複雑・ファジー小説
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- 新任の養護教諭、香先生
- 日時: 2016/09/04 13:39
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
こんにちは または久しぶりな方もいるかもしれませんね。
奈々化です。パソコンの調子がいいので、このたび再開することにしました。
さて、同じ題名ではだめだということで、似ている題名で書かせていただくことにしました。内容も頭からまったく変えてしまったので、前作の小説の内容は忘れてください。
また保健室ネタ?!と思われるかもしれません……ですが、またこれから宜しくお願いいたします。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.141 )
- 日時: 2015/04/04 08:41
- 名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)
安佐子side
トュルルルル トュルルルル トュルルルル
「ふぁ〜〜 え、電話、鳴ってる? 今、行きまーす」
私は、階段を降りて、急いで電話の受話器を取った。
「はい、三神です。 あ、はい…そうですけど? えっ! そ、そんな…こと…。 分かりました。 とりあえず、早いうちに行きます!」
私はそう言って、電話を一方的に切った。 が、信じられなかった。
「錦さんがいなくなったなんて……」
花side
ブーーーー ブーーーー
(え、何?)
突然の何かの揺れに、私は「うーん」と目をこすりながら体を起こした。 発信者の名前は、錦 美羽だった。
「もしもし、美羽!」
私は声を張り上げて、美羽に問いかけた。 でも、何の返事もない。
「???」と思いながらも「おーい、美羽?」ともう一度、問いかけてみた。 すると「ハハハハハ、どうも。 いつも美羽がお世話になって」と、男の声が聞こえてきた。
「!!!」 私は咄嗟に電話を切った。
「な、何なの、今の? ぎゃっ!」
また電話がきた。 錦 美羽と出ている。 でも、相手は美羽じゃない。 でも、さっき ”いつも美羽がお世話になって” と言っていた。
(もしかして)
私は思考を巡らせているうちに、一つの答えにたどり着いた。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.142 )
- 日時: 2015/04/05 13:43
- 名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)
香side
「あ、横田先生、おはようございます」
私が職員室に入って、席に着いてすぐ、寺島先生が近寄って来た。
「おはようございます」
「あれ? 今日は三神先生と一緒じゃないんですね。 池林校長から、幼馴染だと伺いましたが?」
「小学校からの付き合いです。 大学は違います。 それに、私はなるべく歩いてここに来るようにしているので」
「そうなんですか。 でも、おかしいですね? もう十分で朝礼が始まるのに…まぁ、横田先生が来たってことは、じきに来られるでしょうし、のんびり待ちますか。 では」
寺島先生は、そう言って自分の机に戻って行った。
(今日は遅刻か? なら事前に連絡があっても……)
人が心配しだすと、親のように心配してしまう。 まぁ、あんなペラペラ女だが、安全を確かめなくては、こっちの腹の虫がおさまらない。
私は、職員室から近くの階段に行き、背中を壁に当て、安佐子の携帯へと発信した。
安佐子side
「はい…三神です」
「声が掠れてるね。 今、起きたんですか?」
うっ! このちょっと冷めた言い方。 香だ。
「香? 昨日の今日で、よくも私にそんな口きけr/」
「遅刻寸前の教師が、何を偉そうに語れるの?」
「???」
「今、絶対「遅刻ってどこに?」って思ったでしょ」
「うん」
「今、どこ?」
「病院に行く途中」
「錦さん?」
さすが香だ。 察しがいい。
「そうなんだけど。 今朝、看護師さんが錦さんの病室を覗いたら、いなくなってたんだって」
「なるほどね。 ついに、治人が行動に出たのか」
「え…。 香、まさか、錦さんを病院から連れ出したのは、治人さんだと言いたいの?」
「これまでからして、その線が一番しっくり来る。 まぁ、ちゃんと理由があると思うよ? じゃあ、あんたが遅れる理由が分かったから、ひとまずいいとする。 適当に先生方には説明しておくよ」
そう言って「あ! え! ちょっとm/」と、何とも言えない曖昧なタイミングで、香に電話を切られてしまった。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.143 )
- 日時: 2015/04/06 15:49
- 名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)
香side
(肝心なことを、聞きそびれた)
私は朝礼が終わった後「はぁ〜〜」と深いため息をついた。
聞きそびれたこと……それは
”古志野さんがこのことを知っているか”と言うものだ。
と、頭を抱えた時、安佐子の机にある電話が着信した。 私は迷わず、電話の受話器を取った。
「はい、伯流高校の横田です」
職員室にいた先生、全員が、私に驚きの視線を向けた。
「え、あ、あの…古志野 花の父、新です。 えっと、確か花の担任は三神先生では?」
「三神はただいま、急用でまだ学校にはいません。 もしかしたら、今日一日、学校には来ないかと思います」
「あ、そうなんですか。 困りました。 全くあの子はどこに行ったのy/」
「古志野さんがいないんですか?!」
