二次創作小説(紙ほか)
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入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- デュエル・マスターズ D・ステラ 【侵略世界編】
- 日時: 2017/01/16 20:03
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
【読者の皆様へ】
はい、どうも。二次版でお馴染み(?)となっているタクと申します。今回の小説は前作の”デュエル・マスターズ0・メモリー”の続編となっております。恐らく、こちらから読んだ方がより分かりやすいと思いますが、過去の文というだけあって拙いです。今も十分拙いですが。
今作は、前作とは違ってオリカを更にメインに見据えたストーリーとなっています。ストーリーも相も変わらず行き当たりばったりになるかもしれませんが、応援よろしくお願いします。
また、最近デュエマvaultというサイトに出没します。Likaonというハンドルネームで活動しているので、作者と対戦をしたい方はお気軽にどうぞ。
”新たなるデュエル、駆け抜けろ新時代! そして、超古代の系譜が目覚めるとき、デュエマは新たな次元へ!”
『星の英雄編』
第一章:月下転生
Act0:プロローグとモノローグ
>>01
Act1:月と太陽
>>04 >>05 >>06
Act2:対価と取引
>>07
Act3:焦燥と制限時間
>>08 >>10
Act4:月英雄と尾英雄
>>13
Act5:決闘と駆け引き
>>14 >>15 >>18
Act6:九尾と憎悪
>>19 >>21
Act7:暁の光と幻の炎
>>22 >>23
Act8:九尾と玉兎
>>25
第二章:一角獣
Act1:デュエルは芸術か?
>>27 >>28 >>29
Act2:狩猟者は皮肉か?
>>30 >>31 >>32 >>33
Act3:龍は何度連鎖するか?
>>36 >>37
Act4:一角獣は女好きか?
>>38 >>39 >>41 >>42 >>43 >>44 >>45
Act5:龍は死して尚生き続けるか?
>>48
第三章:骸骨龍
Act1:接触・アヴィオール
>>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55
Act2:追憶・白陽/療養・クレセント
>>56 >>57
Act3:疾走・トラックチェイス
>>66
Act4:怨炎・アヴィオール
>>67 >>68
Act5:武装・星の力
>>69 >>70
Act6:接近・次なる影
>>73
第四章:長靴を履いた猫
Act1:記憶×触発
>>74 >>75 >>76 >>77
Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解
>>78 >>79 >>80
Act3:捨て猫×少女=飼い猫?
>>81 >>82
Act4:リターン・オブ・サバイバー
>>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90
Act5:格の差
>>91 >>92 >>93 >>104
Act6:二つの解
>>107 >>108 >>109 >>110
Act7:大地を潤す者=大地を荒らす者
>>111 >>112 >>113
Act8:結末=QED
>>114
第五章:英雄集結
Act1:星の下で
>>117 >>118 >>119
Act2:レンの傷跡
>>127 >>128 >>129
Act3:警戒
>>130 >>131 >>132
Act4:策略
>>134 >>135
Act5:強襲
>>136
Act6:破滅の戦略
>>137 >>138 >>143
Act7:不死鳥の秘技
>>144 >>145 >>146
Act8:痛み分け、そして反撃へ
>>147
Act9:fire fly
>>177 >>178 >>179 >>180 >>181
Act10:決戦へ
>>182 >>184 >>185 >>187
Act11:暁の太陽に勝利を望む
>>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>193 >>194 >>195
Act12:真相
>>196 >>198
Act13:武装・地獄の黒龍
>>200 >>201 >>202 >>203
Act14:近づく星
>>204
『列島予選編』
第六章:革命への道筋
Act0:侵攻する略奪者
>>207
Act1:鎧龍サマートーナメント
>>208 >>209
Act2:開幕
>>215 >>217 >>218
Act3:特訓
>>219 >>220 >>221
Act4:休息
>>222 >>223
Act5:対決・一角獣対玉兎
>>224 >>226
Act6:最後の夜
>>228 >>229
Act7:鎧龍頂上決戦
Part1:無法の盾刃
>>230 >>231 >>232 >>233 >>234 >>235 >>236 >>239
Part2:ダイチの支配者、再び
>>240 >>241 >>242 >>243 >>244 >>245 >>246 >>247 >>248 >>250
Part3:燃える革命
>>252 >>253 >>254 >>255 >>256
Part4:轟く侵略
>>257 >>258 >>259 >>260 >>261
Act8:次なる舞台へ
>>262
第七章:世界への切符
Act1:紡ぐ言の葉
>>263 >>264 >>265 >>266 >>267 >>268 >>270
Act2:暁ヒナタという少年
>>272 >>273
Act3:ヒナとナナ
>>275 >>276 >>277 >>278 >>279 >>280 >>281
Act4:誓いのサングラス
>>282 >>283 >>284 >>285
Act5:天王/魔王VS超戦/地獄
>>286 >>287 >>295 >>296 >>297 >>298 >>301 >>302 >>303 >>304 >>305
Act6:伝説/閃龍VS獅子/必勝
>>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>323
Act7:青天霹靂
>>325 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>331
Act8:揺らぐ言の葉
>>332 >>333 >>334 >>335 >>336
Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神
>>337 >>338 >>339 >>340 >>341 >>342 >>343
Act10:伝える言の葉
>>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351
Act11:連鎖反応
>>352
『侵略世界編』
第八章:束の間の日常
Act1:揺らめく影
>>353 >>354 >>359 >>360 >>361 >>362
