二次創作小説(紙ほか)
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- デュエル・マスターズ D・ステラ 【侵略世界編】
- 日時: 2017/01/16 20:03
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
【読者の皆様へ】
はい、どうも。二次版でお馴染み(?)となっているタクと申します。今回の小説は前作の”デュエル・マスターズ0・メモリー”の続編となっております。恐らく、こちらから読んだ方がより分かりやすいと思いますが、過去の文というだけあって拙いです。今も十分拙いですが。
今作は、前作とは違ってオリカを更にメインに見据えたストーリーとなっています。ストーリーも相も変わらず行き当たりばったりになるかもしれませんが、応援よろしくお願いします。
また、最近デュエマvaultというサイトに出没します。Likaonというハンドルネームで活動しているので、作者と対戦をしたい方はお気軽にどうぞ。
”新たなるデュエル、駆け抜けろ新時代! そして、超古代の系譜が目覚めるとき、デュエマは新たな次元へ!”
『星の英雄編』
第一章:月下転生
Act0:プロローグとモノローグ
>>01
Act1:月と太陽
>>04 >>05 >>06
Act2:対価と取引
>>07
Act3:焦燥と制限時間
>>08 >>10
Act4:月英雄と尾英雄
>>13
Act5:決闘と駆け引き
>>14 >>15 >>18
Act6:九尾と憎悪
>>19 >>21
Act7:暁の光と幻の炎
>>22 >>23
Act8:九尾と玉兎
>>25
第二章:一角獣
Act1:デュエルは芸術か?
>>27 >>28 >>29
Act2:狩猟者は皮肉か?
>>30 >>31 >>32 >>33
Act3:龍は何度連鎖するか?
>>36 >>37
Act4:一角獣は女好きか?
>>38 >>39 >>41 >>42 >>43 >>44 >>45
Act5:龍は死して尚生き続けるか?
>>48
第三章:骸骨龍
Act1:接触・アヴィオール
>>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55
Act2:追憶・白陽/療養・クレセント
>>56 >>57
Act3:疾走・トラックチェイス
>>66
Act4:怨炎・アヴィオール
>>67 >>68
Act5:武装・星の力
>>69 >>70
Act6:接近・次なる影
>>73
第四章:長靴を履いた猫
Act1:記憶×触発
>>74 >>75 >>76 >>77
Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解
>>78 >>79 >>80
Act3:捨て猫×少女=飼い猫?
>>81 >>82
Act4:リターン・オブ・サバイバー
>>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90
Act5:格の差
>>91 >>92 >>93 >>104
Act6:二つの解
>>107 >>108 >>109 >>110
Act7:大地を潤す者=大地を荒らす者
>>111 >>112 >>113
Act8:結末=QED
>>114
第五章:英雄集結
Act1:星の下で
>>117 >>118 >>119
Act2:レンの傷跡
>>127 >>128 >>129
Act3:警戒
>>130 >>131 >>132
Act4:策略
>>134 >>135
Act5:強襲
>>136
Act6:破滅の戦略
>>137 >>138 >>143
Act7:不死鳥の秘技
>>144 >>145 >>146
Act8:痛み分け、そして反撃へ
>>147
Act9:fire fly
>>177 >>178 >>179 >>180 >>181
Act10:決戦へ
>>182 >>184 >>185 >>187
Act11:暁の太陽に勝利を望む
>>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>193 >>194 >>195
Act12:真相
>>196 >>198
Act13:武装・地獄の黒龍
>>200 >>201 >>202 >>203
Act14:近づく星
>>204
『列島予選編』
第六章:革命への道筋
Act0:侵攻する略奪者
>>207
Act1:鎧龍サマートーナメント
>>208 >>209
Act2:開幕
>>215 >>217 >>218
Act3:特訓
>>219 >>220 >>221
Act4:休息
>>222 >>223
Act5:対決・一角獣対玉兎
>>224 >>226
Act6:最後の夜
>>228 >>229
Act7:鎧龍頂上決戦
Part1:無法の盾刃
>>230 >>231 >>232 >>233 >>234 >>235 >>236 >>239
Part2:ダイチの支配者、再び
>>240 >>241 >>242 >>243 >>244 >>245 >>246 >>247 >>248 >>250
Part3:燃える革命
>>252 >>253 >>254 >>255 >>256
Part4:轟く侵略
>>257 >>258 >>259 >>260 >>261
Act8:次なる舞台へ
>>262
第七章:世界への切符
Act1:紡ぐ言の葉
>>263 >>264 >>265 >>266 >>267 >>268 >>270
Act2:暁ヒナタという少年
>>272 >>273
Act3:ヒナとナナ
>>275 >>276 >>277 >>278 >>279 >>280 >>281
Act4:誓いのサングラス
>>282 >>283 >>284 >>285
Act5:天王/魔王VS超戦/地獄
>>286 >>287 >>295 >>296 >>297 >>298 >>301 >>302 >>303 >>304 >>305
Act6:伝説/閃龍VS獅子/必勝
>>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>323
Act7:青天霹靂
>>325 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>331
Act8:揺らぐ言の葉
>>332 >>333 >>334 >>335 >>336
Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神
>>337 >>338 >>339 >>340 >>341 >>342 >>343
Act10:伝える言の葉
>>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351
Act11:連鎖反応
>>352
『侵略世界編』
第八章:束の間の日常
Act1:揺らめく影
>>353 >>354 >>359 >>360 >>361 >>362
Act2:疑惑
>>363 >>364
Act3:ニューヨークからの来訪者
>>367 >>368 >>369 >>370 >>371
Act4:躙られた思い
>>374 >>375 >>376 >>377
Act5:貴方の為に
>>378 >>379 >>380 >>381 >>384 >>386
Act6:ディストーション 〜歪な戦慄〜
>>387 >>388 >>389
Act7:武装・天命の騎士
>>390 >>391
Act8:冥獣の思惑
>>392
Act9:終演、そして——
>>393
第九章:侵略の一手
Act0:開幕、D・ステラ
>>396
Act1:ウィザード
>>397 >>398
Act2:ギャンブル・パーティー
>>399 >>400 >>401
Act3:再燃
>>402 >>403 >>404
Act4:奇天烈の侵略者
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>411
Act5:確率の支配者
>>412 >>413
Act6:不滅の銀河
>>414 >>415
Act7:開始地点
>>416
第十章:剣と刃
Act1:漆黒近衛隊(エボニーロイヤル)
>>423 >>424
Act2:シャノン
>>425 >>426
Act3:賢王の邪悪龍
>>427 >>428 >>429
Act4:増殖
>>430 >>431 >>435 >>436 >>438 >>439 >>440 >>441 >>442
Act5:封じられし栄冠
>>444
短編:本編のシリアスさに疲れたらこちらで口直し。ギャグ中心なので存分に笑ってくださいませ。
また、時系列を明記したので、これらの章を読んでから閲覧することをお勧めします。
短編1:そして伝説へ……行けるの、これ
時系列:第一章の後
>>62 >>63 >>64 >>65
短編2:てめーが不幸なのは義務であって
時系列:第三章の後
>>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103
短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル)
時系列:第四章の後
>>120 >>121 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126
短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日
時系列:第四章の後
>>149 >>150 >>153 >>154 >>155 >>156
短編5:恋情パラレル
時系列:第四章の後
>>157 >>158 >>159 >>160 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>173 >>174 >>175 >>176
短編6:Re・探偵パラレル
時系列:平行世界
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422
エイプリルフール2016
>>299 >>300
謹賀新年2017
>>443
登場人物
>>9
※ネタバレ注意。更新されている回を全部読んでからみることをお勧めします
オリジナルカード紹介
(1)>>96 (2)>>271
※ネタバレ注意につき、各章を読み終わってから閲覧することをお勧めします。
お知らせ
16/8/28:オリカ紹介2更新
- Re: デュエル・マスターズ D・ステラ 【侵略世界編】 ( No.437 )
- 日時: 2016/11/26 12:03
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
モノクロさん
コメありです。ツイッターでも連絡した通り、DMでゆっくりと返信していきたいと思います。
- Act4:増殖 ( No.438 )
- 日時: 2016/11/26 18:52
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
インフェルヌス・イモーレイター 火文明 (11)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン/モナーク 17000
このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、相手のクリーチャーをパワーが8000以下になるように選んで破壊する。
このクリーチャーがクリーチャーか呪文の効果で選ばれたとき、相手のシールドを3枚選び、ブレイクする。
T・ブレイカー
自分の他の火のクリーチャーのパワーは+4000される。
Origin:Infernus the Immolator
彼女の出したカードは、大翼の紅龍。
テイシュウは、5文明に存在する巨大なファッティカード・モナークと言っていた。
以前、デュエル・マスターズの海外版にはKaijudoというものがあったのであるが、現在海外で使用されているデュエマのカードは、それらをリメイクしたものもあるのだという。
この、《インフェルヌス・イモーレイター》も例外ではない。現在のデュエル・マスターズに蘇ったカードなのだ。
「その効果で、相手のクリーチャーをパワーが8000以下になるように破壊するよ! 《ザビ・バレル》も破壊!」
「ッ……まずいな、これは」
再び破壊されるクリーチャー。
つまり、《ベル・ヘル・デ・リンネ》の効果が再三発動するということだ。
「出てきてよ——来た!」
捲られたカード。
そこには、《永遠のリュウセイ・カイザー》のカードがあった。
「《永遠のリュウセイ・カイザー》召喚! これで一気に決めるよ!」
すぐさま、シャノンはそれをバトルゾーンに出す。
これで、場のクリーチャーは全てスピードアタッカーになる上に、こちらのクリーチャーはタップインされてしまう。
——恐ろしい制圧力だ!! このまま決めるつもりか!!
