二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ D・ステラ 【侵略世界編】
日時: 2017/01/16 20:03
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

【読者の皆様へ】
はい、どうも。二次版でお馴染み(?)となっているタクと申します。今回の小説は前作の”デュエル・マスターズ0・メモリー”の続編となっております。恐らく、こちらから読んだ方がより分かりやすいと思いますが、過去の文というだけあって拙いです。今も十分拙いですが。
今作は、前作とは違ってオリカを更にメインに見据えたストーリーとなっています。ストーリーも相も変わらず行き当たりばったりになるかもしれませんが、応援よろしくお願いします。

また、最近デュエマvaultというサイトに出没します。Likaonというハンドルネームで活動しているので、作者と対戦をしたい方はお気軽にどうぞ。


”新たなるデュエル、駆け抜けろ新時代! そして、超古代の系譜が目覚めるとき、デュエマは新たな次元へ!”



『星の英雄編』


 第一章:月下転生

Act0:プロローグとモノローグ
>>01
Act1:月と太陽
>>04 >>05 >>06
Act2:対価と取引
>>07
Act3:焦燥と制限時間
>>08 >>10
Act4:月英雄と尾英雄
>>13
Act5:決闘と駆け引き
>>14 >>15 >>18
Act6:九尾と憎悪
>>19 >>21
Act7:暁の光と幻の炎
>>22 >>23
Act8:九尾と玉兎
>>25

 第二章:一角獣

Act1:デュエルは芸術か?
>>27 >>28 >>29
Act2:狩猟者は皮肉か?
>>30 >>31 >>32 >>33
Act3:龍は何度連鎖するか?
>>36 >>37
Act4:一角獣は女好きか?
>>38 >>39 >>41 >>42 >>43 >>44 >>45
Act5:龍は死して尚生き続けるか?
>>48

 第三章:骸骨龍

Act1:接触・アヴィオール
>>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>55
Act2:追憶・白陽/療養・クレセント
>>56 >>57
Act3:疾走・トラックチェイス
>>66
Act4:怨炎・アヴィオール
>>67 >>68
Act5:武装・星の力
>>69 >>70
Act6:接近・次なる影
>>73

 第四章:長靴を履いた猫

Act1:記憶×触発
>>74 >>75 >>76 >>77
Act2:龍素力学×龍脈術=3D龍解
>>78 >>79 >>80
Act3:捨て猫×少女=飼い猫?
>>81 >>82
Act4:リターン・オブ・サバイバー
>>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90
Act5:格の差
>>91 >>92 >>93 >>104
Act6:二つの解
>>107 >>108 >>109 >>110
Act7:大地を潤す者=大地を荒らす者
>>111 >>112 >>113
Act8:結末=QED
>>114

 第五章:英雄集結

Act1:星の下で
>>117 >>118 >>119
Act2:レンの傷跡
>>127 >>128 >>129
Act3:警戒
>>130 >>131 >>132
Act4:策略
>>134 >>135
Act5:強襲
>>136
Act6:破滅の戦略
>>137 >>138 >>143
Act7:不死鳥の秘技
>>144 >>145 >>146
Act8:痛み分け、そして反撃へ
>>147
Act9:fire fly
>>177 >>178 >>179 >>180 >>181
Act10:決戦へ
>>182 >>184 >>185 >>187
Act11:暁の太陽に勝利を望む
>>188 >>189 >>190 >>191 >>192 >>193 >>194 >>195
Act12:真相
>>196 >>198
Act13:武装・地獄の黒龍
>>200 >>201 >>202 >>203
Act14:近づく星
>>204


『列島予選編』


 第六章:革命への道筋

Act0:侵攻する略奪者
>>207
Act1:鎧龍サマートーナメント
>>208 >>209
Act2:開幕
>>215 >>217 >>218
Act3:特訓
>>219 >>220 >>221
Act4:休息
>>222 >>223
Act5:対決・一角獣対玉兎
>>224 >>226
Act6:最後の夜
>>228 >>229
Act7:鎧龍頂上決戦

Part1:無法の盾刃
>>230 >>231 >>232 >>233 >>234 >>235 >>236 >>239
Part2:ダイチの支配者、再び
>>240 >>241 >>242 >>243 >>244 >>245 >>246 >>247 >>248 >>250
Part3:燃える革命
>>252 >>253 >>254 >>255 >>256
Part4:轟く侵略
>>257 >>258 >>259 >>260 >>261

Act8:次なる舞台へ
>>262


 第七章:世界への切符

Act1:紡ぐ言の葉
>>263 >>264 >>265 >>266 >>267 >>268 >>270
Act2:暁ヒナタという少年
>>272 >>273
Act3:ヒナとナナ
>>275 >>276 >>277 >>278 >>279 >>280 >>281
Act4:誓いのサングラス
>>282 >>283 >>284 >>285
Act5:天王/魔王VS超戦/地獄
>>286 >>287 >>295 >>296 >>297 >>298 >>301 >>302 >>303 >>304 >>305
Act6:伝説/閃龍VS獅子/必勝
>>313 >>314 >>315 >>316 >>317 >>318 >>319 >>320 >>321 >>323
Act7:青天霹靂
>>325 >>326 >>327 >>328 >>329 >>330 >>331
Act8:揺らぐ言の葉
>>332 >>333 >>334 >>335 >>336
Act9:伝説/始祖VS偽龍/偽神
>>337 >>338 >>339 >>340 >>341 >>342 >>343
Act10:伝える言の葉
>>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351
Act11:連鎖反応
>>352


『侵略世界編』


 第八章:束の間の日常

Act1:揺らめく影
>>353 >>354 >>359 >>360 >>361 >>362
Act2:疑惑
>>363 >>364
Act3:ニューヨークからの来訪者
>>367 >>368 >>369 >>370 >>371
Act4:躙られた思い
>>374 >>375 >>376 >>377
Act5:貴方の為に
>>378 >>379 >>380 >>381 >>384 >>386
Act6:ディストーション 〜歪な戦慄〜
>>387 >>388 >>389
Act7:武装・天命の騎士
>>390 >>391
Act8:冥獣の思惑
>>392
Act9:終演、そして——
>>393


