二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ D・ステラ 【侵略世界編】
日時: 2017/01/16 20:03
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

【読者の皆様へ】
はい、どうも。二次版でお馴染み(?)となっているタクと申します。今回の小説は前作の”デュエル・マスターズ0・メモリー”の続編となっております。恐らく、こちらから読んだ方がより分かりやすいと思いますが、過去の文というだけあって拙いです。今も十分拙いですが。
今作は、前作とは違ってオリカを更にメインに見据えたストーリーとなっています。ストーリーも相も変わらず行き当たりばったりになるかもしれませんが、応援よろしくお願いします。

また、最近デュエマvaultというサイトに出没します。Likaonというハンドルネームで活動しているので、作者と対戦をしたい方はお気軽にどうぞ。


”新たなるデュエル、駆け抜けろ新時代! そして、超古代の系譜が目覚めるとき、デュエマは新たな次元へ!”



『星の英雄編』


 第一章:月下転生

Act0:プロローグとモノローグ
>>01
Act1:月と太陽
>>04 >>05 >>06
Act2:対価と取引
>>07
Act3:焦燥と制限時間
>>08 >>10
Act4:月英雄と尾英雄
>>13
Act5:決闘と駆け引き
>>14 >>15 >>18
Act6:九尾と憎悪
>>19 >>21
Act7:暁の光と幻の炎
>>22 >>23
Act8:九尾と玉兎
>>25

 第二章:一角獣

Act1:デュエルは芸術か?
>>27 >>28 >>29
Act2:狩猟者は皮肉か?
>>30 >>31 >>32 >>33
Act3:龍は何度連鎖するか?
>>36 >>37
Act4:一角獣は女好きか?
>>38 >>39 >>41 >>42 >>43 >>44 >>45
Act5:龍は死して尚生き続けるか?
>>48

 第三章:骸骨龍

Act1:接触・アヴィオール
>>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55
Act2:追憶・白陽/療養・クレセント
>>56 >>57
Act3:疾走・トラックチェイス
>>66
Act4:怨炎・アヴィオール
>>67 >>68
Act5:武装・星の力
>>69 >>70
Act6:接近・次なる影
>>73

 第四章:長靴を履いた猫

Act1:記憶×触発
>>74 >>75 >>76 >>77
Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解
>>78 >>79 >>80
Act3:捨て猫×少女=飼い猫?
>>81 >>82
Act4:リターン・オブ・サバイバー
>>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90
Act5:格の差
>>91 >>92 >>93 >>104
Act6:二つの解
>>107 >>108 >>109 >>110
Act7:大地を潤す者=大地を荒らす者
>>111 >>112 >>113
Act8:結末=QED
>>114

 第五章:英雄集結

Act1:星の下で
>>117 >>118 >>119
Act2:レンの傷跡
>>127 >>128 >>129
Act3:警戒
>>130 >>131 >>132
Act4:策略
>>134 >>135
Act5:強襲
>>136
Act6:破滅の戦略
>>137 >>138 >>143
Act7:不死鳥の秘技
>>144 >>145 >>146
Act8:痛み分け、そして反撃へ
>>147
Act9:fire fly
>>177 >>178 >>179 >>180 >>181
Act10:決戦へ
>>182 >>184 >>185 >>187
Act11:暁の太陽に勝利を望む
>>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>193 >>194 >>195
Act12:真相
>>196 >>198
Act13:武装・地獄の黒龍
>>200 >>201 >>202 >>203
Act14:近づく星
>>204


『列島予選編』


 第六章:革命への道筋

Act0:侵攻する略奪者
>>207
Act1:鎧龍サマートーナメント
>>208 >>209
Act2:開幕
>>215 >>217 >>218
Act3:特訓
>>219 >>220 >>221
Act4:休息
>>222 >>223
Act5:対決・一角獣対玉兎
>>224 >>226
Act6:最後の夜
>>228 >>229
Act7:鎧龍頂上決戦

Part1:無法の盾刃
>>230 >>231 >>232 >>233 >>234 >>235 >>236 >>239
Part2:ダイチの支配者、再び
>>240 >>241 >>242 >>243 >>244 >>245 >>246 >>247 >>248 >>250
Part3:燃える革命
>>252 >>253 >>254 >>255 >>256
Part4:轟く侵略
>>257 >>258 >>259 >>260 >>261

Act8:次なる舞台へ
>>262


 第七章:世界への切符

Act1:紡ぐ言の葉
>>263 >>264 >>265 >>266 >>267 >>268 >>270
Act2:暁ヒナタという少年
>>272 >>273
Act3:ヒナとナナ
>>275 >>276 >>277 >>278 >>279 >>280 >>281
Act4:誓いのサングラス
>>282 >>283 >>284 >>285
Act5:天王/魔王VS超戦/地獄
>>286 >>287 >>295 >>296 >>297 >>298 >>301 >>302 >>303 >>304 >>305
Act6:伝説/閃龍VS獅子/必勝
>>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>323
Act7:青天霹靂
>>325 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>331
Act8:揺らぐ言の葉
>>332 >>333 >>334 >>335 >>336
Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神
>>337 >>338 >>339 >>340 >>341 >>342 >>343
Act10:伝える言の葉
>>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351
Act11:連鎖反応
>>352


