二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ D・ステラ 【侵略世界編】
日時: 2017/01/16 20:03
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

【読者の皆様へ】
はい、どうも。二次版でお馴染み(?)となっているタクと申します。今回の小説は前作の”デュエル・マスターズ0・メモリー”の続編となっております。恐らく、こちらから読んだ方がより分かりやすいと思いますが、過去の文というだけあって拙いです。今も十分拙いですが。
今作は、前作とは違ってオリカを更にメインに見据えたストーリーとなっています。ストーリーも相も変わらず行き当たりばったりになるかもしれませんが、応援よろしくお願いします。

また、最近デュエマvaultというサイトに出没します。Likaonというハンドルネームで活動しているので、作者と対戦をしたい方はお気軽にどうぞ。


”新たなるデュエル、駆け抜けろ新時代! そして、超古代の系譜が目覚めるとき、デュエマは新たな次元へ!”



『星の英雄編』


 第一章:月下転生

Act0:プロローグとモノローグ
>>01
Act1:月と太陽
>>04 >>05 >>06
Act2:対価と取引
>>07
Act3:焦燥と制限時間
>>08 >>10
Act4:月英雄と尾英雄
>>13
Act5:決闘と駆け引き
>>14 >>15 >>18
Act6:九尾と憎悪
>>19 >>21
Act7:暁の光と幻の炎
>>22 >>23
Act8:九尾と玉兎
>>25

 第二章:一角獣

Act1:デュエルは芸術か?
>>27 >>28 >>29
Act2:狩猟者は皮肉か?
>>30 >>31 >>32 >>33
Act3:龍は何度連鎖するか?
>>36 >>37
Act4:一角獣は女好きか?
>>38 >>39 >>41 >>42 >>43 >>44 >>45
Act5:龍は死して尚生き続けるか?
>>48

 第三章:骸骨龍

Act1:接触・アヴィオール
>>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55
Act2:追憶・白陽/療養・クレセント
>>56 >>57
Act3:疾走・トラックチェイス
>>66
Act4:怨炎・アヴィオール
>>67 >>68
Act5:武装・星の力
>>69 >>70
Act6:接近・次なる影
>>73

 第四章:長靴を履いた猫

Act1:記憶×触発
>>74 >>75 >>76 >>77
Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解
>>78 >>79 >>80
Act3:捨て猫×少女=飼い猫?
>>81 >>82
Act4:リターン・オブ・サバイバー
>>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90
Act5:格の差
>>91 >>92 >>93 >>104
Act6:二つの解
>>107 >>108 >>109 >>110
Act7:大地を潤す者=大地を荒らす者
>>111 >>112 >>113
Act8:結末=QED
>>114

 第五章:英雄集結

Act1:星の下で
>>117 >>118 >>119
Act2:レンの傷跡
>>127 >>128 >>129
Act3:警戒
>>130 >>131 >>132
Act4:策略
>>134 >>135
Act5:強襲
>>136
Act6:破滅の戦略
>>137 >>138 >>143
Act7:不死鳥の秘技
>>144 >>145 >>146
Act8:痛み分け、そして反撃へ
>>147
Act9:fire fly
>>177 >>178 >>179 >>180 >>181
Act10:決戦へ
>>182 >>184 >>185 >>187
Act11:暁の太陽に勝利を望む
>>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>193 >>194 >>195
Act12:真相
>>196 >>198
Act13:武装・地獄の黒龍
>>200 >>201 >>202 >>203
Act14:近づく星
>>204


『列島予選編』


 第六章:革命への道筋

Act0:侵攻する略奪者
>>207
Act1:鎧龍サマートーナメント
>>208 >>209
Act2:開幕
>>215 >>217 >>218
Act3:特訓
>>219 >>220 >>221
Act4:休息
>>222 >>223
Act5:対決・一角獣対玉兎
>>224 >>226
Act6:最後の夜
>>228 >>229
Act7:鎧龍頂上決戦

Part1:無法の盾刃
>>230 >>231 >>232 >>233 >>234 >>235 >>236 >>239
Part2:ダイチの支配者、再び
>>240 >>241 >>242 >>243 >>244 >>245 >>246 >>247 >>248 >>250
Part3:燃える革命
>>252 >>253 >>254 >>255 >>256
Part4:轟く侵略
>>257 >>258 >>259 >>260 >>261

