二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ D・ステラ 【侵略世界編】
日時: 2017/01/16 20:03
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

【読者の皆様へ】
はい、どうも。二次版でお馴染み(?)となっているタクと申します。今回の小説は前作の”デュエル・マスターズ0・メモリー”の続編となっております。恐らく、こちらから読んだ方がより分かりやすいと思いますが、過去の文というだけあって拙いです。今も十分拙いですが。
今作は、前作とは違ってオリカを更にメインに見据えたストーリーとなっています。ストーリーも相も変わらず行き当たりばったりになるかもしれませんが、応援よろしくお願いします。

また、最近デュエマvaultというサイトに出没します。Likaonというハンドルネームで活動しているので、作者と対戦をしたい方はお気軽にどうぞ。


”新たなるデュエル、駆け抜けろ新時代! そして、超古代の系譜が目覚めるとき、デュエマは新たな次元へ!”



『星の英雄編』


 第一章:月下転生

Act0:プロローグとモノローグ
>>01
Act1:月と太陽
>>04 >>05 >>06
Act2:対価と取引
>>07
Act3:焦燥と制限時間
>>08 >>10
Act4:月英雄と尾英雄
>>13
Act5:決闘と駆け引き
>>14 >>15 >>18
Act6:九尾と憎悪
>>19 >>21
Act7:暁の光と幻の炎
>>22 >>23
Act8:九尾と玉兎
>>25

 第二章:一角獣

Act1:デュエルは芸術か?
>>27 >>28 >>29
Act2:狩猟者は皮肉か?
>>30 >>31 >>32 >>33
Act3:龍は何度連鎖するか?
>>36 >>37
Act4:一角獣は女好きか?
>>38 >>39 >>41 >>42 >>43 >>44 >>45
Act5:龍は死して尚生き続けるか?
>>48

 第三章:骸骨龍

Act1:接触・アヴィオール
>>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55
Act2:追憶・白陽/療養・クレセント
>>56 >>57
Act3:疾走・トラックチェイス
>>66
Act4:怨炎・アヴィオール
>>67 >>68
Act5:武装・星の力
>>69 >>70
Act6:接近・次なる影
>>73

 第四章:長靴を履いた猫

Act1:記憶×触発
>>74 >>75 >>76 >>77
Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解
>>78 >>79 >>80
Act3:捨て猫×少女=飼い猫?
>>81 >>82
Act4:リターン・オブ・サバイバー
>>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90
Act5:格の差
>>91 >>92 >>93 >>104
Act6:二つの解
>>107 >>108 >>109 >>110
Act7:大地を潤す者=大地を荒らす者
>>111 >>112 >>113
Act8:結末=QED
>>114

 第五章:英雄集結

Act1:星の下で
>>117 >>118 >>119
Act2:レンの傷跡
>>127 >>128 >>129
Act3:警戒
>>130 >>131 >>132
Act4:策略
>>134 >>135
Act5:強襲
>>136
Act6:破滅の戦略
>>137 >>138 >>143
Act7:不死鳥の秘技
>>144 >>145 >>146
Act8:痛み分け、そして反撃へ
>>147
Act9:fire fly
>>177 >>178 >>179 >>180 >>181
Act10:決戦へ
>>182 >>184 >>185 >>187
Act11:暁の太陽に勝利を望む
>>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>193 >>194 >>195
Act12:真相
>>196 >>198
Act13:武装・地獄の黒龍
>>200 >>201 >>202 >>203
Act14:近づく星
>>204


『列島予選編』


 第六章:革命への道筋

Act0:侵攻する略奪者
>>207
Act1:鎧龍サマートーナメント
>>208 >>209
Act2:開幕
>>215 >>217 >>218
Act3:特訓
>>219 >>220 >>221
Act4:休息
>>222 >>223
Act5:対決・一角獣対玉兎
>>224 >>226
Act6:最後の夜
>>228 >>229
Act7:鎧龍頂上決戦

Part1:無法の盾刃
>>230 >>231 >>232 >>233 >>234 >>235 >>236 >>239
Part2:ダイチの支配者、再び
>>240 >>241 >>242 >>243 >>244 >>245 >>246 >>247 >>248 >>250
Part3:燃える革命
>>252 >>253 >>254 >>255 >>256
Part4:轟く侵略
>>257 >>258 >>259 >>260 >>261

Act8:次なる舞台へ
>>262


 第七章:世界への切符

Act1:紡ぐ言の葉
>>263 >>264 >>265 >>266 >>267 >>268 >>270
Act2:暁ヒナタという少年
>>272 >>273
Act3:ヒナとナナ
>>275 >>276 >>277 >>278 >>279 >>280 >>281
Act4:誓いのサングラス
>>282 >>283 >>284 >>285
Act5:天王/魔王VS超戦/地獄
>>286 >>287 >>295 >>296 >>297 >>298 >>301 >>302 >>303 >>304 >>305
Act6:伝説/閃龍VS獅子/必勝
>>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>323
Act7:青天霹靂
>>325 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>331
Act8:揺らぐ言の葉
>>332 >>333 >>334 >>335 >>336
Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神
>>337 >>338 >>339 >>340 >>341 >>342 >>343
Act10:伝える言の葉
>>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351
Act11:連鎖反応
>>352


『侵略世界編』


 第八章:束の間の日常

Act1:揺らめく影
>>353 >>354 >>359 >>360 >>361 >>362
Act2:疑惑
>>363 >>364
Act3:ニューヨークからの来訪者
>>367 >>368 >>369 >>370 >>371
Act4:躙られた思い
>>374 >>375 >>376 >>377
Act5:貴方の為に
>>378 >>379 >>380 >>381 >>384 >>386
Act6:ディストーション 〜歪な戦慄〜
>>387 >>388 >>389
Act7:武装・天命の騎士
>>390 >>391
Act8:冥獣の思惑
>>392
Act9:終演、そして——
>>393


 第九章:侵略の一手

Act0:開幕、D・ステラ
>>396
Act1:ウィザード
>>397 >>398
Act2:ギャンブル・パーティー
>>399 >>400 >>401
Act3:再燃 
>>402 >>403 >>404
Act4:奇天烈の侵略者
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>411
Act5:確率の支配者
>>412 >>413
Act6:不滅の銀河
>>414 >>415
Act7:開始地点
>>416


 第十章:剣と刃

Act1:漆黒近衛隊(エボニーロイヤル)
>>423 >>424
Act2:シャノン
>>425 >>426
Act3:賢王の邪悪龍
>>427 >>428 >>429
Act4:増殖
>>430 >>431 >>435 >>436 >>438 >>439 >>440 >>441 >>442
Act5:封じられし栄冠
>>444


