二次創作小説(紙ほか)
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- デュエル・マスターズ D・ステラ 【侵略世界編】
- 日時: 2017/01/16 20:03
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
【読者の皆様へ】
はい、どうも。二次版でお馴染み(?)となっているタクと申します。今回の小説は前作の”デュエル・マスターズ0・メモリー”の続編となっております。恐らく、こちらから読んだ方がより分かりやすいと思いますが、過去の文というだけあって拙いです。今も十分拙いですが。
今作は、前作とは違ってオリカを更にメインに見据えたストーリーとなっています。ストーリーも相も変わらず行き当たりばったりになるかもしれませんが、応援よろしくお願いします。
また、最近デュエマvaultというサイトに出没します。Likaonというハンドルネームで活動しているので、作者と対戦をしたい方はお気軽にどうぞ。
”新たなるデュエル、駆け抜けろ新時代! そして、超古代の系譜が目覚めるとき、デュエマは新たな次元へ!”
『星の英雄編』
第一章:月下転生
Act0:プロローグとモノローグ
>>01
Act1:月と太陽
>>04 >>05 >>06
Act2:対価と取引
>>07
Act3:焦燥と制限時間
>>08 >>10
Act4:月英雄と尾英雄
>>13
Act5:決闘と駆け引き
>>14 >>15 >>18
Act6:九尾と憎悪
>>19 >>21
Act7:暁の光と幻の炎
>>22 >>23
Act8:九尾と玉兎
>>25
第二章:一角獣
Act1:デュエルは芸術か?
>>27 >>28 >>29
Act2:狩猟者は皮肉か?
>>30 >>31 >>32 >>33
Act3:龍は何度連鎖するか?
>>36 >>37
Act4:一角獣は女好きか?
>>38 >>39 >>41 >>42 >>43 >>44 >>45
Act5:龍は死して尚生き続けるか?
>>48
第三章:骸骨龍
Act1:接触・アヴィオール
>>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55
Act2:追憶・白陽/療養・クレセント
>>56 >>57
Act3:疾走・トラックチェイス
>>66
Act4:怨炎・アヴィオール
>>67 >>68
Act5:武装・星の力
>>69 >>70
Act6:接近・次なる影
>>73
第四章:長靴を履いた猫
Act1:記憶×触発
>>74 >>75 >>76 >>77
Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解
>>78 >>79 >>80
Act3:捨て猫×少女=飼い猫?
>>81 >>82
Act4:リターン・オブ・サバイバー
>>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90
Act5:格の差
>>91 >>92 >>93 >>104
Act6:二つの解
>>107 >>108 >>109 >>110
Act7:大地を潤す者=大地を荒らす者
>>111 >>112 >>113
Act8:結末=QED
>>114
第五章:英雄集結
Act1:星の下で
>>117 >>118 >>119
Act2:レンの傷跡
>>127 >>128 >>129
Act3:警戒
>>130 >>131 >>132
Act4:策略
>>134 >>135
Act5:強襲
>>136
Act6:破滅の戦略
>>137 >>138 >>143
Act7:不死鳥の秘技
>>144 >>145 >>146
Act8:痛み分け、そして反撃へ
>>147
Act9:fire fly
>>177 >>178 >>179 >>180 >>181
Act10:決戦へ
>>182 >>184 >>185 >>187
Act11:暁の太陽に勝利を望む
>>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>193 >>194 >>195
Act12:真相
>>196 >>198
Act13:武装・地獄の黒龍
>>200 >>201 >>202 >>203
Act14:近づく星
>>204
『列島予選編』
第六章:革命への道筋
Act0:侵攻する略奪者
>>207
Act1:鎧龍サマートーナメント
>>208 >>209
Act2:開幕
>>215 >>217 >>218
Act3:特訓
>>219 >>220 >>221
Act4:休息
>>222 >>223
Act5:対決・一角獣対玉兎
>>224 >>226
Act6:最後の夜
>>228 >>229
Act7:鎧龍頂上決戦
Part1:無法の盾刃
>>230 >>231 >>232 >>233 >>234 >>235 >>236 >>239
Part2:ダイチの支配者、再び
>>240 >>241 >>242 >>243 >>244 >>245 >>246 >>247 >>248 >>250
Part3:燃える革命
>>252 >>253 >>254 >>255 >>256
Part4:轟く侵略
>>257 >>258 >>259 >>260 >>261
Act8:次なる舞台へ
>>262
第七章:世界への切符
Act1:紡ぐ言の葉
>>263 >>264 >>265 >>266 >>267 >>268 >>270
Act2:暁ヒナタという少年
>>272 >>273
Act3:ヒナとナナ
>>275 >>276 >>277 >>278 >>279 >>280 >>281
Act4:誓いのサングラス
>>282 >>283 >>284 >>285
Act5:天王/魔王VS超戦/地獄
>>286 >>287 >>295 >>296 >>297 >>298 >>301 >>302 >>303 >>304 >>305
Act6:伝説/閃龍VS獅子/必勝
>>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>323
Act7:青天霹靂
>>325 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>331
Act8:揺らぐ言の葉
>>332 >>333 >>334 >>335 >>336
Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神
>>337 >>338 >>339 >>340 >>341 >>342 >>343
Act10:伝える言の葉
>>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351
Act11:連鎖反応
>>352
『侵略世界編』
第八章:束の間の日常
Act1:揺らめく影
>>353 >>354 >>359 >>360 >>361 >>362
Act2:疑惑
>>363 >>364
Act3:ニューヨークからの来訪者
