二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ D・ステラ 【侵略世界編】
日時: 2017/01/16 20:03
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

【読者の皆様へ】
はい、どうも。二次版でお馴染み(?)となっているタクと申します。今回の小説は前作の”デュエル・マスターズ0・メモリー”の続編となっております。恐らく、こちらから読んだ方がより分かりやすいと思いますが、過去の文というだけあって拙いです。今も十分拙いですが。
今作は、前作とは違ってオリカを更にメインに見据えたストーリーとなっています。ストーリーも相も変わらず行き当たりばったりになるかもしれませんが、応援よろしくお願いします。

また、最近デュエマvaultというサイトに出没します。Likaonというハンドルネームで活動しているので、作者と対戦をしたい方はお気軽にどうぞ。


”新たなるデュエル、駆け抜けろ新時代! そして、超古代の系譜が目覚めるとき、デュエマは新たな次元へ!”



『星の英雄編』


 第一章:月下転生

Act0:プロローグとモノローグ
>>01
Act1:月と太陽
>>04 >>05 >>06
Act2:対価と取引
>>07
Act3:焦燥と制限時間
>>08 >>10
Act4:月英雄と尾英雄
>>13
Act5:決闘と駆け引き
>>14 >>15 >>18
Act6:九尾と憎悪
>>19 >>21
Act7:暁の光と幻の炎
>>22 >>23
Act8:九尾と玉兎
>>25

 第二章:一角獣

Act1:デュエルは芸術か?
>>27 >>28 >>29
Act2:狩猟者は皮肉か?
>>30 >>31 >>32 >>33
Act3:龍は何度連鎖するか?
>>36 >>37
Act4:一角獣は女好きか?
>>38 >>39 >>41 >>42 >>43 >>44 >>45
Act5:龍は死して尚生き続けるか?
>>48

 第三章:骸骨龍

Act1:接触・アヴィオール
>>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55
Act2:追憶・白陽/療養・クレセント
>>56 >>57
Act3:疾走・トラックチェイス
>>66
Act4:怨炎・アヴィオール
>>67 >>68
Act5:武装・星の力
>>69 >>70
Act6:接近・次なる影
>>73

 第四章:長靴を履いた猫

Act1:記憶×触発
>>74 >>75 >>76 >>77
Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解
>>78 >>79 >>80
Act3:捨て猫×少女=飼い猫?
>>81 >>82
Act4:リターン・オブ・サバイバー
>>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90
Act5:格の差
>>91 >>92 >>93 >>104
Act6:二つの解
>>107 >>108 >>109 >>110
Act7:大地を潤す者=大地を荒らす者
>>111 >>112 >>113
Act8:結末=QED
>>114

 第五章:英雄集結

Act1:星の下で
>>117 >>118 >>119
Act2:レンの傷跡
>>127 >>128 >>129
Act3:警戒
>>130 >>131 >>132
Act4:策略
>>134 >>135
Act5:強襲
>>136
Act6:破滅の戦略
>>137 >>138 >>143
Act7:不死鳥の秘技
>>144 >>145 >>146
Act8:痛み分け、そして反撃へ
>>147
Act9:fire fly
>>177 >>178 >>179 >>180 >>181
Act10:決戦へ
>>182 >>184 >>185 >>187
Act11:暁の太陽に勝利を望む
>>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>193 >>194 >>195
Act12:真相
>>196 >>198
Act13:武装・地獄の黒龍
>>200 >>201 >>202 >>203
Act14:近づく星
>>204


『列島予選編』


 第六章:革命への道筋

Act0:侵攻する略奪者
>>207
Act1:鎧龍サマートーナメント
>>208 >>209
Act2:開幕
>>215 >>217 >>218
Act3:特訓
>>219 >>220 >>221
Act4:休息
>>222 >>223
Act5:対決・一角獣対玉兎
>>224 >>226
Act6:最後の夜
>>228 >>229
Act7:鎧龍頂上決戦

Part1:無法の盾刃
>>230 >>231 >>232 >>233 >>234 >>235 >>236 >>239
Part2:ダイチの支配者、再び
>>240 >>241 >>242 >>243 >>244 >>245 >>246 >>247 >>248 >>250
Part3:燃える革命
>>252 >>253 >>254 >>255 >>256
Part4:轟く侵略
>>257 >>258 >>259 >>260 >>261

Act8:次なる舞台へ
>>262


 第七章:世界への切符

Act1:紡ぐ言の葉
>>263 >>264 >>265 >>266 >>267 >>268 >>270
Act2:暁ヒナタという少年
>>272 >>273
Act3:ヒナとナナ
>>275 >>276 >>277 >>278 >>279 >>280 >>281
Act4:誓いのサングラス
>>282 >>283 >>284 >>285
Act5:天王/魔王VS超戦/地獄
>>286 >>287 >>295 >>296 >>297 >>298 >>301 >>302 >>303 >>304 >>305
Act6:伝説/閃龍VS獅子/必勝
>>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>323
Act7:青天霹靂
>>325 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>331
Act8:揺らぐ言の葉
>>332 >>333 >>334 >>335 >>336
Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神
>>337 >>338 >>339 >>340 >>341 >>342 >>343
Act10:伝える言の葉
>>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351
Act11:連鎖反応
>>352


『侵略世界編』


 第八章:束の間の日常

Act1:揺らめく影
>>353 >>354 >>359 >>360 >>361 >>362
Act2:疑惑
>>363 >>364
Act3:ニューヨークからの来訪者
>>367 >>368 >>369 >>370 >>371
Act4:躙られた思い
>>374 >>375 >>376 >>377
Act5:貴方の為に
>>378 >>379 >>380 >>381 >>384 >>386
Act6:ディストーション 〜歪な戦慄〜
>>387 >>388 >>389
Act7:武装・天命の騎士
>>390 >>391
Act8:冥獣の思惑
>>392
Act9:終演、そして——
>>393


