二次創作小説(紙ほか)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- デュエル・マスターズ D・ステラ 【侵略世界編】
- 日時: 2017/01/16 20:03
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
【読者の皆様へ】
はい、どうも。二次版でお馴染み(?)となっているタクと申します。今回の小説は前作の”デュエル・マスターズ0・メモリー”の続編となっております。恐らく、こちらから読んだ方がより分かりやすいと思いますが、過去の文というだけあって拙いです。今も十分拙いですが。
今作は、前作とは違ってオリカを更にメインに見据えたストーリーとなっています。ストーリーも相も変わらず行き当たりばったりになるかもしれませんが、応援よろしくお願いします。
また、最近デュエマvaultというサイトに出没します。Likaonというハンドルネームで活動しているので、作者と対戦をしたい方はお気軽にどうぞ。
”新たなるデュエル、駆け抜けろ新時代! そして、超古代の系譜が目覚めるとき、デュエマは新たな次元へ!”
『星の英雄編』
第一章:月下転生
Act0:プロローグとモノローグ
>>01
Act1:月と太陽
>>04 >>05 >>06
Act2:対価と取引
>>07
Act3:焦燥と制限時間
>>08 >>10
Act4:月英雄と尾英雄
>>13
Act5:決闘と駆け引き
>>14 >>15 >>18
Act6:九尾と憎悪
>>19 >>21
Act7:暁の光と幻の炎
>>22 >>23
Act8:九尾と玉兎
>>25
第二章:一角獣
Act1:デュエルは芸術か?
>>27 >>28 >>29
Act2:狩猟者は皮肉か?
>>30 >>31 >>32 >>33
Act3:龍は何度連鎖するか?
>>36 >>37
Act4:一角獣は女好きか?
>>38 >>39 >>41 >>42 >>43 >>44 >>45
Act5:龍は死して尚生き続けるか?
>>48
第三章:骸骨龍
Act1:接触・アヴィオール
>>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55
Act2:追憶・白陽/療養・クレセント
>>56 >>57
Act3:疾走・トラックチェイス
>>66
Act4:怨炎・アヴィオール
>>67 >>68
Act5:武装・星の力
>>69 >>70
Act6:接近・次なる影
>>73
第四章:長靴を履いた猫
Act1:記憶×触発
>>74 >>75 >>76 >>77
Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解
>>78 >>79 >>80
Act3:捨て猫×少女=飼い猫?
>>81 >>82
Act4:リターン・オブ・サバイバー
>>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90
Act5:格の差
>>91 >>92 >>93 >>104
Act6:二つの解
>>107 >>108 >>109 >>110
Act7:大地を潤す者=大地を荒らす者
>>111 >>112 >>113
Act8:結末=QED
>>114
第五章:英雄集結
Act1:星の下で
>>117 >>118 >>119
Act2:レンの傷跡
>>127 >>128 >>129
Act3:警戒
>>130 >>131 >>132
Act4:策略
>>134 >>135
Act5:強襲
>>136
Act6:破滅の戦略
>>137 >>138 >>143
Act7:不死鳥の秘技
>>144 >>145 >>146
Act8:痛み分け、そして反撃へ
>>147
Act9:fire fly
>>177 >>178 >>179 >>180 >>181
Act10:決戦へ
>>182 >>184 >>185 >>187
Act11:暁の太陽に勝利を望む
>>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>193 >>194 >>195
Act12:真相
>>196 >>198
Act13:武装・地獄の黒龍
>>200 >>201 >>202 >>203
Act14:近づく星
>>204
『列島予選編』
第六章:革命への道筋
Act0:侵攻する略奪者
>>207
Act1:鎧龍サマートーナメント
>>208 >>209
Act2:開幕
>>215 >>217 >>218
Act3:特訓
>>219 >>220 >>221
Act4:休息
>>222 >>223
Act5:対決・一角獣対玉兎
>>224 >>226
Act6:最後の夜
>>228 >>229
Act7:鎧龍頂上決戦
Part1:無法の盾刃
>>230 >>231 >>232 >>233 >>234 >>235 >>236 >>239
Part2:ダイチの支配者、再び
>>240 >>241 >>242 >>243 >>244 >>245 >>246 >>247 >>248 >>250
Part3:燃える革命
>>252 >>253 >>254 >>255 >>256
Part4:轟く侵略
>>257 >>258 >>259 >>260 >>261
Act8:次なる舞台へ
>>262
第七章:世界への切符
Act1:紡ぐ言の葉
>>263 >>264 >>265 >>266 >>267 >>268 >>270
Act2:暁ヒナタという少年
>>272 >>273
Act3:ヒナとナナ
