龍は止まらない。
マナを食らい、再び起き上がり、更に剣を振るった。
「マナ武装9、《ガイグレン》アンタップ!!」
再び、《ガイグレン》がシールドを叩き割った。
その破片が、ツグミへと襲い掛かる。
「ッ……!!」
「もう1発!! マナ武装9、《ガイグレン》アンタップ!!」
起き上がった《ガイグレン》は止まらない。
際限なく上昇するパワー、そして止まない攻撃。
遂に、ニュークリア・デイのシールドまで全て叩き割った。
が、しかし——
「S・トリガー、発動——《アポカリプス・デイ》」
——次の瞬間、またも先ほどの試合と同様に、場のクリーチャー全てが破滅の光に包まれて消滅する。
煙が舞い、正面が見えなくなった。
何とか、軍勢は全て消し飛ばしたか、とツグミは正面を見た。
「よくやったわね、ニュークリア・デイ——」
「……主、あれを——」
「……え?」
見える。
人影が見える。
如月コトハと、暁ヒナタのものかと最初は思ったが——違う。
遠近的に有り得ない。
そして、疲弊した心に追い打ちをかけるように、声が聞こえてくる。
「《ニャンクス・ガイアード》の最後の効果——それは、破壊される時、代わりに手札からドラゴンを捨てれば場に留まるということ」
——それはコトハのものだった。
曰く。命を扱う女教皇に相応しいこの能力は、武装解除の代わりに身に着けたもので、消耗こそ激しくなるが、その分生き残ったときは武装した状態のままのため、有利になるのだという。
しかし、にわかに信じられなかった。あの破滅の光を受けて生き残っているということが。
「いる……嘘でしょ」
彼女は信じられないと言わんばかりに口を開く。
完全に、そこには彼女が立っていた。
樹海の女法王 ニャンクス・ガイアード 自然文明 (12)
スターダスト・クリーチャー:ワービースト・コマンド・ドラゴン 13000
R・コア
自分のマナゾーンのカードは全ての文明を得る。
いずれかのプレイヤーがクリーチャーを召喚した時、そのクリーチャーとコストが同じかそれよりも小さいクリーチャーを自分のマナゾーンからバトルゾーンに出しても良い。
T・ブレイカー
このクリーチャーが破壊される時、代わりに手札からドラゴンを1体捨ててもよい。
『これが、女法王(ハイプリエステス)の力です!』
「さあ。これで終わりよ!!」
「そんな、馬鹿な——!!」
ツグミは——いや、アピセリンは驚いたように目を見開いた。
最早、この星を止めることは出来ない。
「コトハッ!! 思いっきり、最大パワーで決めてやれ!!」
「ええ、分かってるわ!!」
ヒナタの言葉に頷き、コトハも息を吸う。
肉薄し、《ニャンクス》が杖から、極大の光を放つ——
「《樹海の女法王 ニャンクス・ガイアード》で、ダイレクトアタック!!」
——空間が光に包まれる。
偽りの神も、そしてツグミも、それを前にして成す術が無い——
そして、真っ白に覆われる視界。
「や、やった——」
そう言ったコトハの視界は——次の瞬間、黒く塗り潰されたのだった。
- Act10:伝える言の葉 ( No.350 )
- 日時: 2016/08/25 14:58
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
***
「……」
少し、眩しい。光が上から照り付けてくる。
自分はつまり、寝ていると言う事なのだろう——あの後、視界がブラックアウトして——
そんなごちゃごちゃとしたことを考えているうちに、彼女は起き上がった。
「!?」
「あ、起きた」
そして、彼女は思わず飛びのく。
目の前に、ヒナタが居たからだ。
まさか、ずっと傍にいてくれたと言うのだろうか。
「あ、あんたが何で……!? てかここ何処!?」
「スタジアムの医務室だよ。心配かけさせやがって。決闘空間での戦いの後、自分がどうなったのか覚えてねーのか?」
「え、えっと……確か、気を……失った?」
「ああ、そうだ。決闘空間が開いたとこから感知して、あの後すぐにフジ先輩やノゾム、ホタルが駆けつけてきたんだ」
「そ、そうだったんだ……」
「先輩曰く、魔力を大量消費したかららしい。もう少し休んでおけよ」
確かに、今も妙な倦怠感と疲労感にコトハは襲われていた。