Act8:次なる舞台へ
>>262


 第七章:世界への切符

Act1:紡ぐ言の葉
>>263 >>264 >>265 >>266 >>267 >>268 >>270
Act2:暁ヒナタという少年
>>272 >>273
Act3:ヒナとナナ
>>275 >>276 >>277 >>278 >>279 >>280 >>281
Act4:誓いのサングラス
>>282 >>283 >>284 >>285
Act5:天王/魔王VS超戦/地獄
>>286 >>287 >>295 >>296 >>297 >>298 >>301 >>302 >>303 >>304 >>305
Act6:伝説/閃龍VS獅子/必勝
>>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>323
Act7:青天霹靂
>>325 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>331
Act8:揺らぐ言の葉
>>332 >>333 >>334 >>335 >>336
Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神
>>337 >>338 >>339 >>340 >>341 >>342 >>343
Act10:伝える言の葉
>>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351
Act11:連鎖反応
>>352


『侵略世界編』


 第八章:束の間の日常

Act1:揺らめく影
>>353 >>354 >>359 >>360 >>361 >>362
Act2:疑惑
>>363 >>364
Act3:ニューヨークからの来訪者
>>367 >>368 >>369 >>370 >>371
Act4:躙られた思い
>>374 >>375 >>376 >>377
Act5:貴方の為に
>>378 >>379 >>380 >>381 >>384 >>386
Act6:ディストーション 〜歪な戦慄〜
>>387 >>388 >>389
Act7:武装・天命の騎士
>>390 >>391
Act8:冥獣の思惑
>>392
Act9:終演、そして——
>>393


 第九章:侵略の一手

Act0:開幕、D・ステラ
>>396
Act1:ウィザード
>>397 >>398
Act2:ギャンブル・パーティー
>>399 >>400 >>401
Act3:再燃 
>>402 >>403 >>404
Act4:奇天烈の侵略者
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>411
Act5:確率の支配者
>>412 >>413
Act6:不滅の銀河
>>414 >>415
Act7:開始地点
>>416


 第十章:剣と刃

Act1:漆黒近衛隊(エボニーロイヤル)
>>423 >>424
Act2:シャノン
>>425 >>426
Act3:賢王の邪悪龍
>>427 >>428 >>429
Act4:増殖
>>430 >>431 >>435 >>436 >>438 >>439 >>440 >>441 >>442
Act5:封じられし栄冠
>>444


短編:本編のシリアスさに疲れたらこちらで口直し。ギャグ中心なので存分に笑ってくださいませ。
また、時系列を明記したので、これらの章を読んでから閲覧することをお勧めします。

短編1:そして伝説へ……行けるの、これ
時系列:第一章の後
>>62 >>63 >>64 >>65

短編2:てめーが不幸なのは義務であって
時系列:第三章の後
>>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103

短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル)
時系列:第四章の後
>>120 >>121 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126

短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日
時系列:第四章の後
>>149 >>150 >>153 >>154 >>155 >>156

短編5:恋情パラレル
時系列:第四章の後
>>157 >>158 >>159 >>160 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>173 >>174 >>175 >>176

短編6:Re・探偵パラレル
時系列:平行世界
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422

エイプリルフール2016
>>299 >>300

謹賀新年2017
>>443


登場人物
>>9
※ネタバレ注意。更新されている回を全部読んでからみることをお勧めします

オリジナルカード紹介
(1)>>96 (2)>>271
※ネタバレ注意につき、各章を読み終わってから閲覧することをお勧めします。

お知らせ
16/8/28:オリカ紹介2更新

Act0:侵攻する略奪者 ( No.207 )
日時: 2015/10/18 17:37
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)

「ちっ、面倒な……」

 赤いパーカー、首にはめたヘッドフォン、威圧するような赤眼。
 まるで、戦士のような、それでも気だるさを持った眼光は、キッ、と一瞬だけ細くなった。
 それらを持つのは赤毛の少女だった。まだ幼さを残すというか、紛うことなき幼い少女である。
 背も低く、体型も女性のそれとは程遠い子供っぽいものだった。
 しかし。1つだけ異質だったのは、やはり普通の少女は持ち得ない気迫だった。
 彼女は目の前に立ち塞がる男達が犯罪者に見える程度には幼い。
 しかし、その上で彼女は舌打ちした。
 明らかに面倒ではすまないこの状況に。
 敢えてこう言ってみせた。



