複雑・ファジー小説

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新任の養護教諭、香先生
日時: 2016/09/04 13:39
名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)

 こんにちは  または久しぶりな方もいるかもしれませんね。

 奈々化です。パソコンの調子がいいので、このたび再開することにしました。

 さて、同じ題名ではだめだということで、似ている題名で書かせていただくことにしました。内容も頭からまったく変えてしまったので、前作の小説の内容は忘れてください。
 
 また保健室ネタ?!と思われるかもしれません……ですが、またこれから宜しくお願いいたします。


Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.161 )
日時: 2015/05/06 11:17
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 香side

 横田先生へ

 昨日は、本当にありがとうございました。

 もう少し、先生方が来られるのが遅かったら、あの人と話し合うことも、向き合うこともできなかったのではと思います。

 正直、もう会うこともないと思っていたんです。 連絡もつかず、どこにいるのかも知らず、お互い、十何年と生きてきて……

 会えたと思ったら、すっかり変わっていて、怯えてしまいました。

 そんな恐怖を感じるとともに「私があの人を、こんなふうにしてしまった」と、自分を責めました。

 あの日、あの人がむきになって怒るのを見ているうちに、こっちにもそれがうつってしまって、上手く話し合うことが出来なくなって……

 ですが、久しぶりにあの人を見て、昔の暮らしを思い出したんです。

 楽しくて、きらきらしていた、家族だった私たちを。

 お二人には、感謝してもしきれません。

 今度はちゃんと、いい家族になろうと思います。

 
 「追伸 これかも、美羽のことを宜しくお願いします だって」

 「なんか、直接お礼を言われるより、じんときた」

 「……」

 「? 香、どうかした?」

 「……なんでも。 はい」

 私は手紙を、安佐子に渡した。 「え、なんで」と驚く安佐子を無視して、私はすぐそこの階段を上がり、職員室に向かう。

 「あ、横田先生。 ちょっと、いいですか?」

 階段を上りきったところで、寺島先生が声をかけてきた。 「はい」と廊下の隅に移動する。

 「実はこの写真が、僕に靴箱に入っていて」

 そう言って、寺島先生は一枚の写真を私に差し出してきた。

 「? それをなぜ私に」

 「良くわからないんですが、これ」

 寺島先生は、そう言って写真をひっくり返した。

 present for you 香

 「!」

 私は寺島先生の手から、写真を奪った。 寺島先生は突然のことに目を丸くしている。

 「ど、どうされたんですか?」

 寺島先生は、やっとという感じで声をかけてきた。 私ははっと我に返る。
 
 「あ、いえ。 わざわざ、ありがとうございました」

 私は早口にそう言って、職員室に急いだ。



 
 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.162 )
日時: 2015/05/07 16:40
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 安佐子side

 「先生、さよなら」

 「はい、また月曜日」

 放課後になり、廊下は生徒であふれている。

 「花、増えてた? 減ってた?」

 ふと聞こえてきたのは、錦さんの明るい声。

 「ほっといて」 そんな彼女に、不機嫌に返事をする古志野さん。

 「はーい、じゃあお先に走って帰りまーす。 さらば!」
 
 錦さんはそう言って、廊下を走り出した。 注意しようと口を開きかけた時、「そういう意味で言ったんじゃないから! 止まれ—」と、古志野さんも錦さんを追いかけるために走り出してしまい、肩を落とすしかなかった。

 香に渡された、錦さんのお母様からの手紙を、改めて読み返してみた。

 夫婦とは、些細なことでこじれ、相手を、もしくはお互いの心を変えてしまう。 そりゃ、何年も一緒に暮らしてたら、本当に愛されてるのかなって不安になるのかもね。

 そんなことを考えているうちに、職員室に着いた。 ふと、白衣に目が留まり「忘れ物?」と、それに近づき、話しかけながら、椅子に座る。

 「放課後だよ? 鍵を閉めて、上がって来たに決まってるでしょ」

 「いいの? 部活での怪我の手当てしに来る生徒、いるんじゃないの?」

 「あんた、代わりにやってくれるなら、開けに戻るけど?」

 「いいです。 私は国語教師なんだから」

 「……今日は、用事があるの」

 香は白衣を椅子の背もたれにかけて、カバンを持って、さっさと帰ってしまった。

 


 香side

 私は、正門を出て早々、赤信号に引っかかった。

 (二枚になった写真……今度も、一人の女の子が写っていた)

 こんな考え事をしていたから。 でも、もう一つ疑問がある。

 なんで、寺島先生の靴箱の中に、この写真が入っていたのか。 靴箱に名前のシール……あ!

 私はカバンをあさった。 それは一番下に入っていた。

 「貼ってなかったんだった」

 明日、謝っておこう。 そして、このシールを貼る。

 そんな課題を胸にしたところで、信号が青になった。 私は真っ直ぐ、花屋を目指した。



 
 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.163 )
日時: 2015/05/08 17:08
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 美羽side

 (まずい。 本当に花おいて来ちゃった。)

 後ろを振り返り、私はそう落胆した。

 (まぁ、明日謝ろうっと……ん? ここって)

 私が立っていたのは、トンネルの前だった。 車用ではなく、歩行人や自転車の人がひそかに使うと言った感じのトンネルだ。

 ふと、奥に人の姿を見つけた。 私はその人に見覚えがあった。

 「お母さん」 私はそう言って、母に駆け寄った。

 「仕事、終わったの。 早いね」

 「ううん。 無理言って、早引きさせてもらったの」

 「なんで?」

 そう首を傾げる私に「これ」と母が両手でゆっくりと、胸の高さまで花束を掲げてみせた。

 「百合の花、だよね?」

 「そう。 さっき、椚田さんの家に行ったの。 そのうちの玄関にね、立派な百合が飾ってあって、思わず見入ってたら「未海の好きな花だったんです」って教えてくれたの」

 「そうなんだ。 でも、良く家が分かったね」

 「それがね。 家に帰る途中、偶然見つけたのよ」

 「すごっ!」

 「お母さんも、会えるとは思わなかったけど。 顔が見られて良かった。 こうして、未海ちゃんの好きな花を供え……あら?」

 急に母がしゃがみこんだ。

 私もつられて「何?」と隣にしゃがみ込む。

 「ヒヤシンスだわ」

 「え! ヒヤシンスに紫色ってあるの?」

 「お母さんも詳しくは知らないけど、この花の形は、きっとそうだわ。 誰かしらね?」

 私たちは腕を組み、考えた。


 

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.164 )
日時: 2015/05/08 17:20
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 香side

 「ただいま」

 誰にともなく、小さくつぶやいた。

 ポストの中を見た。 でも、この前のように怪しげな封筒は無かった。

 花屋により、椚田 未海ちゃんの殺害されたところに、花を供えた後、また写真について考えた。

 てっきり、またポストに写真が入っていて、計三枚になると思っていた。

 (それにしても、写真に写っている少女には何の意味があるんだろう)

 今のところ、何もわからない。 でも、私を狙っている者が、近くにいるというのは確かだ。

 奴は私の家の場所を知っているし、勤務先まで知っている。

Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.165 )
日時: 2015/05/09 08:48
名前: 奈々化 (ID: SSNg/Zhu)

 安佐子side

 香と会わないまま、私も帰宅の時間を迎えた。

 「お疲れ様でした」と、職員室を後にする。

 (香の言う、用事ってなんだろう?)

 車のハンドルを持った時、ふとそんなことを考えた。

 香は、嘘をつかない。 だから、本当に用事があったのだろう。

 「ま、帰ろ、帰ろ」

 私は頭を振り、車を発進させた。 

 


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