「そして、《ヤバスギル・スキル》で攻撃、シールドをW・ブレイク!! その効果で墓地から《バトラッシュ・ナックル》を手札に!」
「ッ……! S・トリガー、発動!!」
すぐさまそれを突き出す。
このままでは、自分のシールドが全て割られ、ダイレクトアタックまで持っていかれてしまう。
それだけは防がねばならない。
「呪文、《地獄門 デス・ゲート》!! これで、《リュウセイ・カイザー》を破壊だ! 更に、墓地から《暗黒鎧 ヴェイダー》を召喚する!!」
「後もうちょっとだったのに!」
革命を警戒しているのだろうか。
これ以上攻撃する事も無く、シャノンはターンを終えた。どの道、トドメを刺すことは出来ない。
しかし、場には《ベル・ヘル・デ・リンネ》に《バトラッシュ・ナックル》、《ヤバスギル・スキル》に《イモーレイター》の4体のドラゴンが佇んでいる。
まず、真っ先にT・ブレイカーの《イモーレイター》、そして殴り返しで《ヤバスギル・スキル》を排除したいところだが——
「あ、それと」
悪戯っ子のような笑みを浮かべ、少女は言った。
「《イモーレイター》は、選ばれたときに相手のシールドを3枚吹き飛ばす、って先に教えておくよ!」
「ッ……成程、な」
かなりうっとおしいクリーチャーだ。
《リンネ》の能力誘発に加え、しかも疑似アンタッチャブル持ち。
リーサルが決められない時に、あれをどかすのは自殺行為だ。
「ならば、これでどうだ!」
6枚のマナを、レンはタップする。
そして、《ヴェイダー》の頂に叩きつけた。
「進化、《悪魔龍王 キラー・ザ・キル》!! その効果で、《ベル・ヘル・デ・リンネ》を破壊! そして、《ヤバスギル・スキル》も攻撃して破壊だ!!」
——かなり考えられているな? これでも、どの道次のターンでリーサル圏内か……!
自身の切札で対応したレンであったが、これでもまだ劣勢には変わりなかった。
そのまま、ターンの終了を告げる。次のシャノンのターンを、耐え切ることはこのままではできないのである。
「それじゃあ、《ヤバスギル・スキル》を召喚!! その効果で、《リュウセイ》を回収して、《キラー・ザ・キル》を破壊!」
「チッ……!」
「そして、《イモーレイター》でシールドをT・ブレイク!!」
残るレンのシールドが全て割られた。
それらを確認しながら——3枚目の《革命魔龍 キル・ザ・ライブ》を、レンは墓地に置く。
「S・バック、発動! 《暗黒鎧 ディオデスター》を場に出す!」
「S・バック!? だけど、どうするの!? もう、何もできないよね!!」
暗黒鎧 ディオデスター UC 闇文明 (3)
クリーチャー:ダーク・ナイトメア 2000
S・バック−闇
所詮、素のスペックは貧弱でバニラの《ディオデスター》。残る、彼女の《バトラッシュ・ナックル》を止める事は出来ないのだ。
つまり——この時点で、
「《爆竜 バトラッシュ・ナックル》で、ダイレクトアタック!! アタシの勝ちだよ!!」
シャノンの、勝利が決まる——
***
「石造りの街、か……本当に綺麗だよなあ」
『疲れたよう、ノゾムぅ……あいしゅ欲しい……』
「あー、うん買ってやるから」
オックスフォードサーカスの一角で、ノゾムとクレセントは、そんな会話をしながら街を歩いていた。
一応、クリーチャーがいないかどうか、ヒアリングを使いながら、だ。
しかし、彼女もくたびれたらしい。音を上げていた。
『でも、ほんとに素敵だよね……あたし、生まれてからあんまり外に出して貰えなかったからさ』
「……珍しいな。お前から、お前の昔の事を聞くなんて」
『退屈っていうかさ、何ていうか……縛られた生活を送ってた気がするなあ。思い出したくもないよ』
「お前らしいよ」
活発な性格の彼女にとって、管理された生活は拷問にも等しかっただろう。
それこそ、勝手に抜け出して白陽と会っていたくらいなのだから。
『思い出したく、ない……』
「? どした?」
『う、ううん! 何でもない!』
えへへ、と笑顔で誤魔化す彼女。
ぴょんぴょん、と耳も跳ねている。
無理に元気に振舞おうとしているのがバレバレだった。
——昔の事、か……何でだろ。今まで、あんまり意識しなかった……楽しい事とか、白陽と一緒に居た事は鮮明なのは、当たり前、だよね……。
ぼんやり、とした感情が彼女を包む。
それは次第に、妙な不安感を覚えさせていく。
その時だった。
ぴくん、と自分の感覚に何かが引っかかった。
『……!!』
「どうした!?」
『反応……何か、妙な物が街に近づいてる……!』
「何だって!? ヒナタ先輩に連絡しないと——」
スマホを取り出そうとしたその時だった。
背後から、ぽん、と手を置かれる。
見れば、それは警官のようだ。筋骨隆々の、大柄な男性だ。ポリス、と英語で書かれた制服を羽織っている。
低いしゃがれた声で、割と年配そうな彼は話しかけてくる。
「君ィ。そこで何をしているんだ?」
「え、いや、これはその、仲間と連絡をちょっと……此処、スマホ禁止だったりしました?」
そんな覚えはないのだが、確認を取る。
が、しかし。
「いや、その前に何をしていたんだと聞いてるんだよ」
「はあ。普通にこの辺りを散策してただけっすけど」
「そうか? 本当に? Really?」
「い、Yes……」
——いや、いや……職質されるような事した覚えないんだけどなあ……。カードに喋りかけてたから? 変人臭かった? いや、いやいやいや……。
うんざりしながら、彼は受け応える。
何故? という疑問を膨らませ——そして、妙な違和感を感じながら。
「間違っても悪い事はしてないんだね?」
