二次創作小説(紙ほか)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

デュエル・マスターズ D・ステラ 【侵略世界編】
日時: 2017/01/16 20:03
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

【読者の皆様へ】
はい、どうも。二次版でお馴染み(?)となっているタクと申します。今回の小説は前作の”デュエル・マスターズ0・メモリー”の続編となっております。恐らく、こちらから読んだ方がより分かりやすいと思いますが、過去の文というだけあって拙いです。今も十分拙いですが。
今作は、前作とは違ってオリカを更にメインに見据えたストーリーとなっています。ストーリーも相も変わらず行き当たりばったりになるかもしれませんが、応援よろしくお願いします。

また、最近デュエマvaultというサイトに出没します。Likaonというハンドルネームで活動しているので、作者と対戦をしたい方はお気軽にどうぞ。


”新たなるデュエル、駆け抜けろ新時代! そして、超古代の系譜が目覚めるとき、デュエマは新たな次元へ!”



『星の英雄編』


 第一章:月下転生

Act0:プロローグとモノローグ
>>01
Act1:月と太陽
>>04 >>05 >>06
Act2:対価と取引
>>07
Act3:焦燥と制限時間
>>08 >>10
Act4:月英雄と尾英雄
>>13
Act5:決闘と駆け引き
>>14 >>15 >>18
Act6:九尾と憎悪
>>19 >>21
Act7:暁の光と幻の炎
>>22 >>23
Act8:九尾と玉兎
>>25

 第二章:一角獣

Act1:デュエルは芸術か?
>>27 >>28 >>29
Act2:狩猟者は皮肉か?
>>30 >>31 >>32 >>33
Act3:龍は何度連鎖するか?
>>36 >>37
Act4:一角獣は女好きか?
>>38 >>39 >>41 >>42 >>43 >>44 >>45
Act5:龍は死して尚生き続けるか?
>>48

 第三章:骸骨龍

Act1:接触・アヴィオール
>>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55
Act2:追憶・白陽/療養・クレセント
>>56 >>57
Act3:疾走・トラックチェイス
>>66
Act4:怨炎・アヴィオール
>>67 >>68
Act5:武装・星の力
>>69 >>70
Act6:接近・次なる影
>>73

 第四章:長靴を履いた猫

Act1:記憶×触発
>>74 >>75 >>76 >>77
Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解
>>78 >>79 >>80
Act3:捨て猫×少女=飼い猫?
>>81 >>82
Act4:リターン・オブ・サバイバー
>>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90
Act5:格の差
>>91 >>92 >>93 >>104
Act6:二つの解
>>107 >>108 >>109 >>110
Act7:大地を潤す者=大地を荒らす者
>>111 >>112 >>113
Act8:結末=QED
>>114

 第五章:英雄集結

Act1:星の下で
>>117 >>118 >>119
Act2:レンの傷跡
>>127 >>128 >>129
Act3:警戒
>>130 >>131 >>132
Act4:策略
>>134 >>135
Act5:強襲
>>136
Act6:破滅の戦略
>>137 >>138 >>143
Act7:不死鳥の秘技
>>144 >>145 >>146
Act8:痛み分け、そして反撃へ
>>147
Act9:fire fly
>>177 >>178 >>179 >>180 >>181
Act10:決戦へ
>>182 >>184 >>185 >>187
Act11:暁の太陽に勝利を望む
>>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>193 >>194 >>195
Act12:真相
>>196 >>198
Act13:武装・地獄の黒龍
>>200 >>201 >>202 >>203
Act14:近づく星
>>204


『列島予選編』


 第六章:革命への道筋

Act0:侵攻する略奪者
>>207
Act1:鎧龍サマートーナメント
>>208 >>209
Act2:開幕
>>215 >>217 >>218
Act3:特訓
>>219 >>220 >>221
Act4:休息
>>222 >>223
Act5:対決・一角獣対玉兎
>>224 >>226
Act6:最後の夜
>>228 >>229
Act7:鎧龍頂上決戦

Part1:無法の盾刃
>>230 >>231 >>232 >>233 >>234 >>235 >>236 >>239
Part2:ダイチの支配者、再び
>>240 >>241 >>242 >>243 >>244 >>245 >>246 >>247 >>248 >>250
Part3:燃える革命
>>252 >>253 >>254 >>255 >>256
Part4:轟く侵略
>>257 >>258 >>259 >>260 >>261

Act8:次なる舞台へ
>>262


 第七章:世界への切符

Act1:紡ぐ言の葉
>>263 >>264 >>265 >>266 >>267 >>268 >>270
Act2:暁ヒナタという少年
>>272 >>273
Act3:ヒナとナナ
>>275 >>276 >>277 >>278 >>279 >>280 >>281
Act4:誓いのサングラス
>>282 >>283 >>284 >>285
Act5:天王/魔王VS超戦/地獄
>>286 >>287 >>295 >>296 >>297 >>298 >>301 >>302 >>303 >>304 >>305
Act6:伝説/閃龍VS獅子/必勝
>>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>323
Act7:青天霹靂
>>325 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>331
Act8:揺らぐ言の葉
>>332 >>333 >>334 >>335 >>336
Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神
>>337 >>338 >>339 >>340 >>341 >>342 >>343
Act10:伝える言の葉
>>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351
Act11:連鎖反応
>>352


『侵略世界編』


 第八章:束の間の日常

Act1:揺らめく影
>>353 >>354 >>359 >>360 >>361 >>362
Act2:疑惑
>>363 >>364
Act3:ニューヨークからの来訪者
>>367 >>368 >>369 >>370 >>371
Act4:躙られた思い
>>374 >>375 >>376 >>377
Act5:貴方の為に
>>378 >>379 >>380 >>381 >>384 >>386
Act6:ディストーション 〜歪な戦慄〜
>>387 >>388 >>389
Act7:武装・天命の騎士
>>390 >>391
Act8:冥獣の思惑
>>392
Act9:終演、そして——
>>393


 第九章:侵略の一手

Act0:開幕、D・ステラ
>>396
Act1:ウィザード
>>397 >>398
Act2:ギャンブル・パーティー
>>399 >>400 >>401
Act3:再燃 
>>402 >>403 >>404
Act4:奇天烈の侵略者
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>411
Act5:確率の支配者
>>412 >>413
Act6:不滅の銀河
>>414 >>415
Act7:開始地点
>>416