>>367 >>368 >>369 >>370 >>371
Act4:躙られた思い
>>374 >>375 >>376 >>377
Act5:貴方の為に
>>378 >>379 >>380 >>381 >>384 >>386
Act6:ディストーション 〜歪な戦慄〜
>>387 >>388 >>389
Act7:武装・天命の騎士
>>390 >>391
Act8:冥獣の思惑
>>392
Act9:終演、そして——
>>393
第九章:侵略の一手
Act0:開幕、D・ステラ
>>396
Act1:ウィザード
>>397 >>398
Act2:ギャンブル・パーティー
>>399 >>400 >>401
Act3:再燃
>>402 >>403 >>404
Act4:奇天烈の侵略者
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>411
Act5:確率の支配者
>>412 >>413
Act6:不滅の銀河
>>414 >>415
Act7:開始地点
>>416
第十章:剣と刃
Act1:漆黒近衛隊(エボニーロイヤル)
>>423 >>424
Act2:シャノン
>>425 >>426
Act3:賢王の邪悪龍
>>427 >>428 >>429
Act4:増殖
>>430 >>431 >>435 >>436 >>438 >>439 >>440 >>441 >>442
Act5:封じられし栄冠
>>444
短編:本編のシリアスさに疲れたらこちらで口直し。ギャグ中心なので存分に笑ってくださいませ。
また、時系列を明記したので、これらの章を読んでから閲覧することをお勧めします。
短編1:そして伝説へ……行けるの、これ
時系列:第一章の後
>>62 >>63 >>64 >>65
短編2:てめーが不幸なのは義務であって
時系列:第三章の後
>>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103
短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル)
時系列:第四章の後
>>120 >>121 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126
短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日
時系列:第四章の後
>>149 >>150 >>153 >>154 >>155 >>156
短編5:恋情パラレル
時系列:第四章の後
>>157 >>158 >>159 >>160 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>173 >>174 >>175 >>176
短編6:Re・探偵パラレル
時系列:平行世界
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422
エイプリルフール2016
>>299 >>300
謹賀新年2017
>>443
登場人物
>>9
※ネタバレ注意。更新されている回を全部読んでからみることをお勧めします
オリジナルカード紹介
(1)>>96 (2)>>271
※ネタバレ注意につき、各章を読み終わってから閲覧することをお勧めします。
お知らせ
16/8/28:オリカ紹介2更新
- Act1:記憶×触発 ( No.76 )
- 日時: 2014/12/05 01:55
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
「《陰陽超技 炎熱乱舞》ッ! 効果発動だぜ!」
その直後、白陽が炎を纏った陰陽玉の弾幕を飛ばし《レジル=エウル=ブッカ》とそして《マリニャン》を業火に包み込む。まさにそれは地獄絵図。
2体は間もなく断末魔と共に消滅した。
「こいつの効果で、自分の場にあるカードの合計以下のコストを持つクリーチャーを2体まで破壊する! 俺の場にはフォートレス2つ、3+4でコスト7以下を2体破壊だぜ!」
『そして、マナ武装7によりこの私、または火文明のコスト9以上のカードを山札から手札に加えることができる!』
「加えるのはこいつだ!」
ヒナタの手札には、灼熱の赤に輝く龍のカードがあった。
「前にキイチとのデュエマでも手札に来なくて使えなかった、こいつを! 今、お披露目するぜ! 《暴龍事変 ガイグレン》をな!」
「にゃ、にゃにぃーっ!?」
そして、ニャンクスの場にはもうクリーチャーがいない。
一方、ヒナタは度重なるマナ封殺をクリーチャーに食らわされ、マナはこのターンで10枚になる。もう、十分に準備は整った。
そして、マナを9枚タップする。
「数多の大地を喰らい、武装する。現れろ、紅蓮の暴走龍よ、《暴龍事変 ガイグレン》を召喚だ!!」
空間を裂き、現れたのは無限の力を持つ勝利の暴走龍。その力は一度暴走し始めたら2度と止まらない。そう、まるでかつてのヒナタの切札、《暴走龍 5000GT》のように。
銀河の大剣を振り下ろし、《ガイグレン》はニャンクスの前に降り立った。
「てめぇが増やしたマナがてめぇの首を絞めることになるぜ。よくも白陽をやってくれたな。これは白陽の弔い合戦だ」
『いや、私一応生きてるんだけど』
「つー訳で、てめぇはムカついた。このままトドメを刺す」
その言葉を聞いてニャンクスは笑い出す。
「にゃはははーっ!! お前は馬鹿にゃ? お前の場には《ガイグレン》1体しかいないにゃ! 俺様のシールドは3枚! W・ブレイカーのそいつ1体だけじゃトドメは愚か、シールドを全部割ることさえままならないにゃ!」
「馬鹿はてめーだ。こいつのマナ武装をよく見やがれってんだい」
轟! と《ガイグレン》が剣を振り上げた途端に、ヒナタのマナゾーンのカードがすべて赤い血潮のように光った。その光が《ガイグレン》に集まっていく。その姿は貪るかのように大地の魔力(マナ)を貪欲に食らっていく化け物。
「マナ武装9。こいつが攻撃するとき、こいつは無条件でアンタップ……つまり、無限の回数だけ攻撃ができる」
「にゃ、にゃんだってぇーっ!? ば、馬鹿な! そんなチート効果があって堪る--------」
「それがあるんだなぁ、今此処によォ!!」
ヒナタは怒りに満ちた目で高らかに叫んだ。
暴龍事変 ガイグレン ≡V≡ 火文明 (9)
クリーチャー:ガイアール・コマンド・ドラゴン/ヒューマノイド爆/ドラグナー 11000+
スピードアタッカー
マナ武装 9:このクリーチャーが攻撃する時、自分のマナゾーンに火のカードが9枚以上あれば、そのターン、このクリーチャーをアンタップしてパワー+3000する。
W・ブレイカー
相手がこのクリーチャーを選んだ時、このクリーチャーのパワー以下のパワーを持つ相手のクリーチャーをすべて破壊する。
《ガイグレン》はマナ武装9という破格の能力を持つ。条件は非常に達成しにくいが、うまく決まれば最早勝利確定といってもいいほど強力なカードだ。殴るたびにパワーも上がる。
正に、”暴龍”。
ふつふつと沸いてくる怒り。
---------こいつを、絶対にぶった斬る!!