 第九章:侵略の一手

Act0:開幕、D・ステラ
>>396
Act1:ウィザード
>>397 >>398
Act2:ギャンブル・パーティー
>>399 >>400 >>401
Act3:再燃 
>>402 >>403 >>404
Act4:奇天烈の侵略者
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>411
Act5:確率の支配者
>>412 >>413
Act6:不滅の銀河
>>414 >>415
Act7:開始地点
>>416


 第十章:剣と刃

Act1:漆黒近衛隊(エボニーロイヤル)
>>423 >>424
Act2:シャノン
>>425 >>426
Act3:賢王の邪悪龍
>>427 >>428 >>429
Act4:増殖
>>430 >>431 >>435 >>436 >>438 >>439 >>440 >>441 >>442
Act5:封じられし栄冠
>>444


短編:本編のシリアスさに疲れたらこちらで口直し。ギャグ中心なので存分に笑ってくださいませ。
また、時系列を明記したので、これらの章を読んでから閲覧することをお勧めします。

短編1:そして伝説へ……行けるの、これ
時系列:第一章の後
>>62 >>63 >>64 >>65

短編2:てめーが不幸なのは義務であって
時系列:第三章の後
>>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103

短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル)
時系列:第四章の後
>>120 >>121 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126

短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日
時系列:第四章の後
>>149 >>150 >>153 >>154 >>155 >>156

短編5:恋情パラレル
時系列:第四章の後
>>157 >>158 >>159 >>160 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>173 >>174 >>175 >>176

短編6:Re・探偵パラレル
時系列:平行世界
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422

エイプリルフール2016
>>299 >>300

謹賀新年2017
>>443


登場人物
>>9
※ネタバレ注意。更新されている回を全部読んでからみることをお勧めします

オリジナルカード紹介
(1)>>96 (2)>>271
※ネタバレ注意につき、各章を読み終わってから閲覧することをお勧めします。

お知らせ
16/8/28:オリカ紹介2更新

Re: デュエル・マスターズ D・ステラ 〜星々の系譜〜  ( No.61 )
日時: 2014/11/12 20:21
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

モノクロさん

コメントありがとうございます。
とりあえず、指摘されていた箇所は上手い具合に修正しておきました。例えば、《ブラッディ・メアリー》を《ブラッドレイン》に差し替えたり、などですね。
後、間違った表記なども同じく修正しておきました。
もう一度読み返してまたミスなどがあれば、どうぞ。

オリカ、というだけあってかなりスペックは高くしたんですよ。必殺技とも言える呪文なので。普通にあったら殿堂入りもんですね、これ。
ちなみに、これらの超技呪文のマナ武装ですが、法則は実は無いんですね。特に《ムーンサルトスタンプ》は仮にもリアニメイト能力なので意図的に重くしました。あ、でもやっぱマナ武装は7にしておこうかな、どうしよう……。
残りの判明していない超技呪文や、そもそも超技呪文とは何なのか、というのもこれからの劇中で判明させていく次第です。

書いてて割とありきかなー、とは思ったのですがね、白陽とクレセントの話は。また、同じ世界にいたクリーチャーは仰せの通り、3組です。まだ登場していないクリーチャーは2体いますが、果たしてどのような関係になるのか。
白陽とクレセントの世界は和風の世界ということで間違いは無いですが、実は他の世界にもいる種族、例えばアーマード・ドラゴンやサイバーロードといったクリーチャーの勢力もあるわけです。しかし、九尾や玉兎の方が力を持っているため、彼らに技術提供をしていたわけですね。クレセントの名前が横文字なのも、玉兎がそれらを広く受け入れた影響です。

一応、過去のエキスパンションとかも調べているんですね。白陽が呪術的、クレセントがパワーファイター、アヴィオールがやたら知的、ハーシェルも光文明にしては攻撃的にしたつもりだったんですよ。自分のシールドを自ら削るハイリスクハイリターンな戦法から。

メソロギィとかでも、人物とクリーチャーの関係を掘り下げるような展開がこれから欲しいところですね。

あ、あとヒナタの最後の発言ですか。あー、あれですかー……いや、本当何か思って書いた訳じゃないんですよ、はい。太陽よりも大きな星のような存在になりたい、と解釈していただければ。

というわけで次回からもどんどん更新していきたい所存です……と言いたいところですが、その前に短編を1つあげたいところですね。参照1000突破記念と言う事で。それでは、また。

短編1:そして伝説へ……行けるの、これ ( No.62 )
日時: 2015/07/05 12:06
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

「というわけだ、我が社で開発した最新バーチャルゲームのモルモット……じゃなかったモニターになってもらいたいわけだ」

 目の前にいるいかにも夜寝てなさそーな隈にバリッバリに立たせた銀髪、んでもって睨み付けるような目つきの男はそう言った。
 デュエマ界では屍鬼(グール)とも名高いこの少年は、暁ヒナタと十六夜ノゾムの両名をわざわざ自分のビルに呼んでその研究室に案内したのは、以上の理由があったわけである。

「先輩、この人怖いっす」
「黙ってろ、ノゾム。黙ってれば何もされないんだ」
「おいおめーら、俺のことを悪鬼か何かと勘違いしていないか?」

 というのもこの男、名は武闘フジといい、ボンボンの偉いところの息子である。ものっそい大金持ちである。親父が鎧龍の理事長をやっていて自身もその学校の4回生というだけならばまだ良いが、度々このように彼らを呼び寄せて自社の発明品のモニター、いや本当にモルモットにしてくるものだから、当事者にとっては堪ったものではないのである。ノゾムはここに来るのは初めてだったが。
 本当不運だった。まさかこの人に2人一緒に捕まってしまうとは。
 「パフェ、食う?」なんて言った時点でおかしいと思ったのだ。
 案の定、パフェなど二の三の次、このバーチャルゲームのモニターにされるため、連れてこられたのである。
 ここ、武闘ビルに。武闘財閥の本社があるビルに。