Act2:疑惑
>>363 >>364
Act3:ニューヨークからの来訪者
>>367 >>368 >>369 >>370 >>371
Act4:躙られた思い
>>374 >>375 >>376 >>377
Act5:貴方の為に
>>378 >>379 >>380 >>381 >>384 >>386
Act6:ディストーション 〜歪な戦慄〜
>>387 >>388 >>389
Act7:武装・天命の騎士
>>390 >>391
Act8:冥獣の思惑
>>392
Act9:終演、そして——
>>393
第九章:侵略の一手
Act0:開幕、D・ステラ
>>396
Act1:ウィザード
>>397 >>398
Act2:ギャンブル・パーティー
>>399 >>400 >>401
Act3:再燃
>>402 >>403 >>404
Act4:奇天烈の侵略者
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>411
Act5:確率の支配者
>>412 >>413
Act6:不滅の銀河
>>414 >>415
Act7:開始地点
>>416
第十章:剣と刃
Act1:漆黒近衛隊(エボニーロイヤル)
>>423 >>424
Act2:シャノン
>>425 >>426
Act3:賢王の邪悪龍
>>427 >>428 >>429
Act4:増殖
>>430 >>431 >>435 >>436 >>438 >>439 >>440 >>441 >>442
Act5:封じられし栄冠
>>444
短編:本編のシリアスさに疲れたらこちらで口直し。ギャグ中心なので存分に笑ってくださいませ。
また、時系列を明記したので、これらの章を読んでから閲覧することをお勧めします。
短編1:そして伝説へ……行けるの、これ
時系列:第一章の後
>>62 >>63 >>64 >>65
短編2:てめーが不幸なのは義務であって
時系列:第三章の後
>>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103
短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル)
時系列:第四章の後
>>120 >>121 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126
短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日
時系列:第四章の後
>>149 >>150 >>153 >>154 >>155 >>156
短編5:恋情パラレル
時系列:第四章の後
>>157 >>158 >>159 >>160 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>173 >>174 >>175 >>176
短編6:Re・探偵パラレル
時系列:平行世界
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422
エイプリルフール2016
>>299 >>300
謹賀新年2017
>>443
登場人物
>>9
※ネタバレ注意。更新されている回を全部読んでからみることをお勧めします
オリジナルカード紹介
(1)>>96 (2)>>271
※ネタバレ注意につき、各章を読み終わってから閲覧することをお勧めします。
お知らせ
16/8/28:オリカ紹介2更新
- Act3:再燃 ( No.402 )
- 日時: 2016/10/06 18:35
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
「うん、ヒナタ。落ち込むことないわよ」
「……」
「そ、そうっすよ、先輩。如月先輩を庇ってたところ、すっげーかっこよかったすよ」
「……」
「だ、大丈夫ですよ! ネットにばら撒かれた訳じゃないですし!」
「……」
「まあ、色々終わったと貴様は思ってるかもしれんが人生まだまだこれからだ、ノゾムのアレに比べればまだマシな方だぞ」
「ひでぇ!!」
「……うん。何か……すまんかった。生きててすまんかった」
「先輩ィィィーッ!!」
帰りのシャトルバスで、死んだような目でヒナタは窓の外を見ていたのだった。
あの後、戸惑う間もなくチャイナメイドコスを着せられ、更に特殊メイク・胸に詰め物までされる徹底っぷり。
写真を10枚くらい、思い出すのも恥ずかしいポーズで撮られたことなど、思い出したくもないが、これだけやったのに当のテイシュウは「うーん微妙だネ。あ、もう良いよ? 写真はこっちでどうするか決めっから。どーしよっかなぁン?」等と抜かしていたので、既に精神はボロボロなのであった。取り敢えず。ノゾムの気持ちはよーく分かった気がする。
***
——今日泊まる宿にチェックインした後。ヒナタは、個室でばったりとベッドに伏せていた。相部屋のノゾムは、今シャワーを浴びている最中だ。
完全なる敗北感。今回は使ったデッキこそ違ったものの、相手は明後日はさらに強力なデッキを使ってくるはずだ。
にも関わらず。今日の圧倒的な速攻。余りの速さに、ヒナタは対応が遅れ——敗北した。
デッキが使いこなせていなかったという言い訳は通用しない。ヒナタは基本、ほぼ全てのタイプのデッキを使いこなせるオールラウンダー。どのデッキを使っていても、単純に力量差と相性で負けたという事には変わりないのである。
『大丈夫だ、ヒナタ。また次に勝てば良い』
「……そうだけど、本当にあいつは強かった。今度は、あんなのじゃすまねぇ——気を緩めたら、逃げ腰になったら、轢き殺される——あのコロナのプレイングがそうだったように」
どの文明でも、やはり侵略者というのは強力なビートダウン種族だ。
しかも、序盤から現れる進化クリーチャーの性能がずば抜けている。革命でも追いつけるかどうか、分からない。
こちらもそれを追い越すつもりで戦わなければ、潰される。
あの時、コロナに成す術なく負けたように——
「入るわよ」
「ん」
ガチャリ、と扉が開いた。
そこには、シャワーを浴びた後だからか、髪を降ろしているコトハの姿があった。まだ、湿っている髪がどこか艶っぽい。
ベッドの上に座り、並ぶ。彼女が申し訳なさそうに萎んだ顔で言った。
「……今日は、ごめん」
「何でお前が謝るんだ。俺が自分から勝手に受けた勝負だぜ。どう考えても、あの場で断ることは出来なかったし——これが最善だった」
「……本当にそうかなあ」
「だけど、最後はやけっぱちだったとはいえ、ノリノリでポーズをとっていた自分をタイムスリップして撲殺してぇ……」
「あ、あはは……」
ヒナタは気が滅入ったように腕を組んだ。
女装していた自分を思い出すのをそこでやめた。これ以上は死にたくなる。
「……ともかく、あのトランスフォーマー擬きの侵略者をどうにかしねえことにはな……」
「それわざわざ言ってあげないでおこうよ……」
「しかも、ぜってー持ってる侵略者の進化クリーチャーは、あれだけじゃねえだろ……あの勝負師が、あんなお遊びに本気を出すわけは絶対ねぇ」
「ま、張りつめるのも良くないわよ」
ぽん、とコトハは彼の背中に手を置いた。