『侵略世界編』


 第八章:束の間の日常

Act1:揺らめく影
>>353 >>354 >>359 >>360 >>361 >>362
Act2:疑惑
>>363 >>364
Act3:ニューヨークからの来訪者
>>367 >>368 >>369 >>370 >>371
Act4:躙られた思い
>>374 >>375 >>376 >>377
Act5:貴方の為に
>>378 >>379 >>380 >>381 >>384 >>386
Act6:ディストーション 〜歪な戦慄〜
>>387 >>388 >>389
Act7:武装・天命の騎士
>>390 >>391
Act8:冥獣の思惑
>>392
Act9:終演、そして——
>>393


 第九章:侵略の一手

Act0:開幕、D・ステラ
>>396
Act1:ウィザード
>>397 >>398
Act2:ギャンブル・パーティー
>>399 >>400 >>401
Act3:再燃 
>>402 >>403 >>404
Act4:奇天烈の侵略者
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>411
Act5:確率の支配者
>>412 >>413
Act6:不滅の銀河
>>414 >>415
Act7:開始地点
>>416


 第十章:剣と刃

Act1:漆黒近衛隊(エボニーロイヤル)
>>423 >>424
Act2:シャノン
>>425 >>426
Act3:賢王の邪悪龍
>>427 >>428 >>429
Act4:増殖
>>430 >>431 >>435 >>436 >>438 >>439 >>440 >>441 >>442
Act5:封じられし栄冠
>>444


短編:本編のシリアスさに疲れたらこちらで口直し。ギャグ中心なので存分に笑ってくださいませ。
また、時系列を明記したので、これらの章を読んでから閲覧することをお勧めします。

短編1:そして伝説へ……行けるの、これ
時系列:第一章の後
>>62 >>63 >>64 >>65

短編2:てめーが不幸なのは義務であって
時系列:第三章の後
>>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103

短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル)
時系列:第四章の後
>>120 >>121 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126

短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日
時系列:第四章の後
>>149 >>150 >>153 >>154 >>155 >>156

短編5:恋情パラレル
時系列:第四章の後
>>157 >>158 >>159 >>160 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>173 >>174 >>175 >>176

短編6:Re・探偵パラレル
時系列:平行世界
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422

エイプリルフール2016
>>299 >>300

謹賀新年2017
>>443


登場人物
>>9
※ネタバレ注意。更新されている回を全部読んでからみることをお勧めします

オリジナルカード紹介
(1)>>96 (2)>>271
※ネタバレ注意につき、各章を読み終わってから閲覧することをお勧めします。

お知らせ
16/8/28:オリカ紹介2更新

Re: デュエル・マスターズ D・ステラ 【夏の短編三連発】 ( No.152 )
日時: 2015/08/19 21:14
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

モノクロさん


コメントありがとうございます。とりま、今回は負け回というか、何と言いますか。丁度、この辺書き始めたときが、そちらの小説でユースティティアが出てきた頃合いでしたからね。それに、これで勝ったら面白くないでしょう。

何であれ、今回だけでかなりの伏線をばら撒いているので、後で全部回収するのが楽しみというものです。
ホタルの感情、アヴィオールの言動、これら全てがキーになって来ます。

アンカ戦ですが、まず先にミスの指摘ありがとうございます。あいつの効果をパワーアタッカーと勘違いしていたんですよ。効果もコピペしただけで、よく読んでいなかったので。というわけで、バトルするのを《ヴェルムート》に変えておきました。これなら大丈夫なはずです。
とりあえず、ヒナタの今回のデッキですが、燃えろ龍剣ガイアールのそれなんですね。白陽を生かすための火単大型です。一方のアンカはモルネクに《デッドマン》を突っ込んだようなデッキですが、実際はもっと5色龍コンに近いようなデッキという設定です。

さて、実際此処まで狂気染みたキャラを書いたのは初めてですね。ただ、作中にもあるとおり、リスカせざるを得なくなったのはヒナタ達が来るのが想定よりもかなり早かったから、なんですよ。本来なら、時間経過で《ハート・クラッシャー》は目覚めていたということです。
ちなみに、アンカがああなった理由をもう少し詳しく補足すると、
ソウルフェザーの魔力に耐えられなくなった身体が限界に達してああなったから、です。リスカして吐血するとか、普通はありえませんし。要するに、ソウルフェザーに力を急に沢山注いだのが原因ということで。

あー、後短編ですが、まだ本編の続きが書き終わっていないときに決めていたので、早速後悔しています。だって本編の流れがみるみる決まる決まる。今は、早く本編を更新したいです。しかも、艦これのイベントで更新が遅れ-----------ごめんなさい、ごめんなさい、速吸が可愛かったからなんです、ドロップが美味しそうだったんです、許してください。
後、怪談話は前回とは少し違ったような話になるので、お楽しみに。

というわけで、今後も応援よろしくお願いします。それでは。

短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日 ( No.153 )
日時: 2015/08/26 07:51
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

***

 
 ----------市街地、海戸一区。

「おのれっ!! これは明らかにおかしい!! クリーチャーの仕業だ!!」
「単に運が悪いだけだろー? 俺もだけど」

 ぎりぎりぎりっ、と歯軋りをしながら、レンは歩いていた。尻には野良犬、両手には野良猫、足に鼠取りが噛みついていた。痛い。
 が、しかし。今回に限っては彼のみがこんな目に遭った訳では無い。隣を歩いているヒナタも殆ど同じ状況である。もう一度言おう、痛い。
 白陽の協力と気合で、ようやくそれを振り払った彼らはともかく、あてもなく歩いていた。
 主に、レンが一連の不運な出来事をクリーチャーの所為にしようとしているからである。

