二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ D・ステラ 【侵略世界編】
日時: 2017/01/16 20:03
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

【読者の皆様へ】
はい、どうも。二次版でお馴染み(?)となっているタクと申します。今回の小説は前作の”デュエル・マスターズ0・メモリー”の続編となっております。恐らく、こちらから読んだ方がより分かりやすいと思いますが、過去の文というだけあって拙いです。今も十分拙いですが。
今作は、前作とは違ってオリカを更にメインに見据えたストーリーとなっています。ストーリーも相も変わらず行き当たりばったりになるかもしれませんが、応援よろしくお願いします。

また、最近デュエマvaultというサイトに出没します。Likaonというハンドルネームで活動しているので、作者と対戦をしたい方はお気軽にどうぞ。


”新たなるデュエル、駆け抜けろ新時代! そして、超古代の系譜が目覚めるとき、デュエマは新たな次元へ!”



『星の英雄編』


 第一章:月下転生

Act0:プロローグとモノローグ
>>01
Act1:月と太陽
>>04 >>05 >>06
Act2:対価と取引
>>07
Act3:焦燥と制限時間
>>08 >>10
Act4:月英雄と尾英雄
>>13
Act5:決闘と駆け引き
>>14 >>15 >>18
Act6:九尾と憎悪
>>19 >>21
Act7:暁の光と幻の炎
>>22 >>23
Act8:九尾と玉兎
>>25

 第二章:一角獣

Act1:デュエルは芸術か?
>>27 >>28 >>29
Act2:狩猟者は皮肉か?
>>30 >>31 >>32 >>33
Act3:龍は何度連鎖するか?
>>36 >>37
Act4:一角獣は女好きか?
>>38 >>39 >>41 >>42 >>43 >>44 >>45
Act5:龍は死して尚生き続けるか?
>>48

 第三章:骸骨龍

Act1:接触・アヴィオール
>>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55
Act2:追憶・白陽/療養・クレセント
>>56 >>57
Act3:疾走・トラックチェイス
>>66
Act4:怨炎・アヴィオール
>>67 >>68
Act5:武装・星の力
>>69 >>70
Act6:接近・次なる影
>>73

 第四章:長靴を履いた猫

Act1:記憶×触発
>>74 >>75 >>76 >>77
Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解
>>78 >>79 >>80
Act3:捨て猫×少女=飼い猫?
>>81 >>82
Act4:リターン・オブ・サバイバー
>>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90
Act5:格の差
>>91 >>92 >>93 >>104
Act6:二つの解
>>107 >>108 >>109 >>110
Act7:大地を潤す者=大地を荒らす者
>>111 >>112 >>113
Act8:結末=QED
>>114

 第五章:英雄集結

Act1:星の下で
>>117 >>118 >>119
Act2:レンの傷跡
>>127 >>128 >>129
Act3:警戒
>>130 >>131 >>132
Act4:策略
>>134 >>135
Act5:強襲
>>136
Act6:破滅の戦略
>>137 >>138 >>143
Act7:不死鳥の秘技
>>144 >>145 >>146
Act8:痛み分け、そして反撃へ
>>147
Act9:fire fly
>>177 >>178 >>179 >>180 >>181
Act10:決戦へ
>>182 >>184 >>185 >>187
Act11:暁の太陽に勝利を望む
>>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>193 >>194 >>195
Act12:真相
>>196 >>198
Act13:武装・地獄の黒龍
>>200 >>201 >>202 >>203
Act14:近づく星
>>204


『列島予選編』


 第六章:革命への道筋

Act0:侵攻する略奪者
>>207
Act1:鎧龍サマートーナメント
>>208 >>209
Act2:開幕
>>215 >>217 >>218
Act3:特訓
>>219 >>220 >>221
Act4:休息
>>222 >>223
Act5:対決・一角獣対玉兎
>>224 >>226
Act6:最後の夜
>>228 >>229
Act7:鎧龍頂上決戦

Part1:無法の盾刃
>>230 >>231 >>232 >>233 >>234 >>235 >>236 >>239
Part2:ダイチの支配者、再び
>>240 >>241 >>242 >>243 >>244 >>245 >>246 >>247 >>248 >>250
Part3:燃える革命
>>252 >>253 >>254 >>255 >>256
Part4:轟く侵略
>>257 >>258 >>259 >>260 >>261

Act8:次なる舞台へ
>>262


 第七章:世界への切符

Act1:紡ぐ言の葉
>>263 >>264 >>265 >>266 >>267 >>268 >>270
Act2:暁ヒナタという少年
>>272 >>273
Act3:ヒナとナナ
>>275 >>276 >>277 >>278 >>279 >>280 >>281
Act4:誓いのサングラス
>>282 >>283 >>284 >>285
Act5:天王/魔王VS超戦/地獄
>>286 >>287 >>295 >>296 >>297 >>298 >>301 >>302 >>303 >>304 >>305
Act6:伝説/閃龍VS獅子/必勝
>>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>323
Act7:青天霹靂
>>325 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>331
Act8:揺らぐ言の葉
>>332 >>333 >>334 >>335 >>336
Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神
>>337 >>338 >>339 >>340 >>341 >>342 >>343
Act10:伝える言の葉
>>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351
Act11:連鎖反応
>>352