「いえす……」
「神に誓って?」
「そうだって言ってるじゃないすか」
「そうか——」
にこにこ、と人のよさそうな笑顔を浮かべ、警官は続けた。
「——間違っても、クリーチャーなんか探そうとしているわけじゃないんだね?」
ぞくり、とノゾムは背筋に悪寒を覚える。
次の瞬間、周囲の空間が一変した——
- Act4:増殖 ( No.439 )
- 日時: 2016/11/26 19:35
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
***
「革命ゼロトリガー発動!!」
宣言するレン。
シャノンに、それを突き付けた。
「やっぱり持ってた——!」
「呪文、《革命の裁門》——山札の上から1枚目を表向きにし、それが闇のクリーチャーだったならば」
捲られたそれは、《ブラッドレイン》。闇のクリーチャーだ。
「相手のクリーチャーを1体選び、破壊する。無論、破壊するのは《バトラッシュ・ナックル》だ!」
「ッ……そんな」
凌がれた。
このターン、シャノンにもう攻撃できるクリーチャーは居ないのである。
だが、それでも彼女のシールドはまだ残っていた。
それも全部だ。
まだ、レンは1度も攻撃できてはいないのだ。しかし——
「僕達のデュエルを見てきたなら、分かるはずだ。美学は、此処からが本領発揮。美しき闇の美学を追及した果てのデッキの真の力を見せてやろう」
彼は8枚のマナを全てタップする。
そして——《暗黒鎧 ディオデスター》の頂きに、そのカードを重ねる。
「——悪夢の革命よ、怨嗟の果てに悲劇となれ——《ディオデスター》、進化!!」
それは、新たなるレンの切札。
今まで、幾度となく彼を助けてきたそれが革命の力を得て、地獄より蘇る。
破獄の魔王が今、顕現した。
「《革命魔王 キラー・ザ・キル》!!」
革命魔王 キラー・ザ・キル SR 闇文明 (8)
進化クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン/革命軍 11000
進化−自分の闇のクリーチャー1体の上に置く。
W・ブレイカー
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、闇以外のクリーチャーをすべて破壊する。
革命2−このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、自分のシールドが2つ以下なら、自分の墓地にある進化以外の闇のクリーチャーをすべてバトルゾーンに出す。
落ち着き払った表情のレンの宣告と共に、革命の魔王が降臨する。
文字通り、進化した《キラー・ザ・キル》。武闘財閥によって強化されたそれは、彼に新たな戦法を与えたのだ。
「では、行こうか! 《キラー・ザ・キル》の効果で、闇以外のクリーチャーを全て破壊する」
「《バトラッシュ・ナックル》と《イモーレイター》が——!」
「そして革命2により、墓地から進化以外の闇のクリーチャーを全てバトルゾーンへ出す!!」
まるで、トランプを並べるかのようにレンは墓地から一気にクリーチャーを出した。
《オタカラ・アッタカラ》、《タイガニトロ》に《ヴェイダー》、《タイガマイト》、《テンザン》、更に《革命魔龍 キル・ザ・ライブ》——で済めば、まだ有情だった。
彼が墓地から出した1枚が、このデュエルの勝敗を決定づけるものになってしまう。
「——《鎧亜の咆哮 キリュー・ジルヴェス》」
「それって……!」
「このターン、僕のクリーチャーは全てスピードアタッカーでスレイヤーだ。なんせ、こいつも闇のクリーチャーなのでな——!」
身から出た錆。
そんな諺をシャノンは思い出す。《ベル・ヘル・デ・リンネ》の効果で、さっき捨てさせたカードだ。
山札から墓地にカードを送る方法は多い闇文明だが、手札のカードを直接墓地に置く手段はそう多くはない。
つまり自分の寿命を縮めたのは、自分の運——
「最後に、《ザビ・バレル》を場に出す」
「……《リュウセイ》の被害をなくすために——!」
「そうだ。さあ、出すのか?」
「……出すよ。お願い」
マッドネス効果で現れる《リュウセイ・カイザー》。
しかし、もう出てくる攻勢はいない。
スピードアタッカーとなった悪夢の軍勢がシャノンへ一斉に襲い掛かる。
「《キル・ザ・ライブ》で攻撃! その効果で、互いに手札を捨てる——が、この時革命2で、僕は捨てたカードが闇のクリーチャーならば場に出す事が出来る」
互いにカードを捨てる。
もう、《リュウセイ》は手札には無い。
それはあくまでも、シャノンの手札に、であるが——
「《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》、召喚」
リュウセイ・イン・ザ・ダーク P 闇文明 (8)
クリーチャー:ブラック・コマンド・ドラゴン 8000
闇以外のクリーチャーは、バトルゾーンに出すときタップして出す。
自分の闇のクリーチャーはすべて「スレイヤー」を得る。(「スレイヤー」を得たクリーチャーがバトルする時、バトルの後、相手クリーチャーを破壊する)
W・ブレイカー
自分のドラゴンが破壊された時、このクリーチャーが自分の墓地にあれば、このクリーチャーを自分の墓地から手札に戻してもよい。
闇以外のカードをタップインさせる漆黒の流星。
それは、シャノンに返しのターンが無い事を意味していた。
もう、スピードアタッカーで押し返す事も出来ない。更に、場には多くのブロッカー軍団。
