複雑・ファジー小説

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新任の養護教諭、香先生
日時: 2016/09/04 13:39
名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)

 こんにちは  または久しぶりな方もいるかもしれませんね。

 奈々化です。パソコンの調子がいいので、このたび再開することにしました。

 さて、同じ題名ではだめだということで、似ている題名で書かせていただくことにしました。内容も頭からまったく変えてしまったので、前作の小説の内容は忘れてください。
 
 また保健室ネタ?!と思われるかもしれません……ですが、またこれから宜しくお願いいたします。


Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.321 )
日時: 2016/08/21 13:46
名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)

 美羽side

 「おはよう」

 私は花と仁井奈に声をかけ、スクールカバンを自分の机に置き「暑い!」と下敷きをバウバウさせ顔に風を送る。

 「朝練? お疲れ〜」とのんびり手を振る花に対し「朝練には参加するんだ」と母と同じことを言う仁井奈。 思わずムスッとなり睨み返す私を見て、花が仁井奈に「しー」と注意をする。

 私はそんな仁井奈を放って「さーて、一時限目はー」と、スクールカバンを開いた。 そんな時、後ろから泣き声のようなものが聞こえて、「仁井奈が泣いてる」と焦り振り返った。

 でも、違った。 ずっと後ろの席に、女子が集まっているのが見える。 花たちも近づいて行くので、私も下敷きを片手に仰ぎながらついて行く。

 男子は「え、ウソだろ?」 「あの藤井が!?」 「なんだ、なんだ?」と廊下側に固まり、私たち女子と距離を取る。
 
 そんな男子に向かって「あんたたちが何かしたんじゃないの?」と女子の一人が言った。 それについて、ギャーギャー言っている男子。 中にはこちらに近づき「俺何もしてないよな?」 「俺も心当たりない」と藤井さんに確かめに来る男子もいた。

 私は仁井奈と揃って、そんな男子を追い払い藤井さんに向き直る。

 おそらく彼女のこんな姿を見たのは、誰もが入学して以来初めてだろう、と思う。

 だって、あのサバサバしてて、きっぱりしてて、どすの利いた(きいた)声を発することもある藤井さんが、泣いているんだもの。

 「大丈夫?」 「歩、元気出して?」 「誰、西田? もしかして別のクラスの男子?」

 ひたすら泣いている藤井さんを囲む女子たちの、さまざまな慰めの言葉や、質問が飛び交う中、私は一人、菜月の席を振り返った。

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.322 )
日時: 2016/08/22 18:46
名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)

 美羽side

 朝礼開始のチャイムまで、後5分。 今もぽっかりと空いている、私の右隣の席。 そんな私を見て「そういえば、本居さんいないね?」と仁井奈が言った。

 「あ、それでかー」と誰かが言い、「どこか落ち着かないと思ってたんだよね〜」 「私、まだ姿見てない」など、皆口々に言い始めた。 花も、隣に立っていた百合と「どうしたんだろうね?」と、顔を合わせる。

 そこから話題は自然と、菜月がいないという話にすり替わった。

 「副委員長、しっかりー」 「遅刻か?」と一瞬、菜月を咎める(とがめる)ような言い方をする人や、「誰だって、体調悪い時あるって」 「そんなこと言っちゃダメでしょ!」と、心配したり、注意する人もいる。

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.323 )
日時: 2017/05/28 14:13
名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)

 美羽side

 クラスメイトの騒ぐ声を聞きながら、私はまだ菜月の席から目を離せないでいた。 いつもいることが当たり前だから、私もどこか落ち着かない。 そんな時「美羽?」と、仁井奈に腕を掴まれた。

 「え? な、何?」

 仁井奈は「もしかして」と言った後、「何か知ってるの?」と若干声を小さくして続けた。 花につられて百合、藤井さんもチラッとこっちを見た気がした。

 「い、いや・・・私は」と固まっていると「はーい、皆おはよう」と教室の一番前の戸から三神先生が入って来た。 すると教卓に着くなり「えー、今日は朝礼を省いて、早速一時間目に入ります」と出席簿を開き「皆、いるよねー」と目で私たちの人数を数える。

 「はい、じゃあ長瀬君、号令お願いしまーす」

 途端に名前を呼ばれ「はっ」となった長瀬君は、ささっと動き出した。 それを見て、皆もそれぞれ自分の席に着く。

 今、三神先生は横田先生と、菜月について話して来たのかな?