「ええい! 妖○ウォッチだとか、トレジャーガ○ストみたいなモノは無いのか!」
「前者はともかく、後者を知ってる人いんのか、懐かしすぎだろ」
「誰が僕をこんな目に遭わせたのか、見つけ次第始末してくれる!」
「巻き添え食らった俺のことはどうでもいいのね」
『しかし、姿が見えないのは痛いな。敵はやり手だ、気配まで消している。せめて、おおまかな位置が分かれば炙り出せるのだが』
「アホか、白陽。レンの不運は元々だ、何の所為でも無い。つまりこれはクリーチャーの所為じゃあない」
『ということだそうだ、良かったな黒鳥レン』
「何だと貴様」
「それ以上はいけない。それ以上続けると、レンは不幸の化身と人間の中間の生物になって、永遠にマンホールの下の世界を彷徨うことになり、浄化されたいと思っても作者に存在を忘れられてしまうので、そのうち考えるのをやめてしまうぞ?」
「おい貴様ら覚えとけ」

 レンの苛立ちがピークに達したそのときであった。
 突如、スマホに着信が入った。
 画面を見ると、誰からかは直ぐに分かった。


「------------武闘先輩?」


 怪訝そうな顔で、ヒナタは仕方なく応対する。無視したら、どうなるかは目に見えていた。
 変な実験に付き合わされるか、しばかれるかのどっちかである。

『おーう、出たかヒナタ』
「何の用すか。切って良いですか」
『いやさ、実は丁度今、クリーチャーの反応をうちのレーダーが捕らえてだな』
「クリーチャー!?」

 まさか、とヒナタは思った。肩に置かれているレンの手に、めっさ力がはいっていて痛かった。全部聞かれていたか。
 「ヒナタ覚えてろ、後で滅す」と目で言っている。

「で、一体どこなんですか!?」
『んあ? 海戸一区の上空だ。レーダーが補足した限り、翼のある龍型クリーチャーみてーだが、まるで何かを尾行しているかのようにゆっくり移動してるんだ。しかもあいつ、クリーチャーにも見えないようにステルスしていやがる。だから、上空で動いてるってことしか分からん。位置を特定してーが、どうにかして炙り出せないものか』
「……そいつ、片付けちゃって構いませんね?」
『出来るモンなら、な。騒ぎになる前にやってくれた方が良いが、アテがあるのか?』
「一応」
『そうか、頼む』

 ピッ、と音と共に通話はきられた。
 

 ***


 人通りのない場所に移動したヒナタは、着いてきたレンの頭の上に白陽のカードを乗せる。

「おい貴様、どういうつもりだこれは」
「黙ってみてろ」

 そして、言った。

「白陽。実体化すると同時に、槍をそのままレンの上に真っ直ぐ投げろ」
『承知した。実体化したら感づかれるやもしれん。一瞬でやる』

 次の瞬間。
 実体化した白陽は、たんっ、とレンの頭を踏み台に、そのまま跳び上がり、槍を一直線に真上へ投げる。
 同時に、「不幸だっ!」という声と共にレンも地面へ叩き付けられたが。
 収穫は確かにあった。当たりはしなかったが、それに驚いた”何か”は姿を現す。

「見えたっ! 僅かにだが、小さい影が!」
「間違いない、クリーチャーだ!」
「ふ、不幸だ……ぐふっ」

 同時に、それが急降下してくるのが分かる。落ちてきた槍を手に取り、白陽は身構えた。
 影はどんどん大きくなり、とうとうその全貌が見える。
 それは、黒い身体に刃のような羽根を生やした悪魔龍だった。

「出てきやがったな……あれは《不吉の悪魔龍 テンザン》か」
「成る程、何故だか知らんが黒鳥レンに付き纏っていたのか」

 向こうも、クリーチャーの姿を目に留めると、口をようやく開いた。

「チィッ……折角、不幸にしたら面白そうなカモを見つけたから、デッキの中に潜りこんでいたのによぉ。後、面白いから付きまとっていたのに、まさかクリーチャーを味方につけている人間がいるとはな」
「まさかアレか。貴様、僕のデッキに入っていた《テンザン》か!! 最近、見当たらないと思ったら--------------おのれ、よくもこの僕を!! 久々に当たったレアカードかと思ったらハズレだったのか!!」
「そうだ!! パックの中に潜り込んでいたのさ!」
「……ぐっ、この間パックを開けたら6枚あったから道理でおかしいと思った……」
「気付けよ。色々突っ込みてぇよ、こちとら」

 つまり、この間の短編2は伏線だったことになる。

「おいテメェ。やるならレン以外の人間にしてやれ、あいつは素のままでも十分不運だ」
「殺すぞヒナタ」
「何だとテメェ」

 言い合いながらも、2人はきっちりとテンザンに視線を向けていた。

「ふーむ……クリーチャー……成る程、この世界にもいるとは」
「御託は良い! とっとと大人しくクリーチャー界に帰れ!」
「嫌だね! 俺は此処で一生、人間共のマイナスエネルギーをすい続けるんだ! 俺様の能力で不幸にしてやる、ぎゃはははは……む?」