「ま、まあ今回の件はあたしが原因みたいなものだし……あなたにおっ被ってもらいことになっちゃったようなものだわ。だから、ヒナタが1人で何か抱えてるところなんて、もう見たくない」
「コトハ……」
「特訓よ! 明日は、試合に向けてガンガン特訓するしかないわ! もう時間は無いんだから! あたしは幾らでも付き合うわよ! 本番、まだ誰が出るかは決まってないけど、状況や残りの相手に合わせて選出されるなら、万全を期すに越したことはないわ!」
しばらくヒナタは押し黙る。
そして——いつもの軽薄な笑みを浮かべた。
「——確かに。1人で悩んでるなんて、馬鹿みてーだったな。ともかく、メイドの分はたっぷり返さねえと——ダメだ、思い出しただけで吐き気が」
「うわぁ……これは大分ダメージが……」
「貴方のメンタルは、その程度ですか、暁ヒナタ先輩ッッッ!!」
背後から声が響く。
見れば——既にシャワーを浴び終えたらしいノゾムが、腕を組んで仁王立ちで立っていた。
「メイド姿のまま、女装コンテストに無理矢理出され、どっかのグラサンとパツギンの所為でノゾミちゃんの渾名がデフォルトになったオレに比べればっ!! あんたなんてまだ良い方でしょうがっ!! 精神力が、メンタルパワーが足りないッッッ!!」
「メンタルパワーって何ーッ!?」
「とにかくですよ、先輩。1回や2回の敗北でポッキリ心が折れてるようでは、この先の戦いに勝つことは不可能!!」
「お前、それは割と人の事言えないよね!?」
「よって、チーム全員、メンタルを鍛えるためにメイド姿のまま特訓することを具申します!!」
「却下します!!」
こいつはもう、単に暴走しているだけであった。
完全にトラウマが蘇っている。それを全員に撒き散らそうとしているので、厄介極まりない。
今回の件でヒナタもこれ以上メイドを見ると変な物に目覚めてしまいそうなので、これ以上は突っ込みたくはないのであった。
「まあ、そんなことはともかく、明日1日バッチリ特訓しましょう! 先輩!」
「そうよ! 練習あるのみだわ!」
「……お前ら……!」
何であれ。こうして、やるべきことは決まった。
足りないものを探し、明日の間にどれだけ力を付けるか——特訓あるのみだ。
***
「……クックックッ……それで、既に調整は終わっているというわけだネ?」
「はいっ! もちろんですよぅ! 『運命天導(ウィザード)』の異名を持つ貴方に相応しいデッキです!」
「よろしい。ならば十分だ」
カードを手に取ると、テイシュウは笑みを浮かべた。
インベイトから送られてきた侵略のカード群。
ただのスペックではすまされない速度とパワーを持つのは、ソニック・コマンドだけではないのだ。
それを研究してきた彼は、自らの磨いてきた戦法に死角が無いことを自負していた。
「——奇天烈の侵略者、マジック・コマンド。鎧龍——お前たちを楽しいゲームに招待しょうかネ——!!」
- Act3:再燃 ( No.403 )
- 日時: 2016/10/08 12:22
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
——画して次の日である。
ホテル内の遊技場には、デュエルフィールドもあった。
そこで、既にカードを展開し、向きあってスパーリングの準備に入っているのは方やヒナタ、方やノゾムだ。
それを見守るように、レンとコトハ、そしてホタルが試合の開始を待っていた。
「先に対戦するのは、ノゾムか……あたしも、ニャンクスの新しいデッキを早く試したいんだけどなあ」
「仕方あるまい」
「この間、先輩は燻ってたオレの襟元を正してくれた——オレもその恩返しがしたい! 今日は先輩の特訓にとことん付き合いますよ!」
「素晴らしい。昨日、自分の受けた苦しみをこのグラサンにも味わってもらおう、さっさと負けてしまえとか言っていたのが嘘のようだ」
「うわあ、マジかよ」
「そこまで酷くは言ってませんからね!?」
レンの発言を受けて、取り繕おうとするノゾムだが、当のヒナタはさして気にしていないようであった。あの文化祭での彼の身に起こった悲劇を思えば……である。
そして、件の元凶は今もへらへらと笑みを浮かべて試合を観戦しようとしていた。
さて、ヒナタのデッキは恐らく明日の試合でも使う準赤単のドラグハートか赤単のメタビートのどちらか、対するノゾムのデッキはクレセントやドラグハートが超次元に置かれているところを見ても、いつもの水単コントロールだろう。
今回は互いに全力のスパーリングだ。
「僕が、あの2人の試合を見るのは入学式以来になるな。あの時勝ったのはヒナタだったが——ノゾムも1年にしては、とんでもなく強い」
「そりゃそうよ……入学初日に多くの上級生にまとめて勝負を売って、いずれも圧倒して撃破……入学時点で、プレイング・ビルディング技術は相当高い上にポテンシャルも大きかったわ」
「しかも、デュエルでは互いに、カードの組み合わせを重視する2人——使う文明はまさに正反対ですけど、そういう意味では似ています……!」
準備が完了したのか、2人はデッキから5枚の手札を引く。
『白陽! あたし達全力で行くよ! まっけないからね!』
『それはこちらも同じだ。私の術で止めてやる』
「行くぜノゾム! 俺らの全力全開だ!」
「はいっ、お願いします!」
そして、2人同時に宣言する。
この激しい闘いの幕開けを。
「「デュエル、スタート!!」」
***
——先攻2ターン目。ノゾムは早速、《マイパッド》を召喚していた。一方のヒナタも《トップギア》を召喚して、後続の召喚に繋げる。
互いに次のターンは、4コストのクリーチャーを召喚できる体制だ。
しかし。
「3マナで《パクリオ》召喚! その効果で、先輩の手札を見ますよ!」
「っ……やべ」
展開された4枚の手札の中には、《爆炎シューター マッカラン》、《ネクスト・チャージャー》、《早撃ち人形 マグナム》、《永遠のリュウセイ・カイザー》があった。
その中から、ノゾムは《マッカラン》を選び、彼のシールドへ封じ込める。
「選ばれたのは《マッカラン》……展開を優先した形だな。ノゾムのデッキは、クリーチャーの踏み倒しを多用するわけではないし、いざという時に邪魔なクリーチャーは軽コストバウンスであしらえば良い。良い判断だ」
「まあ、流石って言ったところかしら」
ノゾム:山札28 手札2 マナ0/3 墓地0 シールド5
ヒナタ:山札27 手札3 マナ0/2 墓地0 シールド6
回収が難しいシールドへカードを送り込む《パクリオ》は厄介なカードだ。
今回のヒナタは、若干遅いムーブのデッキであることもノゾムは把握できたため、一気にアドは取れたと言っていいだろう。
しかし。ヒナタも負けてはいない。こちらも後続に繋げる為に、更なる手段を使ってきたのである。
「俺のターン——んじゃあ、3マナで《ネクスト・チャージャー》だ! 残る手札2枚を山札の下に戻して、カードを2枚ドロー!」
「交換されたか……」
「これで、また俺が何を握ってるかが分かんなくなったな。ターンエンド」
ヒナタ:山札26 手札2 マナ1/4 墓地0 シールド6
とはいえ、手札の絶対数が増えたわけではないので、このままではジリ貧になりかねないことも分かる。
——このまま追い詰めていけば——! 先に火力で焼かれないカードを出して、一気に詰める!
