二次創作小説(紙ほか)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- デュエル・マスターズ D・ステラ 【侵略世界編】
- 日時: 2017/01/16 20:03
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
【読者の皆様へ】
はい、どうも。二次版でお馴染み(?)となっているタクと申します。今回の小説は前作の”デュエル・マスターズ0・メモリー”の続編となっております。恐らく、こちらから読んだ方がより分かりやすいと思いますが、過去の文というだけあって拙いです。今も十分拙いですが。
今作は、前作とは違ってオリカを更にメインに見据えたストーリーとなっています。ストーリーも相も変わらず行き当たりばったりになるかもしれませんが、応援よろしくお願いします。
また、最近デュエマvaultというサイトに出没します。Likaonというハンドルネームで活動しているので、作者と対戦をしたい方はお気軽にどうぞ。
”新たなるデュエル、駆け抜けろ新時代! そして、超古代の系譜が目覚めるとき、デュエマは新たな次元へ!”
『星の英雄編』
第一章:月下転生
Act0:プロローグとモノローグ
>>01
Act1:月と太陽
>>04 >>05 >>06
Act2:対価と取引
>>07
Act3:焦燥と制限時間
>>08 >>10
Act4:月英雄と尾英雄
>>13
Act5:決闘と駆け引き
>>14 >>15 >>18
Act6:九尾と憎悪
>>19 >>21
Act7:暁の光と幻の炎
>>22 >>23
Act8:九尾と玉兎
>>25
第二章:一角獣
Act1:デュエルは芸術か?
>>27 >>28 >>29
Act2:狩猟者は皮肉か?
>>30 >>31 >>32 >>33
Act3:龍は何度連鎖するか?
>>36 >>37
Act4:一角獣は女好きか?
>>38 >>39 >>41 >>42 >>43 >>44 >>45
Act5:龍は死して尚生き続けるか?
>>48
第三章:骸骨龍
Act1:接触・アヴィオール
>>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55
Act2:追憶・白陽/療養・クレセント
>>56 >>57
Act3:疾走・トラックチェイス
>>66
Act4:怨炎・アヴィオール
>>67 >>68
Act5:武装・星の力
>>69 >>70
Act6:接近・次なる影
>>73
第四章:長靴を履いた猫
Act1:記憶×触発
>>74 >>75 >>76 >>77
Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解
>>78 >>79 >>80
Act3:捨て猫×少女=飼い猫?
>>81 >>82
Act4:リターン・オブ・サバイバー
>>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90
Act5:格の差
>>91 >>92 >>93 >>104
Act6:二つの解
>>107 >>108 >>109 >>110
Act7:大地を潤す者=大地を荒らす者
>>111 >>112 >>113
Act8:結末=QED
>>114
第五章:英雄集結
Act1:星の下で
>>117 >>118 >>119
Act2:レンの傷跡
>>127 >>128 >>129
Act3:警戒
>>130 >>131 >>132
Act4:策略
>>134 >>135
Act5:強襲
>>136
Act6:破滅の戦略
>>137 >>138 >>143
Act7:不死鳥の秘技
>>144 >>145 >>146
Act8:痛み分け、そして反撃へ
>>147
Act9:fire fly
>>177 >>178 >>179 >>180 >>181
Act10:決戦へ
>>182 >>184 >>185 >>187
Act11:暁の太陽に勝利を望む
>>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>193 >>194 >>195
Act12:真相
>>196 >>198
Act13:武装・地獄の黒龍
>>200 >>201 >>202 >>203
Act14:近づく星
>>204
『列島予選編』
第六章:革命への道筋
Act0:侵攻する略奪者
>>207
Act1:鎧龍サマートーナメント
>>208 >>209
Act2:開幕
>>215 >>217 >>218
Act3:特訓
>>219 >>220 >>221
Act4:休息
>>222 >>223
Act5:対決・一角獣対玉兎
>>224 >>226
Act6:最後の夜
>>228 >>229
Act7:鎧龍頂上決戦
Part1:無法の盾刃
>>230 >>231 >>232 >>233 >>234 >>235 >>236 >>239
Part2:ダイチの支配者、再び
>>240 >>241 >>242 >>243 >>244 >>245 >>246 >>247 >>248 >>250
Part3:燃える革命
>>252 >>253 >>254 >>255 >>256
Part4:轟く侵略
>>257 >>258 >>259 >>260 >>261
Act8:次なる舞台へ
>>262
第七章:世界への切符
Act1:紡ぐ言の葉
>>263 >>264 >>265 >>266 >>267 >>268 >>270
Act2:暁ヒナタという少年
>>272 >>273
Act3:ヒナとナナ
>>275 >>276 >>277 >>278 >>279 >>280 >>281
Act4:誓いのサングラス
>>282 >>283 >>284 >>285
Act5:天王/魔王VS超戦/地獄
>>286 >>287 >>295 >>296 >>297 >>298 >>301 >>302 >>303 >>304 >>305
Act6:伝説/閃龍VS獅子/必勝
>>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>323
Act7:青天霹靂
>>325 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>331
Act8:揺らぐ言の葉
>>332 >>333 >>334 >>335 >>336
Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神
>>337 >>338 >>339 >>340 >>341 >>342 >>343
Act10:伝える言の葉
>>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351
Act11:連鎖反応
>>352
『侵略世界編』
第八章:束の間の日常
Act1:揺らめく影
>>353 >>354 >>359 >>360 >>361 >>362
Act2:疑惑