 が、次の瞬間。テンザンは白陽を見るなり、あからさまな嫌悪感を見せる。

「な、何だテメェ……!! ドラゴンの俺様が此処までビビるのは初めてだぜぇ……てめぇ、ドラゴンへの対抗能力を持っているのか!!」
「そんなわけはないだろう、御伽噺じゃあるまいに」
「ねーよ、あってたまるか!!」

 ----------どうやら、この狐と正面からやりあっても、勝てそうにはないようだなぁ、悔しいが。
 どうやら、白陽のドラゴンを封じる能力を本能的に感じ取ったようであった。
 そして、じりじり、と後退しながら、ぶつぶつと呟き出した。
 ------------……感じる……実体化したクリーチャーの反応が……!! それも2匹……!! ぎゃははは、面白い!! 一体、この世界に何が起こってるのか、直々に見に行くとするか!
 バリン、と音がしたかと思うと、空間が割れる。
 そこから、テンザンはそこに出来た穴を潜り、そのまま閉じる穴と共に姿を消した。

「何だ? どうしたというのだ」
「……逃げていった?」
「とりあえず、私も索敵を試みる。奴が何処に逃げたのかは、それで分かるはずだ--------------」




 ***



「の〜ぞ〜むぅぅぅぅーっ!!」


 その頃。海戸3区公園にて。ノゾムは、地面が抉れた理由がすぐに分かった。
 目の前に、鬼のような形相をしたクレセントが立っていたからである。それも、鉄槌を掲げた、戦闘態勢の。服装こそ、いつもの黒インナーに半ズボンというものだったが、明らかに殺気立っている。

「あ、あ……クレセント」
「クレセント様……? そ、その、落ち着いて---------」
「ノゾムの馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ぁっ!! 大っ嫌い!! やけに遅いと思ったら、ニャンクスちゃんとデート!? 逢引!? 相棒のあたしのお願いをガン無視して!? いいもん!! あたしには白陽がいるもん!! 変なクリーチャーの気配もしたから、心配になって来たのにぃぃぃぃーっ!!」

 時計を見ると出発してからかなり時間が経っている。しかも、ニャンクスという自分以外のクリーチャーと話していた所為で、彼女は怒っている、と流石のノゾムも理解できた。

「はにゃにゃー!? やばいですよぅ!! 沈静の薬を作らないと---------!!」
「ち、違う! 今帰ろうとしたところだ、ちゃんとアイスも-------------!!」
「問答無用!!」

 そういって、彼女が鉄槌を振り上げたそのときだった。
 -------------クレセントの背後の空間が割れた------------!!

短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日 ( No.154 )
日時: 2015/08/23 16:49
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

「---------------え」

 完全に不意を突かれた。とても巨大な大口が自分の背後を狙って開かれたことを、クレセントは直感で感じた。しかし。鉄槌は既に振り上げきってしまっており、もう回避運動をとることは出来なかった。


「鉄槌を離せ、クレセントーっ!!」


 次の瞬間、ノゾムの声が聞こえた。思わず、それに従って自らの動きを束縛する重い鉄槌を手放す。
 そして、ノゾムの身体が自分の横からぬっ、と飛び出た。
 自分の胴が突き飛ばされて、そのまま地面に倒される。上には、激しく息を切らしたノゾムがのっかかっていた。
 突如現れた何者かの大顎は、モノの見事にクレセントの重く、そして硬い鉄槌にガブリ。同時に、何かが割れる音が響き、悲鳴とも取れる咆哮を上げた。

「-----------バカ」
「るっせぇ!! 危なかったんだぞ!!」
「うるさい、こっちの台詞だよっ! 重いから早くどいてってば!」
「あ、ああ、悪かったな」

 起き上がったクレセントは、現れた大顎-----------いや、龍の大きな首を一瞥する。
 
「その鉄槌の噛み心地はどう? 水文明の技術を総結集して作った超合金だから、触れた歯は漏れなく折れたでしょ。後で洗って返してね」

 ノゾムも改めて敵を見た。確かに、歯が全部折れている。その姿には見覚えがあった。

「《不吉の悪魔龍 テンザン》か……何でこんな奴がこんな所に」
「ひょんぎょれぇぇぇぇー!! ひょくも、ひょれひゃまのひゃひょ……!!」
「ごめん、全然聞きとれないわ、入れ歯入れて出直してきやがれ」
「あー、もうこのままだとアレなんで、歯、再生させてあげますね」

 ニャンクスが近寄り、丸薬を放った。すると、テンザンの歯がみるみる再生していく。

「って、ニャンクス!! 何で敵に塩送るような真似しやがった!!」
「し、仕方ないじゃないですかー! あのままだと、何言ってるのか分からないですし」
「ま、面と向かった状態なら流石に決闘空間に引きずり込めば倒せるしー」
「げほっ、げほっ、畜生……」

 テンザンは咳き込むと、急に生えてきた歯に戸惑いが隠せないようだったが。

「おのれ、折角この世界の人間共を不幸のズンドコ、いやどん底に叩き落してやろうと思ったのに」
「折角歯ァ生やしてやったのにこれだよ、もうとっとと決闘空間に引きずり込んで殺っちまうかコイツ」
「せーよ!! お前に、世界の人間共を不幸にしたい俺の気持ちが分かってたまるかよ!!」
「知らねぇよ!! 知ってたまるかよ、このテロリスト共!!」