短編:本編のシリアスさに疲れたらこちらで口直し。ギャグ中心なので存分に笑ってくださいませ。
また、時系列を明記したので、これらの章を読んでから閲覧することをお勧めします。

短編1:そして伝説へ……行けるの、これ
時系列:第一章の後
>>62 >>63 >>64 >>65

短編2:てめーが不幸なのは義務であって
時系列:第三章の後
>>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103

短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル)
時系列:第四章の後
>>120 >>121 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126

短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日
時系列:第四章の後
>>149 >>150 >>153 >>154 >>155 >>156

短編5:恋情パラレル
時系列:第四章の後
>>157 >>158 >>159 >>160 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>173 >>174 >>175 >>176

短編6:Re・探偵パラレル
時系列:平行世界
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422

エイプリルフール2016
>>299 >>300

謹賀新年2017
>>443


登場人物
>>9
※ネタバレ注意。更新されている回を全部読んでからみることをお勧めします

オリジナルカード紹介
(1)>>96 (2)>>271
※ネタバレ注意につき、各章を読み終わってから閲覧することをお勧めします。

お知らせ
16/8/28:オリカ紹介2更新

Act4:奇天烈の侵略者 ( No.407 )
日時: 2016/10/10 00:33
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

「な、何だこいつ——!!」

 フィールドはたちどころに、カジノ街と化し、ネオンで彩られた夜のビルが並ぶ。
 だが、異様なのは、それが次々に変形していくことだった。
 欲望の中枢たる《ベガス》を取り込んだことで、ビルは歪んで巨腕と化し、カジノは盛り上がっていき、やがて頭部となった。
 徐々に、その全貌が明らかになる。
 《超奇天烈 ベガスダラー》は、熱狂と欲望そのものである侵略者だ。カジノの街そのものを取り込み、とうとう顕現したのである。
 その両肩には、鳳のマークがシンボルとして付けられていた。胸には、巨大なルーレットの回転盤が出現する。

「さあびっくりどっきり、世紀の消失マジックの開始です! 貴方の山札の上から1枚を表向きに! さあ、どうぞ!」
「く、またそれか——!」

 山札の上から1枚を捲る。
 そして——ノゾムは戦慄した。今度は《龍覇 M・A・S》。またも、今までノゾムを救ってきた切札だ。
 それが裏目に出るとは——

「ほほーう、今度はコスト6! マジック大成功! フィールドのクリーチャー全てを今から、消してみせましょう!」

 次の瞬間、《ベガスダラー》の回転盤からビームが放たれた。
 それが当たった瞬間、ノゾムの場にあったクリーチャーは全て消し飛ばされる。
 いや、正確に言えば手札に戻されたというべきか。
 だが、一瞬で彼の場を更地に変えたのはさながらマジシャンである。

「や、やべぇ——!! こいつ、本当にオレのクリーチャーを——!! 全部消す、ってオールバウンスってことかよ!! どうなってんだ!!」
「どうなってるかって? それは簡単。この世紀の大魔術師・リンユーがショーの主役を務めているからですよぉー!!」



超奇天烈 ベガスダラー SR 水文明 (7)
進化クリーチャー:マジック・コマンド/侵略者 8000
進化−自分の水のクリーチャー1体の上に置く。
侵略−水のコマンド
W・ブレイカー
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、相手は自身の山札の上から1枚目を見せ、その後山札の一番下に置く。そのカードのコストが5以上なら、バトルゾーンにある相手のクリーチャーをすべて手札に戻す。それ以外なら、カードを2枚引く。



 だが、これだけでは終わらない。
 《ベガスダラー》による、シールドへの攻撃はまだ終わってないのだ。
 そのまま、シールドが2枚、再びビームによって叩き割られる。
 しかし——

「S・トリガー、発動! 《サイバー・I・チョイス》! その効果で、手札から《サーフ・スパイラル》を使用する! その効果で、《ベガスダラー》をバウンスだ! 更にもう1枚、《スパイラル・ゲート》で《シャッフ》をバウンス!」
「うーん、またやられちゃいましたかぁー。残念。でも、大消失マジック、お楽しみいただけたでしょうか?」

 小馬鹿にしたような表情で、リンユーは言った。
 一方、シールド諸共クリーチャーをバウンスされたノゾムの心境は決して気持ちの良いものではなかった。

「ターンエンド!」

リンユー:山札23 手札5 マナ2/5 墓地0

 しかし。
 幾らバウンスされてクリーチャーも居なくなったとはいえ、勝ち目がなくなったわけではない。
 その証拠は、彼の手札にあった。今のオールバウンスが仇になったことを、彼女に思い知らさねばならない。

「オレのターン、ドロー——そして、《アクア隠密 アサシングリード》を召喚! その効果で、《マイパッド》をバウンスするぜ!」
「むぅ、またですかぁ」
「そろそろシールドを削っていくか——《サイバー・I・チョイス》で攻撃!」

 電脳の化身が、リンユーのシールドを打ち破る。
 これにより、彼女のシールドは残り4枚となった。

ノゾム:山札25 手札5 マナ1/5 墓地1 シールド3

 これで、相手の場にクリーチャーはいなくなった。
 相手のマナ的に、即座にまた《ベガスダラー》が出てくる心配はないと思いたい。
 此処まで掻き乱されるとは思わなかったのである。

「では私のターン、《奇天烈 シャッフ》を召喚! その効果で、選ぶのは4! 更に《マイパッド》も召喚して、ターンエンドです!」

 しかし、所詮バウンスはバウンス。破壊しなければ、《シャッフ》は何度でも手札から戻ってくる。厄介なクリーチャーには変わりない。

「くっ、コスト4の呪文とコスト4のクリーチャーによる攻撃を封じてきたか……!」

リンユー:山札22 手札4 マナ2/6 墓地0 

 つう、とノゾムの額に汗が浮かんだ。
 しかし。このまま負けるわけにはいかないのである。

「オレのターン、ドロー——今度は、《龍覇 M・A・S》召喚! 効果で、コスト4以下の水のドラグハートである《龍波動空母 エビデゴラス》をバトルゾーンへ! そして、《M・A・S》の効果で《シャッフ》をバウンスだ!」
「出てきましたかあ、ドラグハート・フォートレス。でも、どこまでやれますかねえ?」
「へんっ、お前の言うマジックとやら——ロジックによるマジック、超科学が相手になってやるぜ! リキッド・ピープル閃の築き上げた要塞、嘗めるなよ!」