『侵略世界編』


 第八章:束の間の日常

Act1:揺らめく影
>>353 >>354 >>359 >>360 >>361 >>362
Act2:疑惑
>>363 >>364
Act3:ニューヨークからの来訪者
>>367 >>368 >>369 >>370 >>371
Act4:躙られた思い
>>374 >>375 >>376 >>377
Act5:貴方の為に
>>378 >>379 >>380 >>381 >>384 >>386
Act6:ディストーション 〜歪な戦慄〜
>>387 >>388 >>389
Act7:武装・天命の騎士
>>390 >>391
Act8:冥獣の思惑
>>392
Act9:終演、そして——
>>393


 第九章:侵略の一手

Act0:開幕、D・ステラ
>>396
Act1:ウィザード
>>397 >>398
Act2:ギャンブル・パーティー
>>399 >>400 >>401
Act3:再燃 
>>402 >>403 >>404
Act4:奇天烈の侵略者
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>411
Act5:確率の支配者
>>412 >>413
Act6:不滅の銀河
>>414 >>415
Act7:開始地点
>>416


 第十章:剣と刃

Act1:漆黒近衛隊(エボニーロイヤル)
>>423 >>424
Act2:シャノン
>>425 >>426
Act3:賢王の邪悪龍
>>427 >>428 >>429
Act4:増殖
>>430 >>431 >>435 >>436 >>438 >>439 >>440 >>441 >>442
Act5:封じられし栄冠
>>444


短編:本編のシリアスさに疲れたらこちらで口直し。ギャグ中心なので存分に笑ってくださいませ。
また、時系列を明記したので、これらの章を読んでから閲覧することをお勧めします。

短編1:そして伝説へ……行けるの、これ
時系列:第一章の後
>>62 >>63 >>64 >>65

短編2:てめーが不幸なのは義務であって
時系列:第三章の後
>>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103

短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル)
時系列:第四章の後
>>120 >>121 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126

短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日
時系列:第四章の後
>>149 >>150 >>153 >>154 >>155 >>156

短編5:恋情パラレル
時系列:第四章の後
>>157 >>158 >>159 >>160 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>173 >>174 >>175 >>176

短編6:Re・探偵パラレル
時系列:平行世界
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422

エイプリルフール2016
>>299 >>300

謹賀新年2017
>>443


登場人物
>>9
※ネタバレ注意。更新されている回を全部読んでからみることをお勧めします

オリジナルカード紹介
(1)>>96 (2)>>271
※ネタバレ注意につき、各章を読み終わってから閲覧することをお勧めします。

お知らせ
16/8/28:オリカ紹介2更新

Act8:次なる舞台へ ( No.262 )
日時: 2016/03/19 11:59
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: AfTzDSaa)

 ***




「……俺は」




 目が覚めたのは、どこか白い場所だった。
 ベッドの上で横たわっている。
 起き上がると、保健室だった。
 取り囲むようにして周囲にはレンとコトハの姿があった。ノゾムとホタル、フジの姿は見当たらない。

「やれやれ。どうなるかと思ったぞ。コロナの奴は言った通り、今回は貴様と白陽を見逃したようだが」
「……そーみてーだな。ま、命と白陽があるだけ良——」

 そう言いかけた途端、がばっ、と再びベッドに抱き伏せられる。
 見れば、瞳を潤ませたコトハの顔が眼前にあった。
 頬を真っ赤にした彼女は捲し立てるように怒鳴る。



「バカ!! 何で、何でそんな風に淡々としていられるのよ!! 得体の知れない奴にやられて!! あたしは、あんたがぶっ倒れる度に——!!」


 
 ヒナタも黙るしかなかった。
 彼女にはいつも心配をかけてばかりだ、と。
 だが、今回に限っては悔しさ以前に手を出せない程の強大さすら感じるのだ。
 何も出来ないまま終わった。
 もしも、侵略が、ソニック・コマンドが他にもいるとすれば、ヒナタは——今度こそ瞬殺されていた。

「……今の俺はあいつに勝てる気がしねえ」

 余りにも速すぎる。次元が違い過ぎるのだ。
 何もできないまま、何もしないまま、そのまま一方的に蹂躙された。
 それが心残りだ。
 もしも次に彼女が現れたら、今度こそ白陽を奪われる。

「——また考えよう」

 言ったのはレンだった。
 
「だけど」
「——お前が適合者じゃなかったとしても、白陽は貴様のカードだ。あんな得体のしれない奴には渡せない、そうだろう? また勝つにはどうすれば良いか、僕達と考えればいい」

 知られていた、か。
 やはり彼らには敵わない。そうつくづく感じる。
 こんなところで諦めているわけにはいかないのだ。
 折角、トーナメントに優勝したというのに。

「……そーだったな」
「神を倒した男の台詞じゃないわよ、本当」
「だが、対処が難しいのは本当だ。何とかせねば……」
「見ていたのか?」
「ああ。一緒に決闘空間に飲み込まれた」

 この現象も思えば初めてだ。
 相手が何をしたのかは分からないが、自分たちとは別次元の力を持っている事は確かだろう。

「こんなところでぶっ倒れてるわけにはいかねーな。それとコトハ」
「何よ。もう大丈夫なの?」
「……そろそろ離してくれてもいいんだぞ」

 見れば。
 ずっとコトハはヒナタを腕で抱きしめる形になっていた。
 それもベッドの上で——。
 無意識にやっていたのだろうか、彼女の頬が真っ赤に染まる。
 そのまま、ぱこーん、と小気味の良い音が部屋中に響いたのだった——




