二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ D・ステラ 【侵略世界編】
日時: 2017/01/16 20:03
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

【読者の皆様へ】
はい、どうも。二次版でお馴染み(?)となっているタクと申します。今回の小説は前作の”デュエル・マスターズ0・メモリー”の続編となっております。恐らく、こちらから読んだ方がより分かりやすいと思いますが、過去の文というだけあって拙いです。今も十分拙いですが。
今作は、前作とは違ってオリカを更にメインに見据えたストーリーとなっています。ストーリーも相も変わらず行き当たりばったりになるかもしれませんが、応援よろしくお願いします。

また、最近デュエマvaultというサイトに出没します。Likaonというハンドルネームで活動しているので、作者と対戦をしたい方はお気軽にどうぞ。


”新たなるデュエル、駆け抜けろ新時代! そして、超古代の系譜が目覚めるとき、デュエマは新たな次元へ!”



『星の英雄編』


 第一章:月下転生

Act0:プロローグとモノローグ
>>01
Act1:月と太陽
>>04 >>05 >>06
Act2:対価と取引
>>07
Act3:焦燥と制限時間
>>08 >>10
Act4:月英雄と尾英雄
>>13
Act5:決闘と駆け引き
>>14 >>15 >>18
Act6:九尾と憎悪
>>19 >>21
Act7:暁の光と幻の炎
>>22 >>23
Act8:九尾と玉兎
>>25

 第二章:一角獣

Act1:デュエルは芸術か?
>>27 >>28 >>29
Act2:狩猟者は皮肉か?
>>30 >>31 >>32 >>33
Act3:龍は何度連鎖するか?
>>36 >>37
Act4:一角獣は女好きか?
>>38 >>39 >>41 >>42 >>43 >>44 >>45
Act5:龍は死して尚生き続けるか?
>>48

 第三章:骸骨龍

Act1:接触・アヴィオール
>>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55
Act2:追憶・白陽/療養・クレセント
>>56 >>57
Act3:疾走・トラックチェイス
>>66
Act4:怨炎・アヴィオール
>>67 >>68
Act5:武装・星の力
>>69 >>70
Act6:接近・次なる影
>>73

 第四章:長靴を履いた猫

Act1:記憶×触発
>>74 >>75 >>76 >>77
Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解
>>78 >>79 >>80
Act3:捨て猫×少女=飼い猫?
>>81 >>82
Act4:リターン・オブ・サバイバー
>>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90
Act5:格の差
>>91 >>92 >>93 >>104
Act6:二つの解
>>107 >>108 >>109 >>110
Act7:大地を潤す者=大地を荒らす者
>>111 >>112 >>113
Act8:結末=QED
>>114

 第五章:英雄集結

Act1:星の下で
>>117 >>118 >>119
Act2:レンの傷跡
>>127 >>128 >>129
Act3:警戒
>>130 >>131 >>132
Act4:策略
>>134 >>135
Act5:強襲
>>136
Act6:破滅の戦略
>>137 >>138 >>143
Act7:不死鳥の秘技
>>144 >>145 >>146
Act8:痛み分け、そして反撃へ
>>147
Act9:fire fly
>>177 >>178 >>179 >>180 >>181
Act10:決戦へ
>>182 >>184 >>185 >>187
Act11:暁の太陽に勝利を望む
>>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>193 >>194 >>195
Act12:真相
>>196 >>198
Act13:武装・地獄の黒龍
>>200 >>201 >>202 >>203
Act14:近づく星
>>204


『列島予選編』


 第六章:革命への道筋

Act0:侵攻する略奪者
>>207
Act1:鎧龍サマートーナメント
>>208 >>209
Act2:開幕
>>215 >>217 >>218
Act3:特訓
>>219 >>220 >>221
Act4:休息
>>222 >>223
Act5:対決・一角獣対玉兎
>>224 >>226
Act6:最後の夜
>>228 >>229
Act7:鎧龍頂上決戦

Part1:無法の盾刃
>>230 >>231 >>232 >>233 >>234 >>235 >>236 >>239
Part2:ダイチの支配者、再び
>>240 >>241 >>242 >>243 >>244 >>245 >>246 >>247 >>248 >>250
Part3:燃える革命
>>252 >>253 >>254 >>255 >>256
Part4:轟く侵略
>>257 >>258 >>259 >>260 >>261

Act8:次なる舞台へ
>>262


 第七章:世界への切符

Act1:紡ぐ言の葉
>>263 >>264 >>265 >>266 >>267 >>268 >>270
Act2:暁ヒナタという少年
>>272 >>273
Act3:ヒナとナナ
>>275 >>276 >>277 >>278 >>279 >>280 >>281
Act4:誓いのサングラス
>>282 >>283 >>284 >>285
Act5:天王/魔王VS超戦/地獄
>>286 >>287 >>295 >>296 >>297 >>298 >>301 >>302 >>303 >>304 >>305
Act6:伝説/閃龍VS獅子/必勝
>>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>323
Act7:青天霹靂
>>325 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>331
Act8:揺らぐ言の葉
>>332 >>333 >>334 >>335 >>336
Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神
>>337 >>338 >>339 >>340 >>341 >>342 >>343
Act10:伝える言の葉
>>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351
Act11:連鎖反応
>>352


『侵略世界編』


 第八章:束の間の日常

Act1:揺らめく影
>>353 >>354 >>359 >>360 >>361 >>362
Act2:疑惑
>>363 >>364
Act3:ニューヨークからの来訪者
>>367 >>368 >>369 >>370 >>371
Act4:躙られた思い
>>374 >>375 >>376 >>377
Act5:貴方の為に
>>378 >>379 >>380 >>381 >>384 >>386
Act6:ディストーション 〜歪な戦慄〜
>>387 >>388 >>389
Act7:武装・天命の騎士
>>390 >>391
Act8:冥獣の思惑
>>392
Act9:終演、そして——
>>393


