二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ D・ステラ 【侵略世界編】
日時: 2017/01/16 20:03
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

【読者の皆様へ】
はい、どうも。二次版でお馴染み(?)となっているタクと申します。今回の小説は前作の”デュエル・マスターズ0・メモリー”の続編となっております。恐らく、こちらから読んだ方がより分かりやすいと思いますが、過去の文というだけあって拙いです。今も十分拙いですが。
今作は、前作とは違ってオリカを更にメインに見据えたストーリーとなっています。ストーリーも相も変わらず行き当たりばったりになるかもしれませんが、応援よろしくお願いします。

また、最近デュエマvaultというサイトに出没します。Likaonというハンドルネームで活動しているので、作者と対戦をしたい方はお気軽にどうぞ。


”新たなるデュエル、駆け抜けろ新時代! そして、超古代の系譜が目覚めるとき、デュエマは新たな次元へ!”



『星の英雄編』


 第一章:月下転生

Act0:プロローグとモノローグ
>>01
Act1:月と太陽
>>04 >>05 >>06
Act2:対価と取引
>>07
Act3:焦燥と制限時間
>>08 >>10
Act4:月英雄と尾英雄
>>13
Act5:決闘と駆け引き
>>14 >>15 >>18
Act6:九尾と憎悪
>>19 >>21
Act7:暁の光と幻の炎
>>22 >>23
Act8:九尾と玉兎
>>25

 第二章:一角獣

Act1:デュエルは芸術か?
>>27 >>28 >>29
Act2:狩猟者は皮肉か?
>>30 >>31 >>32 >>33
Act3:龍は何度連鎖するか?
>>36 >>37
Act4:一角獣は女好きか?
>>38 >>39 >>41 >>42 >>43 >>44 >>45
Act5:龍は死して尚生き続けるか?
>>48

 第三章:骸骨龍

Act1:接触・アヴィオール
>>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55
Act2:追憶・白陽/療養・クレセント
>>56 >>57
Act3:疾走・トラックチェイス
>>66
Act4:怨炎・アヴィオール
>>67 >>68
Act5:武装・星の力
>>69 >>70
Act6:接近・次なる影
>>73

 第四章:長靴を履いた猫

Act1:記憶×触発
>>74 >>75 >>76 >>77
Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解
>>78 >>79 >>80
Act3:捨て猫×少女=飼い猫?
>>81 >>82
Act4:リターン・オブ・サバイバー
>>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90
Act5:格の差
>>91 >>92 >>93 >>104
Act6:二つの解
>>107 >>108 >>109 >>110
Act7:大地を潤す者=大地を荒らす者
>>111 >>112 >>113
Act8:結末=QED
>>114

 第五章:英雄集結

Act1:星の下で
>>117 >>118 >>119
Act2:レンの傷跡
>>127 >>128 >>129
Act3:警戒
>>130 >>131 >>132
Act4:策略
>>134 >>135
Act5:強襲
>>136
Act6:破滅の戦略
>>137 >>138 >>143
Act7:不死鳥の秘技
>>144 >>145 >>146
Act8:痛み分け、そして反撃へ
>>147
Act9:fire fly
>>177 >>178 >>179 >>180 >>181
Act10:決戦へ
>>182 >>184 >>185 >>187
Act11:暁の太陽に勝利を望む
>>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>193 >>194 >>195
Act12:真相
>>196 >>198
Act13:武装・地獄の黒龍
>>200 >>201 >>202 >>203
Act14:近づく星
>>204


『列島予選編』


 第六章:革命への道筋

Act0:侵攻する略奪者
>>207
Act1:鎧龍サマートーナメント
>>208 >>209
Act2:開幕
>>215 >>217 >>218
Act3:特訓
>>219 >>220 >>221
Act4:休息
>>222 >>223
Act5:対決・一角獣対玉兎
>>224 >>226
Act6:最後の夜
>>228 >>229
Act7:鎧龍頂上決戦

Part1:無法の盾刃
>>230 >>231 >>232 >>233 >>234 >>235 >>236 >>239
Part2:ダイチの支配者、再び
>>240 >>241 >>242 >>243 >>244 >>245 >>246 >>247 >>248 >>250
Part3:燃える革命
>>252 >>253 >>254 >>255 >>256
Part4:轟く侵略
>>257 >>258 >>259 >>260 >>261

