二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ D・ステラ 【侵略世界編】
日時: 2017/01/16 20:03
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

【読者の皆様へ】
はい、どうも。二次版でお馴染み(?)となっているタクと申します。今回の小説は前作の”デュエル・マスターズ0・メモリー”の続編となっております。恐らく、こちらから読んだ方がより分かりやすいと思いますが、過去の文というだけあって拙いです。今も十分拙いですが。
今作は、前作とは違ってオリカを更にメインに見据えたストーリーとなっています。ストーリーも相も変わらず行き当たりばったりになるかもしれませんが、応援よろしくお願いします。

また、最近デュエマvaultというサイトに出没します。Likaonというハンドルネームで活動しているので、作者と対戦をしたい方はお気軽にどうぞ。


”新たなるデュエル、駆け抜けろ新時代! そして、超古代の系譜が目覚めるとき、デュエマは新たな次元へ!”



『星の英雄編』


 第一章:月下転生

Act0:プロローグとモノローグ
>>01
Act1:月と太陽
>>04 >>05 >>06
Act2:対価と取引
>>07
Act3:焦燥と制限時間
>>08 >>10
Act4:月英雄と尾英雄
>>13
Act5:決闘と駆け引き
>>14 >>15 >>18
Act6:九尾と憎悪
>>19 >>21
Act7:暁の光と幻の炎
>>22 >>23
Act8:九尾と玉兎
>>25

 第二章:一角獣

Act1:デュエルは芸術か?
>>27 >>28 >>29
Act2:狩猟者は皮肉か?
>>30 >>31 >>32 >>33
Act3:龍は何度連鎖するか?
>>36 >>37
Act4:一角獣は女好きか?
>>38 >>39 >>41 >>42 >>43 >>44 >>45
Act5:龍は死して尚生き続けるか?
>>48

 第三章:骸骨龍

Act1:接触・アヴィオール
>>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55
Act2:追憶・白陽/療養・クレセント
>>56 >>57
Act3:疾走・トラックチェイス
>>66
Act4:怨炎・アヴィオール
>>67 >>68
Act5:武装・星の力
>>69 >>70
Act6:接近・次なる影
>>73

 第四章:長靴を履いた猫

Act1:記憶×触発
>>74 >>75 >>76 >>77
Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解
>>78 >>79 >>80
Act3:捨て猫×少女=飼い猫?
>>81 >>82
Act4:リターン・オブ・サバイバー
>>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90
Act5:格の差
>>91 >>92 >>93 >>104
Act6:二つの解
>>107 >>108 >>109 >>110
Act7:大地を潤す者=大地を荒らす者
>>111 >>112 >>113
Act8:結末=QED
>>114

 第五章:英雄集結

Act1:星の下で
>>117 >>118 >>119
Act2:レンの傷跡
>>127 >>128 >>129
Act3:警戒
>>130 >>131 >>132
Act4:策略
>>134 >>135
Act5:強襲
>>136
Act6:破滅の戦略
>>137 >>138 >>143
Act7:不死鳥の秘技
>>144 >>145 >>146
Act8:痛み分け、そして反撃へ
>>147
Act9:fire fly
>>177 >>178 >>179 >>180 >>181
Act10:決戦へ
>>182 >>184 >>185 >>187
Act11:暁の太陽に勝利を望む
>>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>193 >>194 >>195
Act12:真相
>>196 >>198
Act13:武装・地獄の黒龍
>>200 >>201 >>202 >>203
Act14:近づく星
>>204


『列島予選編』


 第六章:革命への道筋

Act0:侵攻する略奪者
>>207
Act1:鎧龍サマートーナメント
>>208 >>209
Act2:開幕
>>215 >>217 >>218
Act3:特訓
>>219 >>220 >>221
Act4:休息
>>222 >>223
Act5:対決・一角獣対玉兎
>>224 >>226
Act6:最後の夜
>>228 >>229
Act7:鎧龍頂上決戦

Part1:無法の盾刃
>>230 >>231 >>232 >>233 >>234 >>235 >>236 >>239
Part2:ダイチの支配者、再び
>>240 >>241 >>242 >>243 >>244 >>245 >>246 >>247 >>248 >>250
Part3:燃える革命
>>252 >>253 >>254 >>255 >>256
Part4:轟く侵略
>>257 >>258 >>259 >>260 >>261

Act8:次なる舞台へ
>>262


 第七章:世界への切符

Act1:紡ぐ言の葉
>>263 >>264 >>265 >>266 >>267 >>268 >>270
Act2:暁ヒナタという少年
>>272 >>273
Act3:ヒナとナナ
>>275 >>276 >>277 >>278 >>279 >>280 >>281
Act4:誓いのサングラス
>>282 >>283 >>284 >>285
Act5:天王/魔王VS超戦/地獄
>>286 >>287 >>295 >>296 >>297 >>298 >>301 >>302 >>303 >>304 >>305
Act6:伝説/閃龍VS獅子/必勝
>>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>323
Act7:青天霹靂
>>325 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>331
Act8:揺らぐ言の葉
>>332 >>333 >>334 >>335 >>336
Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神
>>337 >>338 >>339 >>340 >>341 >>342 >>343
Act10:伝える言の葉
>>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351
Act11:連鎖反応
>>352


