複雑・ファジー小説
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- 新任の養護教諭、香先生
- 日時: 2016/09/04 13:39
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
こんにちは または久しぶりな方もいるかもしれませんね。
奈々化です。パソコンの調子がいいので、このたび再開することにしました。
さて、同じ題名ではだめだということで、似ている題名で書かせていただくことにしました。内容も頭からまったく変えてしまったので、前作の小説の内容は忘れてください。
また保健室ネタ?!と思われるかもしれません……ですが、またこれから宜しくお願いいたします。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.241 )
- 日時: 2015/09/27 19:34
- 名前: 奈々化 (ID: LU1dyaTr)
香side
(あれ、何かおかしい)
「粂山刑事、質問いいですか?」
「何だ?」
「さっきから、粂山刑事の話を聞く限り、まるであの女がまだ生きているということになる気がするのですが?」
「ああ、生きてるよ」
「え!」
「何だよ。 お前だって、あいつがここにはいないってことは知ってるとさっき言ってたじゃないか」
(と、いうことは?)
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.242 )
- 日時: 2015/09/28 11:55
- 名前: 奈々化 (ID: LU1dyaTr)
香side
「な、なんだか、混乱してきました」
私は頭を抱えた。
「俺だって、どういうことだって思ったよ。 当時、あの女は病院に運ばれた時点で、もう意識はなかっただろうに。 とんだ生命力だ」
確かに。 あの女が頭から血を流して動かなくなるのを、自分も小木沼も見ていた。
「でも、なんでお前は、奴がここにいないってわかったんだ? 本当ならその時、ものすごく衝撃を受けただろうに」
「……近所の人たちが、噂しているのを耳にしました。 でも、その時はひたすら嘘だ嘘だと自分に言い聞かせて」
「まぁ、奴が病院からいなくなったとは、ニュースにならなかったしな。 でも、病院は大騒ぎだっただろうよ」
「なんで、ニュースにならなかったんですか」
私は椅子から立ち上った。
「お前がまたアイツを狙うと思ったからな。 ただでさえ、真実を知ったうえで誤認逮捕みたいなことをしたんだ。 今はもうあの屋敷に住んでないんだろ? もう、お前も誰にもかばってもらえない。 それに、あの爺さんの思いを無駄にさせたくないからな」
粂山刑事はそう言って立ち上がり「今日はここまで。 ほんと、急に悪かったな」と茶室を出て行こうとした。
「待ってください!」
私の叫びに「ん?」と粂山刑事は顔だけ振り向かせる。
「私の母のことも、調べてくれているんですよね?」
「ああ。 だが、情報が少なくてな。 壁にぶつかる一方だ」
私は、今も母がどこかで生きていると信じている。 まさか、あの女まで生きているとは思っていなかった。
「お前……もう殺そうと思うなよ?」
私が足元から視線を上げると、粂山刑事の目が血走っていた。
「自信ありません」
私は目を反らし、怪しい笑みを浮かべた。
「これ」 粂山刑事が遺書を差し出してきた。
「読んで、また持って来てくれ」
粂山刑事はそう言って、茶室から出て行った。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.243 )
- 日時: 2015/09/28 17:51
- 名前: 奈々化 (ID: LU1dyaTr)
愛結side
「お疲れ様—」
「最後の人、ここの鍵閉めと、鍵、事務室に返してね」
「お疲れ様でしたー」
私たち一年生は、二、三年生と部室が一緒だ。 というのも、全体の人数が、合わせて11人。
三年生、3人。 二年生、5人。 一年生、3人である。
さっき、錦先輩たちは先に帰って行きました。
その後も、二年の先輩たちが帰って、残りは私たち一年の3人のみとなりました。
その一人、佐原 凛が、鍵を掴み「私、行く」と笑った。 それを「いいよ、私行くよ」と、須藤 沙代子が止める。
「昨日も行ってくれたから。 たまには、私が」
「いいよ。 杉木さんも帰っていいからね」
佐原さんは、まだ着替えが終わっていなかった。 いつも、親が迎えに来てくれるらしく、どこかのんびりしている。
「そう? じゃあ、今日は帰ろうかな? ね、杉木さん」
私は黙ってうなずいた。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.244 )
- 日時: 2015/09/29 12:19
- 名前: 奈々化 (ID: LU1dyaTr)
ミニ愛結side
「お姉ちゃん」
部室の階段を降りた須藤さんは、自転車置き場に向かった。 私も、須藤先輩の姿を確認する。
須藤さんが自分の自転車を持って来たのを見て、先輩は先に走り出した。
「また明日」と、須藤さんに手を振られ、慌てて私も走り出した後ろ姿に手を振りかえした。
(お姉ちゃん)
私は懐かしい言葉の響きを、心でかみしめた。 そしてゆっくりと歩き出した。 その時、携帯が鳴った。 電話だ。
「もしもし」
「あ、愛結ちゃん。 お母さんだけど」
「うん」
「今日、ちょっと帰るの遅くなりそうなの。 ごめんね。 冷蔵庫にあるもの、食べてね」
「分かった」
通話が終わったのを確認し、画面を戻すと6時17分と時間が表示された。
(あそこに寄って帰ろう)
私は、母の帰りが遅いと、決まってある場所に寄る。
自分でも知らないうちに日課になった。
ミニ香side
「生きていた」
私は自分に言い聞かせるように、そっとつぶやいた。
ふと、悔しさがこみ上げてくる。
このことを、小木沼も知っているのだろうか。
自ら、私のことをかばってくれたのに、ショックも大きいだろうな。
私はカバンから、清子の遺書を取り出した。 さすが双子。 母の字形とほとんど大差ない。
清子は、何のためにこれを書いたのだろう。 まさか今更謝罪か? と、青信号になったので、歩道を急いで渡る。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.245 )
- 日時: 2015/10/01 20:19
- 名前: 奈々化 (ID: LU1dyaTr)
ミニ香side
(あ、やばい。 ここ、どこ?)
こんな信号、渡ったっけ?
私は周辺を見回した。 あー、道一本間違えてる。
(やっぱり、車欲しいなー)
そう思いながら、また渡った信号に向き直った。
信号が赤になってる間、私は心の中で青信号になるまで数えてしまう。
こうして一時的に、清子のことを頭の片隅に置こうと思った。
やがて、信号は青になった。
(3分)
花side
「ただいまー」
「おかえり—」
(あー、疲れた。 まったく、仁井奈のやつ)
私は階段を上がる途中、リビングにいる直哉にむかって「テレビ、音大きい」と注意した。
が、笑い声にかき消された。
「何見てんだろ?」
私は自分の部屋に入り、制服を着替えた。
「お姉ちゃん」
部屋から出ると、直哉が階段の下から私を見上げていた。
「何?」
「お父さん、今日飲み会なんだって」
「あ、そうなの」
私はそう答えながら、リビングに入った。 直哉もソファに座り直し、テレビの一時停止を解除し、続きを見始めた。
「ご飯、どうしよう」
私は冷蔵庫を見ながら、口を尖らせた。
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