「ヒナタ先輩から度々話は聞いてるっす! すばらしい先輩だって!」
「良いんだぞ? そんなガチガチに緊張して俺の機嫌取ろうとしなくっても」

 ---------何だよこの人、オレの感情が全部筒抜け!?
 ノゾムは驚きを覚えた。父親の商いを見てきたフジはいつの間にか、とんでもない洞察力、そして人間観察力を手に入れたのだった。
 さて、断れない理由としては、ヒナタは度々彼にはお世話になっていること、そして何よりも彼自身も生きたクリーチャーの使い手であり、数年前にここ、海戸で起こった事件を仲間と共に解決したからである。もし断ろうものならば、彼の相棒である《「武」の頂 マキシマム・ザ・マックス》のヒジキ、じゃなかった餌食になるだろう。
 いや、マキシマム・ザ・マックスからすれば、フジ以外の人間の子供などヒジキ程度だろうが。
 
「つーわけだ、今日のお前らはモニター……じゃなかったモルモットだ。覚悟しとけや」
「いや、ね、先輩。今思いっきりモルモットって言いましたよね」
「ああん? ヒナタ、俺に文句あんのかコラ」
「サーセンした」

 そして先輩自身も滅茶苦茶腕っ節が強い。不良ぶってはいるが、頭も良い。
 以上のことから、彼らは渋々フジに従っているのだった。

「いいか、これはな。おめーらも楽しめるかなー、どーかなー、と思って連れてきたんだ。むしろ感謝しろ。最先端のゲームを今、ここで遊べるんだぞ」
「まあ、そうっすけど」
「んでもってだ、ヒナタ、ノゾム。”てめぇらの相棒も”持って来たろうな?」

 釘を刺すように言ったフジの言葉に、2人はカードを掲げて自身の相棒を繰り出した。

「ヒナタ。この男から物凄いクリーチャーの気配がするのだが」
「ちょ、ちょっと怖いかも」

 流石のクレセントと白陽も、フジとマキシマム・ザ・マックスの気迫に押されがちだった。

「紹介するよ、白陽。この人が武闘フジ先輩だ」
「ほら、クレセントも挨拶しろ」
「あ、ああ……」

 とは言ったものの、その迫力に気おされて、白陽もクレセントも挨拶の声など出てこない。

「まあ堅苦しい挨拶なんざ別にどうでもいいんだ」
「社長の息子がとんでもねえこと言っちゃったよ」
「とにかく俺はハードの説明をしたい」

 と、フジは部屋の中央にあるモニターとそれを囲むようにおかれた4つの椅子、そしてメインコンピュータを指差して言った。

「この最新バーチャルハード、”WRYYY!”は何と自分がゲームの中に入ったかのように楽しめるゲームの完成系だ」
「”WRYYY!”ってどんなネーミングですか。どこの吸血鬼ですか。Wiiみたいに言わないで下さい。血ィ吸われるんすか俺ら」
「良い意見だ、ヒナタ。名前は後で”WRYYY、You!”に変えておく」
「全然変わってねえよ! WiiUをパクんなよ! 悪い意味でバージョンアップしてるよ!!」

 思わずまたもやタメ口で突っ込んでしまった。幸い、ボケ気質のフジはこれしきのことでは怒らないからまだ良いが。
 
「わかったよ、もういいや。名前はとりあえず”WRYYY!”で確定しておくとして」
「確定するんすか」
「肝心のソフトだ。その名は----------」

 どこからか持ってきた巨大なキャンバスに掛かった幕を引っ張った後、フジは叫んだ。
 そこにはでかでかとタイトルが書いてあった。

「”キング・デストロイ・クリムゾン”だぁー!!」

 ----------ア、アウトォーッ!!
 ヒナタとノゾムは心の中で盛大に突っ込んだ。いよいよアカン方向に突っ込んでしまっている先輩に。

「フジ先輩、どこのデ○クリムゾンですか!! クソゲーの予感しかしないですよ!」
「武闘先輩、どこのディア○ロっすか!! ゴールドなエクスペリエンスなレクイエムに倒される未来しか浮かびませんよ!」
「デ○アボロ? デスク○ムゾン? 知らんな、無駄無駄無駄ァ!!」
「心は既に第五部だよ!! つーかこのネタ分かる人どれだけいるの!?」
「ちなみにキャッチフレーズは”上から来るぞ、気をつけろ”」
「心は既に○スクリムゾンだよ!! ていうかこのゲーム知ってる人どれだけいるの!?」

 うるせーな、もう、とフジは言うとヘルメットらしきものを4つ抱えてやってきた。

「というわけだ、駆け足のようだが早速このヘルメットを付けてもらう。これを被ってそこの椅子に座ってくれ」

 仕方なく白陽とクレセント含んだ4人は席に座る。
 もはや、完全にモルモットである。
 だが仕方が無い。早くしないとフジが切れそうで怖いのだ。

「あれ? これナチュラルに私たちも参加している感じか?」
「いーじゃん、白陽! あたしは白陽と一緒ならどこにでも付いていくよ!」
「こんなときまでラブラブすんのか、てめーらの相棒は」

 と、非リアの一員であるフジはヒナタとノゾムに白い視線を送った。

「内容は普通のRPGだ、安心しろ。後はゲームの中で教える。まずは、この催眠装置を起動させて……グッドラック」
「え、ちょ、おま、フジせんぱ」

 まだヘルメットを被って間もないというのに、何を言ってるんだ、この先輩は、と文句を言わせてくれるわけも無く。

「あ、ついでにさー」

 衝撃的だったのはフジの次の言葉である。


「お前ら、このゲームクリアするまで帰ってこられないからね?