 第十章:剣と刃

Act1:漆黒近衛隊(エボニーロイヤル)
>>423 >>424
Act2:シャノン
>>425 >>426
Act3:賢王の邪悪龍
>>427 >>428 >>429
Act4:増殖
>>430 >>431 >>435 >>436 >>438 >>439 >>440 >>441 >>442
Act5:封じられし栄冠
>>444


短編:本編のシリアスさに疲れたらこちらで口直し。ギャグ中心なので存分に笑ってくださいませ。
また、時系列を明記したので、これらの章を読んでから閲覧することをお勧めします。

短編1:そして伝説へ……行けるの、これ
時系列:第一章の後
>>62 >>63 >>64 >>65

短編2:てめーが不幸なのは義務であって
時系列:第三章の後
>>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103

短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル)
時系列:第四章の後
>>120 >>121 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126

短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日
時系列:第四章の後
>>149 >>150 >>153 >>154 >>155 >>156

短編5:恋情パラレル
時系列:第四章の後
>>157 >>158 >>159 >>160 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>173 >>174 >>175 >>176

短編6:Re・探偵パラレル
時系列:平行世界
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422

エイプリルフール2016
>>299 >>300

謹賀新年2017
>>443


登場人物
>>9
※ネタバレ注意。更新されている回を全部読んでからみることをお勧めします

オリジナルカード紹介
(1)>>96 (2)>>271
※ネタバレ注意につき、各章を読み終わってから閲覧することをお勧めします。

お知らせ
16/8/28:オリカ紹介2更新

Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神 ( No.342 )
日時: 2016/08/24 08:12
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

「《バトライ武神》——!!」
「このままいくぜ!! 《モルト「刃」》でシールドをW・ブレイク!!」

 熱い魂に呼応して、最強の熱血龍が現れた。
 暁の日差しで輝く戦場に、勝利を齎すために咆哮を上げる。

「狙うのは有栖川、お前のシールドだ!! W・ブレイク!!」
「ッ……!!」

 シールドが2枚、大剣によって叩き切られる。
 トリガーは無いようだ。そのまま、後に続くようにして、《バトライ武神》も攻めたてた。

「《バトライ武神》で攻撃するときの効果発動!! 山札の上から3枚を捲り、それが進化でないヒューマノイドかドラゴンならバトルゾーンに出せる!!」

 展開されたのは——《勝利天帝 G・メビウス》、《メガ・デストロイ・ドラゴン》、そして2体目の《モルト「刃」》の3枚。
 よって、3体ともバトルゾーンへ現れる。
 更に——

「出たカードが全てドラゴンの時、俺のクリーチャーはこのターン、全てスピードアタッカーを得る!!」

 全員が、《バトライ武神》の咆哮に応えるようにして腕を突き上げた。
 まさに、臨戦態勢。
 そして、士気高揚状態であった。

「更に!! 《覇闘将龍剣 ガイオウバーン》を《モルト「刃」》に装備して、もう1体の《オルタクティス》を破壊だ!」

 2体目の《オルタクティス》は突如現れた巨大な龍剣の前に切り伏せられた。
 これだけの打点があれば、ダイレクトアタックまで持っていくことができる。
 そんな希望と共に、《バトライ武神》の大剣が、ツグミのシールドを全て薙ぎ払った——
 ——凄いよ、ヒナタ——!! カードが連鎖するように——!! これなら、勝てるよ!!





「S・トリガー、《アポカリプス・デイ》、ちょーどーかも」




 ——刹那。2人の表情は凍り付いた。
 次の瞬間——破壊の光が全てを包み込む。
 そして、ヒナタとコトハは勿論、ツグミと真胴のクリーチャーも全て破壊されていく——

「《ニュークリア・デイ》は仕方ないかも。でも——」
「はい、ツグミ様。《サファイア》には付与されたエターナル・Ωがございます。でも、もうクリーチャーがいないので余り意味を成さないかもしれませんね」
「ッ!!」

 折角、後少しだと思ったのに攻めきれなかった。
 ヒナタの顔が真っ青になる。このままでは全滅だ。
 ドラゴン達が次々に消し飛ばされる中——

「《バトライ武神》、龍回避だ!!」

 必死に、叫ぶと同時に《バトライ武神》は要塞へと姿を変えることで破壊の光から逃れることが出来た。

「ターン、エンド……!!」

 流石に戦慄する。
 あれだけ並べていた軍勢が一瞬のうちに消失してしまったのだ。

「わ、わりぃコトハ——!!」
「良いのよ。殴っていれば、いずれあれを踏んで全滅していたわ。それにこっちにはまだ、ドラグハート・フォートレスがあるわ!」
「失礼。僭越ながら先ほどのお返しは、しっかりやらなければいけないようですね——!!」


 零央シールド5:真胴(5) ツグミ(0)

 次の瞬間、今度は真胴がカードを引く。
 そして——3枚のマナをタップした。

「呪文、《戦慄のプレリュード》」



戦慄のプレリュード UC 無色 (3)
呪文
このターン、次に召喚する自分の無色クリーチャーの召喚コストを最大5少なくしてもよい。




「その効果でコストを5軽減し——このクリーチャーを召喚させていただきます。私自身の切札を——」

 次の瞬間。
 大地が揺れる。そして——大きな咆哮と共に、虚空が裂けた。

「鬼と修羅、今こそ2つの力を融合し大いなる救いを齎せ——」

 天空に浮かび上がるのは、ゼニスの紋章だった。
 それが今、現れる。




「出でよ、《超絶奇跡 鬼羅丸》」





 現れたのは——以前、フジも使っていた最強のゼニス・《鬼羅丸》だった。
 その効果は、ガチンコ・ジャッジを3回行い、自分が勝つ度に見せたクリーチャーをバトルゾーンに出す、または見せた呪文をバトルゾーンに出すと言うものだ。

