二次創作小説(紙ほか)
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- デュエル・マスターズ D・ステラ 【侵略世界編】
- 日時: 2017/01/16 20:03
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
【読者の皆様へ】
はい、どうも。二次版でお馴染み(?)となっているタクと申します。今回の小説は前作の”デュエル・マスターズ0・メモリー”の続編となっております。恐らく、こちらから読んだ方がより分かりやすいと思いますが、過去の文というだけあって拙いです。今も十分拙いですが。
今作は、前作とは違ってオリカを更にメインに見据えたストーリーとなっています。ストーリーも相も変わらず行き当たりばったりになるかもしれませんが、応援よろしくお願いします。
また、最近デュエマvaultというサイトに出没します。Likaonというハンドルネームで活動しているので、作者と対戦をしたい方はお気軽にどうぞ。
”新たなるデュエル、駆け抜けろ新時代! そして、超古代の系譜が目覚めるとき、デュエマは新たな次元へ!”
『星の英雄編』
第一章:月下転生
Act0:プロローグとモノローグ
>>01
Act1:月と太陽
>>04 >>05 >>06
Act2:対価と取引
>>07
Act3:焦燥と制限時間
>>08 >>10
Act4:月英雄と尾英雄
>>13
Act5:決闘と駆け引き
>>14 >>15 >>18
Act6:九尾と憎悪
>>19 >>21
Act7:暁の光と幻の炎
>>22 >>23
Act8:九尾と玉兎
>>25
第二章:一角獣
Act1:デュエルは芸術か?
>>27 >>28 >>29
Act2:狩猟者は皮肉か?
>>30 >>31 >>32 >>33
Act3:龍は何度連鎖するか?
>>36 >>37
Act4:一角獣は女好きか?
>>38 >>39 >>41 >>42 >>43 >>44 >>45
Act5:龍は死して尚生き続けるか?
>>48
第三章:骸骨龍
Act1:接触・アヴィオール
>>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55
Act2:追憶・白陽/療養・クレセント
>>56 >>57
Act3:疾走・トラックチェイス
>>66
Act4:怨炎・アヴィオール
>>67 >>68
Act5:武装・星の力
>>69 >>70
Act6:接近・次なる影
>>73
第四章:長靴を履いた猫
Act1:記憶×触発
>>74 >>75 >>76 >>77
Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解
>>78 >>79 >>80
Act3:捨て猫×少女=飼い猫?
>>81 >>82
Act4:リターン・オブ・サバイバー
>>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90
Act5:格の差
>>91 >>92 >>93 >>104
Act6:二つの解
>>107 >>108 >>109 >>110
Act7:大地を潤す者=大地を荒らす者
>>111 >>112 >>113
Act8:結末=QED
>>114
第五章:英雄集結
Act1:星の下で
>>117 >>118 >>119
Act2:レンの傷跡
>>127 >>128 >>129
Act3:警戒
>>130 >>131 >>132
Act4:策略
>>134 >>135
Act5:強襲
>>136
Act6:破滅の戦略
>>137 >>138 >>143
Act7:不死鳥の秘技
>>144 >>145 >>146
Act8:痛み分け、そして反撃へ
>>147
Act9:fire fly
>>177 >>178 >>179 >>180 >>181
Act10:決戦へ
>>182 >>184 >>185 >>187
Act11:暁の太陽に勝利を望む
>>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>193 >>194 >>195
Act12:真相
>>196 >>198
Act13:武装・地獄の黒龍
>>200 >>201 >>202 >>203
Act14:近づく星
>>204
『列島予選編』
第六章:革命への道筋
Act0:侵攻する略奪者
>>207
Act1:鎧龍サマートーナメント