 第九章:侵略の一手

Act0:開幕、D・ステラ
>>396
Act1:ウィザード
>>397 >>398
Act2:ギャンブル・パーティー
>>399 >>400 >>401
Act3:再燃 
>>402 >>403 >>404
Act4:奇天烈の侵略者
>>405 >>406 >>407 >>408 >>409 >>410 >>411
Act5:確率の支配者
>>412 >>413
Act6:不滅の銀河
>>414 >>415
Act7:開始地点
>>416


 第十章:剣と刃

Act1:漆黒近衛隊(エボニーロイヤル)
>>423 >>424
Act2:シャノン
>>425 >>426
Act3:賢王の邪悪龍
>>427 >>428 >>429
Act4:増殖
>>430 >>431 >>435 >>436 >>438 >>439 >>440 >>441 >>442
Act5:封じられし栄冠
>>444


短編:本編のシリアスさに疲れたらこちらで口直し。ギャグ中心なので存分に笑ってくださいませ。
また、時系列を明記したので、これらの章を読んでから閲覧することをお勧めします。

短編1:そして伝説へ……行けるの、これ
時系列:第一章の後
>>62 >>63 >>64 >>65

短編2:てめーが不幸なのは義務であって
時系列:第三章の後
>>97 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103

短編3:文化祭(と言えば聞こえは良いが要は唯のスクランブル)
時系列:第四章の後
>>120 >>121 >>122 >>123 >>124 >>125 >>126

短編4:十六夜ノゾムの災厄な一日
時系列:第四章の後
>>149 >>150 >>153 >>154 >>155 >>156

短編5:恋情パラレル
時系列:第四章の後
>>157 >>158 >>159 >>160 >>163 >>164 >>165 >>166 >>167 >>168 >>173 >>174 >>175 >>176

短編6:Re・探偵パラレル
時系列:平行世界
>>417 >>418 >>419 >>420 >>421 >>422

エイプリルフール2016
>>299 >>300

謹賀新年2017
>>443


登場人物
>>9
※ネタバレ注意。更新されている回を全部読んでからみることをお勧めします

オリジナルカード紹介
(1)>>96 (2)>>271
※ネタバレ注意につき、各章を読み終わってから閲覧することをお勧めします。

お知らせ
16/8/28:オリカ紹介2更新

Act3:賢王の邪悪龍 ( No.427 )
日時: 2016/10/26 17:31
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

 レンとキングのデュエル。
 現在、キングは《魔光ドラム・ポール》を出して、ナイト・マジックを持つ呪文のコストを下げている。
 一方のレンは《一撃奪取 ブラッドレイン》を出しており、次のターンにコスト4のクリーチャーを出す準備は出来ていた。

「闇使い、黒鳥レン。貴様は此処で終わりだ! 俺のターン、《聖鐘の翼 ティグヌス》を召喚!」

キング:山札28 手札3 マナ0/3 墓地0

 現れたのは、黄金の鎧に身を包んだ天翼の使徒。
 それにより、レンのハンデス戦法は封じられてしまう。

「——まあいい。僕は僕のムーブで進めるとしよう。4マナで、《白骨の守護者 ホネンビー》を召喚。その効果で、山札の上から3枚を墓地へ送り、その中からクリーチャーを回収する」

 現れた、骨面の守護者は現れるなり雄たけびを上げる。 
 そこから地獄への門が開き、カードが1枚、レンの手元へ入った。

「——《龍覇 ニンジャリバン》を回収だ。ターンエンド」

レン:山札24 手札4 マナ0/3 墓地2

「ふっ、では我のターンだな」

 カードを引くキング。
 間違いなく、このターンで何かの呪文を唱えてくる。
 相手のマナは4枚。それを全てをタップし、キングは宣言した。

「《ドラム・ポール》がいるので、呪文・《魔弾 オープン・ブレイン》! その効果で、手札を2枚ドローしたのち、ナイト・マジックで再度この効果を使う!」



魔光ドラム・トレボール C 闇文明 (2)
クリーチャー:ガーゴイル/ナイト 1000
自分の「ナイト・マジック」を持つ呪文を唱えるコストを1少なくしてもよい。ただし、コストは1より少なくならない。



魔弾オープン・ブレイン C 水文明 (5)
呪文:ナイト
S・トリガー
KM−カードを2枚まで引く。
ナイト・マジック
 


 増えるキングの手札。
 それも、ナイトの必殺技、ナイト・マジックによって一気に4枚も、だ。
 ナイト・マジックとは、呪文の解決の際に場にナイトクリーチャーがあれば、KM(ナイト・マジックアイコン)以下の呪文能力をもう一度実行するというキーワード能力だ。
 ナイトである《ドラム・ポール》がいるため、《オープン・ブレイン》の効果をもう1度使ったのだ。

「ククク、更にG・ゼロで《魔光騎聖 ブラッディ・シャドウ》をバトルゾーンへ!」



魔光騎聖ブラッディ・シャドウ P(C) 光/闇文明 (2)
クリーチャー:イニシエート/ゴースト/ナイト 4500
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
ブロッカー
G・ゼロ−このターンに自分が呪文を唱えていれば、このクリーチャーをコストを支払わずに召喚してもよい。
このクリーチャーは攻撃することができない。
このクリーチャーはバトルに勝っても、バトルの後、破壊される。




 現れたのは、騎馬に乗った幽霊のようなクリーチャー。
 逆スレイヤーブロッカーの系譜、”ブラッディ”の名を持つクリーチャーの1体、《ブラッディ・シャドウ》だ。
 これにより、盤面も固められていく。

キング:山札23 手札5 マナ0/4 墓地1

 ——ナイト軸デッキだったか……! 何だ? このムーブは大方推測できるが……!
 ナイト・マジック呪文を使っているということは、デッキの中のクリーチャーもナイトで固められているはずだ。
 それらのバリエーションは、除去、手札補充、果てには踏み倒しと幅広い。警戒は必須だろう。