 「つまらん」と。



「それを返してもらおうか」
「それは危険な代物だ」
「ついでに貴様の身柄も拘束させてもらう」

 黒いスーツに奥が見えない程黒いサングラス、とにかく黒が印象的な男達は銃を掲げた。
 しかし。それに臆した様子は彼女は見せない。どころか、そのまま突っ切って歩いていく。

「止まれ! 撃つぞ!」

 拳銃を向ける男達。
 だが、気にも求めず、彼女はそのまま歩みを止めない。

「くっ、警告はしたぞっ!!」

 男の声が狭い通路に響いた。
 同時に、引き金が弾かれて鉛の弾が彼女の足をめがけて放たれた。甲高い着弾音が空気を裂く。
 しかし。
 次の瞬間、鉛の弾は彼女の肌に到達する前に、”爆ぜた”。

「はっ……!?」

 男達は困惑を隠せない。
 何が起こったのか全くわからなかったのだ。
 そのまま、何発も銃弾が撃ち込まれていくが、無機質な音と共にいずれも何かに阻まれて消滅した。
 
「こうなったら、力づくで——!」

 男3人は、実力行使に出たか、そのまま文字通り、腕づくで少女を押さえ込もうとする。
 しかし。
 彼女は身構えもしなければ、逃げもしなかった。
 それどころか、何かぶつぶつ呟いている。

「イグニッション、オーバードライブ——」

 刹那。
 最初に飛び掛った男の顔が——




「——ブースト、”レッドゾーン”」



 ——次の瞬間、思いっきりへしゃげて、そのまま通路の奥に、その頑強かつ巨大な身体を叩き付けて動かなくなった。
 さらに、2人目、3人目も同様にして通路の奥へ叩き込まれる。
 凄まじい速さだった。
 まるで、何者かに高速で殴られたかのようだった。
 しかし、彼女は指一本動かしていない。
 ただただ、歩みを止めずに前へ進んでいるだけだった。
 倒れた男達を尻目に、彼女は名を呼ぶ。
 自らがもっとも信頼する者の名前を。

「”アマツカゼ”」

 その声に反応し、彼女のデッキから甲高い声が響いた。

「はいはーい! やっと、手に入れたんだね、そのカード!」
「違法クラスのスピードを持つクリーチャー……世に出すことも憚られ、中止になったカード……これが……」
「ぼくも早く、侵略したいんだよねー! ねー、ねー! この”身体”になってから、侵略への欲求が止まらないの! それに、さっきの銃弾、代わりに僕が直接食らってあげられたら——」
「うるさい」
「それにさー、ぼくは会いたい人がいるって言ってるじゃん? ぼくが一番侵略したいのは、その人の心なんだから」
「うざい。黙れ。私が聞きたいのはそういうことではない」

 彼女が思いっきりカードを指と指で捻り、ぐぎぎぎ、とカードにあるまじき音が鳴るが、アマツカゼと呼ばれたクリーチャーは愉悦に浸ったような声を上げた。

「ああん! もっといじめてぇぇぇん! 痛くしてよ、コロナー! アァーッ!」

 びくん、びくん、とカードが妙に震えた。
 どうやら、完全にイってしまっているようである。このクリーチャーの頭も、身体も。

「痛いのは貴様の性癖だ、好い加減に理解しろ。燃すぞ。八つ裂きにするぞ」
「ああ、そんなんじゃ感じられないってばぁ」
「黙れ。どうしてお前はこうも気持ちが悪い」
「あの日……あの人に首を裂かれた日から、ぼくは覚醒したんだ。これって至って普通のことじゃない?」
「言っていることは異常そのものだ、死んだと同時にドマゾに覚醒した貴様は、全てのクリーチャーから見ても常軌と常識を逸している」
「ああ、幸せ……もうあの身体は戻ってこないけど、代わりにちょっとやそっとの痛みじゃ死ねないこの身体……湧き上がる侵略の力……良かった……マゾに生まれて」
「話聞いてたかコイツ」
「それはともかく」