>>208 >>209
Act2:開幕
>>215 >>217 >>218
Act3:特訓
>>219 >>220 >>221
Act4:休息
>>222 >>223
Act5:対決・一角獣対玉兎
>>224 >>226
Act6:最後の夜
>>228 >>229
Act7:鎧龍頂上決戦
Part1:無法の盾刃
>>230 >>231 >>232 >>233 >>234 >>235 >>236 >>239
Part2:ダイチの支配者、再び
>>240 >>241 >>242 >>243 >>244 >>245 >>246 >>247 >>248 >>250
Part3:燃える革命
>>252 >>253 >>254 >>255 >>256
Part4:轟く侵略
>>257 >>258 >>259 >>260 >>261
Act8:次なる舞台へ
>>262
第七章:世界への切符
Act1:紡ぐ言の葉
>>263 >>264 >>265 >>266 >>267 >>268 >>270
Act2:暁ヒナタという少年
>>272 >>273
Act3:ヒナとナナ
>>275 >>276 >>277 >>278 >>279 >>280 >>281
Act4:誓いのサングラス
>>282 >>283 >>284 >>285
Act5:天王/魔王VS超戦/地獄
>>286 >>287 >>295 >>296 >>297 >>298 >>301 >>302 >>303 >>304 >>305
Act6:伝説/閃龍VS獅子/必勝
>>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>323
Act7:青天霹靂
>>325 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>331
Act8:揺らぐ言の葉
>>332 >>333 >>334 >>335 >>336
Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神
>>337 >>338 >>339 >>340 >>341 >>342 >>343
Act10:伝える言の葉
>>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351
Act11:連鎖反応
>>352
『侵略世界編』
第八章:束の間の日常
Act1:揺らめく影
>>353 >>354 >>359 >>360 >>361 >>362
Act2:疑惑
>>363 >>364
Act3:ニューヨークからの来訪者
>>367 >>368 >>369 >>370 >>371
Act4:躙られた思い
>>374 >>375 >>376 >>377
Act5:貴方の為に
>>378 >>379 >>380 >>381 >>384 >>386
Act6:ディストーション 〜歪な戦慄〜
>>387 >>388 >>389
Act7:武装・天命の騎士
>>390 >>391
Act8:冥獣の思惑
>>392
Act9:終演、そして——
>>393
第九章:侵略の一手
Act0:開幕、D・ステラ
>>396
Act1:ウィザード
>>397 >>398
Act2:ギャンブル・パーティー
>>399 >>400 >>401
Act3:再燃
>>402 >>403 >>404
Act4:奇天烈の侵略者
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>411
Act5:確率の支配者
>>412 >>413
Act6:不滅の銀河
>>414 >>415
Act7:開始地点
>>416
第十章:剣と刃
Act1:漆黒近衛隊(エボニーロイヤル)
>>423 >>424
Act2:シャノン
>>425 >>426
Act3:賢王の邪悪龍
>>427 >>428 >>429
Act4:増殖
>>430 >>431 >>435 >>436 >>438 >>439 >>440 >>441 >>442
Act5:封じられし栄冠
>>444
短編:本編のシリアスさに疲れたらこちらで口直し。ギャグ中心なので存分に笑ってくださいませ。
また、時系列を明記したので、これらの章を読んでから閲覧することをお勧めします。
短編1:そして伝説へ……行けるの、これ
時系列:第一章の後
>>62 >>63 >>64 >>65
短編2:てめーが不幸なのは義務であって
時系列:第三章の後