 -------は?
 がんばってねー、という声が聞こえる。
 嵌められた、という言葉が全員の脳みそを過ぎった。
 -------はぁぁぁ!?
 ヒナタ達4人の意識は闇に落ちていったのだった。

短編1:そして伝説へ……行けるの、これ ( No.63 )
日時: 2014/11/14 21:30
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

 ***
 
 (1)ピロロローン、勇者は目が覚めた。

 1.とりあえず手ェ洗うか→(2)へ
 
 2.とりあえず歯ァ磨くか→(3)へ

 3.とりあえず二度寝だぜ→(5)へ

 
 (2)手洗い場にやってきた。あ、石鹸が無い

 1.とりあえず水だけでも良いよね(5)へ
 
 2.とりあえず買いに行くかな(4)へ


 (3)洗面所にやってきた。あ、歯磨き粉がない。

 1.とりあえずそのままでも良いよね(5)へ
 2.とりあえず買いに行くかな(4)へ

 
 (4)オカンに足りないものを買いに行くと伝えた。

オカン「まあ、朝から買い物? 気をつけてね、コンビニは北の洞窟を越えた先にあるから」
 (6)へ


 (5)残念、君に冒険を続ける資格は無い、GAMEOVER

 
 (6)北の洞窟へやってきた。何と、ボーンスライムが襲い掛かってきた!
 
 攻撃(7)へ
 防御(8)へ
 逃走(9)へ


「ストップ、ストップ、ストォォォーップ!!」

 と、目覚めたヒナタの第一声はこれだった。今時のティーンズは知らないのではないだろうか、ゲームブック。あ、でもよく小学生ころ、図書館に古いけどそんなかんじの本があったなー、懐かしいなー、と感傷に浸る作者。
 実は案外知ってる人も居る感じ?

「何でゲームブック形式!? 読者の皆様にもゲームを味わって貰おうって腹!? この小説の対象年齢の中学生、これ知ってるの!?」
『ツッコムな。俺様からのありがたぁぁぁーっい、アレってやつだ』
「アレって何!?」

 天の声のつもりか、聞こえてきたのは主犯・武闘フジの声だった。
 はっきり言って、ここで出てきたが100万年目、文句の1つ言ってやろうかと思ったが、今彼に機嫌を損ねられてゲームの情報を教えて貰えないのも困る。ヒナタは仕方なく口をそこで噤んだ。

『あらすじだよ。これからお前がすべきことを簡潔に述べた。ゲームブック形式で』
「まさかコンビニまで石鹸と歯磨き粉買いに行くのが目的なのか、このゲーム!! しかも今のゲームブック、ものっそい完成度が低いと見た!!」
『そしてこのゲーム、”キング・デストロイ・クリムゾン”はカオスを全面的に押し出した最高のゲームだ』
「わざわざ押し出していくスタイル!?」
『シナリオを考案したのもこの俺だ。ちなみにシナリオは、この先多くの試練を乗り越えていき、最終的には主人公が世界を揺るがす魔王と戦うというものだ』
「そりゃそうだよね!? 何で北の洞窟の先にコンビニがあるんだよ、おかしいでしょ! つーか無駄に壮大なんすよ!!」
『β版だからだ』
「そういう問題じゃないでしょうが!!」
『とりあえず、家から出ろ。話はそっからだ-------』

 ぷつん、とそこで声は途切れた。仕方がねえな、と言わんばかりに自室を出ることにするヒナタ。
 まあ良いか、とりあえず出よう---------とノブに手をかけて回し、部屋を出た。
 そこにはあたり一面に広がるダンジョン。鍾乳石に《ボーン・スライム》などのクリーチャー。さっきも出てきたけど、こんなところでデュエマっぽさ出すとかどうかしてんの? と思い、一度戸を閉めた。

「……」

 もう一度あけた。そこには、あたり一面広がるダンジョン---------

「いやいやいやおかしい! 自室を出た瞬間ダンジョンってどういうことよ!! 最初っから試練ってことかよ!!」
『ああ、そうだ。部屋から出た瞬間、ダンジョンって燃えるだろう?』
「燃えませんよ! むしろ冷や汗たらたらだよ!」
『ちなみに今のお前の装備はパジャマと武器の丸めた漫画本だ。生身で戦ったら死ぬぞ』
「ちょ、ちょぉー!? 何この鬼畜使用!?」

 これでどうやって戦えという話である。とりあえず、武器屋に行く前に死にそうな勢い。どこをどうしたら自宅がこうなるのか。軽く実家がモンスターだらけである。
 こんな世界を行きぬけというフジは鬼か悪魔か。
 とヒナタが嘆いたそのときだった。

『安心しろ、お前には召喚獣を呼び出す能力が備わっている』

 フジは、くくっ、と含み笑いをした。召喚獣--------と、ヒナタが考えていると、1つ思いつくものが。
 そうだ、白陽だ。白陽がもしかしたら呼び出せるかもしれないのだ。ペルソナみたいに。またはスタンドみたいに。

「何なら簡単だ、いくぜ召喚獣ーッ!!」

 再び扉を蹴っ飛ばし、ダンジョンに踏み出して早2秒。
 早速召喚獣を呼び出さんとばかりに手を上に突き出すヒナタ。
 しかし、何も出てこない。気づいたら、目の前に変なものが。