>>275 >>276 >>277 >>278 >>279 >>280 >>281
Act4:誓いのサングラス
>>282 >>283 >>284 >>285
Act5:天王/魔王VS超戦/地獄
>>286 >>287 >>295 >>296 >>297 >>298 >>301 >>302 >>303 >>304 >>305
Act6:伝説/閃龍VS獅子/必勝
>>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>323
Act7:青天霹靂
>>325 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>331
Act8:揺らぐ言の葉
>>332 >>333 >>334 >>335 >>336
Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神
>>337 >>338 >>339 >>340 >>341 >>342 >>343
Act10:伝える言の葉
>>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351
Act11:連鎖反応
>>352
『侵略世界編』
第八章:束の間の日常
Act1:揺らめく影
>>353 >>354 >>359 >>360 >>361 >>362
Act2:疑惑
>>363 >>364
Act3:ニューヨークからの来訪者
>>367 >>368 >>369 >>370 >>371
Act4:躙られた思い
>>374 >>375 >>376 >>377
Act5:貴方の為に
>>378 >>379 >>380 >>381 >>384 >>386
Act6:ディストーション 〜歪な戦慄〜
>>387 >>388 >>389
Act7:武装・天命の騎士
>>390 >>391
Act8:冥獣の思惑
>>392
Act9:終演、そして——
>>393
第九章:侵略の一手
Act0:開幕、D・ステラ
>>396
Act1:ウィザード
>>397 >>398
Act2:ギャンブル・パーティー
>>399 >>400 >>401
Act3:再燃
>>402 >>403 >>404
Act4:奇天烈の侵略者
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>411
Act5:確率の支配者
>>412 >>413
Act6:不滅の銀河
>>414 >>415
Act7:開始地点
>>416
第十章:剣と刃
Act1:漆黒近衛隊(エボニーロイヤル)
>>423 >>424
Act2:シャノン
>>425 >>426
Act3:賢王の邪悪龍
>>427 >>428 >>429
Act4:増殖
>>430 >>431 >>435 >>436 >>438 >>439 >>440 >>441 >>442
Act5:封じられし栄冠
>>444
短編:本編のシリアスさに疲れたらこちらで口直し。ギャグ中心なので存分に笑ってくださいませ。
また、時系列を明記したので、これらの章を読んでから閲覧することをお勧めします。
短編1:そして伝説へ……行けるの、これ
時系列:第一章の後
>>62 >>63 >>64 >>65
短編2:てめーが不幸なのは義務であって
時系列:第三章の後
>>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103
短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル)
時系列:第四章の後
>>120 >>121 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126
短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日
時系列:第四章の後
>>149 >>150 >>153 >>154 >>155 >>156
短編5:恋情パラレル
時系列:第四章の後
>>157 >>158 >>159 >>160 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>173 >>174 >>175 >>176
短編6:Re・探偵パラレル
時系列:平行世界
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422
エイプリルフール2016
>>299 >>300
謹賀新年2017
>>443
登場人物
>>9
※ネタバレ注意。更新されている回を全部読んでからみることをお勧めします
オリジナルカード紹介
(1)>>96 (2)>>271
※ネタバレ注意につき、各章を読み終わってから閲覧することをお勧めします。
お知らせ
16/8/28:オリカ紹介2更新
- Re: デュエル・マスターズ D・ステラ 〜星々の系譜〜 ( No.116 )
- 日時: 2015/06/30 00:43
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
モノクロさん
と、コメントありがとうございます。とにかく、アクロガンドラーとニャンクスの関係もかなり試行錯誤したところでして。最終的にこういう形に落ち着きました。
アクロガンドラーは、確かに王の素質はあったかもしれませんが、やっぱり迷惑以外の何者でもないですよね、傍からすれば。
ニャンクスの、1人で全てを抱え込もうとした思いが具現化し、悪性のクリーチャーとなってしまった、ということです。