そうそう破壊しきれるものではない。
「そして、《キル・ザ・ライブ》でシールドをW・ブレイク」
「トリガーは無いよ」
次にレンは、《テンザン》に手を掛けた。
そして、そのままタップさせる。
「《テンザン》でT・ブレイク——その効果で、山札から13枚を墓地へ」
しかし、そのデメリットも今では意味がない。
このターンで終わってしまえば、関係のない事だ。
そして、同時にシャノンのシールドも全て割られた。
「トリガー、無いよ。レン」
「そうか。名残惜しいが——これで決めようか」
レンは手を掛ける。
自らの信頼する切り札に。
そして——長いようで、短かったデュエルに、終焉を告げた。
「——《革命魔王 キラー・ザ・キル》でダイレクトアタック」
***
「うあー、負けたぁー」
「やれやれ、そっちも相当強かったがな」
2人は椅子の背凭れに寄り掛かった。
かなりの接戦であり、もう1歩でシャノンが勝っていたかもしれない試合だった。
それをレンも認めているのか、溜息をつく。
「流石ライトレイのデュエリストだ」
「えへへ……デュエル、昔から大好きだったからさ。これしか取り柄無いしね」
こういう時、レンはどうフォローすればいいのか分からなかった。
そんなことはない、君は魅力的だ、と言うのは口説いているようで嫌だったので却下。
そのまま、しばらくの沈黙が続く。
「……そう、卑下するな。そんな自虐は日本人しかしないのではないのか?」
「そう、だね……でも、レンも凄いよ。強いし、かっこいいし……優しいし、何より自分の道を信じてる。とても、目が綺麗だよ」
「……こんなに褒められたのは、初めてだ」
「そうなの?」
「ああ。生まれてこの方、な」
「レンだって、もっと自分に自信をもって良いよ。だってレンは——」
「おーう、ジャパニーズのボーイ、なかなか凄いプレイングでしたねぇー」
会話を遮るように、そんな声が聞こえた。
見れば、エプロンを付けた店員らしき男性だった。髭を生やしている中年の男性だ。
「あ、店長!」
「この店の、か?」
「イエース、ジャパニーズのボーイ……シャノンは昨日のこの店の大会でも優勝している実力者……まさか勝てるとは只者ではないね?」
「まあ、一応……」
「そりゃそーだよ店長! レンは、D・ステラの日本代表なんだよ!」
「オーウ、ワンダホーウ! それはびっくりデース!」
「何なんだ、この英語……」
「ア、アメリカ訛りが入ってるんだよ、店長……。こういうノリだから、気にしないであげて」
「でも、それだけじゃないですネ?」
「む?」
店長は笑みを浮かべていった。
「例えば——”生きたクリーチャーを持っているとか”——」
次の瞬間だった。
店長の手が、シャノンに伸びる——そして、紫電が店内に迸った——
- Act4:増殖 ( No.440 )
- 日時: 2016/11/26 21:37
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
激しい光の奔流が、店内を包んだ。
「馬鹿な……」
そう呟いたのはレンだった。
倒れている店長を見て。
当のシャノンは、急な出来事で何が起こったのが分かっていないようだった。
自分に触れようとした店長がバッタリと倒れてしまったので、完全に混乱しているようだ。
——何だ、一体——!? これは——!? あ、”アレ”が作動したのか!?
「あ、あ、あう……何で!? どうして!? 一体、何で——」
「落ち着け、シャノン」
ゆっくりと、諭すようにレンは言った。
「だ、だって、急に店長が変な事言って、怖い顔してアタシの方に手を伸ばしてきたと思ったら、バチッてなって——」
「今から僕の言う事を落ち着いて聞いてほしい」
はぁ、はぁ、と過呼吸気味になる彼女の肩に手を置いて、レンは続ける。
「今のは僕が——」
「そこまでです」
チャカッ、と音がする。
振り向いた。
そこには——見覚えのある少女の姿があった。
それを見て、レンは凍り付く。
そして、シャノンはその少女の名を呼ぶ。
「コ、コーネリア、さん——?」
「何故、貴様がここに——!?」
「……黒鳥レン」
彼女は、一先ずその名を呼ぶ。
レンは辺りを見回した。
まずい。この構図、ひょっとすれば自分が店長を倒して、シャノンもついでに襲おうと見ようによっては見えるのではないか、と思えてしまった。
次の瞬間、一閃が目の前を過る。
そして——どさっ、と何かが落ちるような音がした。
「っ……!」
倒れたのは、シャノンだ。
そして、彼女を倒したのは——その背後にいる剣士のような影であった。
「安心してください。少し、眠らせただけです。今この場でパニックになってもらっても困るので」
「待て。本当に待つんだ。一体、何故貴様がここに——」
「決まっているでしょう。極東の猿と——」
ギラリ、とコーネリアの目が光ったような気がした。
それほどまでに、圧倒的な威圧感だった。
「うちの義妹が仲良く逢引きしてる中、街中に決闘空間が出現した……由々しき事態です」
義妹、その単語が浮かぶ。
そういえばフジが言っていた。
コーネリアには義妹がいる、と——
更に彼女は、言った。街に決闘空間が発生している、と。
「……アヴィオール、どうなんだ?」
『間違いないですね。それも相当大規模な』
「それともう1つ、質問があります。これは場合によっては、この場であなたを斬る事になりますが——」
ごくり、とレンは生唾を飲んだ。
「——シャノンにトレードでカードを渡しましたね?」
「……!」
やはり、この女は全てを知っている。
だとすれば、何処まで?
