複雑・ファジー小説

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新任の養護教諭、香先生
日時: 2016/09/04 13:39
名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)

 こんにちは  または久しぶりな方もいるかもしれませんね。

 奈々化です。パソコンの調子がいいので、このたび再開することにしました。

 さて、同じ題名ではだめだということで、似ている題名で書かせていただくことにしました。内容も頭からまったく変えてしまったので、前作の小説の内容は忘れてください。
 
 また保健室ネタ?!と思われるかもしれません……ですが、またこれから宜しくお願いいたします。


Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.361 )
日時: 2016/12/02 21:38
名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)

 菜月side

 「まぁ・・・何ですの、これ?」

 母は怪訝(けげん)そうに顔を歪ませた。 が教室を見回し「あ〜」と納得したようにうなずいた。

 「今日、面談の日でしたのね」と、私達のもとに歩いて来る。

 「でも、どうして保健室の先生がおられるのです?」と、母は横田先生の正面に立った時、首を傾げた。

 「こういうのって、普通、副担任の先生がご一緒じゃありません?」

 「あ、お気になさらず」 三神先生の言葉に「はあ・・・」とまだ不思議そうにしていた母だったけれど、椅子に座るよう促されたので、私の隣の席に着いた。 私達、三人も席に着く。

 「では、宜しくお願いします」

 横田先生が号令のような言葉をかけたので、三神先生と共に軽く頭を下げた。

 「最初に言っておきます」と横田先生が、真っ直ぐに母を見る。 「これは、面談ではありません。 ただ、昨日、今日の本居 菜月さんの様子を見て、一度お母様とお話をした方が良いのではないか・・・、と、担任の三神先生と相談して決めただけのことです」

 すると、ずっと不思議そうな顔をしていた母が「そうでしたの。 納得しました」と言った。

 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.362 )
日時: 2016/12/03 21:50
名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)

 香side

 「でも、別に話ある必要は無い、と私は思うのですが」

 「どうしてです?」

 「私は母親として、この子を大切に育ててきましたから。 教育の仕方は、家庭それぞれでしょう?」

 「否定しないでくれ」と目だけで告げる。 私は目をそらさず言う。

 「ですが、昨日、本居さんから聞いた話では、お母様の出張先に、学校から帰ってから何時間勉強したか、送るというようにしているそうですが」

 「子供に勉強の習慣をつけさせるには、こうするのが一番と、この子が高校生になった頃から始めたことです。 大きくなってきて、十分に一人で留守番できるようになったということで出張が増えました」

 「確かに親として、自分がいないときにちゃんと勉強しているか、気になるのはよくあることだと思います」

 私の言葉に「そうでしょう」と、那弥子さんはとても嬉しそうに言った。

 「昨日、出張に行く前、本居さんに手紙を置いて行かれましたよね?」

 那弥子さんは「どうしてそんなこと知ってるんですか?」と目を丸くした。 私は白衣のポッケトから、封筒を取り出した。

 「昨日、校庭に倒れていた本居さんが持っていたんです。 雨に濡れた校庭の土によって、文字が滲んでいましたが、三神先生に解読してもらい、勝手ながら読ませていただきました」

 「菜月」と那弥子さんは、本居さんを見る。本居さんは俯いて、前髪で顔を隠した。

 「まぁ、手紙のことをご存じなら、私も三神先生に聞きたいことがあります」

 急に名前が挙がり、安佐子は顔を上げた。

 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.363 )
日時: 2016/12/03 21:56
名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)

 安佐子side

 「な・・・何でしょうか?」

 「テストが近いと言うのに、この子、最近学校から帰って来るのが遅いように思うのですが。 この子は学校で何をしているのか、ご存じありませんか?」

 「え、っと」

 本居さん・・・もしかして

 「お母様の方こそ、ご存じないのですか?」

 香が話に割って入る。 「何も」と短く答えた那弥子さん。

 「本当に忙しくて、話すこともできないので。 もし、何もしていないのであれば、早く家に帰って勉強をと思うのですが」

 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.364 )
日時: 2016/12/04 11:58
名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)

 安佐子side

 「えっと、本居さんは三年一組の副委員長でして」

 「そのことは知っています。 でも、いくら委員の役割があると言っても、七時過ぎなんて、遅いです」

 私は黙って那弥子さんを見る。

 「これでは受験に十分に備えられません。 クラスの子に推薦されてか、この子も私との約束を忘れて、引き受けざるを得なかったのではないでしょうか?」

 「違う」

 本居さんが叫んだ。 「私は」と何か言いかけたものの、言葉は続かず・・・。

 (あ…、もしかして)

 「本居さん。 この前から、放課後に私を呼んで、何か話そうとしていたじゃない? それって、もしかしてこの事?」

 本居さんは、小さくうなずいた。 それを見た那弥子さんは「あら」とちょっと驚いた声を上げて「話そうと思っていたのね」と笑った。

 「ごめんなさいね。 私、藤井さんの推薦を易々(やすやす)と」

 「いえ」とまた俯いた本居さん。

 「断っても良かったのよ?」

 「・・・三神先生は、長瀬君にしか、そう言っていたので。 てっきり私には拒否権はないんだ、って思っていました」

 「あー、あれは。 長瀬君、本気で嫌そうに見えたから。 私が最初に断る場を与えていなかったのね」

 私も俯いて、膝に置いた手を見つめた。

 「もう・・・今更って感じですよね」

 「そうね」と私は那弥子さんに視線を移す。

 「お母さんのお気持ちはわかります。 ですが、副委員長の変更というのは、もう厳しいと思います」

 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.365 )
日時: 2016/12/09 19:29
名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)

 菜月side

 どのくらい時間が経っただろう。 しばらく、全員で沈黙した。

 「そうですか」

 突然、母がそうつぶやいて、椅子から立ち上った。 私の肩に手を置いて「帰りましょう」と腕を掴んで私を立たせようとする。

 「痛っ」

 そううめいた私に「その掴み方、やめてあげてください!」と三神先生が立ち上がった。

 「本当に、これ以上は何もお話しする気はありません。 帰らせていただきます」と母が一歩、歩き出した時。

 パーン   そんな音が、教室にこだました。

 「香」と三神先生が横田先生に近づく。 

 (今の音って)とゆっくりと視線を下にやる。 私の目に、頬を押さえて床に座り込んだ母の姿が映った。

 「お子さんの前です。 本当は遠慮したかった。 腹を蹴っても、顔に一発ストレートパンチでも良かったんですけど・・・。 大目に見て平手打ちで良しとします」

 「なぜ、私が平手打ちされなければならないんです! 私は何も間違ってない!」

 母はふらふらと立ち上がりながら、声を張り上げた。

 そんな母の言葉を「間違っています!」と、横田先生が一際大きな声で断言した。

 「あ、あな・・・、あなたのような、ただの保健室の先生に何がわかるというんです!」

 母も負けじと声を張り上げた。

 「ただの保健室の先生ではありません」

 三神先生が言った。 「香は」と何か続けようとしたが、横田先生に肩を掴まれたのでいうのをやめた。

 「一つ聞きたいことを思い出しました」

 横田先生が一歩母に近づいた。 


 


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