 遂に現れた、ドラグハート・フォートレス。
 不沈の空母、《エビデゴラス》をどかすのは奇天烈の侵略者でも不可能だ。
 
「もう1回、《チョイス》でシールドをブレイクだ!」

 これで、シールドの数はタイになった。
 戦力的にも、除去されにくいフォートレスを立てたノゾムが優勢と言えるかもしれない。
 しかし。決して、油断はできないことは彼にもわかっていた。

「ふーむ。これは仕方ないですねえ」

 再び、リンユーにターンが回ってくる。
 さて、確かに侵略クリーチャーは、指定されたカードが無ければ侵略進化は出来ない。
 しかし。

「忘れないでくださいよぉ? 普通の進化もできるんですからあ——《マイパッド》進化——《奇天烈コイコイ》!」



奇天烈 コイコイ C 水文明 (3)
進化クリーチャー:マジック・コマンド/侵略者 5000
進化−自分の水のクリーチャー1体の上に置く。
侵略−水のクリーチャー



 彼女の甲高い声と共に、《マイパッド》の体に鳳の紋章が焼き付けられ——侵食していく。そして現れたのは、花札を持った侵略者であった。
 更に、彼女のマナはまだ4枚残っていた。

「もう1回、《奇天烈 シャッフ》召喚! 選ぶのは数字の”6”!」

 彼女にとっても、やはり《サーフ・スパイラル》を警戒したかったのだろう。それだけではなく、《M・A・S》の攻撃を止めた形になる。
 更にそれだけではない。今度は《コイコイ》がシールドを目がけて飛び掛かった。

「さあ! さあ! さあ! 本日二度目の登場です! 皆さんご覧あれ! 世紀の大魔術師の登場を——水のコマンドの攻撃をトリガーに、変幻マジック・侵略発動!」

 再び、侵略は発動した。
 スポットライトが当たると同時に、大量のコインが注ぎ込まれる。
 そして、カジノの都を取り込み——奇天烈の侵略者が姿を現した。

「——ショータイム、《超奇天烈 ベガスダラー》!」
「やっぱり来たか——!!」

 最悪、此処で再び大消失マジックと称した全バウンスが起こりかねない。
 この試合、やたらとツキが悪い事はノゾムも分かっていた。
 侵略でなくとも、この効果は当然発動する——

「それでは、山札の上から1枚をオープンしちゃってください!」
「……!」

 カードを表向きにする。
 もしも、此処で全バウンスを食らったら、最早《エビデゴラス》の龍解どころではない。まして、進化元が居ないので革命どころではない。
 ——でも、オレは引く!! 確率だろうが、何だろうが——此処でオレは引かねえといけないんだ!!
 カードを捲った。
 会場が緊張に包まれる。
 そして——ノゾムはそれをリンユーにおずおず、と見せた。
 その表情は——笑っていた。
 そこにあったのは——《アクア少年 ジャバ・キッド》だったのである。

「……チッ、失敗! でも、《ベガスダラー》は効果でカードを2枚引けます! 決着は次のターンに取っておきましょう!」
「まだだ! 逃がさねえぜ! S・トリガー、《龍脈術 水霊の計》! 効果で《シャッフ》を山札の一番下へ!」
「本当に、トリガーが多く積んでるみたいですね……!」
「これで、何とか止めたぜ!!」

 ノゾムは宣言した。
 今の彼のシールドは1枚。
 既に、革命の狼煙は上がっていたのだ。

「——オレのターン、ドロー!」

 カードを引くノゾム。
 その顔は、勝利を確信した笑みだ。
 今までの分を全て返さんとばかりに——彼は《サイバー・I・チョイス》の頂きに叩きつける。

「無限の知識を相乗し、今此処に革命を証明せよ!!」

 その身体は龍素の力を集積し、電撃のように迸っていく。 
 理想と現実のギャップ。それさえも乗り越えて、龍戦士は再び目覚めた。
 青天、霹靂を飛ばす勢いで龍程式の革命軍が今、顕現する。



「稲光のように速く、そして確かな希望となれ!!
《革命龍程式 プラズマ》!!」

Act4:奇天烈の侵略者 ( No.408 )
日時: 2016/10/10 12:08
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

 現れたのは、稲妻の如き結晶の革命軍。
 その効果により、ノゾムの手札に4枚のカードが渡る。
 そしてこれは同時に——《エビデゴラス》の龍解条件を満たしたことも意味していた。

「——弱き者の盾となれ! そして世界を導く礎となれ——龍解!!」

 カッ、と浮遊する要塞に龍の鼓動が宿る。
 そして、咆哮と共に、その機体は変形し、龍の姿を成した——



「——《最終龍理 Q.E.D+》!!」



 その登場により、観客は更に沸き立った。
 ノゾムの切札2枚が一気に揃い踏み、完全に場は整ったと言ってもいいだろう。
 しかも、リンユーはクリーチャー中心の構築故に、余り除去呪文を入れていないように見受けられた(精々、マナに置かれていた《ピタゴラス》くらいか)。
 このまま、一気に押し切ることが出来る。

「そして、《プラズマ》で《ベガスダラー》を攻撃し、破壊!!」

 彼が命じると共に、閃光の結晶龍は、その拳を侵略者へと突き立てた。そして、一気に紫電が迸る。
 バチバチと音が鳴り、侵略者の思考回路は文字通り、焼き焦がされた。
 壮大な爆発音とともに、《ベガスダラー》は成す術なく機能停止していく。
 これにより、リンユーのクリーチャーは全て手札以外の場所に除去されたことになる。
 彼女の手札はかなり多いが。

「そして、《Q.E.D+》でシールドをW・ブレイクだ!!」
「うっ——!!」

 放たれた光線が、シールドを焼き尽くし、0と1の羅列へと還元していく。
 これで、リンユーのシールドは残り1枚となる。
 しかし、彼女のシールドが光り、収束した。

「S・トリガー、《機術士 ゾローメ》! その効果で《M・A・S》をロック、つまり攻撃もブロックもできなくしますよ! まあ、《シャッフ》の効果かかってたんで意味ないですけど!」



機術士 ゾローメ C 水文明 (5)
クリーチャー:マジック・コマンド 3000
S・トリガー
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、相手のクリーチャーを1体選ぶ。次の自分のターンのはじめまで、そのクリーチャーは攻撃もブロックもできない。



 現れたのは、壷振り女の姿をしたロボット型クリーチャー。
 彼女が座っている巨大な筒からサイコロが射出され、《M・A・S》に当たるや否や、その姿を巨大なサイコロに変えてしまう。