 ***




「ぶ、武闘先輩、ヒナタ先輩は大丈夫なんですか!?」
「それを確認するために、遅れながら今急いでんだろーが」
「で、でも……」

 保健室に向かっているのは、フジとノゾム、そしてホタルだった。
 保健室の中にレンとコトハを置いておき、残る彼ら3人は、その他のごたごたを片付けていたのだった。
 例えば今回のトーナメントの後始末である。
 フジ1人だけではあれなので、取り敢えず1年の2人を付けた形だ。
 それらが終わったので、急いでいたのだ。
 保健室の扉を開ける。
 そこには既に立ち上がってレンとコトハと話しているヒナタの姿があった。

「よーう、ボコボコにされた割には随分と立ち直りがはえーじゃねーか」
「フジ先輩、ノゾム、ホタル」
「心配したんですから!! まさか、ヒナタ先輩が目の前で負けるなんて……オレ……」
「これはやっぱり一大事ですよ! あのコロナって子が何をしてくるか……!」
「いや、心配はいらねーよ」

 呟くように言った彼は笑みを浮かべた。

「俺達はチームだ! また、どうにかする方法を考えるだけだぜ!」
「元は僕の言葉だがな」
「完全に受け売りね」
「ひどくねーか!?」

 どうやらもう大丈夫のようだった。いつものヒナタ、そしてレンもコトハもあの力の前に怯えてはいないようだ。

「……そうだな。そしてヒナタだけじゃねえ。黒鳥、淡島。お前ら2人にも強力な革命のカードを用意してある」
「僕と……」
「私に……ですか?」

 こくり、と頷いたフジは続けた。




「D・ステラはまだ始まったばっかりだ。悲観的になるのはまだ早すぎる。それに——」




 そういうと彼はノゾムとコトハにも目を向けた。

「侵略者に対抗するために、お前らにも色々用意してあるぜ。まあ、アレだ。そのためにはそれなりの訓練が必要だが」
「どんな試練にだって、立ち向かう覚悟です!」
「全く、いよいよ複雑になってきたわね……」

 何であれ、全員の士気が上がって来たのは確かだった。
 フジは続ける。

「ソニック・コマンド共については引き続き調査が必要だ」
「今のままじゃ、一方的に蹂躙されるだけ——でも、対抗策が無いわけではない、と」
「ああ」

 全員に希望が戻ってくる。
 敵をもっと知れば、それだけ攻略法が見つかるかもしれないのだから。

「だが、てめーらには他にも敵がいることを忘れるな。今回のヒナタの敗北——それは決して見せしめや無駄なことだったわけじゃねえ。確実にてめーらの糧になった。あんなぶっ飛んだモン見せられた後なら、もう何が出てきても怖くねーだろ」
「……そーっすね」

 見れば、ヒナタはもう先の敗北を引きずってはいないようだった。

「アマツカゼが何故カードになったのか、そしてどういう存在なのか」
「あとはコロナが白陽を使って何をしようとしているのか、ね」
「分からんことばかりだ……」
「そのうえで、こっからは事務連絡になるんだが——」

 全員を見渡すとフジは続ける。
 彼らも顔を見合わせた。事務連絡とは何なのだろうか、と。
 不穏な空気が漂う。
 その中に、敢えて彼は言った。





「……D・ステラ、国内予選。その試合形式は”タッグマッチ”による1本勝負——そして、俺達の最初の相手は”零央学園”に決定した——」





 ***





「……さいしょのあいては、がいりゅーに決まったみたい」

 少女はぽつり、と呟く。 
 手のカードを見ながら。
 執事服の背の高い少年が恭しく「左様でございます」と答える。

「どーしよっかなー……このこはつかえないしー」

 きめた、と彼女は言った。




「……わたしのしんせいきデッキで叩きのめせばいいかー——それも、かい・しんせいきで——」



 ああそれと、と執事服の少年は続けた。

「鎧龍には——クリーチャーを研究している機関があるそうです」
「……そう。なら、予定ついかしちゃおっか……」
「と言いますと」
「……そこにいけば、このこのことがわかるかも」
「また、鎧龍にはあの暁ヒナタも在籍しています。彼も恐らく『決闘封獣(クリーチャーズアーティファクト)』を所持しているかと」
「ふぅん……暁ヒナタ……きょーみ、あるかも……確かむかんのまじゅつしとウチでもゆーめー……」
「現在は火を中心にしたデッキを使っているとのことです」
「そう……」

 そう言うと、立ち上がった彼女はつま先立ちになり——少年の頬に自らの唇を押し付ける。

「……何度も言いますが、余り他の方になされるのは控えてくださいよ?」
「癖……仕方ないかも」
「はぁ……」

 彼女の右手で、妖しくカードが光る。
 何にも染まらない純白のカードが——

Act1:紡ぐ言の葉 ( No.263 )
日時: 2016/03/19 21:49
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: AfTzDSaa)

 夏である。
 青い空、青い海、その他諸々。
 何であれ、海に面している(埋立地なので当然と言えば当然)海戸に於いて、学生達の夏休みの楽しみの1つがビーチで水を掛け合い、真夏の日差しを肌で受けるというのは言うまでもないことである。
 が、しかし。今年に限ってはそうではない。
 D・ステラ。世界一のデュエリストチームを決める大会の学園対抗予選がこの夏に行われるのだから——




「あぢぃ〜……よくどいつもこいつも、こんなところで”写真”を撮る準備が出来るもんだ、熱くて下手にモノ触れんのかコレ」




 ——何て事を言っている暇は彼らにはない。少なくとも。
 暁ヒナタは、トレードマークのグラサンを珍しく目に掛け、更に海パン、ビーチサンダル、肌の上から黒のパーカーを着ていた。完全にビーチモードである。
 日差しが照り、黒髪を焼いていく。熱い。暑いのではなく、割と冗談抜きで熱いのだ、熱された髪が。
 そして辛いのは、これがレジャーではなく、完全にリトルコーチ・武闘フジからの依頼だということだ。