「それでは行きましょうか——三連ガチンコ・ジャッジ!! 相手は暁ヒナタ、貴方ですよ」
「ク、クソッ……!! またこれかよ!!」

 真っ青になるヒナタ。
 3枚のカードが展開される。
 1枚目——ヒナタが《メガ・マナロック・ドラゴン》コスト6、真胴が《G・サファイア》コスト10でバトルゾーンに。
 2枚目——ヒナタが《バーニング・銀河》コスト5、真胴が《ボルシャック・クロス・NEX》コスト9でまたもバトルゾーンに。
 そして3枚目——ヒナタが《次元龍覇 グレンモルト「覇」》に対し、真胴が《サイバー・A・アイアンズ》だ。
 これにより——3打点持ちのクリーチャー3体が一気にバトルゾーンへ出ることになってしまったのである。

「《クロス・NEX》の効果で、貴方はコスト4以下のクリーチャーを場に出せません。そして、《アイアンズ》の効果で自分は5枚ドロー」

 大きなアドバンテージだ。
 差はただでさえ圧倒的であるが——とうとう猛攻を仕掛けた。
 
「では、そのまま《鬼羅丸》でシールドをT・ブレイク!!」
「ッ……!!」

 これにより、ヒナタのシールドは既に全て叩き割られたことになる。
 今度はコトハを狙い、《クロス・NEX》と《アイアンズ》が追撃する。

「《クロス・NEX》でシールドをT・ブレイク!!」

 巨大な剣が振り下ろされ、コトハのシールドが3枚砕け散った。
 そして——最後に《アイアンズ》がその鉄槌を振り下ろす。

「では、《アイアンズ》で最後の2枚のシールドをブレイク!!」

 コトハは思わず見上げた。
 ——弱気になるな、あたし——!! あたしが此処で諦めたら、またあいつの足を引っ張っちゃう——!! それだけは、それだけは絶対に嫌!!
 それにこたえるかのように、コトハの最後のシールドが収束する。




「S・トリガー、《古龍遺跡 エウル=ブッカ》!! その効果で、《G・サファイア》と《クロス・NEX》をマナゾーンへ!!」




 次の瞬間、遺跡から伸びた蔓が2体のクリーチャーを拘束し、地面へ引きずり込んだ。
 これにより、真胴の場に攻撃できるクリーチャーは居なくなる——

「バカな——!! まあ、良いでしょう……《鬼羅丸》が居る限り、私の布陣は盤石です」
「そうね。でも、学習しないおバカさんには少し痛い目を見て貰うわ」
「……何?」

 次の瞬間——コトハの手札から2体のクリーチャーが現れる。

「《ベニジシ・スパイダー》2体をリベンジ・チャンスで場に!! あんたが手札を引いてくれたおかげで、こいつらのリベンジ・チャンスが発動したわ」
「今更ザコを並べたところでなんにもならないかも」
「その効果でマナを更に2枚増やす。そして、マナから《ニャス》を《ボアロパゴス》の効果で出すわ。雑魚も、増えたら意外と厄介ってのがこの世界の通説なのよね!!」
「!!」

 再び、如月コトハのマナゾーンは虹色に染まった。
 そして、それだけではない。まだ、《ボアロパゴス》の効果は終わっていないのだ。

「今度は《セブ・アルゴル》召喚! その効果で超次元から《ガガ・パックン》を出すわ!」
「……ふむ」
「そして——あたしのターン」

 彼女はカードを引いた。そして、静かに呟く。

「ヒナタ。あんたの背中を今まで追いかけてきて分かったことがあるわ」
「……?」
「あんたがどれだけ大きなものを背負っているか——どれだけ苦しいものを抱えているか——あたしにも分かった。だから——それを、一緒に背負わせてほしい!!」
「……コトハ……!?」

 マナをタップする。自分の思いを、最大限に引き出すように。

「あたしは5マナで《龍覇 マリニャン》を召喚。その効果で、超次元から《無敵剣 プロト・ギガハート》を装備するわ。そしてマナから《ボアロジー》を出して、マナを2枚加速する! そして、7マナで《護英雄 シール・ド・レイユ》も召喚。その効果で狙うのは勿論その2体!! マナ武装7でシールド送りよ!」
「っ……!!」
「《ボアロパゴス》の効果で《コートニー》をバトルゾーンへ」

 此処まで、コトハはマナゾーンにある元々あった11マナのうち、5枚を消費するも更に2マナをチャージ。
 そして、使える9枚のうち、7枚を消費して残りは2マナある。

「だけど、それだけならまだどうにかなるかも。それに、それ以上強力なクリーチャーはだせないかも」
「——そうね。だけど、見せてやるわ。こっからがあたしの革命よ!!」

 次の瞬間、彼女は2枚のマナをタップし、言った。




「——森羅万象の理に従い、今こそその身を大地に捧げん——革命2、発動!!」




 次の瞬間、浮かび上がった自然の紋章が6つから2つに減った。
 つまり、これはコスト軽減だ。それも、まだ見えないクリーチャーが自分自身のコストを軽減したと言うことになる。

「この子はね、革命2でシールドが2枚以下のとき、最大コストが5まで小さくなるの。そして、《マリニャン》から進化!!」

 淡く抱いていた思い。
 そして囚われていた苦しみ——それさえも、全て糧にして。
 大地の始祖龍が今こそ進化しようとしていた。

「目覚めよ、そして恐れ戦く龍の革命を果たしなさい!!」

 その身体は、羽毛の生えた始祖鳥のようであった。
 自分の気持ちの表と裏——そして生じるジレンマも、苦しみも乗り越えて始祖龍は咆哮する。
 今、大地から目覚めた古代の革命軍が、その遺伝子と共に蘇る。



「大地を糧に、新たな命を生み出す母体となれ!
《革命目 ギョギョウ》!!」

Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神 ( No.343 )
日時: 2016/08/22 12:23
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

「何、そいつ……!!」
「さあ、何でしょうね!!」

 ギョギョギョ、と産声を上げる始祖龍を前にして、初めて有栖川ツグミは動揺らしい動揺を見せた。
 しかし。最早鎧龍のシールドは0。このターンに殴り勝てる打点があるわけでもない。

「ターンエンド」

 それはコトハも分かっていたのか、素直にターンを終える。
 初めて感じたこの焦燥感。ともかく——今は彼女達を倒すことに全力を注ぐしかない。
 ——ブロッカーは2体しかいない……だてんせーせいなら《鬼羅丸》だけでもどうにかなるかも。それならこわいのは、つぎのたーんの暁ヒナタの暴走——