>>363 >>364
Act3:ニューヨークからの来訪者
>>367 >>368 >>369 >>370 >>371
Act4:躙られた思い
>>374 >>375 >>376 >>377
Act5:貴方の為に
>>378 >>379 >>380 >>381 >>384 >>386
Act6:ディストーション 〜歪な戦慄〜
>>387 >>388 >>389
Act7:武装・天命の騎士
>>390 >>391
Act8:冥獣の思惑
>>392
Act9:終演、そして——
>>393
第九章:侵略の一手
Act0:開幕、D・ステラ
>>396
Act1:ウィザード
>>397 >>398
Act2:ギャンブル・パーティー
>>399 >>400 >>401
Act3:再燃
>>402 >>403 >>404
Act4:奇天烈の侵略者
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>411
Act5:確率の支配者
>>412 >>413
Act6:不滅の銀河
>>414 >>415
Act7:開始地点
>>416
第十章:剣と刃
Act1:漆黒近衛隊(エボニーロイヤル)
>>423 >>424
Act2:シャノン
>>425 >>426
Act3:賢王の邪悪龍
>>427 >>428 >>429
Act4:増殖
>>430 >>431 >>435 >>436 >>438 >>439 >>440 >>441 >>442
Act5:封じられし栄冠
>>444
短編:本編のシリアスさに疲れたらこちらで口直し。ギャグ中心なので存分に笑ってくださいませ。
また、時系列を明記したので、これらの章を読んでから閲覧することをお勧めします。
短編1:そして伝説へ……行けるの、これ
時系列:第一章の後
>>62 >>63 >>64 >>65
短編2:てめーが不幸なのは義務であって
時系列:第三章の後
>>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103
短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル)
時系列:第四章の後
>>120 >>121 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126
短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日
時系列:第四章の後
>>149 >>150 >>153 >>154 >>155 >>156
短編5:恋情パラレル
時系列:第四章の後
>>157 >>158 >>159 >>160 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>173 >>174 >>175 >>176
短編6:Re・探偵パラレル
時系列:平行世界
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422
エイプリルフール2016
>>299 >>300
謹賀新年2017
>>443
登場人物
>>9
※ネタバレ注意。更新されている回を全部読んでからみることをお勧めします
オリジナルカード紹介
(1)>>96 (2)>>271
※ネタバレ注意につき、各章を読み終わってから閲覧することをお勧めします。
お知らせ
16/8/28:オリカ紹介2更新
- Act5:確率の支配者 ( No.412 )
- 日時: 2016/10/13 22:25
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
大歓声の中、遂にデュエルが始まった。
情報端末から、フジは2人の超次元のカードを確認していく。
「む。相手は変わらず、超次元の使用は無しか」
「『運命天導(ウィザード)』——それは、テイシュウの異名らしいわね。只物ではないわ」
「不気味ですね……あ、ヒナタ先輩の方も確認しないと」
——ヒナタとテイシュウのデュエル。
先攻2ターン目、早くもヒナタは動き始めていた。
「2マナで呪文、《勇愛の天秤》! その効果で、手札から《めった斬り・スクラッパー》を捨てて、カードを2枚ドローするぜ。ターンエンドだ!」
ヒナタ:山札27 手札4 マナ0/2 墓地2
初手は《勇愛の天秤》による手札交換。
堅実に、手札を整えていく動きだ。一方のテイシュウも、早々に動き始めた。
「俺のターン。マナをチャージし——2マナで《一撃奪取 マイパッド》を召喚。ターンエンドだネ」
テイシュウ:山札28 手札4 マナ0/2 墓地0
一方の彼が繰り出したのは、大量の電子機器を構えた無法者。
これにより、次のターンには4コストの水のクリーチャーを出すことが出来る——しかし。
「んじゃ、行くぜ! 3マナで《爆炎シューター マッカラン》召喚!」
「む」
次の瞬間、ヒナタの炎のマナから、炎の剣を構えた戦士が現れる。
そしてそのまま、彼のマナの力を纏い——剣に灼熱の火炎が顕現する。
「マナ武装3で《マイパッド》とバトルして、破壊だ!」
「……ほーう」
次の瞬間、地面を蹴った《マッカラン》は《マイパッド》へ肉薄して——その剣で薙ぎ払った。
真っ二つになった《マイパッド》は成す術なく破壊されてしまう。
「ターンエンドだ」
早くも相手のシステムクリーチャーを潰していく動き。
これで、次のターンにコスト軽減してクリーチャーを出す事は出来なくなってしまう。
ヒナタ:山札26 手札3 マナ0/3 墓地1
画して。
ヒナタは相手がアクションを起こす度に、それを潰していくメタビートであることが既に分かっていた。
獅子怒戦でも使った戦法であるが、この時は余りうまく決まらなかった。
しかし——今回、相手はビートダウンだ。彼の戦法が決まりやすいデッキでもある。
少し思案すると、テイシュウはカードを引いた。
静かな駆け引き。
それが今、終わりを告げようとしていた。
「……俺のターン。手札から《奇天烈 ガチダイブ》を見せる。召喚する時、進化クリーチャーを見せたため——コストマイナス2!」
そのまま、3枚のマナをタップする。
レン達はその効果に見覚えがあった。手札の進化クリーチャーを見せることでコストを軽減するクリーチャー——
「3マナで、《奇天烈 チャンG》を召喚!!」
奇天烈 チャンG UC 水文明 (5)
クリーチャー:マジック・コマンド/侵略者 4000
このクリーチャーを召喚する時、自分の手札から進化クリーチャーを1体相手に見せてもよい。そうしたら、このクリーチャーのコストを2少なくする。ただし、コストは0以下にならない。
このクリーチャーはブロックされない。
現れたのは、杖を構えた執事のようなロボット型クリーチャー。
巨大なサイコロを従えるその姿は、確率の侵略者のマジック・コマンドであることを意味していた。
さて。《ベガス》が来ると思って《マイパッド》を破壊したヒナタであったが、3ターン目にどのみちコマンドは現れたということになる。
次のターン——予測できるのは、侵略という行動であった。