「微塵になるまでまで俺の代わりに、こいつがテメェをぶった斬る!! せいぜい、後悔してるこったな!!」
「あ、あばばばーっ許してください、許してください、悪いことしましたにゃぁーっ!!」
「「誰が許すかテメェーッ!!」」
ヒナタと白陽、2人の声が被った。
「白陽が此処まで繋げてくれたんだ! S・トリガーなんか踏むんじゃねぇぞ、《ガイグレン》! 行け、シールドをW・ブレイク!」
剣が振り下ろされ、シールドを切り裂いた。
その破片がシャワーとなってニャンクスに降りかかる。
目が潰れたようだ。血まみれになって顔を抑えている。
「マナ武装9発動! アンタップ! そして、最後のシールドをブレイク!」
2撃目。最後のシールドを切り裂く。
S・トリガーは無い。
「マナ武装9発動! アンタップ、そしてダイレクトアタックだ!!」
ざくり、と巨大な剣がニャンクスを切り裂いた-----------
そして、そのまま空間は--------閉じなかった。
「あ、あり? まだ終わらないのかにゃ!?」
ニャンクスは驚いて息も絶え絶えに辺りを見回す。
しかし、空間は未だ閉じない。何故だか考える余裕などニャンクスには無かった。
「てめぇは俺を怒らせた--------千回ぶった切っても足りねぇくらいだぜぇーっ!! マナ武装9発動、《ガイグレン》アンタップだ!」
起き上がる《ガイグレン》。再び剣を振り上げる。
ニャンクスは血まみれの姿で青ざめた顔をした。
尻餅をつき、後ずさる。
「にゃ、にゃんでぇーっ!? や、やめてくれにゃぁーっ!! ほら、もう体の骨とか殆ど折れちゃって、体とかズタボロの雑巾みたいにゃ、これ以上やったら死んじゃうにゃぁー!!」
「今更、命乞いかテメェ。まあ良いぜ、教えてやるよ」
カードに手を掛けるヒナタの顔は最早、怒りを通り越して無表情だった。
「俺の幼馴染は事故で死んだ、それも歩道に突っ込んできたトラックにぶつかってな!! 死体はぐっちゃぐちゃで面影なんか無かったって聞いたぜ。俺は悔しいんだよ、あんときデュエマの大会なんかに行かず、一緒に居てやれたら俺はあいつを助けられたかもしれねぇのに!!」
気がつけば、ヒナタは熱い線が頬に流れていることに気付いた。
しかし、それでも構わずまくし立てるように叫ぶ。
「だからっ!! テメェのやったことは絶対に許さねぇ。この星の邪気に当てられたとか関係無しにな! 人をクスリで暴走させて事故を起こさせた、それも何度もだ!!」
「わ、分かったにゃ、この通りにゃぁーっ!! 悪いことしましたにゃ、全力で謝るにゃ!! 靴の裏だって舐めますにゃぁーッ!! だから、これ以上痛いのは嫌にゃぁーッ!!」
「チッ、その場しのぎの謝罪で俺がこいつの攻撃を止めると思ったか?」
ため息をついたヒナタは続けた。
「哀れすぎて、他に何もいえねぇ。やっぱテメェ。史上最低最悪の下衆クリーチャーだぜ」
ぐっ、親指を下に向けてヒナタは言い放った。
ピンッ、と指を鳴らす。次の瞬間、再び《ガイグレン》が動き出す。
剣を振り下ろし、その衝撃で波紋が起こった。それがニャンクスを吹っ飛ばす。
しかし、英雄と呼ばれるほどのクリーチャーはそう簡単には死なない。
「マナ武装9発動、《ガイグレン》アンタップ!!」
再び起き上がる《ガイグレン》。剣を振り上げた。
そして、ニャンクスへ剣を払うように振るうと、波紋が出来てそれがカッターとなり切り裂いた。
「うげっ、げぼぇ、おげばぁ」
血を吐き出すニャンクス。
しかし、容赦なくヒナタは言った。その瞳には慈悲など無い。
「さあ、次はどこをぶった切ってほしい? 腕か? 脚か? おっと首はダメだぜ。てめぇはもっと痛めつけてやらねぇとなぁーっ!!」
彼の目は血走っていた。再び、《ガイグレン》のカードに手を掛ける---------
『好い加減にしろ、ヒナタ! やりすぎだ!』
その声で、ヒナタは我に帰った。白陽だ。
そして、目の前を見た。
--------俺は、何をやってるんだ。
目の前には《ガイグレン》、そしてずたずたになって倒れているニャンクスの姿があった。
--------俺は、俺は-----------!!