「学園対抗予選は2対2のタッグマッチ——そして総当たり戦。試合ごとにペアが変わる——で、何で初っ端からあたしとあんたが組まなきゃいけないのかしら?」
「知らねーよ!」

 思わず言い返した。
 後ろでパーカー姿のツンツンポニーテールに。
 髪を自分の手で色っぽくすくと、彼女は続けた。

「そんでもって、何で早速そのペアでビーチでクリーチャー狩りしないといけないのかしら?」
「もっと知らねーよ!」
「やれやれ……大事になる前に片付けた方が良いのは確かだけどさぁ。よりによって”チームワークの練習”をこんなところにまで引っ張ってくる必要はないと思うのよ」

 真面目に筋道立てて話すコトハは、何処か苛立った様子でヒナタを睨みながら言った。




「ビーチにガイッシーとかいうネッシーの紛いモンが出た? 胡散臭い事この上ないわ! そして何であんたと一緒なのよ! 無駄足だったらどうしてくれんのよ!」




 そして、いつものように憤慨した——





 ***




 鎧龍サマートーナメントが終わった後の事である。
 フジは唐突に、校内対抗予選のルールをヒナタ達に告げたのだった。

「2対2のタッグマッチ?」
「そうだ。そして学校同士の対戦は総当たりで行われる。負けることが許されないのは変わらないが」

 どれも強豪だからな、とフジは付け加えた。

「で、でも、タッグマッチって2人と2人で対戦するんですよね……もしも1勝1敗とかになったらどうするんでしょうか」
「そうだな。しかも対戦数も先の予選に比べると少ない——」




「誰が2人がそれぞれでデュエルをするって言った?」





 え、と全員は戸惑いを隠せない表情でフジを見た。
 その言葉の意味がしばらくは分からなかった。
 それを見兼ねたか、彼は続ける。




「説明が足りなかったみてーだな。正真正銘のタッグマッチ——つまり”タッグデュエル”、4人で行い、2人と2人に分かれて行うアレだよ」




 この時。
 全員は理解した。
 何でそんなルールを此処でぶち込んだんだ、と。
 はっきり言って、デュエル・マスターズでタッグデュエルのルールを大会に持ち込むなど前代未聞なのである。

「ついでに、それぞれの学園戦でのチーム分けは俺がもう決めている。第一回戦、零央学園——ペアは暁ヒナタと如月コトハだ」

 しかも勝手にペアを決められていく始末。
 それでもフジは各々の疑問だの不満だのをオール無視してその他の連絡をしていく。
 今回の大会の事件のこと。そして、アマツカゼとコロナのこと。
 更に1回戦が行われる日時は8月の1日であるということ。
 そして最後に持ち出したのが——



「それでヒナタと如月。後で俺様んところ来いや。丁度チームワークつーかペアのコンビネーションを確かめる良い方法になるだろ——」



 ***



「数日前より、此処海戸マリンビーチに龍型の影が発見される。それがガイッシーと呼ばれるようになり、今ではガイッシーの出現を狙ってカメラ撮影を行う者が多々。全く、遊びに来た連中は良い迷惑ね」
「なあ、アニメビクトリーV3でこんなんあったよな、昔」
「さあ、ありきたりな話だわ」

 ちまたではUMAだの、宇宙人の作った怪獣だの言われているが、フジの推測は只一つ。
 ”やっぱクリーチャーじゃね?”である。すっげーいい加減な言い方ではあるが、彼の言う事は悪い方向に大抵当たるので、信用して良いと思われる。哀れ。
 そんなわけで、ヒナタとコトハは今回、その正体を暴きに来たのである。
 
「そ、それよりも……」
「んあ?」

 暑そうなだれた顔で振り向き、ヒナタはコトハの方を見る。 
 
「あ、あたし、折角だから今回挑戦してみたんだけど……ビキニ……変じゃないよね……?」

 ばっ、と衣が落ちる音がする。
 目に入ったのは、パーカーが脱げ落ちたことで露わになったコトハのビキニ姿であった。フリルがついた緑のトップス、そしてボトムスは同じ色だが、腰に白のパレオを巻き付けていた。
 こうして凝視してみると、かなり破壊力が高くなっている。はっきり言おう。これ以上はまともに見れたものではない。
 すぐさま顔を前方に、ぐいっと戻してしまった。
 何故彼女が唐突にこんなことを聞いてきたのかさっぱり分からないまま、ヒナタは混乱する頭の中を整理していく。

「す、すまん!」
「え!?」

 ショックを受けたような声が聞こえたが、すぐさま「ち、違う! 似合ってる! 似合ってるけど……」と返す。
 そこからヒナタは言葉が続かない。
 ——くそ、コトハの奴……普段はあんなに荒っぽいのに……。 
 正確に言えばいつものそれはほぼ自業自得なのであるが。

「……変? かな……」
「いや、違うって! あんまりにも……まあ、何だ……」

 顔が真っ赤になる。
 コトハの方も内心穏やかではなかった。
 ——ちょっと!! 何か言ってよ!! 折角聞いたのに、恥ずかしいじゃないのよ!! あーもう!! このバカ!! やっぱこいつに聞いたのが間違いだったんだから……なんか言ってよ、ヒナタぁぁぁーっ!
 しばらく、無言が続く。 
 互いが互いに、何を言えばいいのか分からないこの状況。
 しかし、先にヒナタが「き、綺——」と言おうとしたそのときであった。