『コマンド?
▼攻撃
 防御
 召喚
 逃走』

「ってそっちかい!!」

 まさかの手動コマンド操作になろうとは思いもしなかった。しかも、この▼。動かすのがすごく面倒くさいのである。重いし固い。動かない。
 そうこうしている間に《蠢く者 ボーン・スライム》が奇声を上げて襲い掛かってくる。世間で知られるスライムとは程遠い気持ち悪い姿。これ、家庭用ゲームで出さないほうが良いよね、と思ったヒナタだった。
 危機一髪のところで▼を”召喚”のコマンドに合わせた。

「くそっ、今度こそ出て来い召喚獣ゥーッ!!」

 ヒナタの拳が赤く光り、そして目の前に魔方陣が現れる。
 そこから現れたのは-------------

「……どもっす」

 ---------見たことも無いおっさんだった。
 作業着着て眼鏡掛けたただのおっさんだった。
 
「何だこれ」
『主人公Aタイプの初期召喚獣:ただのおっさん、だ。』
「いらねえよ、こんなの!! ファンタジーの欠片もないよ!!」
『ちなみに白陽はレベル7で召喚できるようになる。今お前はレベル5だからもうチョイがんばれ』
「それまで、ただのおっさんでがんばれ、と!?」

 まあ、そういうことになるよな、じゃあねー、とフジの声が消えた。そして今にも首の頚動脈を掻っ切らんとばかりに飛び掛ってきたボーン・スライム。
 ああ、やばい、早速ゲームオーバーか!? と思ったそのときだった。

「おっさんパァーンチ!!」

 バキィィ、とおっさんの拳がボーン・スライムを直撃した。
 その様を見たヒナタは開いた口が塞がらない。

「おっさんキィーック!!」

 ガスッ

「おっさんファイナルボンバーッ!!」

 ドゴォーム。最後におっさんがボディプレスを決めてその戦いは終結した。ボーンスライムはそのまま、消えた。
 読者の皆様も何があったか分からないであろう。しかし今、確かにただのおっさんがクリーチャーをやっつけたのだ。

「また何かあったら、呼べよ、少年」

 野生のアナゴボイス(ブルァァァで有名な人)で一言残し、おっさんは油でテカる頭を向けて、そのまま去っていった。
 その様子をヒナタは最後まで、口をあけてみていた。

「……ぶっちゃけ、白陽いらないかも」

 油でテカる頭を後ろから見つめながら、彼はそう呟いたのだった。

短編1:そして伝説へ……行けるの、これ ( No.64 )
日時: 2014/11/15 14:41
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

 そのままおっさん無双で多くのクリーチャーを片付けたヒナタは、洗面所に行く頃にはレベルは7になっていた。

『ヒナタ レベル7
HP:43
MP:20
攻撃:1(プークスクス)
防御:1(テラワロスwwww)
カーソルの動かしやすさ:12(おっそ、マジとろいわ〜wwww)
装備
パジャマ
丸めた漫画本』

「とりあえず俺の能力がクソなのは分かったわ」

 生身で戦うな、と言っているのだろう。腹立つ。
 しかも何でステータス欄にコメントがわざわざ付いているのだろうか、腹が立つ。
 ちなみにカーソルの動かしやすさ=このゲームでの行動速度、らしい。もう突っ込むことすら疲れてきたヒナタであった。
 さて、洗面所にきたが、歯磨き粉がない。仕方が無いので北の洞窟越えてコンビニへ行くことが今の目的である。
 まずは外に出ねば、とヒナタは家の玄関の扉に手を掛けた---------
 
 ***

 外は普通のファンタジー風の街だった。中世風のそんな感じだ。それでこの世界観でコンビニとかどうかしているのではあるまいか。
 さて、人に話を聞いたところ、こんな話が出てきた。

「お前、まさかコンビニに行くのか!? やめておけ、命知らずにも程があるぜ」
「おいお前。コンビニに行くのならばやめておけ。死ぬぞ」
「コンビニ? あそこに行ったやつは誰一人生きて帰ってきていないって話だぜ」

 -----------って、どんだけぇー!? コンビニに行くまでの北の洞窟に何があるんだよ!?
 そんなシャウトは瞬く間に消えていったのだった。
 北の洞窟。北の洞窟に一体何があるのだろうか、と軽く戦慄を覚えるヒナタだった。
 -----------いや、これ最初のダンジョンだよな!?
 不安になってきたヒナタは、いよいよ呼び出せるようになった白陽を、今此処で呼び出すことにした。
 
「出て来い、白陽」

『コマンド?
▼攻撃
 防御
 召喚
 逃走』

「いや、もう良いんだよ、それは!!」

 いちいち出てくるコマンドに怒りを覚えながらも、”召喚”にカーソルを合わせる。
 ああ、もうクソゲーじゃないか、という諦めを覚えながら。
 そして白陽は案の定出てきた。ああ、よかった。あのおっさんが出てくるのはもう懲り懲りだ。

「おっ、出てきたな、白陽!」
「うむ……私は?」

 今、意識が目覚めたらしい白陽は瞼を擦って言った。だが、服装はいつもの陰陽師の服から一転、まるでドラクエの勇者のような格好だった。
 冒険服に銅の剣、そして盾。お前の方が主人公やってるんじゃないか、という勢いだった。

「何だ、この服は!!」
「この世界観に合わせたっぽいな。だけど、このゲームに世界観もクソもあんのか?」
「そうか……では、この格好ということは私が勇者でここに転生したという設定---------」
「いや、お前はただの召喚獣。転生して現世に復活したところまでは本編と同じだけど。つーか何で勇者の着てんだこいつ。召喚獣の癖に」