『お前の余りの怒りに《ガイグレン》の凄まじい力が反応したのだろう。いまだここは閉じない。もう止めろ、不器用なりにも優しいお前らしくない』
「……くっ」
喉から絞るように彼は言った。
ようやく落ち着いたのかヒナタは手を引っ込め、カードを片付けた。次の瞬間、空間も閉じていた-----------
- Act1:記憶×触発 ( No.77 )
- 日時: 2014/12/13 16:45
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
「しっかしなー」
しばらくしてやって来た、フジは血だらけで伸びているニャンクスを見て言った。
「ダイレクトアタック1回で沈むオラクル教団のクリーチャーとは一味違うわな。何度も《ガイグレン》の攻撃食らったんだろ? にも関わらず生きていた。こいつぁ強ぇ」
「すいません、やっと頭が冷えました」
「ま、何があったかなんざ俺は知らんがね。あ、ノゾムは部屋で寝かせておいた」
フジはヒナタを気遣う様子など1mmも見せず、しゃあしゃあと言うと、続けた。
「さて、うちの会社に大損害与えてくれたこいつはどーするか。保健所にぶち込む訳にもいかねぇし。しばらくどっかに閉じ込めておくか---------」
とニャンクスの首筋に手を掛けたそのときだった。
ざくり、と布の切れる音と共に、フジの腹から血が吹き出た。
「-------げほっ」
前のめりに倒れるフジ。すぐに駆け寄るヒナタ。見れば、ニャンクスはまだ動けるようだった。
あんなにダメージを与えたのに、何故!? とヒナタがその方向を見た瞬間だった。
丸薬だ。ニャンクスの手に丸薬が握られている。その丸薬が小さくなって消えた。そして、手の爪には真新しい血が垂れていた。
フジは爪で腹を切り裂かれたのだ。ニャンクスに。
「俺様の”能力”で作り出した薬は口から摂取しなくとも、肌から吸い込まれるようになってるにゃ。俺様が服用したのは回復薬。おかげさまで動けるまでにはなったにゃん」
それでもぜぇ、ぜぇと息を切らしてはいる。
「薬でもこれが限界か、まあ良いにゃ。しばらくこの街に潜んでやるのにゃ!! 寝首を掻かれないように気をつけるこったにゃ! にゃーははは!」
「こいつ-----------!!」
ばっ、と飛び出したニャンクスの姿は、霧のようなものに包まれて消えた。
その様子を見るなり、ヒナタは「白陽、頼む!」と叫ぶが、返事がない。
見れば、隣の白陽もぐったりと倒れていることに気付く。
「おい、しっかりしろ、白陽!」
「私の体では--------やはり、無理だったか-------」
煙が彼の体を包み込むと、子狐の姿になっていた。
「しっかりしろ、白陽!! おい、白陽ォーッ!!」
「おい、馬鹿ヒナタ。俺様の心配は」
げほっ、と苦しそうに息を吐き出したフジの言葉など、ヒナタには届いていなかった。
無論、怒った先輩の拳骨が彼に飛んできたのは言うまでもないだろう。
***
「参ったね、こりゃ」
フジは自分の部屋に戻るとどかっ、と自分の椅子に倒れこんだ。
「俺含む2人が負傷、1匹がぐったり。あいつの所為でこんなにされるとはね。安易に油断して首根っこ掴んだ俺様も悪いか」
「武闘先輩、今ハーシェルの能力で手当てをします!」
「ああ、淡島。頼む」
ふぅーっ、と息を吐いたフジはすぐさま再び激痛に体を震わせることになった。
無闇に腹を動かしてはいけないようだ。が、それもすぐさま消えていった。傷口から肉芽が生えてきて、繋がっていく。
さて、白陽は倒れたまま未だに目を覚まさない。
ノゾムも額に傷を作ったまま気絶している。
「完全に、やられた、ってわけですか」
「奴はこの街に潜んでいると言った。いつ、どこで襲われるか分からんね」
***
結局、敵の居場所など本当に欲しい情報は何一つ手に入らなかった。次回襲われるまでに白陽の意識が戻っていれば良いのだが。
頭に絆創膏を貼っつけたノゾムがその箇所を摩りながらホタルと話しているのが分かる。
が、その内容などヒナタには興味のないことだった。
---------あの状況で超技呪文を使わなきゃ、俺は負けていた。ニャンクスに対抗するには、超技呪文を扱えるようになるか、あるいは--------
「ノゾム。割って入るが、確かお前の《ルーン・ツールC》は」
「こんなカードに進化しました。オマケに気付いたら超次元ゾーンにこんなものまで」
「んあ? 良く見たらこいつ、種族が変わってるじゃねえか」
上弦の玉兎星 クレセント・ニハル 水文明 (7)
クリーチャー:ムーン・ラビー/クリスタル・コマンド・ドラゴン 7000
L・コア
W・ブレイカー
このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、超次元ゾーンからコスト5以下のステラアームド・クリーチャーをバトルゾーンに出しても良い。
マナ武装7:ターンの終わりに相手のクリーチャーを2体選ぶ。そのクリーチャーはタップされ、次のターンアンタップできない。
「しかもご丁寧にマナ武装まで付いていやがらぁ」
「うわ、確かに」
「あ、見せてください!」
うわぁ、とホタルも声を上げたのだった。相手のクリーチャー2体を条件付とはいえ、ターンの終わりに凍結。
単体でもなかなか強い効果である。
『ちょっとー、みんな寄ってたかって……恥ずかしいじゃんか』
「ああ、すまねぇ」