テイシュウ:山札27 手札3 マナ0/3 墓地1
「ターンエンドだ」
観戦しているレン達としても、気分の良いものではない。
ヒナタが手札にもう1枚の《マッカラン》を握っていればいいのであるが——
「俺のターン、ドロー」
カードを引いた彼は、4枚のマナをタップする。
もう一度、テイシュウの行動を潰すために——
「——《早撃ち人形 マグナム》召喚」
「!」
会場はざわめきに包まれた。
彼が繰り出したのは、《早撃ち人形 マグナム》。踏み倒されたクリーチャーを直接破壊する、侵略に対する回答であった。
「ターンエンドだ」
「……暁ヒナタ」
静かにテイシュウは言った。
「どうやら、この俺のデッキを予測し、ガンメタして此処に来たようだネ」
「悪いけど、これも戦略だぜ」
「素晴らしい。実に素晴らしいよ——だけど我らがジンリュウでも、同じことはきつく言われているんだよネェ」
ニヤリ、と笑みを浮かべて彼は言い放つ。
「狂った勝負に全てを賭け、熱い勝負に人生を賭け——勝負とは常に敗北と表裏一体。だが、勝たねば全てを失うことだってある。では、勝つためにはどうすれば良いか——」
勝負に於ける鉄則。それはだんだん見えてくる。
シルクハットをキュッ、と握ると突き付けるように言った。
「——勝負事の鉄則は——相手が最も嫌がる事をやり続けることにあり——ってネ!!」
その言葉。
まさに、じわじわと追い詰められているはずなのに、かなり不穏に聞こえた。
「……メタビってのはそんなもんだろ」
「だがしかし。俺のデッキは、それを更に上回る——!! 君程度では、俺の戦法を破ることは出来ないんだよネェ!! 奇天烈の侵略者を、嘗めるなよ?」
言うと、彼は3枚のマナをタップした。
そこから、水のマナが生み出され、迸る知識が彼に力を与えた。
「呪文、《ストリーミング・シェイパー》! その効果で、山札の上から4枚を見せ、その中の水のカードを全て手札へ加える!」
「? 一体何を——」
展開されたのは、《機術士 ゾローメ》、《奇天烈 ベガス》、《奇天烈 コイコイ》、そして《終末の時計 ザ・クロック》だ。
「そしてすべて水のカード。全部手札へ加える」
「何をするんだ? 一体——」
「教えてやろう! 《奇天烈 チャンG》で攻撃!!」
杖を振り上げ、地面を蹴り——《チャンG》は突貫した。
「——水のコマンドの攻撃により、侵略発動! さあ、『運命天導(ウィザード)』と呼ばれしデュエリスト、リュウ・テイシュウのギャンブルデュエルをお見せしようかネ!!」
次の瞬間、《チャンG》に大量のコインが降り注いだ。
辺りは一転して暗くなる。
現れるのは夜の街。
だが、それらは1つの存在へ集積していく。カジノの街を取り込み、欲望と熱狂に取りつかれた侵略者が姿を現した——
「——熱く、そして冷静に、狂った勝負を始めよう! 賽は投げられた——《奇天烈 チャンG》進化!」
ルーレット、ダイスボード、あらゆるギャンブルの道具を身に着け、それは徐々に1つのクリーチャーとして顕現した。
投げられた賽から、どんな勝負が展開されるのかは、まだ誰にもわからない。これより、最高に狂った勝負が始まる。
「——ショータイム、《超奇天烈 マスターG》!」
- Act5:確率の支配者 ( No.413 )
- 日時: 2016/10/12 15:18
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
超奇天烈 マスターG SR 水文明 (7)
進化クリーチャー:マジック・コマンド/侵略者 9000
進化−自分の水のクリーチャー1体の上に置く。
侵略−水のコマンド
W・ブレイカー
このクリーチャーはブロックされない。
このクリーチャーがバトルゾーンを離れる時、偶数か奇数のどちらかを選ぶ。その後、相手は山札の上から1枚目を表向きにし、山札の一番下に置く。そのカードのコストが選んだ側であれば、このクリーチャーはバトルゾーンを離れるかわりにとどまる。
現れたのは、侵略前の《チャンG》とは打って変わり、巨大な図体とそれ以上に多くのギャンブル器具を身に着け、都市を取り込んだ侵略者。
余りにもけた違いな巨躯に、ヒナタは愕然としてしまう。
しかし。既に、隠れてその命を狙っていた《マグナム》の凶弾がそれを狙った。
「踏み倒したな! 《マグナム》の効果で破壊だ!」
「《マスターG》の効果発動!」
しかし。
弾丸が到達する前に、彼は宣言する。次の瞬間、バリアが展開されて《マグナム》の銃弾を防いだ。
そして次の瞬間、空中に巨大なツボが現れ、その中に《マスターG》の持っていたサイコロが入れられる。
「さあ、ご来場の皆さん!! これより、一か八か、丁か半かのゲームの始まりです!!」
「ああ!?」
「ククク……賭け金をベットした時点で、ディーラーであるこの俺から、お前は逃げる事が出来ない!」
「何言ってんだァ? ゲーム……まさか、さっきの《ベガスダラー》みたいなイカサマギャンブル効果か!」
「あんな侵略者の中でも初期に開発された、旧式雑魚と一緒にしないで欲しいネェ」
「あっ、酷いですテイシュウさん! 私の可愛い《ベガスダラー》をポンコツ呼ばわりするなんて! 大体開発時期が、そっちの方が後だっただけじゃないですか!」
後ろから響くリンユーの言葉をガン無視して彼は、宣告する。
既にここは、彼の取り仕切るゲーム会場。
ディーラーである彼に、ヒナタが背を向ける事は許されない。
「俺の《マスターG》が場を離れる時、丁か半か——つまり偶数か奇数のどちらかを選ぶ。その後、お前は山札の上から1枚目を表向きにして山札の一番下に置き——それが俺の選んだ側なら、こいつは生き残る」
「っ……マジかよ!?」
「そのデッキにとって嫌な事、それはメタが機能しない事だ。どんなに張り巡らされた罠も、イカサマも、発動しなければ意味がないんだよネェ!!」
「だけど、そんな運任せの能力、当たってたまるかってんだ!」
「——偶数」
容赦なく、テイシュウは言い放つ。
その言葉に、彼は従うしかない。どうにか、それが彼の言った方でなければ——《マスターG》は此処で破壊できるのだ。
しかし。
「——いっ……!」
捲られたカードは——《メガ・マグマ・ドラゴン》。コスト8で、偶数だ。
彼の言った方の数字だったため——バリアが銃弾を跳ね返し、《マスターG》はその巨躯でヒナタのシールドへ躍りかかった。
「はははははは! 大当たりだ! 叩き潰せ、《マスターG》でW・ブレイク!!」
サイコロが浮かび上がり、それがヒナタのシールドを2枚、叩き割る。
メタが機能せず、しかも相手の切札を出してしまった事はかなりの痛手だ。
まだリカバリーできないことも無いが……。
「S・トリガー、《勇愛の天秤》で《爆鏡 ヒビキ》を捨てて2枚ドローだ」
申し分程度の手札補充。
しかし、無いよりはましだった。今ので、より取れる戦略が増えたとも取れる。
「……成程、こっちのマナから丁半どっちが多そうかは推測できる。あながち、運任せの能力でも無さそうだが——それでも100%じゃない!」
確かに、先に切札を出させたのは痛いが——まだ、勝ち目が無いわけではない。
——パワーは高いし、除去耐性付きの厄介なクリーチャーだけど、まだやれる! こっちもパワーで勝負だ!