 テンザンは、がるる、と低く唸るとそのまま前へ進み出た。それが合図だった。

「クレセント、行くぞ!」
「うん!」

 デッキケースからデッキを取り出し、目の前の敵に突きつける。そして、叫んだ。



「決闘空間解放!!」



 ***


「オレのターン! 《一撃奪取 マイパッド》でコスト軽減し、《アクア鳥人 ロココ》召喚!」
「俺様のターン、《ジャスミン》を召喚し、自爆。そして、ターン終了!!」

 序盤は互いに準備をし、いつ攻め込むか機会を伺っていた。
 そして、次のノゾムのターン。一気に盤面が動いた。

「オレは《マイパッド》と《ロココ》でコストを2軽減し、《術英雄 チュレンテンホウ》を召喚! ターンエンドだぜ!」
『守りの要のカードだね。波に乗ってきたよ!』
「ああ!」

 これにより、テンザンは下手に攻撃すればノゾムの手札にあるであろうS・トリガー呪文でクリーチャーをバウンスされてしまうようになってしまった。
 が、しかし。

「俺様のターン、《解体人形 ジェニー》召喚!」
「げっ、あのカードって------------」
「効果でお前の手札を見るぜ! 《スパイラル・ゲート》を墓地へ! どうやら、守りの要とやらはその1枚だけのようだな-------------!!」
「あ、あははは……」
『そうだ、闇にはハンデスがあるんだった……』
「ターンエンドだ」

 その守りはかなりぺらっぺらであったことは言うまでもなかった。手札が悪い。

「くそっ、オレのターン! 《エナジー・ライト》で2枚ドローする!」

 そういい、山札を引いたものの。
 -----------って、《スペルブック・チャージャー》と《アクア・ハルカス》かよ! これじゃ、牽制にしかなってねぇか!
 仕方がなく、ターンを終えたのだった。

(ぐふふ、このクソガキめ。俺様に勝負を挑んだが最期、俺様の前では主人公補正も強運も全て、無力化される! 恐らくお前は、今後除去呪文を握ることはない!! まさかこの俺に運まで握られているとは夢にも思うまい!)

 読者に説明していくスタイルである。
 余裕の笑みを浮かべたテンザンは、ついに動き出した。

「行け! 俺様の分身! 4マナで、《不吉の悪魔龍 テンザン》召喚!!」



不吉の悪魔龍 テンザン VR 闇文明 (4)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 13000
T・ブレイカー
このクリーチャーは、可能なら毎ターン攻撃する。
このクリーチャーが攻撃する時、自分の山札の上から13枚を墓地に置く。



 テンザンは不吉の悪魔。必ず攻撃しなければならない上に、攻撃すれば山札から13枚を墓地に置かなければならない。
 2度目の攻撃をした瞬間、計算上ではどう足掻いても山札は無くなる。
 しかし。コスト4でパワー13000のT・ブレイカーという凶悪極まりないスペックを持つこともお忘れなく。

「ターン終了!!」

 しかも、ノゾムは未だに除去呪文が引けていない。

「オレのターン! ……くそっ! 《ν・龍覇 メタルアベンジャー R》をコスト軽減して召喚! 効果で1枚をドロー! そして、《龍波動空母 エビデゴラス》をバトルゾーンに!」
「無理矢理引こうってか、無駄無駄無駄ァ!! 俺のターン! 《サイバー・N・ワールド》召喚!」


サイバー・N・ワールド SR 水文明 (6)
クリーチャー:サイバー・コマンド 6000
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、各プレイヤーは自身の手札と墓地のカードをすべて山札に加えてシャッフルする。その後、それぞれ、5枚カードを引く。
W・ブレイカー 


「効果で、俺とお前は手札と墓地のカードをそれぞれデッキに混ぜてシャッフルし、5枚ドローしなければならない」

 ----------チャ、チャンス! これで呪文を引ければ!
 そう淡い期待を抱いたノゾムであったが、手札に来たのは------------

短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日 ( No.155 )
日時: 2015/08/23 16:04
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

  現実は非情すぎた。いや、何かがおかしい。
  ----------何……だと!?
 引いた5枚のカードは、《エマージェンシー・タイフーン》×4枚に《ブレイン・チャージャー》という体たらくである。

(ぎゃはははは、驚いてやがる! 大方、普通ならありえない”引き”をしたんだろうな! そして俺様にはコンボパーツが全て揃った! 勝った! 第三部完!!)