そして、例の龍ですが、最初は《バイオレンス・サンダー》でも良いか、と思っていたんですよ。ですが、此処は敢えてボカしておこうと思いまして。ええ、その通りです。後々の解決編のため。今は謎にしておくとしましょう。
コトハは、良くも悪くも世話焼きでお節介なところがありますからね。委員長タイプとはそのことです。高飛車で、勝ち気で、とにかく放っておけない。それが如月コトハというキャラなんですね。彼女を描いてきて、ようやくそれが固まってきた気がします。
ともかく、彼女はニャンクスに一方的に力を貸すのではなく、共に戦うという意識で臨みたかったと言う事を描けていればよかったのですがね、少々厳しすぎましたか。
まあ、そりゃ確かに自分のミスは自分1人で償いたいものですよ。しかし、ニャンクスは結局それで生前に失敗してしまっている。そんな不器用な彼女を放っておけなかったんですよね。
しかし、その彼女自身も自分では気付いていませんが、不器用なんですよ。
やはり、別作品のフレイもそうですが、この手のキャラは扱いが難しいというか、言動の1つ1つが読者にどう取られているのか気になるところではあります。でも、単に綺麗なキャラばかり描いていては人間味が薄れてくるので、これはこれで良いか、と割り切っています。自分としては。
そもそも、コトハもアクロガンドラーにレンを傷つけられて怒っている気持ちが大きかったということを隅に止めておくと幸いです。
あ、《リンクス・ガルザード》で正解です。修正しておきました。書いてる途中でもしょっちゅう間違えるんですよ。紛らわしい(元凶)。
さて、《疾風迅雷 ニャンクス・ミラージュ》ですが、ミラージュは蜃気楼の幻のように、恐竜を虚空から出現させる能力から取ったんですね。
その結果、何文明か分からないような名前になってしまいましたけども、他の文明の要素も兼ね揃えているということで。何が言いたいかって、あらゆる自然現象を操る、という意味合いで理解してくだされば。
《護衛武装》も、やはり星芒武装の発祥ということで、それらしい名前にしています。ニャンクス系統のステラアームドは、皆こんな感じですね。
後、効果を実は少し間違えていまして、後に《インパクト・アブゾーバー》の効果を相手にだけ押し付ける、というものに変えています。これは、最初に載せたフレーバーテキストを変更するのを忘れていたりなんだりで、説明が難しいのですが、作者の手落ちです。すいませんでした。
後、トリガー描写のミスも同じですね。変えておきました。皇帝さんの落ち度ではないのです。すいませんでした。深夜テンションで書いていた所為か、自分の場合書き溜めとかせずにダイレクトに書いているので、(1時間に2500文字のペース)ミスが多かったりすることもあるんですね。
レンはそろそろ本格的に活躍して貰わなければというか、もうちょっと苦労して貰うと言いますか、そんな感じです。
というか、こんな寂しい言い訳を考えるわけないんですね、彼でも。じゃあ、誰って例のトラブルメーカーの先輩が勝手にしたに決まっています。
ヒナタもヒナタで、彼女が関わるとこれですからね。ずるずる、とまだ引っ張っていきますよ。人間、トラウマをそう簡単に払拭できるものではありませんからね。
ヒナタ戦のときのアクロガンドラーは、流石にあのときは、逆にヒナタに支配されかけてしまったわけですね。如何に彼の怒りに触れたときの恐ろしさが、大きいか分かっていただけるでしょうか。普段がボケボケしているので、一層それが現れていたかもしれません。
さて次回はどうなるか。5ヶ月近くかけて、ようやく終わらせた第四章。そして、いよいよ次からは一気に物語を動かしていきたいところです。
案外、英雄の件が片付いた後は速く感じられるかもしれないですね。
それでは、また。
- Act1:星の下で ( No.117 )
- 日時: 2015/10/03 15:57
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)
----------ニャンクスの事件から、数週間が経とうとしていた。あれからは、特に何も無い日々が続いていた。
六月ももう後半。終わりに差し掛かろうとしていた。そういえば、もうすぐ恒例の行事にして、去年、オラクルとの決戦会場にもなった”鎧龍サマートーナメント”が行われるのをヒナタは思い出していた。
それは、年毎に”決められた条件”でチームを組み出場する参加自由の団体戦である。
優勝すれば、年毎にさまざまな特典が付いてくるため、参加を”目指す”生徒は少なくはない。とはいえ、相当腕利きのものに限られてくるが。
さらに、これは単なる大会だとかイベントの類ではないのである。鎧龍には勿論、文化祭だとか体育祭だとかそういう行事もあるが、それに並んでこの行事は重んじられる。
まず、武闘財閥の開発した大型ホログラムフィールドでの大迫力の試合(普段のD・リーグでは使用されない)が行われ、これだけでも観戦する側からすれば見る価値は大いにあるのだ。
さらに、どのチームが勝つか賭けたりだとか、そういうこともあったりなかったりするので、参加するのは腕に自身のある一部の生徒でも、皆が観戦しにやってくるのだ。
「今年はレンがいるから、もしも去年と条件が同じならば、コトハと俺の3人で出るのか、これは」
ところが、問題はそのレンであった。
あの日以来、レンは物思いに耽ることが多くなり、ぼーっとすることも多くなった。
また、話しかけても素っ気無かったり、態度が以前よりも冷たくなったりすることもあった。
どこか、レンが自ら自分------------いや、
「最近のレン……心配よね。あんたも気付いてるでしょ」
「けっ、知るかあんな奴」