「ガイッシーだぁぁぁー!! ガイッシーが出たぞぉぉぉーっ!!」





 民衆の声に、2人の甘い考えは完全に消し飛ばされた——

Act1:紡ぐ言の葉 ( No.264 )
日時: 2016/03/20 01:45
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: AfTzDSaa)

「白陽!」
『怪しい人物はいなかった! あれは間違いなく海から出現したものだ!』
「ニャンクス!」
『了解ですにゃ! 魔法陣展開! 広範囲バリア起動ですにゃ!』

 大勢の人が防波堤の近くや砂浜に陣取ったテントやシートで写真を撮っている。
 現在、ヒナタとコトハは砂浜を後方から誰かカードを使おうとしている怪しい人物が居ないか監視していたわけだが、成程水柱が立っているのが此処からでも見える。
 走りながら、ヒナタは思わず問うた。うっすらと影が見える。

「あれは一体——!?」
「ドラゴン!? いや、あれって——!!」

 次の瞬間、水柱から完全にクリーチャーが姿を現した。
 そしてあの頃の記憶が蘇る。
 神々と戦いを繰り広げたあの頃の記憶が——
 
「——あいつは」

 ギリッ、とヒナタは苦い記憶を噛み締めるようにそれを睨んだ。
 神々の半身をそれぞれ繋ぎ合わせたかのようなその姿。
 間違いない。
 あれは——



「《神聖騎 オルタナティブ》——!!」



 ——偽りの神(オラクリオン)——! 
 間違いない。
 あれは龍などでは断じてなかった。
 神々の半身を文字通りオラクル教団の力で繋ぎ合わせた怪物だ。
 急いで駆けつけようとするも、光の弾を放って暴れ出したオルタナティブによって当然のようにビーチは大混乱に。
 しかし、光弾が民衆に近づくことはなかった。
 ニャンクスのバリアがそれらを防いだのだ。

「コトハ!」
「決まってるでしょ! どっから沸いてきたのか知らないけど、ぶっ倒す!」
「ダメだ、人目が多すぎる上に辿り着けない!」
「じゃあどうしろって言うのよ!」
「クリーチャーを使うんだよ! 白陽!」
『了解した!』

 ヒナタが叫ぶと同時に、白陽が槍を振り回しながら熱の塊となってオルタナティブへ突貫した。
 そのまま龍神の首を全て切り落とす——
 ——あれ? これ決闘空間に巻き込む必要無くね?

『これで終わりですにゃぁぁぁーっ!!』

 トドメと言わんばかりにニャンクスがオルタナティブの胸に丸薬を撃ち込んだ。
 次の瞬間、偽りの神の身体から蔓が生えていき、どんどん動きが鈍くなっていく。
 そして、そのままビキビキ、と体にヒビが入っていってそれは崩れ落ちた。文字通り跡形も無く——消え去ったと思われた。
 が、

「!?」

 次の瞬間、海中から破片のようなものが集まっていく。
 それが再びオルタナティブの身体を成した。
 完全に再生されてしまった。

『何てしぶといクリーチャーだ』
『僕特製の猛毒薬を埋め込んだのに……!』

 暑さでげんなりしているからか若干棒読みの白陽とおっそろしいことを口にするニャンクス。 
 だが、肉弾戦で英雄の力を持ってしても倒せないとは、オラクリオンがただのオラクルの尖兵ではないことを改めて思い知る。

「おいおいマジかよ! イケる流れじゃなかったのかアレ!!」
「ちょっと! 怯んでんじゃないわよ! ニャンクス! アレを見せてやりなさい!」
『了解ですにゃ!』

 受け応えた彼女は、丸薬を1粒腰のベルトに付けられたケースから取り出すと、それを飲み込んだ。
 たちまち、彼女の右腕が肥大化し、肌はゴツゴツとした爬虫類のそれになる——

『恐”龍”の腕、食らうのですにゃぁぁぁーっ!!』

 ガァァン、と衝突音が響き渡った。
 オルタナティブの顔面に巨大化した拳がたたきつけられたのだ。
 しかし。今度こそオルタナティブは動じなかった。そのまま、槍を取り出し、ニャンクスを振り払う——そして、そのまま脳天に槍を叩きつけた。

「ニャンクス!」

 しかし、呼びかける間も無くニャンクスは海へ吸い込まれていく。
 すぐさま海面に「ぷはっ」と顔を出したが、オルタナィブも追撃と言わんばかりに海面に飛び込もうとする。
 絶体絶命と思われたが——

『そこまでだ』

 
 ——まるで見えない壁に阻まれたかのように先へ進めなくないようだった。
 見れば、オルタナティブの周囲にはお札が張り巡らされている。
 それも1枚や2枚ではない。
 かなりの量が球になってオルタナティブを囲っている。

『破ッ!!』

 白陽の呼びかけと同時に炎がお札の1枚1枚から噴き出た。
 それが神の身体を焼いていく——

「流石だぜ、白陽!」
『……っ!?』

 だが、白陽の表情は浮かばれないものだった。
 次の瞬間だった。
 札が飛び散り、オルタナティブが再びその姿を現す。
 札が全て吹き飛ばされてしまったのだ。

『馬鹿な……!! 何てタフなクリーチ——』

 言い終る前に、今度はオルタナティブの槍から電撃が放たれた。
 そのまま、悲鳴を上げる白陽。
 そして、海に落下してしまったのだった。

「や、やっべぇ!! どうするんだコレ!!」
「こっちからは近づけないし……!! 完全に怪獣ショーになっちゃったじゃないのよ!!」
「正義の味方2人ともやられてっけどな!!」
「落ち着きなさい!! とにかく、あの2人にはさっさと逃げて貰わないと——」