『侵略世界編』


 第八章:束の間の日常

Act1:揺らめく影
>>353 >>354 >>359 >>360 >>361 >>362
Act2:疑惑
>>363 >>364
Act3:ニューヨークからの来訪者
>>367 >>368 >>369 >>370 >>371
Act4:躙られた思い
>>374 >>375 >>376 >>377
Act5:貴方の為に
>>378 >>379 >>380 >>381 >>384 >>386
Act6:ディストーション 〜歪な戦慄〜
>>387 >>388 >>389
Act7:武装・天命の騎士
>>390 >>391
Act8:冥獣の思惑
>>392
Act9:終演、そして——
>>393


 第九章:侵略の一手

Act0:開幕、D・ステラ
>>396
Act1:ウィザード
>>397 >>398
Act2:ギャンブル・パーティー
>>399 >>400 >>401
Act3:再燃 
>>402 >>403 >>404
Act4:奇天烈の侵略者
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>411
Act5:確率の支配者
>>412 >>413
Act6:不滅の銀河
>>414 >>415
Act7:開始地点
>>416


 第十章:剣と刃

Act1:漆黒近衛隊(エボニーロイヤル)
>>423 >>424
Act2:シャノン
>>425 >>426
Act3:賢王の邪悪龍
>>427 >>428 >>429
Act4:増殖
>>430 >>431 >>435 >>436 >>438 >>439 >>440 >>441 >>442
Act5:封じられし栄冠
>>444


短編:本編のシリアスさに疲れたらこちらで口直し。ギャグ中心なので存分に笑ってくださいませ。
また、時系列を明記したので、これらの章を読んでから閲覧することをお勧めします。

短編1:そして伝説へ……行けるの、これ
時系列:第一章の後
>>62 >>63 >>64 >>65

短編2:てめーが不幸なのは義務であって
時系列:第三章の後
>>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103

短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル)
時系列:第四章の後
>>120 >>121 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126

短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日
時系列:第四章の後
>>149 >>150 >>153 >>154 >>155 >>156

短編5:恋情パラレル
時系列:第四章の後
>>157 >>158 >>159 >>160 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>173 >>174 >>175 >>176

短編6:Re・探偵パラレル
時系列:平行世界
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422

エイプリルフール2016
>>299 >>300

謹賀新年2017
>>443


登場人物
>>9
※ネタバレ注意。更新されている回を全部読んでからみることをお勧めします

オリジナルカード紹介
(1)>>96 (2)>>271
※ネタバレ注意につき、各章を読み終わってから閲覧することをお勧めします。

お知らせ
16/8/28:オリカ紹介2更新

Act7:不死鳥の秘技 ( No.146 )
日時: 2015/08/19 14:14
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

勝利天帝 G(ガイアール)メビウス  ≡V≡  火文明 (10)
クリーチャー:ガイア—ル・コマンド・ドラゴン 12000+
スピードアタッカー
このクリーチャーが攻撃する時、相手のパワー6000以下のクリーチャーを1体破壊する。
このクリーチャーが各ターンはじめてタップされた時、アンタップする。
バトル中、このクリーチャーのパワーは、自分の墓地にある火のカード1枚につき+1000される。
T・ブレイカー



 今回。アンカとのドラゴンによるパワーゲームが起こるのは必然であった。そのため、ヒナタは最終決戦兵器と言わんばかりに大型の火単コントロールを再び使うことにした。
 その際たるがこのカードであることは言うまでもあるまい。
 T・ブレイカーの上に、アタックトリガーでパワー6000以下殲滅、さらにパンプアップ効果に加えてアンタップ効果まで持つ強力なクリーチャーだ。

「そして!! 《メビウス》でシールドをT・ブレイク!!」
「《ヴェルムート》の効果発動!! お前はアンタップしているクリーチャーを1体選んでマナゾーンに送らねばならない!」
「《ボルシャック》を超次元ゾーンに送る!」

 アンカのシールドが3枚、抉り取られるように破壊された。が、同時に《ボルシャック》も超次元ゾーンへ。
 さらに、アンカの割られたシールドから2体のドラゴンが現れる。

「S・トリガー発動!! 《永遠のリュウセイ・カイザー》に《悪魔龍 ダークマスターズ》召喚! 《ダークマスターズ》の効果でお前の手札を見て3枚を墓地に!」
「へっ、痛くもかゆくもねぇぜ! 《メビウス》をアンタップ!! そして、続けてW・ブレイク!! マナに送るのは《ガイムソウ》だ!!」

 これにより、アンカのシールドは全て割られた。
 止めと言わんばかりに、白陽が飛び掛る。

「《尾英雄 開闢の白陽》でダイレクトアタックを決めれば勝てる!」
「まだだ!! 奴のシールドを見るんだ!!」

 見れば、割られた最後のシールドが収束し、カードとなった。
 間違いない。S・トリガーだ。

「俺の血を捧げよう、ソウルフェザーっ!! さあ、見せてみろ、貴様の秘儀を!!」


 突如、アンカはナイフを懐から取り出したかと思うと、それを自らの手首に突き立てた。
 勢いよく鮮血が吹き出て、”彼が今繰り出したカード”に掛かった。

「お、お前、何やってんだよ----------!?」
「ソウルフェザーは生き血を吸うことで強くなる……俺が今繰り出したカードが何か、わかるか?」

 見れば、それは呪文のカードだった。しかし、黒い鎖がきつく巻かれており、何の効果かはわからない。
 しかし、鎖にはヒビが入って壊れそうだった。

「ソウルフェザーが言っている……このカードは真の危機を脱するときに使える、と。英雄が超技呪文を持つように!! 邪悪龍にも”逆鱗呪文”が存在する!! こいつに頼ることになることも予想の範疇だったさ!! しかぁぁぁし!! この俺に”最終手段”を使わせたこと、死をもって償って貰う!!」
「まさか、それで自分の血を------------!?」
「俺だって自分の血を使いたくはないさ。最後の1滴は、暁ヒナタ、貴様のものにすると決めていたからな!! だがしかし!! それで貴様に負けるとなれば本末転倒!! だからこそ、この呪文の封印、ここで解かせて貰うぞ!!」