「あたしは心配で仕方ないわ。折角今年は3人でトーナメントに参加できると思ったのに」
「あのな。条件は毎年変わるんだろ?」
「そうだけど……」
コトハも含めて、自分達を避けているのではないか、と思い始めたのである。
「周りの奴が英雄を手に入れてるから、拗ねてるだけだって」
「……本当に本当にそう思う?」
「……すまん、嘘ついた。思わねぇ」
「多分、やっぱりあの敗北を、未だに引きずってるんじゃないかって思うとね」
「仕方ねーよ。大体、向こうが1人にしてくれって言ってるなら、別に良いんじゃないか。誰だって1人になりたいときはある」
「余計心配よ」
「あいつなら大丈夫さ」
しかし、口では楽観的なヒナタであるが、先ほども少し彼のことを心配している様子が垣間見えた。
そう。氷山の一角。表ではそれだけに見えるが、内心ヒナタは相当レンのことを心配していたのである。
***
ぐびり、とコップの中の麦茶を飲み干したヒナタは、宿題をとっとと終わらせて、今夜も自室の机でデッキの改造に勤しんでいた。
----------レンのことも心配だしな。
レンのことをそっちのけにして自分のデッキを改造しているわけではない。むしろ、彼が心配で、いつ何が起こっても大丈夫なようにデッキを強化しているのである。
----------ゴウ・ブレイクドラゴン……ガンガンマンモスの方が手軽と言えば手軽だが、一撃の破壊力とパワーはこっちの方が高ぇから、引き続き投入。そんでもって----------
1枚のカードに目を留めた。しかし。
-----------ああ、こいつはまだまだイマイチ使い方が分からないから、パス。
折角この間当たった超レアカードではあるが、ヒナタもイマイチ使い勝手が分からなかったのである。
そのまま、デッキに入れる候補から抜いてしまった。しかし。かなり貴重だからか、いつもの赤いスリーブに入れたままにし、そのまま大事そうに机の小さい引き出しの中に数枚、仕舞った。
かなり、難儀そうな表情で彼は悩みこんでいたのだった。
さて、基本”その気になれば”、コントロール、天門、イメン、準赤単、ヘルボロフ、墓地ソースetc……などあらゆるデッキを使うのが得意なヒナタであるが、自分の一軍デッキをしょっちゅう大幅に変える訳ではない。
ぶっちゃけると、そんなことを度々していたら彼の身と資産が持たないのである。
彼曰く。デッキは完成させてからが重要で、使うデュエリストにも相応の”練度”がいるからだと。
とはいえ、彼も此処に来てから大きなデッキ転換を何度か行っているので、適当に振り返ると------------
まず、鎧龍に来る前と来てしばらく使っていたのは、水光コントロール。ヒラメキ・プログラムや転生スイッチ、ヘブンズ・ゲートで大型のクリーチャーを出して一気に制圧するというデッキだ。これは、かなりの応用性があり、最終的には闇文明が入った。切札は、《蒼狼の始祖 アマテラス》。その名から太陽を連想される彼に相応しい切札だった。
そして、オラクルとの戦いの中で多くのカードを失い、さらなる攻撃力を求めて火水闇アウトレイジ、墓地ソースに。これは彼が鎧龍に入ってからはもっとも長く愛用していたデッキと言える。切札は、《百万超邪 クロスファイア》、《暴走龍 5000GT》。強力な奇襲性能と大胆な破壊力に何度も彼は助けられた。
そして現在。ドラポンがクリーチャー界に行くついでにアウトレイジのカードを全部持っていったため、(こちらのカードは向こうでは実体化するから。ヒナタに断り無く持って行った辺り、よほど切羽詰っていたのだと思われる)火単ドラゴンになったという訳である。何故、それまでに使っていた光文明に戻さなかったと言うと、やはり彼にも惰性というものがあり、長い間火のアウトレイジを使っていただけあって、やはり火の方が彼曰く「フィットしていた」のであった。
とまあ、こんな感じで今は赤単ドラゴンを使っている訳だが、遅く防御手段が少ないのは、彼には合わなかったらしい。如何せん、事故率が高すぎたのである。
そこで、今度はビートダウン寄りにこの間、ニャンクス戦の後改造したのだった。《ガイグレン》で修羅の如き連続攻撃をしてしまった自分を戒めるために、それを封印(引き出しに仕舞う)したのもあるが(《ガイグレン》の名誉のために言っておくが《ガイグレン》は何も悪くない)。
そんなわけで熱中していたヒナタであった。しかし---------
「おい、ヒナタ。もう遅いぞ」
---------もう夜中の2時で、白陽に心配されることになったのであった。
しかし、眠そうな目を擦り、彼は
「何が遅いんだ、ばーろー!! 俺のデッキは進化ビートダウンだ!!」
等と方向性のずれた反論を返す。寝ぼけているのだ。
「寝ぼけるな! そっちじゃない!」
「あ? 時間? ああ、もうこんな時間だ、もう寝るか-----------ふぁあ」
そうやく白陽の言葉を解したのか、欠伸交じりにそう言い、彼は机のスタンドの電気を消し、そのままベッドへ---------
「どわい!!」
行く前に、落ちていたプリントで足を滑らせ、顔面を床で強打したのは言うまでもなかった。
部屋の電気を消しており、スタンドの電気も消したのだ。真っ暗になるのは正常な頭なら考えられたのである。しかし、無理して働いていた彼のババロアブレーンはこの期に及んで腐ってしまったらしい。
そのまま目を回してしまい、白陽にベッドへ担ぎ上げられたのであった。
***
「……全く、我が主ながら情けない」
気持ちよさそうに眠るヒナタの顔を眺め、白陽は溜息をついた。
しかし。クレセントという恋人は居ても、短い間に此処まで仲が良くなった同性は居なかった。
今、自分が彼に抱いている感情とは何か、と自問する。