 押されだしたことで、焦燥感が募ってくる2人。
 このままでは白陽とニャンクスがやられてしまう。
 そうなる前に2体を回収せねばならないが——




「オラクリオンへのとっこーは、むほうもの——およびかみにかんけいするものだけ——えいゆーはかみに対してたちうちできないかも」




 ふと、声が聞こえた。
 振り返る前に、声の主はヒナタとコトハの間を通り——カードを突き付けた。

「……あぴせりん。実体化おねがいかも」

 そう呟く声の主。ワンピース姿の少女だ。背丈はほぼコトハと変わらず、目についたのは鍔の大きい帽子である。 




「《戒・神聖騎 オルタクティス》——」




 そして——偽りの神を従えた。
 その姿はオルタナティブにシルエットこそ似ているものの、細部が異なっている。
 そして、羽毛の生えた翼を有しており、まるでその姿は純白の天使のようだ。
 だが、同時に悪龍の首も健在であり、天使の顔と悪魔の顔を併せ持つ”神”という一種の生命体であることが分かる。

「な、何だお前——」
「話はあと、かも」

 どこか浮世離れした声と語り草で、彼女はオルタナティブを指差した。




「天罰(パニッシュメント)」




 次の瞬間——《オルタクティス》の投げた三又の槍が、オルタナティブを撃ち貫いた——

「天に帰せ——いつわりのかみ」

 そして、一瞬でその身が粉々に砕け散る。
 今度こそ、もう二度と蘇ることは無かった——

Act1:紡ぐ言の葉 ( No.265 )
日時: 2016/03/20 01:13
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: AfTzDSaa)

 騒ぎは、人が逃げてこの場からいなくなったり、オルタナティブを取り巻くクリーチャーが消えたことで収まりつつあった。
 そして、一部始終を見届けたヒナタとコトハは、呆然と先ほどの光景を反芻していたのだった。
 あのオルタクティスというクリーチャーも間違いなくオラクリオンだ。しかし、何かが違う。既存のオラクリオンには無いものがあるのだ。

「つ、つえー……マジかよ」
「瞬殺……嘘でしょ?」

 あれほど自分たちが苦戦していたオルタナティブを一瞬で屠ってしまった少女——正確に言えばそのオルタクティス——を驚きの眼差しで見ざるを得ないヒナタとコトハ。
 
「……おっと、わすれてたかも」

 パチン、と彼女が指を鳴らすと、オルタクティスは海面に向かう。
 そのまま2枚のカードを持って戻って来た。
 見れば、白陽とニャンクスのカードであった。そのまま2枚を持ち主に手渡すと、恭しくお辞儀をしてオルタクティスもカードの姿に戻って少女の手に戻った。2体は気絶しているらしく、喋る様子が無い。恐らく、先ほどの戦闘でかなりダメージを受けたからだろう。

「あ……ありがとな」
「で、でも、あんたは一体、何者なの? 助けてくれたのはありがたいけど……」

 先日のコロナの件もある以上、手放しで彼女を受け入れるわけにはいかないのがコトハの心情であった。
 だが、意外にも彼女は身分をすぐに明かしたのだった。




「零央学園2年——有栖川 ツグミ……」



 同時に、2人には衝撃が走る。
 自分たちの耳がおかしくなれけば、今この少女は確かに言ったのだ。
 零央学園——鎧龍の次の対戦相手である。かと言って、彼女が次の対戦相手になるとは限らないのであるが。
 しかし、零央は九州——それも九州一の大都市・福岡——にある遠く離れた地。
 彼女がどうしてこんなところにいるのか、というのは当然2人が抱く疑問であった。

「せーとしょーめーしょもあるし……ほら」

 成程確かに零央学園2年・有栖川ツグミと書いてあった。間違いない。
 偽造のしようのない生徒証明書であった。
 だが、それは問題ない。ヒナタとコトハは別のことが気になっていたのだ。

「ああ……うん、それは分かったんだけど」
「がいりゅー、とゆーか、ぶとーざいばつに用があってたんだけど……途中でくりーちゃーをたたかわせてるあなたたちを見かけて、すこし手助けしたかも」
「そ、そうか……助かったぜ」
「手助けどころか、一撃だったわね……」

 2人は少し、拍子抜けしてしまった。
 彼女は生きたカードの使い手だ。
 しかし、白陽やニャンクスのカードをちゃんと返したり、こうして同じ生きたカードの使い手である彼らに目的をあっさりと明かしてしまった辺り、敵ではないだろう。恐らく。
 しかも、武闘財閥に用があるとのことだった。それはそれでまた、彼女の目的が気になってしまうところであるのだが。
 ——つーか、近所の定食屋に来たような感覚でこっちにまで来たのかコイツ……随分とまー、軽いっつーか……。

「あなたは、あかつきひなた……」

 そんなことを考えてる中、じっとツグミがこちらを見ていることにヒナタは気付く。

「俺がどうかしたか?」
「……自分でしってる? けっこーあなたはゆーめーかも、だよ?」
「ああー、そう……」

 それで望まない人間につけ狙われることが多い上に、大してちやほやもされないしされたくもないのでデメリットしかないとヒナタ自身は思っていたが、こうして自分の事を知っている遠くの人間がいると無性に少し嬉しくなってしまったのだった。
 