 第九章:侵略の一手

Act0:開幕、D・ステラ
>>396
Act1:ウィザード
>>397 >>398
Act2:ギャンブル・パーティー
>>399 >>400 >>401
Act3:再燃 
>>402 >>403 >>404
Act4:奇天烈の侵略者
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>411
Act5:確率の支配者
>>412 >>413
Act6:不滅の銀河
>>414 >>415
Act7:開始地点
>>416


 第十章:剣と刃

Act1:漆黒近衛隊(エボニーロイヤル)
>>423 >>424
Act2:シャノン
>>425 >>426
Act3:賢王の邪悪龍
>>427 >>428 >>429
Act4:増殖
>>430 >>431 >>435 >>436 >>438 >>439 >>440 >>441 >>442
Act5:封じられし栄冠
>>444


短編:本編のシリアスさに疲れたらこちらで口直し。ギャグ中心なので存分に笑ってくださいませ。
また、時系列を明記したので、これらの章を読んでから閲覧することをお勧めします。

短編1:そして伝説へ……行けるの、これ
時系列:第一章の後
>>62 >>63 >>64 >>65

短編2:てめーが不幸なのは義務であって
時系列:第三章の後
>>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103

短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル)
時系列:第四章の後
>>120 >>121 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126

短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日
時系列:第四章の後
>>149 >>150 >>153 >>154 >>155 >>156

短編5:恋情パラレル
時系列:第四章の後
>>157 >>158 >>159 >>160 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>173 >>174 >>175 >>176

短編6:Re・探偵パラレル
時系列:平行世界
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422

エイプリルフール2016
>>299 >>300

謹賀新年2017
>>443


登場人物
>>9
※ネタバレ注意。更新されている回を全部読んでからみることをお勧めします

オリジナルカード紹介
(1)>>96 (2)>>271
※ネタバレ注意につき、各章を読み終わってから閲覧することをお勧めします。

お知らせ
16/8/28:オリカ紹介2更新

Re: デュエル・マスターズ D・ステラ 〜星々の系譜〜  ( No.101 )
日時: 2015/06/22 02:44
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***

「いやー、それは不運でしたね、レン先輩」
「全く、呪いの装備とはこのことだ」
 
 一通りノゾムとホタルに事情を話した後、玄関に入るとそこには既に武道場のような講堂が広がっていた。そして、最奥には大きな扉があった。
 そして、周りには座禅を組んでいる人型のクリーチャーと思しき連中。

「あれは……《三界 ザゼンダ》達か?」

 こそこそ、と玄関の隅に隠れ、そのクリーチャーの名前を呼ぶヒナタ。ジャスティス・ウィングの侵略クリーチャーだ。
 見ると、中央に居るリーダーと思われるそれが、何か叫んでいる。

「皆さん、精神を統一させるのです! 後三回! 後三回、座禅10分のセットをこのまま行いますよ! その後、いつも通り何か胡散臭そうな雰囲気のある老婆に変装して、幸運のペンダントを配るのです!」
「イエス、南無!! 我は仏の下にあり!」

 洒落か。まさに、三回ザゼンダである。

「何よ、イエス南無(ナム)って。これじゃもう、何教じゃ分かったもんじゃないわね」
「どうする、ヒナタ。まずは奴らが隙を見せるまで待機するか--------?」

 とヒナタに問うたレンであったが---------既に、隣にヒナタは居らず。
 
「っしゃー! 行け、白陽!」
「頼むぜ、クレセント! 叩きのめしちまえ!」
「何で勝手に飛び出してるのだ、貴様らはあああああああ!!」

 レンの叫び虚しく、カードから2体が飛び出してくる。
 が、しかし。2体は何やら気まずそうな雰囲気を醸し出しており。

「……」
「……」

 無理もあるまい。先ほど、クレセントは白陽に酷いことを「何故か」言ってしまっており、喧嘩をした後も同然だったからだ。

「何で黙りこくってんだ、てめーらはああああああああああ!!」

 と、理由は分かってはいるが納得がいかないヒナタが2体に突っ込んだその時であった。ザゼンダのうちの1体が叫ぶ。

「あ、あいつら、さっき私がペンダントの配布をしていたときに家の中で、どう考えてもこの後○○○とか△△△とか、うへへこっちの口は正直だぜ、とかそんな感じになりそーな雰囲気だったクリーチャー共ですよ! ムカついたので、言霊の術吹き込んで酷いこと言わせて仲違いさせてやりましたが」
「何? マジですか。ナイスジョブでしたね。我らブッディ教の教えに従い、”リア充死すべし”に従った善行でしょう」
「いやー、でもまさか此処まで来る------------」

 次の瞬間、言ったザゼンダの体が文字通り、”粉砕”された。クレセントが、音速で距離を詰め、鉄槌を振り下ろしたからである。
 衝撃波で近くに居たもう1体も吹っ飛び、壁にめり込む。そこに白陽が火の玉を飛ばして焼き尽くし、完全に息の根を止めた。
 一瞬の出来事に、その場に居た全員が沈黙した。
 
「白陽? さっきはごめんね? こいつらやっちゃお?」
「そうだな、クレセント。同意見だ」
「ねーえ、白陽? 後で、さっきの続き……シよ?」
「ふん、足腰立たなくなっても知らないぞ?」
「えへへー、白陽大好き。それくらいしてくれないと」
「全く、お前も人のことは言えないな」
「駄目だこいつら、早く何とかしねえと」