 息を切らせながら、アンカは叫んだ。
 次の瞬間、カードの周りについた鎖が解ける。


「呪文、《獄炎秘技 ハート・クラッシャー》を発動!!」


 次の瞬間、《ソウルフェザー》の嘴が《白陽》の胸を刺し貫いた。

「なっ、馬鹿な------------!!」

 がはっ、と血反吐を吐いた白陽はそのまま爆散して墓地へ。

「白陽!!」
『すまない……!!』
「効果で、俺のクリーチャーと相手のクリーチャー同士でバトルをさせる。さらに、”逆鱗”で、俺のシールドゾーンとバトルゾーン、マナゾーンの枚数のうち、いずれか2つが相手を下回っているならば!! もう1度この効果を使うことができる!!」

 アンカは、シールドとマナの枚数の2つがヒナタを下回っていた。それにより、もう1度効果を使うことができる。
 まさに、窮地を逆転させる能力、それが”逆鱗”であった。

「そして! 今度は《ヴェルムート》と《メビウス》をバトルさせる!」
「パワーはこっちの方が上だぞ!?」
「《ハートクラッシャー》の効果で、俺のクリーチャーのパワーは全て、+5000されている!! 一方的に破壊可能だ!!」

 幾らパンプアップによってパワーが上がっている《G・メビウス》といえど、これには敵わなかった。一瞬で破壊されてしまう。
 これにより、ヒナタの場のクリーチャーは一瞬で全滅した。

「く、くそっ!! ターンエンドだ!!」
「俺のターンっ!! ----------お?」

 見れば、《ソウルフェザー》の体から、全く別の鼓動が聞こえてくる。
 まるで、もうすぐ新たなる姿に目覚めないとばかりに。

「は、ははははは!! 今の俺の血が、お前の”武装”への足がかりとなったか!! 最高だ、ソウルフェザー!! 今すぐ目の前の奴をぶっ殺して、最高の血をお前に捧げよう!! 《ニガ・ヴェルムート》でシールドをQ・ブレイク!! 邪魔な白陽は消えた!! 今がチャンスだ……ぜぇ、ぜぇ」

 一気にヒナタのシールドが叩き壊された。
 しかし。S・トリガーの光がそこに差し込む。

「S・トリガー、《熱血奥義 バーニング銀河》!! 効果でお前のコスト5以下のクリーチャー---------は、いないから、マナ武装7でコスト12以下の《ソウルフェザー》を破壊!!」
「《ソウルフェザー》の効果発動!! 俺のドラゴンとファイアーバードがバトルゾーンを離れるとき、山札の一番上を墓地へ送る!」

 墓地に置かれたカードは、《熱血龍 バトクロス・バトル》だった。

「それがドラゴンかファイアー・バードならば、そいつはバトルゾーンを離れない!!」
「何だって!?」
「《ザ=デッドマン》!! 最後のシールドを叩き割れ!!」

 驚くまもなく、シールドの破片が降りかかった。
 それが全身を切り刻んでいく。トリガーは、無い。
 最後に、《ソウルフェザー》に手をかけた。

「《ソウルフェザー・ドラゴン》でダイレクトアタ----------------」

 


 げほっ




 次の瞬間、言いかけたアンカの体が崩れ落ちた。
 同時に、決闘空間は崩壊した--------------------

Act8:痛み分け、そして反撃へ ( No.147 )
日時: 2015/08/09 14:08
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***


「げほっ、ごぶほああああっ!!」


 地面に盛大に血をぶちまけたアンカは、苦しそうに目の前のヒナタを見上げると、辛うじて立ち上がる。


「なぜ……だっ……もう少しで、貴様を殺せたのに……!!」


 口ではこう言っているが、アンカの中では既に答えは出ていた。
 無理矢理自分の血でソウルフェザーに力を送り込んだ所為だ、と。
 逆鱗呪文を使うことは既に予想の範疇だった。
 それにリスクが伴うことも。
 本来ならば、あと少しで《ハート・クラッシャー》は完成し、ソウルフェザーも新たな力に目覚めるはずだった。
 しかし。唯一つ予想外だったことを言えば。
 


 ヒナタ達の強襲が思った以上に早かった、それだけである。


 自分達が移動した場所をどうやって知られていたのか、彼には皆目検討がつかなかった。
 結果。
 自分自身の血に頼るしかなくなり、ヒナタを仕留め損なったのだった。

「おのれ……俺が二度もこんな無様なナリを……!! 許してたまるものかぁぁぁーげぼぇーっ!!」
「お、おい、大丈夫なのかよ!?」
「お前ら、揃って本当にお人好しだ……さっきまで自分を殺そうとしてた奴の心配なんざしてる暇があったら、自分と”自分の仲間”の心配をしな!! 相当てめぇも今のでダメージ受けてるはずだぜ……!!」
「馬鹿野郎!!」