それを知った途端に、どさっ、とベッドに落ちる。
そういえば、足の痛みが引いていた。触ってみたが、傷らしき傷も見当たらない。ニャンクスかハーシェルが治してくれたのだろうか。
当のニャンクスは、デッキケースから寝息が聞こえる辺り、もう寝てしまったのだろうが。
「……そういえば!」
「何だよ」
「何だよ、じゃない! あの子は、有栖川ツグミはどうなったの!?」
「ああ、あいつか。あの子の能力については、また詳しく聞くことになるかもしんねーけど、どうやら”サイコマインド”の持ち主だったらしいんだ」
「……何それ」
サイコマインド。
ヒナタ曰く、それはクリーチャーと生まれつき適応率がかなり高い超能力者のことで、特にクリーチャーを実体化させる、またはクリーチャーを引き付けるといった能力を持つらしい。
そして、当初海戸への訪問、自身の所に突如やってきた《アピセリン》の力を心配した零央の関係者によるものだったのだ。
今まで以上に鮮明に力がフィットしたそのカードを、彼女は気に入っていたものの、周囲の人間は得体の知れない力が彼女に悪影響を及ぼすのではないか、と心配したらしい。
そしてまた、検査の為に試合の延期を持ち出したと言う。
「そ、そうだったんだ……」
「この辺りの話は先輩の父さんしか知らなかったみてーだな。クリーチャー関係の話もあって、鎧龍も延期を受け入れたらしい。零央は、超能力だとかPSYについての研究も進めているらしいからな」
コトハにとっても、いきなり情報量が多すぎて分からないことだらけだった。
となれば、ツグミが暴走したのもアピセリンによるものだとすれば納得が行く。
「で」
「……で、って何よ」
「だからさっきの話の続きだよ。2人っきりで話したいこと、あったんじゃねえのか?」
「あ、いや、その」
彼女は言い淀む。
確かに今、この部屋は自分たちしか居ない。2人っきりだ。
他の面々は帰ったか、今回の件についての対応に追われているのか。
しかし、タイミングが邪魔されてしまっただけあって、勇気が出ない。
と、次の瞬間であった。
ガチャリ
「おーう、テメェら。そろそろ良いか?」
入って来たのはフジであった。
「武闘先輩……!」
「如月。ご苦労だったな。具合はどうだ?」
「もう大丈夫です」
「そうか……あの後、少しお前の持っていたニャンクスのカードを調べたが、やはりニャンクスとお前の波長が一致した結果、アップデート——つまり純粋強化された状態らしい。それで体が少しついていってなかったのかもしれねえ。だがもう心配無用! 多分、次からは慣れて倒れることもねえはず」
「はぁ……」
「そして、デッキに”超技呪文”も入っていた。これを使うことも出てくるかもしれねえな」
「超技、って白陽とかクレセントちゃんの?」
「そうみてえだな。やったじゃねえかコトハ」
こくり、とコトハは頷くばかりだった。
しかしさすがにその表情にも、もう疲れが見えていた。
「どうする? 家族は呼ぶか?」
「いや、大丈夫です。自力で帰れますから」
「だがせめて、ヒナタ。お前途中まで付いていってやれ」
「言われなくてもやりますよ。流石に心配ですから」
彼女の身の安全も考慮し、結果的にヒナタがコトハを途中まで送っていく、ということになった。
さっきのこともあり、彼女もそれで同意する。
「それじゃあ、詳しい事後処理についてはまた後々、な」
「はい」
「此処もいつまでも開けているわけにはいかねえ。やべえなら病院行くなりしておけ。足はハーシェルが必死こいて治してくれたから、またホタルと奴にお礼を言っとくんだな。レンやガキんちょ共はもう帰したから」
「分かりました」
それじゃあ気を付けて帰れよー、と言い残して彼は去っていく。
有栖川ツグミのことや、ニャンクスのこと。
情報量が多すぎて纏めきれないが、またすぐに聞けることだ。
取り敢えず今は——
「帰ろっか」
「そうだな。だいぶ遅くなっちまった」
***
夏とは言え、やはりこの時間になると陽も当たらないので涼しくなってくる。
夜灯や建物の電気が彩る、暗くなった街で何も言わずに2人は歩いていた。
というか、この男はどれだけ鈍感なのだろうか。恥ずかしげも臆面も出さずに、「2人っきりで話したいこと、あったんじゃねえのか?」などと言い出すのだから。絶対に気付いていない。気付いているとすれば絶対わざとだろう。