「これで、ターンエンドだ! そして、次のターンでお前を倒す!」

 次のターン。ノゾムは完全に勝つ算段が出来ていた。手札には《サイバー・ブック》と《アクア警備員 ラスト》がある。例え、次のターンに2体が除去されたとしても、《サイバー・ブック》で《エビデゴラス》を龍解させて、《ラスト》で最後のシールドを安全に消し飛ばすというものだ。
 ——ヒナタ先輩を倒した手段と全く同じ戦法でやってやるぜ!
 彼の勝利へのシナリオは完璧なものと思われた。
 かなりえぐく、えげつない方法であったが、次のターン、どうあがいても彼女を仕留めることが出来る。
 手札には、《ザ・クロック》こそ無いものの、《ピタゴラス》に《スパイラル・ハリケーン》、《水霊の計》と要塞状態になっており、《プラズマ》の効果で唱えられる。
 つまり。今ここでリンユーはノゾムに追い詰められた形になったのだ。

「——ふふふ」

 しかし。
 彼女から漏れた言葉は、彼の想像を超えていた。

「……可愛い」
「……えっ?」
「最初のうちは、まだ沼からまだ這い上がれるんですよ——でもある一線を越えたら、もう沼からは這い上がれない。ギャンブルも似てるところがあるんですよねえ」
「何言ってんだ、お前……!?」
「年下の子が私を此処まで追い詰めたのはいつ以来でしょうか——勝利を確信し、愉悦に酔い、狂喜しているその童顔——とても私、好きなんですよぉ——見てたら興奮しちゃうくらいに——思わず、轢き殺してしまいそうな程」

 にやり、とリンユーは笑みを浮かべた。その顔には、うっすらと紅が乗っている。

「私普段は、マジシャンとして淑女を演じることが出来るのですがね——貴方のように、私を追い詰めてくれる可愛い子を見ると——興奮しちゃうタチなんですよ」
「ちょ、あ、あのー?」
「さっき苛めてた時に、ムキになって怒ってた顔も良かったですけど——恐怖に怯えてガクガク震えてる顔も、良いですよねえ——最初は淑女を装ってましたが、もう我慢できません——貴方の心を、奪います。私の侵略で!!」

 その瞳は、最早歯止めの効かない暴走機関となっていた。
 彼女は、マナゾーンの4枚を手に掛ける。

「あはっ……♪ エクスタシー、何て素晴らしい響き——心臓が高鳴る、脳が快楽でズブズブに濡れるような心地!! さあ、最高のマジックを今!! 2体目の《奇天烈 シャッフ》召喚!!」
「げっ——またかよ!?」

 ——だけど、俺の手札には幾らでも呪文がある! 止められる!
 彼女が宣言したのは——

「指定する数字は”4”!! これで、《スパイラル・ハリケーン》は唱えられない——!」
「? どういう意味だ!? オレの手札にはまだ呪文が幾らでも——!」
「勝利は残酷な時の運!! さあ、さあ、さあ!! くたばるときの絶望に満ちた表情——早く見せてくださいよ!! 《シャッフ》を進化——」
 
 頂きにカードが重ねられた。
 そして——彼女の声と共に、《シャッフ》がその姿を変える。

「——《奇天烈 コイコイ》!!」
「っ——だけどそれでもうマナは使い切ったはずだ!!」
「甘い!! 甘い甘い甘い甘い甘い!! 実に甘い!! 全部分かった気になってるところがまたキュート!! 《コイコイ》で攻撃——するとき、侵略発動!!」

 《コイコイ》に手を掛け——再び、進化をさせる。
 その天辺に置かれたのは、更なる奇天烈の侵略者。一度敗れても、二度、二度敗れても三度——不屈の意思の下、侵略は発動した。

「さあ、さあ!! 今度は奇跡の生還マジック!! 皆さん、ご照覧あれ!! 本日のマジックショーの大トリを務めますは——《奇天烈 ベルセブン》!!」



奇天烈 ベルセブン R 水文明 (5)
進化クリーチャー:マジック・コマンド/侵略者 9000
進化−自分の水のクリーチャー1体の上に置く。
侵略−水のコマンド
W・ブレイカー
呪文の効果によって、相手がクリーチャーを選ぶ時、相手のシールドが2つ以下なら、相手は自分の水のクリーチャーを選べない。




 現れたのは、スロットを取り込んだ奇天烈の侵略者。
 ぐるぐるぐるぐる、と回り続けたそれは、ピタリ、と止まる。
 それは、ラッキーセブンのぞろ目だ。
 
「7、7、7!! あはははははははは!! ジャックポット!! 大当たり!! ゲームセット!! さあ、そのまま《ベルセブン》でシールドをブレイク!!」

 迫る攻撃。
 その拳が彼のシールドに叩き込まれようとした瞬間——革命は起こる。

「遍く知識の集積よ、遍く異変(エラー)への防壁となれ——革命2発動!!」

 彼の宣言と共に、シールドのさらに奥から、大艦隊の支援砲撃が放たれた。
 《プラズマ》の効果で、唱えられたS・トリガーカードは《幾何学艦隊ピタゴラス》だ。
 
「《ピタゴラス》の効果で《ゾローメ》と《ベルセブン》をバウンスだ!!」
「ふふ、あははははははは!! 残念でした!! ”侵略モード”、発動!!」

 次の瞬間、《ベルセブン》の瞳が光る。
 そして、7の数字が3つ現れ、艦隊の砲撃を弾き返してしまった。
 《ゾローメ》も、《ベルセブン》も無事だ。

「——侵略モード——相手のシールドが2枚以下の時、《ベルセブン》の効果で私の水のクリーチャーは呪文によってえらばれません!! あははははははは!!」
「え、う、嘘だろ!?」
「皆さん、ご覧ください!! あの艦隊の砲撃を受けながら、彼らは見事生還しました! まさに、奇跡!!」

 ——選ばれない——そうか、だから先に《スパイラル・ハリケーン》を潰したのか!!
 この状況で、彼女の懸念となるのはS・トリガークリーチャーと全体除去の《スパイラル・ハリケーン》のみ。
 その片方の可能性は潰え、そしてノゾムが出してこなかった以上——S・トリガークリーチャー、特に《ザ・クロック》の可能性も潰えた。
 最早、彼女の侵略を邪魔するものは無い——革命も虚しく、最後のシールドが割られた。

「ト、トリガーじゃない——!!」
「虚しいですねぇ——貴方の今の顔、とっても可愛いですよ? 敗北を認めた、絶望に満ちた表情——何て愛らしいのかしら」

 そんな声が、耳を吹き抜けていった。
 成す術はもう無い。呪文で選ばれないので、革命0トリガーも意味を成さない。
 侵略の圧倒的力を前に——ノゾムは押し潰されるしかなかった。



「ダイレクトアタック、成立——!」

Act4:奇天烈の侵略者 ( No.409 )
日時: 2016/10/10 19:36
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