私は思わず声を上げた。 職員室にいた先生たちがまた、驚きの視線を向ける。
「ええ。 私が起きたら、机に「何か食べてね」と書いただけのメモがあって……。 とりあえず、学校に電話をと思いまして……。 すみません。 担任でもないのに、話を聞いてもらって」
「いえ……」
古志野さんは、知っていたんだ。 でも、安佐子は家の電話番号も、携帯の電話番号も知らないだろう。
(誰が、古志野さんに錦さんのことを……)
「あ、私、これから仕事なので……では」
「はい。 欠席届は、副担任に出しておきます」
私がそう言った後「はい」と小さな返事が返ってきた。 その後、電話は切らた。
「古志野がどうかしましたか?」
寺島先生が駆け寄って来た。
「はい」と私は言葉を区切り「季節外れの、風邪だそうです」と付け加えた。
「風邪…ですか」 寺島先生は納得いかないと、顔をゆがめた。 が、「あ、そうだ。 寺島先生」と、私は彼の反応を無視して、彼に呼びかけた。
「あの子担当している教科、すべて、寺島先生の数学に変えてもいいですか?」
「……はい!?」
「いいんですか! ありがとうございます。 書き直してきますね」
私は「え、あ、ちょっと! 私はいいなんて、一言も」と慌てる彼をまた無視して、チャチャチャと書きかえた。 そしてついでに…
「保健室、閉室。 っと」
私はのびのびと、職員室を後にした。
花side
(お父さん、ごめんなさい……三神先生、ごめんなさい。 そして……美羽、ごめんね)
”今、美羽と一緒に、ある場所にいるんだ”
「ある場所?」
電話の主は、治人だった。
「ある場所と言われては、どこにいるのかわかりません」
”そうだね……じゃあ、こう言おうか? 僕たちの幸せが断ち切られた場所、てね。 時間の許す限り、待つことにしよう。 では、その時まで”
そう言って、電話は切られた。
”僕たちの幸せが断ち切られた場所”
ますますわからない。 でも、行くしかない。 と、家を出たんだけど……。
(誰か答え教えてーーーー)
頭が爆発しそうです。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.144 )
- 日時: 2015/04/06 19:15
- 名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)
訂正です。
寺島先生の教科は英語でした。
すみませんでした。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.145 )
- 日時: 2015/04/11 10:39
- 名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)
安佐子side
「やっぱり、学校に自分で、今日は行けそうにありませんって、電話すべきだった」
私は車の中で、そうぼやいた後、深くため息をついた。
赤信号に引っかかって、もう3分くらい経つ。
(横の信号は長いわねー。 急いでるのに……ん?)
私は向こうから、見覚えのある制服を着て走ってくる少女を目を細めて見た。 その少女が近づくにつれ、はっきりとした輪郭が見え、その少女が古志野さんであることを認識した。
「古志野さん!」と、私が車の窓を開け、そこから手を思い切り伸ばし、大きく振った。 古志野さんはすぐに気づき、こちらに向かって、ちょっと速く走って来た。
青信号になる前に、古志野さんは車の助手席に乗り込んできた。
「三神先生! どうしたんですか?」
「ちょっと、病院に」
「ですよね……。 美羽がいなくなったこと、担任の先生に知らせない方が変ですよね」
「一体、誰が錦さんを……」 (ん?)
「古志野さん?」
私は耳を疑い、古志野さんを見た。 「はい?」と古志野さんも、私を見る。
「錦さんが、病院からいなくなったこと……先生、話したっけ?」
「いえ。 治人さんが美羽の携帯から、私の携帯にかけてきたんです」
「え!」
私はびっくりして目を見開いた。 うっかり、赤だった信号を無視して突っ切ってしまった。
「いつ?!」
「今朝です」
「もしかして、二人は一緒にいるの? 何か話した?」
「いえ。 私は何も……。 ただ、気になることを言っていました。 それを、三神先生と横田先生に相談しようと、学校に行く途中でした」
「そうだったの……。 で、気になることって?」
花side
「僕たちの幸せが断ち切られた場所」
私はポツリとそう言った。 三神先生の顔を直接見なくても、難しい顔をしているのが分かる。
「最初、彼は ”ある場所にいる” と言ったんです。 それに私が「ある場所ではわかりません」と返したら、ヒントだと言って、その言葉を……」
「幸せが、断ち切られた…場所」
三神先生は、しばらく「うーーん」と唸った後「ねえ?」と切り出した。
「錦さんたちって、昔からあの家に住んでるの?」
「えっと、確か…小学校に近い所にってここに来たんだと思います」
「その時、まだ治人もいたのよね?」
「すみません……いつ離婚したのかは、分からなくて。 でも、小学校の親子参観に治人さんが来なくなったのは、小学二年生の時だったと思います」
私は、三神先生の質問に丁寧に答えたつもりだった。 でも、なぜか返事が返って来ない。 不安になり「あの」と声をかけた、その時、三神先生が「なるほど。 わかったわ」と真っ直ぐ前を見て笑った。
「何が分かったんですか?」
「治人と錦さんのお母さんが別れたのが、錦さんが小学一年生の時だったとすると、ここに引っ越して来た当時、まだ治人は一緒に暮らしていたのよ」
「んー、じゃあ ”僕たちの幸せが断ち切られた場所” って」
「今の錦家」
その言葉が、揃って私たちの口をついて出た。
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