「僕のターン、4マナで《龍覇 ニンジャリバン》を召喚!」

 影を纏って現れたのは、シノビを姿をしたファンキー・ナイトメア。
 相手がナイトを使ってくるならば、こちらもナイトで対抗してやる、という彼なりの心意気だ。

「その効果で《龍魂遺跡 グリーネ》をバトルゾーンに出して、マナゾーンにカードを1枚置き、ターンエンドだ」

レン:山札22 手札3 マナ1/5 墓地2

 聳え立つ龍の遺跡。
 そこから、大地に恵みが齎された。
 《ブラッドレイン》と合わさり、レンは次のターンにコスト7のクリーチャーを召喚することが可能となる。

「ほう。もうそこまで溜めたか。だが——上手なのは我の方よ。まずは、《ティグヌス》を召喚。呪文、《魔弾 グローリー・ゲート》!!」



魔弾グローリー・ゲート P 光文明 (3)
呪文:ナイト
KM−自分の山札の上から3枚を表向きにする。その中からナイトを1枚手札に加え、残りを好きな順序で山札の一番下に戻す。
ナイト・マジック(バトルゾーンに自分のナイトがあれば、この呪文のKM能力をもう一度使ってもよい)



「《グローリー・ゲート》——! サーチ呪文か!」
「そうだ! その効果で、山札の上から3枚を表向きに!」

 現れたのは、偉大なる栄光への門。
 それが開き——更なる騎士の魔弾が装填されていく。
 展開されたのは、《ブラッディ・シャドウ》、《魔光ドラム・ポール》、そして《魔弾 ストリーム・サークル》の3枚だ。

「——そして、ナイトである《魔弾 ストリーム・サークル》を手札に! そして、KM(ナイト・マジック)でもう1度、この効果を使う!」

 再び魔弾によって展開される山札。
 表向きになるのは、《デーモン・ハンド》、《魔光死聖 グレゴリアス》、そして——見たこともないカードであった。光と水のカードであることは間違いないが、とてつもなく邪悪な覇気を放っている。

「まずは、効果で《グレゴリアス》を手札に! そして——この、《英霊晃星 ケフェウス・ウィズ》の効果発動!」
「《ケフェウス・ウィズ》——そいつが貴様の切札か」
「左様!! 《ケフェウス・ウィズ》は、呪文の効果で山札のカードを見たとき、または表向きにした時、このカードを相手に見せれば、手札に加えることが出来る! よって、《ケフェウス・ウィズ》を手札へ! ターンエンド!」

キング:手札19 手札6 マナ2/5 墓地2

 ——ナイトではないようだが——サーチが容易だから入れていたのか。だとすれば、呪文関連の能力も持っているということか——
 ごくり、とレンは息を呑む。
 相手の切札が見えたことで、武者震いした。
 同時に、あれがヒナタやノゾムの言っていた、凶悪なカード・邪悪龍とするならば。今までの敵とは比にならない強さを持っているはずだ。

「僕のターン!! 《極・龍覇 ヘルボロフ》を召喚! その効果で、超次元ゾーンより《極魔王殿 ウェルカム・ヘル》をバトルゾーンへ!」
『黒鳥レン。臆することはありません。この私が。そして、貴方自身の手で選び取った精鋭達が貴方を守るでしょう』
「貴様の言う通りだ。アヴィオール!」

 地獄の鎌を振り回し、冥府より帰還した飢狼が現れた。
 そして、それを大地に突き刺せば、溢れんばかりの怨恨が場を支配する。
 
「《ヘルボロフ》の効果で、山札の上から2枚を墓地へ送る。そして——《ウェルカム・ヘル》の効果で、墓地より《龍覇 ニンジャリバン》をバトルゾーンへ。その効果で《悪夢卍 ミガワリ》を装備!」

 再び現れた影を纏いし忍の縫い包み。
 それが、超次元の穴を突っ切って現れた卍を手に取る。オオオオ、と怨嗟の声が決闘空間に響き渡った——

「そして——僕の場には、闇のクリーチャーが合計4体。全て、冥府の主の糧と成る!!」

 ガバァ、と《ウェルカム・ヘル》の巨大な門が開いた。
 レンの場のクリーチャー達が、それに吸い込まれ、消えていく——
 
「——裁きの門は開かれた。愚かなる罪人に死の祝福を」

 それは死を齎す最強の悪魔龍。
 そして、レンの最強のドラグハートとなるカード。
 見せつけるように、彼は宣告する。
 その切札の登場を。



「龍解——《極・魔界王 デスゴロス》」

Act3:賢王の邪悪龍 ( No.428 )
日時: 2016/10/26 17:46
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

 しかし、破壊は連鎖する。
 これだけでは終わらないのだ。
 《ミガワリ》が《ニンジャリバン》の身代わりとなり、その悪意を食らって要塞となる。

「自身の持ち主が破壊されるとき、《ミガワリ》が代わりに龍解する!! 2D龍解、《忍者屋敷 カラクリガエシ》!!」



悪夢卍(まんじ) ミガワリ P 闇文明 (2)
ドラグハート・ウエポン
龍解:これを装備したクリーチャーが破壊される時、墓地に置くかわりにこのドラグハートをフォートレス側に裏返す。



忍者屋敷 カラクリガエシ P 闇文明 (4)
ドラグハート・フォートレス
自分のターンのはじめに、自分の山札の上から2枚を墓地に置いてもよい。
龍解:自分の闇のクリーチャーが破壊された時、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップしてもよい。



 しかし、これでもまだ死の連鎖は止まらなかった。
 絡繰り屋敷は、死んでいった他のクリーチャーの怨嗟と怨念を食らい、今度は幻惑の悪魔龍として現実へ現れる——

「今度は自分の闇のクリーチャーが破壊されたので、《カラクリガエシ》の龍解条件達成!! 自分のクリーチャーが同時に破壊された時、《ミガワリ》はフォートレス形態を飛ばし、一気にドラグハート・クリーチャーへと昇華する——」

