複雑・ファジー小説
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- 新任の養護教諭、香先生
- 日時: 2016/09/04 13:39
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
こんにちは または久しぶりな方もいるかもしれませんね。
奈々化です。パソコンの調子がいいので、このたび再開することにしました。
さて、同じ題名ではだめだということで、似ている題名で書かせていただくことにしました。内容も頭からまったく変えてしまったので、前作の小説の内容は忘れてください。
また保健室ネタ?!と思われるかもしれません……ですが、またこれから宜しくお願いいたします。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.306 )
- 日時: 2016/07/16 17:15
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
花side
「悩み事かな?」
「それしかないでしょ」
「だよね」
私は美羽にうなずき返す。 その時ふと思い出した。
「そういえば私も、月曜日の放課後、そんな光景見た気がする」
「お、見てた?」
「うん、忘れ物取りに行こうとしてた途中、廊下で声が聞こえてさ。 壁に隠れて見てたの」
「…ホー」
「なんで、反応遅れた? 別に盗み聞きの趣味は無いからね? とにかく、私はなんか教室に行きづらい雰囲気を感じて、その場でじっとしてたの!」
「ごめん、ごめん。 うん、それで?」
「そしたら、誰かが走って来る足音が聞こえてきて、私焦って階段を降りようとしたの。 その時、誰かに追い越されたんだ。 「うわっ」って避けたら、チラッと見えた横顔がねn/」
「なーちゃんだったの!」
なぜか突然、仁井奈がそう叫び椅子から立ち上った。
美羽も私もポカーンとなる。 仁井奈が得意げに「って?」と顔を向けた時私は我に返って「私のセリフじゃー!」と、仁井奈が広げていた数学の教科書をさっと棒状に丸め「面!」と、仁井奈の頭をめがけて腕を伸ばした。
が、剣道同志なのを一瞬忘れていて、仁井奈に胴を食らった。
「仁井奈選手、一ぽーん」 脇腹を押さえてピクピクしている私をよそに、美羽が審判のように叫ぶ。
「プリント、赤—。 あー! そうそう、これが展開ですよねー。 仁井奈先生、恩に切ります」
美羽は机に置かれたプリントを、とても丁寧にカバンの中にしまった。
「さて花、行こうか?」
「講堂に着いたら、一年生の指導の前にあんたと対戦できるってんなら、行ってもいいけど?」
私はじりじりと痛む脇腹に手を当て、仁井奈の後ろについて教室を出た。
そんな私の背中に「待って、途中まで一緒に行く!」と、美羽の声が聞こえた。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.307 )
- 日時: 2016/07/17 14:16
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
安佐子side
「はぁ」
私、三神 安佐子は悩んでいる。
自分でも、三十分くらい職員室の机に頬杖をついて、何もせずボーっとしているのが、なんか嫌。
「どうした? いつになく老け顔浮かべて」
(あ、香だ。 老け顔なんて、また失礼なことを…)
「あー、いい、いい。 言っても、担任持ったことないあんたには分からない悩みよ」
私は香を振り返らず、左手でしっしっと、どこかへ行くよう促す。
「悩みとは何でしょうか? 三神先輩!」
「ヒッ! つ、土江先生!?」
突然右隣に現れた土江先生に、私は椅子に座ったまま体を仰け反らせた。
そんな私に土江先生は、輝かせた目を向け「私なら同じ担任を持つ者同士、何かお役に立てませんか?」と迫る。
私が何も言えず黙っていると「あ、じゃあ土江先生。 この人のこと頼みます」と香が一方的に言い、カバンを肩に掛け職員室を出て行った。
「はーい! 横田先生、お疲れ様です」
香の奴。 今はテストも近くて、先生方は忙しいんだよ? まぁ、あんたよりは話しやすい…か。
というかもう、自分の隣の席の先生の椅子に座って、話聞く気満々の彼女に「あ、やっぱり何でも無いです」なんて……
言えない!