自分たちがカードに掛けた魔法の事まで知っていたのだろうか。
その内容まで——それ次第で、自分は此処で彼女と交戦することになりかねない。
「一体、何のつもりでカードに細工をしたのか——答えてください」
「……!!」
バレている——すべて。
次の瞬間、冷たい感触が首を撫でた。
金属だ。
しかし、振り向くことすらしなかった。
心臓の音が、激しく、そして速く刻まれていく。
つうっ、と首筋に滴が垂れた。
手汗を握り、一言ずつ、言葉を繋いでいく。
『いやー、そもそもですねぇー。”アレ”にこんな効果は——』
「”ドブ龍”、お前には聞いていない。私は、黒鳥レンに問うているのです。勝手な発言をしたら、殺すぞ」
殺意が伝わってきたのを感じたのか、アヴィオールも口を噤んだ。ドブ龍と呼ばれたことに、少々不服らしかったが、それどころではない。
クリーチャーには最早、敬語すら使わないらしい。
この緊迫した状況で、アヴィオールの弁護は役に立たないのだ。
一言ずつ、一言ずつ、レンは言葉を紡いだ。
「悪意が、あったわけでは、ない——」
「ん?」
コーネリアはギラリ、とその目を細める。
まるで、喰って殺してやろうか、と言わんばかりの鋭い目付きだ。
「悪意があったわけではない、のだ——」
「どういうことでしょうか。答えになっていません。答えれば、命だけは助けてあげましょう。答えなければ、この場で殺します。黒鳥レン」
脅しなのか、そうでないのか。
それは分からない。しかし——殺す、という文句がとても重い。
「昨日、シャノンと会った時、邪悪龍の使い手に襲われた——」
「……ふむ」
「僕は、僕は偽善者だ——過去に、自分の過ちで大切な人を失った事がある——」
すっ、とコーネリアの瞳を見据える。
そこに恐れはない。
「あの時、奴は”逆らえば、お前に関わるものから——”と言いかけた。間違いなく、僕らが邪悪龍と戦うことになれば、周りの人に危険が及ぶ可能性がある。だから僕はまた、恐れたのだ。僕に関わった、この戦いに無関係な人が傷つくのを——」
コーネリアは、黙って聞いていた。
レンの話を。
「だから、僕に関わった彼女が危険な目に遭わないように——アヴィオールによって結界を貼って貰った——あれは、クリーチャーやデュエリストの決闘空間に反応するもの、らしくてな——これなら、彼女を守れると思った。最も、結界で防げるのはクリーチャーに関わった事が無い者、のみ。決闘空間を防ぐのは、それだけ難しいということだ」
「ふむ——そうですか」
射刺すような視線がレンを貫いた。
表情筋が全く動いていない為、全く感情が読み取れない。
そして——再び、口を開いた。
「——まあ、そんなところだろう、と思っていましたが、真意を聞けて何よりです」
首から冷たい感触が消える。
思わずレンは、床に手を突いた。
はぁ、はぁ、と息を切らせている。
びちゃびちゃびちゃ、と汗が床を濡らしていった。
「実はその防護結界とやら、私が昨日のうちに破壊したのです」
「なっ——!?」
「正確に言えば、私のクリーチャーがね。そして、今日一日貴方達をクリーチャーも使って監視していたわけですが——まあ、幸いでしたね、黒鳥レン。自分が悪人じゃなくて。そうでなければ、今頃聖なる剣が貴方の胸を貫いているでしょう」
「……」
「まあ、脅したのは謝りましょう。結果的に、何の魔法か分からなかったので放置は出来なかっただけです。そして、分かっていると思いますが——あの閃光は、私のクリーチャーが放った物。ああ、それと感謝なんて微塵もしていませんよ」
ギラリ、とレンを睨むとコーネリアは言った。
「——シャノンを守るのは私です。貴方等は、お呼びではない。私のクリーチャーは、防護結界を作るような器用な真似は出来ませんがね——あらゆる悪を貫く剣がある」
ギリッ、とレンは歯を食いしばる。
結果的に、彼女に守られたのは事実だ。
それを認めない訳にはいけない。
「それとですね、黒鳥レン。あまり、シャノンに余計な事を吹き込まないで下さい。彼女には素質がある。次期、漆黒近衛隊(エボニーロイヤル)の候補になっているほどの、ね」
「……次期、エボニーロイヤル、だと……!?」
「私は、彼女の義姉ではありますが、同じくしてライトレイの上級生でエボニーロイヤル。強き者を見定めないわけにはいかない。そして、その先に待つ運命に導くのも、私の——」
「——自惚れるなよ、コーネリア」
遮るように、レンは言った。
「——彼女の人生の道を決めるのは、貴様でもなければ、僕でもない。他ならない彼女自身で、貴様等はその手助けをすることしか許されないはずだ。僕が、彼女を助けようとしたのは、彼女の人生がもしも邪悪龍如きに邪魔されるようなことがあったのならば、それはあってはならないことと思ったまで。それ以外の事に干渉するつもりはない。貴様や、ライトレイにもな」