「……少なくとも、主とは言ったが主従だとかそういう関係ではないな。友とかと言うと、また少し違うが」
そう言えば。自分には甘えられる家族が居ただろうか。
家族は確かにいた。しかし。甘えられるような環境では無かった。いつも厳しい訓練を繰り返し、多くの学習をし、そして食事を取って寝る。
親は教官のような存在だったし、他愛の無い会話をしたことなどなかった。
----------辛いときも、苦しいときも、クレセントに頼ってきた。見方を変えれば、彼女は私の妹のようなものだからな。
しかし。今はどうだろう。まだ浄化されて間もないある日、ヒナタは言った。
----------晴れた夜は星を見ながら話そう。折角こうしてパートナーになれたんだ。男同士、月を見ながら馬鹿みてーな話すんのも悪くねーだろ。
互いの事を知るためにも持ちかけてきた話だった。星の下ならば話しやすい、と彼は言った。
「ああ、そうか」
白陽は気付いた。
自分が欲しかったものを。
「こうして、いつでも他愛も無い話が出来る、家族か------------」
- Act1:星の下で ( No.118 )
- 日時: 2015/07/04 23:40
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
思い返せば。敵側の表立った動きこそ無かった物の、ここ数週間は大変なことばかりであった。
まず、ニャンクスの処遇であるが、悪さをしていたのがアクロガンドラーだったこともあり、とりあえず彼---------ではなく、彼女は満場一致で無罪放免となり、コトハの相棒になったのだった。
それについては、また後ほど記すことになる。しかし、白陽達からすれば最も気になるのは、星芒武装についてだった。
ニャンクス曰く。
「----------貴方達のような、異界のクリーチャーでも、この技を習得することは不可能ではないですにゃ。まず、この技の習得条件として、”心を通わせる適合者”がいること、そして儀式-------------つまり、貴方達の言う”決闘(デュエル)”が必要なのですにゃ」
つまり、ノゾムとクレセントは知らないうちにこの条件を満たしていたのである。
では、何故白陽やハーシェルが習得できないのかというと------------
「いやー、種族にもよる上に、幾ら適合者とはいえ”波長”が完全に”絡み合った”状態で無い以上は無理なのですにゃ。そもそもこの儀式、”ステラアームド・クリーチャー”を呼び出すためのものに過ぎないのですにゃ。僕のように何度もこれを経験していれば、適合者であれば誰でも、ステラアームド・クリーチャーを呼び出すことが出来るのですがにゃ」
「つまり、あんたは適合者なら別に誰でも良かったと」
「で、でもでも、コトハ様が僕の事を心の何処かで受け入れていなければ、これは出来なかったと思うのですにゃ!」
「-----------あ」
このとき、コトハは思い出したように声を上げると、言った。
「キャシー。あんた、あたしが昔飼ってた猫に似てるのよ。多分、あたしがキャシーとあんたを重ねたから-----------」
成る程、と白陽は頷いていた。
しかし、自分には何が足りないのであろうか。来たるアヴィオールとの戦いに備え、自分も逸早くこの技を習得せねばならないというのに。
「ああ、そうそう。例のアヴィオールという輩、実は僕も何度か見かけているのですにゃ」
「見かけている?」
「カードの姿で街を回っていたときに、ですにゃ。恐らく奴は、考えられる限りの邪悪な手段で無理矢理ステラアームド・クリーチャーを呼び込んだ可能性が高いのですにゃ-------------」
***
「ヒナタよ----------クレセントを守ることも大事だ。しかし、私はお前に助けられた以上、恩を返さねばならない」
寝息を立てるヒナタに向かい、白陽は呟いた。
「しかし、私はお前の相棒になるには、余りにも不器用すぎた。だから、強くなることでしか、恩を返せないのだ」
恨んだ。自分の力不足を。
そこには、クレセントやニャンクス、そしてアヴィオールへの一種の妬みにも近い感情があった。ハーシェルにも何時追い越されるか分からないのだ。
「-----------私には、何が足りない」
「闇ですよ。邪悪な欲望ですよ」
ぞくり、と背筋が凍った。
次の瞬間、振り返ればそこには、全身が黒ずんだ骨で構成され、鎧を着込んだ龍------------アヴィオールが佇んでいた。
一瞬、白陽は理解に遅れたが、これがかなりまずい状況であることには変わりない。
「何故だ--------何故こんなところにいる!!」
狼狽した表情で白陽は問うた。
まさか、この部屋の中にまで入ってくるとは!
「貴様っ! 何をしに来た!」
「安心を。コレは僕の分身。一種のレターのようなものと捉えて頂いて結構」
「おのれ……!!」
「僕は現在、”ある人物”とWIN:WINの協定を結んでいてですね。そのために人間を浚っているのですよ。まず、私の体内に”概念”として捕らえられた人間は、生きたまま永遠に僕に欲望の力と生きるための源・血液を補給し続けます」
「-----------いきなり、何を言っているんだ貴様。そんなことを私に教えてなんになる」
「いや失礼。僕の悪い癖が出てしまった。ついつい喋りすぎてしまうのですねぇ、ククク。しかし、それとは別にあの方も人間の生き血を欲していてですね。そこで、僕に”武装”の方法を教える代わりに、私はそれを提供するという契約を結んだのですよ」
「何が言いたい……! 貴様のバックに誰かが居るのは分かった。しかし、それを私に教えて何になるというのだ!」
「あの方は、取引を貴方に持ちかけるように、僕に命じたのですよ」
交渉? と怪訝な顔で白陽は返した。
こんな奴の交渉になど、乗ってやるつもりも無かったが。