 ヒナタは怒鳴った。


「苦しんでる奴に、敵も味方もあるかっ!! 人を助けたいって気持ちに理由なんざねぇはずだ!!」


 その言葉は、アンカにとっては衝撃的だった。
 この少年は、傷ついた自分さえも心配し、むしろ助けようとしているのだ、と。
 ならば尚更。
 この少年とは相容れることはないだろう、と痛感した。

「次は、殺してやるぞ暁ヒナタ……!!」

 そう言い残し、アンカはソウルフェザーの炎に包まれて姿を消した。

「首の川1枚繋がった、といったところか」

 息も絶え絶えに白陽が言った。

「ああ。本当に危ない綱渡りだった」

 それを見届けたヒナタは自分の体がぼろぼろだったことに気づく。
 激しい決闘空間でのデュエルの後か、ヒナタは体力が限界に近くなっていた。
 シールドの破片を幾つもくらい、切り傷が全身にあったことは言うまでも無い。
 そのまま、意識が遠くなり、ばったり、とヒナタは地面に突っ伏したのだった。



 ***



「------------タ」


 声が聞こえた。此処はどこだろうか。
 何か、柔らかいものの上で寝ていることだけは確かだった。

「--------------ヒナタ!!」

 ようやく、自分の名前を呼ばれていることに彼は気付いた。
 

「馬鹿ヒナタぁーっ!!」


 うん、馬鹿は余計だ。
 そう言い返そうと思って、起き上がった瞬間、何かが抱き着いてきたのが分かった。
 見れば、そこには茶色のポニーテールと、それと頭を繋げる綺麗な蝶の髪飾りが見えた。

「ぐえっ!!」

 思わずヒナタは潰されたような呻き声をあげる。
 そこでようやく、目の前にいるのがコトハだということに気付いた。

「おい、てめぇ!! 何すんだ!!」
「うっさい、馬鹿!! 心配なんかしてないんだからっ!! あんたがぶっ倒れて病院に運ばれたときに心配で一緒に救急車に乗っていったり、ずっと此処であんたの目が目が覚めるまで待ってたりとか、絶っっっ対してないんだからっ!!」
「あー」

 ヒナタは此処で、ようやくここが病院で、大怪我した自分が運ばれたことに気付いた。

「如月。嬉しいのは分かるが人目を憚らずに抱き着くのはどうかと思うぞ。それと、んなテンプレ感丸出しのツンデレ台詞、誰だって分かるわ」
「うるさい、武闘先輩は黙っててください!」
「えぶしっ!!」

 鉄拳がモノの見事にフジの顎に入ったのが見えたが、気にしないでおこう。

「まあ、先輩。なんつーか、一安心っすわ」

 左を見ると、ノゾムの姿があった。
 絆創膏が増えていたので、どうやらクリーチャー戦のときに、苦戦したと見れた。
 ヒナタから離れて腕を組んだコトハも、それは同様であった。

「ふんっ! ぴんぴんしてるじゃない! 救急車呼んだの意味無かったわね」
「如月先輩が倒れてるヒナタ先輩を真っ先に見つけて救急車呼んだんすよ」
「おー、そうか。ありがとな、コトハ」
「ノーゾームーくぅぅぅんッ!!」
「せ、先輩、此処は病室ですから!!」
「個室だけどな。感謝しやがれ、俺様に」

 まあまあ落ち着け、と宥めるようにヒナタは言った。

「皆、心配かけて悪かったな」
「だが”いつもなら”その程度はどうにかなる。それは分かるだろ?」
「……へ? どゆことっすか」

 フジの意味深気な言い方に、ヒナタは疑問符を浮かべた。
 同時に、ノゾムとコトハの顔が曇った。
 フジは、いつも通り澄ました表情だったが、僅かながら動揺が見て取れた。

「いつも、決闘空間でのダメージを回復していたのは誰だ?」
「……ハーシェル、ですよね」

 そこまで言って、ヒナタは気付いた。
 居ない。
 この場にホタルとハーシェルが居ないのだ。

「な、なな……」

 唇が震えてきた。
 まさか、と彼は感づいていた。


「やられたのか、ホタルが……!!」


 いや、それどころじゃねえ、とフジは続けた。



「居ないんだ。奴が決闘空間を開いたと思われるエリアから、完全に消息が途絶えてしまっている」


 ガン、とハンマーで殴られたような衝撃をヒナタは覚えた。
 考えられることは1つ。
 

「恐らく言えるのは、ホタルは確実にアヴィオールに負けたということ」


 そして、と彼は-----------



「これは俺様の推測以外の何でもないが、やはりあいつはアヴィオールに連れていかれた可能性が高い」



-----------冷たく、淡々と言い放った。

短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日 ( No.149 )
日時: 2015/08/18 00:57
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

「ねー、のーぞーむー! あいす、食べたいよー!」
「……」

 剣道部の試合の助っ人に駆り出され、武道館から帰ったら、うちに居候している玉兎がベッドで、だれていつものアニメ声でアイスを強請ってきた。それだけの話である。非常にうっとおしいが。
 しかも、クレセントはなるべくエネルギーを消費したくないのか、いつもの獣人形態ではなく、完全な獣形態、つまり兎の状態で寝転がっていた。しかも、クーラーがガンガンかかったノゾムの部屋で。
 