 ふふん、と得意げにアマツカゼは言った。



「ぼくの力があれば、君はそのカードで世界を侵略することができる……そして、君を助けるのがぼくの役目だ……! 一刻も速く、彼を探し出すんだ……! 僕の真の力は、彼がいなければ発動できないからね……!」



 分かっている、と彼女は言った。

「ギブアンドテイク……貴様に教えて貰った精神だからな」

 次の瞬間、ビルの壁に大穴が開く。そこから先は、地面などない。
 摩天楼に連なるビルの最上階に位置するここは、飛び降りれば人間が助かる高さではない。
 しかし。
 それさえも臆すことなく、彼女は足を踏み出した。



「——この腐った世界を壊すぞ、”アマツカゼ”——」
「——そうだね——」


 
 アマツカゼが微笑んだ。 



「——”火文明の適合者”、コロナ……! 君を選んで正解だったよ……!」
「——私は略奪してやる。かつて、私から全てを奪ったこの世界を——」

Act1:鎧龍サマートーナメント ( No.208 )
日時: 2015/10/25 23:16
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)

「俺のターン! 《メガ・マグマ・ドラゴン》を召喚! 効果で、パワー5000以下をみんな破壊だ!」
「馬鹿め! 《ヘルミッション》が破壊されたから、《マグマ・ドラゴン》も破壊する!」
「くっ、やるじゃねえか……! 最近、ますます強くなったか?」
「そっちこそな……!」

 睨み合う2人の少年。
 対戦をしているのは大事件が起こった後も相も変わらずの、暁ヒナタと黒鳥レンだった。
 一進一退の攻防を繰り広げる2人に、周りの全員は固唾を呑んで見守っている。

「僕のターン。《キラード・アイ》から進化、僕の切札の《悪魔龍王 キラー・ザ・キル》を召喚!!」



悪魔龍王 キラー・ザ・キル P 闇文明 (6)
進化クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 12000
進化−自分の闇のクリーチャー1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手のクリーチャーを1体破壊する。
T・ブレイカー



 周りから歓声が上がる。完全に、レンのペースになっていた。
 彼の切札である《キラー・ザ・キル》は殺戮の悪魔龍。一瞬でヒナタの場にあった《トップギア》を破壊した。

「そのまま、T・ブレイクだ!」
「わりーな、今日の給食の余りの唐揚げは俺のもんだ! S・トリガーで《シュトルム》召喚!」
「まだそんなことを言っているのか。唐揚げは僕のものだ。現に貴様は僕の《悪魔龍王 キラー・ザ・キル》を破壊できていないからな。ターンエンド。」

 今回。
 食い意地の張った男子達は、休みが出たために生じた男子の昼の生命線(誇張)である給食の余りの唐揚げを巡って、デュエルをしていたのだった。
 他にも勿論生徒はいたが、2人が速攻でデュエルで片付けてしまったため、現在に至る。
 んなことで一々デュエマしてんじゃねーよと言いたいであろうが、この2人だから仕方が無い。
 
「へっ、見やがれ。俺の切札を見せてやるぜ!」
「何?」

 ヒナタのマナゾーンのカードが6枚、タップされた。
 そこから、燃え上がる炎、そして最強の龍が現れる系譜となる。



「《シュトルム》から進化、《エヴォル・ドギラゴン》! そのまま《キラー・ザ・キル》を殴り返せ!」
「なっ!?」



エヴォル・ドギラゴン P 火文明 (6)
進化クリーチャー:メガ・コマンド・ドラゴン 14000
進化−自分の火のクリーチャー1体の上に置く。
このクリーチャーがバトルに勝った時、このクリーチャーをアンタップする。
T・ブレイカー



「《悪魔龍王 キラー・ザ・キル》を攻撃して破壊! そして、バトルに勝ったからアンタップだ!」

 瞬殺。パワーの差は歴然であり、レンの悪魔龍の王は一瞬で墓地へ叩き落された。
 さらに、ヒナタはシールドへ攻撃しなかったため、レンは手札を供給することもできなくなってしまう。
 対し、ヒナタの場には巨大な進化クリーチャーの《ドギラゴン》が佇んでいる。