「呪文、《トンギヌスの槍》——その効果で《バトライ閣》を消滅させるかも」

 次の瞬間、槍が飛んでいき、《バトライ閣》は一瞬にして崩れ去る。
 カード除去であるがゆえに、問答無用なのだ。

「ターンエンドかも」

 そして——もう、このデュエルで自分に出来ることが無いと悟ったヒナタは——いや、正確に言えばコトハに任せても問題が無いと確信したヒナタは、彼女に言った。

「任せて良いんだな」
「……あたしを誰だと思ってんの、ヒナタ」
「口うるさくて、可愛げが無いけど世界一頼れる委員長」
「よろしい♪」

 にっ、とまた彼女は笑って見せる。
 可愛げが無いと言った矢先に思わずそれに見とれてしまうヒナタだが——最後まで自分に出来ることをやるしかない。
 しかし、引いたカードは此処に来てブーストカード。
 そのままターンを終えることにする。
 ——やれやれ。後はあいつ次第だな——!
 続く真胴のターン。
 此処で、全てが決まると言っても過言では無かった。

「まあ良いでしょう。いい加減、そろそろくたばってもらわねば困るのですよ。12枚のマナをタップ」

 彼は言い放つ。
 最早、彼もこれで決めるしかないのだ。




「《超絶奇跡 鬼羅丸》を召喚——」
「《革命目 ギョギョウ》の効果発動」



 虚空が裂かれて、ゼニスがその姿を現す。
 しかし。それに反応するかのように、《ギョギョウ》の下にある大地が揺れた。

「その効果で、そいつよりもコストの低い《龍覇 セイントローズ》をマナから出す!!」



革命目 ギョギョウ VR 自然文明 (6)
進化クリーチャー:ジュラシック・コマンド・ドラゴン/革命軍 8000
進化−自分の自然のクリーチャー1体の上に置く。
W・ブレイカー
相手のクリーチャーがバトルゾーンに出た時、そのクリーチャーのコスト以下の、自然の進化ではないクリーチャーを1体、自分のマナゾーンからバトルゾーンに出してもよい。
革命2−自分のシールドが2つ以下なら、このクリーチャーの召喚コストを5少なくする。
 


「マナは染色させているから、あたしのマナのカードは全て自然文明としても扱えるわ! よって、《真聖教会 エンドレス・ヘブン》をバトルゾーンへ!!」



真聖教会 エンドレス・ヘブン  ≡V≡  光文明 (5)
ドラグハート・フォートレス
自分のクリーチャーが破壊された時、自分の山札の上から1枚目を裏向きのまま、新しいシールドとして自分のシールドゾーンに加えてもよい。
龍解:自分のターンの終わりに自分のシールドの数が相手のより多ければ、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップする。



 《ギョギョウ》と《コートニー》、そして《ニャス》が大地に祈りをささげると同時に、《セイントローズ》が現れ、更に聖なる教会が現れる。
 この時、真胴は既にこの壁が突破不可能であるものだと察した。
 自分がクリーチャーを出す度に、相手はそれよりもコストの低いクリーチャーをマナから出せる。
 そして、更にブロッカーを破壊すれば、《エンドレス・ヘブン》の効果でシールドが増える。
 つまり、最早打点を並べただけではもう勝てないのだ。

「くっ、《修羅丸》の効果で3連ガチンコ・ジャッジ——!! 対象は、貴方です暁ヒナタ!!」
「くそっ……だけどもう、そっちも切札はそこまで残ってないはずだぜ!!」

 互いに3枚のカードが展開される。
 1度目、ヒナタの《ミツルギブースト》コスト5に対して、真胴が《トンギヌスの槍》コスト6。
 2度目、ヒナタの《モルト「刃」》コスト9に対し、真胴が《サイバー・W・スパイラル》コスト9。
 3度目、ヒナタの《メンデルスゾーン》コスト2に対し、真胴が《暴剣超邪 ハリケーン》——!

「——《トンギヌスの槍》の効果で《ボアロパゴス》を消滅させます」

 次の瞬間、不沈の遺跡は一瞬にして崩落した。
 更に、現れた2体の巨大クリーチャーがコトハのブロッカーを目がけて攻撃を仕掛ける。

「《W・スパイラル》の効果でブロッカーの《セイントローズ》と《シール・ド・レイユ》をバウンス! そして、《ハリケーン》で《セブ・アルゴル》と《ギョギョウ》をフリーズ!」
「《W・スパイラル》と《ハリケーン》に反応して、《ギョギョウ》の効果でマナゾーンからもう1体の《シール・ド・レイユ》と《無双恐皇 ガラムタ》をバトルゾーンへ!」

 次の瞬間、再び現れた聖霊の龍の咆哮により、《W・スパイラル》と《ハリケーン》はその身をシールドに封じられる。

「わりぃ、コトハ。また負けた……!」
「大丈夫よ。相手の構築が元々勝ちやすいように大型ぶち込んでたんだわ。でも、もう大丈夫。こっちにはまたブロッカーが居る。相手の攻撃はもう、通らない」

 見れば、もう真胴の場には《鬼羅丸》しかいない。
 対するコトハの場にはブロッカー《シール・ド・レイユ》がいる。
 もう、彼の攻撃は通らなかった。

「ターン……エンド」
「それじゃあ、あたしのターン」

 やっとここまで来た。
 そして——カードを引いた。
 ヒナタの方を向く。彼も頷いた。相手のシールドは7枚。対するコトハの場には《ベニジシ・スパイダー》2体と《ボアロジー》、《シール・ド・レイユ》、《コートニー》や《ニャス》、《ガガ・パックン》、《ガラムタ》の8体が攻撃可能。
 コトハは一斉攻撃を仕掛けたのだった。

「《ガラムタ》でシールドをブレイク。そして——この子が攻撃するとき、もう誰もこのターンの終わりまで「S・トリガー」を使うことはできないわよ」



無双恐皇ガラムタ SR 闇/自然文明 (6)
クリーチャー:ダークロード/アース・ドラゴン 5000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
シンパシー:デスパペットおよびビーストフォーク(このクリーチャーを召喚する時支払うコストは、バトルゾーンにある自分のデスパペットまたはビーストフォーク1体につき1少なくなる。ただしコストは2より少なくならない)
このクリーチャーが攻撃する時、このターンの終わりまで、誰も「S・トリガー」を使うことはできない。