 《カラクリガエシ》が、カタカタと音を立て、揺れ動いた。
 その内に秘められるは、悪夢の絡繰り、そして破壊のシナリオ。それが今、解き放たれた。



「——3D龍解、《絡繰りの悪魔龍 ウツセミヘンゲ》!!」



絡繰の悪魔龍 ウツセミヘンゲ P 闇文明 (7)
ドラグハート・クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 7000
W・ブレイカー
このクリーチャーが破壊される時、かわりにカードを4枚、自分の墓地から山札の一番下に好きな順序で置いてもよい。



 現れたのは、現実と幻想の狭間を彷徨う悪夢の龍。
 それらは虚実綯い交ぜ、攻撃しても決してそれを食らうことはない。
 これにより、一気に2体のドラグハート・クリーチャーがレンの場に並んだのである。

「さて。効果の解決を行おうか!! 《デスゴロス》の効果で、貴様の《ドラム・ポール》と《ティグヌス》を破壊!!」

 一気に巨大な鎌が、2体の命を奪う。
 まさに、悪夢を見る暇も与えなかった。

レン:山札19 手札2 マナ0/6 墓地6

 しかし。
 それでも尚、キングは薄ら笑みを浮かべていた。
 場には2体の大型クリーチャー、墓地にはドラグナー。超次元ゾーンには《龍魂城郭 レッドゥル》まである。下手すれば、次のターンにワンショットを決められてしまう状況だ。
 だが、王者は尚も余裕を見せていた。

「——黒鳥レン。お前には少し、痛い目を見て貰おうか!! 呪文、《ヘブンズ・ゲート》!!」

 天上に開く巨大な門。
 そこから——2つの強大なる影が降り立つ。
 
「我が出すのは、光のブロッカー2体。《魔光大帝 ネロ・グリフィス》。そして——《英霊晃星 ケフェウス・ウィズ》だ!!」

 1体は暗黒に手を染めた、ナイトの皇帝。
 そして——もう1体は、英霊の名を冠す、賢者の王。
 刹那、場に激しい風が吹いた。
 これは、魔力の風だ。
 余りの力の強大さに、衝撃が場に迸っているのである。
 それは、黄金の鎧に身を固めていた。
 右手には光り輝く三又の槍、左手には碇のように湾曲した槍を掲げた巨漢だ。その体は、機械のように複雑で、入り組んでおりながら、その表情は生きている生物のようにうねっている。
 
「ケフェウス座の力を持つ龍の力、特と見るが良いわ! 超次元ゾーンより、M(マギカ)・コアを持つステラアームド・クリーチャーを1体、バトルゾーンへ!! 《機改衛星 クラブスター・エラキス》をバトルゾーンに!!」

 超次元の門が開く。
 現れるのは、機械の星のようなクリーチャー。中核には不気味に笑んだ顔が浮かんでおり、キャキャキャ、と笑い声を上げていた。

「《クラブスター・エラキス》の効果により、山札の上から4枚を見て、その中から呪文を手札に加えても良い! 我が加えるのは、《魔弾 アルカディア・エッグ》だ!」
「チッ……!」

 にい、と笑ったキングは、更に《ケフェウス》の効果を発動させた。

「——そして、《ケフェウス》の効果発動!! ターン終了時に我の手札の枚数がお前を上回っていれば、手札よりコスト5以下の呪文を唱えられる!! 呪文、《魔弾 アルカディア・エッグ》!!」



英霊晃星 ケフェウス・ウィズ 水/光文明 (7)
クリーチャー:サイバー・コマンド・ドラゴン/コラプサー 7000
M・コア
このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、または自分のシールドゾーンにカードが置かれたとき、超次元ゾーンからM・コアを持つステラアームド・クリーチャーを1体バトルゾーンに出す。
自分の手札の枚数が相手の手札の枚数より多ければ、ターンの終わりに自分の手札からコスト5以下の呪文を唱えてもよい。その後、自分の手札が5枚より少なければ、自分はカードを1枚引く。
呪文の効果で山札のカードを見た時、または表向きにした時、このクリーチャーを相手に見せる。そうした場合、このクリーチャーを手札に加えてもよい。
ブロッカー
W・ブレイカー

  

魔弾アルカディア・エッグ P 闇文明 (5)
呪文:ナイト
S・トリガー
相手のタップされていないクリーチャーを1体破壊する。
《魔弾グローリー・ゲート》が自分の墓地にあれば、《魔光大帝ネロ・グリフィス》を1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。



「その効果で、アンタップしてる《デスゴロス》を破壊!!」
「龍回避する!!」

 展開される漆黒の球。
 それが回転していき——《デスゴロス》を取り込んでいく。何とか、要塞形態に戻ることで陥落は阻止したが——漆黒の卵は皇帝を再び生み出した。

「出でよ、2体目の《ネロ・グリフィス》!!」



魔光大帝ネロ・グリフィス P 光/闇文明 (8)
クリーチャー:エンジェル・コマンド/ダークロード/ナイト 7000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
ブロッカー
自分のナイト・クリーチャーが破壊された時、自分の手札から光または闇の、コスト6以下のナイト呪文または「S・トリガー」付き呪文を1枚、コストを支払わずに唱えてもよい。
W・ブレイカー



 《ネロ・グリフィス》は非常に良くない相手だった。
 処理しなければ打点が増えるのは勿論だが、処理すれば手札から呪文を唱えられてしまう厄介な敵だ。

「そして、手札が5枚より少ない時、《ケフェウス》の効果で1枚カードを山札から引ける。ターンエンドだ」

キング:山札18 手札4 マナ0/6 墓地6

 レンは思案する。
 逆に言えば、《ネロ・グリフィス》を割と安全に処理できるのも今しかないのである。
 しかし。処理すれば、どんな呪文が飛んでくるか分からない。
 打点を止め、尚且つ《グリフィス》を止めるには——足元から断つしかない、と彼は判断した。