「わりーな、クレセント。アイスは切らしてんだ、また今度--------」
「白陽に言いつけちゃうよー……?」

 ビキッ、とノゾムの額に青筋が立った。まさか白陽を盾にしてくるとは。此処で食い下がった場合、どうなるか未来は見えている。槍で刺し貫かれるか、炎で焼かれるか。
 -------------そうかそうか、貴様はそういう奴なんだな、死ぬが良い十六夜ノゾム、とか言って襲い掛かりにくるに決まってる!!
 ……聡明な白陽はこの程度のことでは怒らないとは思うが、クレセントが何と吹き込むか分かったものではない。
 ----------このアホ兎ーっ!! こちとら試合で疲れてるんだよ、寝かせろよ!! その後で宿題させろよ!! ざっけんな!! 氷水で我慢しろ、氷水で!!
 が、しかし。機嫌が悪いのか、つーんと澄ましたような目でクレセントは睨んで来る。
 ---------このアホ兎ーっ!! 好い加減にしろよ、あれか? オレの所為なのか!? オレなんかやったっけ!!
 
「はーやーくー、買ってきてって言ってるじゃんー」

 こいつにこないだ、アイスなんかやったのが間違いだった、とノゾムは心底後悔した。
 6月なのに暑い今日この頃。クレセントが冷蔵庫の中にあったそれに興味を示したので与えたらとても気に入ったらしかった。

「ばにらあいすが良いー、早く買ってきてよー、のーぞーむー。あ、そうそうあたしは此処で待ってるからー」
「おめーな……」


 ***


 そこまで悪い気分ではない。互いに打ち解けているのは良い事だ、とノゾムはコンビニへアイスを買いに行くついでに考えていた。いや、自分に言い聞かせていた。
 まあ、何でか知らないが、今日のように機嫌が悪いときもあるのだが。
 全く、白陽と逢引でも何でも勝手にやってろ、とノゾムは苛立ちを隠せなかったのだった。
 買い物袋にカップアイスを何個か詰めて、帰ろうとしたそのときであった。


「む、ノゾムか。どうした?」


 聞き覚えのありすぎる声に、ノゾムは振り返った。見れば、そこにはレンの姿があった。
 いや、そこまでならば良かったのだが、

「く、黒鳥先輩じゃないすか。自分はちょっとアイスを買いに……先輩は何をしに?」
「実はだな、ヒナタの奴がこの間何枚もレアカードを当てていたからな。ブースターを買いに来たのさ」
「へ、へーえ。そ、それで結果は。何か、レアカードでも当たったんすか?」

 結果、というのはパックの当たり具合のことである。見た限り、かなりの量を買っているようだった。レアカードの封入率も最近上がったらしいし、ベリーレアの一枚、いや有用なレアカードの1枚は手に入れられたはずだ。
 そうノゾムが考えているまもなく、キザに息を吐いた彼は言った。



「レアカード? 何だそれは? 美味いのか?」



 -----------地雷踏んだぁぁぁーっ!! しかも、地味に涙が出てるよ!! まさか、当たらなかったのか!! ベリーレアは愚か、レアカードすら当たらなかったのか、この人!! おかしい!! 封入率的に最低でもレアは入ってるはずだよ!?
 完全にこれはまずいパターンである。ただでさえ、この間の散幸ペンダントの件から色々酷い目に遭っているというのに。
 
「ふ、何なのだろうな、ノゾム。嗚呼、世界はこんなに明るいのに……あれか? 僕がベ○ータ的な立ち位置だからか? 回を追うごとに色々酷い目に遭ったり、ツキが無くなっていったり、色々いじられキャラになってたり、コメディ担当になっていたりするのは、僕が○ジータ的な立ち位置だからか? おかしいな……5パック買って全部コモンしか出ないとは……」

 ------------つーか、ベ○ータ関係ないよね!? むしろ、オレ的には「ズラじゃない、以下略」って言う人みたいな、クールぶったコメディリリーフ的ポジ……いやいや、ちがーう!! これは酷い!! 誰か!! 誰かこの人に幸運とレアカードを分けてやってくれぇぇぇぇーっ!! しかもこの人、よりによって微妙なカードばっかり引いてやがるぅぅぅーっ!!

「お! レンにノゾムじゃねえか、どうしたんだ?」

 げっ、とノゾムは再三声の聞こえてきた方に顔を向けた。コンビニに向かってやってくる、グラサンを珍しく目に掛けたヒナタがやってくる。
 ------------や、やべえ!! この最悪なタイミングで最悪の人が出てきやがった!

「見てくれよー! さっき、向こうのコンビニでカード買ったらよー、《悪魔龍 ダークマスターズ》が当たっちまってよ! でも、俺のデッキにこいつ合わないから、とっとと売っ払っちまおうと思ってな! お、レンもパック買ったのか! どれどれー、例のペンダントの件も終わったし、ちったぁ良いカードが------------」
「ヒ、ヒナタ先輩ぃーっ!! それ以上はいけない!!」
「え!? -------------あ」

 見れば、店の隅で完全に心を折られたのか、レンはうずくまっていた。

「良いさ。僕はどうせどっかの”ヅラじゃない以下略”みたいに延々といじられキャラになるのさ。そのうち、歩いているときにマンホール踏んで落ちて頭を打って、何か知らないうちに死んでいたキャラになっているのだろう? そんでもって、いつの間にか読者からも作者からも忘れ去られているのだろう?」
「いや、それは飛躍しすぎですから、黒鳥先輩! 後半からベ○ータもヅラも関係なくなってるよ!!」
「あ、安心しろよ、レン。今日、お前に運が無かっただけだ! そうだよ! すっげー、運が無かっただけだ!」
「ならば貴様の《ダークマスターズ》を……」
「三千円だ」

 ----------高ぇ!!