「オレのターン、ドロー!」
カードを引くノゾム。
そのまま、4枚のマナをタップした。
そこから唱えるのは呪文だ。まずは、手札を整えて、こちらもいち早く切札を出さねばならない。
更にマナもこのままでは心許ない。
故に彼が選んだ答えは——
「呪文、《ブレイン・チャージャー》! その効果でマナを1枚追加して、1枚ドローして、ターンエンドだ!」
ノゾム:山札26 手札2 マナ1/5 墓地0 シールド5
堅実な動きであった。
次のターン、彼のマナは6枚になり、《M・A・S》はもちろん、《マイパッド》の効果で《メタルアベンジャーR》等も出せるようになっている。
もっとも、今の彼の手札にはコスト7の《メタルアベンジャーR》しかなかったわけであるが。
「ターンエンド!」
「……んじゃ、俺のターンだな」
カードを引くヒナタ。
そのまま、溜まった5枚のマナをタップする。
「——《トップギア》でコストを1下げ——《新世界 シューマッハ》召喚!」
新世界(ニューワールド) シューマッハ SR 火文明 (6)
クリーチャー:アウトレイジMAX 6000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、各プレイヤーは自身の手札をすべて捨てる。その後、それぞれカードを5枚まで引いてもよい。
W・ブレイカー
「いっ……!?」
「その効果で互いに手札を捨てて、5枚まで引いてもよい。さあ、どうするノゾム。何枚引く? 俺は5枚引くぜ」
「っ……5枚引きます」
現れたのは、かつてヒナタと行動を共にしたアウトレイジの1体、《シューマッハ》だ。
以前は、《クロスファイア》と《5000GT》の召喚補助に使われていたが——
「む、なぜヒナタはこのカードを……?」
「少し意図が読みづらいわね。何を考えてるのかしら」
「単なる手札補充じゃないでしょうか。どっちにしたって、キーカードを貯め込んだ時に手札を全て消される可能性が、ノゾムさんには出てきましたよ」
「水単では、捨てられた手札をすぐにリカバリー出来るわけではない。ドローは質より数、がここで足を引っ張ってくるとはな」
つまり、考えられることは、今回のヒナタは明らかに長期戦を狙っているということだった。
ヒナタ:山札20 手札5 マナ0/5 墓地2 シールド6
ノゾム:山札21 手札5 マナ1/5 墓地2 シールド5
「ターンエンドだ」
「っ……!」
現にそれは当たりであった。
次のターンに出そうとしていた《メタルアベンジャーR》が墓地に落とされたのは痛い。
しかし——同時に、手札にカードを貯められたのも事実。その中から、1つ1つ、勝てる手を選んでいく——
「……オレのターン、ドロー! 6マナで《龍覇 メタルアベンジャー》召喚! その効果で《エビデゴラス》をバトルゾーンへ!」
「結局出てくるのな、ドラグハートは……」
「へへん、どんなにやられたって不屈の意志で復活するのがヒーローってもんでしょ! ターンエンド!」
ノゾム:山札20 手札5 マナ0/6 墓地2 シールド5
「んじゃあ、俺のターン——ドロー」
カードを引いたヒナタは——笑みを浮かべてみせた。
ノゾムが切札のドラグハート・フォートレスを出してしまったのに対し——彼もまた、切札を出そうとしていたのである。
「——お前の場には3体のクリーチャー——そして《トップギア》でコストを1軽減し、合計4コストダウン」
タップされたのは6枚のうち、4枚のマナ。
そして——彼は叩きつける。
あらゆるものを焼き尽くす灼熱の革命を。
「燃え盛れ、灼熱の革命!! 絶望に抗い、反撃せよ——《メガ・マグマ・ドラゴン》!!」
- Act3:再燃 ( No.404 )
- 日時: 2016/10/09 11:45
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
現れたのは溶岩の革命龍。
その効果により、弱者は容赦なく全て破壊される。
パワー5000以下の《トップギア》と《マイパッド》、《メタルアベンジャー》は即座に破壊される。
「除去られた……!」
「更に呪文、《勇愛の天秤》。効果で手札から《鬼丸「覇」》を捨てる」
彼の手札から送られたのは、《鬼丸「覇」》だ。
何故そんな重いカードを、このデッキに積んでいるのかは疑問が残ったが——
「おいヒナタ。少し墓地を見せてくれないか」
「? どうしたのよレン」
「いや、少し……な」
「ああ、構わねえぜ。公開ゾーンだしな」
彼の墓地を見る。
その中には、さっき《シューマッハ》の効果で墓地に送られた《撃英雄 ガイゲンスイ》と《熱血龍 バトクロス・バトル》があった。
——何なんだこの墓地は……いや、何を考えているんだこれは……。
「ターンエンドだ」
ヒナタ:山札17 手札4 マナ2/6 墓地5 シールド6
「……オレのターン!」
カードを引くノゾム。
まず、《エビデゴラス》の効果でカードを追加で引くことが出来るので、ドローし、さらにターンの最初のドローで手札は7枚。これにより——
そして、7枚のマナをタップする。
「——頼むぞ! 《上弦の玉兎星 クレセント・ニハル》召喚! その効果で超次元ゾーンから《月影機構 ルーン・ツールS(ストライク)》をバトルゾーンへ!」
『ふふーん、いっくよー!』
ノゾムが繰り出したのはクレセントだ。
そして、その効果で超次元から《ルーン・ツールS》が姿を現す。
「その効果で、先輩の手札を1枚見ないで選び、山札の一番下へ送ります! 右から2番目を山札の一番下に!」
「……」
「そして——ターン終了時に相手の手札の枚数より自分の手札の枚数が上回っていれば、《ルーン・ツールS》は星芒武装します!」
「来るか……!」
《エビデゴラス》で手札を増やしたことと、《ルーン・ツールS》のハンデスにより、手札の枚数はノゾムの方が上回っていた。
《ルーン・ツールS》を裏返し、《クレセント・ニハル》へと重ねる。
「その鉄槌で悪を砕け。正義を胸に今、ここに武装完了——《循環水月 クレセント・ベクトル》!」
現れてしまった。
ノゾムの切札が。武装時に相手のクリーチャーを全てバウンスし、更に相手が呪文を唱える度に自分も呪文を唱えることが出来る、という効果を持つ強力なクリーチャー、《クレセント・ベクトル》が。
「そして、こいつの効果で《メガ・マグマ》と《シューマッハ》をバウンスだ!」
一気に2体のクリーチャーが吹っ飛んだ。
ノゾムの構想としては、次のターンに《マイパッド》から《プラズマ》に進化し、《エビデゴラス》を龍解させてさらに攻勢を増やすというもの。
いきなりシールドを減らしすぎるのは《ドギラゴン》の可能性を考えると非常に危険であるが——
——特にヒナタ先輩のデッキは今回、除去手段を多めに積んでるみてーだし——でも、武装解除で除去耐性の高い《クレセント・ベクトル》ならフィニッシャーとして申し分は無い!