 殺意とラブラブオーラが纏わりつく2体に、嫉妬の感情しか浮かばないヒナタ。
 しかし、まだ安心してはいられない。まだ、敵は残っている。

「おいいいいい、異教徒だぁぁぁぁ!! 排除しろおおおおお!!」

 あちこちから声が上がった。同時に、何体かクリーチャーが現れる。着ぐるみのような天使のクリーチャー、《九極 デュエンジェル》の軍団だ。
 
「雑魚は私達に任せろ! この程度の連中、私達が居なくてもどうにかなるだろう!」
「俺とノゾムが決闘空間を開く! 早く奥へ!」
「先輩、自分の呪いは自分で解いて下さいよ!」
「ああ、分かった!」

 一騎当千とも言える火力で次々にクリーチャーを薙ぎ倒していく2人を横目に、レンとコトハ、ホタルにフジは奥へ進む。

「……しっかし、想像以上のラブラブっぷりね。異種族にしては」
「あれはもう……教会建てるしか無いですね」
「くだらん。胸糞が悪いぞ、俺様は」
「とにかく、奥の部屋に敵の親玉が居るということだ。行くぞ!」

 レンが先頭に、そのまま扉を開いた。
 そこには、かなり長い通路が広がっていたが、番人と思われるクリーチャーが徘徊しており、こちらを見るや襲いかかってきた。
 しかし。

「ワシに任せい!」

 飛び出したハーシェルが、角をクリーチャーへ突き立てる。そして、ホタルとフジが進み出た。

「此処は私達に任せてください!」
「俺様も久々に、決闘空間でクリーチャーを片付けてやろうかね」

 レンはしばらく黙り込む。しかし、頷くとすぐさま駆け出し、そのまま抑え込まれたり、決闘空間に引きずりこまれているクリーチャーを潜り抜け、そのまま奥へ走り出した。
 コトハもその後に続く。

「分かった! 皆の思いは踏みにじるわけには行かない!」
「行くわよ、レン!」

 叫びながら、いつも先陣をきっていたヒナタの気持ちが、何となく分かった気がした。


 ***


 最奥部の部屋。そこには、金色の飾りをつけた派手な仏像が安置されていた。先までの通路にいたクリーチャーが最終防衛ラインだったのか、他には何も見られない。
 しかし、直感で感じた。
 
「……クリーチャーか?」
「そうみたいだけど……」

 と、呟いたそのときであった。ゴゴゴゴゴゴ、と重い音を立てて仏像が動き出す。仏像の中から、力士象のようなクリーチャーが現れた。

「ククク、遂に此処に来たか。異教徒め」

 クリーチャーは、神々しい光を放ち、座禅のポーズを取った。
 そして、槍を片手に顕現させ、レンとコトハの前に立ち塞がる。
 光のジャスティス・ウイングの侵略者、《三界 カッツイレル》だ。

「コトハ、下がっていろ。こいつは僕が倒す」
「だ、だけど!」
「安心しろ。僕はもう、負ける訳には行かないんだ!」

 ギリッ、と拳を握り締める。 
 1人の少女の表情が浮かんだ。変化に乏しくていつも笑わなくて、でも内に秘めた感情は大きくて。
 ----------僕はかつて、彼女の思い出を奪ってしまった。それが正義のためだったとはいえ。それが仲間を守るためだったとはいえ。
 ギリッ、と歯を食いしばる。
 ----------だから僕は染めることにした。何にも染まらなかった透明のデッキを、漆黒に。

「ほほう。戦うというのか? この《三界 カッツィレル》は、此処で座禅を組むのが暇で暇で----------人間共の苦しむ顔を見るのが趣味なのだよ。貴様もその1人のようだが、それで私の邪魔をしに来た、と」
「悪いが、貴様のやっていることは僕にとって邪魔なんでな。パックを引いてもアタリが来ないなら、それは金の無駄遣い、美しくない」

 それに、と彼は続けた。


「僕は貴様の金メッキで覆われた腐った性根に、激しくキレているのでな!!」


 次の瞬間、黒い霧が現れる。

「気をつけて、レン! 相手は侵略者! 速攻で潰される危険性が高いわ!」

 コトハの声がした。しかし、レンは振り返らなかった。
 ----------この程度でくたばっていては、スミスに、あいつに笑われてしまう!!
 絶対、この戦い。負ける訳にはいかなかった。

「教えてやる、”三回カツ丼”」
「三界カッツイレルだ。死ぬか人間クソヤロー」
「一回で切れたわ。酷い僧ね」

 レンは、自らのデッキを掲げて叫んだ。


「----------”美学に勝る不運無し”ということを!!」


 ----------次の瞬間、決闘空間が顕現した。

短編2:てめーが不幸なのは義務なのであって ( No.102 )
日時: 2015/06/22 04:14
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***

 
 レンとカッツイレルのデュエル。現在、レンの場には《一撃奪取 ブラッドレイン》、一方のカッツイレルの場には《預言者 クルト》が1体。
 まさに、ビート対速攻の勝負だ。
 ----------墓地進化がテーマの僕としては、次のターンにこいつを《ダースレイン》に進化させたいところだ。さあ、どう来る?