 ——革命、敗れる。
 会場に、そして鎧龍チームの間には、衝撃が広がっていた。
 侵略対策の革命が、こうも打ち砕かれるとは。
 圧倒的な力を前にして、放心状態のノゾムはがくり、と膝をつく。負けた。恐ろしい程に強い敵だった。

「すいませんねえ。私のデッキ、これでもまだマジック・コマンドの寄せ集めのようなものなんですよ。我らがリーダー——リュウ・テイシュウはこんなものではない」
「……くっ、完敗だ……!」

 デッキを片づけ、悔しさに顔を歪ませてフィールドを後にするノゾム。
 彼女は言った。テイシュウのデッキはこんなものではない、と。だとすれば——彼がどれほどの実力者なのか、測りえない。
 いや、そもそも彼が出て来るかもわからないのであるが。
 
「くっ、すいません先輩……!」
「大丈夫だ、ノゾム。先発の哨戒役としてはなかなかだったぞ」
「でも、あれで旧型のデッキって——かなり、まずいんじゃないですか?」
「侵略を侮っていたわけじゃねえ……革命もそれなりに強化されている……だが、こいつら相手には革命頼りにするような単調な戦法は通用しねえし、そうじゃなくても——ノゾムのようになる」

 フジの言葉が重々しく響く。
 次で勝たなければ、日本は、鎧龍は敗北となる。
 次の試合は何が何でも負けるわけにはいかないのだ。

「次の試合——誰を出すか」

 全員は黙りこくる。
 残る4人——ヒナタ、レン、コトハ、ホタルの中で、誰を選ぶか。
 かなり重い決断だ。
 しかし、そんな中で進み出たのは——

「——あたしが出ます」

 ——コトハだった。
 全員はざわめく。確かに、このままでは膠着状態であることも確かであるが——

「勝算はあるのか?」
「——策はあります!」

 彼女の発言からは強い意志が感じられた。
 だが、あながち間違ってもいない。彼らのビートダウンに対して、彼女のデッキは非常に鈍重であるが——耐え抜けば、後半戦に全く隙を許さなくなるだろう。
 次の瞬間、アナウンスが鳴り響く。
 既に相手は選手を決めてしまったようだった。

『中堅戦ッ!! ジンリュウデュエリスト養成学校は、この試合に王手をかけていますが——』

 入場してきたのは、瓶ブチ眼鏡をかけ、白衣を纏った少年だった。
 常に無表情で、視線はどこか虚ろだ。
 その名が呼ばれる。



『ジンリュウデュエリスト養成学校、学業成績トップ! 3年生、ハン・グエン選手!!』



 同時に観客は沸き立った。
 3年生。ということはエースクラスの筆頭で間違いないだろう。
 一方、向かい側から進んでくるのは——

『一方、鎧龍決闘学院、もう後が無い! 中堅戦の選手は、如月コトハ選手!!』
「行くわよ、ニャンクス!」
『はいですにゃ!』

 高らかに声を上げた彼女。
 大歓声に包まれる中、グエンは憂鬱げに溜息をついた。

「はぁ。空はこんなに青いのに……わざわざこの僕が君の相手をせねばならないとはね……気分はブルーだ」
「何とでも言いなさい。此処で勝って繋げるわ!」

 昨日のデッキ調整は無駄では無いことを証明するため。
 そして、ノゾムの敗北を無駄にしないため。
 何よりもチームの為、彼女はデッキを手に取った。

「はあ。ブルーだ。あの海が淡く見える程にブルーだ。君は、僕を楽しませてくれるのか?
「さあ? どうかしら。油断してたら、楽しむ間もなく負けちゃうわよ?」
「……始めようか」



『試合、開始!!』



 ***


・コトハ
侵攻する神秘 ニガ=アブシューム
邪帝斧 ボアロアックス
真聖教会 エンドレス・ヘブン
爆熱剣 バトライ刃
恐龍樹界 ジュダイオウ
始原棍 ジュダイナ
龍魂教会 ホワイティ
護衛武装 ロシアンブルー・ディープス

・グエン
シルバー・ヴォルグ
時空の剣士 アクア・カトラス
勝利のプリンプリン
サンダー・ティーガー
時空の英雄アンタッチャブル×2
時空の喧嘩屋キル×2



 後攻2ターン目。現在、グエンの場には、《トロン》と《マリン・フラワー》が出ている。
 対するコトハも、序盤から一気にエンジンをかけていた。

「呪文、《メンデルスゾーン》を使うわ! その効果で、山札の上から2枚を表向きにして、それがドラゴンならマナゾーンへ!」

 捲られたのは《龍覇 ザ=デッドマン》と《凶英雄 ツミトバツ》だ。
 両方ともドラゴンの為、マナゾーンへ落ちる。
 
「ドラゴン……か。もう、そんなにマナが溜まっているのか……鬱だ」
「ふん、うじうじして……何なのあんた。さっさと終わらせてやるわ。ターンエンド」

コトハ:山札26 手札4 マナ0/4 墓地1

 憂鬱げに彼はカードを引く。
 彼の言動からは生気というものを感じられない。
 ブルー、まさにブルーそのもの。
 しかし。

「……それでは、そろそろ行こうか。はぁ、憂鬱だ。テイシュウとの賭けで、マジック・コマンドは全部あいつに取られ……いや、あいつは悪くないんだ……悪いのは変に賭けに乗った俺なんだ……ああ、何て僕はついてないんだ。あの後2回もマンホールに落ちたぞ」
「いや、もういいからそういうの。何か……どっかで聞いたことあるわ、あんたの愚痴」

 そういえば、ホタルが言っていた。
 この男、元はかなりの強豪プレイヤーだったのだが、テイシュウの賭けにまんまと乗って、切札だったカードをかなり取られたらしい。
 それで元々ブルーだった性格が更にブルーになったらしく。
 
「ともかくだ……3マナをタップ。《ジャバン》召喚」



ジャバン P 水文明 (3)
クリーチャー:サイバーロード/エイリアン 2000
ブロッカー
このクリーチャーは攻撃できない。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札を見る。その中から《ジャバン》を1枚選び、相手に見せてから自分の手札に加えてもよい。その後、自分の山札をシャッフルする。



「この効果により、山札から《ジャバン》をサーチ——ターンエンドだ」

グエン:山札28 手札3 マナ0/3 墓地0

「あたしのターン、ドロー!」

 ——と言っても、少しまだ手札が悪いわね……! 此処でできることが無い……!
 重いカードを多々入れているため、コトハの行動はマナチャージのみで終わる。

コトハ:山札25 手札4 マナ5/5 墓地1

「僕のターン。4マナで《パクリオ》召喚。その効果でお前の手札を見る」
「げっ……」

 彼女の手札が公開される。
 そこには、《ジャックポット・エントリー》に《界王類邪帝目 ザ=デッドブラッキオ》、《龍世界 ドラゴ大王》、《支配のオラクルジュエル》が——そこから選択されたのは、《ジャックポットエントリー》。
 即座にシールドへ埋められる。