「ターンエンドっ、すよ先輩!」
ノゾム:山札18 手札5 マナ0/7 墓地2 シールド5
ヒナタ:山札20 手札6 マナ2/6 墓地2 シールド6
「……ま、進化元が居ないんじゃ進化も真っ当に出来ねーか」
確かにノゾムと《クレセント》の絆の賜物である武装は、非常に強力だ。
しかし。ヒナタとしても負けてはいない。こちらにも——切札があるのだから。
「——んじゃ仕掛けていくぜ、相棒! 俺のターン、7マナをタップだ!」
あるマナを全てタップし、彼は宣言する。そして——
「黄金の九尾を携えし、聖獣よ!! 今、この俺と鼓動をあわせろ!! 咆哮せよ、そして開闢せよ!!
《尾英雄 開闢の白陽》!!」
召喚されたのは白陽だった。
『クレセントよ。あまり調子に乗っていると痛い目を見るぞ』
『なになにー? 遊んでくれるんだ、白陽』
『いや、私の効果——忘れたとは言わさんぞ』
「《白陽》の効果で、相手のドラゴンとドラグナーは攻撃することが出来ない」
つまり。ノゾムのフィニッシャーとなるカードは、大方止められてしまったことになる。
このままではノゾムは攻め込むこともできない。
ヒナタ:山札19 手札5 マナ0/7 墓地2 シールド6
「——くそっ、オレのターン——ドロー!」
カードを引くノゾム。
何とかして、《白陽》をどかさなければ勝ち目はない。
8枚のマナをタップして、彼を倒しにかかる。
「《龍脈術 水霊の計》! 効果で《白陽》を山札の下へ送ります!」
「《陰陽超技・炎熱乱舞》を手札から捨てれば、送られたゾーンから《白陽》は復活する。もちろん、呪文を唱えた扱いじゃねーから、《ベクトル》の効果は発動しねえ」
しかし、それも《炎熱乱舞》の効果で阻まれてしまう結果になった。
結局、このターンに出来ることはなくなってしまう。
「ターン、エンド……!」
それを宣言するのみだ。
笑みを浮かべたヒナタは——高らかに宣言した。
「わりーな、ノゾム。この勝負、貰ったかもしれねーぜ!」
「えっ……!?」
カードを引くヒナタ。
そして——2枚のマナをタップする。
「《トリガラ・ダシッチ》召喚! その効果で、墓地にあるドラゴンを好きな順で俺の山札の上に置く!」
トリガラ・ダシッチ C 火文明 (2)
クリーチャー:ファイアー・バード炎 1000
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、次のうちいずれかひとつを選ぶ。
・自分の墓地にあるドラゴンを好きな数、好きな順序で山札の上に置く。
・自分の他のクリーチャーを1体選ぶ。そのターン、そのクリーチャーに「パワーアタッカー+2000」を与える。
山札の上に置かれたのは、《鬼丸「覇」》と《ガイゲンスイ》だ。
そして——彼は残りのマナをタップする。
「6マナで《トリガラ・ダシッチ》を進化——」
これを待っていた。
会心のタイミング、そして丹念になされた準備。
それが全て、勝利へと繋がっていたのである。
「革命の炎が激しく燃える! 支配と侵略に反逆の嵐を巻き起こしやがれ!
《革命龍 ドラッケン》!」
ノゾムはこの時、すべてが繋がった気がした。
《ドラッケン》の能力、それは——攻撃時に山札の上を捲り、それが火のドラゴンならばバトルゾーンに出せるということ——
「まさか、山札の上にドラゴンを《トリガラ・ダシッチ》で仕込むために、今まで《シューマッハ》や《勇愛》で墓地を増やしていたってことっすかぁ!?」
「そうだ。これなら、ドラゴン比率を無理に上げてランダム要素に賭ける必要もねえ——んじゃ、行くぜ! 《ドラッケン》で攻撃するときの効果発動!」
山札の上から1枚が捲られる。
それは——当然、《勝利宣言 鬼丸「覇」》であった。
「シールドをW・ブレイク!」
「っ……!!」
割られる2枚のシールド。
そこにトリガーは無い。更に追撃と言わんばかりに、彼は《鬼丸「覇」》をタップする。
「《鬼丸「覇」》で攻撃——するとき、ガチンコ・ジャッジ発動!」
互いの山札のカードが捲られる。
ヒナタはコスト6の《メガ・マナロック・ドラゴン》。
対するノゾムは——コスト4の《スペルブック・チャージャー》。
勝ったのはヒナタだ。
それと同時にシールドがブレイクされる。
「っ1枚目のシールドからS・トリガーで《終末の時計 ザ・クロック》召喚! その効果でターンをスキップします!」
「そうか——じゃあ、次も《鬼丸「覇」》の効果で俺のターンだな!」
「あ——!!」
もう、ノゾムのターンは来ない。
そのまま、ヒナタは再び自身のターンを始める。
「7マナで《ガイゲンスイ》召喚! そして、《鬼丸「覇」》で攻撃だ!」
「や、やばいっ——!!」
《ガイゲンスイ》の効果で、引き上げられるパワーと打点だが、今この状況では最早オーバーキルも大概だろう。
再び行われるガチンコ・ジャッジ。
ヒナタはコスト3の《ネクスト・チャージャー》、対するノゾムはコスト6の《チュレンテンホウ》だったが——シールドは全て叩き割られる。
「S・トリガー、無し——!?」
「それじゃあ、これでシメェだ!!」
ヒナタは《ガイゲンスイ》に手を掛ける。
「《ガイゲンスイ》でダイレクトアタック!!」
「革命ゼロトリガー、発動——《革命の水瓶》!!」
革命の水瓶 R 水文明 (2)
呪文
革命0トリガー—クリーチャーが自分を攻撃する時、自分のシールドがひとつもなければ、この呪文をコストを支払わずに唱えてもよい。
自分の山札の上から1枚目を表向きにする。それが水のクリーチャーなら、クリーチャーを1体選び、持ち主の手札に戻してもよい。
この呪文を唱えた後、墓地に置くかわりに山札に加えてシャッフルする。