 白い目でヒナタは見ていた。 
 すると白陽は口を開く。

「そうか。だが、今の私は”覚悟”で満ち溢れている」
「何言ってんだこいつ」
「絶対にお前と元の世界に戻るからな!」
「とか言ってお前……」

 呆れた目でヒナタは白陽を睨み付ける。
 
「何だ、私はやましいことは1つも考えていないぞ?」
「クレセント可愛いクレセント可愛いクレセントマジ天使、ハァハァ、クレセントと脱出できるなら、こんなアホ置いていって良いや、つーか私ただの召喚獣とか無いわー、こんなアホの召使とか無いわー」

 突然、ヒナタは読み上げるように言葉を発した。
 白陽の顔が一気に青ざめていくのが分かった。

「ギクリ、なぜ私が考えていたことが分かるんだ」
「それに書いてあるからてめぇの思ってることなんざ全部筒抜けだってことだ」

 あ、と今更気づいたかのように足元を見下ろす白陽。そこには、よくある台詞が書いてある長方形のアレがあった。
 そこに白陽が考えていたことは全部書かれていたのだった。

『クレセント可愛い、クレセント可愛い、クレセントマジ天使、ハァハァ、つーかクレセントと脱出できるなら、こんなアホ置いていって良いや、つーか私ただの召喚獣とか無いわー、こんなアホの召使とか無いわー』

 とばっちり書いてある。

「ぎゃあああ!!」

 テキストボックスに書いてあった台詞が自分の考えていたことと一致していて、思わず悲鳴を上げる白陽。怒りに声を震わせるヒナタ。

「おいテメェ、こんなときにもクレセントのことばっかじゃねえか、何発情してんの、気持ち悪いんだよ、あーん?」
「ち、違う、私は無罪だ」

 とか言っておいて、よだれが垂れている白陽。

「つーか地味に俺のことも貶してるしよ?」
「違うんだー、私はいつも、そして今日もクレセントのことなんか1mmも考えて」
「いるじゃねえか、いっつものことじゃねえか、本編もう一回読み返すか、ゴルァ!!」

 今にもヒナタの聖拳気合パンチが白陽の腹に襲い掛かる一歩手前だった。

「ヒナタ先輩ーッ!」

 と、バイオレンスの1秒前、そこで声が聞こえた。それも聞き覚えのある声だ。
 振り向けば、そこには既に戦士のような姿に着替えたノゾムの姿が。

「お、ノゾム! 無事だったか」
「このゲーム、マジでやばいっすよ先輩! 朝起きてすぐにモンスターに追いかけられるハメに」
「あー、お前は起きた場所が既にダンジョンだったのね」

 はは、と苦笑いで返すノゾム。よくゲームオーバーにならなかったものである。

「クレセントがいたんで、助かりましたよ」

 すると、素早い動作でカーソルを”召喚”に合わせて、魔方陣を呼び込んだノゾム。しかし、その動作は一貫しており、ヒナタのようにのろのろしていない。
 その手馴れた様子に少々驚くヒナタ。

「いや、何でそんなに手馴れてんの、ノゾム」
「レベル上げってやつですよ、はは。カーソル動かしやすいです」
「レベル上げ!? お前もしかしてエンジョイしてないか、この状況!!」

 と言う間もなく、クレセントが現れた。

「マジカルマジカル〜、宇宙一可愛い魔法少女のクレセントちゃんの登場〜!」

 台詞、服装、共に魔法少女になっていたが。何かフリルがついたドレスに三角帽子、そして杖とか完全にあれである。

「ノゾム、どうしたんだコレ」
「えーとですね、ダンジョン(自宅)の途中に『僕と契約して魔法少女になってよ』とか言ってきたやつが居たんで」
「それアカン奴や」

 完全にその台詞に覚えがある。どこまでカオスを追求したら気が済むんだ。

「でも、オレ男ですからねー、だからクレセントを魔法少女にしてあげたんですよ。必殺技は
『もう何も怖くない(クレセント・フィナーレ)』」
「使った直後に頭を食われて死にそうな必殺技だよ。つーか何その中二病丸出しのルビの振り方」

 と、ふと横を向いてみれば、クレセントと白陽が話していた。
 
「ねえねえ、白陽? これ可愛い?」
「ああ、最高だ……可愛いよ」

『クレセントは白陽を誘惑している! 白陽はどうする?
1.押し倒す
2.抱きつく
3.そのままお持ち帰り』

「クレセント、ちょっと良いか?」

 と白陽が彼女に迫ったそのときだった。

「アウトォーッ!!」

 バキィ、と今度こそヒナタのハイキックが彼の脳天を叩き割らんとばかりに炸裂した。
 痛みに悶絶して地面で転げまわる白陽。呆れた目を向けるヒナタ。

「てめぇ、この超健全小説で何するつもりだった? 4つ目の選択肢は俺にボコられるってことでいいな」
「いや、そ、それは。私はやましいことなんか1つも」
「じゃあさっきの選択肢は何だぁー!!」 

 痛い痛い痛い、ぎゃぁぁぁ、と馬鹿狐の断末魔が響き、その場は静かになった。
 とまあ、こんな感じで4人は揃ったのだった。
 かなり不安が残るパーティではあったが。

短編1:そして伝説へ……行けるの、これ ( No.65 )
日時: 2014/11/24 17:07
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sPkhB5U0)

「良いか、俺たちはパーティだ。協力してこのダンジョンを進もう、ブルブル」
「実際は2人しか居ませんけど。つーかびびりすぎですよ」

 北の洞窟を進むヒナタとノゾム。しかしヒナタの方はさっきからこの肌寒さに少々不気味さを感じていた。
 すると、こつん、とヒナタは何かが足に当たったことに気づく。
 見てみれば---------「ぎゃあああ」と驚き、腰を抜かした。骸骨だ。それも白骨化しており、倒れている。
 すると、他にも声が聞こえた。
 見てみれば、立ち入り禁止のロープを張る警官、周辺の岩に白い粉を塗して指紋を調べている青帽子の鑑識の姿。
 そして中年太りした山高帽子の男とスーツの痩せ型の男が話をしていた。