「ターンエンドだ」
「うぐぐ……!」

 コトハは歯ぎしりした。
 着実に次のターンの行動が潰されていっている。

グエン:山札27 手札2 マナ0/4 墓地0

「あたしのターン——取り敢えず、マナにカードを置いてターンエンドよ」

 完全に事故った、というべきか。
 意気揚々と出ていった矢先にこんな目に遭うとは。
 しかし、マナを溜めていけばまだ勝ち目はある、と信じる。相手はサイバー。恐らく侵略は使ってこない。侵略を想定した構築ではあったが、まだマシな部類と思いたい。

コトハ:山札24 手札4 マナ6/6 墓地1

 しかし。真の恐怖はここからだったのである。

「僕のターン、ドロー。さあ、此処まで足踏みご苦労。君達島国のサルが、侵略を負けた言い訳に出来ないように——この僕直々に解体してやろう」

 カードを引くグエン。
 そして——彼は、5枚のマナをタップした。

「——水の主戦力は、リキッド・ピープルやマジック・コマンドだけではない。何が出るのか、分からない。これもまた——ギャンブル。さあ、憂鬱に、ブルーに、最悪な実験を行おうじゃないか——!」

 彼女は身構えた。
 来る。敵の切札が。
 水で統一されたマナが、水文明最高峰の秀才を作り上げた——



「さあ、発明開始——《スーパーハッカー サイバー・クーン》!!」

Act4:奇天烈の侵略者 ( No.410 )
日時: 2016/10/10 18:06
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

 現れたのは、ごちゃごちゃとした機械を身に纏った胎児のようなクリーチャー。
 そこからアームが伸び、もんずと《トロン》、《ジャバン》、《パクリオ》を掴む。
 そして——もがくそれらを妙な機械に放り込み——プシュウウウ、と空気が抜けるような音と共に、新たなる電脳の使者が姿を現した。

「その効果により、《トロン》と《ジャバン》、《パクリオ》を破壊——そして、山札をサイバー・コマンドが出るまで見せ——」

 《コーライル》、《クウリャン》、《トロン》——そして、4枚目でそれは姿を現した。



「《サイバー・G・ホーガン》、召喚!!」



 轟!! という唸り声と共に、それは姿を現す。
 巨大なる砲丸を抱えた、電脳の化身が顕現したのだ。
 早くもこれが現れたという事実に、相手の豪運にコトハは簡単せざるを得ない。

「嘘ォ!? 《ホーガン》が出てきたっていうの!? 《サイバークーン》——かなり使いづらいクリーチャーって聞いてたけど!」



スーパーハッカー サイバー・クーン R 水文明 (5)
クリーチャー:サイバーロード/ハンター 2000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のサイバーロードを3体破壊してもよい。そうした場合、進化ではないサイバー・コマンドが出るまで自分の山札の上からカードをすべてのプレイヤーに見せる。そのクリーチャーをバトルゾーンに出し、残りを自分の墓地に置く。



 それと同時に、グエンの山札の上から2枚が捲られる。
 そして現れたのは——

「出でよ《サイバー・N・ワールド》に《ラブリー・ハート》!!」



サイバー・N・ワールド SR 水文明 (6)
クリーチャー:サイバー・コマンド 6000
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、各プレイヤーは自身の手札と墓地のカードをすべて山札に加えてシャッフルする。その後、それぞれ、5枚カードを引く。
W・ブレイカー



ラブリー・ハート R 水文明 (5)
クリーチャー:サイバー・ウイルス/ハンター 4000
このクリーチャーがバトルする時、バトルしている相手のクリーチャーを持ち主の手札に戻してもよい。
自分のシールドが2枚以下の時、このクリーチャーのパワーは+2000され、「ブロッカー」を得る。



 今度は、2体の電脳の化身が姿を現した。
 そして、《N・ワールド》により、新たなる世界が組み替えられていく。

「《N・ワールド》の効果発動! 手札と墓地のカードを全て山札に戻し、シャッフルしろォーッ!!」
「っここでそれを引くの……!?」

 山札にカードを戻すコトハ。
 相手の戦略を崩す一方で、自分は手札を補充することができる強力なカード、《N・ワールド》。
 このデッキにおいても、《サイバー・クーン》で消耗した山札を回復させる役割を持っていたのだろう。

「——ターンエンド」
「っ……!」

 コトハは押し黙る。
 まずい。サイバー・コマンドは並ばれればかなり厄介な種族だ。
 なるべく早く、彼を倒さなければならない。
 しかし、そのためには今の手札では決め手が足りない——

「——あたしのターン、ドロー」

 カードを引くコトハ。
 そして——高らかに宣言した。
 


「よくもやってくれたわね——《霊樹の賢幻星 ニャンクス・プリエーゼ》召喚!!」



 刹那、ホログラムとなってニャンクスの姿が映し出される。
 杖を掲げ、マントを羽織り、超次元の穴をこじ開けた。
 星のクリーチャーの存在は、彼もやはり知っているらしく、興味ありげな表情を浮かべる。

「出てきたか……! 星のカード……革命に続く日本の新たな兵器だったな」
「ふん、このまま一気に決めるわよ! 超次元ゾーンから《護衛武装 ロシアンブルー・ディープス》をバトルゾーンへ!」

 穴から姿を現したのは巨大なサーベルタイガーの護衛獣。
 自身のドラゴンのコストを2軽減する強力なクリーチャーだ。
 
「ターンエンド! 一気に決めてやるわ!」
「……果たしてそう上手くいくかな?」

 ——さっきので《デッドブラッキオ》が山札に流れちゃったから、かなり不安だけど——! 耐え切るしかない!
 ごくり、と息を呑む。
 こちらのシールドは6枚。そうそう割られることは無いと思いたいが——

「それでは行こうか! G・ゼロで《パラダイス・アロマ》召喚!」



パラダイス・アロマ C 水文明 (3)
クリーチャー:サイバー・ウイルス 2000
G・ゼロ−バトルゾーンにサイバーロードが1体でもあれば、このクリーチャーをコストを支払わずに召喚してもよい。
※殿堂入り



 現れたのは、バクテリオファージのような容貌のクリーチャーであった。巨大な頭に、節足動物のような細い脚が生えている。
 そして——その頂に、彼は更にカードを重ねる。
 タップされたのは6枚の水のマナ——