 そして、叫んだテンザンは、そのまま攻勢に出る。

「俺様でシールドをT・ブレイク!! 効果で俺の山札の上から13枚を墓地へ!」

 次の瞬間、テンザンの放ったブレスで、一気にシールドのカードが3枚、粉々に吹き飛んだ。
 同時に、テンザンの山札の上から13枚が墓地に置かれる。次に攻撃すれば、テンザンは負けるが、恐らくなんらかの方法で敗北を回避してくるのは目に見えていた。

「ぜ、全部トリガーじゃねぇ……!!」
「ぎゃははは、ザマァ見やがれってんだ!!」

 しかも、此処まで除去呪文も1枚も来ていない。

『おかしいよ、ノゾム! こんなに引きが悪いなんて----------』
「----------昔、じいちゃんが言っていた」

 ノゾムはふと、呟いた。

「テンザン! てめぇが何をしたのかは大体想像できるが---------俺はこの手札を運の所為にしようとは思わない!! 運が悪い人間っつーのは、大抵何でも人の所為にしてしまう奴だ。運が悪いなんて現象なんざ、本来ありえねぇんだ!!」
「はっ、何を言い出すかと思えば!! 精神論で、俺様を倒せると思っているのかぁ?」
「倒してやるさ!! 世の中の99%は論理と計算、理屈で解決できる。じゃあ、解決できねぇ残りの1%はどうするか。その答えは!!」

 にやり、とノゾムはいつものように豪胆に、大胆に笑った。



「”根性”と”気合”で”笑い飛ばし”て、どうにかするっきゃねぇだろうが!!」


 
 ぐっ、と拳を握り締めたノゾムはカードを引く。そして、《エビデゴラス》の効果でもう1枚。案の定、思ったようなカードは引けなかったが------------

『ノゾム、どうするのさ!?』
「俺の手札にある《エマージェンシー・タイフーン》が勝利への方程式を解くための鍵となる! これを使わせて貰うぜ! 呪文、《エマージェンシー・タイフーン》!」



エマージェンシー・タイフーン C 水文明 (2)
呪文
S・トリガー
カードを2枚まで引き、その後、自分の手札を1枚捨てる。



 カードを2枚引き、1枚捨てるという効果を持つ《エマージェンシー・タイフーン》。しかし、手札を交換するだけではなく、これを唱えると言う事が重要だったのだ。

「効果で《クロック》を墓地に! 《チュレンテンホウ》のマナ武装は使えないが、数はまだある! もう1回、《エマージェンシー・タイフーン》だ!」
「……まさか」
「オレはさらに2枚引いて、《スペルブック・チャージャー》を墓地へ! このとき!! 《エビデゴラス》の龍解条件は満たされたぜ!」

 このターンの間に、カードを合計5枚引いたとき、《エビデゴラス》は龍の姿と成る。
 光と共に、空母の姿が変形し、水晶龍の王を象った。


「弱き者の盾となれ! そして未来へ羽ばたけ、蒼き龍王よ! 最後の龍解を成し遂げろ!! 《最終龍理 Q.E.D+》ッ!!」


 現れた水晶龍の王は、咆哮し、突貫する。

「いけ! 《Q.E.D+》でシールドをW・ブレイク!」
「ぐあっ!?」

 シールドが2枚、割られる。しかし。流れはそう簡単に引き寄せられるものではなかった。

「バカめっ!! と言って差し上げようか!! 《地獄門 デス・ゲート》!! 《メタルアベンジャーR》を破壊!!」
「なっ!? 此処でトリガーするかよ!?」
「それだけじゃあない! 効果で、墓地より《封魔妖 スーパー・クズトレイン》をバトルゾーンへ!」


封魔妖スーパー・クズトレイン R 闇文明 (5)
クリーチャー:ヘドリアン/グランド・デビル 5000
他のクリーチャーが破壊された時、カードを1枚引いてもよい。


 墓地に大量にカードを送り込んだため、テンザンの墓地戦略の幅は最大限に大きくなっていた。
 さらに、それだけではない。相手の運気を吸い尽くすという性質上、相手が不運であればあるほど、テンザンの運気は逆に上昇していくのである。

「さらに、2枚目のS・トリガー、《インフェルノ・サイン》で《復讐 チェーンソー》を墓地より復活させる!!」

 本来、テンザンは次のターンに手札の《復活と激突の呪印》でこれを復活させるつもりだった。しかし。嬉しい誤算であった。
 自身の効果で山札を削る前に《サイバー・N・ワールド》で手札を増やしたのは------------

「《チェーンソー》の効果発動! 俺の手札5枚を全て墓地へ置き、その数だけお前は自分のクリーチャーを選んで破壊しなければならない!」

 ----------《チェーンソー》の効果を最大限に使うためだったのだ。

「は、5体を破壊、だとぉ!? くそっ!! 決められると思ったのに!! 《Q.E.D+》を龍回避させて、《メタルアベンジャーR》と《マイパッド》と《ロココ》-------------って全滅じゃねぇか!!」
『本当、モノの見事に全滅したね……』
「それだけじゃあない! 同時に、お前のクリーチャーが4体破壊されたので、《クズトレイン》の効果で4枚ドロー!!」

 完全にやられた。自分のターンなのに、相手にターンを完全に握られた気分であった。
 そして、ノゾムに降りかかる災厄はこのままでは終わらなかった。

「俺のターン! まず、バトルゾーンにある《テンザン》と《ジェニー》を破壊!!」
「--------な!?」

 自らのクリーチャーを自ら破壊するという行為に驚きを隠せない。そんな能力を持つクリーチャーは、テンザンの場にはいなかったはずだ、とバトルゾーンを見渡すが------------

「どこを見ているんだ? 俺様の切札は、墓地にあるんだよ、墓地になぁぁぁ!!」

 叫んだテンザンの墓地から、1体の血に塗れた屍龍が這いずり出るようにして現れる--------------



「これで自滅の心配は無くなった!! 蘇れ!! 《偽りの名 ドレッド・ブラッド》!!」

短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日 ( No.156 )
日時: 2015/09/14 07:48
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)