最後の砦と言わんばかりにノゾムは革命0トリガーの《革命の水瓶》を繰り出す。
山札の上を捲り、出たのは——《アクア・スーパーエメラル》だ。
「効果で《ガイゲンスイ》をバウンス!! クリーチャーが居なくなったから、攻撃終了です!」
「だけど、まだ《白陽》が残っているぜ——」
しかし、如何せん軍勢が多すぎた。もう、ノゾムを守る壁は無い。
そのまま——《白陽》をタップした。
「《尾英雄 開闢の白陽》でダイレクトアタック!!」
- Act4:奇天烈の侵略者 ( No.405 )
- 日時: 2016/10/09 15:34
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
***
——あの後も沢山デュエルの特訓をした一日であったが——明日は試合ということもあり、ヒナタは落ち着けなかった。
ベッドの上で寝転がり、隣のベッドで眠っているノゾムを横目にして、明かりを付けながらデッキを組んでいく。
ドラグハートを取るか、進化を取るか——単純な力はドラグハートが上だが、速さは進化の方が上だ。
しかし、《バトライ閣》を採用している以上、両方を取ることは出来ないのである。
最後の1枚まで考え、考え、考え抜く——そうやって築いてきたデッキは、今まで一度もヒナタを裏切ったことはない。
——そういや、ナナの奴もそんなこと言ってたっけ……1枚1枚カードの役割を考え、配分する——そうやって考え抜いて作ったデッキはまさに自分の思う通りに動いてくれる、だったな。
昼間ノゾムに見せたドラッケン連ドラは、あくまでも試作中の1つに過ぎない。あの男に——テイシュウに勝つならば——更に構成を煮詰めなければならない。
「後、もうちょいか。何とか出来そうだ。この構築なら、テストプレイは、朝にちょっとやるだけで十分だな」
『相手はコマンド、私を生かせるかどうかは分からんぞ』
「そうだな……ドラゴンが相手じゃねぇ以上は……」
そうやって息をついたときだった。
ふと、コンコン、と扉をノックする音がした。
除き穴から、扉の向こうを見る。やってきてたのは——
「……あはは……来ちゃった」
——コトハであった。
すぐさま鍵を開ける。
照れたような表情で、彼女は部屋に入ってくるのだった。
「おいおい、どうしたんだよ、こんな真夜中に」
「明日は試合だからね。此処までずっと頑張ってた大将の顔、見ておきたくって。どうせあなたのことだから、ずっとデッキ組んでたんでしょ」
「はぁー……本当、敵わねえなあ」
「皆、明日に備えて準備してる。まずはこの一戦——勝たなきゃ話にならない」
「そりゃそーだ。目指すのは天辺、世界一だぜ。俺がしっかりしねえと。デッキもバッチリ、今できるベストのものを組まねえと」
彼女も笑いかけて見せる。
「ま、大丈夫よ。あんたのデッキはいつも生き生きとしてるもの。1枚1枚、最後まで考えられていて——そうやって考え抜いて作られたデッキってデュエリストに応えてくれるのよね」
「……」
ヒナタはしばらく、ぽかんとしていた。
自分が考えていた事を、そのまま言い当てた彼女には本当に、何かを感じる。
「……やっぱ、お前には敵わねえなあ」
「え?」
「何でもねーよ。とにかく、ありがとな」
「何言ってんの。これだけじゃないわよ。どーせ、目が冴えちゃってるんだから——テストプレイ、付き合うわよ」
「だけど、明日も出発は早いぜ? 良いのかよ。ノゾムも、もし起こしちまったら悪いし」
「すー……すー……」
「……ま、こいつは大丈夫そうだな」
「あたしは大丈夫よ。ちょっとくらい。ほらほら、デッキを出しなさい——」
夜が更けていく中。
2人の対戦は続いた。
刻々と近付く明日の決戦も——この時だけは忘れ、純粋に楽しめた気がした。
——やっぱ俺、誰か傍にいねーと、本当にダメダメだな——昔っから。
***
『デュエリスト養成学校対抗、世界大会——D・ステラ! その第一回戦が今まさに、このジンリュウデュエリスト養成学校大アリーナにて行われようとしています!』
会場が沸き立つ。
今回の試合が行われるのは、ジンリュウデュエリスト養成学校の所有する巨大会場。
まるでカジノのような、絢爛とした装飾物に広大なフィールド。
此処が今まさに、クリーチャーが駆け、呪文が飛び交う戦場と化すのだ。
「ふぁあ、随分なものを所有してたのね。学校の癖に」
「大丈夫っすか、如月先輩。今日欠伸多いっすよ?」
「なーんでもないわ。試合に支障は無い」
「貴様がそう言うのならばそうなのだろうが」
既にデュエルフィールドの前に立っている鎧龍チーム。
そして、正面を見据えた。
中国・マカオ代表、ジンリュウデュエリスト養成学校の代表が入場してきたのである。
『今回試合を行うのは、我らがマカオ代表・ジンリュウデュエリスト養成学校です! リーダーにしてジンリュウ屈指の勝負師と名高い、リュウ・テイシュウ選手率いる、最高クラスの秀才が集まっています!』
シルクハットを取り、彼が頭を下げる。
そして、向こう側にいるヒナタに向かって呼びかけた。
「ふふふ、待ちわびていたよ、この日を……今日も負けたら、メイドになってくれるのかネ、それも大観衆の前で……なあ、暁ヒナタ」
「やるわけねーだろ、二度と、な! 良いのか。そんな余裕ぶっこいてて」
「ふん、こっちこそ野郎の女装なんざ二度と願い下げだネ。だが、今日は良い勝負が楽しめることを期待してるよ。君が出るのかは知らないけどネ」
「へっ、こっちこそ楽しみにしてるぜ。吠え面かかせてやんよ」
鎧龍チームとジンリュウチームが互いに揃い並ぶ。