「《パラダイス・アロマ》進化——《超電磁 トワイライトΣ》!!」



超電磁トワイライトΣ(シグマ) SR 水文明 (6)
進化クリーチャー:サイバー・コマンド 8000
進化−自分の「サイバー」と種族にあるクリーチャー1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の「サイバー」と種族にある進化ではないクリーチャーを好きな数、バトルゾーンから手札に戻してもよい。その後、このようにして戻したクリーチャー1体につき、自分の「サイバー」と種族にある進化ではないクリーチャーを1体、手札からバトルゾーンに出してもよい。
W・ブレイカー



 現れたのは、幾つものドリルの如き電極を身に着けた電脳の化身。
 激流と共に現れ、一瞬で場の流れを支配する。

「ああ……憂鬱だ。もう、このデュエルが終わってしまうのか——《トワイライトΣ》の効果で、《サイバークーン》を僕の手札へ」

 その激流で、《サイバークーン》が彼の手札へと押し戻された。
 そして——《トワイライトΣ》の思考回路が再構築され、巨大な龍の影を投影した——



「——伝説の鎧龍よ、その改造されし姿を今こそ此処に!! 《ボルメテウス・蒼炎・ドラゴン》!!」




ボルメテウス・蒼炎・ドラゴン SR 水/火文明 (8)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン/サイバー・コマンド 9000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
スピードアタッカー
W・ブレイカー
このクリーチャーはブロックされない。
このクリーチャーがシールドをブレイクする時、相手はそのシールドを自身の手札に加えるかわりに墓地に置く。



 会場に再び盛況が上がった。
 新たなるサイバー・コマンドにして、アーマード・ドラゴンにして、《ボルメテウス》。
 まさかの登場に、そのインパクトを前にしてコトハは後ずさってしまう。
 プラズマカノンを抱えた装甲、全てを焼き尽くす炎。
 それは見紛うことなき伝説の龍であった。
 
「こいつも《ボルメテウス》を——!!」
「種族がアーマード・ドラゴンと、サイバー・コマンドになってやがる……! ブロックされねえ上に、スピードアタッカー、そしてこの軽さ——アタッカーに求められているものすべてをもってやがる!?」

 驚きを隠せないのはヒナタ達も同じだった。
 特に、オリジナルを所持しているレンは、またも新たな派生形を目にして動揺している。
 しかし。間もなく、グエンは眼鏡を押し上げ、叫ぶ。
 このデュエルの終焉を。

「行け!! 《蒼炎・ドラゴン》でシールドをW・ブレイク!!」
「っ……シールドは——!!」

 轟!! と全てを焼き尽くす怒りの炎がシールドを包んだ。
 もちろん、歴代の例に漏れず、墓地へ直葬される。トリガーも発動しない。
 更に——彼の場には、まだ3体のアタッカーがいるのだ。

「《N・ワールド》でシールドをW・ブレイク!!」

 更にシールドが叩き割られる。
 この盤面を引っ繰り返す強力なS・トリガーは来ない。
 しかし——

「S・トリガー、《フェアリー・シャワー》! その効果で、山札の上から2枚を見るわ!」
「関係ないね!! もう1枚!!」

 山札の上から2枚を捲る。
 そして、彼女は1枚を手札に加え、《水晶邪龍 デスティニア》をマナへ置く。
 更に、2枚目のシールドが割られた。

「S・トリガー、《フェアリー・ライフ》! マナを1枚加速するわ!」
「ハハハハハ!! もう終わりか? もっと憂鬱に、ブルーに!! 《サイバー・G・ホーガン》でW・ブレイク!!」

 パリン、と1枚目のシールドが割られた——その時だった。

「——感謝するわ。あんたがデッキをかき混ぜてくれたから、もう1回巡り合えたのかしら」
「……何?」
「スーパー・S・バック発動」

 次の瞬間、《ホーガン》の割った1枚目のシールドが焼け落ちる。
 そして——そこから、強大なる邪龍が姿を現した。




「——絶対なる邪悪な界王龍よ。欲望を満たし、大地を割る恐怖となれ——《界王類邪龍目 ザ=デッドブラッキオ》!!」

Act4:奇天烈の侵略者 ( No.411 )
日時: 2016/10/13 22:27
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

 ***



 試合前。ステージへ進んでいくコトハに、ヒナタは呼びかけた。

「おい、策って一体——!?」
「馬鹿ね。あるわけないでしょ。未知の敵が相手なのに」
「オイ!?」

 あっけらかんと言い放つ彼女に、ヒナタは呆れが隠せなかった。
 しかし。

「ま、あなたに影響されたっていうか。今回のデッキは、かなりの自信作なのよ。昨日、散々特訓したあなたならわかるでしょ?」
「……ま、もううだうだやってても仕方ねーな」

 がしっ、と彼女の肩を掴むと思いっきり口角を釣り上げ、ヒナタは言った。
 彼女の表情に迷いはない。今更止める理由も無い。ならば自分に出来ることは——

「全力で行って来い!」
「誰に言ってんの。勝ってくるわ!」



 ***



 ——そうよ。あたしは絶対に勝つ。ヒナタに背中を押されたんじゃ、もう後戻りなんか出来るわけないじゃない!
 次の瞬間、フィールドを叩き割り、巨大な五本の首を持つ邪龍が現れる。
 《ザ=デッドブラッキオ》は、マナゾーンにカードが5枚以上あって、5文明が揃っていればスーパー・S・バックを得て場に現れる脅威のクリーチャー。 
 その登場時効果で、相手のクリーチャー1体をマナゾーンに封じ込め、相手の龍解を完全に禁止するという、サイキックに対する《偽りの名 シャーロック》のような能力を持つのだ。
 
「っ馬鹿な——!! 手札にもう1枚——折角シールドに埋めて、最後にブレイクするはずだったのに!!」
「《フェアリー・シャワー》で手札に加えられたのよ。さあ、《トワイライトΣ》をマナゾーンに送るわ!」
「ぐうう——鬱だ、鬱だ鬱だ鬱だ鬱だぁぁぁー!!」

 大地から蔓が伸び、《トワイライトΣ》を完全に引きずり込んだ。
 更にもう1枚、カードが手札から現れる。

「おのれぇぇぇ!! 《ラブリー・ハート》でダイレクトアタック!!」
「ニンジャ・ストライク6発動——《威牙の幻 ハンゾウ》で《ラブリー・ハート》のパワーをマイナス6000して破壊!!」