「となりのひとは……かのじょかも? さすがゆーめーじんかも……」
「えっ!?」

 突然言われてどぎまぎするコトハ。
 顔が赤くなる。
 すぐさま言い返す。

「ち、違う! 断じて違う! 何でこんなスケベなダサいグラサンのデュエマバカが彼氏なのかなー! うん、有り得ない!」
「おい、コトハテメェ」
「あっそ……なら”もんだいないかも”」

 そう言ったツグミは、再びヒナタの方を見た。

「……ふーん……”美味しそう”……」
「え?」

 ちょっ、と止めようとするコトハを意にも介せず——少女はヒナタに顔を近づけた。

「あ、あの……ツグミさん、顔が近いんすけど……」
「わたしはえいゆうのつかいて——」

 英雄、というワードに2人は固まった。
 まさか、まだ未知なる英雄が居たとは思わなかったのだ。
 くるり、と踵を返したツグミは、そのまま「それもすこしかわってるとおもうかも」と続けた。
 彼女の顔が遠のいて、安堵するヒナタ、そしてコトハ。

「というと……さっきのクリーチャー実体化もその英雄の力だっていうの?」
「そうかも」
「かもっ、てあんたねえ……」
「だいじょーぶ……うそはいってないかも」

 敵ではないのだろう。だが、どこか間の抜けた感じ、そしてつかみどころのないふわふわとしたところが、先日のコロナとは別のベクトルの不気味さを感じる。
 しかも、流すようだったが彼女は確かに言った。自らが英雄の使い手だと。
 英雄は、白陽、クレセント、ハーシェル、ニャンクス、アヴィオール、それぞれ5文明に1人ずつ。つまりは5人だけでは無かったのか、と彼らは疑問に覚える。

「つーかよ? 何文明なんだ? てめーのその英雄とやらは」
「ないよ」
「……無い? 文明が?」
「うん」

 これには驚いた。
 英雄とはそもそも、マナを武装する能力を持つクリーチャーの中でも、強力な力を持つものに与えられる称号。そして、星の英雄は、更に星の力を借りて更なる武装の発展形の技を習得した存在である。
 しかし、そのマナの根本である文明が無い。
 無いということは——

「……無色?」
「無色のマナ武装のクリーチャーなんていたかしら」
「さあ……? そもそも、ゼロから力を生み出すってのも変だから……」
「そのうち分かるかも、だけど」
「随分ともったいぶるのね。さっきはあんなにペラペラと喋っていたくせに」
「……これの、のーりょくは——」

 そこでツグミは口を閉じた。

「そーいえば、忘れていたことが、もーひとつあったかも」

 刹那。
 彼女が振り向き、間合いを詰める。
 完全な不意打ちだった。
 そしてヒナタの唇に——少女の柔らかいそれが宛がわれた——

Act1:紡ぐ言の葉 ( No.266 )
日時: 2016/03/22 15:02
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: AfTzDSaa)

「——!!」

 顔が真っ赤になっていく。
 胸がとても熱い。そして爆ぜてしまいそうだ。
 ヒナタが完全にフリーズしたのち、「ぷはっ」と自分の唇を彼のそれから離すと何事も無かったかのようにツグミは言った。

「あいしょう……ばっちりかも。思った通り、”無法”のちからの持ち主だったかも——」
「なっ、お前、何で——」
「べつに。ただの癖かも」



「ちょっと、あんた何してんのよ!!」

 

 
 憤慨したのはコトハである。
 彼女自身も顔が真っ赤に染まっており、目の前で見せつけられた羞恥心と怒りで冷静さを失っていた。
 が、対照的に彼女は無邪気な子供のように疑問をコトハに突き付けたのだった。

「……かのじょでもないのに、何をそんなにおこってるかも?」
「う、う、う、うるさぁぁぁい!! ふ、ふ、ふ、不純異性交遊なんか、か、か、かりにも学級委員のあたしのめのまえで——絶対に認めないんだからぁぁぁーっ!!」
「そんな破廉恥なビキニ着ながら、なにいってるのか、よくわからないかも」
「破廉恥言うなぁぁぁーっ!! 普通のビキニなんだからぁぁぁーっ!!」

 言う事が支離滅裂になっているコトハを無視し、ツグミは再びヒナタの方を向いた。

「さっきはすまなかったかも。あなたの唇が美味しそうだったから——あぴせりんも、あたしも反応してしまったかも」
「あ、あのなぁ……な、なに考えてんだお前は——」
「——べつに。ふかいいみはないかも。ただ、すこしあなたのことがきにいったからかも。さっきも言った通り、ただのくせ——」




「破廉恥なのはあんたの方でしょうが——!! このキス魔——!!」



 ヒッ、と思わずヒナタは悲鳴を小さくあげた。
 明らかに怒っている。目を吊り上げ、ポニーテールは熱気で揺れているようにさえ見える。
 此処まで彼女が怒ったのを見たのは、それこそいつかのミルメルの件以来だ。
 
「勝手にあたしのクラスメートを、あたしの目の前で——!! 絶対に許さない、生かしておかない!!」
「生かしておかないって、それはちょっと物騒すぎやしませんかね、如月さん!?」
「うっさい黙れグラサン!!」
「グラサン!?」
「ふーん? 要するにどうするつもりかも?」
「何が気にくわないって、あんたのスカした態度——!! 粛清してやるわ!!」
「ま、待て!! 落ち着け、コトハ!!」