私は「スー」と小さく息を吸って「実は」と話を切り出した。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.308 )
- 日時: 2016/07/17 19:28
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
仁井奈side
「ところでさ、美羽」
「ん、何?」
「本居さんのこと、菜月って呼び捨てで呼んでるんだね」
私の疑問に「あ、それ私も思ってた」と花も美羽を見る。
「そんな、仲良かったんだね」
「仲良いってほどじゃないよ。 時々話すくらいで…。 それにあの子、いろいろとあだ名付けられてて、なんかややこしいからシンプルが良いって、本人の意見を尊重した結果、こうなった…みたいな」
「ふーん」
「いろいろって、どのくらい?」
「うーん…、なーちゃん、なっち、なつっち、なつ、なっき…あーっと……なーつ、なっち、後は…もな! ま、こんなとこ」
「美羽、なっちって二回言ったよ」 花は細かいことにツッコミを入れた。 が、私は別のことが気になった。
「もなって、名前から付いたあだ名じゃないよね?」
「あー、それはね。 本居のも、菜月のなから取って付けたみたいだよ」
「まるで子供の名前に、両親の頭文字をそれぞれ付けた〜、みたいな感じだね。 あと、美羽は誰が付けたのか知ってる言い方に聞こえるんだけど?」
「うん、知ってるよ。 隣のクラスの曽田さんが言ってた」
「じゃあ、私がなーちゃんって言うのも、本人はややこしく思ってるってこと? なんか急に申し訳なく思えてきた! 変えようかな?」
「まぁ、いいんじゃない? 今から呼び方変えられる方が、ややこしく感じちゃうよ」
「そっか…、うん、そうだよね」
「私も、本居さんのままでいいや。 本人の意見も無意識のうちに尊重してたし」
そんな話をしているうちに、昇降口と講堂の境目の廊下に着いた。
「じゃあね」と私たちは美羽と別れた。
「で、さっきの条件、飲む?」
しばらく歩いた時、花の低い声が聞こえた。
「しょうがない! 一試合だけだよ?」
「よし、急ごう!」
私は花に腕を掴まれ、引きずられるようになりながら、講堂に続く渡り廊下を走った。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.309 )
- 日時: 2016/07/26 15:16
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
安佐子side
「本居さんが」
話を終えて、土江先生は前のめり気味だった姿勢を改め、椅子に深く座り直した。
「ええ…、本当は何か相談したいことがあるんでしょうけど。 こっちが無理矢理聞き出すわけにも」
「というか、聞く前に去って行ってしまうんですものね」
「そうなんですよね」 私はそう言って頬杖をつき、ふと時計を見上げた。 5時50分過ぎ。 もう部活をしている生徒も帰る時間になってしまった。
「すみません。 本当に話を聞いてもらってしまって」
「いえ、謝らないで下さい! 実は私、本居さんのこと一年生の頃から気にしていたんです。 今も、いつも藤井さんといるっていうイメージしかなくて」
「そうだったんですか。 いつからかはわかりませんが、錦さんとも親しく話していますよ。 なので決して学校生活が寂しいことはないと思うんです。 他に悩みがあるとすれば、家庭のことでしょうかね?」
「藤井さん以外にも話せる女子がいるんですね。 確かに家庭のこともあると思いますが、まだ学校生活での悩みのことも考えてみた方がいいと思います」
そう言うと土江先生はカバンを手に立ち上がり
「どうです? 場所を移して、作戦考えてみませんか?」
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.310 )
- 日時: 2016/07/30 08:16
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
香side
ニャー ニャーオ ミャー
私は杉木 愛結さんと出会った、猫と触れ合える路地に来ていた。
「なんか増えて気がするけど、気のせい?」
私はそばにいた猫を抱き上げ尋ねた。 「ニャ」と短く答えたのが「さぁ」と聞こえ「そう」と私も短く答え、猫を地面に下した。
私は猫たちを見回し「一袋で足りるか分からないけど」とつぶやき、コンビニの袋からエサの入った袋を取り出した。 しだいに私の足元に集まり「早く」と急かすように鳴く猫たちをなだめながら、持っていたはさみで封を切り、パッパッとエサをあちこちにまいた。
その時「あ、横田先生」と女の子の声が聞こえた。
「杉木さん。 今日お母さんの帰り遅いの?」
私は街灯の下に立って「こっち、こっち」と、暗がりに立つ杉木さんを手招く。
「助かりました。 来たはいいんですけど今日は手ぶらで」
「いいの。 私、猫好きだし、この光景見てるだけで癒されるもの。
何なら私がエサ係になってもいいくらいだわ」
それを聞いた杉木さんはクスクスと小さく笑った。
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