複雑・ファジー小説
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- 新任の養護教諭、香先生
- 日時: 2016/09/04 13:39
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
こんにちは または久しぶりな方もいるかもしれませんね。
奈々化です。パソコンの調子がいいので、このたび再開することにしました。
さて、同じ題名ではだめだということで、似ている題名で書かせていただくことにしました。内容も頭からまったく変えてしまったので、前作の小説の内容は忘れてください。
また保健室ネタ?!と思われるかもしれません……ですが、またこれから宜しくお願いいたします。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.181 )
- 日時: 2015/05/25 20:54
- 名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)
愛結side プロローグ
これは、私が小学生だった頃の記憶。 忘れてはいけない、過去。
ある日の夏に、火災訓練をした時のもの。
設定は、いつ発生するかも、場所も、何も知らないという形で行われた。
四時間目が終わる直前、火災ベルが鳴った。
「ただいま、家庭科室で火災が発生しました。 家庭科室で火災が発生しました。 各クラス、担任の先生の指示に従い、速やかに校庭に避難しなさい!」
校長先生の声がいつもより厳しく、重く心に響いた。
「ハンカチのある人は口に当てて、校庭に行きましょう!」
火災ベルの鳴る中、生徒たちでごった返した階段を慎重に下りていく。
そんな私の耳に「さや!」と誰かの名前を叫ぶ声がした。
(さや?)
偶然にも私の姉、杉木 沙弥と同じ名前だ。
私は階段の途中で立ち止まった。 なんだか、とても嫌な予感がしたのだ。
そんな私の横を、次々と生徒が通り過ぎていく。
(何してるの、私? 早く、皆と一緒に校庭に行かないと)
頭では分かっていた。 でも、体が言うことを聞かない。
そんな私の腕を「杉木さん!」と先生が掴んだ。
「止まってはダメ! みんなの邪魔してるし、本当に火事だったら、もう手遅れかもしれない!」
先生は私の腕を掴んだまま、一気に階段を駆け下りて、校庭に飛び出した。
「ほら、みんなはあそこよ」
先生はみんなのいるところを指差し、軽く私の背中を押すと、さっさと行ってしまった。
でも、なんだかみんなの様子がおかしい。
生徒たちは、がやがやと何か騒いでいる。 それを周りにいる先生たちは注意することなく、生徒以上に大声で何かを言い合っている。
とりあえず、私はみんなのところに駆け寄った。 と、先生たちのやり取りが耳に入って来た。
「まずい! 本当の火事じゃないか!」
そう男の先生の声が聞こえた。
私は慌てて校舎を見る。 確かに、赤々と、ある一室から炎が上がっていた。
「あれはどこだ!」とさっきと同じ先生の声がした。 それに「理科室です!」と女の先生が、悲鳴に近い声で答えた。
「先生!」 そこに一人の女子生徒が駆けて来て、「杉木さんが居ません!」と顔を真っ青にして言った。
よく見れば、先生二人に見覚えがあった。 どちらも、六年生の担任だ。 女子生徒の報告を聞いて一番慌てていたのは、今思っても、男の先生だった。
「何だって!」と鋭い視線を校舎に向ける。 その後、ふと私に目を向け、タイミングが悪いというように、目を反らした。
「消防に連絡は!」
男の先生は誰にともなく、大声で呼びかけた。 「もうすぐ来るそうです!」と、遠くにいた男の先生がそれに答えた。
「やっぱり、聞き間違いじゃなかったんだ」
私はそうつぶやき、呆然と炎に包まれる理科室を見つめた。
「お姉ちゃん……」
その後のことは、よく覚えていない。
気が付いたら、制服のまま自分の部屋のベッドの上に横になっていた。
(あの日はただの火災訓練じゃなかった。お姉ちゃんは、同級生に殺されたんだ。 あれは、完璧に計画された殺人だったんだ!)
私は、心の中でそうつぶやいた。
そんなこと、泣き叫ぶ両親の前で言えるはずもなかった。
私も涙をこらえきれず、しゃくりあげて泣いた。
(許さない……許さない、許さない、許さない!)
私は拳を固く握った。
(絶対……許さない!)