「俺たちも、もっと強くならねぇといけないな」
空を仰ぎ見て、ヒナタはふと呟いた。
「-----------早く帰って来い、ドラポン。こっちは大変なことになってるぜ」
***
「月神様の札が姿を変えたか」
「ああ、そうだ。じいちゃん」
居間でノゾムは祖父・龍三にクレセントのカードを見せていた。
「だが、このままじゃいけない。さらに上に向かわねぇと。デュエマも、剣道も」
「分かっているなら良い」
龍三はクレセントのカードを見て呟いた。
「考えれば、月子が死んでから何年経つかのう」
「けっ、知らねぇよ夫婦仲良く事故であの世に行った両親なんざ」
「わしはお前を強く、そしてたくましく育てて来たつもりだった」
ふぅ、と息を吐くと彼は続けた。
「だが、お前はいっつも最後は自分の力で成長してきた。それに気付いておるか?」
「馬鹿言え、じいちゃんが居なきゃ今のオレは居なかったさ」
---------それに、今日だってオレは何にもできなかった。もっと強くならねぇといけない。
クレセントもカードの中で、こくり、と頷く。
「そこでだ」
突然、立ち上がった祖父をノゾムはびっくりした目で見た。
「稽古をお前に少し付けてやろう。剣道では無い。こっちだ」
祖父の手には------------デッキケースが握られていた。
- Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解 ( No.78 )
- 日時: 2015/01/11 22:38
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
「じいちゃん、デュエマできんのか!?」
叫ぶ孫・ノゾムに龍三ははっきりと
「出来る。何、この札で遊ぶ遊戯に本気で打ち込んでいるお前を見ていたら、ワシもやりたくなった」
断言した。
「い、いやー、流石に無理があんだろ」
「ああ、それと今、老人会でも流行ってて」
「だから無理があんだろ!」
ともかく、と目の前の祖父はデッキケースを握って言った。
このじいちゃんは要するに孫である自分とデュエマがしたいらしい。厳しく硬派な感じの祖父だが、まさかこんなものに興味があるとはノゾムは思わなかった。
思えば、自分が鎧龍に入りたいと言ったときも祖父は止めなかったなー、と思い返す。
--------剣道以外に自分から打ち込めるものを見つけたのならば、ワシは止めんよ。だが週一度の稽古には出なさい。良いか?
こんな感じだった。
「おいおいじいちゃん、こないだも稽古の途中でぎっくり腰になったばっかだろ? 知らないぜ、オレにコテンパンにされてまたぎっくり腰になっても」
「渇!! それはこっちの台詞じゃ。いつか言わんかったかのう。勝負とは、どちらかが勝ち誇ったときに既に決まっているのだと」
「----------わりー、わりー、そうだったな」
クレセントのカードをデッキから抜き、1枚カードをデッキに差し込んでノゾムは言った。
「おい、クレセント。今回はオレとじいちゃんの1対1にしてくれ」
『おっけー!』
ふぅ、と息を吐くと龍三は言った。
「稽古場に行くぞ。既に準備はしてある」
「は、準備?」
龍三に剣道の稽古場に来てみると、そこにはデュエルテーブル、さらにその上に鎧龍に置いてあるカードの画像を読み込んでホログラムを映し出すホログラム発生マットが敷かれていた。
「じいちゃん、こんなもんまで買ってたのかよ」
「まあ良いではないか。さて、始めようか----------」
***
「わしのターン、《スクランブル・タイフーン》で山札からカードを5枚引いて、うち3枚を墓地に!」
見たところ、龍三の使うデッキは水/闇の2色らしかった。
現在、彼の場には《氷河フランツI世》がいる。そしてその効果によってコストを1軽減して唱えられた《スクランブル・タイフーン》で墓地には3枚のカードが。
一方のノゾムはまだ場にクリーチャーはいなかった。しかし、チャージャー呪文で既にマナは6枚に。
「オレのターン、《龍覇 M・A・S》を召喚だぜ! 効果で《フランツ》をバウンスし、超次元ゾーンから《エビデゴラス》を出す! ターン終了だ」
「では、わしのターン。こっちも超次元ゾーンを使わせて頂くぞ」
龍三のターン。5枚のカードがタップされ-----------
「《超次元 ミカド・ホール》で《ヴォルグ・サンダー》を出すぞ!」
現れた《ヴォルグ・サンダー》の効果により、ノゾムの山札からカードが捲れていく。
《アクア・ハルカス》、《幾何学艦隊ピタゴラス》、《スパイラル・ゲート》、《龍素記号 IQサイクロペディア》が墓地へ。
《ヴォルグ・サンダー》は登場時にどちらかの山札をクリーチャーが2枚出るまで墓地に置かせ続けるクリーチャーだ。
自分には墓地肥やし、相手には山札破壊として使える凶悪なサイキック・クリーチャーである。
「しかも、ビクトリー・カードかよ」
「これが大人のデュエマという奴じゃ。超次元ゾーンに後3枚積んでおる」
「うげっ、マジか」
「さらに!」
次の瞬間、《M・A・S》の体が弾け飛ぶ。
「《ミカド・ホール》の効果で《M・A・S》のパワーを-2000して破壊する」
「やられたか。クソッ」
超次元ミカド・ホール P(UC) 闇文明 (5)
呪文
バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選ぶ。このターン、そのクリーチャーのパワーは-2000される。