 デュエマに於ける逆転の根幹を封じるカード。それが《ガラムタ》だった。
 最早、大地の怒りを納める方法は無い。
 ——詰んだ、かも——!? 痛ッ……!?
 次々にシールドを割られながら——ツグミは、自身の身体に異変が起こっていることに気付いていた。
 しかし。
 最早語るまでも無い。大地の生み出した多大な軍勢を前に——無力にも平伏すしかないのだ。

「有栖川ツグミ。あたしはあんたを恨んではいないわ。むしろ感謝もしてるのよ。だから、たっぷり礼で返してあげる」

 最後の一撃が、零央学園チームへ突き刺さる。
 コトハの勝利宣言によって。



「《薫風の面 ニャス》で——ダイレクトアタック!!」

Act10:伝える言の葉 ( No.344 )
日時: 2016/08/23 21:08
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

『決っっっっっっっ着!! 鎧龍対零央、両者ともド派手なクリーチャーの応酬でしたが——最後は革命を見事に決めてカウンターした鎧龍が制しました!!』




 わああああああ、と歓声が上がる。
 ヒナタも、コトハも呆然、と立ち尽くしていた。
 遂に終わったのだ。
 長い、日本での戦いが。

「やった、やったよ、ヒナタ!! あたし達が、鎧龍の世界進出を決めたんだよ!!」
「わっ、馬鹿、おい!!」

 人目もはばからず抱き着いて来る彼女に、戸惑いを隠せないヒナタ。
 それほどに、コトハのテンションは上がっていた。
 
「試合後の挨拶しねぇといけね——って、アレ」

 見れば、既に零央チームの2人は姿を消していた。
 そういえば——アピセリンの事などを教えて貰うはずだったのに、先に約束をすっぽかしてしまったのだろうか。

「全く……まあ良いわ。会うだけなら、またいつでも出来るわね」
「そうだな」

 

「ヒナタ!! コトハ!!」


 声がする。
 見れば、そこにはレンを先頭に鎧龍チームが走ってきていた。
 息を切らせるレン。流石に彼も、この勝利の喜びを抑えることが出来なかったようだ。

「全く、貴様らはやってくれるな」
「俺は今回何もやってねえよ。コトハが、決めてくれたんだ」
「何言ってんの。あんたが相手にプレッシャー掛けてくれたから、狙いが分散して結果的にこっちの被害が少なくなったんだから。感謝してるのよ?」
「ひいいいなああああたああぜんばいいいい!!」

 うっ、うっ、と泣く声がする。
 見れば、涙で目を腫らせたノゾムであった。

「オイバカ、ノゾム。泣くなよこのくらいで」
「ずいまぜん……感極まっちゃって……」
「まだ俺達には世界があるんだぞ?」
「そうですよ、ノゾムさん。先輩達、困ってるじゃないですか」
「わ、分かってるよ……でも、先輩達のおかげで鎧龍は——」
「何言ってんだ。お前らだって十分頑張っただろ」

 ヒナタがそういうと同時に、全員は顔を見合わせた。
 確かに、鎧龍が全勝という快挙は、間違いなく此処にいる全員の成したことに違いなかったのだから。

「そうだな。此処にいる全員の力が無ければ、僕たちは世界への切符を手にすることは無かっただろうな」
「5人全員、革命の力を使いこなしたものね」
「うむ。コレで大団円だな。で、やっぱり革命を伝授した俺様がやっぱりMVぴ——」

 じろり、と全員は空気を読まないフジを睨む。
 流石の彼も押し黙った。邪険にされまくった所為で凹んでいるのだろう。
 
「……うむ。調子に乗った。すまない」
「冗談ですよ。フジ先輩がいたから、俺達は新しい戦法に触れることが出来たんですから」
「だが、それを使いこなしたのはテメェらの力だ。世界でも、存分に振るうこったな。まぁ——今だけは」




『これにより、鎧龍決闘学院が日本代表に決定いたしました——』




「——共に勝利を喜ぶとするさ、俺様もな」

 フジの言葉と共に——全員は観客達に手を振った。
 此処まで応援してくれた声援に感謝するため。
 そして——世界へ行く決意を表すため——

「ねえヒナタ」
「ん?」

 コトハは、ヒナタに寄り添うと言った。




「——後で、スタジアム裏の公園に来てくれないかな?」




 ***





 勝利の余韻を残す間もなく。
 その後現地解散となったが、ヒナタだけはコトハに呼び出されていたので、帰るに帰ることが出来なかったのだった。
 
「ったくよぉー、何だこの公園……あー、もうこんな時間だから誰も居ねえか」

 もう、夕暮れ時。公園自体目立たない場所にあるので、既に遊んでいる子供は居ない。
 何故こんな場所に自分を呼び出すのか。今回の試合で自分が至らないことがあったのだろうか、とヒナタは頭の中で繰り返す。
 しかしまあ不思議なものである。白陽もいつの間にか居なくなっているし——
 と。
 ヒナタは、ようやくコトハを目に留めた。
 はっきりと、こちらの目を見据えて、立っていた。

「ねえ、ヒナタ。懐かしいね」
「なんだよ急に」
「別に? 以前の事思い出してたの。あたしと会った時のこと覚えてる?」
「ああ、覚えてる」

 そのことはヒナタも鮮明に覚えていた。
 彼女と一緒にいると、とてもそんな出会い方をしたようには時たま思えなくなるが。

「喧嘩が最初だったもんね」
「そーいやそうだ」
「でもさ、いつの間にかあんたらと一緒にいるのが当たり前になってた」
「当たり前?」
「そうね」

 苦笑いすると、コトハは続ける。

「あたしは、あんたに何度も助けて貰った。何度も、何度も——」
「何言ってんだ。俺だってお前に助けられた。でも、どうしていきなり」
「ヨミに浚われた時——1人で助けに来てくれたあんたのことが、あたしにはヒーローに見えたんだ。でもね。やっぱり、あんたはあんただった。いつも通り、目の前の困っている人が居たら放っておけなくて、助けるために奔走する。あんたはそういう人間だったもの」
「どうしたんだ? そんなに褒めちぎって」
「……あんたって本当に鈍感。女の子がこうやって、2人きりになれる場所に呼び出してんのに」