「私のターン! 《制御の翼 オリオティス》召喚だ!」


制御の翼 オリオティス R 光文明 (2)
クリーチャー:ジャスティス・ウイング 2500
ブロッカー
このクリーチャーは、相手プレイヤーを攻撃できない。
相手が、自身のマナゾーンにあるカードの枚数よりコストの大きいクリーチャーを出した時、相手はそのクリーチャーを自身の山札の一番下に置く。


 《オリオティス》は、相手のコスト軽減やコスト踏み倒しを制限するカードだ。相手がクリーチャーを出したとき、それが相手のマナゾーンのカードよりコストの大きいクリーチャーだったとき、それを山札の下へ強制送還すう能力を持つのである。
 これにより、次のターンに進化というレンの作戦は潰えた。
 ---------畜生!! 光文明らしい、嫌な能力だ!」

「さらに、《預言者 クルト》で攻撃!」

 レンのシールドが1枚、叩き割られた。相手の方が同じ速攻でも、速い。
 シールドでアドバンテージを取られてしまうとは。

「くっ、僕のターン!」

 ----------まずいな。早速劣勢ではあるが----------!
 とにかく、此処は自分も守りを固めるしかない、という結論に至ったレンは、クリーチャーを召喚した。

「《埋葬虫 ベリアル・ワーム》召喚! ターンエンドだ!」


埋葬虫ベリアル・ワーム UC 闇文明 (3)
クリーチャー:パラサイトワーム 3000
E・ソウル
ブロッカー
このクリーチャーは、攻撃することができない。
自分のターンのはじめに、自分の山札の上から2枚を墓地に置く。


 《ベリアル・ワーム》。それは、ターンの始めに自分の山札から2枚を墓地に置くという効果を持った、パラサイト・ワームだ。
 地獄の住人は、屍を好む。故に、さらに屍を見つけるために山札を掘り進めて行くのだ。

「では、私のターン。《超過の守護者 イカ・イカガ》を召喚」

 
超過の守護者イカ・イカガ UC 光文明 (3)
クリーチャー:ガーディアン 1000
ブロッカー
このクリーチャーは、相手プレイヤーを攻撃できない。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、コスト3以下の「ブロッカー」を持つクリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。


「そして効果により、《時空の守護者 ジル・ワーカ》も召喚。ターンエンドだ」

 くっ、とレンは声を漏らした。一瞬で、ブロッカーが2体も現れてしまった。
 これにより、より攻めづらくなったと言っても過言ではない。
 レンのターン。最初に山札からカードを2枚置く。墓地に置かれたのは、《悪魔龍王 キラー・ザ・キル》、《地獄門 デス・ゲート》。
 余り、墓地の中身は芳しくは無い。

「とりあえず、《ブラッドレイン》を《夢幻騎士 ダースレイン》に進化! 効果で山札の上から3枚を墓地に送り込み、《暗黒鎧 キラード・アイ》を回収する。そして、シールドをW・ブレイク!」
「ふん。《ジル・ワーカ》でブロック。破壊はされるが、効果で、《ベリアル・ワーム》をタップする」

 《ダースレイン》の槍が、《ジル・ワーカ》を刺し貫くも、光の輪が《ベリアル・ワーム》を拘束した。
 
「くっ、だが厄介なクリーチャーは潰した! ターンエンドだ!」
「では、私のターンだ」

 にやり、とカッツイレルは嫌な笑みを浮かべた。

「くくく、全ての生物は平等で無ければいけない。そのためには、”散幸ペンダント”で全ての生物を不幸にしなければいけないのだよ! 幸せになる? 下等生物のゴミが!! 粋がるな!! 貴様らに幸運になる権利は無い!」

 叫んだ彼は、そのまま4枚のマナをタップする。

「私は、シンパシーでコストを軽減し、《共鳴の精霊龍 サザン・ルネッサンス》を召喚だ!」

 次の瞬間、《オリオティス》、《クルト》、《イカ・イカガ》の光のエネルギーが収束し、空中に光の天使龍が光臨する。


共鳴の精霊龍 サザン・ルネッサンス VR 光文明 (7)
クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン 7000
ブロッカー
シンパシー:光のコスト3以下のクリーチャー(このクリーチャーの召喚する時支払うコストは、バトルゾーンにある自分の光のコスト3以下のクリーチャー1体につき1少なくなる。ただし、コストは1より少なくならない)
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある自分の光のコスト3以下のクリーチャー1体につき、カードを1枚引いてもよい。
W・ブレイカー


「馬鹿な、シンパシーだと!?」
「効果により、私のコスト3以下のクリーチャーの分だけ、カードをドローする! 手札は枯渇しない!」

 さらに、とカッツイレルは手駒を進めた。

「《クルト》で《ベリアル・ワーム》を攻撃! そして!」

 次の瞬間、攻撃中の《クルト》の体が光り輝いた。
 そして、更なる存在へ進化する。


「侵略進化、この私《三界 カッツイレル》を召喚だ!! 渇!!」


 侵略。それは、特定のクリーチャーが攻撃するときに発動し、手札から”そのまま進化できる”という能力。
 さらに、《カッツイレル》の侵略対象は、光のクリーチャーととても緩いのだ。


三界 カッツイレル UC 光文明 (2)  
進化クリーチャー:ジャスティス・ウイング/侵略者
進化--自分の光のクリーチャーの上に置く。
侵略—光のクリーチャー(自分の光のクリーチャーが攻撃する時、自分の手札にあるこのクリーチャーをその上に重ねてもよい)
自分のターンの終わりに、このクリーチャーをアンタップする。 


「ターン終了時に、私はアンタップする。ターンエンドだ!」
「くっ、僕のターン……!」

 相手のブロッカーが邪魔だ。除去に手間取っている間に、やられかねない。そして何より、相手の《サザン・ルネッサンス》が鬼門である。

「《不吉の悪魔龍 テンザン》召喚! こいつは、攻撃するときに山札から13枚を墓地に置かねばならないが、T・ブレイカーだ!!」

 デメリット付とはいえ、《テンザン》は、場で一番火力の高いクリーチャーだ。

「ほう。ならば、そろそろ行かせて貰うぞ!!」

 カッツエルが、にやり、と笑った。

「《サザン・ルネッサンス》をもう1体召喚! 効果で3枚をドロー!」
「くっ、まずい!!」
「《カッツイレル》でシールドをブレイク!」

 シールドが更に割れ飛んだ。加えて、そこに《サザン・ルネッサンス》が追い討ちをかけるように、一撃を与える。
 これで、レンのシールドは残り一枚。ブロッカーに阻まれ、このままではレンに勝機は無いと思われた。
 ---------このままでは、このままでは----------!!