Act8:次なる舞台へ
>>262


 第七章:世界への切符

Act1:紡ぐ言の葉
>>263 >>264 >>265 >>266 >>267 >>268 >>270
Act2:暁ヒナタという少年
>>272 >>273
Act3:ヒナとナナ
>>275 >>276 >>277 >>278 >>279 >>280 >>281
Act4:誓いのサングラス
>>282 >>283 >>284 >>285
Act5:天王/魔王VS超戦/地獄
>>286 >>287 >>295 >>296 >>297 >>298 >>301 >>302 >>303 >>304 >>305
Act6:伝説/閃龍VS獅子/必勝
>>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>323
Act7:青天霹靂
>>325 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>331
Act8:揺らぐ言の葉
>>332 >>333 >>334 >>335 >>336
Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神
>>337 >>338 >>339 >>340 >>341 >>342 >>343
Act10:伝える言の葉
>>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351
Act11:連鎖反応
>>352


『侵略世界編』


 第八章:束の間の日常

Act1:揺らめく影
>>353 >>354 >>359 >>360 >>361 >>362
Act2:疑惑
>>363 >>364
Act3:ニューヨークからの来訪者
>>367 >>368 >>369 >>370 >>371
Act4:躙られた思い
>>374 >>375 >>376 >>377
Act5:貴方の為に
>>378 >>379 >>380 >>381 >>384 >>386
Act6:ディストーション 〜歪な戦慄〜
>>387 >>388 >>389
Act7:武装・天命の騎士
>>390 >>391
Act8:冥獣の思惑
>>392
Act9:終演、そして——
>>393


 第九章:侵略の一手

Act0:開幕、D・ステラ
>>396
Act1:ウィザード
>>397 >>398
Act2:ギャンブル・パーティー
>>399 >>400 >>401
Act3:再燃 
>>402 >>403 >>404
Act4:奇天烈の侵略者
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>411
Act5:確率の支配者
>>412 >>413
Act6:不滅の銀河
>>414 >>415
Act7:開始地点
>>416


 第十章:剣と刃

Act1:漆黒近衛隊(エボニーロイヤル)
>>423 >>424
Act2:シャノン
>>425 >>426
Act3:賢王の邪悪龍
>>427 >>428 >>429
Act4:増殖
>>430 >>431 >>435 >>436 >>438 >>439 >>440 >>441 >>442
Act5:封じられし栄冠
>>444


短編:本編のシリアスさに疲れたらこちらで口直し。ギャグ中心なので存分に笑ってくださいませ。
また、時系列を明記したので、これらの章を読んでから閲覧することをお勧めします。

短編1:そして伝説へ……行けるの、これ
時系列:第一章の後
>>62 >>63 >>64 >>65

短編2:てめーが不幸なのは義務であって
時系列:第三章の後
>>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103

短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル)
時系列:第四章の後
>>120 >>121 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126

短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日
時系列:第四章の後
>>149 >>150 >>153 >>154 >>155 >>156

短編5:恋情パラレル
時系列:第四章の後
>>157 >>158 >>159 >>160 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>173 >>174 >>175 >>176

短編6:Re・探偵パラレル
時系列:平行世界
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422

エイプリルフール2016
>>299 >>300

謹賀新年2017
>>443


登場人物
>>9
※ネタバレ注意。更新されている回を全部読んでからみることをお勧めします

オリジナルカード紹介
(1)>>96 (2)>>271
※ネタバレ注意につき、各章を読み終わってから閲覧することをお勧めします。

お知らせ
16/8/28:オリカ紹介2更新

Re: デュエル・マスターズ D・ステラ 〜星々の系譜〜  ( No.106 )
日時: 2015/06/28 03:36
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

モノクロさん

先ほどは対戦ありがとうございました。コメントもありがとうございます。多くは向こうで語っていますのでなるべく手短にいこうと思います。

そうです。本編が終わった先にこれです。レンの扱いの酷さよ。
そんでもって、だんだんモブがモブでなくなっている事実。おかしいなあ? 最初はこうする予定じゃなかったんですけどね。犯罪臭漂うというか、多分今作でも結構やばい部類の人間ですからね、この男。
多分、無事では済まないでしょうね、あの2人でも。特にコトハ。

一方、シェル・ファクトリーを一瞬で粉砕したマキシマム・ザ・マックスですが、こいつについてもいつか詳しく描写したいですね。海戸でかつて、何があったのか。4年前に書いていた自分の処女作のリメイクのつもりでやってみたいと思っています。

武闘財閥は本当便利で助かります。この小説を動かすときは。クリーチャー関係については、研究が一番進んでいる組織ではないでしょうか。会社であり、研究所であり、そして主人公達のサポート組織でもありますし。