「買おう」

 ----------そして金銭感覚イカれ始めたぞこの人!!

「先輩、騙されないで!! シングルならもっと安いですよ!!」
「そのシングルが売り切れていたのだよ……」

 ----------何者かの作為を感じるほど不運すぎるだろ、この人!!
 結果。余りにも哀れだったので、ただでヒナタがレンに譲ったんだそうな。

短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日 ( No.150 )
日時: 2015/08/19 09:18
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

「……成る程。クレセントに頼まれてアイスを買いに来たのか」
「ったく、たまーに我侭になるんすよ、あいつ」
「この暑い日に、早く帰らないと溶けるぞ」
「あんたが引き止めたんでしょうが。それに、ドライアイスも一緒に入れてるんで大丈夫っすよ。しかもこれ、カップアイスですし。最悪溶けても冷やせば大丈夫だと思いたいです」
「希望的観測じゃねーか」

 一段落つき、ノゾムは事情をヒナタとレンに話していた。

『すまないな、ノゾム。クレセントがお前に迷惑をかけて。だが、あいつは気を許したものにしか、我侭は言わないのだ』

 見かねたように言った白陽に、ノゾムはげんなりとした表情で返した。

「それが迷惑なんだっつーの……」
『分かっている。私から言っておくとするよ。どうせ、何か理由があるはずだ。あいつは構ってやらないとすぐに拗ねるからな』
「……あー」

 思い当たる節はあった。確かに、最近忙しくてまともに彼女と話してやれて居なかった気がする。
 それより、と白陽は断ち切るように続ける。

『クレセントは一緒じゃないのか?』
「ああ、家に居る。多分寝ているかもな」
『そうか』

 ふむ、と考え込むような表情を浮かべた白陽は呟いた。

『部屋で寝ているのか……うむ』

 白陽は、カードの姿のままヒナタの手元を飛び出す。

『すまん、少し用事が出来た私は帰------------』
「ちょっとまてやコラ」

 が、ヒナタがそれを許すわけは無かった。この狐の魂胆は既に見抜いてある。
 ぎりぎりぎりぃっ!! とカードにあるまじき音を立てながら、白陽はヒナタの手元から脱出を試みたが、やはり無理なようだった。

「今、すっげー下劣な思考が読み取れたんだが、俺の気の所為か?」
『ち、違う!! 私は何もやましいことは考えていない!! だが、私にも彼女にも欲求不満というものがあってだな-------------』
「全部てめぇの都合だろうが」
『大体、貴様らが尽く邪魔するからだ、痛い痛い痛い!! 破れる! 千切れる!』
「寝ているクレセントにアレな悪戯しても許されるよね、んでもって、あわよくばって思ったりしたんじゃねーのか? ああん?」
『何の話だ、記憶にないのだが!!』
「その慌てっぷりはやっぱり図星なんじゃねぇかこのムッツリスケベ馬鹿狐がぁぁぁーっ!!」
「黒鳥先輩、ムッツリスケベって何すか」
「貴様は知らなくて良い」

 しかしまあ、白陽の挙動だけで大体思っていることが読み取れるのは、互いに打ち解けあってる証拠ではないだろうか、とノゾムは苦笑いを浮かべたのだった。会話の内容はさっぱりだったが。

「相棒……か」

 ふと、レンが呟いたのを聞いたノゾムは思わず彼に聞き返す。

「黒鳥先輩?」
「いや、何でもない」 


 ***

 
 ヒナタとレンと別れ、ノゾムは帰路についていた。
 -----------クレセントの奴、拗ねてたのか。
 そんなことをぼんやりと考えながら、彼は足を進めていく。
 -----------そういや、今週は結構予定が込んでいたし----------ってのは言い訳にならないか。悪いことをしたな----------
 

 もにゅ

 
 急に視界が真っ暗になる。何かにぶつかったようだったが、とても柔らかい顔の感触に、戸惑いが隠せない。
 そのまま仰け反ると目の前には、眼鏡をかけて、猫耳のような凹凸をした帽子を被った少女が困った顔で屈み、買い物袋を下げてこちらを見ていた。年は少なくとも、自分よりは上か。背格好は自分よりも一回り大きい----------いや、ノゾムがチビなのもあるが。
 現実離れしたような雰囲気を漂わせる少女だが、特に身体の一部分、(ないし2つ)が大きい所為で情けない位置にずり下がった短いサロペットスカートが印象的だった。

「んあ……!?」

 ぼんやりしていたからか、目の前の少女も急いでいたからか、ぶつかってしまったらしい。衝撃は目の前にある膨らみで和らいだから良かったが、思わずノゾムは赤面してしまう。