「5マナをタップ——《マッカラン》を進化、《ゴウ・グラップラー・ドラゴン》!」
現れたのは強大なる拳闘士(グラップラー)。
丸太のように太い、4本の脚を持ち、力無き者を粉砕する激龍(メガ・コマンド・ドラゴン)だ。
そして、そのまま《マスターG》へと突貫する。
ゴウ・グラップラードラゴン P 火文明 (5)
進化クリーチャー:メガ・コマンド・ドラゴン 6000+
進化−自分の火のクリーチャー1体の上に置く。
パワーアタッカー+6000
このクリーチャーは、アンタップされているクリーチャーを攻撃できる。
T・ブレイカー
「——《ゴウ・グラップラー・ドラゴン》は、パワーアタッカー+6000を持ち、攻撃時のパワーは12000だ! そのまま、バトル!」
「ふん、《マスターG》の効果発動!」
次の瞬間、再びバリアが展開された。
そして、《マスターG》によるサイコロが投げられる。
「——偶数」
カードの一番上を捲る。
それは——《メガ・マナロック・ドラゴン》、コスト6で偶数だ。
再び、《マスターG》は破壊を免れることになる。
「はあ。やれやれだねェ。ツイてないとでも言っておこうか。まあ、こんな日もあるさ」
「ターンエンドだ……!」
まずいことになった。
あの《マスターG》は、放置していれば革命ゼロトリガーも防げる化物だ。
今の彼の手札にあるカードでは、太刀打ちが出来ない。
そのまま、非情にもゲームは進められていく。
3枚のマナをタップすると、彼は宣言する。
「——2枚目の《奇天烈 チャンG》を、2枚目の《超奇天烈 マスターG》を見せて召喚。更に2マナで《マイパッド》も召喚——! さあ、《マスターG》で《ゴウ・グラップラー・ドラゴン》を攻撃して破壊!!」
「チッ……!」
思わず舌打ちする。
今度は一方的な破壊だ。パワーアタッカーのため、殴り返しに弱いのが案の定ネックになった。加えて、相手の場数は整ったと言っても良い。
シールドは、次のヒナタのターンに革命を発動させず、尚且つリーサル圏内に持っていける3枚という、何とも嫌な数だ。
このままでは、ヒナタは確実に負けるだろう。幾ら、《マグナム》が居ると言っても、そろそろバウンス除去であしらわれても良いころなのだ。
「ターンエンド。だんだんつまらなくなってきたネェ……そろそろ終わりにしよう」
「つまらねぇ、だと……?」
しかし。彼はまだ諦めてはいなかった。
「分からねえのか、ギャンブル野郎——ゲームっつーのは最後まで何が起こるか、ハラハラドキドキで分からねえ——それが基本中の基本だろうが! テメェに、それを分からせてやるぜ!」
「はっ、強がりを。見ただろ? 俺の手札にはもう1枚の《マスターG》がある。このまま、終わらせてやる」
「ああ、終わりにしてやるよ」
笑みを浮かべた彼は、高らかに言い放った。
「——”鎧龍の勝利”って結果を、テメェの言ってたエンタメとやらで決めてやるぜ!! 革命と言う名のエンタメでな!!」
5枚のマナをタップする。
このシチュエーションを待っていた。革命とは基本、受け身な戦法だ。
しかし——最後の一歩を踏み出すことは出来る。
そのまま、迷わず彼は5枚のマナをタップし、宣言した。
「——呪文、《ドギラゴン・エントリー》!!」
- Act6:不滅の銀河 ( No.414 )
- 日時: 2016/10/13 01:46
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
「レディースエーン、ジェントルメーン! これより、錚々たる顔ぶれの侵略者達——彼らをこのターンで全て、消し飛ばしてみせましょう——!」
突如、両腕を広げて観客に向かい、まるで手品師のような演技で宣言するヒナタ。
3体のクリーチャーを、このターンで消し飛ばす。
シールドが3枚あり、革命も発動できない状態で、何が出来るというのか。既に半信半疑で、テイシュウは食って掛かる。
「俺の場のクリーチャーを消し飛ばす、だとォ!? ははははははは!! リンユーのデュエルに感化でもされたか? そのシールドでは、革命も何も——」
「革命は起きるモノじゃねえ。この手で起こすモノだ。それを今から見せつけてやるよ! 《ドギラゴン・エントリー》の効果で俺はシールドを1枚、手札に加える——」
刹那、空に大穴が開いた。
激しい稲光が鳴っており、大いなる巨竜の出現を予感させる。
笑みを浮かべると、ヒナタは拳を突き上げた。
今この状況では、彼に頼るしかないのである。
「——そして、俺はコスト7以下の火のドラゴンを手札から場に出しても良い!」
「……何ィ!?」
ドギラゴン・エントリー R 火文明 (5)
呪文
自分のシールドをひとつ、手札に戻す。ただし、その「S・トリガー」は使えない。
火のコスト7以下のコマンド・ドラゴンを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。
「特筆すべきは、進化クリーチャーも出せるってことだ! 《マグナム》進化——!」
突如、爆炎に包まれて現れたのは《ドラッケン》だ。飛来するとともに、翼を広げ、戦闘機の装甲をその身に纏っていく。
肩にはガトリング砲が二問、現れた。
新たなる進化。
新たなる革命。
それは、その先に待つ勝利のため——
「革命の司よ、今こそ更なる進化の時! 暁の戦場に勝利を刻め!
《爆ぜる革命 ドラッケンA(アサルト)》!!」
——再び昇華し、大空へ羽ばたく。
会場は再び沸き立った。
これにより、ヒナタのシールドは残り2枚。
つまり——今こそ、革命が起こる時。
《ドラッケンA》の二門のガトリング砲が炎に包まれる。
それが、星型の《アサルト》を想起させるものに変わる。
そして、それが一気に撃ち放たれた——
「大いなる鳳龍よ、俺に力を貸せ! 俺の魂に従い、絶望に抗って革命せよ! 革命2、発動!」
次の瞬間、回転するガトリング砲の弾幕がその場を制圧する。
《チャンG》と《マイパッド》を、それは地面ごと耕し、そして根絶やしにしていく。
残るのは《マスターG》のみだ。
「《ドラッケンA》の革命2で、パワー13000以下の相手クリーチャーは全て破壊するぜ!」
「おのれ、折角リーサル圏内にぶち込めるように調整したというのに——ふ、ふはははは!! やっと面白くなってきたじゃないか——《マスターG》の効果発動、選択するのは奇数だ!!」
——そろそろ、奇数が出る頃合い——ッ!! さあ、捲れ!!