いやー、幾ら捻ってるからってそこまでではないかもですね。決闘空間開ける一般人って、リョウとかを考慮したんですよ。考えてみたら、リョウとか久々だなオイ。しばらく出してません。

それでは、また。

Act6:二つの解 ( No.107 )
日時: 2015/06/28 13:06
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***


「------------ん、此処は------------」

 視界が、暗い。空気が冷たい。見れば、此処が部屋であることが分かった。
 重たい瞼を開くと、すぐさまある光景が目の飛び込んできた。
 車の車輪が、目の前の窓を通り過ぎていったのだ。

「------------! 車が空を飛んで------------!」

 そこでコトハは口を噤んだ。男が近くにいるかもしれない。まだ、寝ていると思われていた方が好都合だ。
 しかし、部屋はよくよく見渡してみると密室。そして、先ほど見た車が飛んでいるように見えた光景も、よくよく考えてみれば、この部屋が半地下になっていることの証明か。
 ------------どうやら、奴の言っていた”然るべき情報”とやらを聞き出されるまでは、まだ時間があるみたい。敵は、一体何をやってるのかしら。
 そういえば、と彼女は思い出した。
 立った自分の足元に、縄が落ちていることに気付く。どうやら縛られていたらしい。
 ------------何で、これが? まるであたしの他の誰かが切っていったみたいだけど……。
 レン、という考えは此処で消した。まず、レンはしばらく起き上がれそうにないような重傷を負っていた上に---------

「此処に寝転がされていたわけね……」
「うう、ぐぅ……」

 ------------たった今、コトハが発見したからである。外傷は他にはない様だ。
 しかも、彼の近くにもきられたと思われる縄が置いてあった。

「……誰か此処にいるの?」

 しかし、仮にも縛られていた、ということにコトハはぞっとした。
 ------------やだやだ! あたし、触られていないわよね!? あー、もうやだ!! 絶対触られた!! 乙女のデリケートゾーンを、あんな男が放っておくわけがないじゃない! うわあああん、あたしの貞操が! でも、これって男が戻ってきたら、もっと酷い目に遭わされるってことよね!? そうなのよね!? 今度は、”初めて”もあんな奴に全部奪われるの!? そのついでに殺されるの!? 最悪!! 最悪!! 最悪よ!!
 触ってみると、ブラのホックが外されていることに気付く。間違いない。やられた。それ以外の被害が無かったことが幸いであるが、既にコトハは泣きそうになっていたのだった。彼女とて、思春期の少女なのだから当然だ。
 そもそも、例の男が此処に居ないというのが、尚更不気味だ。


「-----------此処ですにゃ」


 声がした。それで、コトハは我に返る。

「誰!? 誰かまだ、此処にいるの!?」

 部屋を見渡す。恐怖が募ってくる。一体、何者なのか、という。

「ご無礼を働きましたのにゃ」

 次の瞬間だった。天井から、1つの影が降りてくる。
 その影には見覚えがあった。


「-----------あ、あんた------------どの面下げて来たのよ!!」


 驚いたことに、目の前に居たのはニャンクスであった。
 それ以上に怒りが募る。自分を利用し、挙句レンをずたぼろにして----------

「ち、違うのですにゃ! 話を-----------」
「うるさいっ! あんたなんか、大っっっ嫌いよ!」

 涙ぐみながら、彼女は叫んだ。怒りと憎悪で、目の前のクリーチャーへ怒鳴り散らしている。
 折角、キャシーに似た猫だと思っていたのに!! 折角、埋められなかった心の穴を埋められると思っていたのに!!
 
「あんたは最低よ!! あたしを、あたしの仲間を傷つけて!! あたしの心を散々弄んで!! あたしがそれで、どんな目に遭ったと思ってるの!! それで何? 今度は何しに来たって言うのよ!!」
「落ち着いてくださいにゃ! ”僕”は貴殿の知っているニャンクスと違うのですにゃ!」
「何だって言うのよぉーっ!!」

 構わず、コトハはニャンクスの首根っこを掴んだ。そのまま両手で思いっきり締め上げる。
ぐぎぎ、という音と共に帽子を被った猫は苦しそうに、うめき声を上げた。

「ああ、う……」

 次の瞬間、”何か”が自分の手へ伝わってきた。すうっ、と透き通るような、感情を全て洗い流すような、そんな感覚だ。
 見れば、自分の手にニャンクスの小さな手が置かれている。
 そして、しばらくして、彼女の手の力は抜けていた。