しばらく、沈黙が続く。
そして、次にアヴィオールが口を開いた。
『コーネリア。さっき、貴方は防護結界をクリーチャーに破壊させた、と言いましたね?』
「ええ、そうです」
『だとすれば、本当に余計な事をしてくれましたね。彼女は、クリーチャーを”見てしまい”、”関わって”しまった。体内に既にマナが蓄積されている。もう彼女は普通の人間ではない。貴方と同じ、宿命に立ち向かう者になってしまった。宿命に立ち向かう者に、あの防壁で逃げる事は許されない。あの防護結界は、人間に使うものではないのもそのためです』
「構いません。得体の知れない、何処のドブ龍が掛けたのかも分からない魔法に頼るよりは、よっぽどマシ——責任を以て、私が彼女を守ります」
そういうと、彼女はシャノンを負ぶう。
「まずは、街に出ましょう。何者かによって、精神汚染された人々が辺りを徘徊しています。この決闘空間、只のモノではありません。対立するのは、それからでも遅くないのでは?」
「……そう、か……」
もう、不満も不平も言うつもりは無かった。
今は事態を打破することが何よりだ。
レンとコーネリアは、店長を放置し、そのまま他に誰も居ないカードショップを出たのだった——
- Act4:増殖 ( No.441 )
- 日時: 2016/12/03 20:12
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)
「《Q.E.D+》でダイレクトアタック!!」
警官の体が吹っ飛ぶ。
いきなり展開されたシールド。
それに、明らかに人の影が消えた街。
そして、歪んでいる空。間違いない。自分達は巻き込まれたのだ。
オックスフォードサーカス上空を覆う、決闘空間に。
『どうやら、敵さんは自分の魔力を混ぜたカードをばら撒いたみたいだね……』
「で、バイオハザードよろしく、それが決闘空間に入って来て、オレらを襲って来てるわけだ。で? なんかその警官調べて分かった事は?」
『何というか……分からない。何か特に異常は見受けられない。魔法の類じゃないみたいだよ』
「魔法じゃない、か……」
さて、となると心配なのは、ホタルや先輩達の安否だ。
ヒナタは、すぐ近くの店にいるはずだ。元々グラサンの買い物に付き合うのも、だんだん飽きてきたので憂さ晴らしを兼ねて外を見廻っていたところだったのだ(正確に言えば、土産屋でイギリスっぽい食べ物がないか探しており、嫌な予感しかしなかったので立ち去る事にした)。問題は、離れているホタルとコトハだ。
すぐさまスマホで通話を試みるが——バチン、と音を鳴らしたかと思えば、煙を吹いてしまった。
「何だよ……これ……」
『強力な、”電気”の力……!? そういえば、何かさっきから、変な気配が強く……抉るように感じる……!』
どちらにせよ、此処まで広大な決闘空間が開かれている以上は、並みのクリーチャーではないことだけは確かだ。
まずは元の道を戻り、ホタルとコトハを迎えにいかねばならないと思っていた矢先——
「ノゾム!」
『無事だったか!』
たったっ、と駆けてくるヒナタと浮かんで移動している白陽。
はぁ、はぁ、と息を切らせており、切羽詰まった様子だ。
しかし、無事でよかった、と一先ずノゾムは安堵の息をつく。
『はーくーよーうー!!』
カードから実体化し、白陽に飛び付くクレセント。
ぐりぐり、と胸に顔をうずめている。
『ううう、怖かったよ……やっぱり白陽が来ると安心感が違うよう、体感ノゾムの100倍くらいあるよう』
「おい、それをパートナーの前で言うかフツー」
『良いから離れろ……。今はそれどころではないだろう』
と言いつつ頭を撫でているのだから、満更ではなさそうだ。一層腹が立つ。
辟易した表情で、ヒナタは咳払いすると事の顛末を話しだした。
「……うあー……店の中の人といきなりデュエルになるなんて思わなかったぜ。面喰っちまったよ」
「そ、そうだったんすか……まあ、何事も無くて良かったっす」
『高潔な気配……光でも上級のクリーチャー、というのは何となくわかる。精神の同調、支配は奴らの十八番だ』
「んでもって、それを可能にするのは——」
『水の、テクノロジー……!』
先日、レンを襲ったという邪悪龍の使い手・キングと、邪悪龍・ケフェウスを思い出す。
ケフェウスの文明は光と水。となれば、レンを仕留め損なったのを悔しがったキングが再び現れたということだろうか。
『でも、多分邪悪龍じゃ、ないと思う……!』
「え?」
言ったのはクレセントだった。
いつになく、不安そうな表情を浮かべながら。
『”本体”程の強力な力なら、ソウルフェザーと最初に相対した時みたいにもっと速く感じ取れた……! 今回のは、それじゃないよ!』
『彼女の感知能力は、確かだ。信じてやれ』