 すいっ、とコトハは彼に顔を寄せた。
 
「ねえ。もしも、あんたが過去に引きずられたままで、この思いが跳ね除けられても——あたしは構わない。いつもと同じように、また接してくれれば、それでいいの。だから聞いて——」




「やっと、見つけたかも」



 2人は殺気を感じた。
 そして、振り向く。
 そこには——有栖川ツグミの姿があった。しかし、その雰囲気はさっきまでのものとは打って変わって異様だ。

「有栖川ツグミ……!? 何でこんなところに!?」
「な、何コレ……視認出来るだけでも、こんな異常なマナ——見たことが無い!」
「おいおい、ざっけんなよ……!! どうなってんだオイ……!!」
「私の私の……」

 そう言いかけた途端、彼女は頭を抑える。



「ウ、ウウウウウウウ!! 嗚呼呼呼呼呼呼!!」



 叫ぶと同時に、クリーチャーのビジョンが現れた。
 それは、蟲の尾を持つ少女型の英雄《アピセリン》であった。
 明らかにこの光景は異常だ。何がこれを引き起こしたのかは分からないが——




「サイコスキャニング、100%、英雄因子を確認……!! 欲しい、欲しい欲しい欲しい——!! 全部、食らい尽してやる——ううううううああああああああああああああ!!」




 彼女は、黒い靄を吐き出した。間違いない。コレは決闘空間のものだ。
 コトハとヒナタも辺り諸共包まれていく——

「こんな時にまで邪魔するなんて!!」
「くそっ、どうするんだよ、白陽もニャンクスもいねえのに——!!」

 


『ヒナタ!!』
『コトハ様!!』




 刹那、2枚のカードがそれぞれの手に渡る。
 見れば、白陽とニャンクスのカードであった。

「お前ら! どうしてここに!?」
『妙なマナの歪みを感じ、来てみれば案の定だ!』
「ニャンクスまで」
『コトハ様の邪魔をする方は、誰だろうと許さないのですにゃ!!』
「もう……そんな出来た従者を持った覚えはないわよ……!」

 2人は同時に共通の敵を睨む。
 
「コトハ、準備は出来たか?」
「勿論よ、ヒナタ。此処からは本気でアイツをのめすしかないみたいよ」
「いや本当容赦ねえな」

 手をかざすと同時に、白陽とニャンクスによって、デッキのカードが入れ替わっていく。
 そして、2人も叫んだ。




『決闘空間、解放!!』

Act10:伝える言の葉 ( No.345 )
日時: 2016/08/24 08:21
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

***



「両方とも、神の贄になるが……良いわ」



 決闘空間が開かれた。
 そして、ツグミは1枚のカードを隣に投げ入れる。
 突如、それが実体を得たクリーチャーと化した。

「オイオイ、実体化させたのか!?」
『恐らく、あの少女の中に巣食っているクリーチャーがそうさせている!!』
『同時に、決闘空間さえもゆがめてしまっているのですにゃ!』
「——召喚」

 彼女が告げると共に、それは完全に実体を得る。
 現れたのは、英雄の力によって肉体を得た偽りの神・ニュークリア・デイであった。
 そして、ツグミとニュークリア・デイの正面に10枚のシールドが並ぶ。

「我が主に……英雄に……栄光を……!!」

 低く、静かな声で偽りの神は言った。
 ホログラムの時とは、桁違いの覇気と魔力が可視出来る。
 思わず、ヒナタも後ずさる程であった。一歩間違えば引き込まれてしまいそうだ。

「コトハ……どうする?」
「……良いわ。やってやりましょう」

 2人の正面に10枚のシールドが並ぶ。つまり、2対2でデュエルしろということなのだろう。
 床に、巨大な時計のビジョンが現れる。しかし、それは長針しかなく、今はコトハの方を向いていた。

「……これは……どうなってんの!?」
「——この針は、今この空間の時間を誰が支配しているかを示すもの——つまり、誰が手番なのかを示すモノ。そう、私が”歪めた”」
「歪めた、だと——!?」
「そう。2人纏めて食らう為、タッグマッチの時と同じルールにしたかも」

 つまり。今の彼女には決闘空間のルールを歪める程の力があるということであった。
 それほどに凄まじい魔力を、アピセリンは持っているのだ。
 それが何らかの要因で暴走し——今に至っているのだろう。

「最も、ルールは公平で対等でなければならない——それが大原則だけど」
「おいおい、何なんだよ、そのアピセリンってカードは——!!」
「ヒナタ。話は後よ。まずは、こいつを片付けてからじゃないと! 互いのシールドは合計10枚でさっきと同じ……つまり、共有されてるってこと!」
「何でこうなったのか、分かんねえし色々納得いかねえけど、ぶっ飛ばせばスカッとするかもな!!」

 画して。
 ヒナタとコトハ対、ツグミとニュークリア・デイによる2対2のタッグマッチが始まろうとしていた——





「暴食の星の前に——平伏せ」




 ***




「《フェアリー・シャワー》を唱えて、ターンを終了する」

 有栖川ツグミ(enemy)
 手札4
 マナ7
 墓地3
 next turn:暁ヒナタ(鎧龍)

 鎧龍チームと、ツグミとニュークリア・デイのデュエル。
 此処まで、4人全員が互いのプレイスタイルに合わせるためか、自然混色のブースト編成であることが判った。
 というのも、先ほどの零央戦以上のマナ加速カードの応酬が待っていたからである。
 特にコトハとツグミは、手札を切らさないように片や《ライフプラン・チャージャー》、片や《フェアリー・シャワー》という徹底っぷり。
 また、このマナから見るにツグミは今回、《オルタクティス》といった光のオラクリオンを使うわけではないようだった。
 真っ先の疑いは、自然とゼロのビマナである。
 一方のニュークリア・デイは自然に光と闇を入れたネクラカラーとなっており、オラクリオン零式を多用してくるならばこちらの可能性が高かった。
 場にあるカードは、コトハが召喚した《コートニー》とニュークリア・デイが召喚した《》
 さて。コトハに追いつけるように、今回自然を採用したヒナタであったが——此処で6枚のマナをタップし、クリーチャーを呼び出す。

