二次創作小説(紙ほか)
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- デュエル・マスターズ D・ステラ 【侵略世界編】
- 日時: 2017/01/16 20:03
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
【読者の皆様へ】
はい、どうも。二次版でお馴染み(?)となっているタクと申します。今回の小説は前作の”デュエル・マスターズ0・メモリー”の続編となっております。恐らく、こちらから読んだ方がより分かりやすいと思いますが、過去の文というだけあって拙いです。今も十分拙いですが。
今作は、前作とは違ってオリカを更にメインに見据えたストーリーとなっています。ストーリーも相も変わらず行き当たりばったりになるかもしれませんが、応援よろしくお願いします。
また、最近デュエマvaultというサイトに出没します。Likaonというハンドルネームで活動しているので、作者と対戦をしたい方はお気軽にどうぞ。
”新たなるデュエル、駆け抜けろ新時代! そして、超古代の系譜が目覚めるとき、デュエマは新たな次元へ!”
『星の英雄編』
第一章:月下転生
Act0:プロローグとモノローグ
>>01
Act1:月と太陽
>>04 >>05 >>06
Act2:対価と取引
>>07
Act3:焦燥と制限時間
>>08 >>10
Act4:月英雄と尾英雄
>>13
Act5:決闘と駆け引き
>>14 >>15 >>18
Act6:九尾と憎悪
>>19 >>21
Act7:暁の光と幻の炎
>>22 >>23
Act8:九尾と玉兎
>>25
第二章:一角獣
Act1:デュエルは芸術か?
>>27 >>28 >>29
Act2:狩猟者は皮肉か?
>>30 >>31 >>32 >>33
Act3:龍は何度連鎖するか?
>>36 >>37
Act4:一角獣は女好きか?
>>38 >>39 >>41 >>42 >>43 >>44 >>45
Act5:龍は死して尚生き続けるか?
>>48
第三章:骸骨龍
Act1:接触・アヴィオール
>>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55
Act2:追憶・白陽/療養・クレセント
>>56 >>57
Act3:疾走・トラックチェイス
>>66
Act4:怨炎・アヴィオール
>>67 >>68
Act5:武装・星の力
>>69 >>70
Act6:接近・次なる影
>>73
第四章:長靴を履いた猫
Act1:記憶×触発
>>74 >>75 >>76 >>77
Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解
>>78 >>79 >>80
Act3:捨て猫×少女=飼い猫?
>>81 >>82
Act4:リターン・オブ・サバイバー
>>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90
Act5:格の差
>>91 >>92 >>93 >>104
Act6:二つの解
>>107 >>108 >>109 >>110
Act7:大地を潤す者=大地を荒らす者
>>111 >>112 >>113
Act8:結末=QED
>>114
第五章:英雄集結
Act1:星の下で
>>117 >>118 >>119
Act2:レンの傷跡
>>127 >>128 >>129
Act3:警戒
>>130 >>131 >>132
Act4:策略
>>134 >>135
Act5:強襲
>>136
Act6:破滅の戦略
>>137 >>138 >>143
Act7:不死鳥の秘技
>>144 >>145 >>146
Act8:痛み分け、そして反撃へ
>>147
Act9:fire fly
>>177 >>178 >>179 >>180 >>181
Act10:決戦へ
>>182 >>184 >>185 >>187
Act11:暁の太陽に勝利を望む
>>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>193 >>194 >>195
Act12:真相
>>196 >>198
Act13:武装・地獄の黒龍
>>200 >>201 >>202 >>203
Act14:近づく星
>>204
『列島予選編』
第六章:革命への道筋
Act0:侵攻する略奪者
>>207
Act1:鎧龍サマートーナメント
>>208 >>209
Act2:開幕
>>215 >>217 >>218
Act3:特訓
>>219 >>220 >>221
Act4:休息
>>222 >>223
Act5:対決・一角獣対玉兎
>>224 >>226
Act6:最後の夜
>>228 >>229
Act7:鎧龍頂上決戦
Part1:無法の盾刃
>>230 >>231 >>232 >>233 >>234 >>235 >>236 >>239
Part2:ダイチの支配者、再び
>>240 >>241 >>242 >>243 >>244 >>245 >>246 >>247 >>248 >>250
Part3:燃える革命
>>252 >>253 >>254 >>255 >>256
Part4:轟く侵略
>>257 >>258 >>259 >>260 >>261
Act8:次なる舞台へ
>>262
第七章:世界への切符
Act1:紡ぐ言の葉
>>263 >>264 >>265 >>266 >>267 >>268 >>270
Act2:暁ヒナタという少年
>>272 >>273
Act3:ヒナとナナ
>>275 >>276 >>277 >>278 >>279 >>280 >>281
Act4:誓いのサングラス
>>282 >>283 >>284 >>285
Act5:天王/魔王VS超戦/地獄
>>286 >>287 >>295 >>296 >>297 >>298 >>301 >>302 >>303 >>304 >>305
Act6:伝説/閃龍VS獅子/必勝
>>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>323
Act7:青天霹靂
>>325 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>331
Act8:揺らぐ言の葉