コスト9以下の闇のサイキック・クリーチャーを1体、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出す。
ヴォルグ・サンダー ≡V≡ 闇文明 (6)
サイキック・クリーチャー:デーモン・コマンド/ハンター 7000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、プレイヤーを一人選ぶ。そのプレイヤーは、自身の山札の上から、クリーチャーが2体出るまでカードを墓地に置く。
W・ブレイカー
攻撃はせず、ターンを終えた龍三。
そして、ノゾムのターンとなる。此処で龍解はしておきたいところ。
「くっ、オレのターン、《エビデゴラス》の効果でカードをドロー、そしてターンの始めのドロー! そして、《アクア隠密 アサシングリード》を召喚して、その効果で《ヴォルグ・サンダー》を超次元ゾーンに! ターン終了だぜ!」
とりあえず、クリーチャーをどかしたものの、どうも腑に落ちない。
何を考えているのか、全く分からないのだ。
「わしのターン。《龍覇 トンプウ》を召喚」
現れたのはドラグナー《トンプウ》。その効果で超次元ゾーンからドラグハートが呼び出されるが---------
「《龍芭扇 ファンパイ》を出して装備!!」
龍芭扇 ファンパイ P 水文明 (3)
ドラグハート・ウエポン
これを装備したクリーチャーが攻撃する時、相手は自身の山札の上から1枚目を墓地に置く。それが呪文であれば、自分がコストを支払わずに唱えてもよい。そうした場合、その後、その呪文を相手の墓地に戻す。
龍解:自分のターンの終わりに、相手の墓地にカードが5枚以上あれば、このドラグハートをフォートレス側に裏返してもよい。
出されたカードは妙に重厚感の溢れるものだった。
噂の3D龍解カード。それは、カードが正しく変形し、3段階の龍解を遂げることができるドラグハートなのだ。
「ノゾムよ、龍脈術の力をその目に焼き付けろ! ターンの終わりにお前の墓地が5枚以上ある場合---------《ファンパイ》は龍解する!!」
「な、何だって!? まさかさっき、オレの墓地を増やしたのは--------」
「このためじゃ、ノゾム!!」
その瞬間、カードが変形し武器から”要塞”へと姿を変えた。
ノゾムは鎧龍では発売して間もないこのカードをあまり見かけたことはない。
しかし、デュエリストの本能が告げる。
----------これはとてつもなく強い、と。
「2D龍解、《龍脈空船 トンナンシャーペ》!!」
ドラグハート・フォートレスになったことによって、もう除去を一切受け付けない。
一方のノゾムだが、要塞に対抗するために結晶龍を繰り出す。
更なる高みを目指すために。
「驚きだぜ、じいちゃん。此処まで新しいカードを使いこなしてたなんてよ!」
にぃっ、と笑って見せた。そしてカードをバトルゾーンに繰り出す----------------
- Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解 ( No.79 )
- 日時: 2015/02/09 16:15
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
まず、ターンの最初と《エビデゴラス》のドローで2枚のカードをゲットしたノゾムは笑みを浮かべると、水晶龍を繰り出す。
「出て来い、《龍素記号Fz オシロスコープ》召喚!」
「ふん、そいつだけでは何も出来まい」
《オシロスコープ》は自分が呪文を唱えたとき、相手のクリーチャーを1ターンの間、攻撃もブロックも出来なくさせる効果を持つ。
しかし、このクリーチャー単体では何もできないのだ。
龍三に好きにさせていれば、《トンナンシャーペ》が第二の龍解を遂げる危険性がある。
だから、此処で少しでも時間を稼ぐしかない。
それが相手の攻撃手を封じるだけでも、だ。
「さらに、呪文《ザ・ストロング・スパイラル》で《アサシングリード》を俺の手札に戻し、さらにパワー6000以上のクリーチャーがいるので手札を1枚引く!」
「むっ、これはまさか」
「《オシロスコープ》の効果で《トンプウ》の動きを封じる! そいつには動かないで貰うぜ! ターンエンド!」
しかし、問題は、だ。次のターンで相手がどう出るかだ。
ノゾムは祖父の動きを見ていた。
そのときだった。にわかに祖父の口元が緩んだ。
「わしのターン」
ふっ、と笑ったのだ。あの祖父が。厳格で笑みなど滅多に見せないあの祖父が。
まるで、楽しんでいるようなのだ。このデュエマを。
「《ロスト・ソウル》によって、お前の手札を全て破壊!!」
「なっ!?」
「まだまだ甘いのう、ノゾムよっ!!」
しまった。とノゾムの顔は真っ青になった。前のアヴィオール戦のようにマッドネスは手札に無い。
手札が6枚。6枚程が墓地へ全て真っ逆さま。その中には、ドラグハートが龍解したときのための除去法《アサシングリード》もあった。
つまり、此処から立て直すのは-----------いや、まだ《エビデゴラス》がある。
「ターン終了」
「くっ、オレのターンだ! 《エビデゴラス》の効果で追加でドロー!」
ピンッ、とノゾムの中に閃くものが来る。
-----------これは!!
