複雑・ファジー小説
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- 新任の養護教諭、香先生
- 日時: 2016/09/04 13:39
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
こんにちは または久しぶりな方もいるかもしれませんね。
奈々化です。パソコンの調子がいいので、このたび再開することにしました。
さて、同じ題名ではだめだということで、似ている題名で書かせていただくことにしました。内容も頭からまったく変えてしまったので、前作の小説の内容は忘れてください。
また保健室ネタ?!と思われるかもしれません……ですが、またこれから宜しくお願いいたします。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.376 )
- 日時: 2017/02/03 21:27
- 名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)
プロローグ 長瀬side
今日は日曜日。 でも、俺は学校に行かないといけない。
委員の仕事、ではなく部活の試合があるから。
皆で集まってウォーミングアップをするけど、それより先に動いておきたくて、今一足先に学校に向かっているところ。
学校が近づいてきて腕時計に目をやる。 集合までまだ一時間半くらいある。 だから当然一番乗りだと思っていた。
でも、三年生の昇降口には、もう人がいた。
びっくりしたけど冷静に「おはよ」と声をかけた。 続けて「集合までまだまだ時間あるのに、早いな、菅。 なんで?」と聞いた。
彼は同じクラスで、同じサッカー部の菅 圭吾(すが けいご)。 高校に入ってからは、部活以外ではあまり話さなくなったけど、サッカーに関しては話が合う。
「別に。 皆で集まる前に、適当に体動かしたかったから」と、上履きに履き替えて歩き出した菅の背中に「偶然だな」と俺は、靴を脱ぎながら言った。
「俺もそのつもりで早めに来たんだよ。 一緒していい?」
それを聞いた菅は立ち止まった。 なかなか動かないと思っていたけど、ふと目をやった足元が小さく揺れていた。 彼なりに「早くしろ」と言っているのだろう。
俺は急いで上履きを履いて、菅に駆け寄り「サンキュ」と礼を言った。
「ああ」とかの一言も、頷きもしないで、自分の一歩前を歩き出した菅。 一見ツンとして見られしまいがちな彼だが、幼稚園から一緒の仲の俺は、結構いろいろな表情を知っている。
でも、今のツンとした態度がカッコつけてるって言う訳じゃない。 小学校で学年が上がるにつれて、落ち着いた性格になったんだと思う。
そんな昔のことを思い出していた俺に「なぁ」と菅が声を低くして切り出した。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.377 )
- 日時: 2017/02/06 11:05
- 名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)
プロローグ続 長瀬side
「ん?」
「・・・一学期が始まって、もうそろそろ三か月経つよな」
「ああ、そうだな。 なんだ? もう卒業が寂しいのか?」
「ちげーよ。 ほんとは何の話か分かってんだろ?」
少しこちらを振り返った菅が、鋭い視線を向けてきたので俺は「バレたか」と小さく笑った。
「話が核心に触れると、ごまかしたり話を逸らしたりするのは、お前の昔からの癖だったからな」と言って、また階段を上り始めた菅。
「さすが幼馴染だな」
「んなボケ、いらねーからさ」
そう話しながら、ひたすら菅について行くと、菅が三階の階段を上りきったところで俺を振り返って「階段、往復するけど?」と聞いてきた。
「いいよ」と答えた俺に「じゃ、お先に」と菅は、持って来たカバンをボフッと軽く投げて置き、その場で何回か足踏みをした後、今上がって来た階段を降りて行った。
数秒おいて、俺も同じようにして後に続く。
「アイツと連絡取ってるの?」
二階の階段を降りながら聞いてみた。 アイツ。 それが彼の言う話の核心。
「メールは時々してる。 でも、返信なし」
「そっか。 じゃあ、放っておいてほしいんじゃないか? 急に学校に来なくなったのは心配だけど」
「じゃあ、優からも一言言ってくれって」
と、菅は少し口調を強めて言うけど・・・一つ問題がある。
「そうしたいのは山々なんだけど・・・クラス違うからさ」
そう言った俺を、菅は階段の途中で立ち止まって、さっきよりも鋭い目つきで振り返った。
「それを知ってて俺はお前に相談したんだよ! クラスは違うけど同じサッカー部だっただろうが!!」
静かな校舎に、菅の声はよく響いた。 俺はしばらくして「いや・・・そんな怒んなくても」と、やっと声が出た。
「ごめん」と俺が謝ると、彼も「悪い」と小さく言って、また階段を降り始めた。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.378 )