もう嫌だ、地面に埋まりたい。出来れば、さっきのことは蒸し返さずにもう1回無かったことにして仕切り直すつもりだったのに、コトハは完全に逃げ道が無くなってしまっていた。
バス停についたところで、足を止める。
ニャンクスに言われた事を思い出す。
もう、自分に嘘をついて苦しみたくはないのだから。
「ねえ。ヒナタ」
「何だ?」
俯き加減になって、恥ずかしそうになってコトハは言う。
「”あなた”に伝えたい事があるの」
これは千載一遇のチャンス。今此処で言うのを逃せば、もう次は無いのかもしれない。
ぐっ、と拳を握った。
胸の鼓動が高鳴り、速いテンポを刻んでいく。
言わなければ。言わなければ。
此処で彼に伝えなければならない。
深呼吸した。
今、正面に居る彼の瞳を見据える。
今言える、自分の言の葉に乗せて——
「暁ヒナタ——あたしは、あなたのことが、好きです」
- Act10:伝える言の葉 ( No.351 )
- 日時: 2016/08/25 08:27
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
言ってしまった。
もう、後戻りはできなかった。
じっ、と彼の瞳を見据える。いつもの自分なら、此処で照れ隠しの1つでも言ったかもしれない。
しかし。もう逃げないと決めたのだ。
ありのままの自分を、彼に伝えた。
「今日、あたしは、またあなたに助けられた。無理して1人で立ち上がろうとしたあたしに、ヒナタは肩を貸してくれた。それで、魔力が切れても最後まで戦えたのかもしれない。あなたといたら、不思議と力が沸いてきて、もっと頑張ろう、って思える。いや——そんなこと、もう当の昔に気付いていたのかもしれない」
なのに、と彼女は続ける。
「あたしは何度も逃げた。照れ隠しにキツいこと言ったり、素っ気ない態度をとったり——だから、逃げた分だけ自分にツケが帰って来た。男の子に、こんな気持ちを抱くってことが分からなかったのかもしれない。自分の気持ちに気付くのに時間が掛かって——気付いてからは、もっと焦った——もっと苦しんだ。あんたのことを知るうちに、もっと——」
胸を抑えた。
それは、今までの彼女自身の苦しみを意味しているようだった。
「だから、もう逃げたくないって思ったの。あんたが逃げずに困難に立ち向かってきた姿が——あたしを変えたんだと思ってる」
一息置くと、彼女は告げる。
「あたしと、付き合ってほしい。今までの関係から、一歩進んだ関係で——」
しばらく、沈黙が続いた。
ヒナタの方も、無意識のうちに察していたものの、それでもいざ言われるとどう返せばいいのかさっぱり分からなかった。
しかし。ヒナタとしては彼女が意を決して自分の気持ちを伝えてくれたのに、それを無下には出来なかった。
逃げるわけには、いかない。
「ごめん、コトハ」
そう、告げる。
ふぅ、と溜息をつくとコトハは言った。
頬が熱い滴で濡れる。
この返事は——フられたのだろうか。
「……うん。分かってたわ。あたしは——」
「ちげーよ、そういうことじゃねえ。俺も、お前に伝えたいこと、謝っておかなきゃいけないことがあるんだよ」
「えっ……?」
意外そうな顔で、コトハは立ち尽す。
ヒナタはぽりぽり、と頭を掻くと続けた。
「俺も、さ。ずっと考えてたことがあるんだ。何故かお前を見ると、ナナカの顔と重なるのか——実はそんなことが何度もあって、苦しかった」
彼女も聞いたから知っている。
死別した幼馴染のことだ。
それと似ている、と前にも言われた。しかし、面影が重なって見えるとまでは知らなかった。
「……だけど。やっと、分かったんだ。俺は、俺のことをいつも引っ張ってくれるお前のことが——気になってたんだ。あいつと同じで、俺の支えになってくれたんだってよ、やっと気づいた」
「!」
「……でも、俺はやっぱ臆病だった。気持ちを伝えるなんて、もってのほかだ。今の生温い関係を望んだ。これでいい、これでいい。気の迷いだ。ナナカと重なって見えてるだけだ——そんな最低な考え方をしてたんだ」
彼も、一歩を踏み出すのが怖かったのだろう。
だから気付いていないふりをした。
今のまま、現状維持をしようとして逃げていた。