ヒナタは山札のカードを捲る。
そのカードは——《次元龍覇 モルト「覇」》、コスト7で奇数だ。
バリアが展開され、ガトリング砲による斉射を《マスターG》は耐えてみせた。
「耐えきったぞ!!」
「……いや、まだだ! 《ドラッケンA》で《マスターG》を攻撃だ!」
「くっ——!!」
通算、4度目の破壊。
次も言い当てることが、テイシュウには出来るだろうか。
この効果の都合上、相手が偶数と奇数のカードをデッキに一緒に入れている限り、失敗する可能性はゼロではないのである。
「……偶数!」
カードを捲った。
ヒナタはそれをテイシュウに見せつける。
「——わりーな。4度目は、無かったようだぜ。コスト3、《ネクスト・チャージャー》だ!」
「くっ——!!」
上空を飛び回る《ドラッケンA》。
その強襲の炎は、破壊を撒き散らしていく。
星のガトリング砲を前にして、《マスターG》の体が、文字通り地面ごと、そして自らの展開していた都市ごと、耕されていく——
「——《超奇天烈 マスターG》、破壊!!」
散々梃子摺ったものの、何とか彼の切札をヒナタは破壊する事に成功したのである。
驚き、目を見開いたのはコトハだ。
流れるような動きに、感嘆する。
「す、すごい! 本当にテイシュウのクリーチャーを皆破壊しちゃった!」
「伊達や酔狂で、ヒナタもデュエマをやってるわけじゃねえってこったな」
「ふむ。流石と言ったところだ。僕の認めたライバルというだけはある」
レンもまた、感心したように言う。
革命を自ら発動させ、決めに行くスタイル。スーサイド気味でありながら、フレキシブルな展開の仕方。彼らしいと言えた。
「オ、オレも見習わなきゃ……! すげえ、すげえよ先輩!」
「本当ですよ! やっぱり暁ヒナタというデュエリストは——強い! 強いです!」
ノゾムも、ホタルも、彼のプレイングに見入ってしまう。
「ひえー、危なかったぜ……。ターンエンドだ!」
「……クックック」
笑みを浮かべるテイシュウ。
今、彼は最高の愉悦を感じていた。
ギリギリの橋を渡らされているような緊張感。
ヒリヒリと胸の奥から競り上がってくる焦燥感。
そして、身体が悲鳴を上げるように喜んでいる快楽感。
自分の切札を破られた。これ程に、焼け付くような展開があるだろうか。
「——ハ、ハハハハ!! 面白い!! もっと俺を楽しませてくれ!! 《奇天烈 ベガス》召喚! その効果で、お前は山札の上から1枚目を表向きにしろ! もっと、もっとだ! 俺を楽しませてくれるんだよネェ!!」
「へっ、たりめーだろ!! 退屈なんざさせねぇよ!!」
山札の上から1枚目を表向きにする。
そのカードは——《イフリート・ハンド》。コスト5以上のカードだ。
「ビンゴ!! 《ベガス》の効果で、山札の上から3枚をドローだ!! ターンエンドだネ!」
手札を大量に補充することに成功したテイシュウ。
しかし。ヒナタも今度はお返しと言わんばかりに、攻めていく。
燃え上がる6枚のマナをタップする。
今まで使ってこなかったカード。しかし、このデッキに於いて言えば最高の切り札となるのだ。
「《龍覇 グレンモルト》召喚!!」
彼が呼び出したのは、紅蓮の龍剣士。
超次元への穴が開き、そこから新たなる剣が彼の手に渡った。
「——そして、コスト4以下の火のドラグハート・ウェポン、《銀河大剣 ガイハート》を装備する!!」
「《ガイハート》——!? 前情報では、そんなカードは使ってなかったはず——!」
「さあな。俺もまた、新しい事にどんどん挑戦しねーとって思っちまったからな」
今まで、除去されやすいという理由でウェポンを避けていたヒナタ。
しかし、火のデッキに完全に慣れていく中で、遂にこのカードを採用するに至ったのだ。
二重に勝利を重ねる、熱血の龍の力を。
そして今、それを使うため、彼は熱血を彼の大剣に注ぎ込む。
「——《ドラッケンA》でシールドをT・ブレイク!」
空中からシールドを目がけてガトリングを乱射する《ドラッケンA》。
そのまま、彼のシールドを3枚、薙ぎ払った。
「そして《グレンモルト》でシールドブレイク!」
「受けよう!」
その熱血の剣が、今度こそテイシュウの4つ目のシールドを切り裂いた——その時だった。
遂に星龍の剣が鳴動を始める。
熱き血潮を滾らせ、勝利の鼓動を打ち始める。
「——クリーチャーが攻撃した後、それがターン中2度目の攻撃だったのなら——《ガイギンガ》の龍解条件は達成される!」
カッ、と《ガイハート》の瞳が光った。
《グレンモルト》が天高く、その大剣を投げ上げ——それは星の下、目覚めの時を刻む。
「彼方より降り立つ、不滅の星龍よ!! 熱き血潮を滾らせ、暁の戦場に勝利を叫びやがれ!!」
絶対に諦めないヒナタの意思に応え——それは咆哮した。
約束されし勝利の剣が今、龍としての本来の姿を解き放つ。
「——龍解、《熱血星龍 ガイギンガ》!!」
- Act6:不滅の銀河 ( No.415 )
- 日時: 2016/10/18 10:20
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
熱血星龍 ガイギンガ ≡V≡≡V≡ 火文明 (7)
ドラグハート・クリーチャー:ガイアール・コマンド・ドラゴン 9000+
スピードアタッカー
W・ブレイカー
このクリーチャーが龍解した時、相手のパワー7000以下のクリーチャーを1体破壊する。
バトル中、このクリーチャーのパワーは+4000される。
相手がこのクリーチャーを選んだ時、このターンの後にもう一度自分のターンを行う。
銀河の大剣を振るい、熱血の炎を掲げる星龍。
蒼い身体に、黄金のVの字の装飾。
二重に勝利を重ねるその龍は、持ち主の熱血に呼応し咆哮する。
暁の戦場に太陽が昇った——
「さあ、追撃だ!! 《ガイギンガ》の龍解時効果で《ベガス》を破壊!!」
振り下ろされた銀河の大剣。
それが真っ二つに、《ベガス》を切り裂く。
それは、時に強大なる邪龍を、尊大なる天使を、そして宇宙さえも——ありとあらゆるものを切り裂く剣。
侵略者は、それを前に倒れるしかない。
「そして、最後のシールドをブレイクだ!」
「チィッ……!!」
テイシュウとしては、非常に面白くない展開となった。
このターンでは、どうやっても彼はヒナタを倒すことが出来ない。
シールドを全て割ったとしても、ダイレクトアタックまで持っていけないのだ。
「くっ、《奇天烈 シャッフ》召喚! その効果で、選択するのは7だ! これで《ガイギンガ》も《ドラッケンA》も攻撃出来ない! そして——《シャッフ》進化、《奇天烈 コイコイ》!!」
これにより、一応1つ目の打点は出来た。
しかし。やはり、ダイレクトアタックまでは行けない。
だが、ターンを渡せば革命が飛んでくる。《ドギラゴン》が現れれば、負け確定だ。
「《コイコイ》で攻撃——そして、侵略発動!!」
次の瞬間、大量のコインが《コイコイ》へ降り注がれた。そのまま、欲望は肥大化し——膨れ上がり、都市を飲み込んで奇天烈の侵略者が再見する。
「ショータイム《超奇天烈 マスターG》!!」
「来たか——!!」
ヒナタは巨大なる侵略者を前に、武者震いで震えていた。
戦う前は、倒すべき敵の1つだった侵略者だが——何度倒しても現れる、その泥臭さに1つの感銘を受けたのだ。