杉木 愛結…小学三年生。 初めて誰かに対して強い憎しみを抱いたその日。 五月二十六日は、姉、沙弥の誕生日だった。
長くなりましたが、プロローグです。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.182 )
- 日時: 2015/05/26 20:16
- 名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)
美羽side
「さて今日は、昨日連絡した通り、避難訓練があります」
私は三神先生の言葉を、頭の中で繰り返した。
(今、昨日連絡したって、言ったよね?)
というのも、昨日、テニス部は新入生も交えて、試合に行っていたのだ。
私みたいに「今日初めて知った」という子も多いと思う。
「火災を想定して、四時限目の授業のどこかで、避難訓練の放送が入ります。 訓練とはいえ、早く非難することにこしたことはありません。 ですが、慌てず、静かの行動を心掛けて避難しましょう」
先生は「じゃあ、長瀬君。 号令、お願い」と、出席簿を手にした。
「起立、礼」
「ありがとうございました」
みんなが一限目の準備をしている中、私は「そっか今日、避難訓練だったんだ……知らなかった」と古志野 花に、さりげなく近づいた。
「え…携帯、見てないの? 私、メールで知らせといたのに」
花は、口を尖らせ「もう」と席を立つ。
「試合の時は、携帯の電源切ってるし、家に帰ったら疲れてベッドに直行しちゃうから、そういう連絡ごとは、家の電話にかけて教えてくれって言ったじゃん」
私は花の机に突っ伏した。 そんな私に「あ! そうだった」と花は首を垂らし、力なくうなだれた。
「まぁ、いいわ。 ハンカチ、持ってきたし」
私は顔を上げ、前の黒板を振り返り「数学、取って来よう」とロッカーを目指し歩き出した。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.183 )
- 日時: 2015/05/26 20:18
- 名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)
たまーにですが、事件に関係のない話を書くことになります。
ですが、それも読んでいただけたら、嬉しいです。
次回も、頑張って書いていきます。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.184 )
- 日時: 2015/05/28 21:00
- 名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)
愛結side
(午後)
たった今、担任から、今日の午後のどこかで避難訓練があるということを聞かされた。
「ハンカチを口に当てて……」とか言っていたけど、今、スカートのポケットに入っているのは、一昨日トイレで使ったやつ。
昨日初めての試合で、緊張しっぱなしで、一時も心は休まらず、終始ガッチガッチで……そんな感じで、ハンカチを変えることは、一切頭から離れてしまっていた。
(まぁ、トイレに行ったときは髪の毛ででも)
私は前髪を撫でながら、意味もなく黒板を見つめた。
入学して一カ月。 正直言って、クラスにはまだ馴染めていない。 ほとんどが同じ中学の子と一緒らしく、男女ともに、もういくつかのグループができている。
男子はともかく、女子とも会話できないとなると、さすがに居心地が悪い。
と、そんなことを考えていた時だった。 「杉木さん」と不意に、後ろから声をかけられた。 無言で振り返ると、我が一年三組の担任、土江 南が立っていた。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.185 )
- 日時: 2015/05/30 08:22
- 名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)
愛結side
「これ」と、先生は私に、一枚のメモ用紙を差し出してきた。 私は黙って、そっとそれを受け取る。
「今日、英語あるじゃない? その英語の始まる前に、職員室によって、萩野先生を訪ねてもらえる?」
私はメモに書かれた分に目を通した。 確かに、英語係の私に頼みたいことがあるらしい。
「でも」としばらくの沈黙の後、先生が再び話し出した。 私は先生に目を向ける。
「今日、あなたと同じ英語係の多賀君、休みなの。 だから、もしあれなら、誰か誘って行くといいわ」
私は(あれって?)と心の中で呟いた。 そんな時、一時間目の始まりを告げるチャイムが鳴った。
「はい」と、自分でも無意識のうちに返事をした。
ちょうど、チャイムにかき消されてしまったのでは…と思う。 でも、先生ははっきり聞こえたのか、ニコッと笑いかけ「じゃあ」と教室を出て行った。
その後ろ姿を見て、私はふと思った。
どうして、今朝、急に小学校の頃の記憶が思い出されたのか。 それは単に、姉の誕生日が近づいたからということが理由ではなく……
この学校に、姉を殺した犯人がいるってことなんだ…と。
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