「えほっ、落ち着きましたかにゃ。”あいつ”に製薬能力の殆どを持っていかれて、こんなものしか残っにゃかったですが、役に立ってよかったですにゃ」
「そういえばあんた……さっきのニャンクスと喋り方が違う……本当に何者なのよ」

 頭の中を支配していた憎悪が抜け落ち、冷静になったコトハはニャンクスに問うた。
 
「僕の名は、ニャンクス……貴方の名前は?」
「コトハ……如月コトハよ」
「コトハ様! よろしくお願いしますにゃ!」

 冷静になり、感じ取ってみると邪悪な気配が、目の前のニャンクスには全く無かった。
 しかし、どういうことだろうか。先ほどまで自分達が対峙していたニャンクスは一体、何者なのであろうか。

「あんたは……どうして、此処に? あんたが本体だっていうなら、あたし達が対峙していたニャンクスは一体!?」
「そ、それよりも! まさか、僕が探していた人が自分からこっちに来るなんて、思ってもいなかったですにゃ!」
「え!?」

 探していた、とはどういうことだろうか。いきなりの彼の言葉に、戸惑うばかりのコトハは、ストップストップ、と静止をかけた。

「あ、あたし……が?」
「貴方は”適合者”ですにゃ! この僕と波長の合う、唯一人の人間ですにゃ!」
「ちょっと待って! 何であんたが、そんなことを知ってるっていうの!?」
「分かるのですにゃ! 感覚で! 貴方は、僕のパートナーなのですにゃ!」
「い、いや、でもいきなりそんなこと言われても!」

 だから、とニャンクスは続けた。

「終わらせて欲しいのですにゃ……あいつの暴走を……」

 え、とコトハの口から声が漏れた。ニャンクスの声は、心なしかとても寂しげで、切なげで、儚げだったからだ。
 ぽろり、とその瞳から雫が零れた。「あれは」と彼は言った。


「貴方達が見ていたニャンクスは僕自身が生み出した、ステラアームド・クリーチャー、”アクロガンドラー”の成れの果てですからにゃ……!」

Act6:二つの解 ( No.108 )
日時: 2015/06/28 13:04
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

「ス、ステラアームド・クリーチャー……!? アクロガンドラー!?」

 聞き慣れない単語に首を傾げるコトハ。無理もない。空間で戦っていたのはレンだったからだ。

「ステラって、星のことよね、アームドは武装って意味で----------ううん、だまされないわ」

 しかし、コトハからすればぱっと理解できなかった時点で、そんなことなどどうでも良かった。
 そんなことより、ニャンクスについて色々聞き出したかったのだ。

「大体、聞きたいことは幾らでもあるの。仮にあんたが、2人いるとして、何であたし達があんたの片割れと戦っていたことを知っているのよ! 知っていながら、あんたは何で何もしなかったのよ!」
「僕は、奴を監視していたのですにゃ」

 「監視……?」とコトハは、疑念を込めて言った。

「いや、監視することしか出来なかったんですにゃ……僕の力の大半は、分裂したアクロガンドラーに殆ど吸われていて……僕はそもそも、カードの状態で浮遊することしか出来なかったのですにゃ」
「それが、どうして今実体化してるのよ」
「貴方が此処にいるから、ですにゃ! 僕が奴を監視していたとき、貴方達がディメンジョン・ゲートに放られたのを見たのですにゃ!」

 どうやら、ニャンクスはあの場で起こっていたことを、敵に見つからないように、ずっと見ていたらしい。
 気配を消す、というのは猫の十八番だと言うが、どっからどう考えてもお前しか出来ないと思う。

「それで大変だと思って、思わずそのままゲートに入ってしまったのですにゃ。その後、貴方達が縛られて……えと、貴方が色々触られて」
「それは言わなくて良い!! あたしだって分かってるから!!」
「し、失礼しましたのですにゃ! ええと、とにかく満足した奴は、まだ何か用があるのか、もう1人の僕を連れてこの地下室に鍵をかけて、出て行ってしまった次第ですにゃ」
「成る程……筋は通っているわね、此処まで」
「ゲートに入ったときは、まだ貴方が僕の適合者だということは知らなかったのですがにゃ……この部屋に入って貴方に近寄ってみると、一瞬で今までの呪縛が解けて、実体化できたという次第ですにゃ! というわけで、縄も解いておきましたにゃ!」