「う、うわああ、すいませんでしたっ!!」
「いえ、気にしてません! こっちも急いでいましたから、失礼しました! ……」

 じっ、と少女はノゾムの顔を見つめる。
 ますます、彼は自分の頬が熱くなっていくのに気づいた。

「あ、あの-------------ノゾム様、ですか?」
「----------え?」

 そういえば。この少女、どこかで見たことがある気がする。

「そうか……直接この姿で話すのは初めてでしたね……」
「え? え?」

 少女の発言に戸惑いが隠せない。



「”僕”ですよ、ニャンクスです。眼鏡かけてたから気づきませんでしたか?」



 え、と変な声がノゾムの喉から押し出るように出てきた。

「少し、話しませんか?」


***

 
 公園のベンチにて。2人は並んで話していた。今気づいたが、人間の姿のとき、ニャンクスの語尾は普通になるのを完全に忘れていたのも、彼女だと気づかなかった理由だろう。

「一体、何で1人で街に出てたんだよ」
「買い物ですよー♪ 魚が買い得だったので♪」
「お前、人間社会に適応しつつあるな」
「一応、カードだった頃から、この世界の社会を観察してきましたからね。少なくとも、ノゾムさんに気づかれない程度には溶け込んでいたと思いますよ?」
「気づかないっつーの。前はあんなフリフリの衣装着てて、カードの中じゃあんな……その……なんつーか、大胆な格好してるんだからよ」
「にゃしし」
「いや、褒めてねーから」

 初心で子供なノゾムでも、正直ニャンクスには目のやり場に困った。今の一見普通な格好でも十分に目立つそれが、特に。

「それに、眼鏡なんてかけてどうしたんだよ」
「コトハ様が、”文化祭の件で、あんた結構目立ってるから、変な男に眼ェつけられないように。印象操作って奴よ”って言って貸してもらって。あ、でも度は入ってませんよ? 後、服はコトハ様が古いのを買ってくれて」
「ああ、そういうことなのか」


 はぁ、とため息をついて、ノゾムはニャンクスの方を見た。あの事件の後、クリーチャーの同性というだけあって、クレセントはニャンクスと直ぐに打ち解けた。従順で気さくな彼女が、コトハ以外の人物に心を許すのも時間はかからなかった。
 だが、こうしてゆっくり話すのは初めてだ。

「こういうのは初めてですよね」
「お前はオレのクリーチャーじゃあねぇしな」
「そうですよねー……そういえば、ノゾム様はどうしたんですか?」

 どかっ、とベンチにもたれると、ノゾムは呟くように言った。

「ったく、今日は疲れたってのにクレセントの奴からパシらされたんだ」
「パシ……?」
「アイスを買いにいかされたんだ」
「ああ」
「機嫌が悪いと、我侭になるんだよ、あいつ。構って貰えなくて拗ねるといっつもこれだ」
「兎は1羽だと死んじゃうらしいですし、仕方ないですよ。にゃしし」
「笑ってんじゃねぇ。後それ迷信」
「まあ、僕的にはクレセント様はノゾム様のことを信頼しているし、好いていると思いますよ? 恋愛感情だとかそういうのは白陽様に全部向けられていますけど、家族だとか友人に向けられるような愛情はノゾム様に対してはかなり強いと思いますけど」
「あいつがオレのことを?」
「ノゾム様? クレセント様は、孤独だったんですよ?」

 はっ、とノゾムは思い出した。彼女がどのような存在だったかを。
 ずっと、箱の中に閉じ込められたような窮屈さ。王女故の寂しさ。白陽が現れるまで、それがどんなに強かったか。

「だから------------クレセント様を寂しがらせないでください」
「……そうだな」

 ノゾムの中で、何かが吹っ切れた気がした。
 誰しもが、自分のように家族や友人に恵まれた境遇の人物ではないのだ、と。
 クレセントが孤独を思い出したとき、それを和らげてやるのは自分の使命ではないか、と。
 戦友として。そして友人として。家族として。彼女の隣で支えてやるのはデュエリストである自分の仕事ではないか、と。
 
「ありがとな、ニャンクス! オレ、すぐに帰らないと---------------!!」

 そう思って立ち上がったそのときだった。



 ガオンッ!!



 突如、目の前の地面が激しい衝撃と共に抉れた-------------

Re: デュエル・マスターズ D・ステラ 【夏の短編三連発】 ( No.151 )
日時: 2015/08/19 04:30
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 やってきました飛んできました、暑さにやられて頭がローリングでバーサーカーソウルしてるモノクロです。

 ホタルたちはアヴィオールにやられちゃいましたか……まあ、ここであっさり勝つ流れも想像しにくかったですが、こうなりますか……
 唐突に力が欲しくなったというホタルですが、確かに唐突ですね。まあもっとも、ホタルは今まで出番が少なかったわけですし、唐突になるのもある程度仕方ないのかな、とは思いますけども。
 そしてアヴィオールもだんだんキャラが分からなくなってきたというか、星芒武装するようになってから軽くなったというか、初登場時の冷静さや不気味さがファンキーになってきてますね。ここら辺は、良くも悪くもタクさんの作品らしいというか。