>>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103
短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル)
時系列:第四章の後
>>120 >>121 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126
短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日
時系列:第四章の後
>>149 >>150 >>153 >>154 >>155 >>156
短編5:恋情パラレル
時系列:第四章の後
>>157 >>158 >>159 >>160 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>173 >>174 >>175 >>176
短編6:Re・探偵パラレル
時系列:平行世界
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422
エイプリルフール2016
>>299 >>300
謹賀新年2017
>>443
登場人物
>>9
※ネタバレ注意。更新されている回を全部読んでからみることをお勧めします
オリジナルカード紹介
(1)>>96 (2)>>271
※ネタバレ注意につき、各章を読み終わってから閲覧することをお勧めします。
お知らせ
16/8/28:オリカ紹介2更新
- Act3:捨て猫×少女=飼い猫? ( No.81 )
- 日時: 2015/05/19 16:51
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
「あ、気付いた?」
如月コトハは、塾帰りだった。天気予報で降水確率が高かったため、傘を持っていったのが幸いであったが、土砂降りの雨に打たれることに。
こんなに酷い雨とは聞いていなかったのである。
というわけで、いつもの帰り道を歩いていたそのときだった。
ふらふらした猫が無気力な表情で傍を歩いていたのに気付く。慌てて見れば、その猫がいよいよぶっ倒れたので、顔が真っ青になり、急いで猫を抱えて家まで走って帰ったのが事の顛末である。
幸い、親はまだ帰ってきていなかった。急いで身体を洗うと、汚れていた体毛の色がはっきりしてくる。
さらに、V字型の顔、長く細い美しい尾と四肢、ピンと張った肉の薄い耳、そしてサファイアブルーの瞳。飼われていたのが逃げ出した奴がどこかで別の猫と逢引したのか、幼くも気品に満ちたオスのシャム猫だった。
怪我をしていたので傷薬と包帯を巻いておき、しばらくクッションに寝かせておいたが、いましがた猫はパッチリ目を見開き、飛び起きたのだった。
「はい、ミルクとアジの開きだよ。たくさん食べて元気出してね」
しゃがんで猫の目線になっているコトハの表情は、先ほどから緩みっぱなしであった。
というのも、如月コトハは可愛いモノ好きなのである。 勿論、それは猫といった動物も例外ではなく、だ。部屋には彼女が作った縫い包みが置かれており、堅物な彼女の部屋には意外にも年相応な少女としての趣味と器用さが現れていたのだった。
ただし、絶対にこの部屋はヒナタ達に見せることは出来ないが、そこは年頃の少女のアレという奴である。
子猫は、ちろっとミルクを恐る恐る舐めて、大丈夫なのを確認するとぺろぺろと勢いよく舐めだす。
その光景を見ながら、コトハの表情は余計に緩んでいったのだった。いつも張り詰めている気持ちが、解されていく。
「あーあ、そういえばヒナタの奴も”白陽”っていう狐飼ってるみたいだったけど」
白陽の話は、ハーシェルの一件の後に聞いた。星の英雄の話。オラクルの件で超常現象には慣れていたため、然程驚かない自分に驚いた。
人間の順応力というのは、恐ろしいものである。
厳密に言えば、白陽は狐というより狐型のクリーチャーであるのだが、そんなことは彼女にはどうでもよかった。
数年前、如月家は猫を飼っていた。キャシーという、7歳の気品に満ちたシャム猫だった。度々、家を抜け出す癖さえ無ければ、良い猫だった。しかしある日、家を飛び出したまま帰ってこなくなったのである。いつもならば次の日の朝には帰ってくるのに。
しばらくして、町のすぐ近くの道路で臓物をブチ撒けているのが見つかった。車に撥ねられたのだ。
ショックで、しばらく新しい猫は飼えないでいた。
コトハ自身も、心の隙間が埋められなかったのである。しかし、この子猫を見て、もう1度猫を飼いたいと思えるようになった。