来た。これさえあれば、状況をひっくり返せる。
「そして、《理英雄 デカルトQ》を召喚!」
現れた装甲纏いし水晶の龍が吼えると、恵みの水がたちまち溢れ出す。
その水は、ノゾムの失われた手札を再び潤すのだ。
「マナ武装7発動、水のマナが7枚あるのでカードを5枚引くぜ! そしてこの瞬間、《エビデゴラス》の龍解条件は満たされた! じいちゃん、特と見やがれ!!」
変形する空母、そして現れしドラグハート・クリーチャー。
それは正義の為に、弱きものを守る為に現れる。
「弱き者の盾となれ! そして未来へ羽ばたけ蒼き龍王よ! 最後にして最期の龍解を成し遂げろ! 《最終龍理 Q.E.D+》ッ!!」
閃光と共に現れたのは、最強の蒼き鋼の龍王だった。
今、ノゾムを助ける為に、更なる高みへ昇っていく。
「《オシロスコープ》でW・ブレイク!」
シールドを2枚叩き割り、残り3枚。後ろには龍素の王の姿が。
「《Q.E.D+》でシールドをW・ブレイク!」
シールドが再び吹き飛んだ。2枚。
だが、しかし。
「掛かったな、S・トリガー《龍脈術 水霊の計》! 《Q.E.D+》よ轟沈し、海の藻屑と化せい!!」
「龍回避でフォートレスになれば生き残る!!」
危ない危ない、再び龍解させねばならないが、こちらにはブロッカーもいる。向こうはフォートレスと雑魚一匹。
そう簡単には破れないか、とノゾムは思っていた。
が、本音は内心ガクガクだったが。
「だが、残念だったな! わしのターン!!」
次の瞬間、《トンナンシャーペ》が閃光に包まれる。
「ターンの始めにお前の墓地が10枚以上あるので、龍解条件達成!!」
そして、形を変え、深海を支配する偉大かつ雄大かつ尊大な龍へ。
「破! 今、その姿を此処に現せ、知識の支配者よ! 欲望のままに全ての呪を解き放つが良い、3D龍界ィーッ!! 《亜空艦 ダイスーシドラ》よ!!」
亜空艦 ダイスーシドラ P 水文明 (8)
ドラグハート・クリーチャー:クリスタル・コマンド・ドラゴン 11000
W・ブレイカー
このクリーチャーが攻撃する時、いずれかのプレイヤーの墓地から呪文を1枚、コストを支払わずに唱えてもよい。そうした場合、その後、その呪文を持ち主の墓地に置く。
なんて、強大で威厳にあふれた姿なのだろうか。ノゾムはホログラムで現れたその姿に戦慄した。
亜空間さえも切り裂き、全ての知識を求め彷徨う結晶龍。
しかし、それは他のどの龍ともスケールが桁違いに巨大だ。他のドラグハート・クリーチャーでも話にならないほどに。
「さらに、超次元呪文《ミカド・ホール》で《ヴォルグ・サンダー》を再び召喚! 効果で我が墓地を更に増やすぞ」
このとき、龍三は1枚のカードに目を向けた。
-----------来たぞ、《英知と追撃の宝剣》!
「加えて、《ダイスーシドラ》で攻撃!」
ノゾムのシールドが2枚吹き飛ばされた。
さらに。
「《ダイスーシドラ》の効果で我が墓地から《英知と追撃の宝剣》を使う! そして、お前のクリーチャー2体を選択。どちらかを破壊し、どちらかを手札に戻せ」
「《オシロスコープ》を破壊して、《デカルトQ》を戻す!」
「次はマナゾーンのカードだ! 《ジャバ・キッド》と《スタローン》のどちらかを破壊し、どちらかを手札に戻せ」
「《スタローン》を墓地に!」
攻撃するたびに、亜空間を経由して呪文を使う。それが《ダイスーシドラ》の能力だった。
しかも、今のでノゾムは4枚ものアドバンテージを取られてしまったのだ。
「そして、使った呪文を我が墓地へ。次のターンもこれで使えるようになった」
亜空艦 ダイスーシドラ P 水文明 (8)
ドラグハート・クリーチャー:クリスタル・コマンド・ドラゴン 11000
W・ブレイカー
このクリーチャーが攻撃する時、いずれかのプレイヤーの墓地から呪文を1枚、コストを支払わずに唱えてもよい。そうした場合、その後、その呪文を持ち主の墓地に置く。
反則級の強さである。この手の効果で使った呪文は大抵、山札の下に行くものだが、まさか次のターンもリサイクル可能とは誰が思っただろうか。
強すぎだろう。
さらに《トンプウ》にシールドをブレイクされ、ノゾムのシールドは残り2枚。
しかも龍三を倒すには後2撃最低でも与えなければならない。しかし、それには次のターンでフォートレスを龍解させなければならないという上に、さらに攻撃できるクリーチャーを用意しなければならないのだ。
ぶっちゃけ、進化クリーチャーを使えば良いのだが、どちらかを取るとマナを減らされた所為でどちらかが出来なくなる。
そして次のターン。引いた手札を見てノゾムは溜息をついた。
まず、マナは8枚から6枚に減っていたのが、7枚に再び増える。そして、英雄を繰り出した。
「《デカルトQ》召喚! 効果で手札を5枚引き、《エビデゴラス》を龍解! 《Q.E.D+》でシールドブレイク!」
「ふんっ」
龍三、残りシールド0。しかし、後一発が届かない。
「ここまで、か」
「わしのターン。《ダイスーシドラ》でW・ブレイク。効果で墓地より《英知と追撃の剣》を唱えて《Q.E.D+》と《デカルトQ》を選択」
「駄目かっ、くそっ!! 《Q.E.D+》を破壊! 《デカルトQ》を手札に!」
ブロッカーは、もういない。
よって、ノゾムのシールドは容赦なく吹き飛ばされることになった。
そして、最後の一撃は--------------
「《龍覇 トンプウ》でダイレクトアタック」
確かに突き刺さったのだった。
- Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解 ( No.80 )
- 日時: 2015/06/26 03:07
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
「くっそ、じいちゃんつえーよ!」
はぁ、とため息をついたノゾムは言った。
完敗である。まさか、現役学生デュエリストが負けるとは。
「ふむ。まだまだじゃのう、かっかっか」