「——《ブラッディ・メアリー》召喚。そして——《爆霊魔 タイガニトロ》を召喚」

 現れた2体のクリーチャー。
 方や逆スレイヤー持ちのブロッカー、方や——《ネロ・グリフィス》の脅威の根源である呪文を、吐き出させるために出した《タイガニトロ》だ。
 
「——ターン終了時に《タイガニトロ》の効果発動。手札を1枚選び、それ以外を全て捨てろ!!」

 手札から落ちていく、ナイト・マジック呪文。
 やはり、相当ため込んでいたらしい。何であれ、これで手札に大打撃を与えることには成功した。
 しかも、処理しない限りこれがずっと続くのだ。

「——その程度か?」

 だが。不穏を感じたのはその時だった。
 まだ、彼は余裕を残している。
 ——馬鹿な——! 何処にそんな余裕とリソースがあるというのだ! 呪文さえ断ってしまえばもう——
 じりっ、と後退する。賢王の瞳が、レンを捉えた。

「忘れてないか? 《ケフェウス・ウィズ》の事を——!! 教えてやろう、我らが死の星、コラプサーの力を!!」
「コラプサー——!?」

 まだ、まだやる気だ。
 確かにこのターンでリーサル圏内ではあるが——それでもまだ、こちらには手がある。
 しかし。《ケフェウス・ウィズ》が2本の槍を掲げ、ずん、ずん、と歩んでいく——

「《ケフェウス・ウィズ》で攻撃——する時、《クラブスター・エラキス》の効果で、墓地の呪文を5枚、山札へ戻す」
「!!」
「これで、武装条件は達成だ」

 次の瞬間——星の核が《ケフェウス・ウィズ》へ取り込まれていく。
 そして、スートのクラブのマークが浮かび上がった。
 機鋼の王は、歩みを止めず——次々と、その体に悪意と知識を武装していく。

「——溢れ出ん知識よ——集積し、武装し、死を連鎖させる星となれ!!」

 その腕の機械が剥離していく。
 生体パーツが本当の生命となり、意思を持って動いていく。




「——星芒武装、《皇帝の滅機龍ジ・エンペライズ クラベリオンCep(ケフェウス)》!!」

Act3:賢王の邪悪龍 ( No.429 )
日時: 2016/10/24 07:39
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

 それは、甲冑を着込んだ龍であった。
 槍と思われていたそれは、カパァ、と音を立てると共に光線を放つ宝銃と化す。これが、ケフェウス座の邪悪龍の真の姿、《クラベリオンCep》であった。
 遍く知識と知恵を結集し、完全なる龍となったのである。

「——《クラベリオンCep》が武装に成功したとき、効果発動!! 山札の上から5枚を見て、その中からコスト6以下の呪文を好きな数だけ選び、唱えても良い!!」
「なっ——!?」

 再び展開される山札。
 その中から、次々に呪文が銃弾となって飛んでいく。

「ビンゴ!! 当たったのは3枚!! まずは《魔弾 ストリーム・サークル》!! その効果で、《ブラッディ・メアリー》と《ウツセミヘンゲ》をバウンス!」
「ッ……まずい、これは……!!」

 激流の魔弾が、《ブラッディ・メアリー》と《ウツセミヘンゲ》をそれぞれ手札、そして超次元へと送還する。
 更にそれだけではない。《クラベリオンCep》の放った魔弾はまだ終わってはいないのだ。

「2枚目、今度は呪文、《魔弾 バレット・バイス》!!」 
「クッ……!!」

 こちらの手札へ干渉してきた。レンの残る手札が全て墓地へ落とされてしまう。
 そして最後は——

「呪文、《魔弾 アルカディア・エッグ》!! その効果で、《タイガニトロ》を破壊!!」

 ——これにより、レンの場は全滅。
 一瞬で更地になってしまった。
 キッ、と強大なる賢王龍をレンは睨んだ。
 途方もなく大量のマナを有する彼を止める方法は、無い。

「《アルカディア・エッグ》の効果で、3体目の《ネロ・グリフィス》をバトルゾーンへ!! そして、《クラベリオンCep》の効果で——」

 そう、キングが言いかけたその時であった。
 ピタリ、と彼が動きを止める。

「——何をやっている? キング」

 キングの背後には——ローブを深く被った、小柄な人物の姿があった。
 その声にはノイズが掛かっており、不気味さを感じられる。
 男か女かは分からない。
 ——だ、誰だこいつは——!?
 敵か。味方か。それさえもはっきりしない。
 バクバクとなり続ける心臓。デュエルは、中断されたということで良いのだろうか。

「クッ、今すぐにこいつの息の根を止め——」
「愚かな。この男を確実に倒せる確証は貴様には無いだろう? 何処に行ったのかと思えば、こんなところを油を売って——目的を履き違えるなよキング」
「ぐぬう。貴様に言われては仕方あるまい——!! 折角手にしたこの力、早く試したかったが——!!」

 小柄なローブの人物は、レンに向かうと言った。
 どうやら、キングを連れて何処かで行くつもりらしかった。
 間一髪と言ったところか。

「——この男が失礼したな。黒鳥レン。我らは、いずれは戦う身——しかし、それは今ではない」
「貴様らは、何が目的だ——!!」

 振り絞るようにして声を出す。
 それでも、聞けることは聞いておきたかった。
 ノイズのかかった声が言葉を紡ぐ。

「少なくとも。貴様らを倒す事が目的ではないのだ。あくまでも、貴様等を倒すのは貴様らが我々の邪魔になると判断した時のみ。狂人のアンカは、何が何でも関係のないカードまで欲しがっているが——」
「もっとも邪魔をすれば黒鳥レン。貴様に関わる人物から——」
「そこまでにしろ、キング。行くぞ」

