複雑・ファジー小説
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- 新任の養護教諭、香先生
- 日時: 2016/09/04 13:39
- 名前: 奈々化 (ID: G/k9CtSQ)
こんにちは または久しぶりな方もいるかもしれませんね。
奈々化です。パソコンの調子がいいので、このたび再開することにしました。
さて、同じ題名ではだめだということで、似ている題名で書かせていただくことにしました。内容も頭からまったく変えてしまったので、前作の小説の内容は忘れてください。
また保健室ネタ?!と思われるかもしれません……ですが、またこれから宜しくお願いいたします。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.61 )
- 日時: 2014/10/06 20:08
- 名前: 奈々化 (ID: g8rCkVaa)
今日も花は一人で、家の近くの信号まで来ていた。 安佐子の連絡など、ほとんど頭に残っていない。 あとで、美羽に聞こう。
安佐子が連絡している間、ずっと考えていたこと……
能登先生のこと……もう一度、あの日のことを振り返っていたのだ。
「芳樹君、しっかりして」
花はそう言って、酸素マスク姿で担架に乗せられた能登に声をかけた。 救急隊員の指示で、花も救急車に乗った。
「心肺蘇生法、5分行きます」
「はい」
そんなやり取りが、病院に着くまで続いた。
花が病室の前で待っているとき、能登正義と、妻の茜が駆けつけた。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.62 )
- 日時: 2014/10/09 21:03
- 名前: 奈々化 (ID: g8rCkVaa)
「芳樹は……どんな状態かな?」
正義が長椅子に座った花に、ふらふらと歩み寄る。
「心肺、停止……意識不明の重体でs/」
「す」と言いかけたとき、体が浮いた気がした。 なんと、正義ではなく、妻の茜が花の胸ぐらを掴んでいたのだ。 両腕を震わせながら、花の体を空中に浮かせ続ける。
正義はそんな妻の突然の行動に、「おい、よせ!」と茜の手を、花の制服から離そうとする。
「あなたね! もし芳樹が死んだら、どうしてくれるの! 責任、取れるの!」
茜はさらに強く、花の胸ぐらを掴んだ。 「何とか言いなさいよ!」
(な、何とかって……ウグッ、とにかく苦しくて、い、息が……)
花の意識が限界に達したとき、自分でも無意識のうちに茜の手首を掴んでいた。
「は!」 茜はそう叫びながら、さっと花の胸ぐらから手を放す。 花は「ハー、ハー」と肩で荒い呼吸をする。
(床に落とされた……痛!)
「だから、私は言ったのよ!」 茜は目を見開き、夫、正義に向き直る。 「芳樹を、ちゃんと障害者の通う高校に入れようって!」
の「……でも、君は僕がいれば大丈夫jy/」
あ「言い訳なんて聞きたくないわ! ええ、確かに言ったわね。 一応、夫で教師のあなたがいれば、大丈夫と。 でも、それは学校の中でのことでしょう? 芳樹が一歩学校の外に出れば一気に、耳が不自由な、見た目は普通の高校生じゃない! 私はそれを心配していたのよ!」
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.63 )
- 日時: 2014/10/10 18:32
- 名前: 奈々化 (ID: g8rCkVaa)
「あなた、あの日の私が出した条件……忘れた?」
茜は急に声のトーンを落とした。
(条件……) 正義は思い出せない。 花はお尻の痛さに顔をしかめながら、やっとのことで立ち上がった。
茜は肩にかけていたカバンから、一枚の紙を取り出した。 正義はメガネをくいっと持ち上げ、差し出された紙を見た。 と、カッと目を見開いて「こここ、これは」と一歩後退った。 花もそんな正義の様子を見て、相当なショックを感じ取った。
(その紙……え! まさか!!)
その花の答えは、次の茜の一言によって確信に変わった。
あ「私はもう、この通り印も押したから。 玄関に入ってすぐの机の上に置いておきます。 ちゃんと記入して、一人で役所に提出してくださいな。」
茜は一歩、正義に近づき「これも返します。 さよなら」と、正義のカッターの胸ポケットに鍵を入れた。
紙の正体は、離婚届けだった。
正義はすっかり放心状態になり、花は何も、声をかけることができなかった。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.64 )
- 日時: 2014/10/13 19:10
- 名前: 奈々化 (ID: g8rCkVaa)
「ただいま」
そんなことを考えていると、いつの間にか家に着いた花。 直哉は、とっくに帰宅済み。
(いいよね〜。小学生は気楽で)
こんなことを思う花ではあるが、口にはせず、心の中で思うだけなのだ。
花はリビングでテレビを見ている直哉に、何も言わず二階に上がる。顔を思い浮かべるだけで、やり場のない怒りが増す。こんな時は、本棚にある漫画を軽〜く2、3冊読むことにしている。
(忘れてしまいたい……けど)
あの時確かに、能登正義は花を責めたりなどしなかった。 だから、ほんの二日前……信じられなかった。
- Re: 新任の養護教諭、香先生 ( No.65 )
- 日時: 2014/10/13 19:50
- 名前: 奈々化 (ID: g8rCkVaa)
(もしかして、能登先生は今、意外と私たちの近くにいるのかもしれない)
今の花には、明日のクイズ大会など、もうどうでも良かった。
「ただいまー」 母、恵理子が帰ってきた。 瞬間、花は思った。家族には悟られたくない! 心配はかけたくない! 花は部屋を出た。買い物袋を下げた母。
「あ、お帰り」 悟られたくはないが、無意識に笑顔が引きつる。「は〜い、ただいま」恵理子は肉のパックを掴み、花に目を向ける。途端に「あー」と言って、じとっとした目で花を見た。
え「また制服のまま部屋でくつろいだりして。スカートとかジャケットは、すぐハンガーに掛けなさい。ついこの前が始業式だったっていうのに」
は「あ、うん。ごめん」
え「ほらほら、そう言ってる間に掛けて、服、着替えておいで」
は「はーい」 (どうだったかな? いつもより声のトーン、低くなかったかな?)
花は階段をうつむきながら登り、部屋に戻った。
え「何かあるわね」 (まあ、聞き出すなら明日かしらね〜)
恵理子は何かを感じ取っていた。
え「直哉ー、今日何が食べたい? お肉あるよ?」
な「え、じゃあ…生姜焼きとか!」
え「うん、そうしようか。 じゃあ、今から作るからね」
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朝になった。
「朝から肉料理って、重い」
花は昨日、夕ご飯を食べずに寝た。自分でも気づかないうちに、爆睡。おまけに、母、恵理子からそのことについて、しつこく追及され、ある意味朝から、精神がかなりボロボロである。
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