「もふもふー、良いなー」
思わず、子猫に触りたくなるが、慣れてもいないのに不用意に触るのは良くない。そのため、我慢していたのだが----------
「ニャーオ」
すりすり、と子猫が自分の身体に頬を摺り寄せてくる。珍しい、此処まで人懐っこい野良猫も。
抱きかかえても嫌がらないのだ。
もうこの子、この家で飼っても良いのではないか。幸い、キャシーを飼っていた頃の、猫用トイレを初めとする飼育セットが残っている。傷が治るまで飼う事はできるだろう。
「良い子ね……キャシーの生まれ変わりなのかな、貴方って」
正統なシャムだったキャシーとは違い、この子猫は恐らくシャム寄りの雑種なのであろうが、そんなことは関係なかった。
……いや、本当に雑種なのだろうか。まさか、純血統のシャムが野良でそこらへんをほっつき歩いている訳はないし……。
しかし、目の前の子猫は余りにも別の猫の特徴が無さ過ぎる。最初こそ、シャム寄りの雑種なのだろう、と思っていたが。
何だろうか、この貴族というか、何というか、それ特有の雰囲気を漂わせている辺り、ただの猫ではないように感じたのだった。
……そして、彼女の予想は、後に当たることになる。
***
「白陽、大丈夫か?」
「あー、くれせんとー、くれせんとーなのかー、オイラのほっぺにちゅーしてくれー、ノイローゼで死んじまうよー」
「駄目だ熱で頭がイカれてやがる」
この惚気狐は、熱が出てもブレないままであった。恥知らずの馬鹿狐とはこのことである。
目の前にいるヒナタをクレセントと見間違えるくらいなのだから、クリーチャーワールドに居た頃のバカップルぷりが見えてきた。
白陽はボカしていたが、ある意味大人なヒナタには分かる。決戦の前日に行為に及んだ程のバカップルぶりが。
それはともかく、である。超技呪文の反動は、恐らくクレセントみたく真の姿に目覚めなければ消えないだろう。
このままでは困る。
「頼むぜー、ニャンクスをブチのめすためには、お前の力が必要なんだからよ」
最近、ヒナタはニャンクスとの再戦に備え色々なデッキを試していた。ドラグハートのみならず、最近は侵略という戦術も開発されており、ヒナタは早速それを試したいと思っていた。
だが、いずれも机上論。しばらくはドラゴンで戦っていくことになりそうである。
「お前には早く良くなって貰わないとな」
「あふん、そこはやめてくれ、くれせんとー」
「返せ、俺の慈愛と博愛の精神を返せ」
このエロ狐、チビになると普段こそ冷静ぶっているものの、そのメッキが剥がれてこうなるのだった。
「ったく、どうしたもんか」
はぁ、とため息をつき、雨の降る外をヒナタは眺めていたのだった----------
- Act3:捨て猫×少女=飼い猫? ( No.82 )
- 日時: 2015/06/08 09:07
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
明くる日のD・リーグ。今日は二回生の日だった。この学園には、S・ポイントというシステムを搭載したD・リーグという授業が行われている。
前にも説明したが、もう少し詳しく解説すると、生徒同士によるデュエマで勝敗を決め、成績をつけるというものだ。
しかし、このS(シールド)・ポイントというのが厄介なのである。これは、最初に生徒が30ポイントほど持っており、相手との勝負に勝ったとき2ポイント増加、負けたときに2ポイント減るというものだ。
ただし、問題は相手とシールドの差をつけて勝った場合、更にボーナスで相手のポイントを奪えるという点で、万が一ポイントが0になったものは退学。これにより、半ば強制的に生徒の闘争心を引き出しているのだった。
そしてこのシステムにより、今のところ10数人ほどが退学している。
とはいえ、このS・ポイントはD・リーグ以外でも貰えることがあるので、なかなか退学できないようにはなっているのだが。
さて、本日の生徒注目の対戦カードは---------
「《暗黒鎧 キラーアイ》進化! 《悪魔龍王 キラー・ザ・キル》へ! クリーチャーを全て破壊し、シールドをT・ブレイク!!」
「お、おいおい、やべーよコレ……」
暁ヒナタと黒鳥レンであった。よりによって、この2人である。
そして、試合の結果だが---------
「僕のターン! いくぞ、《キラー・ザ・キル》でダイレクトアタック!!」
「うわあああ!!」
今回は、レンの勝利に終わったのだった。
新しいデッキを組んだ彼は、新たなドラゴンでヒナタを倒したのだ。とはいえ、この2人の戦績はかなり拮抗しており、ヒナタが10回勝ったのならば、レンも10回勝っている、というほどのライバルっぷりなのである。