「ターン終了だぜ!」
「くっ、おのれ……! 貴様というやつは……!」
 
 次のターン、レンが召喚したのは、《ギラン》と墓地進化によって現れた《デスマーチ》だった。両方共ブロッカーだ。《ドギラゴン》の敵ではない。しかし、問題は後続のアタッカーはこれらに阻まれてしまうということ。
 しかし。それでもヒナタは笑みを浮かべる。逆転のための手札を与えなかったのは、やはり正解だった、と。
 ドラゴンは1撃必殺。そのターンで決めるのがサダメ。
 ヒナタは勝利を叩き付ける。
 目の前の、最高のライバルに。
 そして——

「スピードアタッカーの《熱血龍 GENJI・XXX》を召喚! ブロッカーを全て破壊だ!」
「なっ……!?」
「《GENJI》で残りのシールドを全てブレイク!」 

 シールドを確認するレン。
 しかし、もう逆転の手立ては無いとその瞬間、悟った。

「——《エヴォル・ドギラゴン》でダイレクトアタック!」

 そして、ドラゴンを超えたドラゴンの攻撃が、ダイレクトにレンへ炸裂したのだった——



 ***



「くっ、おのれ……」
「昨日はお前の勝ちだったからな。今回は勝たせて貰ったぜ!」

 給食後。腹をさすって言うヒナタに、やりきれない表情でレンは溜息をついた。

「あー、食った食った!」
「良いさ、唐揚げは肌に油が浮——駄目だ、やはり悔やまれる……」
「なははは、悔しさを押し殺しても、分かるっての。食い物なら尚更だぜ、レン」
「次は! 僕が勝つからな!」
「望むところだ!」

 それにしても、ここ最近で彼はやはり元気にはなった、とヒナタは重々感じていた。
 それによって、日常が戻ってきたことを痛感していたのだ。大きな事件が1つ終わったことで、肩の荷が降りたというか……。

「明日の全校集会は何だ? 学期末集会ではない、よな」

 思いに浸っている間もなく、レンの声がヒナタの意識を我に戻す。かなりぼーっとしていたようだ。
 さて、少し不自然な時期の全校集会が、明日開かれることになっていると彼は言った。
 さらに、教室のみんなもやけにそわそわしているので、レンは気になって仕方が無い様子だった。

「ああ、去年お前は居なかったから知らないのか」
「? ああ、そうだが」
「祭りだな」

 きょとん、とした表情を浮かべるレンに、悪戯っ子のような笑みを浮かべて彼は言った。

「ああ、悪い。分かりにくかったな」
「比喩的ではなく、具体的に説明してほしいのだが」

 悪かった、とヒナタは軽く謝ると、今度は真剣な面付で答えた。




「毎年恒例らしいが、明日、”鎧龍サマートーナメント”の今年のルールが発表されるんだぜ」

Act1:鎧龍サマートーナメント ( No.209 )
日時: 2015/10/19 22:33
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)

『黒鳥レン』
「……何でもないぞ」

 アヴィオールはカードの中から、彼の小さな異変を見つけていた。それは正しく図星である。
 彼の挙動は、少しそわそわしていたのだ。
 はぁ、と息を吐いた彼は、言った。

「貴様には敵わんな……嬉しいのさ。単純にな」
『ほう』
「あの日、僕は鎧龍サマートーナメントに出られなかった」

 1年前。武闘ビルがオラクルに強襲を受けた。
 隠されたアイテム、0・メモリーをとうとうオラクルの幹部・イズモが見つけてしまったからである。
 それを止めるため、ヒナタ達はそこで、オラクル達を迎撃することになった。
 が、しかし。
 その戦いに敗れたレンは、オラクルに連れ去られることになってしまったのだった。
 理由は、彼が魂のみのオラクルの教祖・ヨミの器となるに相応しい人物だったからだ。
 彼は意識を失い、長い間眠っていた。
 目が覚めたら、トーナメントに乱入したオラクルは全てヒナタ達によって撃滅されて、自分もまた、助けられていたところだったのだ。

「僕には、ゼロの因子というものが眠っていたらしい。思えば、あれは適合者のような、特定のクリーチャーを引き寄せる才能だったのだろうな」
『しかし貴方の中に眠る力は、今は漆黒に染まっている。どういうことでしょうね』
「知らん」