---------俺の代わりによ、暁ヒナタに引けを取らない強えヤツになってくれ。じゃねえと、許さねえぞ----------相棒

 ---------ありがとうございます、せんぱい……こんな私を最後まで……

 ---------また、僕は無様に負けるのか!?
 そんなのは、もう嫌だ。消えていった2人がその感情を昂ぶらせる。
 自分が傷つくのは、どうだって良い。
 だが、こんな奴のために、こんな奴のために-----------
 
「これ以上、仲間に迷惑を掛けるわけには、いかないんだああああああああああ!!」

 次の瞬間、レンの中で何かが弾けた。そして、激しい闇のオーラが溢れ出る。

「S・トリガー発動!! 《地獄門 デス・ゲート》で《サザン・ルネッサンス》を破壊する!」

 地獄からの門が開き、《サザン・ルネッサンス》がそこから現れた手に引きずり込まれて破壊される。
 さらに、そこから、《暗黒鎧 キラード・アイ》が姿を現した。同時に、山札の上から4枚が墓地に置かれる。

「くっ! おのれい! 散幸ペンダントの効果で、運が発散されているはずなのに---------!!」
「まだ分からないのか?」

 ビキッ、とレンの胸にぶら下げられたペンダントにヒビが入った。まるで、レンの闇を拒絶するように。

「馬鹿な!! 貴様の闇は、普通の人間の比では無い----------何者だ!」

 そんなこと、知るか。


「シールド・トリガー、2枚目。《インフェルノ・サイン》発動だ!!」


 どんなに壊そうとしても壊れなかったペンダントは----------

「効果により、《希望の親衛隊 ファンク》を墓地から復活させる!! 効果で、《イカ・イカガ》を破壊!」
「ば、馬鹿な、こんなことが--------有り得ない!!」


 パリン
 
 ---------今、いとも容易く砕け散った。そして、もうカッツイレルに攻撃できるクリーチャーは居ない。

「僕のターン! 《暗黒鎧 キラード・アイ》を進化! 墓地より、現れよ! 僕の切札!!」

 《キラード・アイ》は、墓地から進化クリーチャーを召喚できるという効果を持つ。よって、おどろおどろしい咆哮が響くと同時に、破滅の魔王が現れるのだった。


「殲滅せよ、魔界の王よ!! その眼に醜き悪を映し出し、滅ぼしたまえ!! 《悪魔龍王 キラー・ザ・キル》!!」



悪魔龍王 キラー・ザ・キル P 闇文明 (6)
進化クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 12000
進化−自分の闇のクリーチャー1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手のクリーチャーを1体破壊する。
T・ブレイカー


「効果で、《オリオティス》を破壊!! ブロックできるブロッカーはこれで、全て滅した!!」

 次の瞬間、今度は《オリオティス》が破壊された。これによって、カッツイレルを守るクリーチャーは1体も居なくなった。

「行け!! 我が美しき下僕よ!! 全てを食らい尽くせ!! 《テンザン》でシールドをT・ブレイク!!」
「ぐ、馬鹿な!!」

 レンの山札が13枚、墓地に置かれる。しかし、最早そんなことレンには関係無かった。

「《ダースレイン》でW・ブレイク!!」
「そ、そんな、馬鹿な-----------!!」
「覚悟しろ。僕をよくも、散々な目に遭わせてくれたな!! 悪魔を弄んだ罪、重いぞ!!」

 そして。偽りの光を放つ天使は。
 

「----------《悪魔龍王 キラー・ザ・キル》で、ダイレクトアタック!!」


 真実の深淵を持つ悪魔によって、一瞬で消し飛ばされたのだった。その、巨大な禍々しい邪眼によって。


「あああああああ-----------ブッディ様---------お許し、下さい----------!!」 

短編2:てめーが不幸なのは義務なのであって ( No.103 )
日時: 2015/06/25 06:09
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

「終わったな」

 夕陽が沈む空、そして何も残っていない空き地。
 寺院はクリーチャー界からやってきた自警部隊と思われる連中が解体していった。また、それらのクリーチャーも捕らえられて、皆仲良く超獣界へ連行されていったのだった。思ったとおり、この寺院はカッツイレル率いる光の”侵略者”達の郎党がこちらに構えていた隠れ場だったという。

「全く、あのペンダントの所為で色々酷い目に遭わされたな」
「ま、でもよ、あのペンダントもいざ無くなってみると----------って感じじゃね?」
「悪いが、あんなものに愛着が沸くほど、僕は馬鹿ではないぞ」

 至極当然である。

「大事にならなくて良かったぜ。あー、疲れた」

 フジが汗を、ハンカチで拭いながら言った。そのまま、タブレットを操作して連絡をとっていた。
 そうして、各自解散となったわけである。

「何であれ、事件解決ですね!」
「そうっすよ、レン先輩。不幸キャラが定着しなくて良かったんじゃないですか?」
「ま、俺は悪いことばっかりでも無かったがな、”コレ”が当たったり、コトハのパン------------」

 
 ドギャッ


 残念。ヒナタの脳天に当たったのは、コトハのパンチであった。レアカードが当たったのは、紛れも無い事実ではあるのだが。
 
「全部解決ね。良かったわ、本当」
「嗚呼。全く、これで不幸の連鎖から解放される」

 レンからすれば、本当に大変な一日であったことは言うまでも無い。しかし、もうこれで自分が悲惨な目に遭うことも無いであろう。

「おい、そういえばヒナタ、ノゾム。白陽とクレセントはどこ行った?」
「え? 知りませんよ」
「……あのクソリア獣共」
「マジで何処に行った? 折角-----------この、高圧発射装置、”ネオ・メタルアベンジャーソリッドサイクロンジェットメタルアベンジャーソリッド二連装砲”を試してみようと思ったのだが。略してMASだ」