>>332 >>333 >>334 >>335 >>336
Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神
>>337 >>338 >>339 >>340 >>341 >>342 >>343
Act10:伝える言の葉
>>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351
Act11:連鎖反応
>>352
『侵略世界編』
第八章:束の間の日常
Act1:揺らめく影
>>353 >>354 >>359 >>360 >>361 >>362
Act2:疑惑
>>363 >>364
Act3:ニューヨークからの来訪者
>>367 >>368 >>369 >>370 >>371
Act4:躙られた思い
>>374 >>375 >>376 >>377
Act5:貴方の為に
>>378 >>379 >>380 >>381 >>384 >>386
Act6:ディストーション 〜歪な戦慄〜
>>387 >>388 >>389
Act7:武装・天命の騎士
>>390 >>391
Act8:冥獣の思惑
>>392
Act9:終演、そして——
>>393
第九章:侵略の一手
Act0:開幕、D・ステラ
>>396
Act1:ウィザード
>>397 >>398
Act2:ギャンブル・パーティー
>>399 >>400 >>401
Act3:再燃
>>402 >>403 >>404
Act4:奇天烈の侵略者
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>411
Act5:確率の支配者
>>412 >>413
Act6:不滅の銀河
>>414 >>415
Act7:開始地点
>>416
第十章:剣と刃
Act1:漆黒近衛隊(エボニーロイヤル)
>>423 >>424
Act2:シャノン
>>425 >>426
Act3:賢王の邪悪龍
>>427 >>428 >>429
Act4:増殖
>>430 >>431 >>435 >>436 >>438 >>439 >>440 >>441 >>442
Act5:封じられし栄冠
>>444
短編:本編のシリアスさに疲れたらこちらで口直し。ギャグ中心なので存分に笑ってくださいませ。
また、時系列を明記したので、これらの章を読んでから閲覧することをお勧めします。
短編1:そして伝説へ……行けるの、これ
時系列:第一章の後
>>62 >>63 >>64 >>65
短編2:てめーが不幸なのは義務であって
時系列:第三章の後
>>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103
短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル)
時系列:第四章の後
>>120 >>121 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126
短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日
時系列:第四章の後
>>149 >>150 >>153 >>154 >>155 >>156
短編5:恋情パラレル
時系列:第四章の後
>>157 >>158 >>159 >>160 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>173 >>174 >>175 >>176
短編6:Re・探偵パラレル
時系列:平行世界
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422
エイプリルフール2016
>>299 >>300
謹賀新年2017
>>443
登場人物
>>9
※ネタバレ注意。更新されている回を全部読んでからみることをお勧めします
オリジナルカード紹介
(1)>>96 (2)>>271
※ネタバレ注意につき、各章を読み終わってから閲覧することをお勧めします。
お知らせ
16/8/28:オリカ紹介2更新
- Re: デュエル・マスターズ D・ステラ 〜星々の系譜〜 ( No.71 )
- 日時: 2014/11/29 01:26
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
そんなわけで速足で来ましたモノクロです。今回は前置きも短く。
まず、番外短編については……いまいち触れにくいネタが多いので、割愛させていただきます。なんというか、勢いで終わったなー、という感じでした。
あと、ご都合主義的なところもあるのでしょうが、フジは妙なところで発想が世間ずれしてますよね。一種の天才だとも取れますけども。
さて本編に移りますが、超技呪文は白陽も持っていたんですね。気付けば、というのがヒナタと出会う前なのか後なのかが分からないので、白陽そのもの、または彼の出自に関わるものなのか、それとも地球に来たことやヒナタと出会ったことに起因するものなのかは謎ですが、これもまた明かされていくんですかね。
そして半径50kmは数字だけで現実ではまったく具体的ではないですね。50kmなんて、一人の人間が身一つで簡単に捜索できる範囲じゃない……
そんなところから始まって、そんな感じのツッコミどころが多々ありましたかね。
次はクレセントvsアヴィオールの対戦(物理)で、アヴィオールが吐血しているところですが、白骨化していたら、血なんて腐るどころか干からびていると思うのですがそれは……まあ、アヴィオールの身体における鮮明な情報がないのでなんとも言いにくいところではありますけども。そしてアヴィオールの血に集うハエの仕事スピードが速い。なんて、速さだ。
それはそれとして、ノゾムが颯爽登場でアヴィオール戦ですが、今度のアヴィオールは超次元も絡めているんですね。これは最新のスーパーデッキ意識でしょうか、サイキック・クリーチャーからしても。
そしてここで新タイプのカード……ステラアームド・クリーチャーですか。まあ、これはまだいいんですが、しかし《アルゴリズム》って……数学やコンピューター関係の用語ですが、闇の《アヴィオール》よりも水文明のクリーチャーらしいチョイスがやはり謎です。《髑髏方陣》の時も同じようなことを思いましたが、《アヴィオール》は水文明となにか繋がりでもあるのでしょうか。それとも相手が水メインのノゾムだから?