「----------貴方に”簡単に”武装の条件を教える。その代わり、私達の仲間にならないか? と」
ブチン、と白陽の中で何かが切れた。ふざけるな、そんな要求に従うものか、と。
「ふざけるな!! 私が武装を習得したい理由は、貴様の邪念を浄化するためだ!! 何故、私がその貴様の交渉に応じねばならんのだ!!」
「そう言うと思いましたよ。ですがね。こちらにも考えなしにそんな交渉を持ちかける理由は無いのです」
ですから、とアヴィオールは続けた。
「交渉に応じない場合、貴方の恋人------------クレセントさんを、”どんな手を使ってでも頂き”ます」
再び、白陽の脳天に火が点る。
そんなこと、させるわけがない。
「脅迫か……!!」
「ええ、そうですよ。どうせなら、貴方の後ろにいる暁ヒナタさんでも良いのですが-------------」
「断る!! 私の仲間達に、私と親しい者達に手を出せばどうなるか分かるはずだ!!」
「ええ、そうです。交渉は余計不利になる一方。だから、期日までに交渉に応じなかった場合、クレセントさんを浚う----------それ以外は誰にも手を出すつもりはありません。無関係者を入れて、ね」
「それを信じろ、というのか?」
「ええ。僕の邪気は私の本来の人格を食らうほど大きくなっている。欲望に忠実になることがこれほど快感と知ったのも、邪気に蝕まれた後。ですが、約束は守りますとも……交渉のためならね」
「邪気に蝕まれている自覚はあるのか」
「ええ。特別に教えましょう」
あくまでも不敵な態度を崩さずに、彼は得意気に語った。
「何故なら、今貴方と会話している”僕”は、元の人格をベースにしたものに過ぎない……破滅のため、そして宿主の本来の目的の実行のためならば手段は選びません」
「宿主----------成る程。貴様が”本来”のアヴィオールではないことは分かった。ならば尚更、その要求には応じられない!!」
「良いんですか? 大事な恋人がどうなっても?」
しゃあしゃあ、とアヴィオールは言った。此処までくると、逆に清清しくなってくるものである。
「良いだろう……良いだろう!! もしクレセントに手を出してみろ。その前に問答無用で貴様を焼き尽くしてくれる!!」
「おやおや、楽しみですねぇ。それでは、交渉の期間は一週間待ちましょう。我々は”旧海戸水産工場”に居るとしますので。交渉に応じる気になったら、こちらへどうぞ。早めの決断を勧めますがね」
「1つ、聞こう。捕らえられた人々は無事なんだろうな!!」
「それに答えるのは、貴方が交渉に応じてからですよ-------------!!」
にやり、とアヴィオールは嫌な笑みを浮かべた。
そしてそのまま、忽然、と部屋から姿を消してしまったのである。
- Act1:星の下で ( No.119 )
- 日時: 2015/07/07 19:46
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
----------どうするんだ!! 奴の強さは分かっている……! この星の邪気で汚染されて、尚更!! クレセントでも途中から奴を力技で押せなくなったほどの実力の持ち主-----------!!
更に、バックで誰かと組んでいることも分かっている。
これをわざわざ明かしたのは、白陽に力技が及ばないことを表すための”交渉材料”------------!!
尚のことまずい。とうとう、アヴィオールは決着を自ら付けにきたと言う事か。恐らく、自分の目的を果たすために。
「-----------話は聞いたぜ」
声がした。後ろのベッドで先ほどまで寝息を立てていたはずのヒナタだ。
「すまない、起こしたか。どこまで聞いていた」
「お前が”何故、此処にいる!!”って言ったところからか?」
「全部かオイ」
やはり起こしてしまったか、という申し訳なさを残しつつ白陽は「どうするれば---------」と問う。
「……アヴィオールの奴が、此処までカチコミに----------いや、交渉にくるとは思わなかったぜ。だけど白陽。相手の言葉の表面だけ見て全部を判断するのは危険だ」
「……何?」
「奴程の狡猾な奴が、断られると分かっている交渉を自分から持ち出すと思ってるのか?」
「じゃあ、敵の目的はクレセントだと言うのか?」
「……いや、それも分からんな」
「む」
見れば白陽は、ヒナタがすっごいふらふらしていることに気付いた。
「もう寝て良いか……? ともかく、あした皆に話そう」
「あ、ああ! すまなかった!」
「お前は?」
「-----------すまない。私はどうも眠れそうにないぞ」
ああー、とヒナタは頷くと言った。
「じゃあ、俺も一緒に起きててやる。俺はお前のデュエリストだからな」
「良いのか?」
「考えみたらよ。俺も寝られなくなっちまったわ。どーせ明日休みだし」
「……すまない」
「へっ、良いことよ。何謝る必要があるってんだ。どっち道、アヴィオールも解放しなけりゃいけない。あいつは絶対、邪気に飲まれて苦しんでるんだ」
***
如月家では。ようやく忙しい日々から抜け出すことが出来たコトハとニャンクスが、久々の余裕のある睡眠を取ろうとしていた。
此処最近、フジにニャンクスを貸し出したり(いや、半ば無理矢理ではあるが仕方あるまい。彼女曰く、酷いことはされなかった模様)、塾だったり、例の事件の事後処理なんかでゆっくりと睡眠を取る事などできなかったからである。
ベッドにばたり、と倒れこんだコトハは、カードの中のニャンクスに向かって言った。
「------------ねえ、ニャンクス。あんたと一緒に寝させて貰って良い?」
「え、ええ、でも……」
ぽんっ! と実体化したニャンクスは彼女の傍に寄るも、いまいち踏み出せないようだ。