 言ったフジは、どこから引っ張り出して来たのか、指を弾くとざざざっ、と武闘財閥の社員と思われる男達が現れ、何か布を被ったどでかいものを取り出してきた。
 そして、覆っていた布が外され、それの全貌が明らかになる。
 それは--------------思ったとおり、どでかい二門の大筒であった。
 思い出せば、人間大砲同好会の連中が使ってた大筒も武闘財閥の開発だった。
 それを見たヒナタは、おおー、と感嘆の声を漏らす。
 何とまあ、雄雄しい外観であろうか。

「完成度たけーなオイ」
「メタルアベンジャーソリッドって二回言ったわよ! あるわけないでしょ、こんな慨視感ありまくりの高圧発射装置!! 」

 尚、どんな外観をしているかは”お察し下さい”。分からない人はグーグル先生に相談だ。

「尚、分かっていると思うが二連装砲になっていてだな」
「最初から2人同時に飛ばす前提かよ」
「つーわけでだ、ヒナタ、ノゾム。お前らに頼みがあるのだが----------ペットがいないなら、飼い主が責任取るべきだよな? なぁ?」
「え、ちょ、何で凄い力で俺らの腕掴んでるんスか、フジ先輩」
「……ヤな予感しかしないですって、やめてください、ちょ、おま、やめ------------------」


 ***


「どわあああああああああああああ」
「ぎゃあああああああああああああ」


 ああ、哀れなり。ネオ・メタルアベンジャーソリッドサイクロンジェ(以下略)二連装砲の餌食になった2人は、そのまま何処か知らない方向へ飛ばされて言ったのだった。
 その光景を見ながら、フジは-----------すっげー爽やかな笑みを浮かべていた。

「超☆エキサイティン」
「フジ先輩、こんなことして良かったのでしょうか」

 呆れたような顔で、レンがフジに問うも、当の彼は無表情のまま「もーまんたい、もーまんたい、心配要らん」と言う。

「ぶっちゃけると、砲口の向きも適当でどこに落ちるか分からないが」
「ちょ」
「だが、大丈夫だ。ヘルメットも防護服も、実はクリーチャー世界の光文明の装甲技術を取り入れたもので、海にでも落ちん限りは死なないようになっている。発信機もつけてるし、何処に落ちたかは、まあ分かるだろ」

 実は武闘財閥は、クリーチャー界の技術を一部取り入れているのである。数少ない、クリーチャーを認知し、研究している組織、それが武闘財閥であるが、それらも自社の商品へ(よもやそんな技術を使ったと公にするわけはないが)取り入れているのである。
 それは、人間大砲同好会が知らずに使っている例の高圧発射装置も例外ではなく。

「その海に落ちたときは」
「運が悪かった、事故だった、過失だった、と思って諦めるっきゃねーな、これは」
「何てアバウトな!」
「ちょ、助けに行くわよ!!」
「嘘だ、ちゃんと水にも浮く心折……じゃなかった、親切設計だ。ほっといても構わん、ギャグ補正で何時かは帰ってくるさ」
「あんたが言うといちいち心配になるのですが、それは」

 コトハが手厳しい突っ込みをきかせるも、それをガンスルーするフジ。本当に歪み無い先輩である。
 頭脳も、腕っ節もピカイチなのだが、何分発想が破滅的かつ天災的なのだ。

「フジ先輩! 今度、取材させて貰っていいですか?」
「取材か? 良いだろう」
「はい、ありがとうございます!」
「ちょっと待ちなさい、ホタル。その人は危ない」

 こうしてコトハが止めるのも無理は無い。
 そんな光景を見ながら、レンは1人夕陽を眺めていた。遠い日を思い出すように。


「これでまた、僕は強くなれた気がする。スミス-----------ゆっくりお休み」


 ***


 互いの甘い呼気が顔に触れ合う。純白の彼女の体毛は、いつにも増して艶が増えており、より色っぽかった。
 此処は、武闘財閥が管理している巨大ビオトープ(という名の森林)であった。確かに、うっそうとした此処ならば、誰も来ないだろう。
 そんなこと、この2人が知るわけもないのであるが。
 たまたま近くにあったこの場所を発見し、(クリーチャーだから当然のようにカード状態で空中移動が可能)ようやくやりたい放題できるわけであった。いや、小説のレーティング的に余りやりたい放題されたら作者が困るのであるが。
 
「えへへー、流石に此処なら誰も来ないよね?」
「しかしだな、クレセント……風邪を引くんじゃないか、これは」
「白陽が居るから寒くないもーん」
「……可愛い奴だ」

 何気なく飛び出たその言葉に、クレセントは動転したようにあたふたし始める。

「恥ずかしいよぅ、白陽……」
「私とお前の仲だ、何も恥ずかしいことは無いじゃないか」
「も、も、もう……」

 ぎゅっ、と抱き着いてくる彼女。余程、恥ずかしかったらしい。
 気分も高揚してきたころだ。彼女の顎に、手を掛けてくいっと顔を自分の方へ向け、唇を重ね合わせる。

「……クレセント、もう私は押さえきれな------------」

 



「どわああああああああああああああああああああ」
「ぎゃああああああああああああああああああああ」



 -----------言い終わる前に、どごおおおおむ、という音と共に2つ、何かが地面に突っ込んできた。
 完全に邪魔をされたとしか言いようがないのである。

「何だ!! 何なんだ!? 今度はキスの前に------------」
「白陽、あれ見て!!」

 見れば、そこには見覚えのありまくるのが、約2名。しばらく動かなかったが、ようやくもぞもぞ、と動き出す。
 ヘルメットと防護服に身を包んだ、ヒナタとノゾムであった。

「げほっげほっ、ノゾム、大丈夫か?」
「先輩、オレは何とか……あれ? クレセント、何で白陽と一緒に、こんなところに居るんだ? あれ、何で怒ってらっしゃるのでせう」
「あー、お前ら野外プレイが趣味だったのか。……あ、ヤベ」

 ビキッ、と青筋の立った2体を前に最早逃げる道筋も絶たれ、ヒナタとノゾムは何となく、この後の展開を察したのだった。


『だから何で邪魔してくれるんだあああああああああああああああ!!』


 バキッ!! ドガッ!!