 そんなことはレンにとってはどうでも良かった。
 唯一つ、言える事は。



「僕は仲間と戦えて嬉しい。それだけだ」



 それなら良いんですよ、とアヴィオールは言った。
 主の彼が幸せそうならば、それで十分なのだ。



 
 ***




 ——武闘ビル。海戸最高を誇る高さの、この建物の一室に、剣呑な雰囲気が漂っていた。
 プレジデントチェアーに座り、コートを着用したスマートな中年男性。
 対するは、銀髪を逆立たせた、如何にもこの場に不釣合いな少年だった。

「——あのカードが外部に流出してまもなく、日本以外の殆どの国に奴らが環境トップに侵出している」
「——由々しい事態であることは確か、ですか」
「——よもや、D・ステラ前にこんなことが起こるとは思わなかった」

 事の始まりは、数日前に米国のインベイト社からのDASH本部への通達だった。
 デュエル・マスターズは、最高運営販売元の組織・DASHの指揮の下、競売という形で複数の会社がエキスパンションを作成していた。
 特に、決闘先端都市と呼ばれる、所謂”デュエリスト養成学校”の存在する都市では、他の地域よりも2年先のカードを試製品として先行販売するのが常識である。
 海戸ニュータウンでもそれは例外ではない。
 現在、ドラゴンを初めとした大型種族を扱ってきた武闘財閥は、2つの種類の火のドラゴンを世に送り出した。
 正統なるこれまでの種族の発展系である熱血の龍、ガイアール・コマンド・ドラゴン。
 特定の力への対抗能力を持つ反抗の龍、メガ・コマンド・ドラゴン。
 これらが現在、海戸での環境を熱くしていた。
 しかし。米国のインベイト社は、まるでこれに対抗するかのように、ビートダウンに特化した種族を作り出した。
 それが——



「——侵略者」



 既存のクリーチャーの常識と常軌を逸した速さ、そしてそれに見合わない強さを誇るそれらは、各国で環境入りしていった。
 当初、DASH本部は侵略者を世に出すことを拒んだ。
 そのため、計画は取り下げられ、試製生産されていたカードも、環境のインフレに追いつくまでは封印される予定だった。
 しかし。

「——この世界とパラレルワールドの関係にある超獣界にも、同時期に侵略者と呼ばれるクリーチャーが現れた」
「——そして、全ての反抗を押し切るように、あの事件が起こったわけですか」

 ある日。保管されていた侵略者のカードが、全て盗難された。さらに何者かが侵略者のカードの詳細を全企業に漏らした。恐らくは同一人物かと思われている。
 犯人の詳細は未だに明かされていない。
 いや、それどころでは事態はすまなかった。
 何を思ったか、とうとうインベイト社は侵略者を日本以外の世界各国に販売を開始してしまった。
 そして、DASHもそれを認可してしまったのだ。
 さらに、日本にも侵略者のエキスパンションが発売されることが決定している。
 このままでは、環境の高速化は免れず、ゲームの破綻を生みかねなかった。
 特に、D・ステラでは侵略者を使ったデッキを海外チームが使うことは目に見えており、今の日本のカードでは対抗が難しい。
 武闘財閥は、これらに対抗する手段を開発せざるを得なかったのである。
 
「——そんなことを今更おさらいするために、俺を呼んだのではないでしょう。父上」
「——ああ。お前に託したいものがあるのだ」

 彼が取り出したのは、1つのジュラルミンケースだった。

「——この中には、デュエル・マスターズを革命する力が眠っている」
「——革命軍、ですか……しかし、奴らの力では」
「——お前たちが今まで見てきたのは、革命軍の力の一部に過ぎない」

 逆境を真に乗り越える力、それが革命だと彼は付け足した。
 


「1つ。それは、時さえも越えて、逆境を好機に変える奇跡の力」
「奇跡、ですか」
「ああ。しかし、ただ請うだけでは奇跡は訪れない。最後まで戦い続ける者にそれは答える」



 奇跡。最後までそれが起こることを願い、あきらめない不屈の力。それに初めて、それは革命を起こす。




「2つ。それは、障壁となる全てを深淵に沈めて失わせる殺戮の力」
「殺戮……即ち死」
「そうだ。しかし、彼の者は命を操る。盤面を180度ひっくり返すなら、このカード程の適任はいない」