 そこまで言うと、ニャンクスはがばっ、と地に頭を付けた。クリーチャーも土下座するんだ、とコトハはふと思ったが、そんなことはどうでもよく。
 

「本当に、貴方様、お仲間の方々、そして人間の皆様には迷惑を掛けましたにゃ!! 申し訳ありませんでしたにゃ!」


 口から飛び出たのは、精一杯の謝罪の言葉だった。

「奴はまさに、僕自身……! 僕の心が生み出した存在……! その責任は腹を切ってでも」
「やめてよ、グロいから! そんなことよりっ! あんたとあいつが何らかの理由で元が1つだったのが分離したってのは分かったわ。喋り方も性格も全然違うしね。それよりも気になることがあるのだけれど」
「はいですにゃ?」

 コトハは、とりあえず質問を投げかけた。ステラアームド・クリーチャーが何であるか、よりも気になる疑念がまだあったのだ。


「-----------あんたの片割れの体を洗っているときに気付いたんだけど----------あんたって-----------」


 と、言いかけたそのときであった。
 -----------部屋の扉が、開いた。


 ***


「やはり間違いない! 襲われたのはレンとコトハだ! あいつらと連絡が取れねえ!」

 ヒナタは焦りに焦りを重ね、最早スマホの上下を持ち間違える程動揺していた。
 ノゾムはとりあえず、教えてやろうかやるまいか、迷っていたが……。

「ともかく、呪文か何かで連れ去られたのかもしれねえな」
「ど、どうするんですか!?」

 ホタルが必死な形相で問うも「慌てるな」とフジは落ち着き払った表情で答えた。

「犯人の目星は大体ついている。此処最近の事件を詳しく調べてみたんだがな、今まで交通事故を起こしている奴は皆、同じ会社に勤めているらしい」
「同じ会社に……? 何でそんなこと、早く教えなかったんですか!」
「教える前にニャンクスが襲撃してきたんだろうが!」
「ちょっ、やめてくださいお二方!」
「ったく、この馬鹿先輩は……」

 怒鳴りあうヒナタとフジ。しかし、いいかげん不毛だと思ってきたのか、言い合いをやめる。
 そして、とフジは続けた。
 どうやら、その会社員達を警察が詳しく調べていったところ、社内で以前、”新人いじめ”があったそうだった。嫌がらせや、書類隠しなど、悪質ともとれるものが横領していたそうだ。
 そして警察は、何故かいじめに遭っていた社員のうちの1人の業績が、最近著しく上がっていることに不審感を感じていたらしい。

「ひっでぇ話だ……!」
「最低です!」
「全くだな」

 しかし、ヒナタ達はその会社でいじめがあったことに、憤りを感じていた。
 大人でもこんなことをするのか、という怒りであった。
 しかし、それを宥めたフジは続けた。今は目の前の事件の解決が先だ、と。とはいえ彼も、「最低の会社だな」と非難してはいたが。
 
「----------ニャンクスってよ? 薬が作れるんだよな?」
「ええ、そうですね」
「考えても見ろ。ハラスメントを受けているにも関わらず、成績が上がる人間なんてそうそういない。そいつが図太いメンタル持ってるならともかく、そいつは中でも一番の根性なしでな、遅刻やさぼりの多いろくでなしだったらしい。上もクビにしようと思っていた矢先、急に精を出し始めたらしくてな。ニャンクスがその男と組んで、薬を使わせたのなら納得は行く」
「さらに、恨みを持つ上司を蹴落とすためにニャンクスを手を組んで、交通事故を起こさせた」

 交通事故による責任はかなり大きい。当然ながら、運転手にそれは全て降りかかる。まさに、生き地獄とはこのことだ。
 そこでだ、と彼は続けた。

「警察では認知できない、法の外の犯罪-----------つまり、クリーチャー犯罪を裁くのも俺ら武闘グループの仕事でな。奴を拘束する」
「どんな理由があるにせよ、これ以上他の関係ない人を巻き込む訳にはいきませんからね!」
「ああ。コトハ達を助けねえと!」

 頷いたフジは、2人の熱意を汲み取ったようだった。そして、ホタルを一瞥すると言った。

「淡島。お前は帰ってろ。仮にも、お前は女でしかも年端がいかねえ。これ以上危険に遭わせる訳にはいかん」
「ええ!? で、でも------------」
「ホタル。オレも同意見だ」

 うう、とホタルは萎縮してしまった。やはり、彼女も内心では怖いところがあったのだろう。
 しかし、それでも彼女は折れなかった。


「お願いです! あたしも連れていってください! 足手まといになるかもだけど、少しでも力になりたいんです!」


 力強い、台詞だった。思えば彼女は新聞部。度胸は人一倍あるのだ。
 それを聞いたのか、溜息をついたフジは「勝手にしろ」と言ったのだった。
 ぽん、とヒナタはホタルの肩に手をおき、呟いた。