どうやら、自分が主人と寝ることを躊躇っているようだった。
しかし。強引に彼女はニャンクスの小さな体を掴み、抱き寄せる。
「あんた、どーせ女なんでしょ? 雌なんでしょ? なら遠慮すること無いじゃない」
「そ、そうですけどもですにゃ、そんな恐れ多いこと----------」
「がたがた抜かさない! 命令よ! ほらっ!」
「わっ!?」
ぎゅうっ、とコトハはベッドの上でニャンクスを抱きしめる。
かああ、とニャンクスは自分の体温が上がっていくのが分かった。
「……コトハ……しゃま……」
「ねえ。あたしの傍にずっと居てくれる? あたしの猫として、ううん、猫だからこの”家”ね。それでも、あたしの傍に居てくれるかしら?」
しばらく沈黙が続いた。
ごめんなさい、と取り消すようにコトハは続けた。
「あたし……ワガママで意地っ張りで、おせっかい焼きだから……迷惑よね。あんたにも色々酷い事言っちゃったし」
「そ、そんな……僕は気にしていないですにゃ!」
「……本当に、ごめんなさい。そして、ありがとう。あたしを選んでくれて」
キャシーとニャンクスを重ね合わせてしまう、嫌な自分がいる。彼女は決して、キャシーの埋め合わせなんかじゃないのに。
まだ出会ったばかりなのに。
彼女を手放したくない。そんな感情が沸いて来る。
そんな中、自分の腕の中のニャンクスは言った。
「コトハ様……僕は貴方を選んで後悔なんかしてません」
「……えっ?」
「僕……嬉しかったのですにゃ。貴方のように真っ直ぐな人が持ち主で。確かにコトハ様は強引なところはあるかもしれない。でも、それ以上に……本当は誰よりも相手の事を思ってるんだって、伝わってくるから」
胸元で呟く彼女の言葉を聞き、ふふっ、とコトハは自分の口を綻ばせた。
「……あーもう……あんた、健気すぎるわよ!」
「わっ!? ちょっ、コトハ様!?」
「良いわ。一生、あたしの傍に置いてあげるんだから!」
これはまずい。完全にコトハの”可愛いもの大好きスイッチ”が入ってしまったと見て間違いない。
すりすり、とニャンクスの頬に自分の頬を擦り付けている。
「うー、ことは様……!」
と、満更でもない表情で、彼女のスキンシップを受け止めるニャンクスであったが-----------
「-----------んっ?」
そのとき、急に顔を険しくした。
同じく、コトハも唯ではない何かを感じ取ったのか、咄嗟に窓の方に顔を向けた。
「……何でだろう。今、すっごく嫌な感じがした気がする-----------!」
「同じくですにゃ、コトハ様……!」
***
「……ハーシェル」
「ああ。嫌な予感がする。とてつもない憎悪---------いや、その後ろに底抜けない破滅の”炎”の気配----------!」
「そういえば、アヴィオールはどうやって、曲がりなりにも武装の方法を知ったのでしょうか」
カードの中から、ホタルはハーシェルに問いかけた。
ばたり、と自分のベッドに倒れこんだ彼女の瞳を見つめたハーシェルは、「うむ」と頷くと答えた。
「……そこだけが腑に落ちないのじゃ」
「もしかして、”誰かに聞いたとか”----------?」
「ありえるな。だとすれば、一番考えられるのは」
「……不死鳥座のカードを持つ男、ですか」
《太陽龍皇 ソウルフェザー・ドラゴン》。ノゾムが以前戦った男が使っていたカードだ。
男はこのカードに加え、白陽を手にしていた。
そういえば、今でも疑問に思っていることがある。
「-----------あの男は何故、わざわざ白陽を手放すような真似をしたのでしょうか------------?」
- 短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル) ( No.120 )
- 日時: 2015/07/15 08:05
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
鎧龍決闘学院。
”海戸ニュータウン”と呼ばれる、人口埋め立て台地の上になった新都市の中央に聳え立つ列記とした中等教育学校である。
創設者は武闘財閥の現社長、武闘カゲトラであり、理事長も同時に勤めてはいるが元々の仕事の関係上、滅多に学校にはいない。
そんなことはぶっちゃけるとどうでも良いのである。
建前は”デュエリストの育成”ではあるが、本来は何故かこの近海に沈められていた祠とその中にあった2枚の、カードに封印された伝説のクリーチャーを管理(監視)する場所でもあったのだ。尚、そのカードのうち1枚は黒鳥レンが現在所持。もう1枚は暁ヒナタの手元にあったが、例によって彼の相棒(だった)ドラポンによって超獣界に持ってかれたのであった。
これにより、鎧龍は1つの役割を事実上失った訳であるが、そんなことでこの学校を閉めるわけにはいかないのである。
そもそも、カードの開発機関としての役割も果たしているのであるから。
小説大会早々、(2015年7月10日現在)早速こんな短編に作者が走った上に、何で割りとどうでも良いヒストリーなんざ聞かせられなければならんのだ、と突っ込みたい読者の諸君。さぞご立腹であろう。
まあ、何だ。要するに、”デュエリスト養成機関”という面を除けば、鎧龍は唯の学校となんら遜色無いのである。
つまりはデュエマだけ出来れば良いという訳ではないし-----------------”文化祭”などといった行事も普通に行われるのであるということだ。
今更、文化祭が何かという説明をする必要もないだろう。
鎧龍のそれは6月に行われる。そう、期末考査などであたふたしていた学生達への褒美と言わんばかりに----------なんてことは無かった。
そう。期末考査で精根をしっぽり搾り取られた上で、準備期間という名の忙殺地獄。
