複雑・ファジー小説
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- 新任の養護教諭、香先生
- 日時: 2016/09/04 13:39
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
こんにちは または久しぶりな方もいるかもしれませんね。
奈々化です。パソコンの調子がいいので、このたび再開することにしました。
さて、同じ題名ではだめだということで、似ている題名で書かせていただくことにしました。内容も頭からまったく変えてしまったので、前作の小説の内容は忘れてください。
また保健室ネタ?!と思われるかもしれません……ですが、またこれから宜しくお願いいたします。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.336 )
- 日時: 2016/09/25 20:58
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
香side
きっと、安佐子の車で移動していた時から、気になっていたけど聞けなかったんだろうな。
着いたことだし、教えてあげようと”理由”を言うと…「ダメです!」と本居さんの返事は即答だった。
「でも、家に帰ったら勉ky/」
「母が心配します。 それにたぶん、今日のことを話したりなんかしたら…もう……」
「今日のことは、さすがにお母さんも、話せば分かってくれるわ。 ね?」
でも、本居さんは私の言葉に頭を横に振るばかり。
「昨日の夜、勉強しなかったことも…。 今日の授業に出席できなっかったことも…。 きっと、母を失望させてしまいます」
「そんな」
本居さんは壁に付けた背を、ズルズルと滑らせ床に座り込んだ。 その隣に私もしゃがむ。
ブツブツとつぶやくことをやめようとしない本居さんの肩に手を置き「落ち着いて」と優しく声をかける。
と、そんな時激しいノックの音が聞こえた。 かと思うと、病室の扉が開かれた。 そこには一人の女性がいて…
「本居 菜月がここにいると思うのですが?!」
本居さんのお母さんだった。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.337 )
- 日時: 2016/09/28 21:21
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
安佐子side
「ヤギたちがしばらく歩いた先には、広い草原が広がっていました。 ヤギたちはお腹いっぱい、草を食べました…とさ! はい、おしまい」
私は子供たちに通された小さな図書室で、ソファに座りながら一冊の絵本を読んだ。
一冊で満足してくれると思っていた、私が甘かった。
「一冊だけー?」 「もっとー」 「ねえ、あと一冊読んで!」
(ホント、誰か助けてーーー!!)
と私が心の中で叫んだ時「ダメです!」という叫び声が聞こえた。 香じゃなくて、本居さんの声のようだった。
何事だろうと、私はソファを囲むように座っていた子供たちをかき分けて、図書室の出入り口に急いだ。
そんな私を「あ、逃げた!」 「待て—」と子供たちが何人か追いかけてくる。 私も必死になって戸を開け、素早く閉めた。 でも子供たちはあっさりと戸を開けて「つっかまえたー♪」と私の肩を掴んだ。
それでも私は壁から顔を出し、小児病棟の入り口で話す二人の様子を伺った。
本居さんが香に何か言っているが、叫んでいるわけではないので何も聞こえない。
本居さんがその場に座り込むと、香も隣にしゃがみ込み彼女の肩に手を置く。
そんな時、戸が開かれ一人の女性が姿を現した。
「本居 菜月がここにいると思うのですが?!」
そう言った女性は、キョロキョロと病室を見回し始めた。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.338 )
- 日時: 2016/10/11 19:55
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
香side
「もしかして」 と、私は女性の正面に立った。
「本居 菜月さんのお母様ですか?」
私がそう言うと「あなた、誰なんです?」と、質問を質問で返された。 とりあえず「あ、すみません」とカバンから名札を取り出して「本居さんの通う高校で、養護教諭を務めております。 横田 香と申します」と、軽く会釈した。
「・・・本居 菜月の母、本居 那弥子(なやこ)です」と、しぶしぶという感じで、名刺を差し出して会釈した、本居さんのお母様。
「養護教諭と言いますと・・・、保健室の先生ですか?」
「ええ。 簡単に言うとそうですね」
私がそう言うと、那弥子さんの顔つきが少しずつ険しくなっていった。 そしてその顔を本居さんに向け「菜月、あなた!」と駆け寄って、本居さんの腕を掴んだ。
「保健室に通ったの!?」
すぐそばで会話をしているというのに、目を見開いて大声で本居さんに話しかける那弥子さん。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.339 )
- 日時: 2016/10/13 18:51
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
香side
「・・・痛い」
本居さんは小さな声でそう訴えた。 でも「通ったのね!?」と那弥子さんは叫ぶように言う。
「あの」
そんな二人の間に、安佐子が近づいた。 私と同じように「あなたは誰ですの?」と聞かれ、首にかけていた名札を見せた。
「担任でしたのね」と那弥子さんはうんうんと頷き「いつも、菜月がお世話になっております」と頭を下げた。
「いえいえ。 あ、どうぞもう、頭をお上げになって下さい」
そう言って、安佐子は那弥子さんの肩に手を振れた。 それにつられて、ゆっくり体勢を戻した那弥子さんだったが「今日は本当にすみませんでした」とまた軽く会釈をした。
「いえ、いいんですよ。 最近、本居さんは疲れがたまっているように思います。 どうか、今日はもうゆっくりとお家で休ませてあげて下さい」
安佐子の言葉に、那弥子さんは首を傾げた。
「確かに、学校から帰って来たら、その日のうちに宿題は終わらせるように言いますし、最近はテストも近いですから、しっかり勉強なさいとは言いますが。 何時間勉強するかは、菜月に決めさせていますので」
那弥子さんは言葉を区切り「そうよね、菜月」と本居さんの顔を覗き込む。 本居さんは無言でコクリと頷いた。
それを見た那弥子さんは「あの」と私たちに向き直り「もう、菜月と家に帰っても宜しいでしょうか?」と言った。 私たちが何か言おうと、おどおどしている間「行くわよ」と、本居さんの腕を引っ張る。 本居さんの小さな抵抗も構わず、安佐子がやっと「ちょっと待って下さい!」と声を発した時には、もう病室の扉は閉められていた。
追いかけようとした安佐子の肩を掴み「今日はもういいにしよう」と落ち着くように促した。
「あんたはとりあえず、学校に戻りなよ」と私は肩にカバンをかけた。
「香は戻らないの?」
「ちょっと寄って確かめたいことがある」
私は安佐子を置いて、受付に顔を出し、病院を後にした。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.340 )
- 日時: 2016/10/15 20:26
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
安佐子side
「まぁ、じゃあ戻りますか」
私は香が出てしばらくしてから、また騒ぎ出した子供たちを交わしながら病院を出て学校に向かった。
「ふー」とため息とともに職員室の戸を開けると、長瀬君がちょうど職員室を出ようとしていたらしく戸の前に立っていた。
しばらくお互い立ち尽くしていたが「ああ、邪魔しちゃってたね」と後ろ足で廊下に戻った。
「いえ、別に」と俯きかげんで職員室を出て廊下を歩きだした長瀬君。 でもすぐに振り向いて「あの」と声を発した。
「何?」
「・・・さっきの休憩時間下に降りたら、保健室が真っ暗だったんですけど」
「あー、それは・・・えーっと」 (何て言えばいいんだろう?)
私は困った末に「なはは」とごまかそうとした。
すると長瀬君は「・・・答えにくいこと聞いてしまって、すみませんでした」と頭を下げ、足早に学棟の校舎に帰って行った。
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