「俺の場には、《N・ワールド》、《チェーンソー》、《クズトレイン》という3体の攻撃可能クリーチャーがいる!! 《チュレンテンホウ》もトリガー運も無いお前に、この状況が打開できるわけがないだろうがぁぁぁーっ!!」

 《N・ワールド》がビーム光線で、残るノゾムのシールドを薙ぎ払った。
 シールドは残り0枚。最早、勝てる確立は絶望的だと思われた。

『ノゾム……ごめん。あたしがあんな酷い事を言ったから----------』
「あのなぁ、クレセント」

 はっ、と彼女はもたれていた頭を上げた。

「オレは負けるのを人の所為にしやしねぇ」

 そして、「まして-----------」と続けた。割られたシールドの1枚が、光の束となって集積していく。
 彼の心の尽きない希望に、カードがとうとう答えたのか、それは分からない。しかし。一つだけ言えるのは。


「------------オレはこんな奴に負けやしねぇっ!! S・トリガー発動、《月光超技 ムーンサルトスタンプ》だ!!」


 次の瞬間、激流によって《クズトレイン》と《ブラッドレイン》がテンザンの手札へ戻された。
 さらに、天空より現れた鉄槌が《チェーンソー》に直撃し、そのままダウン、即ちフリーズ状態に。

「な、馬鹿なぁぁぁーっ!?」
「人間の世界にはこんな諺がある」

 再び彼は笑みを浮かべた。

「”捨てる神ありゃ拾う神ある”ってな!!」
「お、おのれぇぇぇーい!!」

 クレセント! とノゾムは彼女に呼びかけた。

「オレは、お前のことを大事に思っている! お前の孤独を少しでも癒すためにオレがいる! 今日みてーに我侭言ったって、良いんだ! お前はもっと、皆に甘えたって良いんだ!」
『ノ……ゾム?』
「さっきお前が怒ったのは、自分のことを忘れられたから、お前の中に孤独に怯える感情があったから! 違うか!?」
『-----------!』
「さっきも、お前の話をしていたんだ! オレは痛感したよ、パートナーのお前の気持ちがまだまだ理解できていなかったって!」

 図星だった。勘違いだったとはいえ、1人が彼女は怖かったのだ。
 だが、ノゾムは彼女が孤独だということは断じて認めなかった。

「オレは絶対に、お前を1人になんかにしねぇ! オレだけじゃねえ! 先輩達も、ホタルも、ハーシェルも、ニャンクスも------------そして白陽も!! 絶対、お前を1人になんかにしねぇ! オレはデュエリストで、お前はそのクリーチャーだ、2人で1つなんだ! だから、安心しろ!!」
『-----------うん!』

 カードを迷わず引いた。
 そこには------------


「オレのターン! 7マナで、《上弦の玉兎星 クレセント・ニハル》召喚! 効果で、超次元ゾーンより《月影機構 ルーン・ツールS》をバトルゾーンに!」


 ---------クレセントの姿があった。

「ごめんね、ノゾム。あたしは、貴方を、仲間を、皆を信じるから!」
「ああ!! ターン終了時に、《クレセント・ニハル》のマナ武装で《チェーンソー》をもう1回フリーズ!」
「く、くそっ!!」

 悔しさに顔を歪ませるテンザン。しかし、こちらにはまだ沢山の手が残っているのだ。

「行け!! 《ドレッド・ブラッド》を召喚! ターン終了だ!」
「無駄だぜ! オレのターン! 呪文、《ストリーミング・シェイパー》で山札から4枚を捲り、それらが水のカードなら手札に加える!」

 ノゾムの山札の上から4枚が表向きになった。しかし。ノゾムのデッキは、全て水のカードで構成されている。よって、どうなるかは明白であった。
 全てがノゾムの手札へ加えられる。

「ラッキーっつーのは確かに長続きしないが、アンラッキーっつーのも長続きしねーもんだな、テンザン!」
「残念だったね。此処までだよ!」
「ターンの終わりに、俺の手札がお前の手札の枚数を上回っているため、《ルーン・ツールS》の効果で星芒武装だ!!」

 次の瞬間、《ルーン・ツールS》の機械の身体が分解され、それが更にクレセントの身に纏われていく。
 そして-----------


「《循環月影 クレセント・ベクトル》武装完了!!」


 ----------玉兎の武神は、戦場に立った。

「効果で、お前のクリーチャーを全てバウンスする!」
『砲門斉射、撃てぇぇぇーっ!!』
 
 《クレセント・ベクトル》の全主砲から、ビーム砲が放たれる。次の瞬間、テンザンのクリーチャーは全て自らの手札に戻っていた。
 が、テンザンは得意げに鼻を鳴らすと反論するように言う。

「馬鹿め!! 俺のターン、もう1回《チェーンソー》を召喚だ! 効果で、俺は自らの手札を全て捨て、お前はその数-----------いや、《クレセント・ベクトル》を破壊しなければならない!」

 が、しかし。

「まだだ! 武装解除で《ルーン・ツールS》を超次元ゾーンに送って、下の《クレセント・ニハル》は生き残る!」
「な、何なんだ、そのクリーチャーはぁぁぁーっ!!」
 
 スターダスト・クリーチャーは、バトルゾーンを離れるときの効果があるのだ。
 それだけではなく、《クレセント・ニハル》はマナ武装で相手のクリーチャー2体をフリーズさせる能力がある。それも、自分のターンの終わりに。
 つまり、最終的なロックは武装前の《クレセント・ニハル》の方が強いのだ。


「オレのターン、もう1回、《チュレンテンホウ》を召喚! ターンの終了時に、《チェーンソー》をフリーズ!」
「くっ、くそっ、小賢しい真似を! -----------まずい、手札がもう無い!?」

 テンザンは、完全に自分が先走ったことを後悔した。さっき、《チェーンソー》の効果で全部捨ててしまったのだ。しかも、もう山札も残り少ない。考えてみれば、残り5枚しか無いではないか!