 それはそれは恐ろしい一撃であった。白陽の神通力で体を空中に固定され、クレセントの鉄槌がバットみたく2人を打ったのである。防護服が無ければ死んでいた。
 2度目の空中飛行をする中で、ふとノゾムは思った。
 ---------先輩、今回一番扱い酷いのオレなんじゃないすか?
 ---------知らん。
 ---------まあ、やっぱ何と言いますか-------------空はこんなに青いのに
 ---------いや、おもくそ真っ赤なんだけど


「不幸だあああああああああああああああ!!」


                            短編2(完)

※余談:2人はちゃんとこの後、助かりました。

Act5:格の差 ( No.104 )
日時: 2015/06/27 19:30
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

 ***

「レ、レン-------------!!」

 コトハの開口一声は、悲鳴にも近い呼びかけであった。空間から放り出されてきたレンの姿は、ボロボロで、そのまま死んだように横たわっていたのだ。
 しかし、ぴくり、と彼の体が僅かに動いたのが確認できた。死んでいない。まだ彼は生きている。

「---------は、ははは、口ほどにもねぇじゃねえか」

 ---------よく言うにゃ。ビビってたくせに。
 絶体絶命、万事休す。神さえも倒したヒナタ。それと同等の実力を持つ、あのレンでさえ、やられたのだ。自分が向かっていって勝てるであろうか。

「とにかく、だ。殺すのは止めだ。このガキにも---------お前だ、小娘。聞くべきことは幾らでもあるからな」
「まあ、そりゃそうにゃ。後で拷問でも何でも加えてやるかにゃ?」
「ああ、そうだな。俺はロリコンじゃねえが、陵辱モノは好みだからな」

 ---------!!
 コトハは、ぞっとした。まずい。こいつはやはり、此処で倒さなければ!


「決闘空間解------------!」


 言葉と共に、デッキを男へ突き出して空間を開こうとする。しかし。それはできなかった。何かが自分の体へ巻き付いてくるのだ。


「呪文、《DNA・スパーク》!! お前らを2人とも、拘束させて貰うぜ!!」


 それよりも先に、呪文が詠唱された。結果、光の鎖にコトハとレンは縛られて、完全に身動きが取れなくなる。
 口にも猿轡のように鎖が巻かれており、声をロクに発することが出来ない。

「んー!! んー!!」
「安心しろ。”然るべき”情報を貰うまでは、お前らの安全は保障してやるよ。ただし、用済みになった瞬間、このガキは殺して海に沈めるし、てめぇには壊れるまで俺に付き合って貰うとするさ。その後殺してポイさ」

 ----------このっ、サイコ野郎ーっ!!
 吐き気を催すような奴であった。ニャンクスの邪気に自らが侵されているからというのもあるが、あの男は小心者の癖に目の前の醜い欲望のためならば手段を選ばないのだ。
 
「つーわけで、先にワープさせておくか。呪文、《ディメンジョン・ゲート》!!」
「んー! んー!」

 2人の体が浮き上がる。先ほどまでは、強大な闇で呪文を一切受け付けなかったレンも、今はされるがままだ。

「ボッシュート」

 ひゅん! ひゅん! という、小気味の良い音と共に、2人の体は呪文によって開かれた大穴へ放られていくのであった。
 そのまま、意識は遠くなっていく---------------


 ***


「----------どうする、あれ」

 空中に浮遊する《シェル・ファクトリー》。此処からでは、射程圏外だ。出てきたサバイバーがいつ、街に影響を及ぼしてもおかしくはないのである。
 
「つーか、あれって本来空中に浮いてるモンじゃないですよね」
「あれじゃねーか? 浮遊要塞タイプとか」
「名前だけ無駄にかっこ良いっすね、名前だけ」
「ノゾムさん、ヒナタ先輩、さっきから何の話をしてるんですか……」
「とりあえずだな、白陽は使えないし」
「クレセントも、カード状態なら浮遊は出来ますが、実体化した瞬間落ちますよ。兎の跳躍力でどうにかなる距離じゃないみたいですし」
「ハーシェルも無理ですね……これは」

 相手が何時クリーチャーを放ってくるか分からない。かれこれ、もう4度程、敵軍勢の迎撃を行っているが、本体を叩けないのでは意味がない。
 どうにか頭を捻って、本体の《シェル・ファクトリー》を叩けないか、全員は考え込んでいた。
 

「よぅ、てめーら。悩んでんな」


 声がした。振り返ると、そこには----------

「武闘先輩! 何で此処に!?」

 フジの姿があった。どうやら、クリーチャーの気配を追って、此処まで来たようだ。
 
「そっか、フジ先輩にクリーチャーが見えてない訳がないですもんね」
「嗚呼。”こいつ”のおかげだぜ」
「ぶ、武闘先輩も”生きた”クリーチャーを持っていたんですか!?」
「お前には教えてなかったな。まあ、これには色々ワケがあるんだが----------それよりも、やることがあるんでな。やれっ」