はっきり言おう、死ぬかと思った。
そう思いながら、ヒナタは古着だとか古本だとか食器だとかが並べられた上で閑古鳥の鳴く部屋に、レンと共に店番をしていたのだった。
「加えて!! 俺らはニャンクスの件でたっぷり疲れてんだぞ! 今更、俺らに何をしろと!?」
「地の文からナチュラルに繋げるな。最終的に決着付けたのはコトハだろうが。後ついでに面倒だから客寄せをして来い、2Cのフリーマーケット、50〜300円お手ごろ価格だと馬鹿みたいな芸をしながら行って来い」
「来る訳ねぇだろ!! やるわけねぇだろ!! コトハ達のクラス-----------2−Fの出し物見てくるかテメェ!! ”3Dプリンターで作るアクセサリ・小物雑貨店”なんて聞いてねぇよ!! クオリティ高すぎなんだよ!! ドンドン吸い込むナウみたく客が吸われていくよ!! 特に女性層が!!」
「クラスの誰かが3Dプリンターを持っていたらしいな。海戸の技術は他の都市よりも発達しているとはいえ、まさかあんな物を持っている奴がいるとは、僕も予想外だった。男性層も男性層で、どこかの上級生のクラスが作った”自作戦艦大和1/144スケールモデルと、その他艦船模型展示”とか2−Bの自作映画とかそういうのに流れてしまったからな」
「どこもかしこも気合入れすぎなんだよ!! 後、そこは大和じゃなくてエビデゴラスとかにしようよ!!」
「艦船ブームだからな。デュエマの次に流行っているらしい。僕は興味無いが」
「いや、せめてデュエマ関連にしようよ!!」
そう。結果は例えるならば33−4。自分達の出し物がフリーマーケットという無難かつ普通のものだったのに対し。
同級生含めた別のクラスの出し物のクオリティはピンキリこそあるものの、十分フリマに閑古鳥を鳴かせる程度のインパクトをパンフレットの時点で客達に与えていたのだった。
「おーい、次俺らが店番入るぞ、暁ー、黒鳥ー」
丁度良い。クラスメイトの2人が教室に入ってきて、当番の交代を知らせに来た。
「お、もうこんな時間か。ひゅー、終わった終わった。とにかく、他のクラスの出し物見に行こうぜ」
「そうだな」
「あ、お前ら客寄せもついでに----------」
「てめーらでやれ」
「あぐ……そんなバッサリ言わなくても良いじゃないか、暁にしてはツレないなー」
***
「----------で、結構賑わってるのは------------」
「先ほど上げた例に加え、武闘先輩の所属する4−Aの出し物、”メイド喫茶MX-MAX”だ」
「いや、絶対あの人自分の使ってるクリーチャーの名前入れただろ」
4回生。つまり、普通の学校で言えば高校1年に当たる彼らの出し物は、自分達よりも更にグレードアップしている。
その際たるが、このメイド喫茶であった。
まあ、さっすがあの野心と煩悩だけで構成されたあの先輩が指揮したのか。なかなかの完成度を誇っていたのだった。
それに絶対来るように、ヒナタ達は予めフジから招待されていたのである。彼曰く「絶対席は空けておく」と。
『4回生A組 ”超”本格メイドカフェ 〜MX-MAX〜
可憐なメイドさんの破壊力はゼニス級! ご主人様のハートをワールドブレイクしちゃうぞ☆』
「何だぁ? この慨視感ありまくりの煽り文は」
「後で怒られるな。大会だから張り切ってるのかもしれんが、完全に喧嘩を売りにいってるぞ」
「んあ? 何処にだ」
「大人の事情だ」
いや、マジすいませんでした。
「おう、おめーら来たか」
入ってきてすぐ、来客記録を手に引っさげて、セーターにネクタイを締めたバーテンのような格好のフジが迎えた。
「いやはや、この通り大盛況だ。おかげさまで何人かダウンしちまってな。他のクラスからもメイド役もとい店員を借りてきたところだ」
「本当賑わってますね」
「つか、ダウンってどんだけこき使ったんすか先輩」
「人聞きの悪いこと言うんじゃねぇ。俺様がそんなブラック思考だと思ってるのか」
「説得力ねーんですよ!!」
「大体、こうでもしなきゃ、もうちょいでこのクラスは蝶が給仕を務めるメイド喫茶から蛾が給仕を務めるオカマ喫茶になるところだったからな」
「そ、それは……うーん」
ま、それはそれでだ、とフジは続けた。
「実は下級生からも何人か借りてだな」
「良いのですか? そんなことして」
「安心しろ、黒鳥。バレなきゃどうってこたぁねえ」
「おい、とんでもねえよこの人!!」
「もしかしたら、知ってる顔に会えるかもなー」
そう言ったフジは、ついでのように空いてる席に2人を案内した。
「わりーな、案内してるのが俺様で。人手が足りないのさ。だが大丈夫だ、注文とかはメイドさんがやってくれる。んじゃ、俺様は戻って手伝ってくるわ」
「あ、はい」
少しして。
エプロンドレスというかメイド服を見に纏った少女がやってきた。しかも、誰の趣味なのかは知らないが、猫耳カチューシャまで付けられている。
「お帰りなさいませ、ご主人様。メイド喫茶”MX-MAX”にようこそ……え?」
しかし、少女は言いかけた瞬間に言葉に詰まったらしい。何が理由かは分からないが。
一方のヒナタも、
「……んあ?」
「どうしたヒナタ------------あ」
ようやく気付いたのか。メイドには然程興味のないレンは、少女の顔を見て気付いたようであった。
「ヒナタ!? 何であんたらがこんなところまで来てるのよ!」
「コトハ……お前、先輩に捕まってたのか……」
「これは滑稽だな」
パッと見、まさか堅物の彼女がこんな格好をしているわけがない、という先入観が働いていた所為で分からなかったが、ヒナタ達の前に現れたメイド少女の正体は如月コトハで間違いなかったのであった。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87