「侵略者は不滅だ!! 何度だって蘇る!!」
「望むところだ!! 受けて立つぜ、その勝負!!」
ぐっ、と拳を握り——ヒナタはテイシュウを見据えた。
既に、勝敗が決する時は近い。それを、彼も察していたのだろう。
「《マスターG》で、《グレンモルト》を攻撃——破壊だ!!」
「っ……!」
「ターンエンド!!」
これにより、ヒナタは次のターンにスピードアタッカーを出さなければ、攻撃が出来なくなってしまう。
場には、攻撃不能の《ガイギンガ》と《ドラッケンA》のみ。
負け筋は次のターンに、進化元と同時に進化クリーチャーを出されることだ。
このデッキはメタビート。それも彼は潰すことが出来る。
「4マナで《その子供 凶暴につき》を召喚だ!」
その子供、凶暴につき P 火文明 (4)
クリーチャー:ヒューマノイド/チルドレン 4000
バトルゾーンにある自分の、コスト3以下のクリーチャーはすべて「スピードアタッカー」を得る。
相手の進化クリーチャーと相手の「スピードアタッカー」を持つクリーチャーはすべて、バトルゾーンに出す時タップして置く。
「こいつ——!!」
「このクリーチャーの効果で、お前の進化クリーチャーとスピードアタッカーを持つクリーチャーは全てタップインされるぜ!」
そして、残るは3マナ。
コスト3以下のクリーチャーを全てスピードアタッカーにする、《その子供 凶暴につき》の恩恵を受けることが出来るクリーチャーが、少ないものの存在するのだ。
ただし、今は手札には存在しない。こうなれば、先に引いた者勝ちだ。
「ターンエンド! 次のターンで決めるぜ!」
「やらせるものかよ!! このゲームはまだ終わらない!! 此処で終わらせはしない!! こっちには学校の威信が、そして俺に敗れた他のチームのメンバー全ての思いが掛かっている!! それも背負って此処まで来たんだ!! そう簡単に君には負けられないんだよネェ!!」
叫ぶテイシュウ。
最早、必死であった。
ヒナタも、彼も、勝負の中で極限の状態に置かれていたのだ。
「俺のターン——!! 更に、《奇天烈 シャッフ》を召喚!! 選択する数字は”7”だ!! そして、ブロッカーの《アクア・ガード》、そして《ディオーネ》を召喚!! これで守りは盤石だ!!」
ディオーネ VR 水文明 (3)
クリーチャー:シー・ハッカー 3000
ブロッカー
「スピードアタッカー」を持つクリーチャーは、バトルゾーンに出たターン、攻撃することができない。
このクリーチャーは攻撃することができない。
これにより、スピードアタッカーは完全に抑制されてしまうことになる。
ヒナタの場には、《その子供 凶暴につき》のみだ。
彼が3コストのクリーチャーを引けたとしても——《ディオーネ》で止められてしまうのである。
「ターンエンド——さあ。次のターンで終わりだ!!」
「……次のターンで終わり、か」
ぽつり、とヒナタは呟いたが——その顔は笑んでいた。額に脂汗をつたわせ、はぁ、はぁ、と止め止めなく呼気が漏れ、バクバクと音を鳴らし続ける心臓。
ブロッカーを並べられ、クリーチャーを封じられ——それでもなお、彼はまだ笑みを見せる。
いや、実際ギリギリの状態ではあった。
しかしそれ以上に——彼はこの状態を、楽しんでいたのである。
「——喜べよ、勝負師!! まだゲームは続くぜ!!」
そう、言い放ち、彼は5枚のマナをタップした。
彼のゲームはまだ——終わってはいなかった。
「《その子供 凶暴につき》、進化——!!」
彼は重ねる。
燃え上る、炎の革命を成し遂げるため、そして仲間たちに勝利を届ける為。
何度でも、勝利への覚悟を重ね続ける。
これは証。彼は、戦うと決めた不滅の証——
「不滅の銀河に誓え、紅蓮の剣士よ!! 今こそ、暁の戦場に革命を刻め!!」
そこに現れたのは、青いマフラーに身を包み、紅蓮の刀剣を掲げた灼熱の剣士——彼が、革命の力を身に着けて再び現れたのだ。
一度は別れた熱血の龍。それと今、再び肩を並べる——
「——立ち上がれ、《爆革命 グレンモルト》!!」
現れたのは、鋭い刀剣を掲げた剣士。
その瞳は革命への覚悟に満ち溢れていた。
そして、それは今、窮地を救う最大の盾となる。
更に進化クリーチャーは、《ディオーネ》で止める事が出来ない。
「《グレンモルト》でダイレクトアタック!!」
「《アクア・ガード》でブロック!!」
防ぎにかかる《アクア・ガード》だったが、そのまま一太刀の下に切り伏せられた。
確かに厄介なクリーチャーが現れてしまったものの、最早関係無い。あしらってしまえばいい、とテイシュウは考えていた。
次のターンで、ヒナタのシールドを全て割り、勝つ。それだけの話だ。
ターンを終えたヒナタは、剥き身の無防備。後はもう、革命ゼロトリガーさえ防げば勝ちだ。
「《アクア・ガード》を2体召喚!! そして——《シャッフ》で攻撃する時に効果発動! 選択する数字は”3”!! そして侵略発動!!」
残る2枚のシールドを叩き割るため、彼は血眼になって最後の侵略者を叩きつける。
「進化、《奇天烈 ガチダイブ》!! その効果で、手札から《ザ・クロック》をこのカードの下に送り、2枚ドローだ!!」
現れたのは、ガチャが変形したロボット型クリーチャー。無機質に砲身が備え付けられており、その瞳は欲望で湾曲している。
狙うのは、残るヒナタのシールドのみ。全て叩き壊し、彼にトドメを刺すことが出来る。
「《ガチダイブ》でシールドをW・ブレイク!!」
《ガチダイブ》は飛び掛かった——
「——熱き剣を振るい、今こそ激突せよ——革命2、発動!!」
——ただし、ヒナタにではなく《爆革命 グレンモルト》へ、であるが。
そのまま、一閃が入った。
一瞬で、奇天烈の侵略者は両断され、爆発する。テイシュウは狼狽した。何故、自分のクリーチャーが自分の指示した方へ攻撃しなかったのか、理解が出来なかったのだ。
「!? 馬鹿な!! そっちじゃない!! 何故そっちを攻撃するんだ!!」
「《グレンモルト》の革命2、発動——相手は、可能であれば俺のクリーチャーに攻撃する!! この効果は強制突撃。お前の意思に関係なく、発動するぜ!!」
爆革命 グレンモルト VR 火文明 (5)
進化クリーチャー:ヒューマノイド爆/ガイアール・コマンド・ドラゴン/革命軍 9000
進化−自分の火のクリーチャー1体の上に置く。
W・ブレイカー
自分の他のクリーチャーがバトルする時、かわりにこのクリーチャーをバトルさせてもよい。
革命2−自分のシールドが2つ以下なら、相手のクリーチャーは、可能ならクリーチャーを攻撃する。
テイシュウは茫然とした。
この効果の前では、最早《グレンモルト》を除去しない限り、ヒナタに攻撃を届けることが出来ない。
同時に——このターンでの勝ちは無くなってしまう。更に、自身のクリーチャーは全て強制突撃状態——
「《マスターG》!! せめて、《グレンモルト》を破壊だ!!」
「させねぇよ!! 俺の火のドラゴンが攻撃されたとき——手札からこいつを出す事が出来る!!」
それは、更なる戦闘を追い求める熱血龍。
暁の戦場から、完全なる夜明けへ。
新たなる時代を切り開くヒナタに、力を貸す——
「駆け抜けろ、ドラゴン・サーガ!! 逆境を逆転に変え、暁の戦場を勝利に塗り替えろ!!