「だけど、こないだずっと考えたんだ。お前の事を。そして俺自身のことを」
弱くて。泣き虫で。臆病な暁ヒナタは、やはり彼の中にまだ居た。
成長しても、自分は自分。
過去、そういった経験がある限り、それは彼の中の一面として蝕んでいたのだ。
「俺はお前の思ってる程かっこいい人間じゃない。強い人間じゃない。でも——そんな俺でも、あんな戦いを勝ち抜いて来れたのは、仲間達のおかげだ。特に、お前には俺のケツを何度も引っ叩いて貰ったからな」
今日の試合も、そうだった。
コトハの諦めない、という信念に何度突き動かされたことか。
「逃げてたのは、俺も同じだ。コトハ——ごめん」
「そんな、あたしは——」
「俺の気持ちはまだ、好きって言えるほど固まっちゃいないけど——お前に、興味がある。お前がどういう奴で、お前がどういう女の子なのか——もっと知りたいと思ってる。だから——こっちからもよろしく頼む。お前のおかげで、俺もお前から正面から向き合いたいって思えたんだ」
しばらく、沈黙が続いた。
そして——再びコトハの目から滴が零れる。
「ひ、ひ、ひなたぁ……」
「うわあ!? 何で泣くんだよ!?」
「バカぁ! 紛らわしい言い方して! こっちはフられたかと思ったんだよ!? あたしは、あたしは——」
「もう泣くんじゃねえよ。可愛い顔が台無しだ」
「普段、可愛くないとか言ってるくせに!! ばかー!!」
「あれはお前がツンケンしてるからだろ!? お前、男子から大人気なんだぞ……かく言う俺も……実は」
「ううう……」
ぎゅうう、とコトハはヒナタにしがみ付くように詰め寄った。
「……ねえ。悪いって思ってるならさ、1つだけ言う事聞いてよね」
「何だよ」
「ヒナタ、そのままね」
彼女は、ヒナタに近寄ると、顔を素早く抱き寄せる。
そして——そのまま、顔を自分の方に寄せると、ヒナタの唇に自分のそれを押し当てた。
余りにも唐突だったので、ヒナタは固まってしまう。
「……今のは上書きだから」
「えっ……?」
「お互いにファーストキスじゃなくなっちゃったけど——あなたのを上書きしてもらったほうが良いって思ったから」
「あ、あのだなぁ、コトハ。流石にちょっと恥ずかしいっていうか、大胆過ぎるっていうか——」
「バカ!! 仕方ないじゃない!! これがあたしの気持ちなの!! 大体、あんな奴にキスなんかされなきゃ、こんなこと、もっと……その……雰囲気とか、そういうのがえーっと……とにかく。いずれやることが今に繰り上がっただけなんだから。……それとも、嫌だった?」
「あ、いや、その、確かにびっくりしたけど……」
戸惑うヒナタ。
しかし、拗ねたような彼女の顔が、とても愛らしく思えたので答えてやることにする。
「——ちょっと、可愛すぎて……心臓に悪かったっていうか」
「ああ、うっ……かわっ……勘違いしないでよね! あんな奴みたいに、誰かれ構わずこういうことをするんじゃないんだから! あたしは本当に好きな人としか、こういうことはしないの!」
あんな奴が誰を指しているのかは、もうヒナタは聞くまでもなかった。
相当ライバル視しているのだろう。
「分かってるよ」
「……ううう、馬鹿にして……いつか、絶対にあなたにも同じことを言わせてやるんだから! あたしのことが好きだ、って!」
取り敢えず想いをため込んだ分、吹っ切れると、色々大胆になるタイプなのは分かった。
「だから……その。何ていうの。これからもよろしくね、ヒナタ」
身をひるがえすコトハ。
見れば、もうバスが来ていた。
「じゃあ——D・ステラ、絶対に優勝しよ! そっちも、気を付けて帰ってね!」
「あ……ああ」
そのまま、彼女はバスの中へと消えてしまう。最後は曖昧な返事で返したことを直後、彼は猛烈に後悔した。
焼けつくような、熱い唇の感覚を忘れられずに——ヒナタは未だに高鳴る胸を抑える。
——やべぇよ……理性で煩悩を抑えるので精一杯だったんだけど俺……。
彼女の、また新たな一面が見えてくる。何であれ、これからが楽しみだ。
共につかみ取った勝利。
そして、新たな関係。
この日を境に——ヒナタの運命は、更に加速していったのだった。
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