「ちくしょー、やられたぜ、今回は……」
「貴様とのデュエルは、恨みっこなしだからな。気が軽い」
「互いにS・ポイントが溜まっているしな」
互いに二回生の筆頭戦力と言われている。彼らが退学することはないだろう。何の筆頭戦力かって、夏に行われるチーム大会、鎧竜サマートーナメントの筆頭戦力なのだから。
「ねぇ、あんたら」
と、2人でやーやーやってる間に、コトハが話しかけて来た。
久々の、いつもの3人組だ。
「んあ? 何だ」
けだるそうに返したヒナタは、彼女に問うた。いきなり、何のようだろうか。
コトハの顔は、普段と打って変わってうれしそうだし。
「ねぇ、ねぇ! 聞いてよ! 昨日、猫を拾ったんだけど」
「拾った?」
いきなり何だろうか、彼女は。ペットの話など聞いてない、と言わんばかりにレンは顔を顰めた。
だが、猫というワードでヒナタは、ある人物を思い出す。ニャンクスだ。此処で、彼の興味は完全に猫へ向かったのである。まだ、レンとコトハには話していない、昨日の決闘だ。
レンを引っ張り、話を詳しく聞くことにした。それは、塾帰りにふらふらの猫を助けたというものだった。
しばらくは惚気のような話が続いたが、「でも、妙なことがあるのよ」と彼女は言った。
「……野良猫らしいんだけど、雑種じゃなくて血統の良いシャムみたいなの」
「野良でシャムがほっつき歩いているもんなのか? つーか、血統の良いシャムって見て分かるもんなのか?」
「前にシャムを飼ってたから……。車に撥ねられて死んじゃったけど」
「では、捨て猫か。可愛そうに」
「怪我もしてたから、手当てしたのよ」
人懐っこい辺り、そうなのだろう、とレンは判断した。
一方で、ヒナタは別のことを考えていた。
-----------そういえば、ニャンクスの野郎の目はサファイアブルーだったな。シャム猫の特徴のそれだ。偶然か? 俺がニャンクスを倒した次の日に、コトハがシャムを拾うなんて……偶然じゃねえものを感じるのは、俺だけなのか?
感じるも何も、当事者はヒナタしかこの場にはいないので、仕方がないのであるが。
「……まさかな」
こんなに幸せそうな顔をしているコトハは、初めて見た。いつもは気丈に、強気に振舞っている彼女だが、飼い猫が死んでからは、どこかで苦しい思いをしていたはずだ。まして、車に撥ねられたのだから尚更である。
そんな彼女の幸せを壊す権利は自分に無い、どんな理由があろうが、とヒナタは抑えたのだった。
「ところでレン」
コトハは話を変える。
どうやら、先ほどのデュエルについてのようだ。
「新しいカードを使っていたけど」
「ああ。ダーク・ナイトメア。鎧竜で開発された、闇文明のもう1つの新種族だ。個人的に、こちらの方が好みでな」
「ま、確かにレンにファンキー・ナイトメアは似合わないだろうな」
「闇文明の高潔な美学を貫くには、これ以上無い」
そんな他愛の無い会話が続いた、そのときだった。
「ヒナタせんぱーい!!」
「ど、どうも……」
声のする方を見れば、ノゾムとホタルの姿があった。
「あら? 貴方が新聞部の淡島ホタルちゃんだっけ」
「話は聞いている。大変だったな」
「どうも、ご無沙汰しております、如月先輩! 黒鳥先輩!」
明るさはある程度は戻ったのか、快活な表情で答えるホタル。しかし、どうやら只事では無いようだった。
「お前ら。どうしたんだ?」
「実は、スマホのニュースを見ていたんですが……」
ホタルが画面を見せる。そこには、”交通事故再び、3人意識不明”という見出しのニュースだった。
思わずヒナタは「馬鹿な!」と声を上げてしまう。ニャンクスは昨日、ボコボコにして、しばらくは動けないのではなかったのか。
「……どうなってんだオイ……!」
痛めつけようが足りなかったのか。新聞の記事には”長靴を履いた猫”という記述が記されており、ニャンクスの仕業であることには間違いないが……。
「どうしたのよ。この長靴を履いた猫って……」
「クリーチャー、なのか?」
「……」
ヒナタはしばらく黙っていた。
張り詰めた表情の彼を、ノゾムは心配そうに見つめていた。
「……ヒナタ先輩、こいつは……」
「待て、今は何も言うな」
ノゾムを制し、ヒナタは続ける。
「……分かった。放課後、もう1回会おう」
「あ、はい!」
「了解です、先輩!」
そういって、2人の後姿を見送るヒナタ。
レンが怪訝な顔で「何か知っているのか?」と聞いてきたが、何とか振り切り、彼はその場を後にした。
-----------まさか……そんな偶然が------------!!