『その対戦相手となるのは、日本代表・鎧龍決闘学院!! 大将・暁ヒナタを始めとした、強烈な個性のメンバーで構成されたチームです! 特に、3年生不在、2年生3人、1年生2人というチーム編成であるものの、これまでの予選でも圧倒的な実力を見せつけています——それでは、両チーム、先鋒戦のメンバーを前へ!』
今回は選出戦。
5人のチームの中から、相手の残りメンバーから誰をぶつけるかを試合ごとにチームで考え、選ぶことになるが——この先鋒戦だけはノーヒントでメンバーを考える必要がある。
つまり、此処で重要なのは、安定して勝てるメンバーだ。
その中でも有力なのは、レンとノゾムだが——デュエルフィールドに上がってきたのは、ノゾムであった。
『鎧龍の先鋒は、1年生・十六夜ノゾム選手です!』
「しゃあっ!! 気合い入れてくぜ!」
『早速あたし達の出番だね!』
小柄であるものの、幾多の戦いを乗り越えてきた気迫は上級生に劣らない。
既に覚悟完了、いつでも戦える準備は出来ている。
尚、レンとノゾムで先鋒はもめたのであるが、最後はフジの「相手ギャンブラーっぽいし、不運属性の黒鳥はやめといた方がよくね?」という発言が決め手になった——というわけではなく。
「これは僕とノゾムがきちんと協議を行った結果だ。僕の運の無さは関係ない」
「マジかよ。でも大丈夫か、ノゾムの奴」
「大丈夫よ。あの子、あんたに昨日何度も負かされた後、すっごい必死にデッキ組み直してたしね。あんたより早く組み終わってたみたいだけど」
「ま、あいつなら心配する必要はあるまい」
「……問題は対戦相手ですよ」
『一方の、我らがジンリュウデュエリスト養成学校の代表は、リ・リンユー選手です!』
現れたのは、シルクハットを被った少女だった。
昨日も、テイシュウの傍にいたあの少女に間違いなかった。
「レディースエーン、ジェントルメーン! リンユーの世紀のマジックショーへ、ようこそ! 最高のエンタメデュエルをお届けしますよー!」
「マジックショーにエンタメデュエルだぁ?」
「はい、貴方が十六夜ノゾムですねー? 私が、リ・リンユー——ジンリュウチームのメンバーを務めていまーす! 今回は早速、貴方に水の侵略の華麗なるマジックショーをお見せしたいと思います。お楽しみにぃー!」
「オイオイ、ふざけてんのか? さっさと始めようぜ。テメェのマジックショーとやらのタネと仕掛けは、このオレがデュエル中に解体してやっから覚悟しとけ!」
いきり立った様子でデッキを取り出すノゾム。
一方のリンユーも、カードをデュエルテーブルに並べる。
シールドが展開され、互いの視線が交差すると同時に——戦いの火蓋は切られた。
『それでは、試合開始!』
- Act4:奇天烈の侵略者 ( No.406 )
- 日時: 2016/10/10 12:47
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
・ノゾム
龍波動空母 エビデゴラス×2
超龍素要塞 エビデシュタイン
真理銃 エビデンス
龍芭扇 ファンパイ
月影機構 ルーン・ツールS
ヴォルグ・サンダー×2
・リンユー
無し
データパネルに映し出された、互いの超次元ゾーンのデータを見ながら、ヒナタは問うた。
選手の事を色々調べていたのは、やはりホタルで、色々詳しい。
「リンユーって、確か父親が若い頃に名マジシャンとして名を馳せていたんでしたっけ」
「はい。娘はどうやら、デュエマの道に行ったそうですけどね。心理戦とコンボを組み合わせたオーソドックスな水使い……どうなるやら、です。でも、ノゾムさんは絶対に勝ちます!」
「もし相手が侵略ビートならば、革命さえ間に合えば勝ち目はある。そうでなくとも、ノゾムにはドラグハートがある。心配はいらんだろうが……何か引っかかるな」
既に、フィールドでは試合が進行している。
ホログラムで現れたクリーチャーに目を見張りながら、彼らはゲームの行方を見守るしかない。
「それでは、私のターンですねぇー……」
先攻3ターン目。
リンユーとノゾムの場には、《一撃奪取 マイパッド》が出ている。
彼女は3枚のマナをタップすると、告げた。
「では、3マナで”マジック・コマンド”、《奇天烈 シャッフ》召喚!」
「マジック、コマンド——そいつが、侵略のコマンドクリーチャーか」
現れたのは、トランプを束ねたディーラーのようなクリーチャーだ。
その体は、機械でできており、ロボットを思わせる。
そして、リンユーはにこにこと、微笑むと高らかに宣言する。
「そして、《シャッフ》の登場時効果発動! 世にも奇妙なマジック・コマンドの超魔術をお見せしましょう! 私が指定する数字は——”3”、ターンエンドです!」
リンユー:山札28 手札3 マナ0/3 墓地0
「へっ、何かと思ったら数字を言っただけか? 数字を言うだけなら、赤ん坊でもできるぜ。このまま、一気に手札を増やしてやる!」
ノゾムのターン。
そのまま、3枚のマナをタップする。
「呪文、3マナで《ストリーミング・シェイパー》! その効果で——」
と、宣言したところでノゾムは止まった。
表示されない。
マナをタップしたところで、呪文が展開されないのだ。
つまり——この呪文は今、唱えられないということになる。
「ふっふっふ、奇妙奇天烈、《シャッフ》の超魔術! それは、登場時とこのクリーチャーの攻撃時に宣言した数字と同じコストの呪文を相手は唱えられなくするというもの! タネも仕掛けもございません!」
「ざっけんじゃねーぞ、コノヤロー!! それを先に言え、それを!!」
説明も何もなかったことに憤慨しつつ、彼は考える。この《シャッフ》の能力を。前情報には無かったクリーチャーの1体だ。恐らく、今回初めて実戦投入したのだろうか。
——呪文を封じられるのはとてもまずい——! これは結構厳しいかもしれねーな……!