「《守護炎龍 レヴィア・ターン》召喚! その効果で、マナゾーンから《ガントラ・マキシバス》を召喚してマナをチャージ!」

 一気に彼は、クリーチャー2体を呼び出す。
 龍と共に現れた雪精は大地から更なる命を呼び込んだのだった。

「ターンエンドだ!」

 暁ヒナタ(鎧龍)
 手札2
 マナ0/6
 墓地2
 next turn:ニュークリア・デイ(enemy)

 時計の針が動き、ニュークリア・デイを指した。
 同時に——彼もまた動き出す。

「我がターン——ドロー」

 カードを引いた彼は、そのまま7枚のカードをタップする。
 場には此処まで《青銅の鎧》しか居なかったが、更に堅実な展開に出る。

「《神聖鬼 デトロイト・テクノ》を召喚」



神聖鬼 デトロイト・テクノ VR 無色 (7)
クリーチャー:オラクリオン 7000
W・ブレイカー
自分のマナゾーンで無色カードをタップする時、そのうちの好きな枚数のカードの、マナの数字を2にしてもよい。



 現れたのは、鬼面を持つオラクリオン《デトロイト・テクノ》。その能力により、マナゾーンにある無色カードが活性化していった。

「……ターンエンド」

 ニュークリア・デイ(enemy)
 手札2
 マナ0/7
 墓地2
 next turn:コトハ

「あたしのターン、ドロー!」

 何であれ。
 コトハは怒っていた。
 兎にも角にも怒っていた。
 この少女、有栖川ツグミはまたも自分の邪魔をしたのだから——

「——此処で、片付けるわ! 7マナで《理英雄 デカルトQ》を召喚! そして、マナが全色になっているからマナ武装7発動!」

 現れたのは、結晶龍の英雄。
 そのマナ武装により、手札を5枚引いたコトハは、更にシールドと手札のそれを入れ替える。
 これに加えて《デカルトQ》はブロッカーまで持っている優秀なクリーチャーなのだ。

「ターンエンド」

 如月コトハ(鎧龍)
 手札6 
 マナ0/7
 墓地2
 next turn:有栖川ツグミ(enemy)

「おい、コトハ」
「何よ!?」
「あの《デトロイト・テクノ》と言い、有栖川の動きと言い——やっぱり裏にヤバいのが隠れてる予感しかしねえ……! ”アレ”を出せるなら、早期に頼めるか!?」
「”アレ”……分かってるわ。さっさとケリを付けてやるんだから」




「ケリを付けられるものなら、付けてみればいいわ」




 言った有栖川ツグミは、超然とした表情でカードを引いた。
 何を考えているのか分からない表情だったのが、今は最早完全にロボットのようで人間としての感情を捨ててしまっているようだった。
 ノイズの掛かった声と言い、不気味ささえ駆り立てられる。

「あんた、本当に何なのよ!! あたしの邪魔ばっかりして!!」
「違う。私の目的は、英雄の力……そう。ニャンクス、白陽。お前達の事だ」

 ふうっ、と2体がビジョンを現す。
 名前を呼ばれたから、何事かと出てきたのだろう。

『有栖川ツグミ……と言ったな。お前の持つ、その力の正体……!! とても禍々しく、お前には扱えない!! 今すぐ手放せば間に合う!!』
『多分、無理ですにゃ……あの様子だと、もうカードによる意識の介入が始まっていますにゃ!』
「ニャンクス、白陽。アピセリンって名前に聞き覚えはあるか?」
『前にも聞いた6人目の英雄——わたしも、他の面々も、聞いたことが無いと言っていた! 恐らく、我々のどの世界とも出身が違うのか、それとも——』

 そう言ってる間に、今度は7枚のマナがタップされる。
 そして、神々の降臨を賛美するようにして——ツグミは言い放った。



「虚無に帰す虚ろな星よ……今こそ目覚め、再び全てを食らい、虚ろに返せ——」



 唸り声が聞こえる。
 猛獣のような、低い唸り声だ。
 そして——何かが地面を突き破った——





「——召喚、《片翼の天姫星 アピセリン・ホロウ》」

Act10:伝える言の葉 ( No.346 )
日時: 2016/08/24 10:07
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

 現れたのは、何時かの《アピセリン》であった。
 以前同様、片方にだけ生えた銀蝿の羽に、長く伸びた純白の翼、そして血のように赤いアルビノの瞳。
 だが——今度は、手足に課せられていた枷が——外れている。
 そして、その小ぶりな尻、正確に言えば尾てい骨の辺りから再び蟲のような巨大なクリーチャーが尾を生やすようにして現れたのであった。

「な、何度見ても気色の悪いクリーチャーね……!!」
「《アピセリン》の登場時効果。超次元ゾーンからB(ベルゼ)・コアを持つクリーチャーを1体、バトルゾーンに出す。出てきて、《暴食の天魔 バアル・ゼビュー》」

 次の瞬間、今度は蝿のようなクリーチャーが現れた。
 しかし、頭部には人の顔のようなものが付いており、呻いている。
 見た目の醜悪さもあって、とてもぞっ、とするクリーチャーであった。

「さて——《バアル・ゼビュー》の効果で、もう私のB(ベルゼ)コアを持つクリーチャーはクリーチャーや呪文の効果で選ばれない。そして——この子は自分のマナゾーンのカードを無色としても扱う効果を持っている」
「なっ!? マナを脱色するのは《シューメイン》だけじゃないっていうの!?」
「マナ脱色……そうなのか!? そう呼ぶべきなのかコレ」

 更に、追い打ちを掛けるようにしてツグミは言い放つ。

「ターン終了時に《アピセリン・ホロウ》の零式マナ武装7発動——マナゾーンに無色カードが7枚以上あれば——この子の効果が発動する」

 次の瞬間、《アピセリン・ホロウ》の蟲部分が咆哮する。
 同時に大地は荒れ果て、そして食らい散らかされたマナが氾濫した——

「山札の上から2枚をマナゾーンに置き、マナの中のカードを1枚を山札に戻してシャッフルする。ターンエンド」

 ツグミ
 手札3
 マナ9
 墓地3
 next turn:ヒナタ

「ヒナタ、気を付けて! 奴の武装条件が分からないけど、ああやってステラアームドを呼び出したってことは……もう、あいつは完全に目覚める一歩手前なのかもしれないわ!」
「分かってる! 武装だけはさせたくねぇところだな! だけど、どうしよっかね……ただ、殴るだけじゃ……」