 そうやって彼女を慌てて羽交い絞めにしようとする。
 が、しかし、焦っていたからか手が滑って彼女の胸を掴んでしまう。
 もうこれからどうなるかはお察しであった。

「——!! この変態スケベヒナタァァァーッ!!」



 ガツン



 自身のワンパンによって頭から煙を上げて砂の上に伸びているヒナタを無視し、彼女はキッと敵意の視線を向ける。
 一方、淡々とした態度でツグミは続けた。

「こうなったら仕方ないかも。けっとーくーかんで無理矢理でも鎮めるかも」
「沈むのはあんたの方よ、有栖川ツグミ!!」
「すきでもないおとこのことなんか、べつにどーでもいいはずなのに、変かも」
「〜〜〜!!」

 返す言葉も無い。
 完全に図星を突かれてしまっているのだ。素直ではない彼女の性格が完全に仇になっている。
 
「ニャンクス!!」
『っひゃい!!』
「寝とぼけてんじゃないわよ!! さっさとあいつを倒す!!」
『で、でも、何が起こったのか、今起きた僕にはさっぱり——』
「ニャンクス!!」
『決闘空間解放ですにゃぁぁぁーっ!!』

 哀れ不憫なニャンクス。完全にコトハに怒鳴られるまま、黒い靄を放つ。
 そして、決闘空間が開かれた——




 ***



 先攻2ターン目、コトハ。
 彼女はマナゾーンにカードを置くと、そのまま2枚タップし、《霞み妖精ジャスミン》を召喚して自爆させてマナを置き、そのままターンを終えたのだった。ストレートな2ターン目ブーストの流れである。

「速攻で攻め落としてやるわ!」
『こ、怖いのですにゃ……』
「うるさい! あたしを怒らせたらどうなるか——このイメンで思い知らせてやるわ!」

 完全に怒り狂っている。
 しかし。それに動じる様子なく、ツグミのターンが始まった。

「わたしのターン——《ピクシー・ライフ》を唱えるかも。その効果でマナを1枚チャージ。ターンエンドかも」
「あたしのターン! 3マナで《オチャッピィ》を召喚し、その効果で墓地の《ジャスミン》をマナゾーンに、ターンエンドよ!」

 互いにマナ加速の応酬が続く。
 そんな中。ツグミの方が先に動き出した。

「わたしのターン。3マナで《ニヤリー》しょーかんかも」




ニヤリー UC 自然文明 (3)
クリーチャー:トライストーン 2000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から3枚を見る。その中から好きな枚数の無色カードを相手に見せ、自分の手札に加えてもよい。それ以外のカードを好きな順序で自分の山札の一番下に置く。




 現れたのは結晶で出来た生命体・トライストーン。
 その効果により、自らの主である無色クリーチャーを呼び寄せることが出来るのだ。

「その効果で山札の上から3枚を見て——《戒・神聖斬 アシドミラ》と《戒・神聖騎 オルタクティス》を手札に加える」
「!?」

 思わず凝視した。
 彼女が手札に加えようとしているカードは2枚とも、闇文明のカードと光文明のカードだ。
 ——名前はオラクリオンに似ている——だけど、文明を持っているっていうの!? でも、それだけじゃない!

「何でそいつを《ニヤリー》の効果で手札に加えることが出来るのよ! 無色カードじゃないわ!」
「この子達はマナゾーン、山札、バトルゾーンにあるとき、無色カードとして扱っても良い、という効果を持つかも。ただし、手札にあるときは無色カードではないから指定の文明のマナを払って召喚しないといけないけど。ターンエンド」

 ターンの終了を告げるツグミ。ますます不気味になってくる。
 ——ゴッド・ノヴァOMG同様、文明を得たオラクリオンだっていうの!?
 それだけにとどまらず、自らを無色カードとしても扱うことが出来る能力を持つのだ。
 
「あたしのターン、5マナで《鳴動するギガ・ホーン》を召喚! その効果で山札から《龍覇 イメン=ブーゴ》を手札に加えるわ!」



鳴動するギガ・ホーン R 自然文明 (5)
クリーチャー:ホーン・ビースト 3000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札を見る。その中からクリーチャーを1体選んで相手に見せ、自分の手札に加えてもよい。その後、山札をシャッフルする。



 キーカードである《イメン=ブーゴ》を手札に引き寄せることに成功するコトハ。
 このままいけば、次のターンに《ボアロアックス》諸共《イメン=ブーゴ》をバトルゾーンに出すことが出来るのだ。
 そのままターンを終えた。
 ——後は染色したマナで、英雄を召喚し、一気に勝負を決める! それだけの話!
 
「——わたしのターン、ドロー」

 カードを引くツグミ。
 そして——1枚のマナをタップした。

「1マナで《オラクル・タクティクス零式》を唱えるかも」
「!?」

 聞いたことのない呪文だ。
 これもまた、零央が開発したカードと言うのだろうか。

「効果で——カードを1枚ひくかも。そして——次の召喚する
”オラクリオン零式”のコストは最大3下がるかも」
「えっ!?」

 となれば、考えられることは1つ。
 コスト最大7のクリーチャーがバトルゾーンに現れるということ。
 そして——残るマナがタップされた。

「あらわれよ、虚無ないまぜの偽りの神——”零式”」

 実体化する。
 天獄の翼を持つ神々の姿が——1つに。




「それは完全にして不完全なタクティクス。降臨せよ、《戒・神聖騎 オルタクティス》」


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