 完全に、攻めの芽は潰された。
 これにより、グエンはもう、このターンに出来ることが無くなってしまう。



界王類邪龍目 ザ=デッドブラッキオ SR 自然文明 (8)
クリーチャー:ジュラシック・コマンド・ドラゴン 9000
多色マナ武装 5:このカードが自分の手札にあり、自分のマナゾーンにカードが5枚以上あって5文明がそろっていれば、このクリーチャーは「スーパーS・バック」を得る。(カードを自分のシールドゾーンから手札に加える時、そのカードを捨ててもよい。そうした場合、このクリーチャーをコストを支払わずに召喚する)
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選び、持ち主のマナゾーンに置く。
相手のドラグハートは龍解できない。
W・ブレイカー



 さて、相手のマナには火文明を含む《猛菌剣兵 チックチック》がある。
 つまり、素出しでも再び《蒼炎》を次のターンに出せる状態ということだ。
 このターンで決めなければ、勝利は無い。もしも半端に攻め込めば——増えた手札のどれかに《蒼炎》が入っていることが、負け筋となる。

「さあ、やってやろうかしら!」

 カードを引く。
 そして——9枚のマナをタップした。
 最早、《ディープス》のコスト軽減を使う必要はない。一気に此処でグエンを倒す。
 更に、今度は《ニャンクス》の宝杖が光った。

「《ニャンクス・プリエーゼ》の大地ガイアマナ武装5発動! マナゾーンに、ドラゴンか自然のクリーチャーが5枚以上あれば、あたしはマナゾーンからクリーチャーを召喚できる! あたしは更に9コストをタップするわ!」

 次の瞬間——フィールドが震えた。
 既存のクリーチャーとは一線を画す、強大な気配が場を支配する。
 次の瞬間、強大な咆哮が響き渡った。
 ドラグハートに、その身を取り込まれた若きドラグナーの成れの果て——無限にマナを食らい尽くし、破壊する龍の化身。
 その名は——



「数多の大地を食らい、暴走しなさい——《暴龍事変 ガイグレン》!!」


 
 ——破滅の事変であった。

「さあ、行くわよ。《プリエーゼ》の効果で、自然以外のクリーチャーが場に居れば、あたしのマナゾーンのカードは全ての文明を得るわ!」
「そ、そんな、ということは——!!」
「マナ武装9、発動——」

 そう宣言した途端に、《ガイグレン》の大剣が振り上げられる。
 そして——一気に、グエンのタップされていたクリーチャー全てが切り裂かれた。もう、1度暴れ出せば、《ガイグレン》は止まらない。全てを焼き尽くしても尚、その暴走は止まらない。

「——攻撃時にアンタップ!! これでクリーチャーは全滅よ!!」
「ぐっ——馬鹿な!! この僕が——お前ら如きに——!!」
「さあ、次はシールド!!」

 2枚、4枚、そして最後の1枚——この無限の熱を持つ龍の前では、抗うことさえも無意味だ。
 そのまま、剥き身になったグエンに大太刀が振り下ろされた。



「マナ武装9、アンタップ——《暴龍事変 ガイグレン》でダイレクトアタック!!」



 ***



『決着!! 中堅戦を制したのは、鎧龍・如月コトハ選手だ!!』



 歓声が上がる。
 この戦い、まだ終わりはしない。
 コトハが必死で食い繋いだ形になった。
 がくり、と落胆した表情を見せるグエン。
 対するコトハは、嬉々とした表情で仲間たちの元に戻っていく。

「コトハ! すげぇよ、やったじゃねえか!」
「へへん、勿論よ!」

 ばっ、とヒナタに抱き着く。
 彼女も嬉しいのか、気持ちの昂ぶりが抑えられないようだ。
 その光景を見て、思わず赤面するホタルとノゾム。流石に場所を弁えて欲しいと思ったが、抱き着くくらいなら……問題は無いだろう。
 しかし、浮かれている暇もない。
 呆れたようにレンが言った。

「馬鹿め。まだ喜ぶのは早い。次は大将戦だ。誰が出るのか……」
「それはもう、決めてあるぜ」

 自信たっぷりにフジが断言する。
 
「——最後はヒナタ。テメェが行け」
「ん、やっぱり俺っすか」
「何だかんだ言って、此処一番ではテメェと決めているんだ。相手は誰を出してくるかわからんが……追い詰められてる上に、エース格をやられたんだ。出てくるのは一択だ」
「相手は除去を回避してくる難敵……それは、一昨日のテイシュウのデッキや、リンユーのデッキを見ても分かる。僕では、少し相性が悪いかもしれんな」
「……そうだな。一昨日の借りは倍にして返さねえと!」

 既に、気合いが入っているのか、彼は笑みを浮かべた。
 今から武者震いがする。この間負けた相手へのリベンジ——なんとしてでも果たしたいところだ。
 
「……あなたも、勝ってきてよね! 絶対、よ!」
「分かってる。大将の俺が負けたら、話にならねーからな!」
「先輩! オレの分までぶっ飛ばしてきてください!」
「おう!」

 彼はわき目も振らずに、フィールドへの階段を駆け上がる。
 歓声が、聞こえてきた。



『それではこれより、大将戦を開始します!! 鎧龍決闘学院からは——リーダー・暁ヒナタ選手が選出されました!!』

「さあ白陽! やるか!」
『全く。結局私をデッキに入れるとは……物好きだな、お前も』
「たりめーよ! 頼りになる相棒が居なくて、此処一番の大勝負が出来るかよ!」

 向こう側を見据える。
 つか、つか、と硬い靴の音を立てて現れたのは——

『ジンリュウデュエリスト養成学校からは、此処で絶対に勝つつもりか、最強の勝負師、3年のリーダーであるリュウ・テイシュウ選手の登場です!!』

「さあ、最高のゲームを始めようかネ——暁ヒナタ!!」

 いつものきな臭い笑みを浮かべ、彼は大きく手を広げた。
 これから、最高に熱に狂ったゲームが始まることを喜ぶように。

『テイシュウ選手は、学園内でも『運命天導(ウィザード)』という異名を持つほどの実力者! 果たして、どのような勝負を見せてくれるのでしょうか!』

 ウィザード。それは魔導士を意味する単語だ。やはり、この男は只物ではない。
 デッキのカードを置き、シールドを展開する。
 自分の読みが当たったことを喜ぶように、ヒナタは言った。待ちに待っていたマッチングだ。彼との決着をつけることができる。

「やっぱり来たな、テイシュウ」
「君は必ずリベンジに来る——そう思っていたんだよネェ……そして、あのデッキはお前のエースデッキじゃない。最強のドラゴンの力、今一度俺にも見せてくれよォ!!」
「良いぜ。見せてやるよ! こっからが大一番、決着をつけるぜ!!」



『——それでは、大将戦——開始!!』


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