ところで、《アサシングリード》はパワー3000なので、−2000では破壊されないです。《リュウセイ・カイザー》をバウンスするのであれば、このコスト域だと呪文でバウンスするしかなさ気ですかね……
ステラアームド、なんてもっともらしいネーミングからなんとなく察していましたが、合体しちゃいましたか。クリーチャーに装備して、条件を満たすと独立するドラグハート・ウェポンとはちょうど逆ですね。《アルゴリズム》のK・コアという、種族なのか能力なのか、それとも他のカテゴリなのかよく分からないものも気になりますが……りゅうこつ座のα星ですし、《アヴィオール》に深くかかわるものであることは、ほぼ確実ですかね。となると、他のステラアームドはまた別の名称なのか……
どうでもいいですけど、アルゴリズムとか、クリーチャーの合体とか、白骨した龍とかを並べて見ると、どことなくデジモンを思い起こさせます。確かアルゴリズムがモデルのデジモンがいたはず。モノクロが思い出したのはディアボロモンとアーマゲモンですけど。スターダスト・クリーチャーという名称からは遊戯王も想起させますかね……完全に《スターダスト・ドラゴン》ですが。
そんなことは置いておいて、《アヴィオール・ゼノン》の能力一つ目は、マッドネスなどを踏まないオールハンデスですか。今までありそうでなかった能力ですが、普通に強いですよねこれ。
そんな《アヴィオール》に対抗して、ノゾムとクレセントもまた、《クレセント・ニハル》を呼び出しますか……ステラアームドが《月影機構 ルーン・ツールS》と、これはかなり武器というか、装備品みたいな名前してますね。《クレセント》の《ルーン・ツール》という部分の名前は、彼女の装備のことを指していたのでしょうか。
そして《クレセント》も星芒武装で《クレセント・ベクトル》へ……うーん、武装前は《クレセント・ニハル》でうさぎ座のβ星、ステラアームドは特別捻った感はないですが、微妙に《アヴィオール》のそれとネーミング法則が合致しないですね。元の世界が違うからでしょうか?
そしてスターダスト・クリーチャーの方も〜・コアというものがあるんですね。しかし、武装解除で場に残るのはともかく、武装前に戻りさえしないというのはかなり強力ですね……なんか、武装前の姿の意義が薄くなってしまっているような……
ともあれ、アヴィオールを撃退しましたが、やっぱり逃げるアヴィオール。なかなかにしぶといですねこいつも。
ここまででかなり多くのオリカが出ていたので、数回目を通した程度ではまだ頭が軽く混乱状態ですが、この流れで白陽やハーシェルも武装するんですかね。
というか今作って、ヒナタが後手に回っている感じですね。オリカなどの主要カードの出番はノゾムが先んじている印象です。というか実際そうなのでしょうけど。
しかしこれだと、未だ出ていない二体の英雄は、元の姿が出ないまま武装する可能性も微レ存……しかもこれらに加え、武器のカードもあるんですよね。ここから一気に激化していきそうな予感です。
急いで書いたもので駆け足となってしまいました(それでも2000字オーバー)が、とりあえずここまでとします。
……本当は、オリカが一気に出てきたために状況の整理があんまり追いついていなくて、結構あれなこと言っちゃっている気しかないです。慌てないで日を改めてじっくり感想書けばよかった気がします。
まあ、書いちゃったものは仕方ないですし、これを消すのもあれなので、このまま投稿します。
とりあえず一区切りがまたついたようなので、次回は……またアヴィオール、なんですかね。流石にそろそろ食傷気味というか、またお前か! って素でツッコミを入れそうです。
ではでは、これにて。
- Re: デュエル・マスターズ D・ステラ 〜星々の系譜〜 ( No.72 )
- 日時: 2014/11/30 15:03
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
どうも、コメントありがとうございます。指摘されてやべぇな、と気付いた所が多々あります。
やっぱ最近、ミスが多い気がします。本当だったら半径50mにするつもりだったんですが、なぜかk入れちゃったんですよ。50kmってどんだけって話ですよね。最近どうも疲れているみたいです。
アヴィオールの体については、また後々明かすつもりですが、あいつは自分で体に循環器官を作っています。死んでいるのに、なぜ? と思われるかもしれませんけど、ちゃんとこれには設定があるんですよ。ハエについては知りません。修正しておきます。D・ステラは黒い描写の練習をしているのもありますが、無理しすぎましたね。
《アルゴリズム》の名前の由来は、アルゴリズムにアルゴー船を引っ掛けたものです。そして、水文明っぽいというのも実は的を射てるんですよね……。
《クレセント・ベクトル》の能力の描写にもちょっとミスがありました。正確には《デビル・ハンド》を唱えられた時点で、唱えられた呪文と同じコストの呪文を唱える能力が発動するのでそう書けばよかったのに。
まあ、ステラアームド・クリーチャー、スターダスト・クリーチャーについての仕様はまた後々解説していくつもりです。
メソロギィに比べると、オリカの数はかなり多くなります。まあ、解りにくいところも多々あるでしょうね、すみません。