だが、今の龍三の表情は何時にも増して楽しそうだった。老人会でもこんな顔をしてデュエルをしていたのだろうか。
……未だに老人たちがデュエルをやっている様が想像できないノゾムではあったが。
しかしこのカードゲーム隆盛時代、誰もがデュエマをやっていてもおかしくはないのであるが。
「しっかし、3D龍解か……」
『すごかったよ、ノゾム!』
「ああ。星芒武装だけじゃねえ。龍解も極めないとな」
「ふむ、果たしてどうだろうな」
遮るように言った祖父は、ノゾムに歩み寄ると、続けた。
ノゾムは弾かれたように、振り向く。
「世の中には、龍解とは違う様々な戦法がある。龍解も確かに強力かもしれんが、それだけに執着する必要はない」
「というと?」
「剣道とて同じ、自分の戦い方を長い時間掛けて育てていけば、それで良い」
「……俺の、戦い方、か」
彼の中には、まだ星芒武装と龍解しかない。しかし、デュエマは何もそれだけが決め手となる戦法ではないのだ。
ノゾムは自分が今居る世界が、ほんの一端でしかないことを実感できていないのだ。
「とにかく、稽古ありがとよ、じーちゃん」
「うむ、精進するがよい----------」
と、龍三が言い終わった時だった。
ぽつん、ぽつん、と音がする。
「おや、雨か-------------」
呟いたノゾムは、窓の方をふと見た。
***
「うーむ」
クレセントのカードを見ながら、ノゾムは言った。
じろじろ見られているのに好い加減耐えかねたのか、彼女が実体化する。ただし、今は人型ではなく兎型の姿であったが。
「なーにー? ノゾムー」
「星芒武装、か……」
少し怒ったような顔で、クレセントは「だーかーらー、何考えてるのー」と言うが、少しおでこを撫でてやると「あふん」と機嫌の良い声を上げて大人しくなるのは、”兎の飼い方”とかいう典型的なペット本にあった知識で得たことである。
「うふふー、のぞむー」
「甘えん坊だな、お前は本当に……」
「……でも、白陽が今は、とっても辛い思いしてる。あたしばっかり、休んでいていーのかな」
チッ、と心の中でノゾムは舌打ちした。
畜生! 俺はやっぱり二の次かよ! 怪我した俺の心配は!?
半分仕方が無いことではあるのだが、クリーチャーを従わせる身としては、少々やるせなさを感じてくる。
「それよりも、だ」
憤りを押し殺し、ノゾムはクレセントに問うた。
「この星芒武装……いや、正確に言えば《月影機構 ルーン・ツール・S》のカード。これは一体、どっから出たものだと思う?」
「多分、それは”あたし自身”だと思うの」
「……何だって?」
耳を疑った。兎だけに。いや、そうではなく、だ。こんな不恰好な装甲(武装前)が彼女自身だというのか。
「はっきりとは分からないけど、あたしの”守りたい”って思いとあたしの精神が共鳴して生まれたんだと思うな」
「じゃあ、ステラアームド・クリーチャーは本体のクリーチャーの精神が何らかの要素が合わさって具現化したってことか」
「そして、それをもう1回身に纏う事で、よりその気持ちが強くなったんだよ?」
「1度分離させたものを再び纏うことで、更なる力を手に入れる、か?」
分からない。
最初からその力が使えない理由が。
何であれ、この能力。まだまだ解明が全く進んでいない。彼自身、これ以上の追及はやめていた。
「ノゾムー、だっこしてー」
「はいはい……」
いつもは白陽にして貰っていたのだろうか。若干、嫉妬の念が沸かないこともない。
だが、彼女の白い体毛は心地よく、彼の意識を闇に引きずり込んでしまうほどであった。
「……ノゾムー? もういーよー?」
返事が無い。その代わり、ぐーすかぴー、という鼾が帰ってきたが。
「やだ、もう! 寝ちゃってる!」
だが仕方ないか、と彼女は半ば諦めた。
------------ノゾムも疲れてるもんね……今日くらいは甘えさせても良いかな。
さっき甘えてきた自分を棚に上げ、彼女は微笑む。
「……白陽……大丈夫かな……」
だが、一方で恋人の容態が未だに不安だった。疲労が激しいだけなので、少し休めば回復するはずではあるのだが。
***
-------------クソッ、クソッ、クソガァァァァーッ!!
息を切らしながら、ニャンクスは”4本の脚”をフラ付かせながら、裏路地を歩いていた。
”あの戦い”以降、自分がクリーチャーとしての姿を保てなくなったのも、全部あの男・暁ヒナタの所為だ、ぶっ殺してやる、と。
何故、自分が此処にいるのか、とかそういうことは関係なかった。いや、考えたくも無かった。
そんなことより、この世界を滅茶苦茶にしたい破壊衝動が自分の中に渦巻いているのである。
----------マナ武装9発動!! 《ガイグレン》、アンタップ!!
繰り出される、斬撃、斬撃、斬撃。
それこそ死ぬかと思った。こんな目に遭っても死なないのは、辛うじて彼がクリーチャーという存在であるからか。
それ以上に、この世に再び生を受けた英雄であるからか。
普通のクリーチャーならば、消滅しているダメージだ。
-----------俺は……誰だっけ……。
何も思い出せない。
自分がニャンクスという名前で、前にいた世界でかなり高い地位に居たことだけは覚えている。
誰かに仕えていたような気もしなくはない。
しかし、それだけだ。曖昧に記憶はぼやけている。
その理由は、全く分からないわけでもなかった。
彼の中に渦巻く意味を成さない憎悪が、彼自身の記憶や思い出(この2つは脳内では違う場所に記憶されるため、違うものとする)を侵食しているからだ。
ひょっとして自分は死ぬのではないか。自分が此処まで歩いてこられたのは、ある意味の奇跡だったのではないか。
もう、立てない。歩けない。
そのまま、意識が遠のいていく----------
「……あれ? 何この子猫?」
声が聞こえたときには、もう何も思い出せなかった-----------
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