 フジが1枚のカードをシェル・ファクトリーに向かって突き出す。そのカードが光を放って、質量を持つクリーチャーとなった。
 次の瞬間、巨大な影が現れた。巨大な大男だ。それも、ビル程あろうか、という桁違いの大きさだ。
 それが一瞬で、シェル・ファクトリーを握りつぶしてしまい、すぐにカードの姿へ戻った。

「この程度の敵、決闘空間に引きずり込むまでもねえ。開けた場所ならば、《マキシマム・ザ・マックス》は肉弾戦に於いて無敵だ」

 フジの所有するカード、《マキシマム・ザ・マックス》は、巨人の姿をしたゼニスだ。
 かつて、この海戸で超獣界からクリーチャーが流れてきたことがあり、その際に偶然手にした副産物だったという。
 
「まあ、それについては長くなるから、後々てめーらに教えるとして、だ」
「まだ、何かあるんですか?」

 ヒナタがうんざりした顔で言う。短編で既に分かっていると思うが、彼の言い出したことには、大抵ロクな結果がついて回らないのである。
 が、しかし。今回は違うようだった。


「-------------此処から、何100mか周辺で、決闘空間が開かれた形跡がある」


 全員は戦慄する。決闘空間。つまり、誰かが生きたクリーチャー同士、あるいは一方的にそれが絡むデュエルに巻き込まれたのだ。

「な、何でそんなことが---------」
「武闘財閥を舐めてくれるなよ。クリーチャーの反応だけじゃねえ、空間屈折を応用した空間の歪みの探査を常に海戸で行っている。何せ、俺らは恐らくこの全世界で、唯一の”クリーチャー”を認識し、研究している組織……かもしれないんだからな」
「かもしれないって」
「だって、公にクリーチャーの研究してますって言ってる組織なんて、俺ら含めていないと思うけどね?」
「……あ、ああ……」


 その説明で、ヒナタは無理矢理納得せざるを得なかったのだった。

「それでだ。1つは、同時に白陽とクレセント、ハーシェルの3つの反応が集まっているから、お前らだと気付いたわけだが、もう1つは正体不明でな。しかも、それが1つしかなかったから、一般人が巻き込まれた可能性が非常に高い。……何で、正体不明なのかが全く分からんが」

 ----------一般人?
 ヒナタは嫌な予感がした。
 まさか、クリーチャーを所持していないレンやコトハが巻き込まれたのではないだろうか。

「しかも、おかしいのは、決闘空間を開いたのがクリーチャーの仕業ではないということだ」

 これで、ヒナタは確信を持った。間違いない。レンかコトハだ。
 クリーチャーを持たないで決闘空間を開けるのは、彼らしかいないはずなのだ。

「-----------お前も薄々気付いていると思うが、俺様もだ」

 ヒナタの心中を察するように、フジは言った。


「-----------今回の件、レンかコトハと断定は出来ないものの、少なくともクリーチャーに関連した人物がやられたことは確実だってことだ」

Re: デュエル・マスターズ D・ステラ 〜星々の系譜〜  ( No.105 )
日時: 2015/06/27 21:05
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 久々の休日だぜひゃっはーなモノクロです。いやぁ、休める日があるっていいですね。この世で休日という概念を生み出した人は偉大です。

 そんなことはさておき今回の番外編ですが……まあ、多くは既に語っているので、特に言うことはないですか。
 まあ強いて言うならギャグ色がいつも以上に強いとか、リア獣共が読者の前で一線を越えようとしているとか、レンの不遇設定はもやは定着してしまっているのか、とか思うところはなくもないですが。
 レンは個人的なあれこれもあってもっと頑張ってほしいキャラなので、不遇さが強調された前半はともかく、《カッツイレル》を下したところから、スミスへ思いを馳せる流れまでは格好良く決まっていて良かったですね。この調子で本編でも頑張ってもらいたいところ。

 とか思った矢先にボロ雑巾のようになって決闘空間から出てきましたが。
 しかしこの男も、モブっぽいわりにはなかなか長生きしますね。タクさんの作品でここまで長く存命しているモブっていうのも珍しい気がします。呪文を連打したりしてますし、いつぞやの《ソウルハート》を所持していた男を思い出しますが、まあ奴よりは小物臭がぷんぷんしますがね。ニャンクスにも内心では見下されてるみたいですし。
 さてさて、犯罪臭がする中、レンとコトハの二人は無事で済むのやら……男の言う“然るべき情報”というものも、気になる要素の一つではありますが、一体なんの情報のことやら。他の英雄——ヒナタやノゾムたちのことですかね? でもそれはニャンクスが知ってるはずだしなぁ……

 一方、ヒナタたちは《シェル・ファクトリー》に悩まされているようですが、フジパイセンが一瞬で片付けてしまいましたね。色々破天荒というか、型破りですねこの人も……《マキシマム・ザ・マックス》も久々に見た気がします。懐かしい。
 それと彼が言う“クリーチャーを認識し、研究する組織”というのは……まあ、モノクロが知る中でも、武闘財閥だけかもしれませんね。
 どっかのなんとかラボラトリとかいう研究機関は、クリーチャーそのものを研究しているとは言い難いですし。そうだとしても、研究しているのは特殊なクリーチャーだけでしょう。
 それはそれとして、一般人が巻き込まれただろうという情報ですが、まあ十中八九レンとコトハを指しているんだろうとは思いますが、なんだろう、最近推理小説に毒された影響か、そうでなくても捻くれものの血が騒ぎ、やはりミスリードを疑ってしまう……本当にあの二人のことなのか、実は他の誰かが出て来るのか。
 ……まあ、流石に疑いすぎだとは思うんですけどね。

 とりま、1000文字程度と比較的コンパクトに収まったところで、今回はこの辺で失敬致します。
 ではでは。


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