さて、実はここから一旦、アヴィオールからは離れるつもりなんですよ。流石にアヴィオールとの連戦続きだったので、飽きたでしょう。多分、5人目の英雄が判明すると思います。いや、すぐ次の話じゃなくて、次の次になるとは思いますが。
それでは、また。
- Act6:接近・次なる影 ( No.73 )
- 日時: 2014/11/30 15:27
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
次の日。
怪我をした箇所を無理矢理包帯で服の下から隠し、何とか今日一日を乗り切ったノゾムは、ホタルの家に向かおうと思っていた。
彼女は学校には来ていたらしいが、すぐに帰ってしまっていた。
さて、彼女の家の玄関の前に来る。見れば、ヒナタもいた。
「先輩」
「よっ、ノゾム。お前も来てから入ろうと思ったのさ」
とのこと。
「しかし、アヴィオールについては謎がいっぱいあります。第一に普通白骨化してるのならば、血もカラカラになってるはずだ。なのにやつには汚血があった」
「そういえば、そうだ。クレセントがアヴィオールに一撃を加えたとき、あいつは体内の組織がぶっ壊れて大量出血したらしいな」
「体内にどうやら血をためているらしい、です。それが自分のものかどうかは謎ですけど。おかげさまでハエが口から出てましたよ」
「あー、気持ちが悪い」
さて、呼び鈴を鳴らすと、しばらくして『はーい、誰でしょう』と声がする。ホタルの声だった。
「オレだ。ノゾムだ。ハーシェルとお前に用がある」
『え!? わ、分かりました……』
声がすると、また間をおいて彼女が玄関の戸をあけた。
すると、ノゾムと一緒に居たヒナタも見てホタルは驚いたようだった。
「あ、あれ、この方って」
「暁ヒナタ先輩。知ってるだろ、新聞部なら。って、この人も入れていいかな。悪いけど」
「あ、構いません。暁先輩も、どうぞこちらに」
「すまねーな」
彼は軽く受け答えた。
***
「粗茶ですが、どうぞ。レモンティーはお好きですか?」
「ああ、もちろん。ありがとな」
居間に通してもらい、彼女が接待用の紅茶を持ってやってくる。
飲んだが、なかなか酸味と甘みが絡み合って、これが美味しい。
さて、と隣の先輩が切り出す。
「ノゾムも、そしてこの俺も”生きたカードの使い手”だ」
「生きたカード……」
「そう。星の力を持つクリーチャー。前世で死んだり封印されてた英雄が何者かによって新たな力を手に入れて復活した。ハーシェルも例外じゃねえ」
ヒナタはぴっ、と白陽のカードを彼女に見せた。
『成る程。ワシと似た境遇のものということか』
ハーシェルの声が、ホタルの持っていたカードから聞こえた。
「多分、最近海戸で起こっている多くの怪事件。失踪や神隠し、放火に連続ナンパ」
『うっ……ちょっと私腹が痛くなってきた』
『ワシも頭が……』
白陽とハーシェルはそれぞれ腹と頭を押さえたのがカードの外から見えた。
「……それらは多分、地球にやってきたものの、人間達の邪気にやられておかしくなったクリーチャーが起こしたものだ」
失踪、神隠し、でホタルのこめかみがぴくん、と動く。不安げな表情を彼女は浮かべていた。
「さて、ここでお前に簡単な質問だ」
「し、質問、ですか」
「逆にインタビューされんのはなかなか無いっぽいが、そんな難しい質問じゃねえよ? すっげー簡単。誰にでも答えられる質問だぜ?」
ヒナタは、笑顔で言った。
「さーて、お前の両親はどこにいる?」
どうだ? と彼は続けた。ノゾムはそのやりとりを黙って見ているしかなかった。
「簡単だろ? 誰にでも答えられる質問だぜ」
「……」
黙りこくる彼女に、ヒナタはチッ、と舌打ちした。
「これは俺の想像だが、お前の両親……」
「もう、いいです」
彼女は静かに言った。
「私から言います」
「悪いね。辛いこと吐き出させちまって。だけど、もしもこれが俺の予想通りなら、想像通りならば、多分同じことがこの先何度も起こる。それを止めるためなんだ」
「……すみません」
ホタルの目には眼鏡越しに少し涙が浮いていた。
「私の家庭は、普通でした。1ヶ月前までは」
ですが、と彼女は続けた。
「ある日、黒いもやもやしたものが一緒に居た父と母を包んでいく光景を偶然見てしまったんです」
「黒いもやもや?」
「はい。形は無い抽象的なものでした」
間違いない。アヴィオールの分身だろう、とノゾムは感じ取った。
前に一度見ている。
「そしてそれ以来、真面目だった2人はパチンコに通うようになってしまいました。毎日毎日、ろくに仕事にも行かず、そして口も利いてくれなくなりました」
「そんで?」
「1週間くらいだったでしょうか。もう、2人は家に帰らなくなりました……」
くっ、とノゾムは唇を噛んだ。悔しい。アヴィオールの仕業だと分かっていながら、アヴィオールの所為にできないのが。
「そしてハーシェルと出会ったとき、私は確信したんです。もしかしたら、彼も協力すればあの黒いもやもや--------いえ、アヴィオールを倒せるかもしれないって。両親の仇討ちができるかもしれないって」
「やっぱり、ハーシェルから全て聞かされてたんだな」
『ワシらも何度かアヴィオールと戦ったんじゃが、いずれも逃げられてしまってな』
うーむ、とノゾムは唸った。そういえば、浄化を行うにはそのクリーチャーと同じ文明の使い手が必要だったような気がする。
アヴィオールは闇文明。そして、闇文明の使い手の知り合いといえば---------