 くるり、と2人のローブは姿をその場から消す。
 同時に——決闘空間が崩れ去ったのだった——




「——ねえ、聞いてるの? レン?」




 ハッ、とレンは我に返る。
 気付けば、喫茶店の席に座っており、相変わらずシャノンがこちらに話しかけている途中だった。
 未だにばくばく、と音を立ててなる心臓。
 さっきまでの出来事が、夢のようだ。
 
「す、すまない。取り敢えず、だな——」

 言葉が続かない。さっきまで、決闘空間でデュエルしていたことが頭に焼き付き、会話の内容など忘れてしまった。
 ——僕に関わる人物、か——
 時計を見る。
 もうそろそろ時間だった。とにかく、どう弁明するかは決まった。
 未だ鳴りやまない胸を抑える。

「——済まない、もうそろそろ時間が着てしまったようだ」
「ええ? 残念」
「僕も貴——いや、君と話せて楽しかった。ライトレイ戦の前に、少し気が楽になったようだ」
「アタシ、ライトレイは勿論だけど、鎧龍も応援しているからね! どっちが勝っても、アタシはオッケーだよ!」
「……ありがとう」

 ——もしも、僕に関わったが為に彼女も狙われるようなことがあれば大変だ。
 そう思い、レンはカードを1枚取り出す。

「そうだ。君に渡しておきたいカードがある。せめてものお礼だ」
「お礼? 良いよ、そんなの……」
「何、こいつは日本でしか出ていないカード。そこそこ使えるはずだ」
「……ありがとう! でも、アタシだけ貰うのも悪いな……」
「それなら、トレードという形にしないか? そちらからは何を出してもらっても構わん」
「じゃ、じゃあさ」

 彼女もカードを、ポーチから漁る。
 そして、1枚を探し当てると、レンに見せた。

「アタシはコレを」
「……これは」
「闇、使ってるんだよね? 役に立ったら良いなあ」
「……ああ、ありがとう。それでは、僕は此処で失礼するよ」

 席から立ち上がるレン。
 もうそろそろ帰らないと、皆に心配を掛けてしまう。
 さっきの事を、報告するため、というのもあった。邪悪龍がこの街に潜んでいることは一大事だ。

「ねえ、レン」
「ん? 何だ」
「また会ってくれる? アタシ、絶対試合見に行くから! レンの事も応援するから! だから、アタシとデュエルしてくれる?」
「……勿論だ。なら、明日。またこの場所で落ち合おう。練習の合間で良ければ」
「うん!」

 レンは喫茶店から立ち去った。
 内心では、苦しい程の焦燥を抱えながら——



 ***




「楽しかったなあ。まさか、黒鳥レンに出会えた上に、対戦の約束まで! カードまでトレードしてもらったし、今日は何て運が良い日なんだろ!」

 彼女の目の前には、巨大な石造りの豪邸があった。
 
「えへへ。自慢できちゃうなあ」

 ガチャリ、とその扉を開け、中に入る。
 そして——玄関に居た人物に目を止めると、真っ先に駆け寄った。




「コーネリアさん!」



 その声で気付いたのか、彼女も振り向く。
 冷淡な眼差しを向けるが、口を開いた。

「……お帰りなさい、シャノン。今日は少し遅かったですね」

 その言葉は、何処か穏やかだった。

「えへへ。聞いて聞いて! カードショップの大会は勿論、優勝だよ! でもさ、それよりもすっごいことがあってね!」
「何ですか? 聞かせてください、シャノン」

 カードを取り出しながら、得意げに彼女は言う。
 
「日本チームの代表の、黒鳥レンと会って話しちゃった! カードもトレードしてもらったんだよ! これ!」
「……ほう、そうですか」

 ぴくり、とコーネリアの眉が動く。
 そして——打って変わり、凍てつくような声で彼女は言い放った。




「——よく、見せてくれませんか? シャノン。そのカードをもっと近くで——」

Act4:増殖 ( No.430 )
日時: 2016/11/06 12:30
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: y0p55S3d)

「……今戻った」

 全員の視線が、こちらを向くのをレンは感じた。やっとのことで、宿泊しているホテルの、借りているホールへたどり着いたのだ。
 しかし、もう疲労のためにそれどころではなかった。
 驚きに満ちた表情で、ヒナタ達が迎えに来る。
 
「お前、どうしたんだよ!?」
「やつれてますよ、レン先輩!?」

 やつれている、と言われる辺り、自身がさっきのデュエルでかなり搾られたことが分かる。
 そして、前に出てくるのはリトルコーチでもあるフジであった。

「それよりも、時間より30分も遅れて来るとは、テメェらしくねぇな。どうした、黒鳥」

 詰め寄るように言うフジだが、その表情には少なからず心配する感情が入っていないこともない。
 押し出すように、レンは言葉を紡ぐ。



「——邪悪龍の使い手に、遭遇しました」



 全員はざわついた。
 だが、同時にヒナタは1つの疑問も覚えた。
 見たところ、此処まで自力で戻って来れたということは、彼がその使い手に勝ったか、あるいは命からがら逃げられたということ。
 その間に自分たちに連絡することは出来たはずだ。

「そ、それでどうなったんだよ、レン!?」
「奴は、キングと名乗っていた。街でいきなり決闘空間を開かれてな……。途中で仲間がやってきて、何とかデュエルは中断出来たが。まあ、勝敗は微妙だ。勝っていたか、負けていたか、分からん」
『我が主が苦戦する程の相手。敵としては初めて相対しましたが、邪悪龍とは恐ろしいものでした。まあ、ボクがまだ武装していなかったので、煮え切らないところはありますが』

 そして、と彼は続ける。

「前に、邪悪龍が元は5つの武器だったということは知っているだろう。矛、銃、槍、鎌、剣……矛がソウルフェザーだったならば、奴が相当するのは恐らく”銃”。そして同時に、”賢王(ケフェウス)座”の力の持ち主で、しかもステラアームドまで使っていた」
「ステラアームド!? 奴らはドラグハートじゃないんすか!?」
『邪悪龍もステラアームドを使うなんて、聞いてないよ!?』