「マグレ警部、我々はとんでもない思い違いをしていたようです」
「成る程、青酸カリで毒殺か、カタギ君!」

 ---------って、このゲームのジャンル何ィ!?
 明らかに前作の短編から持ってきたとしか思えない2人の男。
 ---------名探偵何ナンだよこれは! つーか今までの流れで明らかにモンスターの仕業だろ!? つーか白骨化してたら青酸カリ毒殺って分かるもんなの!?
 すると、コマンドが出てきた。

『ばしょいどう
 ひとにきけ
 ひと しらべろ
 なにかみせろ
 ひとさがせ
 よべ
 たいほしろ
ノゾム「先輩、どうしますか?」』

「っていきなりコマンドのタイプ変わったよ、何トピア連続殺人だよ!!」
「うるさいですね せんぱい」
「てめーまで台詞をファミコンスペックに落とさなくて良いんだよ!!」

 いつもはボケているヒナタだが、このゲームのやりたい放題っぷりに付いていけないようだった。
 すると、カタギが声を上げた。
 ヒナタ達も気になって振り向き、カタギの言葉に耳を寄せた。
 
「警部! 被害者の衣服からこんなものが!」
「何!? 『犯人はヤス』だと」
「おそらく、彼を取り調べれば万事解決でしょう!」

 ---------ネタバレしちゃったよ!! つーか、ヤスって誰だよ!!
 アホみたいな展開に付いていけない。どこまでパロディ元に忠実にするつもりなのだろうか。
 すると、再びカタギが声を上げた。
 
「警部! 被害者のスマホからこんなメッセージが!」

 スマホ、と聞いてヒナタ達は今度こそ、と思って聞き耳を立てる。
 もしかしたら有力な情報が得られるかもしれない、と。

「何!? 『犯人はヤス』だと」
「おそらく、彼を取り調べれば万事解決でしょう!」

 ---------何回繰り返すんだよ、このやりとり!!
 好い加減、飽きてきた。とっとと通ってコンビニへ行こうとヒナタとノゾムはそこを通り過ぎようとした。
 と、再三カタギが声を上げる。
 またヤスか、と諦めてスルーしたそのときだった。

「警部! 被害者のネックレスからこんな手紙が!」
「何!? 『犯人はヤス』だと」

 ずっこけた。3度目は変化球で来るかと思っていたが、まさか違ったとは。
 本当に真直線でくるな、と思った。
 と、そこで4度目のカタギ刑事の台詞が。

「警部! 被害者のズボンからこんな手紙が!」
「何!? 『フライゴンのメガシンカまだ?』だと」
「……」

 ---------いらねえよ、そのメッセージも!! 
 此処で今更くるか、変化球。
 そして、刑事は未だに黙ったままだった。

「……」

 ---------つーかお前も何か返事を返してやれよ!! 哀れすぎて泣けてくるよ!
 突っ込み疲れたヒナタは地面にへたり込む。すると、マグレ警部が駆け寄ってきた。

「モリ君、君は此処で何をやっているのだね!」
「いや、モリ君じゃないんですけど俺」
「そういえば、顔の形が大分違うような……」
「いや気づけよ!」
「それはともかく、一般人は立ち入り禁止だ!」

 あ、やべ、とヒナタは後ずさろうとした。今此処で事情を聞かれるのは、はっきり言って時間の無駄である。
 と、思って逃げようとしたそのときだった。

『ギッシャアアアア!!』

 声が聞こえた。それも、化物の声だ。
 警官達が逃げ惑っていく。そして声の主が姿を現した。

「《深淵の悪魔龍 バセオアビス》、か」

 蠢く何かを思わせるような風貌、混沌と邪悪に満ちた根源の姿だった。

「てめぇか、こいつらを殺したのは!」
『ギャハハハハ、そのとーりぃ! だってさ、台本にそう書いてあるし。つーかこの骸骨、俺に殺されたって設定の置物だし』
「って、それ言っちゃダメだろ!?」

 この多くの白骨死体と町の人の声。やはり、洞窟の奥に居たこいつの仕業としか思えない……ということにしておこう。
 
「警部、私たちはとんでもない思い違いをしていたようです」

 カタギの言葉で、ようやくマグレ警部は自らの過ちと判断ミスに気づいたようだった。
 そして、大して重くはない口をゆっくりと開いた。

「……成る程、青酸カリで毒殺かカタギ君!」
「好い加減アンタは青酸カリから離れろォー!」

 叫んだのはヒナタではなく、カタギ刑事だった。
 やっぱりNPCは学習しなかった。AIの学習機能が欠けてるのではないだろうか。
 もういい、こうなったらノゾムと一緒に戦うまでだ。

「いくぞ! ノゾム!」
「了解ッス、先輩!」

 互いに魔方陣を展開し、バセオアビスに向かってそれぞれの相棒を繰り出した。

「いくぜ、白陽!」
「出て来い、闇よ世界を覆いつくせ、魔界から現れし漆黒のドラゴンよ、その姿を今此処に! 暗黒の龍王 バハムート!」
「……は? 今、何ハムって言っ----------」

 とりあえず、俊殺はおろかコンマ秒殺だった。ノゾムが召喚したと思われる暗黒の龍王 バハムートによって吐かれたブレスはバセオアビスを跡形も無く消し去ったのだった。
 無論、白陽の出る幕など無く。