ここで3マナを使い、何をするかで今後の展開が決まってくると言っても過言ではない。
此処は——《シャッフ》を、そしてその先にある侵略を封じる意味でも取り敢えずは排除するしかない。
「3マナで、《アクア隠密 アサシングリード》召喚! その効果で、《シャッフ》をバウンスだ!」
「うーん、残念です」
「マジックだの何だの言って、馬鹿にしやがって! ターンエンドだ!」
ノゾム:山札27 手札4 マナ0/3 墓地0
もやもやが残る中、リンユーにターンが渡る。
「ふっふっふー、でも私のマジックはこれだけでは終わりませんよ! では、お次はこれです! 3マナで、マジック・コマンドの《奇天烈 ベガス》召喚!」
現れたのは、ルーレットの回転盤を盾のように持ったクリーチャーだ。
その瞳は欲望に塗れており、機械のような体には鳳の紋章が焼き付けられている。
紛うことなき、侵略者のクリーチャーであった。
「《ベガス》のマジック発動! さあ、今度はちゃーんと説明してあげますよー、おチビさん。貴方の山札の上のカードを捲り、山札の一番下へ置きます。それがコスト5以上のカードだったならば——私はカードを3枚引ける……スリリングなマジックですねえ」
「このやろ……人の気にしていることをいけしゃあしゃあと……」
「それじゃあ、予知してみせましょう。貴方が次に引くのは——コスト5以上のカードである、と!」
彼女の挑発に乗っ掛かりそうになるノゾム。
しかし、同時に思案する。そんな相手任せの確立の絡む能力、そうそう当たってたまるか、という話だ。このデッキならば、確率は2分の1にも満たないはず。
山札の上を彼女に見せた。
「ほら、どーせ当たるわけが——」
「ふっふっふー、どーでしょうか。お、コスト7、《上弦の玉兎星 クレセント・ニハル》。これが噂に聞いた星のカードですかぁ」
「……何だって!?」
自分の捲ったカードを見る。
間違いない。《クレセント》のカードだ。
「どっちにしても、私の予知マジックは大当たりですねぇー。それじゃあ、カードを山札の一番下へ送ってもらいましょうか」
「こ、い、つ……!」
「ついでにおひねりも頂きましょうかねぇー。《ベガス》の効果で3枚ドロー」
奇天烈 ベガス R 水文明 (4)
クリーチャー:マジック・コマンド/侵略者 4000
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、相手は自身の山札の上から1枚目を見せ、その後、山札の一番下に置く。そのカードがコスト5以上なら、カードを3枚引く。
なんにせよ、彼女の言う予知も、マジックも、ものの見事に成功してしまったわけである。
さっきから、この少女の戯言に振り回されている気がしてならない。
「ターンエンドですよー、さあさあどうしますかぁー? 日本のおチビサムライさん? ねぇー?」
リンユー:山札24 手札6 マナ1/4 墓地0
『ノゾム、ごめん……』
「マジシャンの皮を被ったギャンブラーめ……もしイカサマの1つでもあったら、ジャッジキルだぞコノヤロー……!! 次のターンで挽回だ!!」
カードを引くノゾム。
そして、4枚のマナをタップした。
「行くぜ! コスト4、《龍覇 トンプウ》召喚! その効果で、超次元ゾーンから《龍芭扇 ファンパイ》を出して装備だ!」
——次のターン、《アドラク》で山札の上を固定して、そっちのマナゾーンにある呪文を奪ってやるぜ! 《ピタゴラス》か《ストリーミング・シェイパー》か……! 《シャッフ》が来ても問題は無いぜ!
現れたのは、龍脈術を司る軍師。その手には、龍の芭扇が握られており、あらゆる術を操ることが出来る。
ノゾムの目論見は、次のターンにリンユーのマナにある呪文を手札にある《封魔アドラク》で奪うことだ。《アドラク》の、登場時に互いのマナから1枚を山札の一番上へ置く効果と、《ファンパイ》の装備クリーチャーが攻撃したときに相手の山札を見て、それが呪文ならば踏み倒せるという効果を組み合わせるのである。
「なあ、ノゾムの戦法、最近どんどんえぐくなってねぇか? 相手の呪文を強奪するヒーローっていいのかアレ」
「《強奪者 テラフォーム》って知ってるか? あれのモデルはどっからどう見てもヤッ——」
「いや、そうじゃなくて」
そんなことを外野で言っている間に、ノゾムは高らかに言い放つ。
「こっからが本当の魔術(マジック)だ! イカサマ賭博なんざには負けねえぜ! ターンエンドだ!」
ノゾム:山札26 手札3 マナ0/4 墓地0
「イカサマァ? タネも仕掛けもありませんよぉ。こっちは命綱無しで危険なマジックをやってるようなものなのに、うっうっ、何という言われよう……」
「おい、それもうマジックでもなんでもねぇだろ!!」
「とにかく、ギャンブルもマジックもエンタメに変わりはありません! 人々を沸かせ、熱狂させ、震わせる——ああ、エクスタシー! 最高に興奮すると思いませんかぁー?」
3枚のマナをタップした彼女は、再び《シャッフ》を召喚する。指定した数字は”5”、バウンスによる除去を封じた形になる。
しかし、これだけでは終わらないのだ。
「ではいきましょうか——大消失マジック! このターンで、貴方のクリーチャーを全て消して見せましょう!」
「消す? 何言ってんだおめー、そのマナじゃもう全体除去呪文なんざ——」
「ふっふっふー、ここからが本番ですよお。怖くてチビらないでくださいね、”おチビさん”」
「てんめぇ……チビ、チビ、ってさっきから……!」
「おっと失礼。本当のことを言っちゃいましたあ。まあ、気を取り直して《ベガス》で攻撃——」
嘲笑したリンユーは、そのまま《ベガス》に手を掛ける。刹那。
遠く遥かから、侵略の風が吹いた——
「するとき、”侵略発動”!」
侵略。それは、あのコロナも使っていた脅威の踏み倒し能力。
ノゾムの表情が一気に正気に戻る。
「レディースエーン、ジェントルメーン! さあ、世紀の大マジックショー、舞台の主役である彼にご登場願いましょう——《奇天烈 ベガス》進化!」
彼女の宣言と共に、スポットライトが《ベガス》に当てられた。
そして、大量のコインが降り注ぎ——あらゆる欲望と狂気を含んだそれが、肥大化し、そして巨大化する。
観客の熱狂によって、それは更に膨れ上がり——侵略者として顕現した。
「——ショータイム、《超奇天烈 ベガスダラー》!」
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