- 日時: 2017/02/12 20:37
- 名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)
プロローグ続 長瀬side
「俺だって、なんとかしたいよ」
「・・・ほんとかよ」
菅は半信半疑に言って、階段の踊り場で立ち止まった。
「ほんと。 たださ・・・やっぱクラスの違う奴が何か言っても、って思うんだよ」
彼も彼なりに何かできないか考えたうえで、学級委員の俺を頼ろうとしているんだろうけど・・・。
「三組の委員長はともかく、副委員長の男子となら話せるんじゃないかって思ってたんだけど・・・。 意外と奥手なのな、お前」
その言葉に「ハハ」と苦笑いするしかなかった。 図星なのかもしれない。
「なんとかなんねぇんのかよ・・・クソ!」
そう叫んで、菅は拳を固く握った。
そんな姿を見て自然と頭の中で考えが巡って・・・・・・
そして思いついた。
「分かった! お前がどうしてもって言うなら、俺に考えがあるけど?」
「は! え、マジ?!」
菅が表情をパッと明るくした。
「でも上手くいくか」と俺は腕を組んだ。
「上手くいったら、ジュースくらいなら奢れる」と階段を降り始めた。
「ああ、サンキュ」と俺もついて行く。
それからはお互いに黙って、階段を上ったり下りたりした。 試合の時間が近づいた頃、校庭に行き、やって来た同学年の部員達にたった今着いたかのように振舞った。
サッカー部員全員が集まったところで、ウォーミングアップをして、試合の時間を迎えた。
本当はアイツも、今ここに一緒にいるはずだったんだよな。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.379 )
- 日時: 2017/02/25 10:59
- 名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)
安佐子side
「皆さん、おはようございます」
今日は七月最初の日。 全校朝礼で、池林校長の挨拶中です。
「早いもので、一学期が始まって三か月となりましたね。 一年生の皆さんは、もうすっかり学校にも慣れたことだろうと思います。 今月は文化祭、体育祭もあるので、頑張ってください」
あー、確かに。 今月、月末だったかしら。
そろそろ話し合いを始めないと!
「さて、先月。 と言っても、この前の日曜日ですが、サッカー部の試合がありましたね。 先生も観させてもらいましたが、すごかったですね〜。 後半戦の逆転は本当に見事でした」
ホー、逆転! ってことは勝ったってことよね? 確かうちのクラスでは長瀬君と菅君だったかしら。
「サッカー部の皆さん、お疲れ様でした。 皆さん、拍手」
池林校長の言葉に、教員、生徒の拍手が講堂に響いた。 そんな中、チラホラと照れたり、頭をかいたりしている生徒がいる。 たぶんサッカー部なのだろう。
それから後、いろいろな連絡があり、一時限目が始まる十分前くらいに全校朝礼は終わった。
一時限目、授業が無かった私は、自然と保健室に向かっていた。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.380 )
- 日時: 2017/03/11 21:51
- 名前: 奈々化 (ID: ZUrGQhyc)
香side
「ふぁ〜あ」
また、あくびが出た。 今朝からもう、何十回としている。 こりゃ駄目だ、寝不足だ。
後ろを振り向けばベッドがあるのに寝られないなんて・・・ここは地獄か! まぁ、これもそれぞれの部活の大会が終わるまでの辛抱なんだけど。
ふとカレンダーに目をやる。 「あと二つか」と、両腕を天井に伸ばした。
養護教諭・・・わかりやすく言うと保健室の先生、の仕事は、ただ保健室に来る生徒のケガの手当て、面倒を見るだけではない。
小学校の場合はどうかわからないけど、中学、高校の保健室の先生は、部活の大会に付き添って行くことがある。
それは私の中でも、すっかり恒例となってきたけど、高校生の大会は県外も多い。
今朝、土江先生に「養護の先生って、いろいろな部活の応援が出来ていいですよね〜」なんて言われたけど、付き添いは付き添いでいろいろ大変なのだ。
まぁ、今日から四日ほど通常勤務だし。 そろそろ仕事しますか。
そう思って私がパソコンを開いた時「しつれーい」と安佐子が入って来た。
「・・・何?」 無意識に低い声が出た。 かと思うと、またあくびが出た。
「まあ、大きなあくび」
「見るな。 てか、用無いなら出てって」
「ちぇっ、何さ。 部活の付き添いで疲れてるんじゃないかと思って来てあげたのに」
「元気そうだね〜」と安佐子は、すぐそばの長椅子に腰かけた。
「用が無いわけじゃないし。 聞きたいことあるし」
「だから、何?」
「昨日のサッカー部の試合にも付き添ってたんでしょ? どんな感じだったか教えて!」
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