「んじゃあ、何なんだよ、今回の事件の黒幕は……!」
「とすれば、向こうの仕掛けてきた刺客……? クリーチャーを送り込んできたってことっすかね?」
「有り得ねえ事はない……とにかく、レンのいる喫茶店に戻らねえと!」
瘴気に覆われた空。
そこは、果てしない決闘空間で飲まれていた——
***
——数十分前。
ホタルとコトハは、オックスフォードサーカス駅を探索していた。
多くの人が行き交うこの辺りも、一応見回っておく必要があると判断したのだ。
地下鉄も運航している上に、見慣れない形の車両が走っていて、興味深い場所だった。
が、しかし。本命は怪しいクリーチャーがいないかどうかのサーチである——にもかかわらず。
初っ端からホタルがいきなりぶっこんで来た。
「ど、どっちから告白したんですかぁ!?」
「ぶっふっ!!」
ベンチに座って休憩していた矢先のこれであった。
思わず、飲んでいたオレンジジュースがむせてしまった程だ。
「きゅ、急に何よ」
「そ、そんなに驚く事でしたか?」
「ねえ、普通、何の脈絡も無しにそういうこと聞いちゃう!?」
「たまには良いじゃないですか! ガールズトーク! 腹の中を割って、互いに色々ぶちまけちゃいましょうよ!」
「何なの、それ……」
「なら、取材という形で! 学校新聞にも後で載せますから! ”電撃交際、鎧龍前期エースカップル誕生★” という見出しで!」
「本当にやめて! 恥ずかしすぎるから! 社会的にあたしが死ぬから!」
「で、どっちから告ったんですか!? ねえ!?」
かああ、と顔を赤くしてコトハは反駁を加えた。
ポニーテールがゆらゆら、と恥ずかしそうに揺れている。
目の前の後輩が、いつになくがっついてくるのが不思議だった。
仕方なく、ボソッとこぼすように答える。
「……あたしから」
「如月先輩から、ですかぁ!?」
「ねえ、そういう風に言っちゃうのやめて! 聞かれてるかもだよ!?」
「どうせ周りには外国人しかいないから大丈夫ですよ!! ね、色々聞かせてくださいよ、先輩とのこととか!」
「きゅ、急にどうしたのよ、ホタルちゃん……」
「如月先輩とこうやって話すことって、やっぱり少なかった気がして。折角だから色々聞きたかったんですよ」
「そう?」
「はい。チームの中で、女子は私と先輩だけですけど、不思議なくらいに」
「そりゃ、あたしはいつもヒナタとレンの2人と一緒に行動してるし、ホタルちゃんもノゾム君にべったりだからね。教官役はレンが買ってくれたから、ってのもあるけど」
「べ、べったりって言うほどべったりですかねえ? た、ただのクラスメートですよ?」
「……ふーん」
急に目を反らした彼女には、敢えて突っ込まないで聞かないでおく。爆弾は後にとっておこう。
眼鏡をくいっ、と指で直すと、ホタルは再び問うた。完全にマスコミモードに切り替わった表情で。
「——だから、アレですね! 後は、どうして先輩のことを好きになったか、とか!」
「え、えええ!?」
「後は、デートは何回、どこに行ったか、とか」
「プライバシーの侵害っていうか、何て言うか!?」
実はまだ、色々あった所為でロクにしていないのから答えようがないのであるが。
「そ、それと……その、ど、どこまで行ったか、とか……」
「やめろォ!! スクープどころか、スキャンダルが起こる予感しかしないわ!!」
はぁ、はぁ、はぁ、と恥ずかしさと突っ込みによる疲労で過呼吸気味になるコトハ。
反撃と言わんばかりに、コトハは言った。
「……ねえ、ヤケに必死ね?」
「え? そ、そうですか?」
一転構成。
図星なのか、急に彼女の挙動が変わる。
「……本当にただのガールズトークなのかしらねえ?」
「何の事でしょうか?」
「……ホタルちゃん、正直に言いなさい。今ならお姉さん、許してあげるわよ」
「正直って——」
『あのう、コトハ様にホタル様。ガールズトークで盛り上がってるところ申し訳ないのですがにゃ——』
『非常に申し上げにくいのだが……』
それぞれの相棒の言葉に、ぴたり、と2人は話を止めた。
そして立ち上がる。
カード状態の彼女達が、ポンッと音を立てて実体化する。
「ねえ、これって——」
『クリーチャーの気配——そしてこれは』
『間違いないのう。気を付けろ。何処に何がおるか、分からんわい』
「ハーシェル、こんなことってあるんですか!?」
辺りを見回す。
そして——確信する。今この場は、異様な空気に包まれ、現実の空間とは隔離されているということ。
だが、1つだけ今までと違うことがあった。
ふら、ふら、と辺りから数人の男女が歩いてやってくる。
まるで、操り人形のような挙動で——
「——これって一体——!?」
そう言いかけた途端、2人の正面にシールドが展開された——
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