《熱血逆転 バトライオウDX》!!」
熱血逆転 バトライオウ DX P 火文明 (7)
クリーチャー:ガイアール・コマンド・ドラゴン 8000+
相手のクリーチャーが自分の火のドラゴンを攻撃する時、自分の《熱血逆転 バトライオウ DX》がバトルゾーンに1体もなければ、このクリーチャーを自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。
自分の他の火のクリーチャーが相手クリーチャーとバトルする時、かわりにこのクリーチャーにバトルさせてもよい。
バトル中、このクリーチャーのパワーは+5000される。
W・ブレイカー
現れたのは、《ガイギンガ》の熱血の力に影響され、自身も熱血龍として目覚めた戦闘龍の長・《バトライオウDX》だった。
今ここに、《グレンモルト》、《ガイギンガ》、《バトライオウ》——龍の時代を駆け抜けた、3人の戦士が集ったのである。
そして、《グレンモルト》のピンチに駆けつけた《バトライオウDX》は《マスターG》へ、その双剣を突き付ける——
「《バトライオウDX》は、自分の火のクリーチャーがバトルする時、代わりにこいつにバトルさせることが出来る!! さあ、バトルだ!!」
「っ……そ、そんな、馬鹿な!!」
《バトライオウDX》のパワーは、バトル中+5000されて13000。《マスターG》を上回っている。
そのまま、両刃で侵略者を切り裂く——
「《マスターG》の効果発動!! 指定するのは——偶数だ!!」
ヒナタの山札の上から捲られたカードは——《永遠のリュウセイ・カイザー》、コスト8で偶数だ。
まさに、最後まで生き残った彼は、テイシュウのデッキのカードの中でも十分に殊勲に当たるだろう。
しかし、もうテイシュウに攻撃できるクリーチャーは居ない。
加えて、場数も完全に整えられてしまった。
もう、ヒナタを止める術は無い。もう、ターンを終えるしかないのだ。
「それじゃあ——ゲームセットだ!!」
彼はカードに手を掛けた。既に、準備は出来ている。
もう後は、彼に最後の一撃を叩き込むだけだ。
「《ドラッケンA》でダイレクトアタック!!」
「《アクア・ガード》でブロック!!」
巨大なガトリング砲が辺りを撃ち鳴らす。
それを前にして、小さな守り手は一瞬で蒸発した。
「《バトライオウDX》でダイレクトアタック!!」
「《アクア・ガード》でブロック!!」
今度は《アクア・ガード》が、その攻撃を防ぐ。
しかし、今度は《ガイギンガ》がその翼を広げて飛び立った——
「《ガイギンガ》でダイレクトアタック!!」
「《ディオーネ》でブロック!!」
3度の巨大クリーチャーによる攻撃を防いだテイシュウの執念は相当なものだった。
しかし——がら空きになったフィールドに、最後の革命の司が切り込んだ。
「——これで最後だ!! 通れッ!! 《爆革命 グレンモルト》でダイレクトアタック!!」
- Act7:開始地点 ( No.416 )
- 日時: 2016/10/14 23:25
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
会場に歓声が響き渡った。
とてつもない攻防の末——それを制したのは、ヒナタだったのだ。
『勝者、暁ヒナタ——よって、一回戦を制したのは鎧龍決闘学院——!!』
しばらく、魂が抜けたようだったが、ようやく正気を取り戻す。
がばっ、と後ろから抱き着かれた。
満面の笑みを浮かべたコトハ、そして後から続くようにレンやノゾム、ホタル。そしてフジもやってくる。
「やったわ、ヒナタ!! まずは一勝、よ!!」
「ったく、最後の泥沼のような攻防……胃が痛くなる」
「とはいえ、まずは世界での一勝を勝ち取ったことになるか」
「あ、ははは……なんつーかもう、何も言えねーや」
ヒナタとしてはそれどころではなかった。
あそこまで盤面を固めるまで、どれ程精神をすり減らしたことか。
勝負の魔物から解放されたことで、彼もまた安堵の息をつくことができたのである。
あらゆる感情がその場を支配していた。歓喜するもの、嘆くもの、憤るもの——悔しさと嬉しさが入り混じる空間の中で、ただ惚けることしかヒナタにはできなかった。
「負け、という言葉は俺が一番嫌いな言葉なんだよネェ……」
歓声の中、ツカ、ツカ、とブーツが床にぶつかる音が聞こえた。
現れたのはテイシュウだ。何処か不機嫌そうに言った彼だったが——シルクハットを取り、続けた。
「だから敢えて言わせて貰うよ——おめでとう、君達の勝ちだ、とネ——!」
負けたらそこで終わりというのは、トーナメントの無情なところだ。
しかし、その中でも勝者をリスペクトする姿勢。テイシュウは、最後まで勝負に純粋に殉じたのである。
最後の最後まで、彼には学ぶところが多かった。
ヒナタは立ち上がる。死闘を演じたこのライバルに向かい。
「ありがとう、テイシュウ。こっちも、最後までヒリヒリした勝負だったぜ」
「ハッ、しかしそれでもやはり残念だ。後で何と言われるか……やっとここまで来たと思ってたのに。まあ、俺はこの勝負が出来て、そして君と出会えただけで十分だがネ」
「十分じゃ、あーりーまーせーんー!!」
ぐいっ、とテイシュウの耳がリンユーの手袋に覆われた手に引っ張られている。
見れば、リンユーが起こったような顔で彼を睨みつけていた。
「グエンさんと言い、テイシュウさんと言い、何でこうも不甲斐ないんですかね! 激おこですよ、コーチも先生も! 後で猛特訓ですから!」
「は、はははー……。それは仕方ないネ……」
「十六夜ノゾム! 貴方とのデュエル、なかなか楽しかったですよ! また、私のマジックショーに来てくれますよね?」
指を鉄砲に見立て、彼女はウインクしてノゾムの方を向く。
「マジックショーはともかく、お前は絶対倒すからな!! いつか、絶対な!!」
「かーわいい♪ 貴方のような子、けっこー好みですよ、私!」