未だに、彼の中では焦燥が渦巻いていた。
- Re: デュエル・マスターズ D・ステラ 〜星々の系譜〜 ( No.83 )
- 日時: 2015/05/18 09:33
- 名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: CzRhDmzb)
もしかして、前にいたタク?
レッドです。久しぶりだね、覚えてるかな?
小説読みに来ました。
デュエマ、色々な展開に持ち込んできたね!
オリキャラの活躍も楽しみにしています。また遊びに行くね!
- Re: デュエル・マスターズ D・ステラ 〜星々の系譜〜 ( No.84 )
- 日時: 2015/05/20 01:47
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
レッド
お久しぶりです。最近カキコに来ていないから、心配していたところですよ。
勿論、忘れるわけ無いじゃないですか。自分がカキコ始めたのはレッドさんの作品のおかげなんですから。
とはいえ、今作はオリキャラを使う予定は、まだ無いんですけどね。何であれ、こうして応援のコメントをして下さるのはとても嬉しいです。本当にありがとうございます。
それでは、また。
- Act4:リターンオブ・サバイバー ( No.85 )
- 日時: 2015/05/23 14:36
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
ノゾムとホタルには、集合場所を予め指定しておき、一旦ヒナタは家に戻ることにした。
そして、クッションの上で熱を帯びた体を苦しそうな荒い呼吸で躍動させている白陽に毛布をかけてやる。
まだ彼が治るのは先だろう。クレセントでさえ、あの後もう少し時間が掛かったのだから。
「……すまねえ、また行って来るぞ、白陽」
「うーん、ひなたー?」
霞んだ視界に見える彼の姿が、まるで置いてけぼりにしていくように白陽には見えたのだろう。
「おいてかないでくれよぉ……おいらも連れてってくれよぉ」
熱の所為か、弱気にそんなことを呟くのだった。
「おいら、ひなたが学校行ってる間も、すっげー寂しかったんだよぉ……」
「すまんが、お前にこれ以上悪くなられても俺ァ困るんだよ。クレセントの夢でも見て我慢してろ」
流石に冷たいか、とヒナタは思った。これで諦めてくれれば良かったのだが。
「たのむよ、連れていってくれよ……」
「だぁーっ、お前って奴はなーっ!」
思わず怒鳴るヒナタ。これも白陽の体調を考えてのことであるのだが。
「ちっ、仕方ねぇ……カードのままで居ろよ? デュエマには出さねーぞ? それでも良いな?」
***
「えっ、白陽連れて来ちゃったんすか!?」
「はっ、デュエマには出さないし、カードのままで居ろとはキツく言っている。とっとと回復して欲しいから休んでろって言ってるのによ」
『すまぬヒナタ、無理を言ったな、ゲホゲホ』
「やっぱり、置いて来たほうが良かったんじゃないですか?」
ヒナタ達が集合したのは、事故があったという交差点の周辺だった。交差点には警察の事故処理車と警官に阻まれ入ることはままならなかったが、いたしかたないことである。
何か手がかりが無いか、探すことにした。
それに、ニャンクスはまだまだ遠くには行っていないはずだ----------
「と言いたいところだが、こいつを相手にしてる間に10分も経ってしまった、全部この惚気狐の所為だということにしておこう」
「先輩……」
『もう! 白陽を悪く言わないで! 白陽はあたしに会うために来てくれたんだよね? そうだよね?』
「お前最近少しずつヤンデレ入ってないか」
あのー、とホタルが割ってきた。
「とりあえず、”あれ”については何かコメントしないんですか? 特大スクープものなんですが」
”あれ”? と2人はホタルが指差した方向を見る。
そういえば、さっきから雲がかかったように暗い。今日は雲ひとつない晴れた天気のはずなのに。
上空を見た。
確かにそこには、”何か”よく分からないものがあった。
とても巨大で上空を覆いつくしてしまいそうな、何かが。
「って、どええええええええええええ!?」