 カードを引くヒナタ。
 そこあったカードを見て、思わず頬を緩めた。

「それじゃあ、久々に頼んだぜ、相棒!!」

 7枚のマナをタップする。
 生み出されるのは灼炎のマナ。そこから——黄金に輝く9つの尾が揺れた。




「黄金の九尾を携えし、聖獣よ!! 今、この俺と鼓動をあわせろ!! 咆哮せよ、そして開闢せよ!!
《尾英雄 開闢の白陽》!!」



 揺れる9つの青白い炎。
 そこから、真紅に染まった槍を掲げる九尾の英雄が姿を現す。

『やれやれ。また相手はステラアームドか。まあ良い。私の力を使うのだろう?』
「ああ! 《ガントラ・マキシバス》に《デトロイト・テクノ》の力を”貼り付ける”!!」

 次の瞬間、《ガントラ・マキシバス》は大きな咆哮を上げた。
 自身の力に、《デトロイト・テクノ》から写し取った力を乗せたのだ。
 そして——

「頼むぞ! 《ガントラ・マキシバス》でシールドをW・ブレイク!」

 狙うのは有栖川ツグミのシールドだ。
 そのまま2枚が叩き割られた。

「更に、《レヴィア・ターン》でシールドをW・ブレイクだ!」
「ッ……!!」
「ターンエンド」

 一気に割られる4枚のシールド。
 これにより、敵のシールドは残り6枚となったのである。

 enemyシールド6:ニュークリア・デイ(5) ツグミ(1) 手札3→7

 ヒナタ
 手札1
 マナ7
 墓地2
 next turn:ニュークリア・デイ

「私のターン——3マナで《戦慄のプレリュード》を使用し、次に出す無色カードのコストをマイナス5する」

 重々しく告げる偽りの神。
 そして、戦慄の音色と共に新たなクリーチャーが現れた。

「《墓地の守護者 メガギョロン》を召喚。その効果で《戦慄のプレリュード》を再び手札に。そして——《デトロイト》の効果でマナの3枚の無色カードの数字を2にして——残る1マナをタップし、合計4マナで《戒・神聖麒 シューメイン》を召喚——!!」
「出て来たわね……3体目のオラクリオン零式……!!」

 現れたのは仮面を被った聖獣の偽神であった。
 彼の者が吼えれば、大地は再び無へ帰す。
 ニュークリア・デイのマナも染色されていく。

「更に自分のクリーチャーのコストを支払って召喚したので、《シューメイン》の効果で《空腹の超人》をマナから場に出す……!!」



空腹の超人(ハングリー・ジャイアント) R 自然文明 (4)
クリーチャー:ジャイアント/アンノイズ 4000
無色クリーチャーを自分のマナゾーンから召喚してもよい。



「ターン終了だ」

 ニュークリア・デイ
 手札1
 マナ0/7
 墓地2
 next turn:コトハ

「あたしのターン!」

 ——《空腹の超人》——!? 成程、確かにこいつならマナから無色クリーチャーを出せるようになるうえに、マナにある時無色カードとしても扱える零式と相性が良い——! 最早、展開に手札は必要ないとでも言いたげじゃない……!
 つまり。枯渇しかけていた《ニュークリア・デイ》だが、次のターンから一気に攻勢を仕掛けてくる可能性が高くなったと言うことだ。しかも《シューメイン》の効果でマナの全てのカードが無色扱いなのだから。

「なら、今度はコイツよ! あたしは《恐・龍覇 サソリスレイジ》を出して、《恐龍界樹 ジュダイオウ》をバトルゾーンに出すわ! 更に《サソリスレイジ》の効果で1マナを加速する!」

 次に現れたのは、《ジュダイオウ》だ。
 これにより、パワー5000以下のクリーチャーは攻撃が出来なくなる。
 更に、この盤面ならヒナタのクリーチャーの分のコストも合わせて、龍解条件は達成できる。
 次の自分のターンの始めまでに何も無ければ、の話であるが——

 コトハ
 手札5
 マナ0/9
 墓地2
 next turn:ツグミ

「——私のターン。ターンの始めにマナからカードを5枚——山札の上に好きな順で戻す」
「……え」

 突如。
 奇怪な行動をとったツグミ。そして——コトハは戦慄する。
 その意味を理解して——
 ——まさか!?

「これにより、《バアル・ゼビュー》の武装条件達成——星芒武装」



片翼の天姫星 アピセリン・ホロウ 無色 (7)
クリーチャー:ワーム・コマンド・ドラゴン 7000
B(ベルゼ)・コア
W・ブレイカー
このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、B・コアを持つステラアームド・クリーチャーを1体、超次元ゾーンからバトルゾーンに出す。マナゾーンにカードを1枚置く。それが無色カードならば、カードを1枚引く。
零式マナ武装7—ターンの終わりに山札の上から2枚を自分のマナゾーンに置いてもよい。その後、マナゾーンからカードを1枚選び、山札に戻してシャッフルする。



暴食の天魔 バアル・ゼビュー  無色 (5)
ステラアームド・クリーチャー:ワーム・コマンド 5000
B・コア
相手がクリーチャーや呪文の効果で自分のクリーチャーを選ぶとき、自分のB・コアを持つクリーチャーを選ぶことはできない。
自分のマナゾーンのカードは全て無色カードとしても扱う。
星芒武装:ターンの始めに、カードを5枚、自分のマナゾーンから山札の一番上に好きな順で置く。そうした場合、このクリーチャーを《アピセリン》と名のつくクリーチャー1体の上に置く。


 その言葉が言い放たれると同時に、《アピセリン》の赤い瞳が光った。
 大地の全てを食らい尽す悪魔が今、目覚める。
 流れ込む魔力に身を任せ、その身体は変態していく——武装し、完全となった成虫へと。




「それは、純白の悪魔——世界を食らい、虚無に還す純白の悪魔。今こそ目覚め——武装せよ。
《暴食の魔天姫(バアル・エンプレス) アピセリン・ゼブルビュート 》」


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87