「あ、あがががが-------------!! 俺のターン……《チェーンソー》でダイレクトアタック-------------」
「させねぇよ! 《チュレンテンホウ》の効果発動! 手札から《龍脈術 水霊の計》を唱えて、《チェーンソー》をお前の山札の一番下に! さらに、《チュレンテンホウ》のマナ武装7で《水霊の計》をもう1回使って、3枚ドロー!!」
「そ、そんな----------!!」
「俺のターン! 《メタルアベンジャーR》を召喚し、効果で《龍脈空船 トンナンシャーペ》をバトルゾーンに!」

 現れたのは、亜空間をも越える強大なる龍の船であった。

「へっへーん、じいちゃんと同じカードだ、手に入れるのは苦労したぜ! そして、ターン終了!」
「ぐっ、おのれぇぇぇーっ!! 俺のターン……くっ、終了だ……」
「俺のターン!! ターンのはじめに、お前の墓地にあるカードが10枚以上あるため、《トンナンシャーぺ》を3D龍解!! 《亜空艦 ダイスーシドラ》!」

 次の瞬間、飛行船は亜空をも越える強大な水晶龍へと昇華した----------

「そして、《ダイスーシドラ》でシールドをW・ブレイク! 効果で、お前の墓地にある《インフェルノ・サイン》を使わせて貰うぞ!」
「そ、そんな馬鹿な!!」
「復活しろ、《メタルアベンジャー》! 効果で《エビデゴラス》をバトルゾーンに!」

 そして、シールドが叩き割られる。そして、後に続くように《チュレンテンホウ》も突貫した。
 
「これで、シールドは0枚だ!!」
「そんな、俺の不幸の力が負けるなんて---------------」

 これまでだった。テンザンに、手は残されていなかった。
 完全に、油断した。


「《上弦の玉兎星 クレセント・ニハル》でダイレクトアタック!!」



 ***


 カードの姿に戻り、完全にクリーチャーとしての生命を終えた《テンザン》を拾って、ノゾムは溜息をついた。

「ったく、人騒がせなクリーチャーだったな」
「そうだね」
「ノゾム様! クレセント様!」

 見ると、ニャンクスが心配そうな顔で駆け寄ってくる。

「はぁ、ご無事で何より……」
「ま、オレにかかればこの程度は何てこたぁねーって!」
「ならば良かった限り……はにゃにゃーっ!?」

 腕時計をふと見たニャンクスは慌てた表情で買い物袋を持ち、すぐさま去ろうとする。

「あわわ、そろそろ帰らないとっ! コトハ様に怒られます〜!! 全くもう、こんな目に遭うなんて聞いてにゃいし〜!!」
「お、おう、悪かったな」
「そ、それでは〜!!」

 そういって、彼女は駆けて行った。 
 それを見届けると、ノゾムは自分の隣に立っているクレセントに言った。

「オレらも帰るか」
「そだね」

 それに彼女も短く答え、カードに戻り、ノゾムの手へ。
 そのまま、帰路についたのだった。


 ***

 
 陽はもうすぐ暮れそうだった。

「ごめん。迷惑かけて」
「ふん、言っただろ。お前はもっと我侭言って良いんだ。あんまり抱え込むな」
「……ありがとう」

 そうだ、とノゾムは続けた。

「……アイス、沢山あるから。好きなだけ食って良いぞ」
「うん……ねぇ、ノゾム。もう1つだけ我侭良いかな?」

 ん? と彼は怪訝な顔で返す。

「アイス、一緒に食べようよ。後、今度は皆も呼んで一緒に食べよ?」
「……そうだな」

 ふぅ、と彼は息をついて立ち止まった。


「災厄な一日も、悪くはねーか」

 
 そう、呟いて------------



 ***


 その頃。ヒナタとレン、そして白陽は。

「おのれ、テンザンめ!! ぶっ殺、ぶっ殺」
「それよかよー、もうすぐ陽が暮れそうなんだが」
『おかしい、これだけ索敵して見つからないとは』

 それは、すぐにノゾムとクレセントがテンザンをやっつけたからである。

「ともかく! 奴は闇のクリーチャーだ、夜になったら現れるやもしれん!! このまま探索を続けるぞ!」
「馬鹿か、テメェ!! 補導されるぞ、俺ら!!」
「うるさい、貴様も道連れだ!!」
「クッソ迷惑だ!!」
『やれやれ……これは時間がかかりそうだな』


※この後、フジから着信が入ってくるまで2人は延々と街中を探索し続けました。これが本当の骨折り損のくたびれ儲けです。気をつけましょう。
後、夜道を子供だけで歩くのはやめましょう。危険です。


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