 すぐに授業を始めたのって、皆に菜月の事を質問させないため?

 それとも、あれはただの気絶じゃなくて、菜月はやばい状況にあるってこと?

 私は次から次に浮かぶ疑問を心の中にとどめ、開いた教科書にぼんやりと描かれた月の絵を見つめた。




 安佐子side

 やっぱ、ちょっと強引だったかな? 始業前に授業始めるなんて…。

 まだ不思議そうにしてる子もいるし。 私を見つめる藤井さんと顔合わせられない!

 一時限目は、教卓に広げた教科書を見つめ、黒板にはほとんど板書せず終わった。

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.324 )
日時: 2016/08/25 09:05
名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)

 花side

 一時限目の終了を告げるチャイムが鳴った途端。 三神先生は何かに弾かれたように「終わりの号令は省きます」と早口に言って教室を出て行った。

 明らかにどこか変だ、とクラス全員が思い始めた。

 いつもなら、授業が長引いて終わったとしても、必ず終わりの号令もかけさせる三神先生が…。

 ふと、なーちゃんの席に目をやる。

 「何があったんだろう…」

 誰にともなくつぶやいた私の声に、美羽が小さく反応した気がした。 「美羽?」と私が近づくと、美羽は自分の机を思い切り両手で「バン!」と叩いて立ち上がった。 

 美羽は軽く後ろを振り向くようにして「ごめん」と小さく謝り「今はなんて言っていいか、分からないから…、ごめん」

 そう力なく言って、教室を出て行こうと戸に近づく美羽の背中に「どこ行くの?」という言葉がかけられない。

 そんな私の視界に、男子が一人、美羽の後を追って教室を出て行くのが見えた。

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.325 )
日時: 2016/08/25 16:06
名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)

 香side

 一時限目が始まり、廊下が静かになった。 クーラーの音がよく聞こえるようになり、どこかボーとしてしまう。

 本居さんは相変わらず目を覚まそうとしない。 でも時々「うー」と唸り出したり、布がこすれる音がするから、寝返りを打っているんだと分かる。 まぁ問題なのは、その数の多さ。

 さすがに心配になって「本居さ〜ん」 「大丈夫?」など声をかけてみたりしても、「うーん……う…」と唸り続けるだけ。

 もう少ししたら、目が覚めるんじゃないか?と思った時、チャイムが鳴った。

 その一、二分後「失礼します」と錦さんが入って来た。 わずかに開いていたカーテンの隙間に体を滑り込ませ、「菜月?」と心配そうに本居さんの寝ているベッドに、腕を乗せしゃがみ込んだ。

 そんな錦さんの姿に「錦さんは優しいね」と、私は独り言のようにつぶやいた。 すると錦さんは「そんなことありませんよ」とどこか照れながら、でも悲しげに小さな声で言った。

 「菜月と本格的に話すようになったのは、三年生になってからです。 それも、最初は私ばかりが話しかける状態で…。 でも、次第に菜月も自分から話題を出してきたりして。 今まであまり話したこと無かったんですけど、とてもいい子だな〜、って」

 錦さんが言葉を区切った。 私は「そうなの」と短く相槌を打つと、コクッとうなずき「でも、急に倒れたところを見て・・・、本当言うと、ショック大きかったです」と続けた。

 「菜月に比べたら、私の優しさなんて…」

 そう言って、握っていた拳を固くした。

  


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