「レン先輩!」
「どうした、ノゾム」
「レン先輩ならアヴィオールを浄化できるかもしれませんよ!」
「だっけどなー」
ヒナタは顎に手を当てた。
「いや、さ。何か、あいつに頼むのって癪なんだよなー」
「ちょっと待て、あんた。さっきまでの事件解決してやろうぜっていう積極的な姿勢はどこ行ったんすか」
「そんなもん、レンに頼むって思った瞬間北極に飛んでいった」
「いやいや待てぇ!! 何でそこで意地張るの、お前!!」
「まぁ、頼むだけ頼むけどよ。ぶっちゃけると、頼む必要無くね? って話だ」
は? とノゾムが言ったのを見て、ヒナタは返す。
「来るなら向こうから来そうな気がするんだ。今まで俺らのパターンとして、いずれも適合者と星の英雄はまるで引き寄せられるかのように出会っている。それも、お芝居のシナリオみてーに都合良く、な。偶然にしちゃ、出来過ぎてる」
ヒナタは続けた。
「強いクリーチャー、相性の良いクリーチャーと対応するデュエリストってのはもしかしたら運命的な何かで引き寄せられるようになってるのかもしれねぇ。比喩とかそんなんじゃなくて、マジでだ」
「んじゃあ、何もしなくってもレン先輩、あるいはそれ以外の適合者とアヴィオールが出くわす可能性があると?」
「ああ。だけどレンは元々無色の使い手だ。はっきし言って、闇に転向したのは結構最近なんだ」
「じゃあ、その可能性は低い、と」
「ああ」
なーんだー、と肩を落とすノゾム。もうこの時点で期待値はサゲサゲ、地の底である。
レンからすればとんだとばっちりだが。
「だからだ、ホタル。俺が言いたいのは、俺達も全力でお前に協力するってことだ」
「ああ! 3人いれば怖いもの無しだぜ!」
こくり、と彼女は頷いた。
「ありがとうございます……」
と、そのときだった。ブー、ブー、とヒナタのスマホに着信が入った。
誰かと思って電話に出たところ--------
『緊急事態だ、コノヤロー』
「よし、切るか」
『いや、ちょっと待て』
即効で切ろうとしたヒナタを、声の主は思い切り止める。
「何すか、武闘先輩」
知り合いの先輩、武闘フジにブルーな声を電話越しに浴びせるヒナタ。この間のゲームの一件(短編1参照)は忘れたとは言わせない。色々酷い目に遭ったのだから。
『いや、さ。まず、驚くと思うが--------武闘ビルに来てくれない?』
「理由だけ聞きます。理由だけ」
この人の誘いに乗ってはいけない。知ってる人でも誘いに乗ってはいけないときがあるのだから。
白々しくフジは言った。
『……テレビのニュース見てる?』
「は?」
『知らないっぽいな』
「えー、ちょっと待ってください。おい、ホタル。テレビ付けていいか。適当にニュース番組に合わせてくれ」
「解りました」
ぴっ、と音がしてテレビに画面が写った。そして、報道番組に変わる。そして、そこにでかでかと映っている光景を見て、ヒナタは絶句した。
「何すかこれ」
『いや、さ。うちのビルにね----------トラックが突っ込んじゃったのさ。あ、俺今外にいる』
なるほど、ビルの玄関にどでかいトラックが突っ込んでいるのが見えた。
消防車が火を消している。
「行きませんよ、それで俺らが何で現場に行かなきゃいけないんですか」
『分かってねーなぁー』
フジは、ふぅ、とため息をつくと言った。
『これにクリーチャーが絡んでるかもしれない可能性があるからだ』
- Act1:記憶×触発 ( No.74 )
- 日時: 2015/01/11 22:45
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
仕方なく、ヒナタはノゾムとホタルを連れて、武闘ビルの前へやってきた。海戸の中央にあるこのビルは、結構ここからは近い。
しかし何度見ても酷い有様である。トラックはばっちり玄関に突き刺さっていた。
さて、フジが手を振っているのが見えた。ノゾムとホタルは彼の元に駆け寄る。軽く、ホタルにフジの紹介をしたが、彼女は新聞部なので有名な彼のことは知っていたらしい。
しかし、流石にクリーチャー界のことに通じていることまでは知らなかったようだった。
「で、武闘先輩。これのどこがクリーチャーが関わってるんすか」
「難しいんだがな、あれだ。この運転手、事故の前後の事を覚えていないらしい」
「飲酒運転じゃないですか?」
「違うね。アルコールは検出されてねぇ」
「てんかんとかの発作では?」
「そんな持病は運転手には無かった」
なるほど、何故運転手が事故の前後を覚えていないのか、全く分からないのだ。しかもこの運転手、50代ほどの男性だが一度も事故を起こしたことがないという。
まあ、それでもまだ居眠りとかそういう可能性が残っているわけだが。
しかし、とフジは切った。
「ま、ただね。事故の前に、近くの建物の屋根に”服を着た二足歩行で立つ猫”の姿が目撃されたらしい」
このとき、ノゾムの中で疑惑は確信に変わった(多分)。いくらなんでも、白昼堂々服を着た猫が建物の上で二足歩行で建っているのはおかしい。
もしかしたら-------と思った。そいつが何かを引き起こしたのではないか。
「とりあえず、ヒナタ先輩-----------」
ノゾムはヒナタがいると思われる方向を見た。
ぽつん、と立ったまま動かない彼。まるで、遠いものを見るような目でヒナタはビルに突っ込んだトラックを見ていた。
「先輩!」
「うおっと」