 殺戮。敵を容赦なく、全て葬る悪魔の力。しかし、無闇な殺戮は悲劇しか呼ばない。故に、彼の者はそれを克服するため、命に革命を起こした。



「最後に——全ての炎を、既存の常識を全て覆す、龍を超えた龍の力」
「龍を超えた、龍?」



 最後の言葉には、ただならぬ気迫を感じた。



「革命……この言葉を、このクリーチャーに全て詰め込んだつもりだ。このカードはいわば、鎧龍の希望なのだ」



 男は、少年に託した。
 革命の希望を。
 彼は受け取るのに、少し躊躇した。
 しかし。これが今の状況を打破する力になりえるならば。
 彼はもう迷わなかった。



「——侵略者だけではない。邪悪龍攻略の糸口になりえるカードだ。何が何でも、これを相応しい者に掴み取らせろ——フジ」
「はい。武闘財閥の名に賭けて。そしてデュエルマスターズの革命に賭けて——」

Re: デュエル・マスターズ D・ステラ ( No.210 )
日時: 2015/10/19 01:05
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)

 さて、どこかでは後日以降とか言いましたが、手持無沙汰な間にちまちま書いてたら書ききれました。やっぱ、対戦描写を細かく見すぎるせいで、逆に対戦描写がないとさっくり終わってしまうそうです、モノクロ。なんか申し訳ないな……結局、対戦しか見てないみたいで、心苦しいです……

 そんな風にへこみつつも、新章突入といった感じの出だしから見て行きますと、早速、某赤城山選手のような台詞を言いつつ、やられるために出て来たような黒スーツの連中どもを薙ぎ払っていますね。バイクじゃなくて素手でレッドゾーン突入とか、もはや人間業じゃねぇ……お前ら人間じゃねぇ! って叫ぶべきなのか。
 とかいう冗談はさておいて、コロナとアマツカゼは別の存在というか種族なんですね。どっちもクリーチャーか、どっちも人間かなにかだと思ってました。まだコロナが人間だと確定したわけではないですが……そこまで捻くれてないですかね、流石に。
 そしてわっかりやすいマゾヒストのアマツカゼ……ここまで露骨で明瞭なマゾなんて久しぶりに見ました。一周半回って清々しさから気持ち悪さが滲みだしています。露骨すぎてちょっと引きました。
 ただ、こいつは侵略者のクリーチャーみたいですし、ただの気持ち悪いマゾではないんでしょうね。一体なにを秘めているのか、それは今後を楽しみにするとしますか。

 一方、日常パートが戻ってきた鎧龍では、ノゾムとホタルから入りますか。
 あんなことがあった直後ですし、なにかしらの変化があることは容易に想像できるわけで、なにかあるだろうなとは思っていましたけれども、助手て。
 助手てなんでしょうか。なんの助手でしょうか。これはモノクロの理解力が足らないゆえなのか、ちょっとよく分からないのですが。
 えーっと、要はアシスタントということなんでしょうが……助手が必要なほど、ノゾムってなにか色々してましたっけ。いや、きっともののたとみたいなものなんでしょうけども、むしろ手を借りたいのは新聞部でも動くホタルなのでは? と思わんでもないです。
 というかノゾムは自分の脳みそをスパコン並だと自称してたのか……流石に過言だろうよ。人間じゃできないからコンピューターにやらせてるっていう、超高度な演算ですよ、あれ。人間ができたらスパコンはいらないです。
 まあ、ちょっと無粋なツッコミだとも思いますが。その過言っぷりも、彼の幼さだとでも思っときますか。

 そして、今度はヒナタとレンですが、レンもやっとまともな本編復帰ですね。モノクロとしては嬉しい限りです。
 しかし思えば、もうそんな時期なんですね……0・メモリーの時のサマートーナメントは色々大変でしたが、今回は……大変じゃないわけないでしょうね。
 レンの振り返りを見ていると、やっぱり少ししみじみしますね……思えばレンは昔から敵に利用されていたな、うん。
 そのせいもあって、一緒に肩を並べて戦うということが非常に少なかったために、今はそれができるという彼の心情はよく分かりますし、そういう思いがあるのはいいですね。
 今後はアヴィ共々頑張ってほしいですね。