ぐむむ、とノゾムは何も言い返せなくなってしまう。彼にとって、これが苦い経験であることには違いない。
最後にテイシュウは言った。
「まあ、アレだ。勝った負けたはあるかもしれないけど、負けたからって何か終わるわけじゃあない。むしろ、俺達はここからがスタートだネ」
「デュエマやってたら、また会えるかな」
「会えるさ。その時もまた、敵同士だ。また、最高に熱く、狂った勝負をしようじゃないかネ!」
「勿論だ!」
拳を交わす2人。
勝ち、負け、相反する2つの事象が支配するこの大会で、それとは関係なく、また1つ友情が生まれたのである。
「あ、それと——これ。返却しておくネ」
「え?」
「改めて、良いデュエルだったよ、暁ヒナタ!」
去り際に渡された封筒。
何か紙の束が入っているようだった。
何だろうか、と中身を確認しようとした途端に、
「おい、ヒナタ! そろそろ退場だ!」
「お、おう!」
無情にも、時間が来てしまい、レンに引っ張られながら彼はその場を後にするのだった——
***
「終わっちまうと、あっという間だよなぁ……」
ヒナタはそう呟く。
一戦一戦が一期一会の繰り返しの、此処までの戦いだったが、疲れがたまっているのかどこかこの年齢で既に哀愁を感じさせる台詞になってしまっているのは気のせいか。
シャトルバスに乗り、空港を目指す。色々あったが、マカオでの戦いもこれで終わりだ。
「うわあ、凄い綺麗よ、ヒナタ!」
「お、本当だな!」
目に映るのは、ビルの明かりが彩るネオンアート。
まるで、宝石のように輝くそれが強く、脳に焼き付いていく。
ファンタジーの世界のような、浮世離れした光景を記憶に焼き付ける為、通路側の席に座っていたヒナタは思わず、バスの窓から先を遠く覗き込む——
「やれやれ、勝利の後には良い光景だな」
「レン先輩、今回私達何もやってませんからね?」
『すごいすごーい! 白陽、これすっごいきれーだよ!! きらきらってしてる!』
『目が……ちかちかする……ついでに私の出番も、瞬く星のように消えていく……』
『もう、落ち込まないの!』
『僕はありましたのですにゃ!』
『ニャンクス。傷口に塩を塗ってはいけませんよ? 出番が空気のように少ない白陽にはこれ以上ない好機だったのを……ああ、次は無いでしょうね』
『アヴィオール貴様、覚えてろよ……』
『傷口に塩を塗って抉ってからまた塗るスタイルか。これじゃから闇文明は。ふぁあ、眠いわい』
「コマンド相手だったからなあ。あれ、ノゾムは?」
「ふて寝しちまったみてーだな」
反対側の席で、窓を向いたまま、彼はこくり、こくり、とうたた寝していた。
胸には、さっきの敗北を抱えたまま——
「あ、そういえばこれって何だったんだ?」
ヒナタは茶封筒を取り出す。
コトハも、中身を覗き込んだ。
そして——凍り付く。次の瞬間、バス内にヒナタの悲鳴が響き渡った。
「う、う、う、う、うぎゃあああ!?」
思わず、広げた瞬間にヒナタは動揺して手を滑らせてしまう。
そのまま、中に入っていた紙束——それも、白い裏面の厚紙が散らばった。
それも、勢いで床へ全部——
「? なんだコレは」
「何でしょうね?」
「……んあ? なんだコレ」
そして、床伝いに流れてきたそれを拾うレンにホタル、そしてよりによって、さっきまで大イビキをかいていたはずのフジ。
完全にこの男に至っては確信犯としか思えないタイミングであったが——それを拾ってみてしまう。
「ば、ばか、拾うんじゃねえ!!」
急いで叫ぶヒナタであったが——時既に、遅し。
バス内は沈黙に包まれた。
「……ヒナタ。強く生きろ」
「待って!! 同情の眼差しを向けるのやめて!!」
「……ヒナタ……ププッ、強く……ププッ、ぶえっへへへへへ」
「ブラック社長テメェ!!」
「……ヒナタ先輩。学校新聞に掲載しときますね」
「ホタルワレェ!! 鬼かお前は!!」
「……ヒナタ先輩、ぷぷっ、よく、お似合いっすよ!!」
「お前も起きてたのかよ!?、ち、畜生!! 誰か写真ごと俺を歴史から抹消してくれぇぇぇーっ!!」
——画して。
鎧龍に勝利を齎したデュエリスト、暁ヒナタは後にマカオで伝説として語られることになる。
『運命天導(ウィザード)』の異名を持つ、リュウ・テイシュウを打ち破ったデュエリストとして。
そして——公のパーティーの場で女装メイドコスを披露したデュエリストとして——
「……やっぱり、あたしが着た方が良かったかしら」
***
——数時間前。タイ、バンコク国際デュエルスタジアム。
『決着——侵略をものともせず、激闘を制したのは——イギリス・ライトレイデュエルスクールだ——!!』
会場は騒然としていた。
新能力・侵略を前にして、彼らは一歩も引かない戦いどころか、圧倒してしまったのである。
「馬鹿な——我らが”三界の侵略者”がこうも簡単に——」
「それ以上口を開かないで頂きたい」
冷たい声が響き渡る。
それだけで、全てを黙らせてしまうような威圧感。
純白の制服に、剣のような意匠の髪留め。
金髪碧眼に加え、浮世離れした美貌を持つ少女は——年柄とは裏腹の低い声で、言い放った。
「——侵略も、革命も、我らの眼中には無い。我らが剣で、全て切り伏せるのみ。約束された、勝利の剣で——敗北は、我らには有り得ません」
***
——同時刻、サウジアラビア、デザートホークデュエルスクール特設会場。
『決着——!! 何と圧倒的な実力なのでしょうか!! 仮面を付けたこの生徒は一体——!?』
中堅戦に現れたのは、この仮面を付けた少年だったが——有無を言わさない強さで、デュエルを終わらせてしまったのである。
『これは、今回のD・ステラのダークホース枠か!? ブラジル代表・エクスフォレスタン決闘学校——!!』
そのまま、一言も口を利かず——彼はチームメイトと共に会場を去っていく。
新たなる決闘を求めるようにして——
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87