びくり、と彼の肩が跳ねた。
「ったく、何ボーッと突っ立ってるんすか」
『いつものヒナタらしくないぞ、どうした』
「いや-------何でもない」
ヒナタは言うと、フジの方に歩み寄った。
「で、俺らにどうしろって言うんですか」
「とりあえず、立ち話もあれだ。俺のオフィスへ来い」
そう言ってフジは3人を裏口からビルへ案内したのだった。本当ならまだ立ち入り禁止だったらしいが、フジの前ではルールなど無用だ。
***
「さて。お前らはアヴィオールに気を取られて気付いていなかったと思うが、最近この海戸で起こっている怪事件は神隠しだけじゃねえ」
開かれたノートパソコンの画面にノゾムは見入った。
それはネットのニュース記事だった。
『またか、海戸4区で傷害事件 動機は”もやもやしていた。カッとなって後は何も覚えていない”』、『自動車暴走、3人重症 運転手、何も覚えていないと話す』、『海戸1区で強盗事件 犯人の消息不明』、『神隠し、また起こる 今度は30代のサラリーマン』など、物騒なものばかりが集められていた。
「まだ死んだのがいねぇから良いけどよ。問題は、強盗の上2つ。そして今回のウチが被害を被ったトラック暴走に共通するのは----------」
「”容疑者が何も覚えていない”、ということですか」
ホタルが納得したように言った。
「それも、容疑者は皆素行は真面目で問題なんか起こしたことがないような連中ばかりだ。そして神隠しに共通するのは、いずれも被害者が失踪する前に人生転落してたり、あるいは普通の人間だったのにある日を境に遊びまくったり、とな」
共通点がいずれも存在する、ということである。
「だけど、それ調べたところで何になるんですか?」
「いや、別に」
「無計画ですか!?」
「だけど全くの無計画って訳でもねーよ? まずは次に似たような案件が出たら、今挙げた例からどちらかに敵を絞るんだ---------ん」
フジは、そこで言葉を止めた。そして次の瞬間、「ぐっ!?」とくぐもった悲鳴を上げ、顔が痛みに歪むのが見える。
彼は咄嗟に足元を見たのと同時に、ノゾムも胸騒ぎがしてフジの足元を見た。見れば、隅においていた観賞用の鉢植えに植えていた松がまるで蛇のように伸びてフジの足に絡み付いているのだ。
そして、枝の先がまるで本物の蛇のように牙が生えた化け物になっていたのだった。
「こい、つっ!!」
ガシッ、ガシッ、とフジは松の枝をふみ散らすが、一向に痛みは消えないし、離れる気配もない。
ノゾムも慌てて鉢植えを叩き割る。すると、根がまるで生き物のように蠢き、脚のように動き出したのだ。
『にゃーっはっはっは! これは愉快痛快にゃー!』
声が聞こえた。それも、甲高い少年のようなあどけなさが残る声だった。
声の方向から、敵は天井に張り付いているようだ。だが、まだ影のようではっきりと姿が見えない。
しかし、直ぐに自ら姿を現した。
「にゃははは、無様な人間諸君、如何かにゃ? この俺様が作った龍化の丸薬は」
「とっとと松を元に戻せ! フジ先輩が苦しんでるだろ」
ヒナタが声を荒げる。
クリーチャーはやはり猫の姿をしていた。それも、4頭身程にデフォルメされたような二足歩行。そして、中世風の服を着こなし、極めつけは羽飾りの付いた帽子に長靴を履いていたことだった。
「嫌にゃー、こんな面白いこと止めろだなんて」
ぴょん、と天井から降りたクリーチャーは戸を蹴破って廊下を駆け抜けた。
「ホタル、先輩を頼む!」
「あ、はい!」
ホタルは慌てて、ハーシェルを呼び出した。
「行くぞ、ノゾム!」
「了解っす、ヒナタ先輩!」
そして、2人は長靴の猫を追いかけるのだった。
***
「ちぃっ、しつこい連中にゃー」
走る猫は手をかざして再び丸薬を作り出す。そして、床にばら撒いた。すると、床に薬が吸い込まれていき---------
「どわぁっ!?」
べき、べき、と剥がれて飛んで襲い掛かってきた。それを頭に直撃したノゾムは一瞬でノックダウン。白目を剥いて伸びてしまった。
一方のヒナタはそれをすんでのところで避け、叫ぶ。
「クレセント! ノゾムを頼む!」
『お、おっけー!』
クレセントも実体化し、伸びたノゾムを抱え起こした。直後、暴れる床が飛んでくる。
しかし、そこは流石武神。ヒナタは、彼女が鉄槌の一振りで床をすべて沈めてしまったのが最後に見えたのだった。
***
「ちぃーっ、お前、しつこいにゃん!!」
「るっせぇな、しつこいのが俺のトレンドだ。褒めてもいいぜ」
とうとう、行き止まりまで追い詰めた。ジョークを言ったヒナタだが、はっきり言っていつも朗らかな目は、今は笑っていなかった。
白陽も実体化し、敵の次の行動に備えた。
「ヒナタ、早くこいつを倒すぞ」
「あー、そうだな。……その前に」
おい、てめぇ、とヒナタは目の前のクリーチャーに口を開いた。
「どーやら、その丸薬でなんやかんやして、交通事故とか事件とかいっぱい起こしてるみてーだけどよ」
「にゃ? にゃははは、仰せの通りにゃ。あんな面白いことは他に無いにゃ!」
無邪気な笑いで返すクリーチャー。
しかし、ヒナタのこめかみが次の瞬間に引きつった。
「今、何つったテメェ」
びくり、とクリーチャーは肩を震わせる。
ヒナタは怒りで頭が完全に沸いていた。
----------ヒナタ、今日デュエマの大会があるんだよねっ! がんばってよ。あたしさ夏祭りの支度してヒナタの優勝の知らせを待ってるから!