そこには、巨大な5つの足が左右についた、要塞のような何かが上空に浮遊していた。全貌こそ分からなかったが、それが明らかに普通のものではないことだけは察しがついた。
周りの人間はそれに気付いた様子はない。ただ、「急に空が暗くなったな」程度にしか思っていないのである。
恐らく、見えていないというのが正しいのであるが。
『あれは……クリーチャーか? しかし、何のクリーチャーなのかさっぱり分からんのう』
「待ってください! 何か出てきますよ! デジカメ用意しないと」
「ブレねえな、お前も」
ガコン、と要塞の口のような部分が開いた。そこから----------何かがこちらへ向かってくるのが分かる。
それは、異形のモノ。クリーチャーであることは明確であった。
「待てよ、あれ見覚えがあるぞ!! 《ブレイズザウルスα》に《流星魚α》、《鉄壁の守護者ガリア・ゾールα》じゃねえか!?」
「サバイバーじゃないですか! 何でそんなクリーチャーが此処に!」
『恐らく、ニャンクスが生み出したと見て間違いないが』
「大本はあの要塞……《シェル・ファクトリーγ》ですね」
サバイバー。それは地下から現れた侵略者。デュエル・マスターズではかなり前の種族であるが、愛好家はそれなりに多い。
しかも、彼らは固有能力をサバイバー同士で共有するという特殊な力を持っており、数を増やされれば厄介だ。
さらに、本体であろう《シェル・ファクトリーγ》はこの位置からは遠すぎて決闘空間に引きずりこめないか。
「仕方がねぇ! 雑魚だけでも蹴散らすぞ!」
「了解! ぶっ潰してやるぜ!」
「わ、分かりました! ハーシェル、お願い!」
3人のデッキが輝き、黒い靄が発生する。それがサバイバー達を包み込み、今此処に決闘空間が開かれたのだった。
***
「ヒナタの奴ら、最近僕達を置いていくことが多くなったな」
「あいつら、あたし達を巻き込むまいって思ってるんでしょうけど、勝手に戦力外にされちゃ困るのよ」
如月宅の前で、レンとコトハは最近のヒナタ達について話していた。コトハの腕にはしっかりと例の猫が抱かれていた。
レンを呼んだのはこれを見せるためだったというのだから、彼からすれば迷惑極まりないことである。
「決闘空間が開けるとはいっても、実質”生きたカード”の有無はやはり死活問題よ。なのに、オーロラの奴、黙って出て行っちゃったんだから! いつになったら戻ってくるのやら!」
はっ、とコトハは口を噤んだ。レンの顔がいつにも増して、険しくなっていた。
地雷を踏んでしまったか、と彼女は後悔した。
「……スミスはもう、戻っては来ないがな」
「レン……」
彼の相棒はもう、戻ってこない。オラクルとの戦いで彼を庇って死んだのだ。
吹っ切ったつもりだった。だが、未だに辛い。彼は自分が嫌になった。コトハに要らぬ心配を掛けてしまったか、と。
「とにかくだ、コトハ。最近僕も調べていたのだが、このような事故や事件が多すぎるんだ」
気を取り直すように、レンはスマホのニュースの画面を見せた。
「ヒナタ達から聞いたことは、星の英雄と邪悪なドラグハートのこと。そして、まだ英雄は2人、この海戸にいるということだ」
「それも、地球の邪気で汚染された英雄でしょう?」
「ああ。最近の事件、ヒナタは黙ってはいるが、ひょっとすればこれも英雄の仕業ではないか、とな」
「とんでもない連中ね……」
「これが本気を出したらどうなるか。オラクル以上の脅威になる前に、僕らでどうにかしなければなるまい」
「でも、あたし達で対抗できるの? 生きたカードは、いずれもこれまでの常識に縛られない能力を持つカードもあるのよ?」
できるさ、と彼は言い切った。
「僕らは今までの戦いで、いつも相手のカードの効果を知っていた訳じゃない。いつも未知の敵との戦いだった。わざわざ生きたカードに頼る必要はない」
コトハは彼の言葉を聞いて逆に不安になった。
彼はスミスがもう帰ってこないから、自分を奮い立たせようとしているのではないか。離れていても、オーロラやドラポンがいる自分達とは違って、もう彼には相棒と呼べる生きたカードは居ないのだ------------
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