 驚いたのは、最初にアンカと直接対峙したノゾムとクレセントだ。
 以前戦った時は、そんなものは使っていなかった。レンの戦ったそれが、邪悪龍のカードというならば——また、違った力を持つ事になるということであるが。
 
「ソウルフェザーはドラグハート、だったわよね、ノゾム君」
「そうっすよ!」
「なのに、今度はステラアームド……?」
「驚く事でもねえ」

 割り込むように言ったのは、フジだった。
 
「クレセント達も、元は只のクリーチャーだったのが、力を付けたことでステラアームドを手にしている。邪悪龍のドラグハートが、龍の武器から解放されたことで、ステラアームドを手にしても何らおかしくはないぜ。なんせ、アンカの奴もソウルフェザーの力を付ける為に暗躍してたみてーだからな」
「そうか。そういえば前も……」

 以前、海戸を襲撃した際もそんな節の事を話していた。
 そうヒナタは回想する。
 つまり、今回レンが戦ったのは、アンカが求めていた力の到達点。それが、ステラアームドの力なのだろう。

「……ぐっ」
「レン!?」

 がくり、とレンが膝をついた。
 ヒナタがすぐさま支える。
 肩で息をしており、やはり決闘空間でのデュエルの反動からか、激しく魔力を消耗しているようだった。

「キングの仲間らしき奴が現れて、一旦デュエルは中断された。どうやら、しばらく僕らに襲い掛かるつもりはない、とそいつは言っていたが……すぐさま貴様らにも連絡を取ろうと思った。しかし——」

 すっ、と彼は自分のスマートフォンを見せる。
 見れば、ビリビリ、と火花を放って動かない。

「どうやら、恐ろしく強力な電磁波でも放っていたのだろうか。これが使えなくなってしまってな」
「電磁波……ちょっとそのスマホも、調べさせて貰うぜ」

 レンが取り出したそれを、フジはひょい、と手に取る。
 
「レン、休むんだ。そろそろ限界が来てんだろ」
「……ああ、そうさせてもらう。済まない」
「レンが謝る事ないわよ。あんたが無事だっただけで、十分だわ」

 ヒナタに肩を貸してもらい、レンはホールから出る。
 その様子を見ながら、フジは溜息をついた。
 
「……どうやら、此処最近イギリスで観測されていた星のカードの正体も、そいつで間違いなさそうだな。コーネリアにも連絡しておかねえと」
「コーネリアに、ですか」

 少し、ノゾムが険しい表情を見せる。
 あの嫌な性格をした女の事を思い出したのが、気に食わなかったのだろう。

「……あいつも、色々あるんだよ。今じゃ、義妹もいるしな。回りを守るだけで必死になってるんだ」
「義妹、ですか」
「ああ。あいつがなんで、『遊撃調査隊(クリーガー)』に入ったのか。そして、何故あんなに戦う事に必死になってるのか——いずれ分かる」



 ***



 ベッドに突っ伏しながら、レンは1人考えていた。
 邪悪龍の事よりも、あの少女の事だ。
 ——断れなかった。  
 あんな笑顔を見せられて、誘いを断ることなどできるだろうか。レンにはあの状況で、平静を保ちながら、断る文句を考える事などできなかった。
 せめてと考えて、アヴィオールにあることを頼んだところまでは良かったが……。
 ——以前に、ヨミの所為でそっちの性癖に落とされたことがあったが……まさか、天然でその気があるんじゃあるまいな、僕は。

『残念ながら、クリーチャーにも人間にも可愛いは守りたい、可愛いは正義という本能は少なからずあるのですよ黒鳥レン。守りたいこの笑顔、って奴ですねえ。その時の貴方の判断は別におかしくはないですよ多分』
「別にそういうのではない、しばくぞアヴィオール。だが、僕に関わったがばかりに、シャノンが巻き込まれないか……それだけが心配なのだ」
『そうならないように、貴方なりに策は尽くしたんじゃないですか?』
「……まあそうだが」

 そういえば、あの少女は。
 自分の事など忘れてしまったあの少女は、今はどうしているだろうか。
 もう、クリーチャーの事とは無縁で平穏な生活を送っているのだろうか。
 ——シャノンには、何も起こって欲しくはないのだがな……。



 ***



「……分かりました。気を付けます」

 受話器に耳を当て、彼女は至って平静とした様子で受け応える。

『それはそうとだな、コーネリア。以前俺が言った事、覚えているよな? テメェの持っているカードの件だ』
「……」
『そいつは危険だ。お前が持ち続けているならば、よりお前を侵食する諸刃の剣だぞ』
「……モロハノツルギ……持てば自らも傷つけるという意味の日本の諺、ですか。ですが、同時に強力でもあるということ。今の私には、これが必要です」
『適合者じゃねえんだぞ、テメェは』
「暁ヒナタも、白陽を所持している。貴方達日本人の言っている事は、矛盾だらけです」
『奴は元々が——』
「——もう良いでしょうか? いずれにせよ、これにだけは干渉しないでほしい。私が持てる、唯一の武器なのだから」
『……仕方ねえ。だが、他に適合者が現れれば——』
「その時は、その人に渡すつもりです。が、それは今じゃありません」

 彼女は、それを握り、言った。
 如何なる魔物も切り裂き、天さえも貫く無銘の剣聖——



「——それまでに現れなければ、邪悪龍は私がこのカードで葬ります」

Act4:増殖 ( No.431 )
日時: 2016/11/06 15:34
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: wJNgr93.)