あの日の思い出が蘇る。
がりっ、と歯を噛んだ後にヒナタは続けた。
「てめぇはその能力で何人傷つけた?」
「知ったこっちゃないにゃ。この世界ではこの俺様、《爪英雄 長靴のニャンクス》様が法律にゃ」
ニャンクス、と名乗ったクリーチャーは続けた。
「俺様が何したって、関係ないにゃぁーっ!!」
次の瞬間、黒い霧が辺りに発生した。決闘空間が開く前触れだ。
「白陽」
「む」
呼びかけたヒナタは、怒りに満ちた目ではっきりと言った。
「あいつ、本気で潰すわ」
- Act1:記憶×触発 ( No.75 )
- 日時: 2014/12/01 16:32
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
「俺様のターンにゃ!」
3ターン目、先攻ニャンクス。現在、互いにシールドは5枚。そして、ニャンクスは2枚目のマナを置いた。
デッキカラーは見たところ、自然が入っているようだった。
「呪文、《フェアリー・ライフ》でマナを増やすにゃ!」
山札から1枚捲られ、マナゾーンに置かれた。次のターンに4マナとなる。
さて、ヒナタのターン。怒っていながらもヒナタは冷静だった。より確実に相手を潰すためだ。
怒りに身を任せてしまえば、プレイングが乱れることは過去の経験で知っている。
「俺のターン、3マナで《爆炎シューター マッカラン》を召喚!」
《マッカラン》はマナ武装3でスピードアタッカーとなる。そのまま、1枚目のシールドを叩き割った。
S・トリガーも発動せず、ターンはニャンクスへ。
「俺様のターン。4マナで《エコ・アイニー》召喚にゃ! 効果で山札から1枚目を捲ってマナに置くにゃ」
マナにおかれたカードは《ナチュラル・トラップ》。幸い、《エコ・アイニー》のドラゴンがマナゾーンに置かれたときにもう1枚のカードをマナに置く効果は発動しなかった。
エコ・アイニー C 自然文明 (4)
クリーチャー:ファイアー・バード 2000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から1枚目をマナゾーンに置く。そのカードがドラゴンであれば、自分の山札の上からさらに1枚、自分のマナゾーンに置く。
「まぁ、良いか。ターンエンドにゃ」
にやり、と笑うニャンクス。何かを隠してそうだった。
「俺のターン! 《メテオ・チャージャー》でマナを加速するぜ! ターンエンド!」
チャージャー呪文によって、ヒナタのマナは5枚。しかし、手札は0枚に。
だが、そんなことは気にせずに《マッカラン》でシールドを再び叩き割った。
しかし。
「S・トリガー、《古龍遺跡エウル=ブッカ》で《マッカラン》をマナゾーンに送るにゃ!」
「手札が無いからな、くそっ」
語散るようにヒナタは呟くと、ターンをそのまま終えた。
「俺様のターンにゃ!」
叫んだニャンクスの顔は自信に満ちていた。そのまま、4枚のカードをタップする。
「4マナで《爪英雄 長靴のニャンクス》召喚にゃ!」
「何?」
今までの英雄とは違う。いずれも今までの星の英雄のコストは7だった。しかし、《ニャンクス》はコスト4。コストを軽減したのではない。本当に4なのだ。同じ4マナの英雄、《斬英雄 マッカラン・ボナパルト》という前例があるものの、驚きを隠せない。
さらに、マナゾーンのカードが光った。
「マナ武装5、発動にゃ! これにより、自分のクリーチャーは呪文では選ばれなくなるにゃ」
「マナ武装、5……だと」
「ターン終了にゃ」
今までの英雄とは何かが違う。少々不気味さを覚えながら、ヒナタはカードを引いた。
そして----------
「《龍覇 スコッチ・フィディック》召喚! 効果で超次元ゾーンからドラグハート・フォートレス、《天守閣 龍王武陣 -闘魂モード-》を出す!」
天守閣 龍王武陣 -闘魂モード- VR 火文明 (3)
ドラグハート・フォートレス
自分の火のクリーチャーがバトルする時、そのターン、そのクリーチャーのパワーは+2000される。
龍解:自分のターンのはじめに、バトルゾーンに自分の火のクリーチャーが2体以上あれば、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップする。
ヒナタの背後に巨大な和風の城が聳え立つ。
「だけどまずったな、龍解には後もう1体クリーチャーが必要なのによ」
ターンエンドだ、と続けるヒナタ。
「俺様のターン、これで7マナにゃ! まずは《龍覇 マリニャン》を召喚にゃ! 効果で《神秘の集う遺跡 エウル=ブッカ》を出すにゃ!」
ニャンクスの背後に巨大な遺跡が聳え立った。
その遺跡からは強大な自然のパワーを感じる。
「さらにっ! 《エコ・アイニー》でシールドをブレイクにゃ!」
シールドが割られた。
「そして、ターンの終わりに自然のマナが7枚以上あるため、《ニャンクス》のもう1つのマナ武装発動にゃ--------」
もう1つ、という言葉に不気味さを感じるヒナタ。
マナの力を使ったのか、丸薬を作り出したニャンクスは、ぴんっとそれを指で弾くと、何と自分で食べてしまった。
それだけではない。ビキ、ビキ、と体から音が聞こえ始める。
みるみるうちに口は裂け、毛は抜け落ちて耳は引っ込み、次の瞬間にはマナ武装の前の面影が全く感じられない姿へとなっていた。
ただただヒナタは戦慄を感じるしかなかった。
爪英雄 長靴のニャンクス 自然文明(4)
クリーチャー:ビースト・フォーク/ドリームメイト
マナ武装5--マナゾーンに自然文明のカードが5枚以上あるとき、自分のクリーチャーは呪文によって選ばれない。