「何であれ、危険だと思ったらすぐ逃げろ。クリーチャーがいるからって、自分を過信しすぎるなよ」
「は、はいっ!」

 何であれ、これで犯人追跡のメンバーが揃ったのだった。フジはタブレットの画像をヒナタ達に見せた。

「男の名は、”小早川 秀明”。ふん、臆病そうな面だぜ」
「こいつが……」
「----------とにかく、踏み込むぞ。奴の家にな」

 こうして、作戦は決行されることになったのである。

Act6:二つの解 ( No.109 )
日時: 2015/06/29 17:51
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***

「----------何だァ? 人が面倒事処理してる間に、何をやっている」
「縄抜けが随分と得意なようだにゃー」

 男だ。そして、”ニャンクス”も一緒に居る。
 コトハは焦りを感じていた。まさか、思ったよりも早く見つかってしまうとは!
 ニャンクスは反射的にカードとなって彼女の手に戻り、”脳内会話(テレパス)”を用いて会話をしていた。
 ----------あんたを疑って悪かったとしか言いようが無いわ……って何これ。
 ----------テレパスですにゃ。貴方の思っていることで、そのまま会話ができるのですにゃ。
 ----------それなら、好都合! それよりも、あんたの言っていたステラアームド・クリーチャーって何なのよ! あの男は此処で倒さなきゃいけないけど、それだけ教えてよ!
 ----------僕達の世界で使われていた戦闘型技術、”星芒武装”に必要な要素ですにゃ。自らの心を使って生んだステラアームド・クリーチャーを鎧として武装し、更なる存在へ昇格する技なのですにゃ!
 ----------成る程、分からないわ! もうちょっと分かりやすくできないの、この辺!
----------無茶振りはやめて欲しいのですにゃ!
 ----------だけど、覚醒だとか龍解みたいな技だってことは何となく理解できたけどね!
 ----------???
 ----------分かんないみたいね、それは。だけど、無駄口叩くのはそろそろやめにしましょうか!
 全て、もう1人のニャンクスが言ったとおりだった。やはり、彼らは分裂していたのだ。

「借金取りの男をぶっ殺して、死体を何処に埋めようか考えてたところだけどよ……てめーから埋めなきゃいけねえようだな」

 男はさらり、と恐ろしいことを言ってのけた。
 やはりこいつ、”精神病質(サイコパス)”だ、と。生まれつきの悪魔で、善の念が欠けており、悪事を働くことに躊躇いがないのだ。今の間に、また人を殺してきたのか、と思うと非常に恐ろしくなってくる。
 しかし、今のコトハには思ったよりも恐れは無かった。目の前の敵に立ち向かおうという意思で溢れていた。

「出来るもんなら、やってみなさい---------ニャンクス!」
「はっ、俺様の名前を軽々しく-----------」

 と、目の前にいるニャンクスが言うが否や、コトハの握っていたカードから、一陣の風が吹き抜け、クリーチャーとして実体化した。
 それは、目の前のニャンクスにとってはハンマーで殴られたに等しい衝撃であった。

「----------僕の姿を名を借り、死後も悪さを働くか、アクロガンドラーっ!!」

 先ほどまで、余裕たっぷりの表情を浮かべていたニャンクス----------いや、アクロガンドラーは驚愕の表情を浮かべた。
 男の方は、完全に置いてけぼりになっていたが。

「違う!! 俺が”ニャンクス”にゃ!! お前は一体、何者にゃ!!」
「お前は今際の際に呟いていた。”俺がお前で、お前が俺なら”------------だとすれば、言う事があるにゃ」

 ニャンクスは言い放った。


「本当にすまなかったにゃ!!」


 しばらく、沈黙が続いた。
 コトハでさえも、意外で、他の言葉が出なかった。
 関をきったように、ニャンクスの言葉は続いた。

「僕がお前を恐れたから……僕がお前ともっと向き合っていれば、”あんなこと”にはならなくて済んだのにゃ!」
「今更何を----------!! テメェが、王国が俺に仕向けた仕打ち、忘れたとは言わさねぇ!!」

 アクロガンドラーは既に、元の口調を取り繕うつもりもないようだった。
 
「オイ、茶番はそこまでだ。”ニャンクス”!!」

 びくり、と彼は肩を震わせた。
 
「奴を殺すぞ。折角、”奴らが何故、呪文を受けなかったのか”を聞き出そうと思ったが、どうせ無駄だ」
「俺様に----------俺様に-----------!!」
「あ?」