「……ノゾム、今お前レベルどんだけ?」
「へ? 90っすけど?」
「はぁぁぁ!?」
「クレセントがー、クレセントと戦えるという私の幻想がー」
「お前黙れ」

 と、そのときだった。ドット状に欠けた場所から、穴が出来る。

『あ、やべ。バグったっぽい』

 フジの声が久々に聞こえる。今の騒ぎでどうやらバグったらしかった。

『おい、ノゾム。お前があんなにレベル上げなんかすっからじゃねえか。バグってワープゲート出現しちゃったよ。まあ良い。その先は魔王の城だ。時間短縮だと思って早よ入れや』
「え、マジっすか!?」

 はっきり言って、普段ならばいきなり魔王の城に行くのは危険だが、今はノゾムがいる。
 これならば、すぐに現実世界に帰還できるかもしれない。

『更に言えば、そのワープゲート。魔王の部屋の入り口に続いているらしい』
「マジっすか、よし入るぞ、ノゾム!」

 ヒナタがノゾムの手を引っ張ったそのときだった。
 
「嫌です」
「え?」
「そんな楽してゲームに勝って、先輩は楽しいんですか?」
「ちょ、おま」

 それ、人のこと言えないよね! と突っ込む間もなく。

「そんなの……ジェンガを積み上げるよりも簡単じゃないですか!」
「や、だから落ち着けってば」
「バハムート! ついでにそのワープゲートも壊しちまえ!」

 あくまでもゲームを楽しもうとするノゾムはバハムートに命じて在ろうことか、ワープゲートの破壊という暴挙に出た。
 此処まで来れば、もう誰も彼を止められやしないだろう。
 ここで死ぬくらいなら、ワープゲートなんかくれてやる、とヒナタは間一髪、バハムートが放ったブレスを避けたのだった-----------

 ***

 私は魔王。名前はまだ無い。β版だからだ。勇気ある冒険者が、幾多もの困難に立ち向かい、我が元に来るのを楽しみにしている。
 多くの冒険者が私の元にやってきた。
 しかし、誰としてこの私に勝てたものはいない。誰か! 誰か私の餓えを止めてくれ! 
 強者は、強者はいないのか!
 今まで、魔物に囲まれて豊かな生活を送ってきた。しかし、私の餓えは今まで一度も満たされたことは無いのだ。
 それが私の唯一の悩みだ。
 ついでに中学生の頃に告白したらフラれたのがきっかけで女性が苦手になってしまったのも悩みだ。

 ***

「なあ、ノゾム。バハムートのブレス、おもくそワープホールに吸い込まれていったけど」

 ワープホールは壊れなかった。それどころか、バハムートの炎の吐息を吸い込んでしまったのだった。
 これ、魔王死んだかなー、と思った。
 ノゾムの目が死んでいた。

「……」
「だ、だけどよ! これは俺たちの人生懸かっていたんだから!」

 すると、フジの声が聞こえた。

『ざんねーん、魔王は死んでません』

 え、と2人の間に衝撃が走った。もうこの人から青酸カリで毒殺してやろうか、と一瞬浮かんだ。
 しかし、フジの言葉が続いた。

『でも、魔王は失墜しました』
「え?」

 2人の間に疑問が走る。

『何であれ、これでゲームクリアーだ。良かったな元の世界に出してやるぞ。パフェもたっぷりおごろう』
「いや、でも-------何で」
『良いから、エンディング流すぞー』

 ポチッ、という音と共に2人は映し出された映像に見入った。とりあえず、ようやくこれで元の世界に戻れる喜びをヒナタは噛み締めていた。
 そして、しばらくして--------意識が現実に戻ったヒナタ達は無事に帰還できたのだった。

 ***

 そして私にはもう1つ、たった今できた悩みがある。何だよ、悩み1つじゃねえのかよ、と突っ込まないでほしい。魔王にだって悩みは10個くらいはある。うそつき、とか言ったって私魔王だし。悪の根源だし。
 さて、好い加減言おう。コレの所為で私は涙が止まらない。
 さっき、いきなりドラゴンの炎ブレス的な何かが飛んできたのだが魔王は生憎俊敏だ。そんなものすんでのところで避けた。しかし、大きな代償を残してしまった。何か。それは------------焼けて頭が丸々ハゲたことだ。

                               (完)

***

「つーわけで、魔王が失墜した理由は”ハゲたから”だ」
「じゃねえでしょう!! どんだけ豆腐メンタルなんだよ魔王!!」

 元の世界に戻ったヒナタは絶叫した。ここは武闘ビルの研究ルームだ。
 まあ、まあ、とフジが嗜める。

『コマンド?
▼パフェをおごってもらう
 フジ先輩を称える
 フジ先輩を賛美する』

 ここで遂に全員の怒りが爆発した。
 かぽっ、とフジの頭に例のヘルメットを被せる。コードが繋がっている範囲ならば、椅子に座っていなくてもバーチャル空間に入れることができるのだ。
 電源スイッチを再び押した。

「ちょ、おまあああーっ!!」

 フジが絶叫した。そして、その声は聞こえなくなった。
 ゲームの中でマップに放り出されたフジが画面から叫ぶ。

『てめぇら……! 俺がこのゲーム作ったんだぞ! とっととクリアして』
「先輩。人がゲームにもぐってる状態で主電源OFFにしたらどうなるんすか?」
『え? そりゃ中の人が閉じ込められ--------』

 ぎゃあああ

 最後に断末魔を残し、しばらくフジはゲームの中に眠ったまま封印されることになったのだった。
 残念、フジの冒険はここでストップしてしまった。GAMEOVER

「さあ、帰ろうぜ」
「先輩! パフェおごりますよ!」
「すまねえな。うお、もう6時かよ!」
「はくようー! だいすきー!」
「うわ、此処で抱きつくな、恥ずかしい」

 今日もまた、社会のアホを処理し、ヒナタ達は帰り道へ進むのだった。


余談:ちゃんとこの後フジは助かりました。


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