 此処数日続いている日本、いや鎧龍チームの遠征であるが、彼らのスケジュールは決して楽なものではない。
 1日のうち、5時間近くは研究や練習であるが、残りは学校で授業を受けられない彼らに通信で授業を行うといった対策がなされていた。
 また、自学自習の時間まで取られているという徹底っぷり。
 さて、何が言いたいかというと、彼らのスケジュールのそれは、下手したら一般の中学生のそれよりも過酷なものになってくるのである。なんせ、D・ステラの後には定期考査もあるのだから。
 そして、当の本人らからすれば、世界の命運がかかっているやもしれない状況でもあるために、それどころではないのにそれをおくびにも出せないジレンマ。
 つまり——試合の直前でもない限り、日曜はできるだけ休日が設けられていたのである。
 が、しかし。

「……一応、念には念を押す。邪悪龍の連中が何をやっているか分からんし、出来るだけ集団で行動しろ。というか、イギリスで何か異変がないかパトロールしろって意味合いもあるからな」

 結果。自由行動(という名の警備活動)になってしまっていた。
 各々、異変が起こっていないか、2人以上で行動し、街を巡回することになったのである。

「……まあ、出ちゃった以上は仕方ないっすよね……」
「何か起こってからじゃ遅いですから」
「ああ、貴重な外出時間が……」

 ノゾムはがっくりしたような表情を浮かべた。
 しかし、敵がレンの前に現れたというのは、一大事である。
 呑気に遊んでいる暇など最初からあるわけがなかった。

「邪悪龍……鳳凰座のソウルフェザーに賢王座のケフェウス、か……厄介な事になったな」
「……そう、ですね」

 ホタルもヒナタに同意するように、不安そうな声を押し出した。
 
「それでは、一応二手くらいに別れて行動するか。そうすれば危険も少なくなるだろう・残りは各自で決めろ」
「適当だなあ!」
「じゃあ、取り敢えずあたしとヒナタで——」
「……いや、俺はノゾムと行動する。コトハはレンとホタルと一緒に行動してくれ」
「ちょ、何で!?」

 明らかに不服そうにポニーテールが揺れた。
 呆れたように、そしていつになく真面目な表情でヒナタは理由を説明することにする。

「おめーの場合、デートだの何だの言って脱線しかねねぇからな。そもそも、俺は今日は観光気分なんぞじゃねえ」
「ひどい! 幾らあたしでも——」
「十分に有り得るっすね」
「最近の如月先輩は浮かれすぎかと」
「う、浮かれてないからね!?」
「……つーのは半分冗談だ。俺的にクリーチャーの組み合わせを考えたんだよ。白陽とニャンクスだと、どっちも前衛には向いてねえタイプだからなあ」

 海水浴場での戦いを思い出す。彼らの戦い方は、白陽が一応槍を扱えるという程度で、あとは似通っている。いずれも魔力を使った飛び道具を得意とする戦法だ。
 しかも、彼らは共に呪術と魔法といったように戦い方が似ているため、それらに耐性がある組み合わせだと、途端に突破が困難になってしまうのである。

「英雄5体の戦い方を分けると、白陽とニャンクスが呪文主体のスペルキャスタータイプ。んで、クレセントとハーシェルが肉弾戦主体のファイタータイプ。そしてアヴィオールがどれもいける万能タイプだ」
『確かにのう。アヴィオールならば、鎌でもガンブレードでもスペルでも何でも使えるわい』
『まあ、器用貧乏なんですがねえ。それは置き、良い戦術眼ですよ暁ヒナタ』
「RPGで培ったいーかげんな戦法だけどな。でも、できるだけ、クリーチャーは速攻で倒せるに越したことはない。決闘空間に引きずりこまざるを得なくなったら、それまでだけどできるだけのことはしなくちゃな」

 自嘲気味に言うアヴィオール。同時に、ヒナタの考えを一定は評価しているようだった。
 が、それもRPGゲームで培ったものというものに、全員は難色を示す。
 しかし、それまでであった。 
 言っていることは至極合理的である。

「だから、二手に分かれるにしても、俺とノゾム、そして連携を人数でカバーするためにコトハとレンとホタルで——」
「いや、三手だ」

 今まで何も言わなかったレンが口を開く。
 それに全員は驚いたような表情を見せる。

「——今回の自由行動、最初は僕は1人で行動する。用が済んだら、またそちらへ合流する——ダメか?」
「……え、おめーそれって……いや、何で——」
「レン先輩、武闘先輩も言っていたじゃないですか! 1人は危険だ、って!」
「確かにそうだ。例えクリーチャーを従えていても、1体よりタイプの違う数体が同時に行動していた方が死角は少ない」
「な、なんだよ分かってんじゃねえか。それに、お前は昨日襲われたばかり——だから猶更コトハやホタルと行動した方がいいだろ。それか、編成を変えるか——?」



「だが断る」



 すっばり、とレンは言い切る。
 こうなってしまった彼は梃子でも動かないことはヒナタもよく知っていた。
 しかし、普段は規律にもうるさく、和を乱すことには感心しない彼が何故こんなことを言い出したのか謎である。

「……何、用を済ませたら貴様らと合流する。それではダメか?」
「ま、まあ、時間と場所をちゃんと指定してくれるなら……」
「では、決まりだな。安心しろ。クリーチャーがいないかどうかは、しっかりと注意するしアヴィオールにも監視させる。問題ないだろう」
「フジ先輩、いいんですかぁ!?」
「……おい黒鳥。今回は少し看過出来ねえなあ。何があったのか正直に話してみろ?」
「……申し訳ありません」
「……まあいいか」
「いや、それでいいんすか」

 呆れたようにいうノゾム。
 だが、困ったようにフジもいう。

「まあ、こいつなりに考えがあるみてーだし、英雄の中でもアヴィオールは万能だし……別に良いんじゃねえの、とだけ」
「感謝します」
「まあ、テメェの実力を認めてのことだよ、黒鳥。危なくなったら、すぐさま逃げるこったな。くれぐれも無茶はするなよ」

 念を押すように言うフジ。精神的に脆いところがある彼を気遣ってのことだろう。見透かすように、彼の瞳を見つめている。
 その眼力で、自分の心臓を握りつぶされるように感じたレンであったが——

「——はい」

 ——いつも通りの仏頂面で、至って平静を装い、答えたのだった。


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