 ところ変わってヒナタとアンカ少年のデュエルですが……ヒナタはまあいいとして、アンカ少年はいつものモルネクに《デッドマン》突っ込んだみたいなデッキですね……モルネクの爆発力を防御力に回した、と考えれば分からんでもないチョイスですが。どっちもドラゴンを多用するだけあって、共存や同じギミックを用いることは十分可能ですしね。
 しかしヒナタのデッキは、《ヒビキ》にチャージャー、超次元呪文からの《ボルシャック・ドラゴン》と、どういうデッキなのかよく分からんですね。まあ、こういう環境意識や既存デッキの枠に囚われないデッキの方が、創作らしいとは思いますけど。こういうデッキを使ったりするのは結構好きです。
 それはそれとして、《ニガ=アブシューム》から《ソウルフェザー》までの龍解の流れは良かったですね。先に《ニガ=アブシューム》のマナ回収をして、踏み倒し先を用意するという地味なコンボは、なかなかモノクロ好みでした。《ニガ=アブシューム》の龍解条件のマナ回収って、意外と手札補充になって便利な時がまちまちあるんですよね。
 しっかし、アンカ少年は大分とクレイジーというか、エキセントリックというか、ストレンジですね……自傷も厭わぬ殺意、こんな奴どこかで見た気もしますが、死を恐れないことほど恐ろしいものはないです。カルト宗教が怖い理由の一つですね。それと同様に、アンカ少年の狂気が滲み出てます。逆鱗呪文を使うためにリスカするって、相当ヤバい人ですよ。
 その逆鱗呪文は、全容はまだ明らかでないとはいえ、パンプアップと強制バトル、まあ理にかなったというか、シナジーする能力ですね。あれだけ派手に(血飛沫散ら)したんだから、もっと派手な能力だと思ってましたが、思ったよりも大人しかったという印象です。
 逆鱗能力も、条件が厳しいのかなんなのか……まあ、一気にマナ回収する《ニガ=アブシューム》でマナゾーンの数はほぼ確実に相手を下回るので、構築とプレイングでカバーはできますか。

 そういえば、《ソウルフェザー》が《ハート・クラッシャー》で《Gメビウス》とバトルしていますが、《ソウルフェザー》がパンプアップしてもパワー14000。《Gメビウス》もバトル中に墓地の火のカード数に応じてパンプアップする能力があり、この時点でヒナタの墓地には《ヒビキ》《ボルシャック・ホール》と、《ダークマスターズ》で捨てられた手札が最大三枚あるので、《Gメビウス》のバトル中のパワーは15000〜17000だと思われます。なので、バトルで破壊はできないかと。
 《ダークマスターズ》でハンデスしなければ、相打ちに持ち込みつつ、《ソウルフェザー》は自身の能力で破壊を免れることができますが。
 しかし……毎回のように対戦シーンに一言申し上げてるモノクロですけど、今回のこれはいちゃもんくさいな……なんか、揚げ足取るために、描写の隅から隅まで見て穴を探してるみたいで、自己嫌悪に陥りそうです。
 流石にここまで来ると嫌味というか、嫌がらせみたいなので、少しこういう指摘は控えるようにしたいと思います。

 しかし、逆鱗……元の意味では、龍の顎下にある逆立った鱗に触れると、龍が怒り狂うというものですが、つまるところ五つの武器は“怒り”が共通項なんですかね……? アンカ少年は気が狂いすぎて、怒りとか色々通り越してそうですけど、《ソウルフェザー》は死を許さずに生かし続けることから、生死に対する怒りを持つとか。もしくは、死なない奴隷にされたクリーチャーの怒り、とも取れますか。
 また逆鱗とあるということは、これは残る武器たちもすべてドラゴン関係だったりするんですかね。《ソウルフェザー》は元ネタにはなかったアーマード・ドラゴンが追加されてますし。能力面もバリバリドラゴン絡みになってますし。

 それはそれとして、結局ヒナタは敗北でしたが、直前でアンカ少年が実質的な棄権とは……なんというか、試合に勝って勝負に負けた感が凄いですね。今回は全体的に黒星回ですか。
 ホタルはいなくなった両親を探すべくアヴィオールと接触したというのに、逆に自分が誘拐されるとは、皮肉なものですね。
 とはいえ、なぜにアヴィオールがホタルを連れ去ったのかは、気になるポイントですね。殺したら話がまた面倒なことになりそうですが、わざわざ連れて帰る理由とかあるんでしょうか……そもそも、奴の目的がなんなのか。なぜアンカと組んでいたのか。一時はクレセントを狙ったりもしてましたが、奴の明確な目的がはっきりしていないんですよね。
 今後はそれが焦点になって来そうですし、そこに注目しながら、短編を楽しむとしますか。

 もっとも、メイン張って登場が多いとはいえ、まだ知り尽くしたとは言えないノゾムはともかく、コトハとヒナタの絡みに、ドラゴン・サーガ直前にやってた怪談話に、と前作から知っているだけに真新しさに欠けるものが多い感は否めないですかね。
 まあ、コトハは今作では微妙に影薄だったので、それを盛り返す意味もあると考えれば、分からないでもないですか。ちょっと打算的な考えですけど。

 兎が寂しいと死ぬというのは迷信ですが、一応それに準ずる火元というのがあるもので、元はちゃんと世話をしないと体調不良のサインに気付かず死んでしまう、ということの曲解だそうですね。
 あとは、身を寄せ合って体温を保持する生き物だから、一羽にして放置すると身体が冷えて死んでしまうとか。
 まあ、クレセントは寂しいと構ってくれないとか言って鉄槌振り回すくらいに元気そうなので、ある意味心配なさそうですけど。

 さて、ここまでで2600程……長くなってきたので、今回はこのくらいにしておきます。
 八月も大分と経ちましたが……というお話をするのはやめましょう。悲しみを生むだけな気がします。というわけで、今回はこれにて。
 ではでは。


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