 ザクリ


 次の瞬間、男の腹から血しぶきが飛んだ。
 「がはっ」と呻き声をあげて、男は階段から転げ落ちた。腹から、頭から、血が流れ出ていた。
 これが、男の哀れな最期であった。私利私欲のために、悪事と悪事を重ね続け、自分を正当化するために人を傷つけ続けた男が受けるべき、然るべき報いだったのか。


「俺様にッ、指図を、するなあああああああああああああああああああああ!!」


 ひっ、とコトハは小さく悲鳴を上げた。涙無き慟哭とも取れる目の前のクリーチャーの叫びは、とても痛々しかった。
 まだ、コトハには目の前の男が死んだと認識できていないため、そこまで動揺は大きくなかった。しかし、ニャンクスは既に自分の生み出した化身が何をしたのかが分かっていた。
 もう、奴を許すわけにはいかない。ここでやめていれば良かったのに。何故、過ちを繰り返すのか。

「コロシテヤル……お前らも、コロシテヤル……!!」

 じりじり、と詰め寄るアクロガンドラー。猫の姿は崩れかけていた。ただ、殺意と憎しみのままに、全てを殺す機械へと成り果てていた。
 パニックに陥りそうな彼女を、ニャンクスが沈静の秘薬で落ち着かせる。
 何となく、心に安らぎが戻る。

「奴は僕の力と精神の一部を吸い取っていますにゃ。邪念、負の感情、それらは全て奴に持っていかれている。奴が本当に僕になる前に!! 奴がこれ以上、誰かを傷つける前に!!」
「----------もう分かってるわ。デュエマで奴を倒せってことね!」
「そうですにゃ! いきますにゃ!」

 ”2人”で、これを使うのは、何時ぶりだろうか。
 恐らく、ヨミを倒してからは使っていなかった気がする。それも、此処まで強大なクリーチャーを相手にするのも久々だ。
 しかし。心なしか。先ほどまで信用していなかったこの猫が近くにいるだけで、力が沸いて来る。
 ----------レン。ありがとう。あんたの分まで戦ってくるわ!


「コトハ様!」
「ええ、行くわ! 決闘空間解放よ!」


 次の瞬間、黒い靄が彼女から現れ、じりじりと詰め寄るアクロガンドラーと自らを覆った-------------そう、このとき、知識と知恵を使った命がけの戦い、”デュエル”が始まったのである。

Act6:二つの解 ( No.110 )
日時: 2015/06/28 22:01
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***

 
 コトハとアクロガンドラーのデュエル。此処までは、大きな動きはない。先攻2ターン目、コトハは動き出した。

「《フェアリー・ライフ》でマナを加速するわ! ターンエンドよ!」
「《霞み妖精 ジャスミン》を召喚。山札の上から、《偽りの王 ヴィルヘルム》をマナゾーンへ! ターンエンドだ!」

 ----------見たところ、相手のデッキは自然をベースに火と闇を投入したドラゴン中心の多色デッキ……対して、あたしのデッキは自然単色。攻撃性能、継続性能、共に相手の方が上だけど、単純なブースト力と一撃の破壊力ならあたしの方が上よ!
 多色デッキは事故の可能性は高いとはいえ、対応力は向こうの方が上だ。
 一方のコトハは、1つの事に特化させやすい単色自然デッキ。しかし、その分小回りは利きづらいのである。

「あたしのターン! 《爆獣 マチュー・スチュアート》召喚! ターン終了よ!」




爆獣マチュー・スチュアート C 自然文明 (4)
クリーチャー:ドリームメイト/ナイト 2000
自分が呪文を唱えた時、自分の山札の上から1枚目をマナゾーンに置いてもよい。




 《マチュー・スチュアート》は、自分が呪文を唱えるたびに、自分のマナを増やすカード。これを起点に、更にマナを増やしていきたいところだ。つまり、《フェアリー・ライフ》などを使えば、さらにマナゾーンのカードを増やすことが出来るのだ。
 とあるコンセプトのために、とっととマナを貯めなければならないコトハにはぴったりのカードと言えよう。
 
「俺様のターン……! もう1度、《フェアリー・ライフ》で《ダイハード・リュウセイ》をマナへ。ターンエンドだ!」

 相も変わらず、マナ加速を続けるアクロガンドラー。しかし、その姿は逆に不気味とも取れる。
 この先、敵が何を用意しているのか、全く読めないのだ。

「あたしのターン、《超次元 フェアリー・ホール》でマナを1枚加速し、超次元ゾーンから《魂の大番長 「四つ牙」》を召喚! さらに、《スチュアート》の効果で、山札からカードを1枚マナゾーンに! ターンエンドよ!」