 次いで今度はフジパイセンと、そのお父様ですか。
 侵略者ってそういう経緯で生まれたんですね、この作品内では……やっぱり、ファッキン米国は考えることが違うぜ。カードだけじゃなくて頭の仲もぶっ飛んでる。
 というか日本は日本でちょっとのほほんしすぎな気も……侵略者に対抗できないとか言ってんなよ。いや、対抗する気でカード制作しているようですが、それってカードゲームの性質上、いいんですかね……別々の国でそんなことをしてたら、いたちごっこな気が。
 まあ、それは作品だからで片づけられることではあるんですけどね。ツッコむのは野暮でしょうかね。
 そして、それに対抗するためのカードはやっぱあれか……何気に現在の王様たちが微妙に蔑にされているようにも見える台詞ですが、まあ、連中は未来と過去のそれぞれの革命軍と密接につながっていますし、一概には言えませんか。
 しかし環境の話なんて持ち出したら、実際の革命軍は……いや、言わぬが花か。

 ともあれ、少しずつ今章が動き出して、モノクロはわくわくしています。D・ステラという世界大会のような話は、モノクロ自身もやりたいなと憧れているところがあったので。
 というわけで、今回はこの辺でお暇いたします。珍しく、短めの文章になりました。2000文字もない。やったね。
 ではでは。

Re: デュエル・マスターズ D・ステラ ( No.211 )
日時: 2015/10/22 22:13
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)

モノクロさん

コメントありがとうございます。
とはいえ、まさか本当にコメントくれるとは……。それはともかく、結局ここら3話は中間プロローグのような形になりましたが、どうも真ん中の回はひどかった。特にノゾムとホタル。後から読み直しても構成が甘かった。というわけで、この回だけは加筆修正したので勘弁してください、ということで。いや実際作者も読み直してどう修正しようかと考えていましたしね。

さて、まるでどっかのラヴァーの如く如何にもこいつ敵っぽいな、ライバルっぽいな、みたいなオーラを引っさげて現れましたは、コロナとアマツカゼです。後、黒スーツの男達はやられるために出てきました。わっかりやすい噛ませ犬ですね。
いやでもね、流石にあれ素手じゃないからね? どっからどう考えても素手じゃありませんよ? 指一本動かしていないって書いてますもん。そうなると最早、異能の域ですが、その正体は——ま、すぐに明らかになりますとも。
後、こいつらは別の存在です。どっちがどっちかは、もう分かるでしょう。分かりやすいですね。
そして、アマツカゼの性癖もわっかりやすいマゾ……でもギャグ要因に使いやすいから、こういうキャラは嫌いではないんだよなぁ……。いいの? どっかのラヴァーみたいにいかにもボスっぽい風格を漂わせてきたキャラがこんなんでいいの? コロナからすればとばっちり以外の何モンでもありませんが。
ただし、ただの気持ちの悪いマゾでは終わりません。その辺をまた、お楽しみに。

ノゾムとホタルは、まあ書き直した奴を読んでからまた感想を聞くとして、ヒナタとレンですね。
まーたくだらんことでデュエマやってる2人ですが、ようやくレンも本編レギュラー復帰ということで。
作者からすれば、100話近く使って、ようやくここまできたかって感じなんですよね、サマートーナメント。どんだけ時間の流れ緩いんだよ、おかしいだろ。
後、前作でも今作でも敵にのっとられたり、とりつかれたりが多かった彼ですが、アヴィオールを手にした以上は、もうその辺の心配はいらないかと。多分。作者のことだから、いつとばっちりで酷い目にあうかは知りません。
とはいえ、ようやく彼もこれで、改めてヒナタの仲間としてスタートをきることができたわけですので、応援よろしくお願いします。

最後は、フジと、その父ですね。名前は既に明かしています、どっかで。
まあ、この作品内では、まだ一般にはE2が発売されている頃なんですよね。革命とかDSとかは、海戸を初めとした先進都市で販売されているだけで。まあ、そこでは戦争みたいに開発→対抗のいたちごっこがこのように繰り返されていました、と。
まあ、何だ。

作品的なアレだよ。

ということで。
後、現実的かつ環境的なこと言ってやんなよ! 一応強いんだぞ、一応だけども!

さて、こちらも新章に向けて色々せねば。乞うご期待です。ありがとうございました。それでは。


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