マナ武装7--ターンの終わりに、マナゾーンに自然文明のカードが7枚以上あれば、自分のクリーチャー1体のパワーは2倍になり、種族に「ジュラシック・コマンド・ドラゴン」を得る。さらにそのクリーチャーはパワーが6000以上のときにW・ブレイカー、12000以上のときにT・ブレイカー、20000以上のときにQ・ブレイカーを得る。
『うおおおーっ!! 力が漲って来たぜぇーっ!!』
その姿は一言で言えば恐竜だった。そう、獰猛な肉食恐竜の姿だ。古代の荒れた大地を支配した暴君だった。
『この俺様のパワーはマナ武装の効果により、2倍の8000ッ! さらにW・ブレイカーを得る!』
咆哮したニャンクスは地面を踏み鳴らす。
地響きが、こちらにも伝わってきた。
「くっ、なら俺は《龍覇 グレンモルト》を召喚! 効果で超次元ゾーンより《大いなる銀河 巨星城》を出す!」
怯まず、ヒナタも2体目のドラグナー、そしてドラグハート・フォートレスを繰り出した。
これで火のクリーチャーは2体。次のターンの始めに龍解ができる。安全に龍解させるため、ここでは攻撃しなかった。しかし。
『俺様のターンだ!! 呪文、《ナチュラル・トラップ》で《グレンモルト》をマナゾーンへ』
「くっ」
『古き時代では力こそが全て! そして、我が力を使えばそれは今も同じよ! 食らうが良い、W・ブレイク!』
シールドが2枚、砕け散ってヒナタの頬を破片が裂いた。
『さらに《エコ・アイニー》でシールドをブレイク!』
ヒナタのシールドは残り1枚。しかも、ここまでトリガーは1度も来ていない。
『マナ武装7がターン終了時に発動! 俺様はパワーが2倍になり、T・ブレイカーとなる!!』
呪文では除去できず、しかも龍解も封じられる。このままではヒナタに勝利は無かった。
いや、このままでは。
「ちょいと、調子に乗りすぎたんじゃねーか、テメェ」
ヒナタの声は低く、ドスが利いていた。
「忘れんなよ、こっちにも英雄がいるってことをよォ! 俺のターン、さっきテメェがブレイクしたシールドから来たこいつを出す!」
『何ィ!?』
炎を纏ったそのカードを投げる。そして炎は九尾の姿を象った。
「《尾英雄 開闢の「白陽」》召喚だ!」
『私の効果により、貴様のドラゴン及びドラグナーはもう攻撃できない』
「さらにマナ武装7で《スコッチ・フィディック》に《ニャンクス》、テメェの力を”貼り付ける”!!」
次の瞬間、《スコッチ・フィディック》の体が膨張し、恐竜の姿に。
「よって、《スコッチ・フィディック》はてめぇの力をコピーし、コスト4、パワー16000のT・ブレイカーとなった!」
『な、な、馬鹿なァーッ!!』
「そしてっ! 《スコッチ・フィディック》で《ニャンクス》に攻撃! しかし、《ガイシュカク》の効果でパワーは+3000! 一方的に破壊だ!」
破壊されたニャンクスは同時に激しい光とともに、元の姿に戻った。そして、自らが破壊されたことに驚いて叫ぶ。
「にゃ、にゃにゃんとぉーっ!?」
「さらに、《巨星城》の効果で火のクリーチャーがバトルに勝ったので1枚カードを引ける!」
ターンエンドだ、とヒナタは言った。
しかし、ニャンクスのターン。《エウル=ブッカ》がゴゴゴと音を立てて動き出した。
「……待てよ、でもこれ龍解は防げてねーよな」
「自然のクリーチャーが場に2体以上、よって龍解条件クリアにゃーッ!! 現れよ、神秘の古代龍!」
龍解。
これにより、背後にあった遺跡は巨大なドラグハート・クリーチャーとなったのだ。
「《遺跡類神秘目 レジル=エウル=ブッカ》!!」
遺跡類神秘目 レジル=エウル=ブッカ R 自然文明 (6)
ドラグハート・クリーチャー:ジュラシック・コマンド・ドラゴン 5000
自分のクリーチャーの召喚コストを最大2少なくしてもよい。ただし、コストは1より少なくならない。
まずい。これにより、ニャンクスの場には攻撃できるクリーチャーが3体。対してヒナタのシールドは1枚。絶望的だ。
「んでもって、《古龍遺跡 エウル=ブッカ》で《「白陽」》と《スコッチ・フィディック》をマナゾーンに沈めてやるのにゃ!」
「ヒ、ヒナタァーッ! 脚に何か絡み付いて---------」
言葉はそこで途切れた。沢山の蔓が白陽と《スコッチ・フィディック》を地面に引きずり込んでしまったからだ。
まずい。本当ならば《「白陽」》でニャンクスのドラゴン、そしてドラグナー攻撃を止めるつもりだったが、それは叶わない。
さらに、ヒナタの場にはフォートレスだけでもうクリーチャーは居ない。クリーチャーがいないから、フォートレスは龍解できない。
まさに、絶望的状況だ。
「《マリニャン》でシールドブレイク!」
最後のシールドがはじけ飛ぶ。ヒナタの顔には冷や汗が浮かんでいる。
「これで、トドメにゃーッ!」
ニャンクスが咆哮し、《レジル=エウル=ブッカ》突貫したそのときだった。
『ヒナタ、S・トリガー発動だ!』
「えっ-------」
声がする。白陽だ。そして、割られた最後のシールドは-----------
『私もクレセントを見て思ったのさ。時にはリスクを犯してでも勝たなければならない時があると!』
「お前、まさかこれって-----------分かったぜ、白陽! お前の覚悟、しかと受け取った!」
次の瞬間、突貫してきた《レジル=エウル=ブッカ》の周りに炎が現れる。ニャンクスは熱を感じて空間の遥か上を見上げた。炎を身に纏った白陽がそこにいた。
「シールド・トリガー発動! 《陰陽超技 炎熱乱舞》!!」
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