 これにより、コトハのマナゾーンのカードは、一気に7枚へと膨れ上がった。
 これで、後は手札次第で一気にゲームセットに持ち込むことが出来る。出来るが------------

「俺様のターン、4マナで《ライフプラン・チャージャー》を使用。その効果により、カードを5枚見て《従順の山猫星 タスク・ニャンクス》を手札に!!」

 この瞬間、コトハは瞬時に察した。あれが、敵の切札であると。

『気をつけて下さいにゃ! アクロガンドラーの恐ろしさは、自分のマナさえも食らい尽くしてしまうにも関わらず、さらにそれを無理矢理拡張してしまうことにあるのですにゃ!』
「とにかく! こっちも準備を固めるしかないわ!」

 まず、コトハのターン。現在、場には《スチュアート》と《「四つ牙」》が居る。
 そして、《「四つ牙」》の効果でマナゾーンにカードが1枚置かれた。
 つまり、手札からのマナチャージをしなくとも、コトハのマナは7枚になる。


魂の大番長「四つ牙」(クワトロ・ファング) R 自然文明 (6)
サイキック・クリーチャー:ビーストフォーク/ハンター 6000
自分のターンのはじめに、自分の山札の上から1枚目をマナゾーンに置いてもよい。
W・ブレイカー


「そして、あたしは《地掘類蛇蝎目 ディグルピオン》を召喚! あたしの場にドラゴンがいないから、マナゾーンに置くわ!」



地掘類蛇蝎目 ディグルピオン VR 自然文明 (3)
クリーチャー:ジュラシック・コマンド・ドラゴン 6000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンに自分の他のドラゴンがあれば、自分の山札の上から1枚目をマナゾーンに置く。自分のドラゴンが他に1体もなければ、このクリーチャーをマナゾーンに置く。
W・ブレイカー



 《ディグルピオン》をバトルゾーンに出したとき、他にドラゴンが居なければ、このクリーチャー自身がマナゾーンに送られる。これだけなら3コストの《フェアリー・ライフ》や《霞み妖精ジャスミン》相当なので大した性能とは言えない。
 しかし、ドラゴンがいれば3コストパワー6000、マナ加速効果持ちと《青銅の鎧》もびっくりの性能と化す。
 ただ、今回はドラゴンが居なかったので、前者のなんとも言えないカードになってしまったが、このカードの最大の利点は序盤から終盤のダメ押しまで使える万能駒であることか。
 そのままターンを終えたコトハ。しかし。

「俺様が……俺様が……俺様ガ、ニャンクスナンダァァァァァーッ!!」

 次の瞬間、アクロガンドラーの手札から1枚のカードが現れた。《従順の山猫星 タスク・ニャンクス》のカードだ。
 
「現れよ、我が化身!! 《タスク・ニャンクス》召喚!! 超次元ゾーンから、《邪帝類逆襲目 アクロガンドラー》をバトルゾーンへ!!」

 現れたのは、黒い影のような《ニャンクス》だった。顔は、黒い靄で潰されており、判別できない。
 さらに、超次元の穴が開き、そこから恐竜のようなクリーチャー、《アクロガンドラー》が現れた。
 岩のようにごつごつした身体、不気味にぎらめく瞳、そして鋭利な刃が生えた尻尾。
 その全てに攻撃的な何かを感じる。

「何よあれ……! 不気味すぎでしょ……!」
『コトハ様! あれがステラアームド・クリーチャーですにゃ! 奴らに共通するのは、”自分と同じコア”を持つクリーチャーを呪文やクリーチャーの効果で選べなくさせるということ! そして、条件を満たすことで自分を呼び出したクリーチャーへ鎧として武装されることですにゃ!』
「まっずいわね……! レンもあいつにやられたんだわ!」
『これはまだ、敵の本領では無いのですにゃ! ステラアームド・クリーチャーは武装してからが、とても手強くなりますにゃ!』
「ねえ、教えて! 何があったの!?」

 コトハは問うた。


「あんたと、アクロガンドラーの間に何があったのよ!?」


 呻くような声を上げたニャンクスだったが、決意したような声で言った。


「奴を巡り、僕の故郷の王国の大地は----------------荒れ果て、不毛の死の地になってしまったのですにゃ」


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